【究石】その身を以て知る【天陽道】
革酎
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シナリオID:2421
オープニング
かつての教え子キャスリィ・ミラルイーズ男爵令嬢が、天陽道及びメドゥの指先カレンガン派残党により、危うく拉致されかけた。
この事実を知った元帝国魔導院エスタル支部長のクライス・アクバーは、早速に帝国辺境の町カーケルスへと急行し、ミラルイーズ邸にてキャスリィ本人の無事を確かめた。
その際キャスリィは拉致犯共がクライスの名を口に出していた事実を告げ、クライスは、敵の狙いが己にあることを知った。
カレンガン派の残党とは、かつてシルトラース帝国東部鎮守都市エスタルで草人狩りを攻撃しようとしていたシェド・カレンガンなる男であることも分かっている。
(要は逆恨みによる復讐といったところか)
内心で苦笑を漏らしつつ、クライスはカーケルスの冒険者ギルドへと足を向けた。
キャスリィ救出時の顛末を概要だけでも押さえておき、次なる襲撃に備えようという訳である。
受付嬢から報告書を借り受けたクライスは、受付ロビー脇の休憩エリアで、その内容にざっと目を通す。そして途中までは然程に詳しく読み込んでいなかったクライスだが、ある一点で目の動きを止めた。
(天言殺呪……?)
天陽道の唱紋士と呼ばれる男が用いていた、魔術の一種らしい。
単にそれだけならば然程にクライスの注意を引くことも無かったのだが、問題はその術式発動の原理に関する注釈であった。
この天言殺呪という術は、周囲の大気や水を一点に凝縮させ、極小の超硬質弾丸に変じて標的を撃ち抜く術なのだという。
(大気を、凝縮……)
この時クライスの脳裏に、ある閃きが雷鳴の如き勢いで迸った。
通常、冒険者達が用いる魔術はエーテルに働きかけることで、無から有を創り出すケースが多い。だがこの天言殺呪は有から有へ、つまり周囲に存在する物質の形状を変えて利用する術であるとの由。
もしも――形状を変える対象物質を意図的に選択し、凝固させることが出来るとしたら。
(幽界樹が放つ、あの黒い霧を排除することが出来るやも知れん)
現在、帝国の各地で猛威を振るっている幽界樹は、恐るべき魔物だ。それら幽界樹を強敵たらしめているのが周辺に漂う、黒い霧である。
人体に害を為し、冒険者ですら長時間その影響範囲内に留まるのは危険とされている気体状の物質。
あれさえなければ冒険者のみならず、通常の一般兵でも幽界樹の間合いに飛び込むことが可能となり、一気に攻略の手が進むことになろう。
そして天言殺呪の術式原理を解明し、黒い霧排除の糸口を掴むことが出来れば、幽界樹打倒への道筋の第一歩が見えたといっても過言では無い。
(だがその為には一度、この目で天言殺呪とやらの発動の瞬間を見ておく必要があるな)
クライスは受付嬢に報告書を返却すると同時に、何名かの冒険者を募りたいと告知を打たせた。そしてこの告知は、周辺の町に在る冒険者ギルド支部でも展開してくれと依頼した。
つまり、己の居場所を天陽道に知らしめようという訳である。
(さぁ、喰いついてこい)
冒険者ギルドを出て、青く澄み渡った空を見上げたクライス。その瞳の奥には、天言殺呪の発動原理を必ずや解明してみせるという強固な意志の光が宿っていた。
●再戦に向けて
カーケルス近くの、とある森の中。
小川の脇に立つ古びた水車小屋内で、ふたつの影が鎮座している。
ひとりはシェド・カレンガン。メドゥの指先の末端組織カレンガン派の再興に躍起となっている男だ。
そしてもうひとりは、シャルガネ居住区を根城にしていた暗殺組織『天陽道』の凄腕天陽師蘆屋 外伴。
ふたりは、クライスがカーケルスに当分の間、滞在する予定であるとの風聞を聞きつけ、次なる攻撃策を練っていた。
しかし、いきり立つシェドは兎も角、蘆屋外伴はどうにも引っかかるといった様子で思案顔だ。
「どうにも罠臭い。何か意図がある様にも思えますな」
「ふん、そんなことはどうでも良い。俺はあいつさえ殺せれば、それで満足だ」
やや興奮気味に吠えるシェドに、蘆屋外伴は然様で御座るかと淡々とした調子で応じた。
「今回はそれがしも同行致すが、余り表には出ませぬ故、ご承知おき願いたい」
そして前回同様、式鬼使いの比企 丈貫と桐蓬忍道の達人である岩御門 典将、そして天言殺呪の使い手である灘九条 実康の三人を連れてゆくとも述べた。
