【聖祭】年の始めの縁結び

明乃そら

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シナリオID:1780

オープニング

 海に浮かんだ小さな島は、神が眠りし聖なる領域。
 月満ちて、しんと静まり返った夜の海。
 潮が引き、海の中から現れたのは、陸地と島を結ぶ道――。

●想いを結ぶ、月の道
 ここはシャルガネ居住区。海辺のとある地方にて、新たな年を祝う行事が一年の始まりの日に行われる。
 陸地から300メートルばかり離れた海上に、小さな島が浮かんでいる。
 そこは地元民から神が住む地とされており、島の奥地に社を建てて、神を祀っていると云う。
 この小さな島が神の住処とされる所以、それは一つの奇跡を見られる事が由来であった。

 一日に二度の干潮時、まるで海が割れるように一本の道が島まで伸びて、歩いて渡る事が出来るようになる。
 特に年の瀬のこの時期は、日付が変わる深夜から太陽が昇る頃まで島への道が繋がっており、新しい年をこの地で迎える観光客も多くいるとの事らしい。

 海辺を照らす月の光に導かれ、道を歩いて渡ったその先に、島の入り口となる大きな赤い鳥居が出迎える。
 鳥居を潜ると、今度は社に通じる石段を上って奥へと進む。
 石段の両脇には、朱塗りの灯籠が立ち並び、仄かに揺らめく灯火が、迷わぬようにと社へ誘う。
 そして神が眠りし社の前にて、拍手(かしわで)二回、両手を合わせて目を閉じて、心の中で告げるのは、叶えてほしい願い事。

 更にこの神社には、もう一つ、特別な言い伝えがあるようだ。
 それは――心に想う人と手を繋ぎ、海の道を歩いて参拝すれば、二人の縁(えにし)が結ばれる、と――。

 新たな年の始めに、祝福を。
 月と太陽が交わる神秘の海で、心に秘めた切なる想いが、どうか届いて叶いますように――。

解説

●舞台について  シャルガネ居住区にある、海岸沿いの地方。  陸地から離れた島の神社で、新年の初詣を楽しみます。  1日に2回、干潮で陸地と島を結ぶ道が海に現れます。  今回のリプレイでは、日付が変わる深夜から、日の出の時間にかけての描写となります。 ●神社について  海上に浮かぶ小島の中に、社殿が建てられています。  島の入り口にある赤い鳥居を潜って、その先の石段を上がっていけば、社殿に辿り着けます。  言い伝えでは、想い人と手を繋いで海の道を歩いて渡ると、二人の縁が結ばれると云われています。  想い人は異性だけでなく、同性であっても特に問題ありません。  この地に祀られている神様は、おそらくそうした事にも寛容でしょうから。  幽玄たる幻想的な景色の中で、新たな年の初日の出を拝むのは、きっと特別な時間となるでしょう。  この日が皆様にとって良き想い出となりますよう、どうか心行くまで満喫してくださいませ。

マスターより

今年も後数日を残すばかりとなりました。 最近は初詣も分散参拝で、年内中の幸先詣を行う神社も増えてきているそうですね。 ちなみにこちらのシナリオは、年明けの参拝となっております。 新年の最初をシャルガネの地で迎え、一年の計を願ってみませんか。 内容的にはカップルさん向けですが、お友達同士やお一人様でも大丈夫です。 また、NPCのドミニク・ログナーとシャルティナ・カッツェも同行します。 もしお誘いなどの要望がございましたら、お声掛けして下されば応対します。 ただし、NPCの恋愛関係での発展はございませんので、ご了承下さいませ。 それでは、皆様の想いを込めた心温まるプレイングをお待ちしております。

リプレイ

●想いはいつまでも一緒に
 夜の海辺は、冬の冴ゆる空気に包まれ、静謐な雰囲気を漂わせる。
 耳を澄ませば、穏やかな波の調べが心地好く。
 やがて時間が経つにつれ、波の音色が小さくなって、潮が少しずつ引いていく。
 深い藍色の世界が彩る空の真ん中に、ひと際輝き、煌々と闇夜を照らす、丸い月。
 水面に映り、伸びた光をなぞるが如く、一本の道が海の中から出現し、海に浮かんだ小さな島と陸地を結ぶ。
 其れは月が誘(いざな)う海の道。小島に住まう神様と、人々を繋ぐ導(しるべ)なり――。

