【鬼哭】ヒトを忘れた隣人
真柄 葉
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シナリオID:2605
オープニング
そんな要衝も数年前の帝国崩壊のあおりを受け、永らく存続が不明であった。
しかし、今年に入りその生存が確認されると、レイウェストは電撃的な作戦を持って、これを幽界樹の魔の手から奪還せしめたのである。
しかし街は、かつて巣食っていた幽界樹の仕業で、人の住めぬ荒れ地となっていた。
本来であれば都市自体の破棄を考慮すべき有様であったが、この場所は帝国にとっての要衝。帝国復興が成った暁には、再び鎮守都市として東に睨みを効かせる必要がある。
そこでレイウェストは、奪還作戦で大きな役割を担った帝国軍将軍リカルダ=C=アーレンスにその後の統治を任せる事とした。
激戦であった奪還作戦から、はや半年。帝国東部の季節は秋から冬へと移り変わりつつある。北壁山脈も望める土地柄故に、他の帝国領よりも冬の便りが届くのが早いこの都市では、早々に冬支度が進められていた。
「燃料の確保はどうなっている」
「その点は、北のイリオスから薪を運ばせる手筈を整えてます。本格的な冬が来る前に準備は完了すると思いますよ」
副官であるロルフの報告に、リカルダは頷いた。
「ドワーフ達の怪我の具合はどうだ?」
ほぼ瓦礫しかない街を見渡しながら、リカルダは先日起きた事故の事後報告を求める。
「もうすっかり元気になって復帰してますよ。今は、崩すべき場所と残すべき場所の見極めを行ってるはずです」
「そうか、そちらは専門家である彼等に任せよう。城壁の復旧はどうか」
「そっちは――――」
これが毎日の定期連絡。
リカルダはロルフを連れ、エスタルの街の復興状況を確認していた。
「――――指示は以上だ。復興は急務だが住民に無理強いをしないよう兵士達には徹底させろ」
「はっ!」
案件一つ一つに丁寧な指示を出し終えたリカルダに、ロルフは敬礼をもって答えた。
「ようやく軌道に乗って来たな」
「そうですね。人手が一気に増えたのが幸いしてます」
「ドワーフ達か」
「後、ゴブリンたちも」
「そうだったな。ゴブリンたちの精力的な働きにもずいぶん助けられている」
エスタルの復興が決まったといっても、そこに住民の姿は少ない。かつて万に迫るほどいた住民達はその数を20分の1ほどまでに減らしていた。
エスタルが奪還された当初の人員は帝国兵600に、元エスタル住民400名。そこから半年がたち、各地に散っていたエスタルの民や、移民、そして出稼ぎの労働者などが流入し、今では倍ほどの人数に膨れ上がっていたが、ほぼ壊滅状態だった都市を丸々作り直そうというのだ、技術者はもちろんのこと、単純な労働力はいくらあっても足りない。
そんな中でも、復興の大きな力となっているのが、ドワーフの技師たちとゴブリンの移民たちだった。
帝国への永住権を担保に移住してきたドワーフの技師たち。そして、ドン・ゴーフルの政策の下、帝国へと移り住んだゴブリンの一団が力を貸してくれている。
まだゴブリンに対する偏見も多い中、彼らは精力的に働く事で危険はないと自ら示してきた。そんな彼等の仕事ぶりに住民や兵士も心を許しつつある。復興が成った暁には、是非一緒に暮らそうと言っている者まで居るくらいだ。
「彼等に報いる術を何か見つけておかなければならんな」
「お給金と永住権だけじゃ不足ですかね?」
「物質的なものはそれでいいが、『何か』とは精神的なものだ」
「精神的にですか。うーん、宴会でも開きますか?」
「また酒の話か。ほどほどにしておけよ」
「いや、俺の話じゃなくてですね!?」
憤慨する部下にリカルダは苦笑しつつ、改めてエスタルの復興状況に視線をやった、そんな時だった。
「しょ、将軍! 大変ですっ!!!」
復旧中の東門から兵士が慌てて駆けてくる。
「どうした、敵襲か」
「敵襲で――――い、いえ、敵なのでしょうか……?」