このうち、岩御門と灘九条は前回のキャスリィ拉致戦時に、冒険者相手に苦汁を舐めさせられている。その復讐戦の意味合いもあるらしい。
「しかしながら、こちらの損耗が余りに激しければ即時に撤退し申す。御身のご希望には最後まで添えられぬ可能性もありますぞ」
一応その様に釘を刺した蘆屋外伴だが、シェドの耳にしっかりとその意味が伝わったかどうかは、よく分からなかった。
(やれやれ……復讐がしたいのか、派閥を再興させたいのか、いずれが強いので御座ろうな)
内心で呆れつつ、蘆屋外伴は水車小屋を出た。
解説
マスターより
リプレイ
シルトラース帝国南部辺境の町カーケルス。
その郊外に目を向けると、馬車道沿いに幾つもの小屋が点在している。旅人が休憩に用いたり、地元民が馬車の修理工具を仮置きする為に使っているものだ。
元帝国魔導院エスタル支部長のクライス・アクバーは、それらの小屋のひとつに潜んでいた。同じ小屋の中には八名の冒険者達。いずれもクライスが冒険者ギルドで募集をかけ、その呼びかけに応じて集まってきた者達である。
「来たぞ」
クライスは小屋周辺の何カ所かに、自身が設計した警戒線用の紋具を配置していた。これらの紋具はいずれも長い紐が伸びており、その先端をクライスが小屋内まで引き込んで自身の手に握っている。原理は単純で、地面に伝わる震動を増幅させて紐の端にまで伝えるだけの代物だ。
しかし敵が想定したルートを接近してくる際、事前に察知するには使い勝手が良いということで、クライスが自分用に実用化したのである。
「北北東方面から接近中だ。頼んだぞ」
その声に応じ、まずナタリア・フィッツジェラルドが自身のエーテルを発動させて、コルネリウス・アーラの身体能力を大幅に増強した。
効果時間は余り長くないが、敵がいつ、どの方向から来るのかが分かっていればタイミングを合わせて効果的に使用することが出来る。今回の様に敵の出現位置や接敵タイミングが事前に分かれば、より戦術的にその威力を発揮出来よう。
最初にコルネリウスが、次いでベルク・オスマット、クローリカ、エミリア・シバの順で前衛組が飛び出してゆく。
それから少し遅れてジュスト・ヴェルジー、シルヴィア・A・カペル、ロゼット、ナタリアら後衛組が散開しながら小屋を出た。
最後にクライスが、小屋の外へと踏み出した。
予告通り、鎧姿の戦士や黒衣の術師が北北東方面から接近してくる。敵も、自分達の位置が察知されたことを悟ったのだろう。変に隠れる様な真似はせず、堂々と攻め込んできた。
「ひとりだけ鎧なんか着込んじゃってるから、分かり易いわぁ」
エミリアは帝国出身のテロリスト、シェド・カレンガンの姿をいち早く視界に収めた。前回はクローリカが圧倒したらしいが、今回はエミリアがシェドの相手に廻る。機動戦のエミリアとしては、シェドの重い一撃を喰らわない様に注意が必要だ。
そのクローリカはシルヴィアと共に桐蓬忍道の達人岩御門 典将の抑えに廻る。
既にクローリカとシルヴィアは輝腕によって知覚が鋭敏となっており、岩御門の素早い動きにも何とか対応出来る様になっている。後はひたすら攻撃に専念するだけだった。
「先日の助言に感謝するよ。折角攻略法を教えてくれたのだから、活用させて貰おう」
シルヴィアの挑発に乗った岩御門は足の速さを活かして一気にシルヴィアとの間合いを詰めようとしたが、それよりも早くクローリカの刃が岩御門の懐に迫る。
「接近戦の相手なら、私が務めて差し上げますよ」
不敵に笑うクローリカに、岩御門は忌々しげに舌打ちを漏らした。この男とて馬鹿ではない。目の前のクローリカを何とかせぬことにはシルヴィアまで接近出来ないことは、すぐに察した様だ。
一方、赤と緑の式鬼を従えた比企 丈貫の前にはコルネリウスとナタリアが立ちふさがった。
「今回の相手は私ですよ」
「ほう、ロモズ歩兵団長直々にお出ましとは、光栄に存ずる」
比企は赤鬼をコルネリウスにけしかけた。
ナタリアの支援でいつも以上に防御力が向上しているコルネリウスは、赤鬼の丸太の様な剛腕による一撃に耐えてみせた。
(さぁ、我慢比べの勝負だ)
コルネリウスの背後で、ナタリアが次なる防御支援の術式発動態勢に入っている。緑鬼はどうやら比企の護衛に廻るらしく、こちらには目もくれない。ナタリアとしても、これは好都合だった。
