『征竜の巫女』と復興の象徴
真柄 葉
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シナリオID:2510
オープニング
『地に潜みし幽界樹』との激戦の末、解放に成功したこの街は、今復興のただ中にあった。
「よく来てくれたな。歓迎するぞ」
城門を越え、エスタルを訪れた30名ほどの集団を、リカルダが迎えた。
彼等はエスタルの北、居住地『イリオス』に住まう帝国北部の避難民たち。中でも、イリオスにおいて小勢力となる部族出身の者達だった。
「貴公らもご苦労であったな」
そして、避難民たちを護衛してきた兵士達に、リカルダは労いの声をかけた。
これらの兵達は、先の会議で提案された『北域巡視隊』の面々。
帝国北部に存在する人の生存域を巡視し、その繋がりを保つと同時に、治安の維持に尽力する部隊だ。隊の隊長はリカルダに北域の現状を報告すると、これから必要であろう支援策を提言する。
「――――やはり食料か。わかった、同盟領へ追加支援の要請をしよう」
魔獣やクリーパーが跋扈する帝国北域では、まだまだ安定した暮らしを営める場所は少ない。平和であった村が一夜にして壊滅するという事も、いまだに起こっていた。
そんな不安定な情勢もあり、避難民の数は減るどころか増え続けている。そして、避難民が集まれば集まる程、食糧問題が顕著になっていた。
「農耕地の試験を早々に始める必要があるな……ロルフ」
「はいはい。お傍に」
避難民の誘導に当たっていた副官ロルフが戻ってくる。
「試験場の方はどうなっている」
「そうですね。瓦礫の方は撤去は概ね完了しましたし、土地の確保も完了してますよ。ただ……」
と、ロルフは言い淀んだ。
「エーテルか」
「はい、ズタボロですよ、まったく。流石、幽界樹ってところですか」
「敵を褒めるな」
そう言って肩をすくめる副官に、リカルダは苦笑する。
「まあ、正直エーテル浄化者でも呼ばないと、いくら耕したところで作物は育たないでしょうね。ほんとすっからかんですよ」
「ふむ……エーテル浄化者か」
「将軍、誰か心当たりありませんか? ほほいっときてくれそうなエーテル浄化者。折角、瓦礫撤去したのに使えないじゃ、俺の苦労が報われません」
「お前の苦労だけではないだろう。とはいえ、すぐに招聘できるようなエーテル浄化者など……」
「やっぱいませんよね。エーテル浄化者は希少種ですし」
「いや、一人心当たりがあるな」
「えっ!! マジですか!!」
落胆に肩を落としていた副官が目を見開いた。
「手が空いていれば助けてくれるだろうが、今どこにいるのやら」
そんな副官に再び苦笑しつつ、リカルダは空を見上げた。
●山小屋
「お帰り、どうだった?」
「……手に入ったわ。効果の程はこれから見極めないといけないけど」
ようやく小屋に戻ってきたビ=ネクをヒルルクが迎えた。
「そっか、うまくいくといいわね」
「そうね。ただ薬にするのに時間がかかるから、焦っても仕方ないのだけど」
そう言うものの、ビ=ネクの瞳は不安げに揺れている。
「きっと大丈夫よ。だって、薬草には征竜さまの加護がかかっているんですもの!」
「ええ、そうであってくれるといいわね……。あ、そういえば、途中、エスタルっていう街でこれを預かって来たわ」
「うん? わたしに?」
首をかしげるヒルルクに、頷いたビ=ネク。ビッグオウムを使える冒険者と違い、相棒のオルトロスと共に徒歩での帰路を取っていた彼女は、エスタル近郊を経由してこの場所へ向かっていた。しかし、エスタルの近くを通った際、敵襲と間違われ兵を向けられたらしい。
自分は魔獣使いで、敵対の意志はないと伝え、極北帰りだという話をしたら、リカルダなる将軍が姿を現したという。
自分も極北帰りだという将軍と話をするうちに、ヒルルクの話となり、手紙を託されたそうだ。
「……ねぇ、ビ=ネク」
手紙を読んだヒルルクが名前を呼ぶ。
「……いいわよ」
「まだ何も言って無いけど!?」
「どうせ、救援要請か何かでしょ? それで、行きたいから、あのマーメイドを見てろって事よね」