その慌てぶりから、敵襲かとリカルダが問いかけるが、兵士はどう答えていいのか迷っていた。
「報告は的確に行え。敵なのか、敵でないのか」
そんな兵士の態度を、リカルダに代わりロルフが叱責する。
「わ、わからないんです! いきなりゴブリンたちが暴れ出したんです!!」
そう叫んだ兵士に、リカルダとロルフは目を見開き、視線を合わせた。
「どういう事だ、落ち着いて正確に話せ」
ロルフは兵士の両肩に手を置いて、その瞳をじっと見つめる。
「は、はい。先日移住してきたゴブリンたちが駐屯地で暴れています。あれはもう……」
「なんだ、はっきりと言え」
「あ、あれはもう……野に居る亜人と変わりありません!」
ロルフに問われ背筋を伸ばした兵士が、きっぱりとそう言い切った。
兵士に連れられ駐屯地へ急行するリカルダ達は、道中、詳しく話を聞く。
エスタルの復興を手伝うという名目の元、この街へ居を移したゴブリンたちは二十数名。そのほぼすべてが『先祖返り』を起こしているという。そして、さらに厄介なのが――――。
「なに……冒険者もだと?」
リカルダとロルフは兵士の言葉に耳を疑った。
エスタル復興には多数の冒険者の力を借りている。もちろんその中にはゴブリンもいる。
その冒険者ゴブリンまで『先祖返り』を起こし、暴れているというのだ。
「将軍、一先ず住民の避難を急がせましょう。先祖がえりを起こしたという事は、ゴブリンたちはもう敵です」
「住民の避難を最優先にする事は当然だ。だが、ゴブリンについて、そう決めつけるのは性急だ」
「ですが……どうするんで?」
「……エスタル復興に尽力してくれていた者達だ。何の原因で暴れているのかはわからん以上、出来れば傷つけたくない」
「相手には授恵者もいるんですよ。そんな悠長な事言ってられませんって」
「授恵者の相手は冒険者に任せる。ロルフ、早急に彼等に依頼を出せ」
「そういうことで。では、復興に当たっている冒険者に再依頼を」
「ああ、頼む」
ロルフは軽く頭を下げると再び街の方へと戻っていった。
「……嫌な予感がする。帝国……いや、大陸で一体何が起きようとしている」
誰にも聞こえぬ呟きが、冬迫るエスタルの空に溶けて消えた――――。
解説
マスターより
リプレイ
「どうかされましたかトゥーリ殿、お顔が炙ったマシュマロのようですが……」
「ふえっ!」
ハリス・アル・ターミルに言われ、トゥーリは思わず顔を隠す。
その比喩はどうかと思うが顔が緩んでる自覚はあった。だって仕方がない、『彼』に誘われるなんて滅多にないんだから。
「トゥーリ殿、あのあたりのようです」
そんなトゥーリの内心を知ってか知らずか、ハリスは前方を指さした。
「急ごうっ! 怪我人とか出てたら大変っ!」
「はい、急ぎましょう」
二人は手を取り現場へ急ぐ。
●
「ええっ、二人まで!?」
「はい、授恵者であるはずの彼等までです。もし彼等が倉庫の備蓄を欲望のままに喰らってしまえば、この街の越冬に支障をきたします。それに、ギルドに対する風当たりも強くなるかもしれません」
声を上げたトーラに、ナハト・シュライバーが神妙に頷いた。もし冬用の物資が不足すれば、例えゴブリン達が正気へ戻っても遺恨が残るだろう。そうなれば、折角市民権を得た彼等の立場が危うい。
「そう、ですよね、彼等は『冒険者』ですもんね……チラッ」
ナハトに言われ、トーラはチラチラとゴブリンたちを見た。
そこには、占拠された倉庫に真剣な眼差しを向けるナハティガル=ラーとバンビの姿。そう、二人はゴブリンだ。
「……彼等は大丈夫だと信じましょう。ゴブゴブ言っていませんし」
「それが基準なんですかっ!?」
「あ、あと、ほら……えっと、人の言葉を話してるじゃないですか」
「……た、確かに」
そんな感じで二人が見つめるゴブリン二人はというと――――。
「……まったくゴブリンとしての矜持をどこへやってしまったのですか。ゴブゴブ言うだけなんてゴブリン文明の敗北ですわ。先人が積み上げてきた実績を何だと思っていますの!」
