タイムカプセルを埋めよう
七海真砂
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シナリオID:2115
オープニング
「廃墟の街ダルトートに、『タイムカプセル』を埋めに行くぞー!」
冒険者ギルドに顔を出したクーネさんは、突然そう言い出した。
「実はな、ダルトートには『エーテル石』という物を運び込むことになっているのだが、色々あって、こっそりこれを運び込んで隠したい訳だな。地面に埋めたり隠すものといえば、タイムカプセルという物がある。という訳で、タイムカプセルを埋めに行くという名目で、エーテル石も一緒に運んで、ダルトートに隠そうという訳なんだな」
クーネさんは『タイムカプセル』と書かれた木箱を一つ抱えると振って見せる。
がらがらごとごと。
――石のぶつかる音がする。
つまり。
中に石が入っている『タイムカプセル』と。
本当にタイムカプセルになっている『タイムカプセル』を用意し、ダルトートに埋める、ということらしい。
「未来に向けて送りたいものを木箱に入れて、土の中に埋める。そして、年月が経った後で掘り返して開ける……これが、タイムカプセルというものだ。皆も良かったら『タイムカプセル』を作って、一緒にダルトートに埋めて欲しい」
タイムカプセルがあればあるほど、目くらましにもなるからな、とクーネさんは言う。
「埋める場所だが、ダルトートの広場だった場所と、その付近が良いと思っている。広場は開けたスペースが確保できそうだから、荷物を運び込む拠点にすると良いと思うんだよな」
荷馬車を止めたり、テントを用意するか簡単な建物を建てるなどしておくと便利じゃないだろうか、とクーネさんは言う。
作業中の休憩場所、食事場所にもなるだろうし、現地でタイムカプセルを作りたい人が、その作業をする場所にもなるだろう。
「広場の周辺は、まあ、廃墟だな。商店街や住宅があった場所で、残骸がそのまま残っている。瓦礫の下を掘り返して『タイムカプセル』を埋めるような形になるだろう」
本物のタイムカプセルは広場に埋めても問題ないのだが、エーテル石は敵から隠したいという目的があるので……建物の残骸や瓦礫を上手く活用して『タイムカプセル』を埋めていく事になるだろう。
埋めた後、何も無いように見せかける工夫なども、あっても良いかもしれない。
「近くには沼がある。ここを利用するのも手かもしれないな」
沼の中に隠したりすることなども、できるかもしれない。
「エーテル石の入った木箱は五十個ほどある。あちこちに分散させつつ埋めることになるから、ちょっと手間はかかってしまうだろうけど、手伝ってくれると嬉しい」
よろしく頼むよ、とクーネさんは皆に告げるのだった。
冒険者ギルドに顔を出したクーネさんは、突然そう言い出した。
「実はな、ダルトートには『エーテル石』という物を運び込むことになっているのだが、色々あって、こっそりこれを運び込んで隠したい訳だな。地面に埋めたり隠すものといえば、タイムカプセルという物がある。という訳で、タイムカプセルを埋めに行くという名目で、エーテル石も一緒に運んで、ダルトートに隠そうという訳なんだな」
クーネさんは『タイムカプセル』と書かれた木箱を一つ抱えると振って見せる。
がらがらごとごと。
――石のぶつかる音がする。
つまり。
中に石が入っている『タイムカプセル』と。
本当にタイムカプセルになっている『タイムカプセル』を用意し、ダルトートに埋める、ということらしい。
「未来に向けて送りたいものを木箱に入れて、土の中に埋める。そして、年月が経った後で掘り返して開ける……これが、タイムカプセルというものだ。皆も良かったら『タイムカプセル』を作って、一緒にダルトートに埋めて欲しい」
タイムカプセルがあればあるほど、目くらましにもなるからな、とクーネさんは言う。
「埋める場所だが、ダルトートの広場だった場所と、その付近が良いと思っている。広場は開けたスペースが確保できそうだから、荷物を運び込む拠点にすると良いと思うんだよな」
荷馬車を止めたり、テントを用意するか簡単な建物を建てるなどしておくと便利じゃないだろうか、とクーネさんは言う。
作業中の休憩場所、食事場所にもなるだろうし、現地でタイムカプセルを作りたい人が、その作業をする場所にもなるだろう。
「広場の周辺は、まあ、廃墟だな。商店街や住宅があった場所で、残骸がそのまま残っている。瓦礫の下を掘り返して『タイムカプセル』を埋めるような形になるだろう」
本物のタイムカプセルは広場に埋めても問題ないのだが、エーテル石は敵から隠したいという目的があるので……建物の残骸や瓦礫を上手く活用して『タイムカプセル』を埋めていく事になるだろう。
埋めた後、何も無いように見せかける工夫なども、あっても良いかもしれない。
「近くには沼がある。ここを利用するのも手かもしれないな」
沼の中に隠したりすることなども、できるかもしれない。
「エーテル石の入った木箱は五十個ほどある。あちこちに分散させつつ埋めることになるから、ちょっと手間はかかってしまうだろうけど、手伝ってくれると嬉しい」
よろしく頼むよ、とクーネさんは皆に告げるのだった。
解説
『タイムカプセル』を埋めに行きましょう!