「え、なんでわかるの……?」
「あなたの顔に書いてあるからよ」
「えっ!?」
そう言われ、顔をごしごしとこするヒルルクに、ビ=ネクは小さく噴き出した。
「ちゃんと見ているから、行ってきなさい。あの将軍は友人なのでしょう?」
「うん、ありがとう! すぐに用意するわっ!」
小屋の奥へと消えていくヒルルクに、ビ=ネクは「相変わらずお人好しね」と呟いた。
●地下水路
「んんん、なんで崩さんのじゃ。こんなもん、復旧する方が手間じゃろうが」
「うるせぇ! 文句言わず、手を動かせ! それがクライアントからの要望だ!」
「おい、テシマ! こっち来てくれ! クリーパーが開けた穴が見つかった!」
「なにっ!? まだクリーパーがいるのか!」
「いや、居ないみたいだが、埋めるのに手間取りそうだ!」
街の中央部にぽっかりと開いた大穴は、周囲から流れ落ちる水が溜まり、今や立派な池となっていた。そして、そんな池へ水を供給するのが、旧地下水路。
街の地下に張り巡らされた水源は、平時にも緊急時にも住民達の生命線となってきた。
先の戦いで大きなダメージを負った地下水路を、復興のシンボルとして復旧させようと、リカルダはドワーフの技術屋を招き、作業に当たらせる。
テシマと呼ばれたドワーフが、リカルダの招集に応じた技術集団のリーダーを務める人物だ。
テシマは一緒に移り住んできたドワーフ達を纏め上げ、地下水路の復旧に力を注いでいる。しかし、大きく破壊された地下水路はいつ崩れてもおかしくない状況な上に、先の戦いで幽界樹に開けられた穴がそこかしこに残っていた。
「とりあえず埋めないと話にならねぇだろ! 瓦礫を地上からかき集めて来い! 帝国軍の兵士の手も使わせてもらえ!」
テシマはすぐに仲間に指示を出すと、そこは流石職人集団、すぐに作業へ移っていく。
「はぁ、先が思いやられるな。ま、その分報酬も破格だから、頑張らないとな」
復旧作業は困難の連続。しかし、それに見合って余りある報酬があるからこそ頑張れる。
テシマはつるはしを担ぎ直し、次の現場へと向かう――。
――ピシっ……。
●農耕地試験場
ヒルルクの放つエーテルが地面に溶けて消えていった。
「……終わったわ」
周りを見れば、土が命を吹き返した……様な気がする。
「うん、生気も感じるし、これで大丈夫なはず」
ヒルルクは、遠くで見守っていた兵士達や冒険者達に浄化完了を伝えようと、大きく手を上げた――――。
――ガラ……ガラガラガラガラっ!!!!
その瞬間だった。突如、ヒルルクの身体が沈み、その足元の土壌が崩壊した――――。
解説
マスターより
リプレイ
突然足元が崩れ地面に飲まれたヒルルクに、トゥーリが悲鳴を上げた。
「どうしたの、トゥーリさ…………んんんっ!?!?」
悲鳴を聞き飛んできたハーヴィも目の前の光景に絶句する。濛々と立ち込める土煙が徐々に晴れ、全容が見えてきた。
「な……」
ヒルルクがエーテル浄化を行っていた地面がごっそり陥没している。二人は呆然と立ち尽くしながらも、懸命に頭を回転させた。
「「救助!!」」
声が重なる。
「ワタシは救援を呼んでくるね!」
「僕は現場の状況を確認するよ!」
二人はすぐさま行動に出た――――。
●
「「あの子は道を歩けばトラブルに巻き込まれる星の下にでも生まれたのか……」」
トゥーリに呼ばれ現場に向かうルチル・プルメリア・グレイハーツとヴィルヘルミナの嘆きがハモった。
「シンクロしてる場合じゃないよっ! ヒルルクさんだけじゃなくて地下にはドワーフさんたちもいるみたいなんだよ!」
「技師たちも巻き込まれたのですか」
「ふむ……ヒルルクだけなら(頑丈だから)それほど心配していなかったが、ドワーフ達がいるとなると急がないといけないね」
先行するトゥーリの後を追い、二人も駆け出す。
トゥーリが二人を連れて現場に戻れば、既にエルゼリオ・レイノーラとトーラも駆けつけていた。
エルゼリオとトーラはスキルを駆使し、崩落現場の捜索を始めている。