 一年の終わりは、新たな年の始まりだ。
 去り行く年に想いを馳せて、巡り来る年に心を寄せる。
 過去と未来の境界線。日付が丁度変わる頃、イズレンディルとコルネリウスは手を取り合い、海の道を歩いて渡る。
「海は不思議ですね、満ち引きで道が出来てしまうのですから」
 今歩いているこの道も、先程までは海で眠っていたと思うと、自然の神秘は底知れないと感心するイズレンディル。
「……この一年、沢山の事がありました」
 一歩ずつ、足を進める毎に、コルネリウスは去年にあった出来事や思い出を振り返る。
 歩兵団の部隊を受け持つ一方、学園に通い、学生生活を謳歌するなど、あらゆる方面で充実した日々を送っていた。
 そして何よりも――。

(「貴方に、幸せを沢山貰いました」)

 エルフの乙女は頬を薄っすら赤く染め、横目でイズレンディルの顔をチラリと見遣る。

「一年の間で様々ありましたね。次の一年も楽しみです」
 イズレンディルもまた、コルネリウスと過ごした日々を思い浮かべて、これから迎える新たな年が、彼女にとって幸せなものでありますようにと、心の中で願うのだった。

「また新しい一年、沢山の時間を共に過ごしましょう」
 はっきりと言葉を口に出さずとも、彼の想いは握った手の熱から伝わってくる。
 コルネリウスの想いもまた同様に、願うはイズレンディルと、彼の大切な氏族の人々全ての幸福。
 彼がいつも幸せでいられるように、寄り添い、支えていけたら、と。
「……ディリーのもっと色んな一面も、沢山見せてほしいです」
 もっと彼の事を知りたいから。今よりいっぱい笑って、喧嘩して、沢山の大好きを伝えて、このままずっと側に居たい。
「私の一面、ですか? もう全てお見せしてしまっている気がしますけど」
 コルネリウスの切なる願いに、イズレンディルは今日に至るまでの彼女との時間を思い返し、さて、と一瞬考えた後。
「少し走ってみましょうか? 海の道で競争です」
 ふと頭の中で閃いたのか、子供みたいに悪戯っぽく笑うや否や、繋いでいた手をぱっと離し、月明かりが照らす光の道を駆け出した。
「えっ? ちょっと、待って下さい!」
 予期せぬイズレンディルの行動に、コルネリウスは驚きを隠せず、慌てて後を追いかける。
 走る彼の背中を眺めつつ、早速新たな一面を見せてくれたと、内心嬉しく、自然と笑みが零れ出る。
 先頭を行くイズレンディルは、道の途中で足を止め、追いついたコルネリウスの両手を取って、ニコリと微笑む。
「それでは、大好きなネリーへ。今年も宜しくお願いしますね」
 愛しい彼女に捧げる、新たな年の最初の誓い。告げる言葉に、コルネリウスは彼の両手を握り返して、嬉しそうに笑う。
「ええ……今年も宜しくお願いしますね、私の愛する人(ディリー)」
 黄昏色の双眸に、愛しい彼の瑠璃色の瞳を映して見つめ――寄り添いながら、感じる肌の温もりに、二人は互いの想いを確かめ合った。

●剣に捧げる約束
 ――月の光が導く海の道。その上を、静かに眺めながら歩く一組の男女。
 海神・江流は髪と瞳が黒い容姿や名前から、おそらく東方大陸にルーツを持つと思われる。
 そしてここシャルガネ居住区の独特な雰囲気を、どこか懐かしむかのように傍観していた。
 そんな江流の手を引くのは、アセット・アセトシソン。江流とは対照的に、金色の髪と赤い瞳が華やかな印象を与える、元気な少女だ。
 アセットが積極的に繋ぐ手を、江流も自然と受け入れ、二人はそのまま鳥居を潜り、灯籠の炎に誘われながら、奥に佇む神の社に到着する。
 江流はこの地の作法に慣れた様子で、社の前にて参拝をする。アセットは江流の動作を見ながら真似して、彼に倣って参拝を済ませる。
 斯くして、初詣を終えた二人は、上ってきた石段を下りながら帰路へと向かう。