ゴブリンの一人、バンビは憤慨していた。とても憤慨していた。しかしそれは不安の裏返し。バンビは恐れているのだ。自分がいつ彼等のように退化してしまわないかと。
「言ってやるな。あれ等も望んでそうなったわけではないだろう」
そんなバンビを気遣いつつも、ナハティガルは倉庫から目を離さない。
彼もゴブリンである以上、不安がないわけではない。しかし、それよりも違和感の方が先に立っていた。同時にあれだけの数が先祖返りを起こしたという事は、病の類とは考えにくい。まるで何者かの意志がそうさせているような、そんな風に思えてならないのだ。
「とにかく最速で無力化しますわ」
「待て待て。先祖返りしたとはいえ、あれ等はエスタルの民や冒険者だ。危害を加えるなと将軍も言っていただろう」
早速、最速潜入を試みるバンビの肩をナハティガルが掴んで止める。
「まずは相談だ。俺達が先祖返りしていないと証明もしなくてはな」
ナハティガルはなおも勇むバンビを引きずって仲間達と合流した。
●
「――――以上が作戦です。中と外の連絡は【テレバス】で密に行いましょう。何かご質問は?」
ナハトがまとめ役となり、冒険者達は策を練った。話し合いの末、纏まった案は倉庫の前に穴を掘り、そこへゴブリン達を落として無力化するというものだ。
「表はそれでいいとして、裏口はどうしましょう。あちらにも穴を掘りますか?」
「そこは俺とナハシュで塞いでおこう」
トーラが手を上げ問いかけると、ヨル・スレイマンがナハシュを見ながら答えた。
「いいかな、ナハシュ」
「ゴブゴブっ!」
「「「っ!?」」」
「冗談はやめろ。ああ、皆、大丈夫だよ。ナハシュは平気だ。俺が保証する」
「かははっ!」
悪戯が成功した子供のように笑うナハシュに、ヨルは触れる様な拳骨を落とす。
ナハシュまで退化したのかと驚いた皆も、その一言に安堵した。
「だけどよ、ゴブゴブ言ってんのがただ鳴いてんのか、マジで亜人語になってんのか興味あるな。後者ならマジもんの退化じゃねえか」
ヨルの拳を振り払ったナハシュが、ナハティガル、バンビの順に視線を巡らせる。
確かに先祖返りといっても、どの程度なのかまではわからない。知性の無い『暴走』なのか、意思があるのか。それに、ここにいる三人に影響がないのも不思議だ。
「現状、三人が無事であるのは我々にとって僥倖です。一先ず将軍に依頼された件を解決してから考えませんか?」
投げかけられたナハシュの疑問に、ナハトが答えた。
「おっと、そうだな、すまねえ。まずは倉庫を取り戻すことが先決だな。俺の酒が全部飲まれたら事だ」
「あの中にナハシュの酒は一本もないけどね」
軽口を叩くナハシュにヨルのツッコミが入ると、皆の顔にようやく笑顔が浮かんだ。
●
「おーし、こんなもんか」
【エリアサイレンス】で音を消し、大量の木箱を積んで裏口は封鎖した。
「ああ、これだけやればあの二人が本気を出さない限り大丈夫だろう」
「ゴブゴブ」
「それ、ほんとに洒落にならないからね?」
「はは、おもしれえっ」
骨面の隙間から覗くヨルの視線から逃げるように、ナハシュは倉庫を回り込む。
「お待ちしていました、こちらの準備は整いましたよ」
倉庫の正面では、ハリス達が穴掘りの準備を進めていた。冒険者達が持ち込んものと、ナハトがリカルダに要請して集めてもらったものを合わせると、十数機にのぼる穴掘り紋具が入口前に並べられている。
「おっしゃ、そんじゃちょっくら行ってくるわ」
「よろしくねっ、くれぐれも音を漏らさないようにっ」
仲間が設置した穴掘り紋具に飛び乗ったナハシュは、トゥーリに手を振って応えると、再び【エリアサイレンス】を発動させ、紋具が出す音を遮断した。
「目隠しは任せてください」
開けられた落し穴はやはり目立つ。ゴブリン達が先祖返りを起こしているとはいえ、素直に落ちてはくれないだろう。そこでナハトは穴を薄い木板で覆い、土をかぶせカモフラージュしていく。