ダルトートは完全に廃墟になってしまっている都市で、今は住んでいる人のいない場所です。
ある意味、何でもありな場所と言えます。スキルなどもガンガン使って大丈夫ですので、いろいろ工夫しながら木箱を埋めていきましょう。
タイムカプセルを作って埋める方は、自分のタイムカプセルに何を入れて、どこに埋めるか等、楽しんでいただけたらと思います!
エーテル石をダルトートへ運び込むという話の詳しい経緯は、「【人馬】トカゲ料理パーティ!」というシナリオにあります(特に知らなくても問題ないです。気になる方だけどうぞ)。
クーネさんは特に何も無ければ、瓦礫を掘り返して木箱を埋めていると思いますが、仕事ぶりはちょっと雑かもしれません。
マスターより
ダルトートに石を隠す……瓦礫の下に隠す……? 埋める……? 埋めるといえば?
という訳で、タイムカプセルなシナリオになりました。
せっかくですので、タイムカプセルを作ったり、埋めたり、楽しんでいただけましたら幸いです。
それでは、ご参加をお待ちしております。
リプレイ
「荷馬車こっちにまとめるねー」
「オッケー!」
アルマ・ヴァレンタインの言葉に頷き返したルルト・アーキスは、その傍らに拠点用のテントを立てていく。更に、野営セットが広げられ、あっという間に準備が整えられていくそこへ、サイラスは準備してきた荷物を次々と置いた。
ここは廃墟と化した都市ダルトートの一角、広場の跡地だ。これから『エーテル石』……もとい、タイムカプセルを埋めるべく、準備は着々と進められていた。
「人の目に触れにくく、かつ保存に適した場所が理想的だよね」
辺りの下見をしてきたエルゼリオ・レイノーラは、大きな羊皮紙を広げて看板状にすると、そこに簡単に地図を描いて。木箱を埋めるのに良さげだと判断した、いくつかの場所に印を付けて皆への目印にする。
「なるほど。じゃあ箱の方の準備もしようか」
イズル・M・ヴォルゴールが取り出したのは蝋燭だった。
木箱の表面に蝋を塗れば、水を防ぎつつ耐久性の向上にも一役買ってくれるはずだと考えたイズルは、自分達が使う予定の箱以外にも蝋を塗っていく。
「んじゃダミーでも用意しておきますかねっと」
サイラスは、辺りで拾った適当な石を詰めた木箱を用意し、ダミー用の木箱を量産していく。
そんなコツコツした準備が進む一方で、集まったクーネさん達が用意している木箱の中身は、といえば。
「タイムカプセル……私初めてです! とてもワクワクしますねぇ」
「わかるッスー! もー、たくさん量産するっスよ!」
イズルから貰った木箱の蓋をマリイ・パルティスが開ける傍らで、頷きながらレターセットを取り出し、ペンを構えたのはマトンだ。
木箱をデスク代わりにしながら、数十年後の自分に宛てた手紙を書き始めるマトン。一方、同じようにペンを持ちつつも、文字ではなく絵を描き始めたのはアルマだ。
「こうで……こうで……奥に沼が見えて……うん、こんな感じかな?」
描いているのは、ダルトートの今の姿。瓦礫の山、廃墟と化したダルトートの物悲しい姿だったが、
『どのくらい復興したか、よかったら見比べてねー?』
今日の日付と共に記されたそのメッセージは、間違いなく未来に宛てたメッセージだった。
そんな風にペンを走らせる様子を見つつ、ふむ、とひとつ頷いたのはベルク・オスマットである。
「タイムカプセルとやらが一体どういう物なのか、皆目検討もつかぬが、まぁ適当に貴金属の類いでも蓄え代わりに入れておくか」
いまいちピンと来ていないようだが、未来に向けて遺すのなら、こういった物はきっと何かの役に立つだろう……と、携えていたアクセサリーをひとつ、木箱の中に入れるベルクである。
「俺も、何埋めていいかわからなくて」
これにしたんだけど、とイズルが取り出したのは自作の果実酒を詰めた小瓶だった。コルクにはイズルの家の領地で使われている焼印が刻まれ、更に蝋でしっかりと封印されている。
「これに手紙でも添えて入れようかなって思うんだ」
「ふーん。悪くないんじゃね?」
