【学祭】休憩室でちょっと一息を
夜月天音
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シナリオID:2455
オープニング
パンクリアース学園に毎年恒例の学園祭の時期がやって来た。
今年の学園祭は貴族の推薦無しで入学した冒険者達もおり、大いに賑っている。
強制参加ではないにも関わらず、様々な出し物が学生達を楽しませる中、テーブルや椅子が並び、幾つかのカードゲームやボードゲームが用意された休憩室も賑わっていた。
出し物を回り疲れた学生、裏方の仕事に疲れた学生、サボりに来た学生、飲食をする学生と、休憩室を利用する学生の顔ぶれは種族も性別も様々であり今年のテーマ『各国文化の理解』にぴったりの様相であった。
休憩に訪れた学生は、
「はぁぁぁ、疲れたぁ。案内にも飲食してもいいってあったし、お菓子を食べてからクラブの手伝いに戻ろう」
1人で過ごす者もいれば、
「わぁ、それ、どこの出し物なの?」
「これはね……」
学園祭の話をきっかけに新たな出会いを結ぶ者もいた。
出会いを得たり疲れを癒した学生達は去り、疲れを抱えた新たな学生が訪れる。
今年の学園祭は貴族の推薦無しで入学した冒険者達もおり、大いに賑っている。
強制参加ではないにも関わらず、様々な出し物が学生達を楽しませる中、テーブルや椅子が並び、幾つかのカードゲームやボードゲームが用意された休憩室も賑わっていた。
出し物を回り疲れた学生、裏方の仕事に疲れた学生、サボりに来た学生、飲食をする学生と、休憩室を利用する学生の顔ぶれは種族も性別も様々であり今年のテーマ『各国文化の理解』にぴったりの様相であった。
休憩に訪れた学生は、
「はぁぁぁ、疲れたぁ。案内にも飲食してもいいってあったし、お菓子を食べてからクラブの手伝いに戻ろう」
1人で過ごす者もいれば、
「わぁ、それ、どこの出し物なの?」
「これはね……」
学園祭の話をきっかけに新たな出会いを結ぶ者もいた。
出会いを得たり疲れを癒した学生達は去り、疲れを抱えた新たな学生が訪れる。
解説
休憩室でゆっくりと過ごしたり誰かと交流したりさぼりをしたりなど、違った感じで学園祭を楽しんでみて下さい。
【休憩室について】
教室の前に飲食可能の案内板が設置されています。
室内にはテーブルと椅子が並んでいます。
カードゲームやボードゲームなどが幾つか用意されています。
【用意されているカードゲームとボードゲームについて】
下記以外にも様々な種類が用意されています。
・トランプ
・かるた
・すごろく
・リバーシ
・チェス
【活動について】
下記は活動例になります。
他の利用者の迷惑にならない事でしたら下記以外の活動も可能です。
・屋台で買ってきた料理を持ち寄って友人と食べる。
・人間観察に勤しむ。
・出演する劇や朗読などの出し物の練習を行う。
・他の利用者に声を掛けてカードゲームやボードゲームを行う。
※お好みの活動時間やこういう学生と交流したいなど、希望などがありましたら、プレイングに記載をお願いします。
※休憩室の利用時間は朝から夕方までになります。
※公式NPCとは交流出来ません。
マスターより
オープニングを読んで頂き、ありがとうございます。
賑やかに出し物を回るのもいいですが、ちょっと一休みを楽しんでみるのはいかがでしょうか。
リプレイ
よく晴れた午後、パンクリアース学園では毎年恒例の学園祭が開催されていた。
賑わっているのは、催しものだけなく休憩室も例外ではなかった。
「……休憩がてら人間観察でもするかな」
あちこち学園祭を見て回っていたサイラスは、休憩やらなんやらで休憩室に入った。
そして、
「結構、人がいるな」
店内をぐるりと見回し、盛況ぶりに感心した。
(まあ、この威圧感ある外見だから人はよってこんやろ)
サイラスは適当な席に座り、気兼ねなく人間観察を始めた。
最中。
「……ごみはごみ箱にだ」
目についた誰かが置きっぱなしにしたごみを捨てたり、
(ん、異種族生徒差別……これは踏み込まない方が賢明だな)
聞かぬがよい話には、すぐに耳と目を逸らしたりとむやみやたらな観察はしない。
「ただ見ているのもあれだし、ちょっと曲でも演奏するか」
