【西局】内通者を探せ
おおくまねこ
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シナリオID:2309
オープニング
●密室依頼
その冒険者ギルドの店の奥には、滅多に人が立ち寄らない秘密の部屋がある。依頼人が依頼を出した事実を秘匿し、内密に依頼を出したい時にだけ使われる、密室の依頼部屋だ。この部屋には依頼人と、おおまかな依頼内容に事前に同意した冒険者のみが招かれる。
「君達に、この人物たちの素行調査を頼みたい。この4名は、我ら王国の敵である太信党にこちらの情報を流している疑いがある者達だ」
リーンエス王国西方の領主、ロドリゲス・ローリング伯爵は依頼の内容を切り出した。彼は王国西方の守護の任に就いている西方辺境伯……ルーヴェン・アクファリテに仕える寄り子貴族の一人である。
伯爵はかねてより、蛮族の大組織である『太信党』と内通している者が王国側にいるのではないかと疑い、秘かに内偵を進めていたのだ。
「ここから先は慎重に事を進めたい。最後の詰めは少数精鋭……つまり、君達のような腕利きの冒険者に頼みたいのだ。それに、軍の人間を使って内偵を進めると内通者に感づかれる確率が上がるしな。以上が、密室で依頼を出した理由だ。ここまではいいかな?」
冒険者達が頷いたのを確認した後、伯爵は人相書きが添付された4人分の資料を取り出した。
「『シラー砂漠の斥候』アスモデウス。『武器商人』マモン。『弁当屋』バアル。『歩き巫女』ユズリハ。
彼ら4名が素行調査の対象者だ。いずれも隠密行動に長けたクラスの授恵者であり、非授恵者では悟られずに追跡することは困難だろう。私はこの中の一人……多くて二人は太信党と通じるスパイだと見ている」
人相書きを見る限り、調査対象は男女が二人ずつ。こうして資料と共に見比べてみると、誰も彼も怪しく見えてくる。
「首尾よく内通者を特定できたとしても、できるだけ事は荒立てないで欲しい。しばらく泳がせたいからな。内通者を特定した上で、正体を見破ったことは向こうには悟られていない、という状況が私としては理想的だ。それと、この資料は全てこの場で焼却させてもらう。今、この場で頭に叩き込んでくれ」
伯爵は冒険者達が資料を記憶したのを確認した後、火が出る紋具を取り出し、宣言通りに資料を焼却処分した。
「……行ったか。なんとか連中の尻尾を掴めると良いのだが……」
冒険者達が退席した後、伯爵は独り溜息を吐いた。実は、伯爵は依頼の説明から意図的にある情報を省いていた。それは、内通者であることが最も疑わしい、ある貴族についての情報だ。
「私のカンは連中が黒だと言っているが、さすがにあの一族に関しては調査依頼を出すこと自体が危険過ぎるからな。何しろ、『始まりの百家』に連なる名家なのだから。迂遠なやり方だが……連中の尻尾を掴むには、外堀から埋めていくしかあるまい。頼んだぞ、冒険者たちよ」
その冒険者ギルドの店の奥には、滅多に人が立ち寄らない秘密の部屋がある。依頼人が依頼を出した事実を秘匿し、内密に依頼を出したい時にだけ使われる、密室の依頼部屋だ。この部屋には依頼人と、おおまかな依頼内容に事前に同意した冒険者のみが招かれる。
「君達に、この人物たちの素行調査を頼みたい。この4名は、我ら王国の敵である太信党にこちらの情報を流している疑いがある者達だ」
リーンエス王国西方の領主、ロドリゲス・ローリング伯爵は依頼の内容を切り出した。彼は王国西方の守護の任に就いている西方辺境伯……ルーヴェン・アクファリテに仕える寄り子貴族の一人である。
伯爵はかねてより、蛮族の大組織である『太信党』と内通している者が王国側にいるのではないかと疑い、秘かに内偵を進めていたのだ。
「ここから先は慎重に事を進めたい。最後の詰めは少数精鋭……つまり、君達のような腕利きの冒険者に頼みたいのだ。それに、軍の人間を使って内偵を進めると内通者に感づかれる確率が上がるしな。以上が、密室で依頼を出した理由だ。ここまではいいかな?」
冒険者達が頷いたのを確認した後、伯爵は人相書きが添付された4人分の資料を取り出した。
「『シラー砂漠の斥候』アスモデウス。『武器商人』マモン。『弁当屋』バアル。『歩き巫女』ユズリハ。
彼ら4名が素行調査の対象者だ。いずれも隠密行動に長けたクラスの授恵者であり、非授恵者では悟られずに追跡することは困難だろう。私はこの中の一人……多くて二人は太信党と通じるスパイだと見ている」
人相書きを見る限り、調査対象は男女が二人ずつ。こうして資料と共に見比べてみると、誰も彼も怪しく見えてくる。
「首尾よく内通者を特定できたとしても、できるだけ事は荒立てないで欲しい。しばらく泳がせたいからな。内通者を特定した上で、正体を見破ったことは向こうには悟られていない、という状況が私としては理想的だ。それと、この資料は全てこの場で焼却させてもらう。今、この場で頭に叩き込んでくれ」
伯爵は冒険者達が資料を記憶したのを確認した後、火が出る紋具を取り出し、宣言通りに資料を焼却処分した。
「……行ったか。なんとか連中の尻尾を掴めると良いのだが……」