ペンを取ったイズルの言葉にペルゼィックは言うと、自身は自作のガラス玉を取り出す。
「へえ、綺麗だ」
「瓶の蓋にできるくらい、完璧なガラス玉だろ?」
ガラス玉を見つめるイズルの言葉にフフンと笑って、ペルゼィックは割れないように配慮しながらガラス玉を木箱の中へ入れていく。
「掘り出した時の目くらましにもなるかもな。……あと、数年後の俺への挑戦状だ」
未来の自分に、今よりも腕が上っているよな? って叩きつける為の物だからこそ、今一番の物を選んだつもりだった。
「うん、掠れたりはしていないな……」
テテリカが広げた布には、いくつもの手形が押してあった。だが、その形はまちまちで、明らかに人の物では無い物が多い――そう、これはテテリカと、大切な相棒たちの手形と肉球をスタンプした物だった。どれが誰の物なのか、テテリカにはすぐにわかる。
綺麗にインクを乾かして持ってきたそれを再び折りたたみ、テテリカは保存用の袋に入れた上で木箱へ収める。
「その時に大事にしてる物とか、想い出の品を箱に入れて、数年から数十年後に掘り返すんだよね? どれもいいなぁ……ね、クーネさんは何を入れるのか決めてるの?」
「特に荷物は持って来ていないですよね?」
エルゼリオの言葉に、マリイも気になると視線を向ける。するとクーネさんは「ああ、小さいからな」と懐に手をやった。
「あまり持っている物も無いからな、これにしようかと思って」
と、取り出したのは、クーネさんの瞳の色と同じ小さな宝石が一つ。
「少し前に手に入れた『想いの宝石』だ。自分の分身みたいなものだし、ちょうど良いかと思ってな」
触れた者の想いを宝石化するという、モンスターから手に入れた物である。騒動の際に手に入れた物の中でも、大きな宝石は使い道があるかもしれないと、小さな物を選んだようだった。
「なるほど……」
「因みに私は自作のぬいぐるみにしました。帝国が健在だった頃に作った作品の、レプリカです」
マリイは鞄からぬいぐるみを出すと、少し寂しげに笑う。レプリカだとしてもやはり、あの頃の大切な時を象徴するかのような、この子を手放すのは寂しい気持ちになってしまう。
「へえ……寝心地が良さそうな子だな」
「ふふ、ありがとうございます」
丸い弾力性のあるボディを見たクーネさんの率直な感想は、ぬいぐるみの出来栄え、マリイの腕の良さがあってのもの。誉め言葉だと受け止めながら、マリイはぬいぐるみが水や雨に濡れたりしないように、とよく乾かした水袋の中に入れて、しっかりと守ってあげる。
「……またね」
そっとお別れを告げるマリイ。一方、「ボクは何を入れようかな……」と考えながら辺りを見回したエルゼリオは、持ってきた羊皮紙の余りに目を留めて。
「あっ。――クーネさん、そこに座って、ちょっとじっとしてて!」
「うん?」
怪訝そうにしながらも木箱に腰掛けるクーネさん。そんな彼女と向き合いながらペンを持ったエルゼリオは、さらさらとその先を紙の上に走らせて――。
「できた! どうかな?」
はい、とクーネさんの方に向けたのは彼女の似顔絵だった。本職の画家には及ばない仕上がりではあるが、可愛らしく描かれたその姿にクーネさんは目を細めて。
「なるほど、エルゼリオの目から見た私はこんな感じか。ありがとう」
「へへへ。ボクはコレを箱に入れるね」
願わくば――掘り出す時もこんな風に、クーネさんと一緒に居られますように、と――そう願いを込めながら、エルゼリオは羊皮紙を箱に入れた。
「それじゃあ、まずはどーんと! 派手に一発いくよーっ!」
そうしてタイムカプセルの準備が済むと、ルルトは竜骨の魔弓を構え、炸光矢を放った。無数の光の破片は飛び散りながら、瓦礫をまとめて吹き飛ばす。
「ここが一番掘りやすそうだな……」
更にテテリカが貫通衝撃射を放ち、穴を掘り進めていく。身軽な動きで瓦礫を乗り越えながらベルクはそこへ近付いていくと、早速木箱を一つ埋める。
「この瓦礫ならこの色がちょうど合うかね」
更に、カモフラージュ用の道具を色々と準備してきたサイラスが、辺りの瓦礫と馴染むように木箱を塗りたくっていった。