手持ちぶさたが堪らないのか、サイラスはハープの竜花琴を爪弾き始めた。
(ここは静かめな曲がいいだろうなぁ。激しい奴とか空間に合わん、リラックス出来る環境作らんと、何よりうるさいと話が聞こえない)
選曲は穏やかさと優雅さを持った曲だ。ただし、音量は情報収集継続のため小さめに。
演奏の評判はというと、
「まさか休憩室で生演奏が聞けるなんて」
「…………いい曲」
「見た目怖そうなのにこんな素敵な曲を演奏しているなんて」
見事な演奏技術もあってか、上々であった。中でも外見とやっている事のギャップに対する反応が多かった。
もちろん、好感触な反応ばかりではなく、
「うわぁ、嘘だろ」
「同じ空気、吸うとか耐えられん」
明らかに差別的な反応を示す者もいた。
(…………顔は覚えられないが、身に着けているブローチの模様は家紋か。調べとかないとな。差別主義的な奴のとこの仕事受けさせられそうになったり押し付けられたりされると色々と面倒だし……後王国問題多いし)
自衛も兼ねているためチェックは怠らなかった。
(ふむふむ、貧富は関係ないな。どこも問題は同じといった感じか)
最近の問題や家の愚痴といった些末な内容にも耳を立てる。超聴覚を持つサイラスにとっては、内緒話も明瞭に聞こえる。
そうして情報収集をする中、
(……あれは……折角だ)
知った顔がゲームに興じている事に気付いたサイラスは、話に耳を傾けるついでにゲームに合った音楽を静かに奏で、自分なりにのんびりと休憩を満喫した。
「へぇ、結構面白そうなゲームがあるじゃねぇか……これは遊んだ事ねぇな」
サボりに来たナハシュはゲームを物色。初めて見るかるたに興味津々。
「なぁ、折角だから誰か遊ばねぇか?」
ゲームの種類を把握した所で、ナハシュは室内に呼びかけ参加者を募った。
すぐに人が集まり、
「ナハシュだ! サボりに来た」
まずはナハシュから自己紹介だ。
「2年のエフィルミアです! よろしくお願いしますっ。私はサボりに来たわけじゃないですよ! ちょっと休憩しにきただけですっ」
エフィルミアは挨拶をしてから、
「あ、林檎飴食べます? 新しいのありますよ?」
手にある新しい林檎飴を差し出した。ちなみに食べかけは口の中だ。
「……おいしい……あの、ミゼリア・L・ステュクスといいます……よろしくおねがいします」」
甘い物が好きなミゼリア・L・ステュクスが恐る恐る受け取り少し齧った後、自己紹介を行った。偶然休憩室に入室し、黙々と屋台で購入した物を食べていた所だったのだ。
「2年の海神・江流だよ。見ての通りのシャルガネ出身。去年、編入試験で入ったんだ。よろしくね」
「ガルシアです。よろしくお願いしますね」
江流と隣のガルシアが続けて自己紹介を行った。
こうして、名乗りが終わった所で、
「で、何する? 複数人で遊べるかるたとすごろくとかどうだ?」
ナハシュが皆に挑戦するゲームを訊ねた。
「げぇむ……ですか? 私帝国にいた頃もそのような事はあまりしてこなかったですから……私でも出来るでしょうか?」
ガルシアは、珍し気にゲームを物色する。
(ひとりであそぶのも……だれかにこえをかけるのも……ためらいがあって……)
ミゼリアは、食事中ずっとゲームに興味津々だったのだ。
「まずはすごろくやかるたでもやってみるかい? シャルガネの正月っぽいが」
江流は、すごろくとかるたに親しみの眼差しを注ぐ。
「かるたかぁ……ルールがなぁ」
ナハシュは、興味はあれどルールが分からないため、反応が鈍い。
「それなら任せてよ」
最もかるたに馴染みがある江流が、ルール説明を始めた。
「読み札と取札があってそれぞれ対になっている。読み役が読んだものと同じ取札を取っていって、沢山取れた人が勝ちだ」
江流は持てる話術を上手に使い、初心者にも理解しやすいよう簡潔に説明をした。
「……かるた、できそう……」
見た目よりも中身が幼いミゼリアは、かるたが思いのほかルールが簡単な事に安堵。
「簡単そうですね。なんとかいける気がします!」
ガルシアもやる気満々だ。
「まず、取り札を切ってから机に並べようか」
江流が動くよりも先に、
「切るのは任せて下さい」
ガルシアが自信満々に太刀である結刀の紅夜を抜こうとした。
「いやいや、そうじゃなくて、混ぜるって事なんだけど」
