【魂禍】フラスコの外の小人
おおくまねこ
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シナリオID:1763
オープニング
後の歴史書に“辺獄戦役”と記されるシグモル火山の異変は、その日初めて記録の上に登場した。
しかし、その前兆は既に表れた後……。
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「聞いての通り、シグモル火山の地下、“辺獄”と呼ばれる地にクリーパーが大量に現れ、魔獣と争っている。
このクリーパーは、殺した相手の魂を喰らい、自分の力に変えてしまう厄介な力を持つ。クリーパーが魔獣と争うのは、その魂を我が物とする為だ。放置すれば今にも地下を平らげ、地上をも貪り尽くす程の怪物となるだろう。
元来コイツは、私が封じていた存在なのだが――」
さる冬の日、幾つかの仕事が冒険者ギルドに依頼された事を、歴史的な事件として当地のギルド員が伝えている。
その理由は、依頼主が神様だったからだ。
「倒さず封印した理由は単純だ。奴は私でも倒し切れなかった。だから封じる他なかったのだ。ところで、肝心の依頼内容だが」
少女の姿をした火神は口元に弧を描き、事も無げにこう続けた。
「このクリーパーを、倒して貰う。最終的にはな。だが、方々の妙な動きも無視出来まい。従って、まずはこれら全てに対処し、戦果を挙げて来い。……期待しているぞ?」
●
「ハア、ハア……」
岩肌だけが続く荒野を、私は走っていた。体力はもう限界に近い。酷使し続けた足がギシギシと軋み、気を抜けば今にもその場に倒れ込みそうになる。だが、止まればまた、あの男の手下が追ってくる。もっと見つかりにくい所に辿りつくまで、逃げなくちゃ。
「ここなら、見つからないかな」
ようやく暗くて静かな所に滑りこんだ私は、ほう、と息を吐いた。安心したら、クウ、とお腹が鳴った。もう、ずいぶん長い間まともなものを食べていない。そう考えてから、私は首をひねった。あれ、そもそもまともなご飯なんて私は食べた事あったっけ?
私は冷たい岩の上で膝を抱えて丸くなりながら、少し前の時のことを思い出す。
――月のない夜に、私は親友シャルルと共に、あの『フラスコ』から逃げ出した。焼けるように熱い大地の上を、灰の降る森の中を――私達は必死に逃げた。あの男の仲間にもし追い付かれたら、きっとまたひどいことをされるから。私達はあの男が決して追いかけてこられない場所を目指して、逃げ続けた。けれど、シャルルとは逃げている途中ではぐれてしまった。あの子は無事だろうか。独りになっても私はひたすらに逃げ続けた。逃げ出したのは一週間前のことかもしれないし、実はまだ三日前のことなのかもしれない。その辺りは記憶が曖昧だ。
「お腹空いたな……。あったかい毛布が欲しい……会いたいよ、シャルル――」
私の頬を、ひとすじの雫が伝った。
●
「ギイギイ、ギイギイ」
少女が眠りに就いた頃。2メートル近い巨躯を持つサングラスの男が、魔獣の群れと対峙していた。魔獣達はギイギイと耳障りな鳴き声を上げながら、ぐるぐると男の周りを旋回し様子を見ている。魔獣達の名はバフォメット。本来は辺獄と呼ばれる過酷な地域にのみ住む、この辺りにはいるはずのない危険な獣だ。
「1を連れ戻せ……。邪魔する奴は殺せ……」
うわごとのように呟きながら、男は鉄棍を構えた。
●
「シグモル火山帯にバダイン渓谷と呼ばれる土地がある。そこに赴き、とある少女を保護してほしい。というのも、また予知夢を見たのじゃ」
リブラネスタの冒険者の酒場にて。大陸最高峰の予知能力者、オペラは言った。彼女の見た予知夢は、必ず近い将来現実になるのだと言われている。今回は最近なにかと騒がしい、シグモル火山帯に関する予知を見たようだ。
「どうやらこの少女は、シグモル一連の騒動に深く関わる者のようじゃ。捨て置けばあの地域にとってよくないことが起こる……そんな気配の夢じゃった。夢の中では、少女は追手に追いかけられながらバダイン渓谷の辺りを彷徨っておった。名前は追手が、『アン』と呼んでおったから、恐らくアンじゃろう。身長は130センチぐらいで、髪は長い。一番特徴的なのは右目が緑色の宝石に置き換わっておる点じゃな。人相書きを描いてみたので、皆で回覧するのじゃ」