「おっと、一か所だけそのままでお願いできるかな」
次々と穴を塞いでいくナハトにヨルが声をかけた。
「そのままですか。わかりました、では入口正面の穴はお任せします」
ナハトはすぐ承諾すると、ナハシュが這出てきた穴を指さす。
「理由は聞かないんだね」
「聡いスレイマンさんの事です。きっと何か考えがあるのでしょう?」
試す様に問いかけるナハトに、ヨルは小さく口元を歪めた。
「どうですか? ゴブリン的に」
「そうですわね、ゴブリン美少女化計画ほどではありませんが、まずまずですわ」
見目麗しいゴブリンに擬態したトーラに、及第点を出したバンビの手はやっぱり震えている。
「やっぱり怖いですか?」
「そりゃ怖いですわ。自分の意志に関係なくあんな野蛮人にされるのですから」
「そうですよね……ちゃんと原因を突き止めなくちゃですね」
正直に話してくれたバンビに、トーラは解決の決意を新たにした。
ナハティガルは思案していた。
共に潜入を試みる二人はゴブリナ。女装してヒュージに当たる事も考えたが、その役目は本物の女である二人が適任だろう。ならば自分は、もう一人へ向かうべきだ。自分のスキルをもってすれば、雌一人魅了する事は容易い。
「我ながら手段を選んでいないな」
ふと脳裏に浮かんだ笑顔に、何故か罪悪感を覚える。
「……余計な事を考えている暇など無い」
自分に言い聞かすように呟いたナハティガルは、皆の待つ倉庫前へと移動した。
●
倉庫の中はまさに酒池肉林。野性を取り戻したゴブリンたちは手当たり次第に物資の箱を開け、食料や酒を喰らっている。
野生化したゴブリンを装った三人は、そんな中にいつの間にか紛れ込んでいた。
「ゴブゴブっ!」
「ごぶ!」
本当にゴブゴブ言いながらコミュニケーションをとっているゴブリン達に合わせ、三人はナハトが用意した蒸留酒で酌をしたり、新鮮な果物で興味を引いたりしている。
ゴブリン達はそんな三人の事を疑いもせず、完全に仲間だと思い宴を謳歌する――その時だった。
「ゴゴゴ、ゴブ!?」
入口付近にいたゴブリンが真っ黒な顔で倉庫の奥へと逃げてくる。浮かれるゴブリン達が何事だと面倒臭そうに見てみれば、倉庫の入口側が濃い煙に覆われていた。
「ごぶっ……!」
この異変に危機感を持ったリーダー格であるヒュージが身構えた瞬間、入口付近で爆発まで起きる。ヒュージは慌てて剣を探すが、何故かどこにも見当たらない。同じように隣ではブブ=リの杖も行方不明のようだ。
「ごぶぶぶっ!」
ヒュージはこのままでは焼け死ぬと、裏口へ逃げるようにゴブリン達へ指示を出す。
ゴブリン達は一斉に裏口に殺到するが、押そうが引こうがびくともしなかった。
裏口からは出られず、入口は煙に巻かれている。もう逃げ場はないと、ゴブリン達が恐慌に陥ろうかとしたその時、一匹のゴブリナが煙へと果敢に突っ込んだ。
呆然とその様子を見つめるゴブリン達。
しばらくするとゴブリナが帰ってきた。そして、行けるとサムズアップ。
ゴブリン達は一瞬目を見合わせると、我先にと入口へと突っ込んでいく。
「はいはい、避難の決まり『押さない』『走らない』『喋らない』『戻らない』をちゃんと守るのですわ!」
入口に殺到する者達をさっきのゴブリナが的確に誘導し、ゴブリンは順序正しく入口から、外へと脱出していく。
●
倉庫から出たゴブリン達は、まさに蜘蛛の子を散らす様にバラバラに逃げ始めるが。
――――ズボッ!
真っ先に飛び出たゴブリンが突然姿を消した。そして、続く数匹も同じように忽然と姿を消す。ゴブリン達は異変に気付き、入口付近で渋滞し始めた。
「さぁ、こちらですよ! そんな所で止まっていては、後ろの方の邪魔になります!」
そんなゴブリン達は目撃した。怪しくも神々しく輝くその姿を。
まるで夜灯に吸い寄せられる蛾のように、一人が光に向かって歩み出す。
――――ズボッ!