江流が慌てて止めて、言葉を変えて言い直した。
「あ、そういう事でしたか。今度こそお任せ下さい」
無事に意味が通じたガルシアは太刀から手を離し、取札を混ぜて机に並べた。
何とかかるた遊びの準備が整い、いよいよ開始だ。
(見た所、ナハシュさんとミゼリアさんとガルシアさんは初心者ですから、ここは、慣れるまで3人がある程度取れる様に譲りましょうか。3人の初めてのかるたが楽しかったーって、なるようにしたいですし)
エフィルミアは取札を確認する初心者3人を見て、余裕の面持ちだ。
「最初は俺が読もう」
江流は、1枚目を朗々と読み上げた。
「はぁぁあ、そこです!!」
まるでチャージングを発揮させたかのようなガルシアが、凄まじい勢いで目標の取札に手を伸ばした。
「うぉっ、すげぇ勢いだな」
「……!?」
あまりの勢いにナハシュとミゼリアは驚き、言葉が無い。
「これですよね」
ゲットした取札を見せつけ、ガルシアは誇らしげな顔だ。
「お見事です」
エフィルミアは称賛の拍手を送った。
この後も、江流は次々と読み札を読み上げていった。
その度に熱き戦いが繰り広げられた。
「……とりました」
何とか取札を取るミゼリア。
「取ったぞ!!」
自信満々に取札を取るナハシュ。
「はぁぁあ!!」
ガルシアは、勢いのあまり取札を弾き飛ばしてしまうほどだ。
「すげぇ速かったけど、それ違うんじゃねえか」
ナハシュがガルシアが勢いと共に取った取札がはずれだとツッコミを入れると、
「……あの……これ……」
ミゼリアがそろりと正しい取札を手に入れて、見せた。
「あー、それですね。まあ、体が動かせて楽しいからよしですよ」
ミゼリアが示した取札を見たガルシアは、悔しさよりもやり切った感が凄い。他の3人に比べてお手つき3回に2回くらいあるが。
(……音楽が変わっている……こちらに合わせてくれているのか)
江流はふと、室内を満たす音楽の変化や奏者が顔馴染みだと知った。
(3人も慣れてきたようですし、そろそろぼこぼこにしましょうか)
エフィルミアは3人の戦果を確認した後、可愛い微笑みを浮かべた。ちなみにここまでの戦果は手加減したため下位である。
「エフィ、どうかした?」
エフィルミアの様子に気付いた江流が訊ねた。
「いえ、かるたあるあるを思い出しまして、小さい頃に上の兄弟にボコボコにされて大泣きするとか」
エフィルミアは愛らしく笑うだけで、胸中の作戦は内緒だ。
「それはすごい戦いだね」
江流は微笑まし気に言った。
しかし和やかな話が終わった瞬間、
「はっ!!」
エフィルミアは、超視覚で並んだ札を全て視認し、持ち前のスカウトの心得を活かして次々と取札を狩っていった。お姫様のような外見からは想像出来ない容赦のなさだ。
「すげぇ」
「…………はやい、です」
ナハシュとミゼリアは感心するばかり。
「負けませんよ!」
ガルシアも果敢に攻めていく。
結果、1位を取ったのは、
「私の勝ちですっ!」
エフィルミアであった。
次に挑戦するゲームはすごろくだ。
「すごろくは……」
ルールを説明しようとする江流を遮って、
「あれだろ、サイコロ振って出た数だけ自分の駒を進め、止まったマスに書かれた効果で一喜一憂すんだよな。で、最初にゴールした奴が勝ち!」
ナハシュが簡潔にルールを説明した。
「…………むずかしそうですね」
ミゼリアは、すごろくのマスに記載されてる指示に不安げだ。
「大丈夫だって、分からねぇことがあったら俺達に聞いたらいいさ」
「そうですよ。遠慮なく聞いて下さい」
ナハシュとエフィルミアが心強い言葉でミゼリアを励ますものの、
(イカサマはしねぇが手加減もしねぇけどな)
(運ゲーですから手加減も何もないですが、私のダイス力を見せつけますよ)
内心は闘志で燃え滾っていた。
とにもかくにも、すごろくが始まった。
「では俺から」
馴染みがある江流からだ。
「行きますよ」
お次は、ガルシアだ。
続いて、
「次は俺だ。負けても勝っても恨みっこなし! いくぜいくぜ!!」
ナハシュ。
「唸れ私のダイス力!」
エフィルミア。
同時に、
(次はすごろくか。ならば……)
室内に流れるサイラスが奏でる音色も変わっていた。
「……えと……ダイス、おねがいします」