そういって、オペラは一枚の似顔絵をテーブルの上に置いた。そこには、今オペラが言った通りの特徴を持つ白髪の少女が描かれていた。
「残念ながら彼女の正確な位置までは分からんのだが、渓谷地帯どこかにおることは間違いない。追手を撒く為に渓谷の下にある街、バダインにあるダマスカスの鉱床――そういったところに逃げ込んでおる可能性もある。そして、彼女の追手も渓谷近くを徘徊しておるはずじゃ。必ずしも倒す必要はないが、もたついて少女を連れ去られてしまうとまずい。追手や、現場におる危険な魔獣達より先に少女を見つけるのじゃ」
オペラが見た予知夢では、追手の男が何故か魔獣達と戦っていた。両者の関係性は不明だが、冒険者の立ち回り次第では、彼らと戦うことになる可能性はある。また、必ず当たる予知夢とはいえ、過程や結末に揺らぎが起こることはままある。第三者が介入した場合は特に顕著だ。場合によっては、保護対象の少女が魔獣と鉢合わせしてしまう可能性もあるだろう。
「最後に一つ。保護対象は非常に臆病な少女じゃ。名前を呼んでしまうと追手と誤解される恐れもある。それに、こう言うとアレなんじゃが、強面の冒険者は接触の仕方も考えた方が良いかもしれん。では、頼んだぞ」
解説
マスターより
リプレイ
バダイン渓谷へとやってきた冒険者達は二チームに分かれてアンを探すことにした。今回は人探しなのでメンバーが分散した方が効率は良いのだが、アンには追手がいることも分かっている。単独行動は荒事になった際に危険だと判断したのだ。
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「右目が宝石になってる……? 変わった方ですね? でも女の子が追われてたり魔獣に襲われるかも知れないなんて大変です! 早く保護してあげなきゃですっ!」
捜索班に志願したシェルリア・リトヴァールは張り切っていた。彼女のカバンには、ロスガリア大陸ではまだまだ高級品であるチョコレートバーがぎっしりと詰まっている。お腹を空かせていそうなアンに食べさせるつもりで用意したのだ。
「火山とは逆方向にアンさんは向かっていたはずです! そして暗くて静かな所……鉱床でしょうか!」
エルナ・クルプファルツはアンは鉱床にいる気がすると力説していた。オペラの予知の内容からそう推測したのである。
「渓谷や鉱床の地図を用意した方が良さそうですね。渓谷は結構広いようですし。酒場に行けば、炭鉱夫がいるかもしれません」
リコリス・アデュラリアの発案で冒険者達はビッグオウムで降り立った街の酒場に行き、炭鉱夫の姿を探した。ほどなく、テーブル席で盛り上がっている炭鉱夫たちを見つけた。
「すみません。不躾ですが、この辺りにある鉱床の地図を作っていただけませんか?」
「ん? おお、この辺りでエルフとは珍しいな!」
リコリスが話しかけると、すでに出来上がっていた炭鉱夫たちは機嫌良さそうに反応を返してきた。
「鉱床の地図なんて何に使うんだ? あんた達、ここで働きたいのか?」
「よく見りゃ、美人がいっぱいいるじゃねえか! なあ、俺達と一杯付き合ってくれよ! そしたら地図を作ってやるぜ」
「すみません、急いでおりますので……代わりにこちらでいかがでしょうか」
リコリスは男の要求をやんわりと拒否すると、元々謝礼として用意していた小さな宝石を幾つか机の上に置いた。
「お、こいつは全部宝石か! 俺達全員の今夜の飲み代にしてもおつりが来そうだな……。分かった分かった、じゃあこっちを頂こうか。チャッチャと作ってやるからそこで待ってな」
「ありがとうございます」
炭鉱夫達は宝石を受け取り、鉱床の地図を作ってくれた。全員酔っ払いだった為、細部が適当だったり線がガタガタだったりはしたが、なんとか使えそうだ。
「よし、地図も手に入ったし、とりあえず鉱床から当たってみるか? さっさとこんな店は出ようぜ」