冒険者達が退席した後、伯爵は独り溜息を吐いた。実は、伯爵は依頼の説明から意図的にある情報を省いていた。それは、内通者であることが最も疑わしい、ある貴族についての情報だ。
「私のカンは連中が黒だと言っているが、さすがにあの一族に関しては調査依頼を出すこと自体が危険過ぎるからな。何しろ、『始まりの百家』に連なる名家なのだから。迂遠なやり方だが……連中の尻尾を掴むには、外堀から埋めていくしかあるまい。頼んだぞ、冒険者たちよ」
解説
依頼内容:内通者の疑いがある授恵者4名の素行調査。
依頼人:辺境伯の寄り子貴族・ローリング伯爵
状況:太信党に王国の情報を流している内通者を特定してほしいという内密の依頼が冒険者ギルドに出されました。容疑者4名の素行調査を行い、内通者を特定しましょう。依頼人からは特定できた場合もしばらくは泳がせるつもりなので、大事にはしないでほしいという注文がついています。
成功条件:内通者を全員特定する。
大成功条件:内通者を全員特定した上で、内通者にこちらが正体を見破ったことを悟らせない。
※内通者は1名だけの可能性もあります。
●
このシナリオでは、「青燕兵曹」の称号を持つPCがNPC部隊(約20名)に対し、部隊規模での行動を依頼することが出来ます。但し依頼内容によっては部隊の了承を得られない場合もあります。
●容疑者たち
No1 『シラー砂漠の斥候』アスモデウス シューター 男性
シラー砂漠にある砦に配備されている斥候。授恵者で兵士としては優秀だが口が悪く、「危険な割に給料が安い」とよく愚痴をこぼしている。内地から徴兵された兵士の一人で、所属は西方辺境伯の直轄部隊である護兵団とは異なる。オフの日は最寄りの街の酒場に出没する。
活動拠点:シラー砂漠の砦(激戦地の為、警備は厳重)
No2 『武器商人』マモン シーフ 男性
都市同盟の武器商人。辺境伯軍に上質な武器を提供しているが、西方辺境伯と取引を始めたのは最近。武器供給の都合で西辺境伯軍の内情をある程度知り得る立場。秘書がいるが、重要な取引は自ら現場に赴く。
活動拠点:辺境伯領内の貸し別荘(セキュリティ厳重)
No3 『弁当屋』バアル シーフ 女性
西方辺境伯軍の兵站供給源の一つである、アプリコット商会から派遣されている商人。商会では王国西部方面のエリアを総括する地位に就いている。軍人ではないが兵士の食料の配送の都合で軍のスケジュールをある程度知らされている。結婚願望はあるが、仕事が忙しすぎて恋人はいない。兵士にはモテる。27才。
活動拠点:辺境伯領内にある自宅(都心の一等地)
No4 『歩き巫女』ユズリハ シューター 女性
シャルガネ人の歩き巫女。西辺境伯寄り子貴族領であるラーザニア領の難民キャンプに逗留し、祈祷や魔法による怪我人の治療、生活魔法の行使などのプリーストっぽいサービスを格安で行っている。恐らくシャルガネの間諜だが、太信党と通じているかもしれない。
活動拠点:不定
マスターより
●マスターより
こんにちは。おおくまねこです。今回は敵側に情報を流しているスパイを特定する依頼となります。冒険者側にも腕っぷしよりも、かくれんぼや鬼ごっこ、情報収集などの諜報能力が要求されます。あと巫女さんのユズリハは初登場です。
ご興味がありましたらよろしくお願いいたします。
リプレイ
●調査対象No1 『シラー砂漠の斥候』アスモデウス
「俺とロゼは斥候を当たってみよう。西方辺境伯麾下の私設兵団に太信党関係の仕事を一つ預からせてもらえないか、交渉してみるよ」
ジュスト・ヴェルジーがと交渉したところ、部隊の指揮権までは貰えなかったが、砦の兵士のスケジュールや作戦行動の一部の閲覧と、部隊への同行が許可された。ジュストはその中から調査対象が参加している作戦を探す。
「これがちょうどいいかな」
ジュストが選んだのは、アスモデウスの休日の直前の作戦だった。ごく平凡なシラー砂漠の哨戒任務だが、アスモデウスと接触し、ローザリカ・L・ディオールが潜伏している酒場に誘い出すのにはちょうどいいだろう。
ジュストは『青燕兵曹』として哨戒部隊に潜り込み、アスモデウスとしばし行動を共にした。
●
「先ほどは助かったよ、良い仕事ぶりだった」
「どうも。伯爵家の次男様にお褒め頂けるとは、光栄です」
わざと砂漠の魔獣に襲われ、アスモデウスに救援される様を見事に演じたジュストは、アスモデウスに礼を言った。アスモデウスも貴族であるジュストに褒められるのはまんざらではない様子だ。
「良ければ明日一杯奢らせてもらえないか。僕も君と同じく内地の人間だしね。それに、ぜひ今日のお礼をしたい」
「は。そうおっしゃるならば喜んでお供します」
(さて、依頼人の資料とは裏腹に、礼儀正しい青年に見えるが……本当の所はどうだろうな)
今の所作戦は順調だ。しかしアスモデウスのジュストに対する態度はかなり他人行儀なので、多少おだててもそうそうボロは出さないかもしれない。だが、ジュストにはもう一つ秘策があった。
「この店だよ。良い踊り子が来ているらしいんだ」
「いらっしゃいませー。あら、いい男が二人!」