ミゼリアは皆に倣い、そろそろとダイスを振って駒を進めた。
そうして、順番にダイスを振って出た数に合わせて駒を進め、書かれている内容に従っていく。
すごろく開始と同時にお喋りが花咲く。
「ところで、ナハシュ君は生徒会選挙に出るんだっけ。何か狙いがあったりするのかい?」
江流は、気になっていた事を訊ねた。
「あぁ、もちろんだ。まず1つ目、多文化クラスから候補者を出せば多文化生徒が選挙戦に関わる動機を作る。2つ目は、ついで貴族派、王党派に流れるかもしれない浮遊票を可能な限りいただけたらなと、3つ目は、ゴブリンかつ週1登校なんてふざけた公約掲げた奴が役員になることを快く思わぬ学生も多いかなと、それなら立候補して勝てって事で」
ナハシュは指を1本ずつ立てながら、最後は3本立ててしっかりとした信念を語った。
「まあ、貴族にしろ王党にしろ現状より差をつけるなら浮遊票はいる筈だ。その殆どをかっさらってやったら、それはそれで面白ぇだろ? 気に食わねえってんなら誰かがやると思ってねえでガンガン立候補してきてほしいもんだなぁ! っはははは!!!」
思いのたけを言ったナハシュは、最後に笑った。
「そういう狙いがあるって知ってたら、立候補前に学園派に勧誘したのにー、まあ、無派閥でも立候補してくれるのは嬉しいんですけど!」
エフィルミアは頭を抱えて大袈裟な反応だ。
「エフィは今年はどうするの?」
江流が訊ねた。選挙の話がいよいよ賑やかになる。
「え、私ですか? どうでしょう……友人が会長に立候補してるので、それは全力応援という姿勢なんですけど! 私が立候補するかは、まだ悩んでるのですよね」
エフィルミアは予想外だったのか、むむむと難しい顔をしたが、
「今立候補してる人、誰が当選しても良い学園になるのは間違いないですし。ここまで立候補が出るほど学園が変わってくれた事で満足しちゃってるというか! エルさんが立候補するなら勿論応援しますよ!」
学園の将来は心配はしておらず、希望を抱いているようだ。
「お前も立候補すんの?」
今度はナハシュが訊ねる番だ。
「まあ、俺も考えてみてもいいのかもな……学園内の冒険者の立場が良くなれば自分にもメリットの有る話だし。それに……」
江流は前向きな答えだ。
(あの娘の隣に立つなら、王国での実績は少しでも多い方がいい。今はその先は、全く見えないんだが……この面子での競い合いならそれ自体も楽しいかもな)
胸中に抱える思いと共に、
「もし立候補したら票入れてくれる?」
江流は笑顔で言った。皆の反応を見つつ。
「票はともかく、立候補したらしたで楽しくなりそうだな!」
ナハシュが声をたてて笑った。
「江流様も生徒会……? に参加されるのですか? ……私にはきっと……無理な話ですね。戦うことしかしてこなかったので」
ガルシアは江流の立候補云々に驚いた後、自身の身の上と比べちょっぴり溜息。
と思ったら、
「………ですが、もし私にも人の役に立てるだけの能力があれば、江流様と共に生徒会、なんかも………い、いえ、なんでも御座いません。私も江流様が頑張られるのを応援致しますね!」
江流と共に立つ自分を想像し可愛らしい様子を見せた思ったら、力強いエールを送った。
あれやこれやと選挙の話が湧く中。
「……みなさん、すごいですね……」
皆の考えに耳を傾けていたミゼリアは、感心するばかりであった。
(よくかんがえると……ここにいるひとたち、あのしけんにごうかくしたのですよね)
難しすぎてすごすご帰った入学試験の事を思い出して、4人に対して尊敬の面持ちだ。ただし、傍目には無表情のお人形さんにしか見えないが。
「ミゼリアさんはどう?」
不意にエフィルミアがミゼリアに話をふった。
「わたし、ですか……にゅうがくは、してなくて……でも、いまは……だいじょうぶで……たぶん……ほかに、やらなくちゃいけないことが……あるような、気が……して。ぼうけんしゃとして、いろいろ……おしごと、がんばりたい……んです」
ミゼリアはゆっくりと学園への入学についてや自身の思いを語ってから、
「がくえんは……こうやって、たまに、あそびに来るくらいで……まんぞく、できそう………かなって」
4人の顔を見回した。今日の時間は楽しいようだ。