「どうしました! 怖気づいていないで! どんどん、来てください!」
「うまくいきましたね」
「ああ、そうだね。もう偽の地面や壁の出番はないかな」
「かもしれません。最初のカモフラージュが成功したのは大きかったです。流石ですね」
「そちらこそ、煙幕のタイミングばっちりだったね」
ハリスの光に導かれる様に、一人二人と落とし穴へとはまっていくゴブリン達を見つめ、ナハトとヨルはひとまず安堵する。
「そこのお二人さんっ、お暇してるなら手伝って! 落ちた人引き上げるよっ!」
そんな二人にロープを担いだトゥーリが声をかけた。
「行きましょう、スレイマンさん。穴の中で怪我をしていないかも確認しないといけませんし」
トゥーリに手を振って応えたナハトに続いて、ヨルも現場に急ぐ。
●
「観念するのですわ。あまり暴れるとあんた達の向う脛の安全は保障しませんわよ?」
煙の晴れた倉庫から姿を現したのは、ナハティガルとバンビ。二人は混乱に乗じ、見事にヒュージとブブ=リを捕らえていた。
「こちらも終わったようだな」
外に逃げたゴブリン達も無事捕らえられ、現場に目立った混乱はなかい。
「お二人から預かった武器はいずれ返せる時が来るでしょうか」
二人の後ろから、変装を解いたトーラが剣と杖を抱えて出てきた。
それは煙と爆発が起こる前、トーラはナハティガルと協力し、冒険者ゴブリン二人からこっそり奪ったものだった。
「そうだな、この異常の原因さえ分かればすぐにでも返したい所だが」
「やっぱりそうなりますよね。原因……一体何なんでしょう」
「わからん……そもそも、ヒュージ達が先祖返りしているのに、俺やバンビが無事な事も謎ではある」
「本当になんなんですの! オレは何時まで怯えていれば済みますの! 嫌ですわよ、ああなるの!」
捕らえられた後もゴブゴブ言っているゴブリン達を指さしたバンビに、二人は返す言葉を見つけられなかった。
●
怪我を負わないように細心の注意を払いつつ、ゴブリン達はロープで拘束され、トーラが手配した兵舎の一つに収容されることになった。
「窮屈で申し訳ないんですけど、先祖返りの原因がわかるまでここで大人しくしててくださいね」
「今はこうするしかないんです。けして軽んじているわけではない事はわかってください」
また暴れ出さないようにと、簡易的な檻へと収監されたゴブリン達に、トーラとナハトが声をかけていく。
そんな二人にゴブリン達は威嚇する様に唸るものの、再び暴れ出しはしなかった。
「ごめん、ちょっといいかな」
と、そんな二人の元へトゥーリがやってくる。彼女はハリスと共に捕縛したヒュージへ近づいた。
「何をするんですか?」
トーラが問いかけるも、ハリスに「見ていればわかります」とウインクされ、成り行きを見つめる。
「それじゃいくね」
三人が見つめる中、トゥーリはヒュージに【解呪】を試みた。
「……効果なしの様ですね」
しばらくして、じっとヒュージを観察していたハリスが呟く。
「だね」
「おや、残念ではないのですか?」
「うん。だって、これで先祖返りは【解呪】で治せないってわかったもん」
力強く返事をするトゥーリに、ハリス達は「そうですね」と頼もし気に頷いた。
「おや、先客かな?」
そんな四人の元へ、続いてヨルとナハシュが訪れる。
「ゴブゴブっ!」
「だからやめろ」
またふざけるナハシュのわき腹に拳をねじ込みつつ、ヨルは浄化を試していいかと尋ねてきた。
「やっぱり皆さん気になっているんですね」
「うん?」
「いえ、こっちの話です。あ、ちなみにトゥーリさんが【解呪】をかけてもダメでしたよ」
ナハトは首をかしげるヨルに、一般人のゴブリンには効果あるかなと試しに行ったトゥーリを指さす。
「そうか。それならこれもダメかな」
ヨルは肩をすくめつつ、ブブ=リに【サルベーションオール】を試みるが――――。
「んー、ダメっぽいな。全然変わってねえ。そもそもこれ、治るようなもんなのか?」
「どうだろう。流石に何か原因があるとは思いたいが……」
ナハシュとヨルのやり取りに、ナハトとトーラも深く頷いた。
「なんだ、皆揃っているのか」
更に更にナハティガルとバンビも合流した。
「お二人も来たんですね。ゴブリンの人達は、相変わらずですよ」
そんな二人を出迎えたトーラ。
「来たくて来たわけじゃありませんわ。もし伝染ったらどうしますの」
「そういう類のものではないと思うが……仮にそうであっても、調べておきたい」
相変わらず小さく震えているバンビを慰めつつ、ナハティガルはヒュージの檻に手を伸ばし、着ていた服に手をかける。
何をすると威嚇するヒュージをバンビが有無を言わさず抑え込む中、服を器用に脱がしたナハティガルがその身体を探っていく――――。
「……これは」