ジュストとアスモデウスが酒場に入店すると、赤毛のナイスバディの踊り子が愛想よく挨拶をしてくれた。
「それはどうも。踊り子さん、羽根の伸ばせそうな席に案内してくれるかな」
「はーい。二名様ごあんなーい!」
(よし、ちゃんと連れて来たな。さあ、アスモデウスの化けの皮を剥がしてやろう)
何を隠そう、この踊り子こそがローザリカである。どこにスパイがいるか分からないということもあり、身分を伏せたまま店と交渉したローザリカだが、見目麗しく、豊満なボディの持ち主のローザリカはあっさりバイトとして採用された。
煌びやかな衣装に身を包みつつも、大胆に谷間やヘソを露出したローザリカは、その身に踊り子の幻想を纏い、時に優雅に、時に大胆に踊る。
その魅惑の舞踏に、アスモデウスを含む男の客達はみな夢中だった。
(女性らしさは武器だ、自分の魅せ方くらいは心得ている)
「いいぞー! ねーちゃん!」
「脱げー!」
下品に盛り上がる客の男達。ローザリカがチラリとジュストの方を見ると、彼もにこにこと拍手をしていた。
(仕事とはいえロゼのあられもない姿を晒すのは少し、いやかなり面白くないんだけれど。
貴族たるもの、内心は簡単には悟らせない)
だが、ジュストの胸中は決して穏やかではなかった。
(さて、そろそろ始めよう)
ダンスを終えた後、ローザリカは各テーブルを回り、客側にスパイが混ざっていないかも注視しつつ、ジュスト達のテーブルへと近づいて行く。すると、待ってましたとばかりにアスモデウスがローザリカに話しかけてきた。
「君、可愛いね。名前を聞かせてくれないか? 俺はアスモデウスだ」
「ありがとう! 私、ローズよ」
「貴方、もしかしなくても兵隊さんでしょう。わかるわよ、こんなに男前なお客様はそうそういないもの!」
「ありがとう。お察しの通り、俺は砂漠の砦勤めさ。日々、蛮族から人々を守っている」
「あなた、前線の兵隊さんなの? 素敵!」
ローズが愛想を振り撒くと、アスモデウスはどんどん気をよくした。隣にいるジュストは「やれやれ、砂漠の花はアスモデウス殿に夢中か」と肩を竦めた。
ローズの誘導により、テーブルの話題は自然と職場の話になった。ローズは頃合いを見て、アスモデウスに給料の話題を振る。
「あなた、優秀そうだけど、お給料は働きに見合った額がもらえているのかしら?」
ローザリカはアスモデウスに踏み込んだ問いを投げてみた。すると、アスモデウスは首を横に振り、職場の不満をぶちまけた。
「いいや。ここだけの話、西辺境伯はケチな男でね。危険な仕事の割に手当はショボい。こっちはわざわざ、内地からはるばるクソ暑い砂漠まで戦いに来てやってるのによ……と、おっと口が滑った。ジュスト殿。どうか今のは聞かなかったことにしていただけると有難い」
途中でジュストの存在を思い出したのか、慌ててジュストに頭を下げるアスモデウス。ジュストは「俺も内地から来ているからね、君の気持ちは分かるよ」と話を合わせた。
(だいぶ出来上がってきたな。仕掛けるなら、そろそろか)
ジュストはアスモデウスがもう泥酔していると判断し、勝負を仕掛けた。ちなみにジュストの飲み物はローザリカの細工により、ノンアルコールになっている。
「アスモデウス殿、君は太信党についてどう思う? 我々は彼らと殺し合う以外の道はないのだろうか?」
「うっとおしい連中ですよ。殺しても殺しても湧いてくる。でもまあ、少しは話の分かる奴も――いえ、なんでもありません」
そこまで言いかけ、アスモデウスは口をつぐんだ。
((これはクロだな))
ジュストはローザリカと目配せする。あと一押しだ。
(いっそどこまで妬いてくれるか試してやるかな)
ローザリカはくすりと笑うと、アスモデウスの耳元で囁いた。
「ね、良かったらもう少しご一緒してくださらない?……ここだけの話、少し飽き飽きしていたの」
ローザリカが流し目を送ると、アスモデウスは首をぶんぶんと縦に振った。その時、ギリリ、という鈍い音がジュストの方から聞こえて来たのはたぶん気のせいだろう。
そしてそれから数分後。ジュストとローザリカは睡眠薬で爆睡するアスモデウスを兵舎まで送らせよう手配し、仲良く(?)冒険者ギルドへと帰っていった。
●結果報告
アスモデウスは内通者の可能性が非常に高い。どうやら太信党に買収された模様。
●調査対象No2 武器商人マモン
「さて、ここがマモンの屋敷だな」
ダムド・フィリスは早速マモンの屋敷の敷地内への潜入を果たしていた。番犬が数体と、常時2人組で巡回している数グループの警備員たち。まるで砦のような警備体制だが、警備員たちはみな非授恵者だ。念のため、香草で体臭を消し、『ハイディング』による気配隠蔽を行っているダムドにとっては、屋敷への侵入は容易いことだった。
「だが、問題はマモン自身もシーフだってことだ」
使用人や番犬たちはやり過ごせても、マモン本人には気づかれる恐れがある。それを危惧したダムドは初日は外から屋敷を眺めることに専念した。
「いよいよ本番だな」
ダムドが最初に屋敷に侵入してから三日目。警備が手薄な場所を割り出したダムドは、マモンの私室への潜入を試みた。捜波を駆使し、人間もペットの類もいないのを確認した後、深夜に壁歩きで屋敷の壁をよじのぼり、屋根裏へと侵入することに成功した。