そしてベルク、ロゼット、ジュストが抑えに廻ったのは禿げ頭の老人。その正体は天陽道No.2にして恐るべき天陽師、蘆屋 外伴だ。
気合が入っている岩御門やシェド、或いは天言殺呪の使い手灘九条 実康といった面々とは異なり、蘆屋外伴は随分と落ち着いている。
冒険者達の力量を見極めてやろうという意図が、その余裕の表情から伺えた。
「天陽道か……最近王都でもメドゥと組んで裏でこそこそゾンビ作りに励んどった連中だな」
ベルクの挑発に、蘆屋外伴は幾分驚いた様子を見せた。
「ほほぅ、そんなことまでご存じか。冒険者も中々お耳が早いと見える」
呑気な笑顔を見せる蘆屋外伴だが、対するジュストは内心、最初からこの凄腕の怪物が姿を見せていることに意外な思いを抱きつつも、最大級の警戒を払っていた。
(まずは動きを封じる……話はそこからだ)
位置的に他の敵を巻き込むことは不可能だったが、ここは蘆屋外伴ひとりを封じることに全力を注ぐべしと判断し、その周辺に稲妻が迸る空間を出現せしめる。これで幾らか、動きを阻害出来る筈だ。
「ベルク、貴方の速さを強化するわ。気を付けて」
蘆屋外伴と直接対するベルクに、ロゼットが反応速度向上の支援を施した。後はベルク自身の能力次第。
この化け物相手に、どこまで耐え切れるか――今回はクライスの天言殺呪観察がメインだが、しかし同時に、天陽道の強敵に自分達がどこまで通用するのかを改めて探る為の試験的戦闘でもあった。
●一転攻勢
灘九条が放つ凝縮呪弾は、その発動直前に周囲の空気を彼の指先一点に吸い込み、一個の弾丸と化して超高速で標的へと飛来する。
だがクライスはこれといった防御態勢も取らず、凝縮呪弾による狙撃を真正面から迎え入れる姿勢を見せた。これには灘九条も幾分呆れる様子だったが、そのまま容赦無くクライスを撃ち抜こうとした。
しかし、出来なかった。凝縮呪弾はクライスの額直前まで迫ったところで粉々に砕け、文字通り雲散霧消したのである。驚いた灘九条は更に続けて数発、凝縮呪弾を連続で撃ち続けたが、結果はいずれも同じだった。
やがてクライスはほんの数秒程、何か考え込む仕草を見せたが、すぐに他の冒険者達に視線を巡らせ、静かな口調でひと言。
「良いぞ。やってくれ」
攻勢に転じろ、という合図。つまり、天言殺呪の発動原理観察はもう終わった、というのである。
これには冒険者達も内心で仰天した。まだ戦闘開始から数分と経っていない。クライス個人に限っていえば、ものの一分弱で初めて見る魔術の発動原理を見抜いたという訳だ。
(流石に、俺達とは規格外の凄さだな……)
クライスの研究には大いに興味を引かれていたジュストは、絶対にクライスの観察を成功させると意気込んでいたものの、まるで次元の異なる観察能力には呆れるしか無かった。実際のところ、クライスが観察に専念している間に、蘆屋外伴に対して諸々の弱体化魔術を仕掛ける予定だったのだが、それよりも早くクライスの目的が達成されてしまった為、ロゼットが早々に光の柱でこの強敵を封じる展開になってしまった。
「メドゥの非道を知らない訳では無いでしょう? 何故、自分から正道を外れる様な生き方を選ぶの? 止めるべきよ」
そんなことを語り掛けながら、ロゼットは蘆屋外伴の周囲に光の柱を出現させた。蘆屋外伴の実力なら、この光の柱を早い段階で破壊することも出来たのだろうが、彼は敢えてそうはしなかった。
「商売というのは、長年の信頼関係の積み重ねも重要でな。メドゥの指先とはお互い、良い提携先として手を携えておる。そう簡単には切れんよ」
蘆屋外伴はその様な意味のことを口走っていたが、ロゼットの意識は既にシェド討伐へと傾いていた。
そのシェドを抑え込んでいたエミリアも、想定以上の早さで攻勢に転ずることになった現状を受けて、内心で驚きを禁じ得なかった。
(クライスちゃんってば、本当に頭の中身がその辺の魔術師とはまるで違うのね。おねえさん、ちょっと度肝を抜かれちゃったわ……)
だが仕事が早く終わるのであれば、それはそれで有り難い話でもある。エミリアは自らの刃で動きを鈍らせていたシェドに、素早い三連撃を仕掛けて一気に勝負へと出た。
シェドは何か意味不明な雄叫びを上げていたが、そこにベルク、ジュスト、ロゼットが矛先を変えて加勢してきた為、戦局は一瞬で傾いた。シェドは、圧倒的不利な状況に追い込まれたのである。
素早い接近戦を得意とするエミリアとベルクの両名に翻弄された挙句、ジュストとロゼットから強力な魔法攻撃を浴びたとなれば、最早まともな勝負にはならない。