しかし、身体の数カ所に痣らしきものを発見することが出来ただけで、意図的につけられた『印』のようなものは発見できなかった――――。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2022年11月26日 17時51分18秒 公開
相談掲示板
シューターのナハトです、よろしくお願いします。 食料庫を占拠しているゴブリン達を極力傷つけず鎮圧……レベルの高い授恵者も含まれているのが厄介ですね。 極力傷つけないというのであれば、穴掘り紋具で前後の入口2箇所に穴を掘っておいて、煙か何かで倉庫内から炙り出したり倉庫内のものより美味しそうな食べ物で誘き出したところを嵌めるとか。 あと非授恵者ゴブリンに関しては水の代わりに酒を飲ませて酔い潰れるようにし向ければ無力化できるのではと思ったりもしました。 皆さんの意見も伺いつつ、幾つかの案を組み合わせられたら良いなぁ、と。
シーフのトーラです。 よろしくお願いします! 無傷、というのが難しいですね……。 ナハトさんの言うお酒で酔い潰す案に加えて、ヒュージさんとゴブ=リさん達が寝ている所に忍び込んで光縛呪で拘束するというのはどうでしょうか? リーダー格を押さえれれば、一般のゴブリンの人達は抵抗する気も減るでしょうし、実力差を見せればより効果的では無いかと思います。
シーフのナハティガル=ラーだ。 ――何やら不穏な予感がするが、今回は宜しく頼む。 >落し穴 ナハトが挙げているように、酒で酔い潰す、煙などで炙り出すor誘き出すなりして落し穴に嵌める事ができれば、効率よく無力化する事が可能かもしれんな。 >ヒュージ/ブブ=リ ヒュージはレベル40越え、ブブ=リはレベル40近い熟練冒険者の為、完全に酔い潰すのは難しいように思う。 >その他 鎮圧に必要な道具は帝国軍から供与して貰えるとの事。 とりあえず、捕縛用に投擲網を申請してみようかと。
非授恵者ゴブリンに関してはナハティガルさんが申請予定の投網や、トーラさんが挙げて下さった寝込みを光縛呪での拘束も可能そうなんですがやはり問題は授恵者の2人なんですよね。 恐らく薬や酒もあまり利かないでしょうし、気配にも敏感そうです。 一般ゴブリンは交戦せずに無力化、授恵者ゴブリンに関しては交戦するけれど無傷で無力化という形になりそうでしょうか? 戦闘スキルは武具や防具依存のものが多いです。だから、武器を手放させる、防具を外させるなどして武装解除させれば脅威は減りますし、その状態で穴に嵌めるなり拘束出来れば逃げ出したりすることも出来ないんじゃないかと。
すみません、質問を Q1:今回占拠された食料庫は数ある倉庫の内の一つですか? それともここ一つですか?
ハリスと申します、どうぞ宜しく。 この地に残るゴブリンの方々は紆余曲折あれ我々と共に大敵を打破した仲間です。 たとえ骨肉を砕かれようと、私は怪我をさせずに元に戻せるよう尽力したいと思います。 >対授恵者 耐久の点で私が最も標的役に向くでしょう。足止めはお任せください。 皆様はその間に捕縛を試みて頂ければ。 >対一般 上記のリーダー格を倒せばある程度士気の低下は見込めるかもしれません。 が、どうにも、唐突な先祖返りというのが引っかかりますね。 ややもすれば誰がやられようと構わずにこちらを襲ってくる可能性もあります。 ただ、そういった場合は判断力や知性が低下している可能性も高い。 何らかの準備や策があれば一度に拘束することも不可能ではないでしょう。
復興の手助けに来てもらっていたのに、急な事態ですまない。 よろしく頼む。 おっと、質問だったな。 Q1:今回占拠された食料庫は数ある倉庫の内の一つですか? それともここ一つですか? A1:駐屯地には食糧庫としている建物が3つある。今回占拠されたのはそのうちに一つだ。 これで大丈夫だろうか。また質問があれば、こちらに頼む。
こ、困りましたわ。 これ、元に戻るんでしょうね。俺も感染しませんよね? 無傷で制圧するなら、投網、柵、檻で囲ってしまうのがよいと思いますが、問題はどうやってそこに入れるかなんですよね。
ナハシュだ。今回はよろしく。 これゴブゴブ言いながら入ったら、ゴブリンなら案外ばれねえんじゃねえのか‥?( 酒で酔い潰すなり、煙や食い物で炙りだして穴に落とすのも賛成だな。 授恵者二人についても言われてる通り普通の方法だと面倒かもしれねえが、ウォーリアとキャスターなら多少深めの穴におとせりゃ射線も届かず登ってもこれねえと思うぜ。 おびき出すにしろ何にしろ、ハリスが注意を引くのも助かると思う。 装備品に関しても鎧みたいな身に着けてるもんは難しいかもしれねえが、武器の類なら飯や酒飲んでる間に奪うこともできるんじゃねえかな。母蜘蛛糸のロープでコッソリもらうとかはできるのでは?