「……いました。中心辺りですね。これはたぶんヒルルクだと思います」
「うん、ヒルルクさんは崩落現場の上に居たらしいし、多分間違いないと思う」
「あと、崩落した場所の左右にいくつか反応が」
「それはドワーフさん達かな。詳しい場所を教えて」
トーラの【宗波】で要救助者の居場所を探り、エルゼリオがすぐに地図を作成した。
「お待たせしました。どんな感じです?」
「ヴィルヘルミナさん、いい所に。ここなんだけど……」
「ふむ……地下水道の地図と照らし合わせると、抜けなくはないですね。ただ、現場自体の耐久度が気になる所です」
共に【地質学】【建築・土木】の知識を持つエルゼリオとヴィルヘルミナが、話し合いながら救出の方向性を探る。
「ドワーフの技師たちは生きていそうだ。『マーク』に動きがある」
「でも、脱出は無理っぽいです。今は隙間に逃れているみたいです」
ルチルが【捜波】で確認した生存者の状況と、トーラが【宗波】で調べた地形状況を二人に伝えた。
「ヒルルクさんは?」
「場所は確認しました。生存も」
エルゼリオの問いにトーラは神妙に答える。
「ヒルルクがいくら頑丈とはいえ、生き埋め状態だ。あまり悠長な事は言っていられないよ」
「崩落した瓦礫の量から見て、撤去は簡単じゃありませんし……」
「わかっています。ですが救出は時間との勝負ですので、ここは二正面作戦で行こうと思います」
ルチルとトーラに応えるように、ヴィルヘルミナは地図を指す。
「二手に分かれてヒルルクさんとドワーフ達、それぞれ同時に救出作戦を敢行します」
「でも、人手が……」
辺りを見回し不安げに呟くトーラに、二人は「大丈夫」と声をかけ後ろを振り向く。
「お待たせっ!」
そこには道具を満載した馬車をひくハーヴィと兵士達が居た。
●
帝国の兵士達と共にドワーフ達の救助の準備を進めるのは、エルゼリオ、ハーヴィ、トゥーリの三人。
「ドワーフさん達が避難している場所が複数あるから、出来るだけ効率的に動いて行こう。トゥーリさん、お願いできる?」
「うん、任せてよっ!」
エルゼリオに言われ、トゥーリは手近な資材の隙間に体を収めると、すっと瞳を閉じる。
「……よし、それじゃ作戦開始だよ!」
一方、ヒルルク救出に当たるトーラ、ルチル、ヴィルヘルミナの三人は、大量の瓦礫に埋まった地下水道を見つめていた。
「さっきから動いてないんですよね。動けないのか気絶しているのか……」
「捜波にかかるなら死んでいませんよ」
【宗波】でヒルルクの居場所を絶えず観測するトーラは、物騒な物言いで応えるヴィルヘルミナに渋い顔を作る。
「ラト、行っておいで。もし意識があるのなら、安心させてやりな」
ルチルが相棒のラトの分身を放ち、瓦礫の隙間を走らせた。
「……駄目だね。これ以上進めない。別ルートを探すよ。トーラ、調べてくれるかい」
「はいっ!」
分身は瓦礫の隙間を器用に進んでいたが、ヒルルクが居た場所が農耕地試験場だったことが災いした。瓦礫だけでなく、大量の土砂で埋まり、分身の小さな体が通る隙間すらない。
「並行して瓦礫の撤去を行います」
ヒルルクへのルートを探る二人とは別に、ヴィルヘルミナは兵士達と協力して慎重に土砂の撤去を始めた。
「トーラさん、二次崩落がありそうなら知らせてください」
「わかりました!」
「グレイハーツさんも、崩落に備えて少し離れた場所でリンクを」
「ああ、そうさせてもらう」
二人に指示を出し終えたヴィルヘルミナは、改めて兵士達と共に作業に当たる。
●
「――――ただいまっ! えっと、1番の所は2mくらい西側がいいかも!」
「わかった、ありがとうトゥーリさん! ハーヴィさん、3歩右へ移動して!」
突然目を開いたトゥーリの進言を聞いたエルゼリオがすぐにハーヴィに指示を出した。
三人の救助作戦は――――トーラやルチルが割り出した要救助者の位置へ、トゥーリが【幽体離脱】で霊体を飛ばし、内部から状況を確認。報告を受けてエルゼリオが細かい指示を出すというもの。
「この辺りだね。よし、皆さん、少し離れててくださいっ!」
ハーヴィは兵士達に退避を促した。