「瓦礫を戻して馴染ませよう」
「ここからが本番だな」
テテリカとベルクは頷き合うと、散らばった瓦礫を元に戻していく。そこに、木箱があるとは悟られないように、瓦礫の組み合わせ方をテテリカが工夫すれば、ベルクが自慢の洞察力を活かしてじっと見つめて。
「うむ、わからん」
「では次に行こう」
しっかりと確認した上で、次の木箱を埋めていく。
「コルデラ、もっと深くいきましょう」
エーテルリンクを結んだコルデラと一緒に住宅地跡へ向かったマリイは、一緒に深く穴を掘っていくと、エーテル石の木箱をまずは埋める。
そこに土をしっかり被せて、踏み固めたら、今度はサイラスに貰ったダミーの木箱を置いた。
「上手く騙せるでしょうか?」
二段構えにしておくことで、メドゥの左腕を更に翻弄しようという作戦だ。きっと上手くいくと頷くように、コルデラが小さく吼えると、その上に土を被せ始めていく。
「そうですね、まずは綺麗に戻しましょう」
マリイも頷き返して、木箱の姿を隠していった。
「俺達もやろうぜ」
石礫を炸裂させたペルゼィック達は、自分達の身長以上あろうかという程深く穴を掘って、同じように二段構えで木箱を埋めていく。ただし、上に埋めるのは自分達のタイムカプセルだ。
「よし、引き上げてくれ」
「わかった」
縄を付けて穴に入ったペルゼィックをイズルが引き上げると、残りのスペースに土を流し込んで塞ぎ、更に瓦礫を移動させて周囲の風景と馴染ませる。
「辺り一帯瓦礫の山だから、これでもう判らないだろう」
ふう、と一息ついたイズルは顔を上げると「そうだ」とペルゼィックを振り返った。
「タイムカプセルを掘り出す時、俺の代わりに持ってきて欲しいんだ。多分、俺は来れないだろうから……」
イズルは、小さいとはいえ領地を束ねる名家に生まれた長男だ。――もうじき跡を継ぐ、そうしたらもう、今のように自由には動けない、だろうから。
「ヤダね。テメェで取りにくればいいだろ」
「じゃ、依頼する。幼馴染でも戦友でもない、冒険者のジークに」
その境遇を知るからこそ、安請け合いはしたくないと首を振るペルゼィックに、それでも、とイズルは言う。
「……何年先の依頼してんだ。お断りだ」
それでもって言うなら十日で一割の延長料金取るからな、と吐き捨てるように告げたペルゼィックの言葉に「ええっ!?」と困り顔をするイズルである。
「じゃあ、その時に改めて……」
「予約は受けてねぇぞ」
「おっ、いい感じの穴が出来てるな」
クーネさんの言葉に顔を上げ、機敏な動きで場所を空けたのは、ルルトが連れてきたシロだった。じゃあここに……と木箱をそのまま埋めていくクーネさんに、向こうからルルトが声を掛ける。
「クーネ、それだと何があるってすぐ分かっちゃうんだよ」
「む、そうか……」
どうカモフラージュしようか、と唸るクーネさんに向かって「その苗を使っていいよ」とルルトは呼びかける。
「どうせなら思いっきり、何かを埋めてあるって見せちゃおう! 復興を祈願した植樹だよ!」
等間隔に用意された穴に木の苗を植える。まさかそんな目立つ所に隠すはずは無いだろう、という考えを逆手に取るものだ。
もし掘り返されたとしても、苗の下には木箱があったり無かったり……しかも、タイムカプセル混じりのランダムだから、敵を惑わすことにもなるだろう。
「なるほどな、そうしよう」
「じゃあこっちには、僕のタイムカプセルを入れるッス!」
頷いたクーネさんが苗の一つを取る。別の穴には、マトンが書いた手紙の入った木箱が埋められて、更にその上に苗が植えられていった。
「よーし、準備運動おっけー」
フリル付きのオシャレな水着姿になったアルマは、全身のストレッチをしながら光の玉を形成すると、木箱を抱えて沼の中に入る。まるで人魚かと見紛うような動きでスイスイ泳ぎ、足の裏にエーテルを集中させたアルマは、沼の底に立つと穴を掘り、そこに木箱を埋めていく。
「ぷふぁ~~~」
戻って来たアルマは沼の縁に立つと、軽快な音をたてて体中の水滴を吹き飛ばした。一瞬で乾いたアルマの体のかわりに、近くの瓦礫の表面が濡れるが、じきにそれも乾くだろう。