「だったら、今日は思いっきり遊ばないとですね。これが終わったらトランプをしましょう。細かいルールはよくわからないけど、キングが一番大きな数字だから大きな数字ばかり集めれば勝てる遊びがありましたよね」
ガルシアが声を弾ませて言った。ちなみに彼女が言った遊びは7並べだ。
「私的には、トランプタワー作るのが一番楽しい遊び方だと思うのだけど」
ガルシアはちらりとトランプに視線を投げ、おすすめのトランプ遊びを挙げた。
「……トランプタワー……むずかしそうです……」
ミゼリアは、興味と不安の混じった言葉を口にした。
「私が教えますから大丈夫ですよ!」
ガルシアは力強く返した。
「はい……おねがいします」
ミゼリアはこくりと頭を下げた。
それから、
(……みなさん……たのしそうですね……いいことです)
ミゼリアは軽く周囲を見回し、賑やかな様子に心を和ませた。
この後も皆で色んなゲームに興じ、賑やかなひとときを過ごした。
賑わっているのは、催しものだけなく休憩室も例外ではなかった。
「……休憩がてら人間観察でもするかな」
あちこち学園祭を見て回っていたサイラスは、休憩やらなんやらで休憩室に入った。
そして、
「結構、人がいるな」
店内をぐるりと見回し、盛況ぶりに感心した。
(まあ、この威圧感ある外見だから人はよってこんやろ)
サイラスは適当な席に座り、気兼ねなく人間観察を始めた。
最中。
「……ごみはごみ箱にだ」
目についた誰かが置きっぱなしにしたごみを捨てたり、
(ん、異種族生徒差別……これは踏み込まない方が賢明だな)
聞かぬがよい話には、すぐに耳と目を逸らしたりとむやみやたらな観察はしない。
「ただ見ているのもあれだし、ちょっと曲でも演奏するか」
手持ちぶさたが堪らないのか、サイラスはハープの竜花琴を爪弾き始めた。
(ここは静かめな曲がいいだろうなぁ。激しい奴とか空間に合わん、リラックス出来る環境作らんと、何よりうるさいと話が聞こえない)
選曲は穏やかさと優雅さを持った曲だ。ただし、音量は情報収集継続のため小さめに。
演奏の評判はというと、
「まさか休憩室で生演奏が聞けるなんて」
「…………いい曲」
「見た目怖そうなのにこんな素敵な曲を演奏しているなんて」
見事な演奏技術もあってか、上々であった。中でも外見とやっている事のギャップに対する反応が多かった。
もちろん、好感触な反応ばかりではなく、
「うわぁ、嘘だろ」
「同じ空気、吸うとか耐えられん」
明らかに差別的な反応を示す者もいた。
(…………顔は覚えられないが、身に着けているブローチの模様は家紋か。調べとかないとな。差別主義的な奴のとこの仕事受けさせられそうになったり押し付けられたりされると色々と面倒だし……後王国問題多いし)
自衛も兼ねているためチェックは怠らなかった。
(ふむふむ、貧富は関係ないな。どこも問題は同じといった感じか)
最近の問題や家の愚痴といった些末な内容にも耳を立てる。超聴覚を持つサイラスにとっては、内緒話も明瞭に聞こえる。
そうして情報収集をする中、
(……あれは……折角だ)
知った顔がゲームに興じている事に気付いたサイラスは、話に耳を傾けるついでにゲームに合った音楽を静かに奏で、自分なりにのんびりと休憩を満喫した。
「へぇ、結構面白そうなゲームがあるじゃねぇか……これは遊んだ事ねぇな」
サボりに来たナハシュはゲームを物色。初めて見るかるたに興味津々。
「なぁ、折角だから誰か遊ばねぇか?」
ゲームの種類を把握した所で、ナハシュは室内に呼びかけ参加者を募った。
すぐに人が集まり、
「ナハシュだ! サボりに来た」
まずはナハシュから自己紹介だ。
「2年のエフィルミアです! よろしくお願いしますっ。私はサボりに来たわけじゃないですよ! ちょっと休憩しにきただけですっ」
エフィルミアは挨拶をしてから、
「あ、林檎飴食べます? 新しいのありますよ?」
手にある新しい林檎飴を差し出した。ちなみに食べかけは口の中だ。
「……おいしい……あの、ミゼリア・L・ステュクスといいます……よろしくおねがいします」」
甘い物が好きなミゼリア・L・ステュクスが恐る恐る受け取り少し齧った後、自己紹介を行った。偶然休憩室に入室し、黙々と屋台で購入した物を食べていた所だったのだ。