地下水道まで人力で掘り進めては時間がいくらあっても足りない。少々強引でも時間を優先させる必要があった。
「それじゃ、えぐり取るね!」
ハーヴィはエルゼリオに指定された位置を視界に捉えエーテルを練り上げると、出来るだけ地下水道にダメージが伝わらないよう地面表層だけを【爆炎】で吹き飛ばした。
「流石、ハーヴィさん! それじゃ掘り進めよう! 崩落の危険があるので必ず命綱つけてね!」
やってきたエルゼリオがすぐに細かな指示を出し、兵士達が一斉に掘削作業に入る。
「うまくいきそうだね」
「うん。この調子なら日が暮れるまでには終わりそう」
「残りは……あと4カ所、かな?」
「うん。トゥーリさんがそろそろ戻ってる頃だと思う。この指示は任せるね」
「うんっ」
エルゼリオはハーヴィに現場指揮を任せ、霊体を飛ばしているトゥーリの元へ戻った。
●
「二次崩落に注意して、慎重に瓦礫を撤去しましょう。いくら頑丈でも、潰れない保証はありませんので」
「並行して足場の構築だ。土砂防止の縦板と足場用の横板を組み合わせるんだ」
救助計画に沿い、ヴィルヘルミナとルチルが兵士達に指示を出した。
兵士達は二人の細かな指示の元、役割分担し救助に当たる。
「ヒルルク! 聞こえたら返事してください!!」
瓦礫の撤去作業が進む中、トーラは絶えずヒルルクの位置を確認し、声をかけていた。
だが、相変わらずヒルルクから反応らしい反応が返ってこない。
「トーラさん、どんな様子ですか」
「ダメです。返事がありません」
「捜波のマークはどうですか?」
「ちゃんとついてますよ!」
「……わかりました。瓦礫の撤去が進んで隙間ができるかもしれません。変化があったら教えてください」
思わずムキになるトーラに目礼し、ヴィルヘルミナは再び撤去作業へ戻っていく。
「あまり虐めてやるんじゃないよ」
「そんなつもりはないんですが……」
戻ってきたヴィルヘルミナにルチルは苦笑する。
「そうかい。それで、瓦礫を利用して坂を作る場所はここでいいかい?」
「そう、ですね……」
ルチルに言われ、ヴィルヘルミナが改めて現場を見る。
人手は居るといっても、瓦礫の撤去、補強、搬出と、複数の作業を並行して行っている為、作業速度は決して早いとは言えない。
「あちらの方はどんな感じですか? 結構派手にやってますけど」
「一応、応援が必要なら言ってくれとは言っている。要請がない所を見ると、うまくいって――――」
「ルチルさん!!」
二人がドワーフ救助に当たる仲間達の状況を確認していたら、トーラが大きな声を上げた。
「どうした、ヒルルクが動いたか!」
「いえ、隙間を発見しました! ラトちゃんをお願い出来ますか!」
「ああ、すぐに行く。ヴィルヘルミナ、指揮を任せる」
「はい」
ヴィルヘルミナの了承を取り付け、ルチルはトーラの元へ急ぐ。
「あれです。あの穴から入っていけます」
トーラが指差した場所には、丁度栗鼠が入れるほどの小さな穴がある。
「繋がっているんだね」
「はいっ」
トーラが頷くのを見て、ルチルは再びラトの分身を放った。
分身は薄暗い瓦礫の隙間を慎重に進んでいく。瓦礫の上から聞こえるトーラの指示を頼りに、進む事数分――――。
「……見つけた」
分身はようやく目的地に到着した。
「ヒルルクは……ヒルルクは無事ですか!」
「……ここからじゃ顔を確認できないが、体温はある」
「まさか、頭が埋まってるんですか!?」
「いや、もしそうなら既に窒息している。上半身にも隙間があるんだろうね。トーラ、そっちに行くルートはないのかい」
「……駄目です。見つかりません」
ルチルに問われトーラは【宗波】を放つが、すぐに首を振った。
「そうなると空気が心配だね。撤去作業を急がせよう」
ルチルは上から見つめていたヴィルヘルミナへ、目で合図を送る。
●
「負傷者はロープで引っ張り上げてください!」
最前線で指揮を執るハーヴィは、自ら地下水道に潜り、ドワーフたちに応急処置を施すと、後方に下げるように指示を出した。