「情報をリークするなら、手紙を使うか、直接相手とやり取りするかどちらかだろう……尻尾を掴んでやる……」
飲食を不要とするダムドは屋根裏で聞き耳を立て、マモンが怪しい動きをするのをじっと待ち続けた。そして……。
「マモン様。こんな時間にどちらへ?」
「例のレムアルス殿から頼まれた案件だ。私一人で行くから、君は留守を頼む」
「畏まりました。《《王国に気取られぬよう、お気を付けください》。」
「ああ、分かっている。まったく、コウモリ外交も楽ではないな。教団の資金繰りがうまくいっていない以上、多少危ない橋を渡るのもやむを得んのだが。まったく、グリゼルダ様も余計なことをしてくれたものだ」
(グリゼルダだと……!)
その名はダムドも聞いたことがある。かつてドワーフ王国のハレウドを陥落させて死の街へと変え、この王国でもウィリアム王子を襲撃した、大陸屈指の危険人物である。
急いでこの事実を依頼人に伝えなければ。一気に血の気が引いたダムドだったが、逸る気持ちを抑え、マモンと秘書の気配を探ることに努めた。
やがて、一人分の足音が部屋を出ていく音が聞こえた。ダムドは秘書に悟られぬよう気配を隠し、屋根の外へと飛び出すと、急いで屋敷の門が見える位置へと移動した。
しかし、いつまで経ってもマモンが門から出てくることはなかった。
「くそ、ハイディングを使っているな。看破を使えばこっちの存在がバレる。ここは見送るしかないか……」
●結果報告
武器商人マモンは太信党の内通者である可能性が非常に高い。さらに、メドゥの指先の幹部・青の親指グリゼルダの部下でもある模様。警戒されたし。
備考:マモンは『レムアルス』という者からの依頼でスパイ行為を行っているようだ。
●調査対象No3 弁当屋バアル
「内通者の調査、可能であれば当人に気づかれず……ねぇ」
ルチル・プルメリア・グレイハーツは渡された資料を吟味しながら、依頼人の出した注文の背景について考察していた。
(証拠を見つけて即逮捕ではなく、泳がすのが理想ということは、この4人以外に本命がいるということかい? そしてそれをアタイ達に説明しないということは、迂闊に手を出すのが危険な存在という事だね)
「難しいかね? 骨のレディ」
「難しい注文だね。けどできなくはないさ。やってみよう」
依頼人の問いかけに、ルチルは自信ありげに答えた。
その後、冒険者達で依頼の進め方を相談し、弁当屋のバアルを担当することになったルチルは、早速彼女の自宅へと向かった。
「さて、相手はシーフだ。慎重にやらないとね」
ルチル自身はギリギリまで距離を取り、相棒の栗鼠だけをバアルの家の近くに送り込んだ。物陰から、しばらく彼女の家を監視させるのだ。
「ターゲットは立場上兵士や傭兵が来客として訪れても不思議はない。もし彼女がスパイなら、自宅で情報のやりとりをしている可能性が高い」
ルチルは来客を確認するたび、自身も樹上に身を隠し、超視覚で来客の様子を観察する。さらにバアルが弁当を売りに行った際、兵士に紛れて自身も弁当を買いに行ってみた。
「アタイにも一つ。このコロッケ定食で」
「はい、まいどあり!」
ついでに彼女の客である兵士とも雑談し、彼女の評判についても探りを入れる。
「バアルちゃんかい? 人気者だけど、特定の男の噂は聞かないねえ」
「ああ。仕事が終わったらいつも真っすぐ家に帰ってるみたいだぞ。忙しいっていつもぼやいてるよ」
「ふむ……バアルはシロだね」
一週間彼女の様子を観察したルチルは、そう結論した。
●結果報告
弁当屋バアルに内通者の疑いなし。
●調査対象No4 歩き巫女ユズリハ
「歩き巫女って薬売りと並ぶ間諜の代名詞だろうに、堂々としすぎだろ」
ルチルからターゲットの所在地の情報を聞き、現場に駆け付けたベルク・オスマットはターゲットの目立つ容姿に呆れていた。赤と白の二色で構成された、この国では極めて珍しい『巫女装束』。明らかにシャルガネ人である顔立ちもあり、「私は怪しい者です」と宣伝しているに等しい。
「とはいえ、依頼人の話では彼女はシューターらしいからな。ルチル殿もリスに気を付けろと言っていたし、油断はできぬ」
ユズリハの現在地はベルクの顔見知りも多い、ディーグ族のキャンプ地だった。ベルクはうっかり本名で話しかけられないよう、予めディーグ族に話を通した後、ユズリハに接触を試みた。
●
「おねえちゃん、お水ちょうだい」
「はい、どうぞ」
ベルクが子供のフリとしてユズリハに水をねだると、ユズリハはにこにこと笑って生活魔法で水を出してくれた。
「ありがとう。お姉ちゃん、変わった服着てるね。外国の人?」
「ええ、これはシャルガネの法衣なんですよ。私は世界をあちこち回って修行を……」
ベルクはユズリハの素性について探りを入れてみた。ユズリハの語った素性は、依頼人から聞いていたものと相違なかった。
(そういう設定で通しているというわけか)
ベルクはしばらく雑談した後、勝負に出た。
「早く故郷に帰りたいな、ベルク様、早くアディ何とかって奴みたいに太信党を討ち取ってくれないかな」
