【FF】ゆらめく炎と妖精の光
空色みなも
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シナリオID:1534
オープニング
●
「あんたたち、この町で今年も慰霊行事を開催できることになったんだ」
冒険者の宿『女神の賽子亭』にて、女主人シリス・アローゼアはテーブルで朝食をとっていた冒険者をぐるりと見渡し、語りかけた。
テーブルの上でシリスお手製のパンが香ばしく香り、芋と燻製肉のスープが湯気を立てているのも、見慣れた光景だ。
女神の賽子亭は、エラトゥーン都市同盟にある小さな町、エルタ・リコに構えられた宿である。
そのエルタ・リコでは毎年、収穫祭の時期に慰霊行事を執り行うという。
「夜闇の中、手のひらサイズに作った小舟たちに特製の蝋燭を乗せて、川に流すっていうのがこの町の慰霊行事なんだけど」
シリスによると、祖先の霊を悼むため流される蝋燭は、一本一本異なる、色とりどりの炎が灯るという。
「去年、カラーフレムであんなことがあったから、無事に開催できるかも危ぶまれていたんだけど……復興がどうにか進んでね」
話に出たカラーフレムというのは、色付き炎の蝋燭を生産している集落であると説明するシリス。
そして昨年あった出来事というのが、クリーパーの襲撃。
少なくない住人が犠牲になったが、なおのこと慰霊行事に間に合わせたいと、復興に力が入っていたようだった。
復興のため、冒険者の助力が得られたのも大きく影響したことだろう。
「で、あんたたちもこの町の慰霊行事を体験してみちゃどうだい? 暗闇できらきら輝く蝋燭の炎は幻想的だよ」
シリスが冒険者たちに声をかけてきた用件は、つまりそういうことであったらしい。
「きらきら、する?」
「おや、なんならあんたも見ていくかい? ふふ」
よく見れば、小さな妖精がシリスの肩に乗っていた。
今年の収穫祭における、町の小さな客人だ。
妖精は自然の土地に紐づいた存在であるが、この妖精は比較的、長期間エルタ・リコに滞在しても平気なようである。
「そういえば夜に妖精が舞う光景も、これまでしばらく見てなかったね……故郷の森でたまに見かけて以来になるかね」
どこか遠くを見つめるような目をしたシリスの、サイコロの耳飾りが揺れる耳は、エルフ特有の長く尖ったものであった。
●
エルタ・リコに夜の帳が下りた。
町は暗闇に包まれたようでいて、空に煌めく星々が、道行く人々を見下ろしている。
そして、川に流れる蝋燭の炎が、人々を見上げていた。
「いらっしゃい、いらっしゃい。柿飴はどうだい?」
道行く人の足を止めようと、屋台から声をかける男あり。
「おねーちゃん、柿飴!」
「あれもこれもは買えないから、ちゃんと欲しい物を選んで買いましょうね」
柿飴をねだるイスタ・シブリングスを、姉のアネータ・シブリングスが窘める。
「これが、僕たちの取り戻したものなんだな」
川に流れる蝋燭をしみじみと見つめながら呟いた青年は、アックス・ドレッド。
まさに今、炎を灯している蝋燭を生産した職人である。
アックスの拠点はカラーフレムであるが、慰霊行事に蝋燭が使われるのを目にしたいがために、エルタ・リコを訪れていたのだ。
「……おや?」
そんなアックスの横顔が、不意に明るく照らされた。
ふと目を向けると、アックスの肩に妖精が乗っているではないか。
アックスの肩で翅を休める妖精は、柔らかい光を放っている。
「ふっ、君も彼らを見送ってくれるのかい?」
「さぁ~?」
アックスの問いかけに、妖精はただあっけらかんと答えるのみ。
それでもアックスの表情は、先ほどより和らいだものになっていた。
「あんたたち、この町で今年も慰霊行事を開催できることになったんだ」