「そういえば、海さんは何をお願いしたんですか? 私は、海さんから頂いた剣と上手く付き合っていけるようにと、お願いしたんですけど」
 やはり他人の願い事は気になるもので、アセットはどうせ聞くなら、とまずは自分の願い事を明かすのだった。
「ユールフェスに武器とか、ムードも何もないけど……ただまあ、俺にやれるのはそんなもんくらいだからな」
 折角の聖祭なのだから、と江流は若干呆れるものの。そんなところも彼女らしいと微笑ましく思い、気に入ってくれたのだったら嬉しいよ、と感謝の気持ちを添えながら。アセットが教えてくれたお礼に応え、自身の願い事をポツリと話す。
「お願いか……今は一応学生だし、学業成就かな」
 その先の、向こう側にある望みを直接願うのは、流石に虫が良すぎるから。
「ところでアセットは、学校とかには興味ないのか?」
 確か、冒険者にはパンクリアース学園に入る機会が設けられると耳にした。彼女はどうだろうかと思って問う。
「学校ですか。私は文字とか生活のすべては、ほとんど母親仕込みなんです。ただ、何もかもすべて、というわけではないので……興味ありますね」
 どうやらアセットも、学園生活には興味津々、気になるようだ。
「入学できれば、海さんの後輩ってことになるんですね」
 もしも彼女が今年入学すれば、江流にとっては1年後輩にあたる事になる。
 アセットと一緒に学園生活を送れるのであれば、それもまんざらではないと、微笑む江流。
「海さんは私が冒険者になってからいろいろお世話になってますし、ただ、そういう意味でももらってばかりというのは。私も剣士のはしくれ、何かあったら助けになりますよ!」
 力強い言葉と共に、江流の手を握るアセット。
 掌から伝わる彼女の熱に触れた時、江流はふと思い出す。あの時のアセットの言葉に、まだ返事をしていなかった事を。
「……黙って居なくなったりはしないよ。それは約束する」
 彼女に決して、迷惑をかける真似だけはしない。
 頭上に浮かぶ優しい月の光に照らされながら、江流は誓いの言葉と一緒に、アセットの手を強く握り返した。

●貴方の笑顔を、見たいから
 静寂に包まれた真夜中の海。暗澹たる世界に煌めく月の光が、恋人達の未来の道行きを照らす。
 先日、カペル領にて聖霊節を祝う祭りが開催された。
 エル=バ=ノイアンは祭りの当日、カペル侯爵家の令嬢であるシルヴィア・A・カペルに告白した。
 そして恋仲となってから、二人が一緒に出掛けるのはこの初詣の日が初めてとなる。
「君は、私と運命を共にすると言ってくれたね」
 冬薔薇が咲き誇る聖堂で、白雪が舞い降る中、求愛の言葉を告げた彼。
 あの時の〝愛している〟の一言が、シルヴィアにとって何より嬉しく、永遠ともいえる至福の時間を感じていた。
 縁(えにし)を結ぶ神が住む土地――恋仲となったばかりの今の二人に相応しく、ここに来たのも、新たな始まりの一歩を踏み出す為に――。
「なら、縁をより強くしようじゃないか」
 この地に残る言い伝え。想いを寄せる相手と手を繋ぎ、島への道を渡り歩けば、二人の縁が結ばれる。
 シルヴィアはその伝承をなぞり、一緒に手を繋ごうと暗に言ってみたのだが。果たして想いは伝わったのか、気になりながら彼の顔を覗き込む。