「気は済んだか? ワライタケ」
まるではしゃぐように穴を掘っていたワライタケの様子を見て、ふっと笑ったテテリカは、先程用意した木箱を取る。
相棒たちの手形が詰まった物は、相棒の手で掘った穴の中が相応しいと言うかのように、その中に木箱を入れて、テテリカも一緒になって穴を埋め直していく。
(しかし……)
作業を終えて顔を上げれば、視界に入るのは残骸に覆い尽くされた、街だった場所の姿だ。
(……時の流れ、か)
廃墟の寂れた雰囲気にあてられてしまったのだろうか。皆の――獣達の、ゴブリンである自分の持つ、命というものの儚さをつい考えてしまって、一瞬物悲しげな色に瞳を染めたテテリカだったが。
「……そうだな、作業を続けよう」
近付いてきたワライタケを撫でると、それを振り払うかのように呟いて。気を取り直して歩き出した。
「んーっ! これで終わりッスー!!」
最後の木箱を埋め終わったマトンが、大きく体を伸ばす。サイラスが瓦礫の残骸と見せかけて、漆喰で隙間を埋めてカモフラージュすれば、一見するとそこに木箱があるようには見えなくなってしまう。
広場で用意した木箱は、これで全部――予定していた作業は終了だ。
「皆、お疲れ様」
クーネさんは荷馬車から水を下ろすと皆に配る。日陰にあった水は、ひんやり感じられて気持ちが良い。
「最後の一箱はこーこ! ふふふ、なんだか宝の地図みたいなんだよ♪」
埋めた箱の位置を地図に記していたルルトは、最後の印を書き加え、完成したそれを手に笑う。
「みんなのお宝ッスね! 取り出す時が楽しみっスなー!」
それを覗き込みながらマトンも笑う。たくさん埋めた未来の自分への手紙は、一体何通が残り続けてくれるだろう?
(どれか一つでも残ってたら、作戦成功ッス!)
マトンは手紙の中に、未来の自分への願いを託した。近い未来、遠い未来、沢山のものを手に入れただろう自分に――どうか、それをまた箱の中に詰めて埋めて欲しいと。
(そうして永遠に僕だけの思い出を埋めていきたいッス!)
過去を何も覚えていないホムンクルスのマトンだから、そんな風に願ったのかもしれない。
どうかどうか、今日が未来へ繋がっていくようにと――そう願う想いは確かに、このダルトートの地に、刻まれていた。
「オッケー!」
アルマ・ヴァレンタインの言葉に頷き返したルルト・アーキスは、その傍らに拠点用のテントを立てていく。更に、野営セットが広げられ、あっという間に準備が整えられていくそこへ、サイラスは準備してきた荷物を次々と置いた。
ここは廃墟と化した都市ダルトートの一角、広場の跡地だ。これから『エーテル石』……もとい、タイムカプセルを埋めるべく、準備は着々と進められていた。
「人の目に触れにくく、かつ保存に適した場所が理想的だよね」
辺りの下見をしてきたエルゼリオ・レイノーラは、大きな羊皮紙を広げて看板状にすると、そこに簡単に地図を描いて。木箱を埋めるのに良さげだと判断した、いくつかの場所に印を付けて皆への目印にする。
「なるほど。じゃあ箱の方の準備もしようか」
イズル・M・ヴォルゴールが取り出したのは蝋燭だった。
木箱の表面に蝋を塗れば、水を防ぎつつ耐久性の向上にも一役買ってくれるはずだと考えたイズルは、自分達が使う予定の箱以外にも蝋を塗っていく。
「んじゃダミーでも用意しておきますかねっと」
サイラスは、辺りで拾った適当な石を詰めた木箱を用意し、ダミー用の木箱を量産していく。
そんなコツコツした準備が進む一方で、集まったクーネさん達が用意している木箱の中身は、といえば。
「タイムカプセル……私初めてです! とてもワクワクしますねぇ」
「わかるッスー! もー、たくさん量産するっスよ!」
イズルから貰った木箱の蓋をマリイ・パルティスが開ける傍らで、頷きながらレターセットを取り出し、ペンを構えたのはマトンだ。
木箱をデスク代わりにしながら、数十年後の自分に宛てた手紙を書き始めるマトン。一方、同じようにペンを持ちつつも、文字ではなく絵を描き始めたのはアルマだ。