「アディなんとか……ですか?」
「うん、太信党のわるいやつ。獣人の英雄がやっつけたんだって!」
「それは凄いですね! その人のお名前は何と言われるのでしょう?」
(む。食いついてきたな。だが、太信党の内通者ならば戦術参謀の名前ぐらいは知ってそうなものだが……本当に知らないのか、それとも演技なのか……腹の底が見えないな)
「ベルク様だよ!」
ベルクは撃破した太信党関係者の名前を出したりしてみたが、ユズリハの態度にそれに対する悪意が出ることはなかった。さすがに太信党そのものについては知っていたが、ベルクの名前については、本当に知らなさそうに見える。
「お水、ありがとう。しゅぎょう、頑張ってね」
ベルクはユズリハに水の礼を言って別れた後、近くに栗鼠がいないか観察した。いなさそうだったので、ベルクは変装を解き、気配を隠して彼女を追うことにした。
「む。あれは、栗鼠か? ラトではないな……一回り小さい種類だ」
ユズリハがディーグ族のキャンプを発ち、移動していく際にベルクは遠くから彼女についていく栗鼠を発見した。後でルチルに確認したところ、シャルガネ原産のシマリスであることが発覚した。彼女自身のペットである可能性は高いだろう。
それからしばらくの間ベルクは夕暮れ時の砂漠を移動していくユズリハの追跡調査を続けたのだが――。
「!」
それから一時間も経たぬ間に、ベルクはハイディングを見破られてしまった。
(警戒されていたか! まずい!)
「おや。どなたですか?」
「神は偉大なり!」
ベルクは大声でそう叫び、全力疾走でその場から離脱した。その後、ユズリハがベルクを追ってくることはなかった。
●結果報告
ユズリハの調査については追跡を見破られたので途中で中断。追跡がバレた際こちらの顔は隠していたが、内偵には気づかれた可能性がある。
確認できた範囲では彼女が太信党と通じていた素振りはなし。また、栗鼠のペットを所有していることも判明。彼女については監視を付けることを推奨する。
●エピローグ
「ふむ……アスモデウスとマモンがクロか……恐らく、マモンの方が私の探していた本命だな。まさか奴がメドゥの指先の構成員だったとは……。一人残ったグレーについてはこちらで調査を引き継ごう。難しい依頼だったが、よくやってくれた」
ローリング伯爵は冒険者達の報告を聞き、ぺこりと頭を下げた。
「俺とロゼは斥候を当たってみよう。西方辺境伯麾下の私設兵団に太信党関係の仕事を一つ預からせてもらえないか、交渉してみるよ」
ジュスト・ヴェルジーがと交渉したところ、部隊の指揮権までは貰えなかったが、砦の兵士のスケジュールや作戦行動の一部の閲覧と、部隊への同行が許可された。ジュストはその中から調査対象が参加している作戦を探す。
「これがちょうどいいかな」
ジュストが選んだのは、アスモデウスの休日の直前の作戦だった。ごく平凡なシラー砂漠の哨戒任務だが、アスモデウスと接触し、ローザリカ・L・ディオールが潜伏している酒場に誘い出すのにはちょうどいいだろう。
ジュストは『青燕兵曹』として哨戒部隊に潜り込み、アスモデウスとしばし行動を共にした。
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「先ほどは助かったよ、良い仕事ぶりだった」
「どうも。伯爵家の次男様にお褒め頂けるとは、光栄です」
わざと砂漠の魔獣に襲われ、アスモデウスに救援される様を見事に演じたジュストは、アスモデウスに礼を言った。アスモデウスも貴族であるジュストに褒められるのはまんざらではない様子だ。
「良ければ明日一杯奢らせてもらえないか。僕も君と同じく内地の人間だしね。それに、ぜひ今日のお礼をしたい」
「は。そうおっしゃるならば喜んでお供します」
(さて、依頼人の資料とは裏腹に、礼儀正しい青年に見えるが……本当の所はどうだろうな)
今の所作戦は順調だ。しかしアスモデウスのジュストに対する態度はかなり他人行儀なので、多少おだててもそうそうボロは出さないかもしれない。だが、ジュストにはもう一つ秘策があった。
「この店だよ。良い踊り子が来ているらしいんだ」
「いらっしゃいませー。あら、いい男が二人!」
ジュストとアスモデウスが酒場に入店すると、赤毛のナイスバディの踊り子が愛想よく挨拶をしてくれた。
「それはどうも。踊り子さん、羽根の伸ばせそうな席に案内してくれるかな」
「はーい。二名様ごあんなーい!」
(よし、ちゃんと連れて来たな。さあ、アスモデウスの化けの皮を剥がしてやろう)
何を隠そう、この踊り子こそがローザリカである。どこにスパイがいるか分からないということもあり、身分を伏せたまま店と交渉したローザリカだが、見目麗しく、豊満なボディの持ち主のローザリカはあっさりバイトとして採用された。
煌びやかな衣装に身を包みつつも、大胆に谷間やヘソを露出したローザリカは、その身に踊り子の幻想を纏い、時に優雅に、時に大胆に踊る。
その魅惑の舞踏に、アスモデウスを含む男の客達はみな夢中だった。
(女性らしさは武器だ、自分の魅せ方くらいは心得ている)