「特に怪我の酷い人は、エルゼリオさんに見てもらって!」
兵士達の力を借り、怪我を負ったドワーフ達が次々と助け出されていく。
エルゼリオは次々と運ばれてくる負傷者を治療しながらも、全体の指揮に当たっていた。
「……ふはっ!」
そんな彼の元へ、幽体で次のポイントを探っていたトゥーリが還ってくる。
「お帰り、どうだった?」
「えっと、最後のポイントがとっても厄介な感じだよ。周りに水路が無くて完全に行き止まり。一から掘るしかないかも」
「一からか……表層は魔法で弾くとしても、その下が問題だね。結局手作業になるから、時間が……あ、そうだ!」
と、エルゼリオは何か思いついたのか、負傷者をトゥーリに託し、急いでハーヴィの元へ向かった。
「ハーヴィさん、最後のポイントが厄介なんだ! アレを使わせてもらえる?」
エルゼリオはロープを伝ってきたハーヴィに手を差し伸べる。
「ありがと! 最後は厄介な場所だったんだね。もちろん大丈夫だよ、すぐに用意するね」
その手を取り地上へ上がったハーヴィは一息入れる間もなく馬車へと駆けて行った。
程なくして馬車を引いて戻ってきたハーヴィは荷台から穴掘り用紋具『グレイウォッシャー』を下ろすと、地面へとセットする。
「それじゃ起動させるね」
ハーヴィは周りに居た人達を退避させると、起動スイッチを押した。
紋具にエーテルの灯がともり、微細な振動音を響かせ掘削を開始する。兵士達も一緒に見つめる中、数分後、直径1m程の縦穴が開いた。
「終わったみたい。ちょっと調べるね」
紋具の停止を確認したハーヴィは、調査の為、穴へ【エンライト】の光を向ける。
「大丈夫そう。それじゃ行くね!」
ハーヴィは自らの身体にロープを結び付けると、あいたばかりの穴へ身を投じた。
●
「ヒルルク! ヒルルク、しっかりしなさい!!」
的確な救出作業の結果、ヒルルク救出は成った。
「息はしている……とにかく、あまり動かさないように地上へあげるよ」
しかし、土砂に塗れたヒルルクの意識はやはりなく、ルチルはすぐに地上へ引き上げるよう指示を出した。
兵士達はロープを結び付けた担架にヒルルクを乗せると、上で待つヴィルヘルミナに合図を送る。
担架の両端に取り付けられたロープが慎重に引かれ、ヒルルクの身体が徐々に上がっていく。
「退避するよ。ここもいつ崩れるかもしれない」
担架をはらはらと見つめるトーラに声をかけ、ルチルは担架の後を追った。
「外傷はそんなにひどくないね。すぐに治すね」
駆け付けたエルゼリオがすぐにヒルルクへヒールをかけると、崩落で負った傷がみるみる消えていく。
「ヒルルク、水ですよ。飲めますか」
怪我の治癒を待って、トーラが水筒をヒルルクの口に当ててやった。
仲間達が見つめる中、ヒルルクは口端から少しこぼしながらも喉を鳴らす。
「……ん」
しばらくするとヒルルクの目がゆっくりと開いた。
「ヒルルク、大丈夫ですか」
トーラはヒルルクの手を握り、顔を覗き込む。
「トーラ……」
「そうです、トーラですよ。ヒルルク、大丈夫ですか」
「ん……」
トーラの呼びかけに、ヒルルクは小さく頷いた。
「よかった……本当に」
意識を取り戻したヒルルクを少し離れた場所で見つめていたハーヴィは胸を押さえ安堵した。
すぐにでも彼女の元へ駆け寄りたい気持ちもあるが、それは全部終わってからだと自分を律し、ハーヴィは負傷者の元へと戻っていく。
「そんな事になってたんだ」
エルゼリオにかけてもらったブランケットで冷えた体を温めながら、ヒルルクは事の顛末を聞いた。
「今回はヒルルクのせいじゃないとは言っても、びっくりしましたよ」
ようやく生気を取り戻した友人にトーラ微笑みかける。
「うん、わたしもびっくり……って、今回はってどういう意味よ!」
「……わたし、そんな事言いました?」
「言ったっ!」
とぼけるトーラにむきになるヒルルク。
「あはは、流石征竜の巫女だね。頑丈でよかったよ」
いつもと変わらない二人のやり取りに、エルゼリオは目を細め、安堵の軽口を漏らした。
●
「これで全員、かな?」
「かな?」