「おのれ! おのれぇ!」
シェドは悔しそうに叫び、光の柱の中でのんびり佇んでいる蘆屋外伴に対して、早く助けろといわんばかりの怒りに満ちた視線を向けた。
しかし蘆屋外伴は動かない。その間にもシェドは冒険者達の猛攻を浴び続け、そして斃れた。呆気無い最期だった。
一方、比企はシェドが斃され、蘆屋外伴が光の柱に封じられた現状に多少の危機意識を抱いたのか、緑鬼に対しても攻撃を命じた。コルネリウスを素早く打ち伏せ、戦況を逆転させようとしたのだろう。
ところがそこに、クライスが割り込んできた。クライスは緑鬼の前へと立ちはだかり、あろうことか、目の前の怪物が放つ剛腕を片手で弾き返したのだ。
これにはナタリアばかりか、コルネリウスも驚いた。
「魔術師には前衛が務まらんなど、誰が決めた?」
後で聞いた話だが、クライスは破壊的な衝撃波を伴う魔導防壁を自身の腕や脚に防具の様に纏うことで、接近戦を可能にしているのだという。いわば、格闘魔導師というスタンスだ。
元々クライスは精鋭集団として知られる帝国近衛連隊出身であり、軍人として接近戦も大いに鍛えている。文武両道ならぬ軍魔両道であった。
(全く、何から何まで私達とは次元が違うな……観察という目的が無ければ、こんな連中、私達の力を借りずとも、ひとりで始末出来たのではないか?)
ナタリアは呆れるというよりも、可笑しかった。
ところで、灘九条はどうなったのか――ナタリアが視線を転じると、天言殺呪の達人は近くの大木に背を預ける格好で気絶していた。恐らく、クライスの格闘魔導師としての接近戦に意表を突かれ、KOされてしまったのだろう。
クライスが緑鬼の相手に廻ってくれるというのであれば、コルネリウスとしても心置き無く赤鬼に全力を注ぐことが出来る。ナタリアからの防御支援も継続的に機能しているから、式鬼の恐るべき破壊力にも十分に対抗出来るだろう。
「では式鬼さん……私の力がどこまで通用するか、試させて頂きます!」
コルネリウスは気合を入れ直して、目の前の化け物と改めて対峙した。
●聖地へ
クローリカとシルヴィアを相手に廻している岩御門も、苦境に追い込まれていた。
相手が前回の様にシルヴィアひとりだけであれば何の苦労も無かったが、今回はクローリカという前衛が間に割って入っている。明らかに分が悪い。
「老師! 如何なさる! 既にシェド殿は斃れた! 最早我らに、この御仁らを斃さねばならぬ道理は御座らぬぞ!」
岩御門が遂に、悲鳴を上げた。灘九条も気絶して後方支援の役に立たぬ。比企の式鬼もナタリアの支援を受けたコルネリウスと、怪物の様な接近戦能力を発揮するクライスに圧倒されている。
ここで蘆屋外伴が仕方が無いとばかりに光の柱を破壊し、漸く戦列に復帰した。
(よし……こちらの意図通りだね)
シルヴィアはシェドが斃されたことで、天陽道に戦闘継続の意味が失われたことに内心で期待を抱いた。このまま引き退がってくれれば、何もいうことは無い。
クローリカは優勢に戦いを進めつつ、ふとクライスに視線を転じた。
(クライス様、まさか自分自身を囮に使うとは驚きを禁じ得ませんでしたが……)
ただ頭脳と度胸に優れているだけではなく、格闘魔導師という異次元の強さをも発揮している。魔術は威力が高い分、どうしても身体的な強さを犠牲にするものというのが通説だが、あのクライス・アクバーという男は一体どうなっているのだろう。
だが兎に角、戦況は冒険者に有利だ。イニシアチブを完全に握ったといって良い。
ここでベルクとジュスト、ロゼットの三人が蘆屋外伴の動きを警戒し、再びその抑えへと廻った。
今度こそ、諸々の弱体化を仕掛けてやろうと術式を発動させたジュスト。だが流石に天陽師は格が違い、ジュストが挑んだ弱体化魔術は半分程度しか命中せず、その威力も然程に効果を発揮しているとは思えなかった。
天陽師は唱紋士とは異なり、複数の術や技を身に着けていると聞く。蘆屋外伴は対魔法術も会得しているのかも知れない。
ならばとベルクが全力を注いで挑みかかったが、そのベルクの機動力を以てしても蘆屋外伴には及ばない。
「ふむ……一組織の頭級というだけあって手強いか。ここで殺せれば手柄首なのだがな」
その言葉には、半ば諦めの響きが伴っている。
直後、蘆屋外伴と岩御門が同時に巨大な炎の壁を出現させた。この場の一部の冒険者達には見覚えのある離脱術、堰辺火遁であった。