「こうで……こうで……奥に沼が見えて……うん、こんな感じかな?」
描いているのは、ダルトートの今の姿。瓦礫の山、廃墟と化したダルトートの物悲しい姿だったが、
『どのくらい復興したか、よかったら見比べてねー?』
今日の日付と共に記されたそのメッセージは、間違いなく未来に宛てたメッセージだった。
そんな風にペンを走らせる様子を見つつ、ふむ、とひとつ頷いたのはベルク・オスマットである。
「タイムカプセルとやらが一体どういう物なのか、皆目検討もつかぬが、まぁ適当に貴金属の類いでも蓄え代わりに入れておくか」
いまいちピンと来ていないようだが、未来に向けて遺すのなら、こういった物はきっと何かの役に立つだろう……と、携えていたアクセサリーをひとつ、木箱の中に入れるベルクである。
「俺も、何埋めていいかわからなくて」
これにしたんだけど、とイズルが取り出したのは自作の果実酒を詰めた小瓶だった。コルクにはイズルの家の領地で使われている焼印が刻まれ、更に蝋でしっかりと封印されている。
「これに手紙でも添えて入れようかなって思うんだ」
「ふーん。悪くないんじゃね?」
ペンを取ったイズルの言葉にペルゼィックは言うと、自身は自作のガラス玉を取り出す。
「へえ、綺麗だ」
「瓶の蓋にできるくらい、完璧なガラス玉だろ?」
ガラス玉を見つめるイズルの言葉にフフンと笑って、ペルゼィックは割れないように配慮しながらガラス玉を木箱の中へ入れていく。
「掘り出した時の目くらましにもなるかもな。……あと、数年後の俺への挑戦状だ」
未来の自分に、今よりも腕が上っているよな? って叩きつける為の物だからこそ、今一番の物を選んだつもりだった。
「うん、掠れたりはしていないな……」
テテリカが広げた布には、いくつもの手形が押してあった。だが、その形はまちまちで、明らかに人の物では無い物が多い――そう、これはテテリカと、大切な相棒たちの手形と肉球をスタンプした物だった。どれが誰の物なのか、テテリカにはすぐにわかる。
綺麗にインクを乾かして持ってきたそれを再び折りたたみ、テテリカは保存用の袋に入れた上で木箱へ収める。
「その時に大事にしてる物とか、想い出の品を箱に入れて、数年から数十年後に掘り返すんだよね? どれもいいなぁ……ね、クーネさんは何を入れるのか決めてるの?」
「特に荷物は持って来ていないですよね?」
エルゼリオの言葉に、マリイも気になると視線を向ける。するとクーネさんは「ああ、小さいからな」と懐に手をやった。
「あまり持っている物も無いからな、これにしようかと思って」
と、取り出したのは、クーネさんの瞳の色と同じ小さな宝石が一つ。
「少し前に手に入れた『想いの宝石』だ。自分の分身みたいなものだし、ちょうど良いかと思ってな」
触れた者の想いを宝石化するという、モンスターから手に入れた物である。騒動の際に手に入れた物の中でも、大きな宝石は使い道があるかもしれないと、小さな物を選んだようだった。
「なるほど……」
「因みに私は自作のぬいぐるみにしました。帝国が健在だった頃に作った作品の、レプリカです」
マリイは鞄からぬいぐるみを出すと、少し寂しげに笑う。レプリカだとしてもやはり、あの頃の大切な時を象徴するかのような、この子を手放すのは寂しい気持ちになってしまう。
「へえ……寝心地が良さそうな子だな」
「ふふ、ありがとうございます」
丸い弾力性のあるボディを見たクーネさんの率直な感想は、ぬいぐるみの出来栄え、マリイの腕の良さがあってのもの。誉め言葉だと受け止めながら、マリイはぬいぐるみが水や雨に濡れたりしないように、とよく乾かした水袋の中に入れて、しっかりと守ってあげる。
「……またね」
そっとお別れを告げるマリイ。一方、「ボクは何を入れようかな……」と考えながら辺りを見回したエルゼリオは、持ってきた羊皮紙の余りに目を留めて。
「あっ。――クーネさん、そこに座って、ちょっとじっとしてて!」
「うん?」