「ああ、全員だ。助かった、礼を言う」
救出されたドワーフ達にヒールをかけ終えたトゥーリとハーヴィが同時に汗を拭う。
長であるテシマが二人に頭を下げた。
「それにしても、この崩落の原因は一体何だい。ヒルルクのエーテルが作用した……とは考えにくいから、先の戦いの傷痕か原因かと思うが」
と、そんなテシマにルチルが問いかける。
「だろうな、エーテル浄化は多分関係ないと思う」
「ふむ……やはりそうか。ならば別の場所でも崩落事故が起こる可能性が高いという訳か」
「ああ、予想以上にダメージがでかい。地下水道を残すにしても、天井は抜いたほうがいいかもしれないな」
「なるほど。その件はリカルダへ進言しておこう。一先ずは体を休めてくれ」
ルチルに言われ、テシマは頷いた。
こうして、突然の崩落事故は冒険者達の迅速な行動によって、死者・行方不明者を出すことなく解決する。
一歩進めば二歩下がるエスタルの復興は、まだ道半ばであった――――。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人
2022年10月12日 10時14分26秒 公開
相談掲示板
トーラです。 復旧のお手伝いに来たら大変なことになりましたね……。 急いで生き埋めになった人を助け出さないとです! とりあえず宗波を持っていって、捜波での捜索と探波で崩落した場所の調査をやろうと思います。
キャスターのハーヴィだよ、宜しくね。 現場はかなり広範囲だね……急いで助けないと。 僕が出来そうなことは、救出した人を担架に乗せて運ぶとか、崩れた瓦礫を魔法で破壊して撤去するとか、ヒールで回復とか……。 後はアイアンウォールとかで足場作りも出来るかな? 汎用スキルの透視やサーマルアイで探すのも一つの手かなと思ったりだけど、シーフやシューターの探索スキルの方が優秀だと思うから、あくまで補佐的な使用用途になるね。 有用そうなら、どっちか取ろうかなって思ってるけど、どっちが良いかなぁ。
情報屋のルチルだ。よろしく。 やれやれ、あの子は道を歩けばトラブルの種とぶつかる星の下にでも産まれたのかね……とボヤいてもしょうがないか。 ああ見えてヒルルクはかなり頑丈だ。鉱夫達も怪我はないようだから早々悲観するような状況でないが、時間経過で崩落が進行するのもまずい。なるべく急いだ方がいいだろう。 偵察なら捜波もあるし栗鼠の身体なら細い隙間を狙って崩落した地下水路内に入っていく事もできそうだ。 さて、「サーマルアイ」と「透視」のいずれかを持って行くという話なら透視に一票を。確かサーマルアイは厚い壁に阻まれると上手く探知できなくなる記憶がある。 後は場所がわかったとして、どう救出するかだね。 必要な道具は借りれるようだがヒルルクの落ちた所から足場を作って掘り下げていくか、それとも鉱夫達の使った水路を追って掘り出すか……。 この場合は上から掘っていく方が良さそうに思えるが。
ヴィルヘルミナです。今回はよろしくお願いします。 とりあえず私は地質学をセットしていこうかと。場合によっては崩落が拡大する恐れもあるので察しやすく。 あとは障害の撤去が必要になった場合を考えてハンマーブレイクを。ウォーリアは他に活かせそうな特性も少ないですし。 他は崩落現場が暗い場所に繋がっているなら暗視とかですか。 ヒルルクさんは生き埋めになっているようなので、どう居場所を察知するかですね。 何がしかの原因で流されてなければ、元居た場所の近くにいそうではあるのですけど。
トゥーリだよ、よろしくね! 助けなきゃいけない人数も多いし、大変そうだね。居場所を特定したらある程度は地道な掘削が必要になりそうかな。二次被害的な崩落とかはなるべく避けたいよね。 ちょっと遠回しになりそうだけど、既に状況は分かっているところからのスタートだし建築・土木を持っていこうかな。あとは超聴覚とかにしようかな……既に挙がってるスキルと被ってもしょうがないよね。