酒場に入店した途端に店員に呼び止められ、むくれていたバーネット・フォーサイス(28才、ハーフリング)は、足早に渓谷の方へと歩いて行った。
●
一方その頃。街の入口の近くで聞き込み班は作戦会議をしていた。
「しかし、臆病か……名を呼ぶのは難しいと来た。見つけても信用されるのに苦労するから、不用意に近付かない方が良いかもしれないな」
シグルド・オルセンは渋い顔をした。今回は少女の保護が目的の依頼だが、臆病な上に追手がいることを自覚している少女となると、うかつには近づけないからだ。
「全くじゃな! アン殿は強面も大声もダメか! 俺は直接対面せんほうがいいな! わはは! だがシグモルの騒動に深く関わる、となればな、多少子供受けが悪かろうが動くしかあるまい!」
ヴェイグ=ベーリングは豪快に笑った。ヴェイグは自分がドワーフらしくマッチョな外見であり、ついでに声もでかい方であるという自覚がある。普段のテンションで声をかければ、気弱な少女であるというアンが怖がってしまう可能性は高いだろう。
「俺はアンとの接触は避け、聞き込みでの情報集めに勤しむとしようか。孫娘を探しに来たという設定で行くぞ!」
「腹も減ってるだろうから、飲食店の近くとかをうろうろしてるかもしれないな。俺はその辺りを重点的に聞き込みしてみるか」
ヴェイグとシグルドが行動指針を共有していると。
「追手がいるらしいから、俺はそっちの方を見なかったか街の連中に聞いてみるわ。半裸で角の生えた男に声かけられたら怖がるかもしれねえしな」
ナハシュがひょいと手を上げた。ゴブリンである彼は今回集まったメンバーの中では一、二を争う強面なのだ。中身の方は気のいい兄ちゃんなのだが。
「私は友達とはぐれてしまったという設定で聞き込みをしますね! アンちゃんを早く見つけてあげないと! なんだかこの流れだと私も顔が怖いみたいですが、私は違いますからね!」
ルアンナ・ミュラーは腕まくりをした。彼女は冒険者稼業以外にもパン屋の店主をやっている。一般人との世間話は得意分野だった。
「でも、アンちゃんは一体何者なんだろう?」
ルアンナはふと、此処を出る前にオペラと交わした会話を思い出していた。
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「あの、オペラさん。このアンちゃんの右目が宝石になってるっていうのも確かな予言なんですか?」
「うむ。間違いないぞ。綺麗な、エメラルド色の宝石が見えた」
「そうですか……」
オペラの言葉を聞き、ルアンナは渋い顔をした。実はつい先日、「依頼で人形を操ってくる死霊術師と戦ってきたんだけど、めっちゃくちゃ怖かった!!」という話を友人から聞いたばかりなのだ。
(話を聞く限り、アンさんの風貌はちょっと人間離れしているわ。もしかしたら、彼女も普通の人間じゃなくて人工的に造られた存在なんじゃないかしら……)
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「孫娘が家出しての……しかし俺は嫌われている故な。バレたら逃げられるやもしれん……すまんが内密にしてくれんか」
「孫娘はサングラスを掛けた犯罪者に狙われておる……何でもよい、どこぞで見た、等でも構わん。教えてくれんか」
「この辺りで、角と翼の生えた怪物を見たことはないか? 孫娘が狙われとるんじゃ……」
ヴェルグは孫娘と生き別れた老人という設定で、街の人々に聞き込みを続けていた。アンと魔獣については収穫無しだったが、「サングラスの男」については、「見た」という証言を得ることができた。
「ふむ、追手の方だけが街に来ておるのか?」
ヴェルグは情報提供者に丁重に礼を言うと、サングラスの男がいたという方角へ急いだ。
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「この辺りで小さな女の子を見なかったか? 130cmぐらいの白髪の子だ」
「いやあ……見たこと無いねえ」
「うーん……ここも外れか」
いい匂いがする店を中心に聞き込みを続けていたシグルドだが、また空振りに終わり、肩を落とした。ローテンションで店を出ると、ちょうど向かいの店から出てきたヴェルグとバッタリ会った。