「2年の海神・江流だよ。見ての通りのシャルガネ出身。去年、編入試験で入ったんだ。よろしくね」
「ガルシアです。よろしくお願いしますね」
江流と隣のガルシアが続けて自己紹介を行った。
こうして、名乗りが終わった所で、
「で、何する? 複数人で遊べるかるたとすごろくとかどうだ?」
ナハシュが皆に挑戦するゲームを訊ねた。
「げぇむ……ですか? 私帝国にいた頃もそのような事はあまりしてこなかったですから……私でも出来るでしょうか?」
ガルシアは、珍し気にゲームを物色する。
(ひとりであそぶのも……だれかにこえをかけるのも……ためらいがあって……)
ミゼリアは、食事中ずっとゲームに興味津々だったのだ。
「まずはすごろくやかるたでもやってみるかい? シャルガネの正月っぽいが」
江流は、すごろくとかるたに親しみの眼差しを注ぐ。
「かるたかぁ……ルールがなぁ」
ナハシュは、興味はあれどルールが分からないため、反応が鈍い。
「それなら任せてよ」
最もかるたに馴染みがある江流が、ルール説明を始めた。
「読み札と取札があってそれぞれ対になっている。読み役が読んだものと同じ取札を取っていって、沢山取れた人が勝ちだ」
江流は持てる話術を上手に使い、初心者にも理解しやすいよう簡潔に説明をした。
「……かるた、できそう……」
見た目よりも中身が幼いミゼリアは、かるたが思いのほかルールが簡単な事に安堵。
「簡単そうですね。なんとかいける気がします!」
ガルシアもやる気満々だ。
「まず、取り札を切ってから机に並べようか」
江流が動くよりも先に、
「切るのは任せて下さい」
ガルシアが自信満々に太刀である結刀の紅夜を抜こうとした。
「いやいや、そうじゃなくて、混ぜるって事なんだけど」
江流が慌てて止めて、言葉を変えて言い直した。
「あ、そういう事でしたか。今度こそお任せ下さい」
無事に意味が通じたガルシアは太刀から手を離し、取札を混ぜて机に並べた。
何とかかるた遊びの準備が整い、いよいよ開始だ。
(見た所、ナハシュさんとミゼリアさんとガルシアさんは初心者ですから、ここは、慣れるまで3人がある程度取れる様に譲りましょうか。3人の初めてのかるたが楽しかったーって、なるようにしたいですし)
エフィルミアは取札を確認する初心者3人を見て、余裕の面持ちだ。
「最初は俺が読もう」
江流は、1枚目を朗々と読み上げた。
「はぁぁあ、そこです!!」
まるでチャージングを発揮させたかのようなガルシアが、凄まじい勢いで目標の取札に手を伸ばした。
「うぉっ、すげぇ勢いだな」
「……!?」
あまりの勢いにナハシュとミゼリアは驚き、言葉が無い。
「これですよね」
ゲットした取札を見せつけ、ガルシアは誇らしげな顔だ。
「お見事です」
エフィルミアは称賛の拍手を送った。
この後も、江流は次々と読み札を読み上げていった。
その度に熱き戦いが繰り広げられた。
「……とりました」
何とか取札を取るミゼリア。
「取ったぞ!!」
自信満々に取札を取るナハシュ。
「はぁぁあ!!」
ガルシアは、勢いのあまり取札を弾き飛ばしてしまうほどだ。
「すげぇ速かったけど、それ違うんじゃねえか」
ナハシュがガルシアが勢いと共に取った取札がはずれだとツッコミを入れると、
「……あの……これ……」
ミゼリアがそろりと正しい取札を手に入れて、見せた。
「あー、それですね。まあ、体が動かせて楽しいからよしですよ」
ミゼリアが示した取札を見たガルシアは、悔しさよりもやり切った感が凄い。他の3人に比べてお手つき3回に2回くらいあるが。
(……音楽が変わっている……こちらに合わせてくれているのか)
江流はふと、室内を満たす音楽の変化や奏者が顔馴染みだと知った。
(3人も慣れてきたようですし、そろそろぼこぼこにしましょうか)
エフィルミアは3人の戦果を確認した後、可愛い微笑みを浮かべた。ちなみにここまでの戦果は手加減したため下位である。
「エフィ、どうかした?」
エフィルミアの様子に気付いた江流が訊ねた。
「いえ、かるたあるあるを思い出しまして、小さい頃に上の兄弟にボコボコにされて大泣きするとか」
エフィルミアは愛らしく笑うだけで、胸中の作戦は内緒だ。
「それはすごい戦いだね」
江流は微笑まし気に言った。