>授恵者ゴブリン 接近した時点で戦闘開始となる可能性が高いだろうな。 不殺に加えて極力無傷での捕縛を求められているから、既に言及されているように武具を奪う・手放させるように動くのも良い手かと思う。 >シーザーロア シーザーロアで落し穴、投網、柵、檻などの位置まで陽動する事は可能だろうか? >ヒュプノシス 暴走時に効果があるかは分からないが、一般のゴブリンに試してみるのも良いかもしれん。 >先祖返り 俺が突然ゴブゴブ状態になった時は、遠慮なく無力化してくれ……。(遠い目)
トゥーリだよ。よろしくね! ハリスさんに呼ばれて来たよ! >授恵者 ナハシュさんが挙げてくれてる通り、武器を取っちゃうのは良さそうだよね 基本的に授恵者のスキルとかって武器に依存してるし、貸し借りとかも難しいみたいだし、そもそもゴブゴブになっちゃってるならその辺頭は回らない気がする……? >おびきよせ 知性が退化しちゃってるなら、基本的には匂いかなって思うよ! 美味しそうなご飯の匂い……焼肉とか? あとはお酒とか。倉庫の中のものより、美味しそうなものが外にあるって思わせればいいんじゃないかな。 >足止め ハリスさん手伝おうか? いつもの感じで2人組組んだら、いつもの泥仕合が出来るんじゃないかな(
最初は酔い潰しや武器を盗むなどして交戦を避けつつ、いざとなれば押さえ付けて捕縛するという流れでいいんですよね? 今回はゴブリンの方が三人居ますし、紛れ込むのも酔い潰しや武器を奪うのに良いと思うんですけど、感染性なら長時間接触するのは危険でしょうか? あと、紛れ込むのならフェイクカバーでゴブリンに化けて潜入も可能です。
ヒーラーのヨル・スレイマン。宜しく。 今一ヶ所にまとまってくれているのはとてもありがたいね。時間は極力掛けないほうがいいのが大前提かもしれないな。 現行の落とし穴や煙、食べ物での炙り出しなど、いい案だと思ったな。 こっちの準備完了までに向こうが動き始めてしまう可能性を考えると、入り口に関しては1つに絞ってもいいかもしれない。裏口の方を外側から、物を積むなりして封鎖してしまうとか。 単に向こうの数が多いので、こっちが下手に分散するのを防げるしね。 潜入と武器を奪うのも面白いんじゃないかな。ゴブリンに混ざってもいいし、食糧庫は物がだいぶ多いようだから見通しも悪そうに思える。隠密できる人なら、そういう方法で入るのもできなくはなさそうだ。
リカルダ様はご回答ありがとうございます。 倉庫が一つだけですと、これ以上酒や食べ物を消費する作戦は越冬に響くかと思いましたが冒険者も持ち寄りの上、ヨルさんも触れてらっしゃるように極力早めに解決すれば何とかなりそうですかね。 流れとしてはまずは非交戦で出来ることを試みて、授恵者に勘づかれて交戦状態に入ったら多少手荒な方法を含みつつも極力無傷で無力化・拘束を目指すという形で僕も想像しています。 とりあえず穴掘り紋具は僕が一つ持参できますので持っていこうかと。 入口は確かに一つにしてしまった方がやりやすそうだとおもったので、裏口を封鎖してしまってから正面側に穴を掘った上で薄煙か濃煙と組み合わせてみますね。 それと交戦状態ならシザーロアやドラチャリが罠の引き寄せや罠に嵌めるのに使えそうだと思いました。 武装解除に関しては本人が手放すか、どなたかが手放すように仕向けてくれれば大鼬や狼を使ってその場から持ち出させることも、ペットで注意を惹いている間に奪って頂くなどの作戦も可能です。 先祖返りの伝播性の機序はまだよくわかっていませんが、先祖返りした人のエーテルにあてられて……というものなら、あまり長時間は接触しない方が良いかもしれませんね。 ただ万が一の時は他の方々と一緒に穴の中にご案内出来るよう頑張ります。
>紛れ込み では、俺はフェイクカバーでゴブリナに擬態してヒュージに接近。 隙を見てウォーリア武器をくすねられないか試してみよう。 >汎用スキル 連絡用にテレパスは持って行く予定だ。 >ナハト >>万が一の時は他の方々と一緒に穴の中にご案内出来るよう頑張ります ……万が一の時は宜しく頼む(