「手がかりはあったか? シグルド」
「いや、成果なしだ。そっちは?」
「サングラスの男の方がこの辺で目撃されておるらしい。そろそろ鉢合わせするかもしれんぞ」
「――そうか。そっちの方が……」
二人が真面目な顔で向かい合っていると、血相を変えたルアンナが二人に向かって突撃してきた。
「ぜえぜえ。良かった! 二人とも揃ってる!」
「もしかして、見つけたのか?」
全力疾走してきたのか、息を切らしているルアンナへと、シグルドが問いかける。
「はい、見つけました! アンさんじゃなくて、追手の方ですが! 今、ナハシュさんが追いかけてくれています! みんなで包囲しましょう!」
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「なんとなくですけど、立ち居振る舞いが人間離れしているような……ちょっとおかしくないです?」
「うむ、俺もそんな気がする。だいたい街中にいるのに聞き込みもせずに無言でうろうろするサングラスとか、怪しすぎるわい! 背中に棍棒もしょっとるしな!」
「まあ、人違いってことはないよな。なるべく人気のない場所を選んで接触しようぜ」
冒険者達がサングラスの男を尾行していると、さすがに街の住民達も怪しいと思ったのか、大通りで駐在の兵隊らしき人物が男に話しかけていた。
「おい、兄ちゃん。棍棒なんか持って街をうろうろされると困るんだよね。みんな怖がるだろ? ちょっと詰め所まで来てもらえる?」
「……アンを、連れ戻せ。邪魔する奴は殺せ」
男はそう呟くと、背中にしょっていた棍棒を引き抜いた! 突然のことに反応できなかったのか、兵隊は目を丸くして棒立ちになっていた。
「マジかよ! アブねえやつだな!」
しかし男が棍棒を振り降ろす前にナハシュが飛び出し、男の背中に飛び蹴りを叩きこんだ。その衝撃で男のサングラスが外れ、地面へと落ちる。
「…………アンを、連れ戻せ。邪魔する奴は殺せ」
振り向いた男の左目には――ルビーのような赤い宝石が収まっていた。
「「!」」
それに気づいた冒険者達は大きく目を見開く。
「大丈夫だ兵隊さん! 下がってくれ! 周りの人達の避難も促してくれるとありがたい!」
「わ、分かった!」
シグルドが男にシーザーロアを飛ばしながら兵隊に避難を促すと、兵隊は大急ぎで男から離れた。
「……アンを、連れ戻せ。邪魔する奴は殺せ」
シーザーロアがちゃんとかかったのか、男はぐりんとシグルドの方を向く。
「貴殿はシグモルの……アン殿の敵か味方か? 聞くまでもなさそうではあるがな」
ヴェイグは溜息を吐いた。だがまだ得物は抜いていない。組み付いて確かめたいことがあるからだ。
「乱暴者は燃やしてあげます!」
ルアンナは周囲のエーテルを収束させ、燃える巨岩へと変えて男に叩きつけた。男は間近で炸裂した石礫の直撃に晒されたが、意に介さずシグルドに向かって突進しようとしている。
「タフな奴ね! シグルドさん、気を付けて!」
「ああ! このままこいつを郊外に誘導する! みんな、ついてきてくれ!」
シグルドは男から視線を切らぬまま、人気のない方へと駆け出した。
●
「ビンゴだ。アンを見つけたぜ!」
サーマルアイでアンを発見したバーネットはすぐに来た道を戻り、『アン発見』の印を刻んだ。エルナが予想した通り、やはりアンは鉱床に逃げ込んでいたのだ。バーネットの印に気付いたエルナはすぐに栗鼠の分身たちを呼び戻し、一旦集合するように仲間達に連絡した。
「さて、どうやってアンと接触する? アンはけっこう奥まった所に隠れてるぜ。子供しか入れないぐらいの小さい横穴の中だ」
(俺ならギリギリ入れそうなんだが……他にもっといい手があるかもしれん。提案するのは最後の手段にしよう)
バーネットは自分から背が小さいことをアピールするのもアレだったので、もう少し様子を見ることにした。
「はい! 甘いお菓子の香りでおびき寄せるというのはどうでしょうか!」
シェルリアはカバンからチョコレートバーを取り出し、聖剣の如く天へと掲げた。その言葉に、リコリスが頷く。