しかし和やかな話が終わった瞬間、
「はっ!!」
エフィルミアは、超視覚で並んだ札を全て視認し、持ち前のスカウトの心得を活かして次々と取札を狩っていった。お姫様のような外見からは想像出来ない容赦のなさだ。
「すげぇ」
「…………はやい、です」
ナハシュとミゼリアは感心するばかり。
「負けませんよ!」
ガルシアも果敢に攻めていく。
結果、1位を取ったのは、
「私の勝ちですっ!」
エフィルミアであった。
次に挑戦するゲームはすごろくだ。
「すごろくは……」
ルールを説明しようとする江流を遮って、
「あれだろ、サイコロ振って出た数だけ自分の駒を進め、止まったマスに書かれた効果で一喜一憂すんだよな。で、最初にゴールした奴が勝ち!」
ナハシュが簡潔にルールを説明した。
「…………むずかしそうですね」
ミゼリアは、すごろくのマスに記載されてる指示に不安げだ。
「大丈夫だって、分からねぇことがあったら俺達に聞いたらいいさ」
「そうですよ。遠慮なく聞いて下さい」
ナハシュとエフィルミアが心強い言葉でミゼリアを励ますものの、
(イカサマはしねぇが手加減もしねぇけどな)
(運ゲーですから手加減も何もないですが、私のダイス力を見せつけますよ)
内心は闘志で燃え滾っていた。
とにもかくにも、すごろくが始まった。
「では俺から」
馴染みがある江流からだ。
「行きますよ」
お次は、ガルシアだ。
続いて、
「次は俺だ。負けても勝っても恨みっこなし! いくぜいくぜ!!」
ナハシュ。
「唸れ私のダイス力!」
エフィルミア。
同時に、
(次はすごろくか。ならば……)
室内に流れるサイラスが奏でる音色も変わっていた。
「……えと……ダイス、おねがいします」
ミゼリアは皆に倣い、そろそろとダイスを振って駒を進めた。
そうして、順番にダイスを振って出た数に合わせて駒を進め、書かれている内容に従っていく。
すごろく開始と同時にお喋りが花咲く。
「ところで、ナハシュ君は生徒会選挙に出るんだっけ。何か狙いがあったりするのかい?」
江流は、気になっていた事を訊ねた。
「あぁ、もちろんだ。まず1つ目、多文化クラスから候補者を出せば多文化生徒が選挙戦に関わる動機を作る。2つ目は、ついで貴族派、王党派に流れるかもしれない浮遊票を可能な限りいただけたらなと、3つ目は、ゴブリンかつ週1登校なんてふざけた公約掲げた奴が役員になることを快く思わぬ学生も多いかなと、それなら立候補して勝てって事で」
ナハシュは指を1本ずつ立てながら、最後は3本立ててしっかりとした信念を語った。
「まあ、貴族にしろ王党にしろ現状より差をつけるなら浮遊票はいる筈だ。その殆どをかっさらってやったら、それはそれで面白ぇだろ? 気に食わねえってんなら誰かがやると思ってねえでガンガン立候補してきてほしいもんだなぁ! っはははは!!!」
思いのたけを言ったナハシュは、最後に笑った。
「そういう狙いがあるって知ってたら、立候補前に学園派に勧誘したのにー、まあ、無派閥でも立候補してくれるのは嬉しいんですけど!」
エフィルミアは頭を抱えて大袈裟な反応だ。
「エフィは今年はどうするの?」
江流が訊ねた。選挙の話がいよいよ賑やかになる。
「え、私ですか? どうでしょう……友人が会長に立候補してるので、それは全力応援という姿勢なんですけど! 私が立候補するかは、まだ悩んでるのですよね」
エフィルミアは予想外だったのか、むむむと難しい顔をしたが、
「今立候補してる人、誰が当選しても良い学園になるのは間違いないですし。ここまで立候補が出るほど学園が変わってくれた事で満足しちゃってるというか! エルさんが立候補するなら勿論応援しますよ!」
学園の将来は心配はしておらず、希望を抱いているようだ。
「お前も立候補すんの?」
今度はナハシュが訊ねる番だ。
「まあ、俺も考えてみてもいいのかもな……学園内の冒険者の立場が良くなれば自分にもメリットの有る話だし。それに……」
江流は前向きな答えだ。
(あの娘の隣に立つなら、王国での実績は少しでも多い方がいい。今はその先は、全く見えないんだが……この面子での競い合いならそれ自体も楽しいかもな)
胸中に抱える思いと共に、
「もし立候補したら票入れてくれる?」
江流は笑顔で言った。皆の反応を見つつ。