怪訝そうにしながらも木箱に腰掛けるクーネさん。そんな彼女と向き合いながらペンを持ったエルゼリオは、さらさらとその先を紙の上に走らせて――。
「できた! どうかな?」
はい、とクーネさんの方に向けたのは彼女の似顔絵だった。本職の画家には及ばない仕上がりではあるが、可愛らしく描かれたその姿にクーネさんは目を細めて。
「なるほど、エルゼリオの目から見た私はこんな感じか。ありがとう」
「へへへ。ボクはコレを箱に入れるね」
願わくば――掘り出す時もこんな風に、クーネさんと一緒に居られますように、と――そう願いを込めながら、エルゼリオは羊皮紙を箱に入れた。
「それじゃあ、まずはどーんと! 派手に一発いくよーっ!」
そうしてタイムカプセルの準備が済むと、ルルトは竜骨の魔弓を構え、炸光矢を放った。無数の光の破片は飛び散りながら、瓦礫をまとめて吹き飛ばす。
「ここが一番掘りやすそうだな……」
更にテテリカが貫通衝撃射を放ち、穴を掘り進めていく。身軽な動きで瓦礫を乗り越えながらベルクはそこへ近付いていくと、早速木箱を一つ埋める。
「この瓦礫ならこの色がちょうど合うかね」
更に、カモフラージュ用の道具を色々と準備してきたサイラスが、辺りの瓦礫と馴染むように木箱を塗りたくっていった。
「瓦礫を戻して馴染ませよう」
「ここからが本番だな」
テテリカとベルクは頷き合うと、散らばった瓦礫を元に戻していく。そこに、木箱があるとは悟られないように、瓦礫の組み合わせ方をテテリカが工夫すれば、ベルクが自慢の洞察力を活かしてじっと見つめて。
「うむ、わからん」
「では次に行こう」
しっかりと確認した上で、次の木箱を埋めていく。
「コルデラ、もっと深くいきましょう」
エーテルリンクを結んだコルデラと一緒に住宅地跡へ向かったマリイは、一緒に深く穴を掘っていくと、エーテル石の木箱をまずは埋める。
そこに土をしっかり被せて、踏み固めたら、今度はサイラスに貰ったダミーの木箱を置いた。
「上手く騙せるでしょうか?」
二段構えにしておくことで、メドゥの左腕を更に翻弄しようという作戦だ。きっと上手くいくと頷くように、コルデラが小さく吼えると、その上に土を被せ始めていく。
「そうですね、まずは綺麗に戻しましょう」
マリイも頷き返して、木箱の姿を隠していった。
「俺達もやろうぜ」
石礫を炸裂させたペルゼィック達は、自分達の身長以上あろうかという程深く穴を掘って、同じように二段構えで木箱を埋めていく。ただし、上に埋めるのは自分達のタイムカプセルだ。
「よし、引き上げてくれ」
「わかった」
縄を付けて穴に入ったペルゼィックをイズルが引き上げると、残りのスペースに土を流し込んで塞ぎ、更に瓦礫を移動させて周囲の風景と馴染ませる。
「辺り一帯瓦礫の山だから、これでもう判らないだろう」
ふう、と一息ついたイズルは顔を上げると「そうだ」とペルゼィックを振り返った。
「タイムカプセルを掘り出す時、俺の代わりに持ってきて欲しいんだ。多分、俺は来れないだろうから……」
イズルは、小さいとはいえ領地を束ねる名家に生まれた長男だ。――もうじき跡を継ぐ、そうしたらもう、今のように自由には動けない、だろうから。
「ヤダね。テメェで取りにくればいいだろ」
「じゃ、依頼する。幼馴染でも戦友でもない、冒険者のジークに」
その境遇を知るからこそ、安請け合いはしたくないと首を振るペルゼィックに、それでも、とイズルは言う。
「……何年先の依頼してんだ。お断りだ」
それでもって言うなら十日で一割の延長料金取るからな、と吐き捨てるように告げたペルゼィックの言葉に「ええっ!?」と困り顔をするイズルである。
「じゃあ、その時に改めて……」
「予約は受けてねぇぞ」
「おっ、いい感じの穴が出来てるな」
クーネさんの言葉に顔を上げ、機敏な動きで場所を空けたのは、ルルトが連れてきたシロだった。じゃあここに……と木箱をそのまま埋めていくクーネさんに、向こうからルルトが声を掛ける。
「クーネ、それだと何があるってすぐ分かっちゃうんだよ」
「む、そうか……」