 恋人同士……と改まって考えると、妙に相手を意識してしまって、調子が狂う。
 ノイアンは告白した時の事を思い出し、少し恥ずかしそうにはにかむが。普段通りの自分達で、と一つ大きく息を吸い、彼女に向かって手を差し出した。
「……手を。寒いから」
 いつものようにぶっきらぼうで素っ気なく、けれども想いは十分に。
 シルヴィアは照れ臭そうに微笑んで、彼の手を、そっと包み込むように自身の掌と重ね合わせて、握り締めた。

 二人が手を繋ぐのは初めてではないが、当時と比べると、恋人関係となった今は特別な状況だ。
 海辺を照らす月の光に導かれ、海に現れた神秘の道を歩いて渡る。
 繋いだ手から、肌の温もりを感じつつ、耳を澄ませば、互いの胸の鼓動や息遣いが聞こえてくる。
 素敵な景色を一緒に眺め、特別な時間を共に過ごす。愛する人の傍にいられる事が、とても幸せな事だと、シルヴィアはノイアンに凭れるように寄り添うのであった。

 それから二人は、神社の前まで辿り着き、この地の作法に倣って参拝する。
 拍手(かしわで)二回、両手を合わせて、目を閉じて。心の中で願いを告げる。
 シルヴィアの望みは、故郷の民の安寧と、もう一つだけ大事な――。

 片や、ノイアンが願った事は……今この気持ちを忘れることがないように。
 今日見た景色も、感情も、これから何度も思い出すから。

 願い事を終え、どこか穏やかな表情を浮かべるノイアン。そんな彼を、シルヴィアは見守るような視線で見つめ、捧げた願いをふと口にする。
「――私は、君がもっと笑っていられるようにしよう」
 これは彼女の願いでもあり、意思である。
 彼と一緒に、笑顔が見られる時間を過ごしたい。楽しい思い出を、もっといっぱい作りたい。
 そう考えるシルヴィアに、ノイアンはふっと口元を緩めて、言葉を返す。
「……俺は割と、お前の前では笑えているが?」
 こんな風に冗談めかして言えるのも、全ては彼女のおかげだと。
 得意げに微笑む彼に、シルヴィアも釣られて笑みを零し、二人は互いの青い瞳に、それぞれの顔を映し込む。
 この日の笑顔を目に焼き付けて、今日という日の記憶を何度も思い出すように――。

●己が心に誓うのは
 日付が変わり、新たな年を迎えるシャルガネの地。
 未明の空はまだ暗く、夜が明けるには早い時刻。
 静まり返った空間に、冴ゆる澄んだ空気は神聖な雰囲気を醸し出す。
 フードを目深に被った青年、だわは故郷のリーンエス王国とは異なる文化の世界を、物珍しそうに観察していた。
 彼がこの地を訪れたのは観光目的もあるが、初詣の願掛けもその一つである。
「人の望みを叶える神など居なくとも、自身の望みに改めて向き合い気を引き締める。そうした機会は決して無意味じゃないと思う」

 夜闇を照らす月の光に誘(いざな)われ、海に現れた道を進んで、鳥居を潜り、赤灯籠の灯火が揺らめく石段を上がる。
「東方様式の建築はいつ見ても独特で面白いな。どこか不安になるというか、幻想的と言うべきか」
 ロスガリア大陸では他に見ない、シャルガネ独自の造形は実に不思議なものだと、だわは興味深く思って目を凝らす。
 やがて石段を全て上り、奥に佇む、古めかしくも厳かな神社に辿り着く。
「社とはこれか。確か、ゆっくりと2回拍手をして……」
 この地に伝わる作法に沿って、両手を合わせ、瞑目し、心の中で願い事を呟く。
(「……今年こそ故郷を守る方法を見つけたい。これなら守れると安心して、防衛の為に帰れるような成果がほしい」)

 ――俺の命は、それに捧げる為に残してあるのだから。

 願い事を終え、だわは薄っすら目を開け、静かに一つ息を吐く。
 念じる思いが、神に届くかどうかは分からない。けれども、何事も行動しなければ始まらないのだ。
「……さて、行くか。あまりあいつを待たせる訳には行かないしな」
 くるりと踵を返して、足早に帰路へ向かうだわ。
 彼の脳裏に思い浮かぶのは、黒いおさげ髪が似合う、ドワーフの少女の笑顔であった。