「いいぞー! ねーちゃん!」
「脱げー!」
下品に盛り上がる客の男達。ローザリカがチラリとジュストの方を見ると、彼もにこにこと拍手をしていた。
(仕事とはいえロゼのあられもない姿を晒すのは少し、いやかなり面白くないんだけれど。
貴族たるもの、内心は簡単には悟らせない)
だが、ジュストの胸中は決して穏やかではなかった。
(さて、そろそろ始めよう)
ダンスを終えた後、ローザリカは各テーブルを回り、客側にスパイが混ざっていないかも注視しつつ、ジュスト達のテーブルへと近づいて行く。すると、待ってましたとばかりにアスモデウスがローザリカに話しかけてきた。
「君、可愛いね。名前を聞かせてくれないか? 俺はアスモデウスだ」
「ありがとう! 私、ローズよ」
「貴方、もしかしなくても兵隊さんでしょう。わかるわよ、こんなに男前なお客様はそうそういないもの!」
「ありがとう。お察しの通り、俺は砂漠の砦勤めさ。日々、蛮族から人々を守っている」
「あなた、前線の兵隊さんなの? 素敵!」
ローズが愛想を振り撒くと、アスモデウスはどんどん気をよくした。隣にいるジュストは「やれやれ、砂漠の花はアスモデウス殿に夢中か」と肩を竦めた。
ローズの誘導により、テーブルの話題は自然と職場の話になった。ローズは頃合いを見て、アスモデウスに給料の話題を振る。
「あなた、優秀そうだけど、お給料は働きに見合った額がもらえているのかしら?」
ローザリカはアスモデウスに踏み込んだ問いを投げてみた。すると、アスモデウスは首を横に振り、職場の不満をぶちまけた。
「いいや。ここだけの話、西辺境伯はケチな男でね。危険な仕事の割に手当はショボい。こっちはわざわざ、内地からはるばるクソ暑い砂漠まで戦いに来てやってるのによ……と、おっと口が滑った。ジュスト殿。どうか今のは聞かなかったことにしていただけると有難い」
途中でジュストの存在を思い出したのか、慌ててジュストに頭を下げるアスモデウス。ジュストは「俺も内地から来ているからね、君の気持ちは分かるよ」と話を合わせた。
(だいぶ出来上がってきたな。仕掛けるなら、そろそろか)
ジュストはアスモデウスがもう泥酔していると判断し、勝負を仕掛けた。ちなみにジュストの飲み物はローザリカの細工により、ノンアルコールになっている。
「アスモデウス殿、君は太信党についてどう思う? 我々は彼らと殺し合う以外の道はないのだろうか?」
「うっとおしい連中ですよ。殺しても殺しても湧いてくる。でもまあ、少しは話の分かる奴も――いえ、なんでもありません」
そこまで言いかけ、アスモデウスは口をつぐんだ。
((これはクロだな))
ジュストはローザリカと目配せする。あと一押しだ。
(いっそどこまで妬いてくれるか試してやるかな)
ローザリカはくすりと笑うと、アスモデウスの耳元で囁いた。
「ね、良かったらもう少しご一緒してくださらない?……ここだけの話、少し飽き飽きしていたの」
ローザリカが流し目を送ると、アスモデウスは首をぶんぶんと縦に振った。その時、ギリリ、という鈍い音がジュストの方から聞こえて来たのはたぶん気のせいだろう。
そしてそれから数分後。ジュストとローザリカは睡眠薬で爆睡するアスモデウスを兵舎まで送らせよう手配し、仲良く(?)冒険者ギルドへと帰っていった。
●結果報告
アスモデウスは内通者の可能性が非常に高い。どうやら太信党に買収された模様。
●調査対象No2 武器商人マモン
「さて、ここがマモンの屋敷だな」
ダムド・フィリスは早速マモンの屋敷の敷地内への潜入を果たしていた。番犬が数体と、常時2人組で巡回している数グループの警備員たち。まるで砦のような警備体制だが、警備員たちはみな非授恵者だ。念のため、香草で体臭を消し、『ハイディング』による気配隠蔽を行っているダムドにとっては、屋敷への侵入は容易いことだった。
「だが、問題はマモン自身もシーフだってことだ」
使用人や番犬たちはやり過ごせても、マモン本人には気づかれる恐れがある。それを危惧したダムドは初日は外から屋敷を眺めることに専念した。
「いよいよ本番だな」
ダムドが最初に屋敷に侵入してから三日目。警備が手薄な場所を割り出したダムドは、マモンの私室への潜入を試みた。捜波を駆使し、人間もペットの類もいないのを確認した後、深夜に壁歩きで屋敷の壁をよじのぼり、屋根裏へと侵入することに成功した。
「情報をリークするなら、手紙を使うか、直接相手とやり取りするかどちらかだろう……尻尾を掴んでやる……」
飲食を不要とするダムドは屋根裏で聞き耳を立て、マモンが怪しい動きをするのをじっと待ち続けた。そして……。
「マモン様。こんな時間にどちらへ?」
「例のレムアルス殿から頼まれた案件だ。私一人で行くから、君は留守を頼む」
「畏まりました。《《王国に気取られぬよう、お気を付けください》。」
「ああ、分かっている。まったく、コウモリ外交も楽ではないな。教団の資金繰りがうまくいっていない以上、多少危ない橋を渡るのもやむを得んのだが。まったく、グリゼルダ様も余計なことをしてくれたものだ」
(グリゼルダだと……!)