「食べ物の香りで誘い出すというのは良いアイデアだと思います。それと、偶然を装って発見する方が良いでしょうね」
「偶然野営をしている旅人風な感じでどうでしょう! ついでにご飯も作って分けてあげましょうよ!」
リコリスに続いて、エルナが元気よく提案した。
「じゃ、この辺りで野営だな。鉱床の奥まで食いもんの香りが届くよう、なんとか工夫してみようぜ」
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「アンを、探せ。邪魔する奴は殺せ」
「っ……!」
大男に巨大棍棒で殴りつけられ、シグルドの顔が苦痛に歪む。防御に意識を集中している為、それほど傷は深くないとはいえ、骨が軋む痛みまでは消せない。しかしシグルドは即座に大男へと反撃し、赫い槍で男の腕を刺し貫いた。
「いい加減に倒れなさい!」
ルアンナの杖から光の波動が迸り、男を飲み込んだ。冒険者達の激しい攻撃を受け、ついに限界を迎えたのか、男の体がぐらりと揺れる。
「アンを……探……」
最後にそう呟き、男はばたん、と仰向けに倒れた。
「やっと倒れたか。この男……人間か?」
自らにヒールをかけながら、シグルドは呟いた。シーザーロアに反応こそしたものの、この男の戦い方はどこか不気味だった。まるでゴーレムか何かのような――作り物めいた動きものだったのだ。
「人間ではないかもしれん。この男からは――感情というものが感じられんかった」
大太刀を鞘に納め、ヴェルグが息を吐き出す。ヴェルグはあえて徒手空拳で一度男に組み付き、エンパシーで男との交感を試みていたのだ。しかし、この男からは、如何なる感情も感じられなかった。
「この人の左目にも宝石が……アンさんと同じ……」
ルアンナは血だらけで倒れている男を見下ろし、渋い顔をしていた。
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(アンさん、出てきました! リコリスさん、シェルリアさん、お願いします!)
鉱床のど真ん中でシチュー作りをしつつ、リスでアンの動向を窺っていたエルナは手でパタパタと合図を送った。すさかずリコリスとシェルリアが偶然アンを見かけた風を装い、アンへと接触を試みる。
「あら、あなたは? 迷子かしら?」
「あなた、この辺りの子? 一緒にご飯食べない?」
二人は微笑みを受かべ、アンへと水とシチューを差し出す。
「……あなたたちは、ひどいこと、しない?」
アンは恐る恐る、冒険者達の方へ近づいてきた……。
●
「ぼうけんしゃギルドは――あぶなくない?」
「ああ、大丈夫だ。お前さんを追いかけてきてた連中には、絶対に渡さない」
エルナの栗鼠に呼ばれ、街の宿屋で捜索班と落ちあったシグルドは、アンを不安にさせないようにと、にっこり笑った。
「貴方を追いかけていた大男は追い払った。私達が守るからもう大丈夫」
「……」
ルアンナもアンを優しく抱き締める。その時、何故かアンは少し寂しそうにしていた。
●
「もぐもぐ。もきゅもきゅ」
冒険者達を信用したのか。アンは、食後のデザートとしてシェルリアのチョコレートバーとルアンナのパンを一心不乱に貪っていた。
「よっぽどお腹が空いていたんですねえ」
ルアンナはその様子を、傍らで優しく見守っていた。だが、ルアンナの胸中には一つの疑問が残った。
(アンちゃん、一体何者なんでしょう……)
抱き締めた彼女の体は温かかった。ちゃんと心臓も動いていた。アンは――人形ではない。
「あれ、そういえばヴェイグはどこ行った? 誰か知ってるか?」
いつの間にかヴェイグの姿が消えていることに気付いたナハシュがみなに尋ねると、エルナが口を開いた。
「ああ、ヴェイグさんなら街に行かれましたよ。嘘をついて聞き込みをしていたことをお詫びして回るそうです」
「うわあ、律儀なオッサンだなあ」
エルナの答えに、悪戯好きのナハシュは引いていた。
「ともかく、これにて一件落着ですね。彼女も、ギルドでの保護を承諾してくれたことですし、また追手が来ないとも限りません。急いでここを離れましょう」