●縁は奇なりし
「初日の出を見に行こう。ついでに神様にも挨拶をする」
 ヨル・スレイマンが初詣をしようと声を掛け、友人のナハシュも興味本位で賛同し、誘われるがままやってきた。
「神のほうがついでか。とうとう嫌われたな神」
 どのみち神への信心など持ち合わせてはいまい。いかにもヨルらしいと苦笑しつつ、月の光に呼応するが如く、海から出現した道にナハシュは少年のように目を輝かせる。
「へえ、今の時期だけ出る道か。そういやたまにあるよな。悪くねえ」
「海を歩きながら夜明けを見るのは、結構悪くないと思うよ」
 ヨルの言う通り、悪くはないが……真冬の夜風は流石に冷たく、ナハシュはふかふかした毛皮のコートを羽織りつつ、熱い紅茶の容器を時折取り出し、適度に飲んで寒さを凌ぐ。
 片やヨルの方は、友人と遊びに来ただけだからと、普段被っている頭蓋を外し、素顔を見せた状態だ。

 薄暗闇に包まれた空。道を照らしている月が次第に傾き、二人が島に着く頃には、空は仄かな明るさを帯びてきた。
 水平線の彼方から、まばゆい光が溢れ出る。夜が明け、海から望む今年最初の日の出に、二人は暫し見惚れていた。
「……さて、見るモンも見たし、さっさとお参りを済ませちまおうぜ」
 促すナハシュに、ヨルも頷き、石段を上って神社へ到着。
 社の前で拍手(かしわで)二回、頭を下げて、それから願い事を心の中で――。
「それはシャルガネ連中の礼儀だろ。最近はちょくちょくこっちに来るからな、覚えちまった」
 見様見真似で参拝するナハシュに、ヨルも後に続いて手を合わせる。
「特に無いなら身体安全がお薦めだよ。君はヤンチャだから、叶えば釣りが来るまである」
 などと冗談めかして、願い事をしている最中に話し掛けるヨル。
「まー適当にな、適当に。お前もどうせ適当だろ?」
「そうだね、適当だよ俺も」
 形式的な部分はどうであれ、心に刻めばそれで良い。
 そんな言葉のやり取りをしながら、ヨルはふと考えていた。

 神に願い事なんて、前までは全然関心がなかったけれど……わざわざ人を誘ってこんなところに来るなんて、数年前からは考えられない。
 放蕩癖で無責任。気紛れで場当たり的に生きてきた自分も、随分変わったものだと不思議に思う。
 他者とは一定の距離感を保ち、自ら詰める事などしない。けれども、そう思わせてくれる〝彼〟の存在は、自分にとっておそらく特別なのだろう。

(「縁⋯⋯というほどのものでも無いけど、この緩やかな繋がりが続いてくれたら良い、な」)

 そんな事を考えながら、ヨルはいつも付き合ってくれる親友(ナハシュ)に感謝しつつ、嬉しそうに微笑むのだった。

●夜明けの空に告げる想い
 時間の流れと共に、月は次第に傾き始め、東の空が薄っすら赤みを帯びてくる。
 日付が変わり、年が明け、数時間が経った後。この地を訪れたのは二人の男性。
 精悍な戦士であるエルフの青年、カルフ・オルヴォは、同行している細身の人間(ヒューマン)の少年、セオ・ウルジオに誘われ、このシャルガネの地にやってきた。

『月の道を僕と一緒に渡って下さい』

 物静かで控え目なセオが、不安を感じながらも譲れぬ思いでそう告げたのは、先日の事。
 カルフと出会ってからずっと、彼に心惹かれて抱き続けてきた想い……それが恋心だと知っていた。
 そして、肝心のカルフの心の中に、彼の昔の君主がまだいる事も――。