愛用の剣を鞘に納めながら、コルネリウスは肩をすくめた。
「仕留め切れませんでしたか……でも、今回は敵を全滅させることが目的ではなかった訳ですし……」
コルネリウスが視線を転じると、クライスは助かったと礼を述べながら冒険者達に頭を下げた。
そのクライスだが、何故かカーケルスの町にではなく、北東方面に足を向け始めた。一体どこへ行くのかとロゼットが訊くと、クライスは想定外の応えを返してきた。
「ケンタウロスの聖地へ行く」
まるで茶飲み話の様な調子でいうクライス。あの警戒厳重な地域に、散歩にでも出かけるかの如く足を踏み入れるのだという。
これには流石に、冒険者達も呆れざるを得ない。
「もしかして、もう幽界樹打倒のアイデアが浮かんだとか?」
ジュストが訊くと、クライスは静かに頷き返した。
曰く、灘九条の天言殺呪を見極めた直後には既にある程度の設計図を頭の中で描いていたのだという。だが幽界樹の黒い霧を封じる紋具を実現するには、人間の肉体程度のエーテル量では圧倒的に足りない。
そこでケンタウロスの聖地から採れる神石、即ちエーテル石が必要だとの結論を早々に叩き出していた。
しかし果たして、ケンタウロスがすぐに応諾してくれるだろうか。シルヴィアとエミリアが疑問を抱いて互いに顔を見合わせたが、ベルクは大丈夫なのではないかと頷いた。
「先日、クライス殿はヌロブア殿と知己を結んだ。きっと良い縁になる」
特異個体のヌロブアが仲立ちしてくれれば、何とかなるだろうというのがベルクの見立てであり、クライスもその縁を頼りたいと応じた。
「エーテル石か……成程」
ジュストは静かに頷いた。
事態は、大きく動き出そうとしていた。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2022年08月27日 23時37分15秒 公開
相談掲示板
シルヴィアだ。今回はよろしく頼むよ。 クライスが天言殺呪の観察を終えるまで他の四人の敵の相手をする、観察が終わったら斃せる相手は斃し切る……と言う事で依頼の内容自体はシンプルだね。 観察の邪魔をさせる訳にはいかないから四人の敵それぞれに対応者は決めておいた方が良いと思うけど、個人戦ではないからお互いがお互いをカバーできるように動けたら良いなと思っているよ。 シェドは特にクライスを集中して攻撃してきそうだね。シェドからの依頼が無ければ天陽道がクライスを狙う理由も無くなるし、彼は今回斃し切りたいところだ。 私は前回岩御門典将に苦戦してしまったから、出来ればリベンジをさせて貰いたいと思っている。報告書を読み返しつつ、対策を考えてみるね。
よろしくね。前話の「【天陽道】男爵姫の受難」では 良いトコなしで、挙手したのに申し訳なかったわ…(汗) 達成したい目標 ・クライスが天言殺呪の観察を終えるまで戦闘を維持する ・クライスの観察終了後、敵のシェド・カレンガンを倒す 依頼成功のために、達成すべき目標はこの2つかしら。 シェドの撃破は、敵に戦闘を継続する理由を失わせることと、 今後のクライスの安全に繋がることで、ちょうど良いわね。 敵 比企丈貫(物理攻防共に高い式鬼を2体召喚する) 岩御門典将(至近距離での超速戦闘を得意とする) シェド・カレンガン(戦士系、強さではワンランク落ちる?) 蘆屋外伴(天陽道の呪術をほぼ全て習得、超人級のボス敵) 敵の術者、灘九条実康はクライスが観察に相手をするから、 私たちが相手をするのは上記の4名よね。 クライス自身は以前、エスタルの決戦シナリオで草人相手に 優位に戦っていたから、術者の相手だけなら大丈夫かしら。 >行動 人数配分、どれぐらいかしら…(悩) 比企丈貫2、岩御門典将1、シェド1、蘆屋外伴3人くらいで、 残り1名を観察前と後で、移動できる遊撃(シェド撃破)役に 決めておく感じかしら…。 私は強い希望はなし。前回の反省をした上で比企丈貫の相手でも、 他の相手でも。ヒーラーは分散したいから、岩御門典将以外かな。
ウォーリアのクローリカです。 今回は耐久の後に本格戦闘という流れですね。 クライス様が観察を終えるまで敵から守るというのはもちろんですが、あまり分かりやすく防戦していると相手にこちらの狙いが見えてしまいそうな感じがあります。 ほどほどの所で膠着状態を生み出せれば良いですが…。 >担当 前回はシェドを担当しましたので、戦いのスタイルが違うと感づかれそうです。 岩御門典将に行こうと考えています。