ナハディカルもゴブリンだろ・・?化けなくてもそのままゴブゴブ言やぁバレねえんじゃ( ならまあ同じく潜入かな。武器取りに行く奴が多ければ、どちらかというと内部を観察しつつ良い潰しや、匂いにしろ煙にしろで外におびき寄せる際のサクラで動こうかと思っている。 穴掘り紋具は同じく持っていけるから、落とし穴付近に設置は可能だ。 >感染 これについては良く分かんねえな―!なったらなったでどういう経過で先祖返りしてんのか解りそうで試してみたくもあるが、そもそも今回こっちがなるのかも分かんねえしな。 一応抵抗は高めにしていこうと思うし、壁歩きは外しておくぜ。
ゴブゴブ言ってるナハティガル君はあまり想像ができないけれどね⋯⋯。 俺は潜入はできそうにないので外に待機するよ。内部との連絡用にテレパスも持って行くね。 内部でもしも先祖返りした風であれば、その辺も事前共有できるようにしておこう。とはいえ今回はあまりなってほしくはないけども! 穴掘り紋具は持っていないし、俺は裏口の封鎖の作業をしておくことにするよ。 落とし穴については念写で見えにくくすることもできるかもしれないので、持って行っておこうかな。 スキルは今のところ、もしもの時の光縛封と試しに使ってみる用のサルベーションオールとかになるかな。
では、わたしもフェイクカバーでゴブリンに化けて潜入しますね。 酔い潰れて寝るようなら光縛呪での束縛を狙ってみます。 亜人語適性で様子を伺って、武器を奪えたらマジカルポケットに隠しておきます。 テレパスもあった方がいいと思うので、エーテルイミテイトでコピーさせて貰って持っていきますね。 戦闘になれば魔乱印と魔霞で取り押さえる時の被害を軽くするよう動きます。
>トゥーリ殿 ええ、我ら二人でかかれば高威力の魔法を大勢に連続で叩き込まれるような事がない限り確実に 絶望的な泥仕合に持ち込めるはずです!むしろそれを期待して呼びましたとも!( >作戦 ナハト殿の纏めで大筋は問題ないかと思われます。知性は低下しているようですから搦手を 警戒する必要はそうないでしょう。ただ、壁を破壊される可能性は一応考慮の程を。 私は封鎖と穴掘りが完了後、シーザーロアをリーダー格であるヒュージ殿に放ちましょう。 その後は穴にはまってくれればよし、無理なら攻撃を引き受けつつ突き落としや武装解除を 試みる事にします。シーフの皆様のスキルで事前に武装解除できるならそれが一番良さそうに 思えますが、感染性であればナハティガル殿やナハシュ殿がゴブゴブ化してしまった場合 最悪の結果になる恐れもありますね…一応は警戒しつつ、兆候が見えたら離脱するように 留意して頂ければと思います。どうしようもなければ…その、突き落とす方向で…(←
>穴掘り紋具 そういえば、ワタシあれ3個持ってるよ……( >裏口の封鎖とか穴掘り だれか、エリアサイレンスって持ってる? どうやって封鎖するかにもよるけど、直前まで作業の仕込みに発生する音とかは隠せるなら隠した方がいいと思うんだよね。視線とかは倉庫の中でご飯食べてるって話だし、そこまで神経質にならなくてもいいかな? >煙幕 これって倉庫の中で焚くんだよね? 潜入班の人にお願いしちゃっていいのかな。 >個人行動 絶望的な泥仕合だね! リヴァと、回復と反応強化持っていけば十分かな……
>裏口の封鎖 金槌で釘打ったりすると音で気付かれそうなので、他の倉庫から木箱とか持ってきて積んでしまうつもりだったね。穴掘りの方も含めて、エリアサイレンスはあれば安心だと思う。 俺は持ってないので、誰か持っていければお願いしたいな。 エリアサイレンスがある場合、倉庫に穴を開けるような作業もできると思う。 そうでない場合、煙幕策なら中側でやるのが安パイかもしれないね。
エリアサイレンスは僕も持ってないので、他の方にお願いできれば。 煙幕に関してですが、封鎖する方でない入口を侵入組の誰かが開けて下されば外からでも倉庫内に濃煙を撒くことは可能です。
>エリアサイレンス おっと、であればこっちで持って行くか? その場合潜入よりも倉庫の外で作業音を隠す動きに重点を置くぜ。
すまん。前回の発言から間が空いてしまった。 >フェイクカバー ゴブゴブ状態のヒュージ達に通用するかは分からないが、懐に入るならばゴブリナに擬態し、雄の本能()を利用した色仕掛けが有効かもしれん……と思った次第だ。← >入り口の開錠 隙を見て倉庫内から開錠を試みるつもりだ。