ヒーラーのエルゼリオ・レイノーラです、どうぞヨロシクね。 ――ヒルルクさんは見た目に寄らず頑丈だし、大丈夫だとは思うけど…… 一刻も速く救出しないと……! >汎用スキル とりあえず、ボクは「地質学」or「透視」と「建築・土木」(掘削用)を持って行こうかと考え中。 >救出 かなり地盤が緩んでそうだし、二次崩落が起きないよう慎重に掘削しないとね。 ボクもルチルさんが述べてるように、上から掘っていく方式が良いかな?って思う。
ルチルさん、アドバイスありがとう! そしたら「透視」を持って行こうかな。 もう1枠は悩むところだけど、透視した先が暗かったら見通し難いんじゃ……ってとこで「暗視」か、ヒルルクさんを発見し易くする可能性に賭けて「幸運の星」辺りかなって考え中。 今のとこは暗視で考えてるよ。 僕もルチルさん案の上から掘ってくのに賛成。 後はトゥーリさんの言う通り、地道に掘削していくしかないかな……ってとこで、王国メダルで交換出来る穴掘り紋具「グレイウォッシャー」を使うのはどうかなって考えたんだけど、どう思う? 交換ポイントは貯まってるから届けばすぐ使えるけど、シナリオ内で一度しか使えないからちょっと悩みどころでもあって。 掘る場所に関しては探索結果やみんなの地質学に頼りたいなって思ってる。 ヒルルクさんの居場所はヴィルヘルミナさんの言う通り、元居たところの近くにいる可能性は比較的高いと思うな。 ヒルルクさんの浄化の様子を見ていた人がもし居れば、そこからある程度推測は出来るかも。
ドワーフの方々とヒルルクさんのいる位置はちょっと離れていそうですし、 並行して救助作業を行うなら先にどちらを受け持つか各人で決めてもいいかもしれませんね。 人数や崩落後の状況が異なるので、どう割り振るかは考える必要がありますが。 あと負傷者もいそうですし、ヒールを持っていきます。 私は救助作業を優先すると思いますので、応急処置程度になりますが。 あとはロープでも持っていこうかと。
ヒルルクには迷子紐を結んでおくべきでしたか( わたしは捜波の精度を上げるための看破と、物をどかすのに使えそうなマジカルポケットを持っていきますね。
>グレイウォッシャー 実際に使っている所を見た事はないけれど、今回は地盤が緩んでいるから掘削時の衝撃や振動が強い場合は二次崩落を誘発する危険性もあるかな、と。 使用できるなら便利だとは思う! >行動 「建築・土木」と「地質学」で地盤の状態を調査(グレイウォッシャーを使っても大丈夫かどうか等)&掘削予定。 念の為、負傷者回復用に「リヴァーオブヴァイタル」と「サイドヒール改」「ヒール2&3」を持って行くね。
グレイウォッシャーが使えたら便利とは思うが、エルゼリオの指摘通り二次崩落の危険は否めないね。 まあ、できなかった場合でも周囲には人手(帝国兵士)がいるわけだ。効率よく掘削作業ができる手筈を整えておくのがいいだろう。 汎用スキルはちと考え中だが、最初に言った通り現場の偵察をメインに進めていくとしよう。 闇雲に掘り出して崩してしまうのも問題だろうしね。
>グレイウォッシャー なるほど二次崩落か……確かにその危険性はあるな。 アイテム交換は出来たから一応持って行って、調査結果次第で使用有無を決めるようにしとくよ。ヤバそうなら使わない方向で。 エルゼリオさんとルチルさんは助言をありがとう。 >個人行動 要救助者捜索&掘削の補助活動をメインにしとこうと思う。グレイウォッシャーが使えるならそれで、使えなければ魔法で削りつつ、要救助者を見つけたら引っ張り出したり、必要なら担架で運び出すイメージ。 足場が足りなければアイアンウォールを足場代わりにしたり、ロープを使って引っ張ったりもしようと思ってる。あとヒールも持って行くね。
>二次崩落 探波で崩れた箇所を調べるつもりなので、グレイウォッシャーを使って大丈夫そうな場所があれば伝えるようにしますね。 スキルはエアーライドを持っていって、余分な重量をかけず移動できるようにするつもりです。 それと、ミニビヒモーのムームーを連れていくので、重量物を引き上げたりするのを手伝ってもらいますね。