キャスターのジュストだ、よろしく。 前回は依頼自体は成功に納められたけど、なかなか苦戦を強いられたからね。 今回は前回の教訓を活かして戦いたい所。 各敵の大雑把な傾向と分析としては ・比企丈貫 式鬼は相当防御が高くないと相手をするのが難しいし、術者だけで立ち向かうのは危険。 ・岩御門典将 回避と命中がかなり高いので接近されると術者一人で対応するのは厳しい。 ・蘆屋外伴 他の面子よりスペックが数段上の強敵、他より人数多めで対処するか、少人数で対応するならどんな手で攻められても耐えられるようにする必要がありそう。 ・シェド・カレンガン 大型武器で武装した破壊力偏重の戦士で素早さは低め。天陽道の面々より脅威度は下か。 こんな感じだろうか? 相手が4人だから最初の時間稼ぎの段階で二人ずつ対応に回って、蘆屋外伴以外の担当は相手を討つことが出来次第蘆屋外伴担当の支援に入ると良い気がした。 勿論時間稼ぎだけならシェドに関してはウォーリア一人で対応可能なことも前回示唆されていたから、最初から蘆屋外伴多めにした方が固いかな? 岩御門典将に関してはその動きを捉えることさえ出来れば他の面々より早く倒すことが可能かもしれないね。 俺も今の所担当の希望はなし。 岩御門典将は既に二人希望が挙がっているからそれ以外で後衛を担当するよ。 火力よりBS付与重視で行こうかなと思っている。
敵の能力の纏め感謝だ。改めて確認出来たよ。 >人数配分について 蘆屋外伴は強敵、シェドは一人でも対応可能なようだから、この二人に関しては3:1にしても良さそうだと思った。 比企丈貫と岩御門典将については二人ずつで良いと思う。二人一組ならクローリカが懸念していた前回と戦いのスタイルが違うというのも連携上の都合と思わせられるかなって。岩御門典将は術者が接近されると厳しい相手だし、クローリカに一緒に戦って貰えるなら心強い。よろしく頼むよ。 下に対応希望を書いておくね。 ・比企丈貫 ・岩御門典将 クローリカ シルヴィア ・シェド・カレンガン ・蘆屋外伴 (追記と誤字で書き直したよ。二回も申し訳ない……)
すみません、読み返しなどもしていて遅くなってしまいました。 ウォーリアのコルネリウスです。よろしくお願いしますね。 情報のまとめなどもありがとうございます。 OKの合図が出るまで抑えれば良いといっても、全力で対応しないといけませんね。 蘆屋外伴については、他の対応者が撃破後に合流を前提とするのでしたら、耐久重視とした方が良さそうに私も思います。 私はどこに回ろうかは、ウォーリアが少ないというのもありますし、正直ちょっと悩んでいますが…。 比企丈貫はタンカーが居ないと厳しそうに思いますので、ひとまずは比企丈貫へ回ろうかと考えていますが、何方かヒーラーの方がご一緒して頂けば助かります。 他の相手の方が良いかも、など意見がありましたら遠慮なく仰って頂ければ。
じゃあ、蘆屋外伴は3名、シェドは1名で対応するとしたら以下のような形になるかな。 ・比企丈貫 コルネリウス (ヒーラー) ・岩御門典将 クローリカ シルヴィア ・シェド・カレンガン (一人で時間を稼ぐなら回避高いシーフが良いか?) ・蘆屋外伴 (シーフ) (ヒーラー) ジュスト
なら私は、蘆屋外伴の対応にあたりましょうか。 蘆屋外伴は近接戦闘も、遠隔魔法攻撃もできるらしいから、 後衛も攻撃を受けるリスクを考えて、生命高めの私かなって。 比企丈貫に遠隔攻撃はないから、コルネリウスが前衛になら 後衛は魔攻の高い、ナタリアの方が良いんじゃないかな? という理由で、手を挙げておくわ。 >蘆屋外伴戦 相談だけど、クライスが観察を終えたタイミングで、 私が蘆屋外伴に「光縛封」を使うのはどうかしら? 破壊されそうだけど1手、もしかしたら2手を消費させられる。 その短い間に、攻撃1回でもシェド戦に加勢できないかなって。 蘆屋外伴はOPでも罠を疑ってるし、前々回、判断力の高さを 評価されていたから、こっちの狙いを察知されたらシェド戦や 他の救援に動きそうで。それを一時でも妨害したいなって。 >比企丈貫戦 コルネリウスなら大丈夫と思ってるけど、前々回に高レベルの ウォーリアでも式鬼に攻めきれなかったことを考えると、 式鬼を倒すより、召喚者を狙う方が良いのかなあと思ったりも。 2体のうち1体が召喚者の護衛に付いてるみたいだから、 簡単じゃなさそうだけど、式鬼は相当に強いなって思うわ。 …自分が倒されたから、怖がってるだけかもしれないけど…。 >対応予定表(相談中) ・比企丈貫 コルネリウス (ヒーラー) ・岩御門典将 クローリカ シルヴィア ・シェド・カレンガン (一人で時間を稼ぐなら回避高いシーフが良いか?) ・蘆屋外伴 (シーフ) ロゼット ジュスト
ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 ちょっと別件で遅くなってしまった。 この件に関しては前回、関わった事はあれども改めて敵に関しての情報提供に感謝を。 私としても特に拘りは無いから、比企丈貫の相手も大丈夫だ。 タンカーが有用ならインフィニティロアを持ち込むとして。 もう1枠は相手が物理主体なだけに壁設置用の光縛封か、タンクを引き受けてくれるコルネリウスの全快の為にリヴァーオブヴァイタルを持ち込むべきか迷うところだ。 >対応予定表(相談中) ・比企丈貫 コルネリウス ナタリア ・岩御門典将 クローリカ シルヴィア ・シェド・カレンガン (一人で時間を稼ぐなら回避高いシーフが良いか?) ・蘆屋外伴 (シーフ) ロゼット ジュスト
天陽道との関わり合いはあるけれど名がある相手とはまだ交戦してなく因縁もないので、とりあえずでシェドの方に手を挙げておくわね。 ベルクちゃんの方がシェドの方がよければいってもらえれば交代するわ。 >対応予定表(相談中) ・比企丈貫 コルネリウス ナタリア ・岩御門典将 クローリカ シルヴィア ・シェド・カレンガン エミリア ・蘆屋外伴 (シーフ) ロゼット ジュスト
すまない、顔出しが遅くなってしまった。 シーフのベルクだ、よろしく頼む。 我も特に天陽道ともカレンガン派とも縁がないんだよなぁ。 と言うわけで我が外伴と言うことでもいいだろうか? 勿論我がシェドの方がいいなら対応する。 >対応予定表(相談中) ・比企丈貫 コルネリウス ナタリア ・岩御門典将 クローリカ シルヴィア ・シェド・カレンガン エミリア ・蘆屋外伴 ベルク ロゼット ジュスト
特に異存がなければ現在出ている表明で観察終了までの抑えをするという想定で話を進めようか。 各敵の抑え方を相談しつつ、観察終了後の動きについても合わせておいた方が良いかな? ロゼット殿が観察終了後、蘆屋外伴を光縛封で一時的にでも抑えてシェドに加勢する案を出してくれているけれど、俺は良いと思う。 というのも、4人の内討伐しやすそうなのがクライス殿に固執しているシェド、次いで当たれば他より脆そうな岩御門典将の2人という印象なのと、取り敢えずシェドを倒してしまえば天陽道の面々は一旦退きそうだから。 そんなわけで、観察終了したら引き続き抑えをする人と反撃に転じる人に別れて、倒しやすそうな2人ないし1人に戦力を集中するのが良いかなと。 懸念としては戦闘中の位置関係が分からないというか纏まっていない可能性もあるので、反撃に転じるタイミングで人によっては移動が必要になるかもしれないことと、短時間で決めないと比企丈貫と蘆屋外伴に抑えが突破される危険性が高いことかな。 ロゼット殿も触れているけれど、比企丈貫に関しては式鬼を抜いて術者である比企自身にダメージを与えることが出来れば攻略の目が見えそうだし、牽制し易くなるかなと思ったよ。 蘆屋外伴に関してはグラビティや移動力低下で動きを鈍らせる他、デバフ系の術で能力低下させて被弾時の被害を減らすことで耐久しようかと考えている。
エミリアとベルクの配置に、私は異論ないわ。 シェドは観察後、できれば倒しておきたいから攻撃重視、 蘆屋外伴は今回、打倒は難しいと思うから安全重視の 立ち回りになりそうで、ふたりがそれでも良さそうなら。 >戦闘中の位置関係 断言は難しいけど、敵の目的は「クライス殺害」だから、 シェドはもちろん、他の敵もクライスが見えるぐらいの位置に 留まって戦うんじゃないかなと。そう離れないと想像してるわ。 >蘆屋外伴戦 観察中は、ベルクに「回避強化」をかけようかな。 前衛をお願いすることになりそうだし、少しでも安全を。 観察後は、提案に反対なければ外伴に光縛封をかけて、 その間にシェドに「魔矢」で追加攻撃…ぐらいかなあ。 岩御門典将には、私の攻撃手段じゃ回避されそうで。