「ああ、あとはアンを連れて冒険者ギルドに――」
「――む」
リコリスに相槌を打ったバーネットがアンの名を口にした時だった。バーネットよりも10センチほど小柄な少女は小さく、だが強い意志を感じさせる声で言った。
「……1、じゃ、ない。私は、ジャンヌ、だよ」
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:多い8 / 4〜8人
2022年01月01日 21時12分11秒 公開
相談掲示板
ウォーリアのヴェイグだ、よろしく頼む。 目的は少女のアンの保護!性格は卑屈で臆病でまず逃げる事を考える、と。 苦手も多く挙げられておるし強面の人は注意だとの話も出ているな。大声も早口も注意だ。 これは気を付けて応対をせんとな。 …いかん、俺はダメだな!わはは! 直接の捜索や接触は皆に任せたいが構わんか? 俺自身は魔獣や追跡者カトルの足止めを担う事も考えているが、街での聞き込みも考えている。 とはいえ大っぴらに聞き込みをすると、アン当人や追跡者カトルに勘づかれる恐れもある故な。 一案ではあるが、 「孫娘が家出したので追いかけて来たが、俺は嫌われている故な。バレたら逃げられるやもしれん…すまんが内密にしてくれんか。」 「トラブルに巻き込まれているようでな、サングラスを掛けたあくどい男が絡んでおる…。」 といった具合に聞き込みをしようかとな。どうであろうか? 接触に関しては偶然を装うのが良いかもしれんな。 偶然の出会いからの善意の手助けを行い、安心して貰えたところで話をして保護をする、そんな流れが良いかとな。
シーフのナハシュだ。今回はよろしく。 アンに関しては同じく大声や強面・・かはわからねえがまあこの見た目(角+半裸)だからな。 ちょいと怪しまれるかもしれねえ。説得の本命は別の奴にお願いできたら助かるぜ。 保護の流れとしても上がってんのがベストじゃねえかな。上手く此方に対する敵意を抱かせない感じで接触できりゃあいいと思う。 街に渓谷と範囲が広いこと、魔獣や男との戦闘も考えられることも踏まえると、基本複数人行動がよさそうか?3,3,2で3組に分かれるか、もしくは2人組を4つ作って手広くやるか、みたいな感じががいいんじゃないかと思うがどうだろう。
キャスターのリコリス・アデュラリアと申します。 ……よろしくお願い致します。 >接触 私は……まあ、様子を見つつといったところでしょうか。 流れとしてはヴェイグが挙げたもので異論無く。 ただ偶然を装うのであれば既に挙げられている通り あまりあからさまな行動は避けた方が良いでしょうね。 >捜索 ある程度は手分けをして捜索をせざるを得ませんが 戦闘や接触の事も踏まえると多くて三班が限界かと。 ただ有事の際に駆け付けられる距離を維持し 合図も用意出来れば四班や限定的に単独行動も可能かもしれません。
エルヴンシューターのエルナです!皆さまよろしくおねがいしますね! 皆で力を合わせてアンさんを救出しましょう! アンさんの苦手なものは ・人混み ・早口で喋る人 ・声の大きい人 ・お化け ですね! これらを避けて行動するでしょうから、街中でも市場には行かなそうですね!酒場や宿屋も場合によっては避けるかもしれません! お化けも苦手みたいなので、路地裏の暗い道や洞窟、ダンジョン、森の深い場所も避けるかもしれませんね! >接触 ヴェイグさんの挙げている流れで大まかには良さそうですね! ただアンさんは、近づく人がいればまず逃げるそうなので、出来れば向こうから近づいてくれるように考えたいですね! 例えば、発見してもすぐには接触せずに、偶然野営をしている旅人を装って食べ物の匂いで引き寄せる、とかでしょうか! アンさんはお腹が空いているみたいですし! 超嗅覚持ちの追跡者さんからアンさんの匂いを隠す役割も期待できるかもしれません! >捜索 2〜3人で分かれるのが良さそうでしょうか! 人混みが苦手ということは、あまり大人数だと怯えて逃げてしまうかもですし……! 戦闘を考えるなら、魔法攻撃ができる方が各チーム一人はいた方がいいかもしれません! 追跡者さんは光縛封を使うようですから!