その名はダムドも聞いたことがある。かつてドワーフ王国のハレウドを陥落させて死の街へと変え、この王国でもウィリアム王子を襲撃した、大陸屈指の危険人物である。
急いでこの事実を依頼人に伝えなければ。一気に血の気が引いたダムドだったが、逸る気持ちを抑え、マモンと秘書の気配を探ることに努めた。
やがて、一人分の足音が部屋を出ていく音が聞こえた。ダムドは秘書に悟られぬよう気配を隠し、屋根の外へと飛び出すと、急いで屋敷の門が見える位置へと移動した。
しかし、いつまで経ってもマモンが門から出てくることはなかった。
「くそ、ハイディングを使っているな。看破を使えばこっちの存在がバレる。ここは見送るしかないか……」
●結果報告
武器商人マモンは太信党の内通者である可能性が非常に高い。さらに、メドゥの指先の幹部・青の親指グリゼルダの部下でもある模様。警戒されたし。
備考:マモンは『レムアルス』という者からの依頼でスパイ行為を行っているようだ。
●調査対象No3 弁当屋バアル
「内通者の調査、可能であれば当人に気づかれず……ねぇ」
ルチル・プルメリア・グレイハーツは渡された資料を吟味しながら、依頼人の出した注文の背景について考察していた。
(証拠を見つけて即逮捕ではなく、泳がすのが理想ということは、この4人以外に本命がいるということかい? そしてそれをアタイ達に説明しないということは、迂闊に手を出すのが危険な存在という事だね)
「難しいかね? 骨のレディ」
「難しい注文だね。けどできなくはないさ。やってみよう」
依頼人の問いかけに、ルチルは自信ありげに答えた。
その後、冒険者達で依頼の進め方を相談し、弁当屋のバアルを担当することになったルチルは、早速彼女の自宅へと向かった。
「さて、相手はシーフだ。慎重にやらないとね」
ルチル自身はギリギリまで距離を取り、相棒の栗鼠だけをバアルの家の近くに送り込んだ。物陰から、しばらく彼女の家を監視させるのだ。
「ターゲットは立場上兵士や傭兵が来客として訪れても不思議はない。もし彼女がスパイなら、自宅で情報のやりとりをしている可能性が高い」
ルチルは来客を確認するたび、自身も樹上に身を隠し、超視覚で来客の様子を観察する。さらにバアルが弁当を売りに行った際、兵士に紛れて自身も弁当を買いに行ってみた。
「アタイにも一つ。このコロッケ定食で」
「はい、まいどあり!」
ついでに彼女の客である兵士とも雑談し、彼女の評判についても探りを入れる。
「バアルちゃんかい? 人気者だけど、特定の男の噂は聞かないねえ」
「ああ。仕事が終わったらいつも真っすぐ家に帰ってるみたいだぞ。忙しいっていつもぼやいてるよ」
「ふむ……バアルはシロだね」
一週間彼女の様子を観察したルチルは、そう結論した。
●結果報告
弁当屋バアルに内通者の疑いなし。
●調査対象No4 歩き巫女ユズリハ
「歩き巫女って薬売りと並ぶ間諜の代名詞だろうに、堂々としすぎだろ」
ルチルからターゲットの所在地の情報を聞き、現場に駆け付けたベルク・オスマットはターゲットの目立つ容姿に呆れていた。赤と白の二色で構成された、この国では極めて珍しい『巫女装束』。明らかにシャルガネ人である顔立ちもあり、「私は怪しい者です」と宣伝しているに等しい。
「とはいえ、依頼人の話では彼女はシューターらしいからな。ルチル殿もリスに気を付けろと言っていたし、油断はできぬ」
ユズリハの現在地はベルクの顔見知りも多い、ディーグ族のキャンプ地だった。ベルクはうっかり本名で話しかけられないよう、予めディーグ族に話を通した後、ユズリハに接触を試みた。
●
「おねえちゃん、お水ちょうだい」
「はい、どうぞ」
ベルクが子供のフリとしてユズリハに水をねだると、ユズリハはにこにこと笑って生活魔法で水を出してくれた。
「ありがとう。お姉ちゃん、変わった服着てるね。外国の人?」
「ええ、これはシャルガネの法衣なんですよ。私は世界をあちこち回って修行を……」
ベルクはユズリハの素性について探りを入れてみた。ユズリハの語った素性は、依頼人から聞いていたものと相違なかった。
(そういう設定で通しているというわけか)
ベルクはしばらく雑談した後、勝負に出た。
「早く故郷に帰りたいな、ベルク様、早くアディ何とかって奴みたいに太信党を討ち取ってくれないかな」
「アディなんとか……ですか?」