観察終了後、ロゼットが光縛封で蘆屋外伴を抑えてくれるのは賛成だよ。 岩御門典将については、既に言って貰っているけれどまず攻撃が当たるかどうかかな。ナタリアのインフィニティロアを貰えたら貰いつつ、それが難しい場合の為に命中強化スキルを持って行こうかと考えている。 >岩御門典将戦 基本は遠距離攻撃、観察終了後に必中攻撃の祈雷を使って様子を見たいな。岩御門典将が祈雷の攻撃範囲から離脱するならするで、クライスから引き離す方向に誘導したい。シェドの次に討伐しやすそうというのも同意だし、観察終了後もそのまま攻撃を続けるつもりだ。 もう一つの特性スキルは考え中。招霊呪怨縛とBSスキルで援護に集中するのも良さそうだね。範囲回復も良いから悩ましい。勿論回復スキルでのサポートにも全力を尽くすよ。
>比企丈貫 ナタリアさん、よろしくお願いしますね。頼りにさせて頂きます。 ロゼットさんとジュストさんも情報ありがとうござます。ナタリアさんに攻撃が飛ばないように引き付けて護る事と、比企を直接殴れるように動きを考えてみますね。 観察終了した後は、引き続き抑えをするように動く予定です。
>岩御門典将戦 回避が高めの相手ですので、命中重視な構成で行きますね。 もちろん前衛として盾役も引き受けます。
それじゃあ、おねえさんがシェドで問題なさそうなので、それでいかせてもらうわね。 ウォーリアーみたいにZOC形成できるわけじゃないから、立ち回りでできるだけ依頼主にの方に行かないように注意しながら戦ってみるわ。
>蘆屋外伴戦 光縛封の件への反応ありがとう。なら行動に入れておくわ。 効果中、届くなら「魔矢」でシェドを狙ってエミリアに加勢ね。 光縛封の効果後は再度、外伴の足止め体制に戻るわ。 >ナタリアのインフィニティロア 私は遠慮しておくわ。前回、シルヴィアが開幕に範囲強化を 使ったら、全員が密集したところを範囲魔法で狙い撃たれたし。 同じ展開はあると思うから、そこは知っておいた方が良いかも。 メリットも大きいから、使用は良いと思うわ。
>蘆屋外伴戦 回避強化に感謝を。 近接職は我だけだからな、喜んで前衛は務めさせてもらおう。 ただウォーリアと違って壁にはなれんのでそれだけは気を付けてくれ。
>ベルク殿 明日出発のところ申し訳ないんだが、一つお願いしたいことが。 蘆屋外伴に関してはもしかしたら最初の内は姿を隠すなどしてこちらの出方や戦況を窺っている可能性がある。 もし姿が見えない時は捜波系のスキルで探ってみて貰っても良いだろうか? 回避系の方にスキルを振りたい等予定もあるかもしれないので、厳しかったらこちらで感覚系と戦術眼で探れないか試してみるよ。
了解した、宗波で探索もプレに盛り込んでおこう。 回避系は特性を圧迫しないので大丈夫だ。 今回は高速での長距離移動も、あまり必要なさそうだしな。
同班のクローリカは改めてよろしくね。 >ナタリアのインフィニティロア 確かにまた纏まったところを狙われてしまうかもしれないね……そうなってしまうと申し訳ないし、今回はクローリカと自分に命中上昇スキルを付与しようと思う。ロゼット、指摘ありがとう。
ベルク殿はスキルの調整ありがとう。 OPでのやりとりはPL情報ではあるんだけれど、そういえば最初の事件の時も隠れて様子窺っていたなと思って。 少し不安だったので助かるよ。
プレイングは提出したわ。明日には出発ね。頑張りましょう。 >蘆屋外伴戦 魔法は仕方ないけど、移動でジュストに迫っての物理攻撃には 壁役をするわ。防御集中と回復スキルで、守りだけに専念して。 ベルクを背後に置いての突破は、向こうもリスクがあるでしょう。
締め切り前まで、もうあと僅かだが。 光縛封は射線妨害を懸念して取りやめて、代わりにヴァイタル持参に加えて堅甲3にヒール2とでコルネリウスの補強に徹するつもりだ。 前回、纏まって動いた所を敵の一斉攻撃に晒されたというなら、極力そういうのは控えた方がいいのかもしれないな。 そういう意味でも、私も申し訳ないが優先すべきは私とコルネリウスという風に動く事になる。
ナタリアさんは補助についてありがとうございます。 今回、強靭3が積めなかったので、堅甲を付与してくださるならとても心強いです。 前述の通りナタリアさんに攻撃がいかないよう出来るだけ鬼を引き付けて、術者を殴りやすいように動いていく予定です。 宜しくお願いします。