ウォーリア、シグルド・オルセンだ。よろしく頼む。 魔法攻撃が可能なやつを各組に入れるなら、ちょうどキャスターが三人いるから三組で行く方が良いか。 アンについては俺は大丈夫か…?傷もあるから警戒されるだろうか。
キャスターのバーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 >方針 大まかな方針としては、既に皆が挙げてくれた様な、2,3人の組に分かれて捜索しつつ、 偶然を装って接触する形で良いと思う。 捜索方法としては、まずは街でしてアンの目撃情報とか、普段と様子が違う場所の有無とかを 聞き込みして、探す場所に目星を絞ってから直接探しに行くのがベターだと思う。 捜索中に追跡者や魔獣と遭遇した際は、捜索や保護の支障になるなら撃破ないし足止めし、 そうでなければ可能な限りスリーして、捜索を優先する形が良いだろうか? 接触する時は、まぁなるべく警戒されない面子が主に会話するとして、 どうしても逃げる場合は、クルプファルツの挙げた様な、 食べ物の香りで引き付けるとかが良さそうだな。 あと、追跡者の超嗅覚対策としては香水を使うって手も有るが、 やるとするなら多少なりとも信用してもらってからだな。
キャスターのルアンナです、よろしくお願いします。 アンちゃん、1人で心細いでしょうし、早く見付けないとですね。 どの敵にも遠距離攻撃があるようですし、キャスターがどの班にもいる形で分かれるのも賛成です。 >捜索 人が近づけばまず逃げるとあるので、街中には居なそうですね。 エルナさんが言う様に、アンちゃんの方から近寄って来るのを待つというのも良い案だと思います。 私も食べ物を持って行きますね。
ヒーラーのシェルリア・リトヴァールといいます! よろしくお願いします! アン様の捜索方針については今まで出てる案で良いと思います。 3組くらいに分かれて捜索ですねっ。 食べ物の匂いで出て来てくれるかもです? 甘い物、お好きでしょうか(おやつごそごそ)
賑やかになって来たではないか!うむ、楽しくなってきたな。皆、よろしく頼む! >2,3人の組に分かれて捜索 おぉ、確かに良さそうだな!うむ、異論無しだ。 クルプファルツ殿、食べ物で引き寄せるのは良いな! であれば暖かい毛布なども良いか?色々やれそうではないか! >捜索の流れ 現時点でわかる情報も整理してみようかの! まず、アン殿の逃走経路はこうだな。 1.焼けるように熱い大地の上 2.灰の降る森の中 3.岩肌だけが続く荒野 4.暗くて静かな所 即ち「バダイン渓谷から見て、荒野の先に降灰のある森がありその先に火山」がある方向から逃げて来たという事だな?少なくともその方向にはおらん、反対側に居る可能性が高い、と絞り込めよう。1の熱い大地に関しては辺獄かとは思うがな。 さらに「魔獣バフォメット」が飛来して来た方向とは逆、という条件も加えれば間違いあるまい。魔獣で飛んでおるなら超視覚で発見可能ではないか? ここまでは事前に、あるいは現着直後にはわかることであろう。 であれば即座に捜索を開始する班、街に降りて聞き込みを行う班、と分担をしたい所だが如何か?何しろ、この捜索は敵方との競争でもある故な。速度も重要であろうからな。 >班同士の情報共有 アデュラリア殿の言にもあるが、分担する場合の情報共有が悩ましい! テレパスでは短すぎる故なぁ。ペットを介するのが最も確実か? 重要な情報があれば誰か一人が走って伝達に行くのも良い。走る役は俺でも構わんしな、遠慮なく言ってくれ!
大まかな流れは了解した。腹も減ってるだろうし、飲食店の近くをうろうろしてるかもしれないな。 さて、班分けはおおよそ了解しているわけだが、どのような組み合わせで組んだ方が良いだろうか。
ヴェイグさん名推理ですね! 火山や魔獣さん達から遠い方、が街であるなら街中で目撃されている可能性もありそうですね! 暗い所は避けるのかなと思っていましたが、暗くて静かな所に潜り込んだなら、暗さはあまり関係なさそうですね! 根拠のない推測ですが、なんとなく鉱床にいるような気がしますね! >班分け ヴェイグさんの言うように ・街中での聞き込み ・外での捜索 の大きく2つに別れる感じでしょうか!捜索を2班にして複数エリアを探すか、連絡手段を気にするなら思いきって捜索1班街中1班の計2班にするというのもありかもですね! 私は捜索側に回った方が良さそうな気がするので、街中側にリスさんを連れて行ってもらう形になりそうかなと思っていたりします! 食べ物、何か美味しくて香りのいいものを用意したいですね! 暖かい毛布もありありですね!