「うん、太信党のわるいやつ。獣人の英雄がやっつけたんだって!」
「それは凄いですね! その人のお名前は何と言われるのでしょう?」
(む。食いついてきたな。だが、太信党の内通者ならば戦術参謀の名前ぐらいは知ってそうなものだが……本当に知らないのか、それとも演技なのか……腹の底が見えないな)
「ベルク様だよ!」
ベルクは撃破した太信党関係者の名前を出したりしてみたが、ユズリハの態度にそれに対する悪意が出ることはなかった。さすがに太信党そのものについては知っていたが、ベルクの名前については、本当に知らなさそうに見える。
「お水、ありがとう。しゅぎょう、頑張ってね」
ベルクはユズリハに水の礼を言って別れた後、近くに栗鼠がいないか観察した。いなさそうだったので、ベルクは変装を解き、気配を隠して彼女を追うことにした。
「む。あれは、栗鼠か? ラトではないな……一回り小さい種類だ」
ユズリハがディーグ族のキャンプを発ち、移動していく際にベルクは遠くから彼女についていく栗鼠を発見した。後でルチルに確認したところ、シャルガネ原産のシマリスであることが発覚した。彼女自身のペットである可能性は高いだろう。
それからしばらくの間ベルクは夕暮れ時の砂漠を移動していくユズリハの追跡調査を続けたのだが――。
「!」
それから一時間も経たぬ間に、ベルクはハイディングを見破られてしまった。
(警戒されていたか! まずい!)
「おや。どなたですか?」
「神は偉大なり!」
ベルクは大声でそう叫び、全力疾走でその場から離脱した。その後、ユズリハがベルクを追ってくることはなかった。
●結果報告
ユズリハの調査については追跡を見破られたので途中で中断。追跡がバレた際こちらの顔は隠していたが、内偵には気づかれた可能性がある。
確認できた範囲では彼女が太信党と通じていた素振りはなし。また、栗鼠のペットを所有していることも判明。彼女については監視を付けることを推奨する。
●エピローグ
「ふむ……アスモデウスとマモンがクロか……恐らく、マモンの方が私の探していた本命だな。まさか奴がメドゥの指先の構成員だったとは……。一人残ったグレーについてはこちらで調査を引き継ごう。難しい依頼だったが、よくやってくれた」
ローリング伯爵は冒険者達の報告を聞き、ぺこりと頭を下げた。
マスターコメント
・(太信党との)内通者を全員特定する。
・(太信党との)内通者を全員特定した上で、内通者にこちらが正体を見破ったことを悟らせない。
上記の条件がクリアされましたため、判定結果は「大成功」とさせていただきます。お疲れ様でした。
ショートシナリオ難しい 報酬:多い5 / 4〜8人
2022年07月23日 16時37分30秒 公開
大成功
相談掲示板
シーフのダムドだ。 いかに相手に悟られず尾行や身辺調査、或いは接触し聞き出すか…かな? 余り接触はしたく無いから極力隠匿を下げて隠れ調査するよ。 今のところ、No2 『武器商人』マモンに向おうかと思うが、被ったら変更可で ともかく一緒してくれる奴を求む。ヨロシクな。
キャスターのジュストだ、よろしく。 『シラー砂漠の斥候』アスモデウスにあたろうかと考えている。 俺自身は隠密調査向きじゃないから、対人スキルを使って怪しまれないよう接触するつもりだ。 オフの日は最寄りの街の酒場に行くようだし、誘い出せれば色々ボロを出してくれるかもしれない。
情報屋のルチルだ。よろしく。 とりあえず各候補一人は監視の目が付くように分散しておくのがよさそうかね。 ペットを使えば二人分は監視する事ができるんで、一応No3とNo4の両方を見張っておく事にするよ。
シーフのベルクだ。よろしく頼む。 我はNo.4に行こうと思う。 歴史的に歩き巫女って間諜と同義だし( 最近シラー砂漠から逃れてきた獣人族という設定で変装して当たってみるかね。
ヒーラーのローザリカ。よろしく頼もう。 僕も隠密にむいたスキルは所持していないので対人で絡め取れればと思っている。 No1の『シラー砂漠の斥候』アスモデウスにジュストと組んで当たるというか…… 僕自身は酒場で踊り子に扮して接触を図るつもりだよ。
ふむ。では間諜について詳しそうなベルクが名乗り出たので、No3の方に比重を割くか。 弁当屋だからね。もしクロなら客層にも目を向けておこうかと。