どうカモフラージュしようか、と唸るクーネさんに向かって「その苗を使っていいよ」とルルトは呼びかける。
「どうせなら思いっきり、何かを埋めてあるって見せちゃおう! 復興を祈願した植樹だよ!」
等間隔に用意された穴に木の苗を植える。まさかそんな目立つ所に隠すはずは無いだろう、という考えを逆手に取るものだ。
もし掘り返されたとしても、苗の下には木箱があったり無かったり……しかも、タイムカプセル混じりのランダムだから、敵を惑わすことにもなるだろう。
「なるほどな、そうしよう」
「じゃあこっちには、僕のタイムカプセルを入れるッス!」
頷いたクーネさんが苗の一つを取る。別の穴には、マトンが書いた手紙の入った木箱が埋められて、更にその上に苗が植えられていった。
「よーし、準備運動おっけー」
フリル付きのオシャレな水着姿になったアルマは、全身のストレッチをしながら光の玉を形成すると、木箱を抱えて沼の中に入る。まるで人魚かと見紛うような動きでスイスイ泳ぎ、足の裏にエーテルを集中させたアルマは、沼の底に立つと穴を掘り、そこに木箱を埋めていく。
「ぷふぁ~~~」
戻って来たアルマは沼の縁に立つと、軽快な音をたてて体中の水滴を吹き飛ばした。一瞬で乾いたアルマの体のかわりに、近くの瓦礫の表面が濡れるが、じきにそれも乾くだろう。
「気は済んだか? ワライタケ」
まるではしゃぐように穴を掘っていたワライタケの様子を見て、ふっと笑ったテテリカは、先程用意した木箱を取る。
相棒たちの手形が詰まった物は、相棒の手で掘った穴の中が相応しいと言うかのように、その中に木箱を入れて、テテリカも一緒になって穴を埋め直していく。
(しかし……)
作業を終えて顔を上げれば、視界に入るのは残骸に覆い尽くされた、街だった場所の姿だ。
(……時の流れ、か)
廃墟の寂れた雰囲気にあてられてしまったのだろうか。皆の――獣達の、ゴブリンである自分の持つ、命というものの儚さをつい考えてしまって、一瞬物悲しげな色に瞳を染めたテテリカだったが。
「……そうだな、作業を続けよう」
近付いてきたワライタケを撫でると、それを振り払うかのように呟いて。気を取り直して歩き出した。
「んーっ! これで終わりッスー!!」
最後の木箱を埋め終わったマトンが、大きく体を伸ばす。サイラスが瓦礫の残骸と見せかけて、漆喰で隙間を埋めてカモフラージュすれば、一見するとそこに木箱があるようには見えなくなってしまう。
広場で用意した木箱は、これで全部――予定していた作業は終了だ。
「皆、お疲れ様」
クーネさんは荷馬車から水を下ろすと皆に配る。日陰にあった水は、ひんやり感じられて気持ちが良い。
「最後の一箱はこーこ! ふふふ、なんだか宝の地図みたいなんだよ♪」
埋めた箱の位置を地図に記していたルルトは、最後の印を書き加え、完成したそれを手に笑う。
「みんなのお宝ッスね! 取り出す時が楽しみっスなー!」
それを覗き込みながらマトンも笑う。たくさん埋めた未来の自分への手紙は、一体何通が残り続けてくれるだろう?
(どれか一つでも残ってたら、作戦成功ッス!)
マトンは手紙の中に、未来の自分への願いを託した。近い未来、遠い未来、沢山のものを手に入れただろう自分に――どうか、それをまた箱の中に詰めて埋めて欲しいと。
(そうして永遠に僕だけの思い出を埋めていきたいッス!)
過去を何も覚えていないホムンクルスのマトンだから、そんな風に願ったのかもしれない。
どうかどうか、今日が未来へ繋がっていくようにと――そう願う想いは確かに、このダルトートの地に、刻まれていた。
マスターコメント
作業完了! です!
様々な工夫を凝らしていただき、ありがとうございました!
タイムカプセルに入れる物には個性が出ますね……。
いつか笑って、木箱を取り出す未来が、皆さんにありますように。
イベントシナリオ普通 報酬:標準10 / 4〜25人
2022年05月08日 23時28分21秒 公開
大成功
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