>班分け 追跡者とかいる以上、多少不確定でも探し始めた方が良いか…… 街中と外を同時に回るとするなら、合流とか情報共有の手間を考えると、 俺も二班編成で良いとは思う。 あとは合流する時を考えて、予め合流場所を定めておくとか、 合流地点の目印を道中残す、あるいは上空に放つ等で、素早く合流出来る様にしたいな。
>班分け 現時点での方針的に私も二班編成で異論ありません。 バーネットの言うように合流地点を決めるのであれば 街であれば中心部近くの宿に部屋を取るのが良いでしょうか。 そこにメモなりを残せば情報は共有出来るかと。 合図に関しては魔法スキル等を上空に放つのは良い案だと思います。 目印は石などがあればそれに傷を付けるか あるいはインクや閃光塗弾の塗料を使うと良いでしょうか。 >捜索 可能あれば、地図を用意したいところですね。 捜索済みのエリアを把握した方が効率も良いでしょうし。 最悪マッピングを行いながら捜索する事になるかもしれませんが……。 街内部や近辺の様子に詳しい者がいれば 謝礼を出した上で大雑把に地図を描いて貰うのも手でしょうか。
>班分け うむ、クルプファルツ殿の言う通り大きくその二つで良いと思うな。 前述の通り、俺は捜索でアン殿に会うのは不味かろうからな、「街中での聞き込み」の方を担当しよう。聞き方も最初に挙げた通りで考えている。 聞き込みが終われば、魔獣とカトル殿の足止めに向かおうと思っているが、さすがに一人では死んでしまいそうだからな。誰か同行をして貰えるとありがたい! >情報共有 おぉ、リスはありがたいな!であれば、聞き込みの情報はほぼリアルタイムでクルプファルツ殿経由で捜索班に伝えられるな。 フォーサイス殿の目印の案も助かりそうだな!聞き込み班が捜索班に合流する時は、リスの案内と目印があれば速やかに合流出来そうだな! >地図 地図を描いて貰うのであれば、鉱床の発掘に関わる者、他の街へ鉱石を運搬するもの、あたりが狙い目か。現地までビッグオウムで向かうのであれば、上空からの地形は確認出来そうではあるな。 >班分け とりあえずではあるが、班分けを記載しておこう! ○聞き込み班 ヴェイグ ○捜索班 クルプファルツ殿
とりあえず聞き込みに入りますね。 カトルとバフォメットは敵対しているようですが、カトルは明白にアンちゃんを、バフォメットは何を狙っているのかは明記されてませんが…、おそらくアンちゃんですよね。 目が宝石の人を生み出した側とそれを奪おうとする側、2つの勢力がいるのでしょうか。 ○聞き込み班 ヴェイグ ルアンナ ○捜索班 クルプファルツ殿
私は捜索の方に回りますね。変更は可能ですっ。 ○聞き込み班 ヴェイグ ルアンナ ○捜索班 クルプファルツ殿 シェルリア
>分担 それじゃあ、俺は捜索班の方に入るとするかね。 一応自分で言い出した事だし、目印を残すとかは俺の方で記載しておく。 ※敬称略 ○聞き込み班 ヴェイグ ルアンナ ○捜索班 クルプファルツ シェルリア バーネット
>分担 では、私は捜索班の方へ回りましょう。 地図作成依頼に関しては先ずギルドの方で入手出来ないか訊いてみて 駄目だった場合は現地の酒場辺りで詳しそうな者に頼んでみる予定です。 ※敬称略 ○聞き込み班 ヴェイグ ルアンナ ○捜索班 クルプファルツ シェルリア バーネット リコリス
んじゃ、俺はとりあえず聞き込みの方で行こう。 ※敬称略 ○聞き込み班 ヴェイグ ルアンナ シグルド ○捜索班 クルプファルツ シェルリア バーネット リコリス