 嘗て仕えた主への、敬慕と忠誠を貫いた過去に、悔いは無い。
 主君を守れず、生き残ったカルフにとって、そうした気持ちは自身を慰める為の詭弁でしかないだろう。
 奪われた側にしたら、到底許せる事ではない。自問の日々を繰り返し、人との距離を置いて過ごす。
 そんな生活を送るカルフは、ある日、主と瓜二つの容姿のセオと出会った。
 別人だと頭で理解はすれど、セオの為人を好ましく思い、今日まで共に居るのであった。
 コイツを一人前に育てると、言い訳めいた理由を付けて――。

 カルフはどこかで、セオと主君を重ねて見ている。その事をセオ自身は朧げながら感じているが故、想いをまだ告げるべきではないと、悩んでいた。
 胸が張り裂けそうなほど好きなのに……でも、この機会を逃してしまえば、本心を打ち明ける時は遠退いてしまう。
「隣で一緒に……ずっと続く縁が欲しいです」
 声を震わせながら、勇気を振り絞って吐き出した想い。
 今にも泣き出しそうな表情のセオを、カルフは優しく笑って目を細め、少年のプラチナブロンドの髪をふわりと撫でた。
「そんなに緊張するな……一緒に見よう」
 自分を誘った時から、彼の気持ちは察していた。だからこれ以上、余計な負担はかけまいと、カルフは左手をさり気なくセオに向けて差し出した。
「足元に気を付けろ」
 握ったその手はとても暖かく、道を渡る間も、セオは気も漫ろになって、彼の温もりを黙って噛み締めていた。
 落ち着かない様子のセオをカルフが導くように手を引いて、やがて二人は島の神社の前に来た。

『――この縁が、ずっと続きますように』

 祈りを終えて、再び島の入り口に戻った時。薄暗闇の空に淡い橙(オレンジ)色が溶け込んで、夜明けと日の出の瞬間を、二人は息を呑み込み、眺めていた。
「僕……やっぱりカフさんが好きです」
 昇る朝日を目に焼き付けながら、決意を込めて、告白するセオ。
 だが言った後、恥ずかしさのあまり、耳まで真っ赤になって思わず顔を伏せてしまう。

 真っ直ぐで純真な想いを抱く若人を、自分の元に止める事に、カルフは少なからず抵抗を感じていた。
 それはエルフである自分との寿命の差なのか。否――恐れているのだ。
 まだ告げていない、主と己の詳細を。全てを知ったら呆れるだろう……そうか、それが怖いのか。
 勇気を出して告白した彼。その想いに応えなければ、きっとまた――。
「……今度、主君との話を聞く気はあるか?」
 語った後に、二人の関係がどう変わろうと決めたのだ。これが自ら選んだ生き方なのだと。
「はい、聞かせて下さい」
 カルフの問いに、セオは伏せた顔を上げ、目を輝かせながら返事する。
 楽しいだけの話でないというのは、分かっている。
 でも、好きな人の事を知れるなら、そっちの方が嬉しいから。

 二人の未来はまだ始まったばかり。彼らがこの先歩む世界に、祝福を――。

マスターコメント

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。 新年に捧げる願い事、こちらとしても大変楽しく拝見させて頂きました。 皆様それぞれの想いが、この先ずっと結ばれる事を心より願っております。 これからの一年、皆様にとって幸せに満ちた年でありますように。 この度はご参加下さいまして、誠に有難うございました。
イベントシナリオ

イベントシナリオ易しい 報酬:少ない11 / 4〜25人

2022年01月06日 22時29分28秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ドミニク・ログナー

    ドミニク・ログナーだよ。今回は参加してくれてありがとう。 今は何かと忙しい時期だけど、新たな年明けの日をどうか心行くまで楽しんでいってね。

  2. セオ・ウルジオ

    こんにちは 素敵な初詣をありがとうございます カルフさんと一緒に過ごさせていただきます よろしくお願い致しますね

  3. カルフ・オルヴォ

    カルフ・オルヴォだ。よろしくな。

  4. シャルティナ・カッツェ

    シャルティナ・カッツェだ。このクソ忙しい年末にわざわざ集まってくれてあんがとな。アタシは適当にぶらぶらしてるんで、アンタらも好きに楽しんでくれ。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0