「票はともかく、立候補したらしたで楽しくなりそうだな!」
ナハシュが声をたてて笑った。
「江流様も生徒会……? に参加されるのですか? ……私にはきっと……無理な話ですね。戦うことしかしてこなかったので」
ガルシアは江流の立候補云々に驚いた後、自身の身の上と比べちょっぴり溜息。
と思ったら、
「………ですが、もし私にも人の役に立てるだけの能力があれば、江流様と共に生徒会、なんかも………い、いえ、なんでも御座いません。私も江流様が頑張られるのを応援致しますね!」
江流と共に立つ自分を想像し可愛らしい様子を見せた思ったら、力強いエールを送った。
あれやこれやと選挙の話が湧く中。
「……みなさん、すごいですね……」
皆の考えに耳を傾けていたミゼリアは、感心するばかりであった。
(よくかんがえると……ここにいるひとたち、あのしけんにごうかくしたのですよね)
難しすぎてすごすご帰った入学試験の事を思い出して、4人に対して尊敬の面持ちだ。ただし、傍目には無表情のお人形さんにしか見えないが。
「ミゼリアさんはどう?」
不意にエフィルミアがミゼリアに話をふった。
「わたし、ですか……にゅうがくは、してなくて……でも、いまは……だいじょうぶで……たぶん……ほかに、やらなくちゃいけないことが……あるような、気が……して。ぼうけんしゃとして、いろいろ……おしごと、がんばりたい……んです」
ミゼリアはゆっくりと学園への入学についてや自身の思いを語ってから、
「がくえんは……こうやって、たまに、あそびに来るくらいで……まんぞく、できそう………かなって」
4人の顔を見回した。今日の時間は楽しいようだ。
「だったら、今日は思いっきり遊ばないとですね。これが終わったらトランプをしましょう。細かいルールはよくわからないけど、キングが一番大きな数字だから大きな数字ばかり集めれば勝てる遊びがありましたよね」
ガルシアが声を弾ませて言った。ちなみに彼女が言った遊びは7並べだ。
「私的には、トランプタワー作るのが一番楽しい遊び方だと思うのだけど」
ガルシアはちらりとトランプに視線を投げ、おすすめのトランプ遊びを挙げた。
「……トランプタワー……むずかしそうです……」
ミゼリアは、興味と不安の混じった言葉を口にした。
「私が教えますから大丈夫ですよ!」
ガルシアは力強く返した。
「はい……おねがいします」
ミゼリアはこくりと頭を下げた。
それから、
(……みなさん……たのしそうですね……いいことです)
ミゼリアは軽く周囲を見回し、賑やかな様子に心を和ませた。
この後も皆で色んなゲームに興じ、賑やかなひとときを過ごした。
マスターコメント
参加者の皆様、参加して頂き大変ありがとうございました。そして、お疲れさまでした。
情報収集や演奏やゲームをして休憩室でまったりと過ごして頂き、ありがとうございました。
ほんの僅かでも楽しんで頂ければ、幸いです。
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜10人
2022年10月08日 09時21分18秒 公開
大成功
相談掲示板
ナハシュだ!サボるついでに遊びに来た!よろしく。 沢山ゲームあるんだろ?なんかしようぜ!
…こんにちは。…ミゼリアといいます。…よろしく、おねがいします。 …ゲーム、どれも…やったことないので、やってみたい…です。 ルールとか…おしえていただけますか。
2年の海神江流だよ。今回はよろしくね。 ゲーム、どれもなんとなくわかるからルールのレクチャーくらいはできそうかも。 良ければ俺も参加させてもらえれば。
おー、俺もかるた?意外はやったことある気がするな。でも教えるのはきっと海神がうまい。 なんか適当に遊ぼうぜ!
1対1の対戦型でない遊びだと、かるたとすごろくがいいかな? じゃあ、かるたの説明は此方で。 ナハシュ君ともはじめましてではないけれど、ちゃんとご挨拶してなかったから自己紹介とかもさせてもらおうかな。
エフィルミアです!よろしくお願いしますっ。 かるたにすごろく!面白そうですねっ。 私も混ざっていいでしょうか? 小さい頃は上の兄弟にぼこぼこにされて、大泣きするのかるたあるあるですよねぇ…(しみじみ)