冒険者の宿『女神の賽子亭』にて、女主人シリス・アローゼアはテーブルで朝食をとっていた冒険者をぐるりと見渡し、語りかけた。
テーブルの上でシリスお手製のパンが香ばしく香り、芋と燻製肉のスープが湯気を立てているのも、見慣れた光景だ。
女神の賽子亭は、エラトゥーン都市同盟にある小さな町、エルタ・リコに構えられた宿である。
そのエルタ・リコでは毎年、収穫祭の時期に慰霊行事を執り行うという。
「夜闇の中、手のひらサイズに作った小舟たちに特製の蝋燭を乗せて、川に流すっていうのがこの町の慰霊行事なんだけど」
シリスによると、祖先の霊を悼むため流される蝋燭は、一本一本異なる、色とりどりの炎が灯るという。
「去年、カラーフレムであんなことがあったから、無事に開催できるかも危ぶまれていたんだけど……復興がどうにか進んでね」
話に出たカラーフレムというのは、色付き炎の蝋燭を生産している集落であると説明するシリス。
そして昨年あった出来事というのが、クリーパーの襲撃。
少なくない住人が犠牲になったが、なおのこと慰霊行事に間に合わせたいと、復興に力が入っていたようだった。
復興のため、冒険者の助力が得られたのも大きく影響したことだろう。
「で、あんたたちもこの町の慰霊行事を体験してみちゃどうだい? 暗闇できらきら輝く蝋燭の炎は幻想的だよ」
シリスが冒険者たちに声をかけてきた用件は、つまりそういうことであったらしい。
「きらきら、する?」
「おや、なんならあんたも見ていくかい? ふふ」
よく見れば、小さな妖精がシリスの肩に乗っていた。
今年の収穫祭における、町の小さな客人だ。
妖精は自然の土地に紐づいた存在であるが、この妖精は比較的、長期間エルタ・リコに滞在しても平気なようである。
「そういえば夜に妖精が舞う光景も、これまでしばらく見てなかったね……故郷の森でたまに見かけて以来になるかね」
どこか遠くを見つめるような目をしたシリスの、サイコロの耳飾りが揺れる耳は、エルフ特有の長く尖ったものであった。
●
エルタ・リコに夜の帳が下りた。
町は暗闇に包まれたようでいて、空に煌めく星々が、道行く人々を見下ろしている。
そして、川に流れる蝋燭の炎が、人々を見上げていた。
「いらっしゃい、いらっしゃい。柿飴はどうだい?」
道行く人の足を止めようと、屋台から声をかける男あり。
「おねーちゃん、柿飴!」
「あれもこれもは買えないから、ちゃんと欲しい物を選んで買いましょうね」
柿飴をねだるイスタ・シブリングスを、姉のアネータ・シブリングスが窘める。
「これが、僕たちの取り戻したものなんだな」
川に流れる蝋燭をしみじみと見つめながら呟いた青年は、アックス・ドレッド。
まさに今、炎を灯している蝋燭を生産した職人である。
アックスの拠点はカラーフレムであるが、慰霊行事に蝋燭が使われるのを目にしたいがために、エルタ・リコを訪れていたのだ。
「……おや?」
そんなアックスの横顔が、不意に明るく照らされた。
ふと目を向けると、アックスの肩に妖精が乗っているではないか。
アックスの肩で翅を休める妖精は、柔らかい光を放っている。
「ふっ、君も彼らを見送ってくれるのかい?」
「さぁ~?」
アックスの問いかけに、妖精はただあっけらかんと答えるのみ。
それでもアックスの表情は、先ほどより和らいだものになっていた。
解説
●目的
エルタ・リコの収穫祭期間のある夜に開かれる、慰霊行事になんらかの形で関わってください。
●状況
町を通る河川沿いが祭りの会場となり、小舟に蝋燭を乗せて川に流す行事が行われます。
また、今年の慰霊行事には町に滞在する妖精も参加(?)しています。
宙を漂いながら色とりどりに光り、たいへん美しい光景を生み出すことでしょう。
シナリオ参加者の皆さんは、行事に参加したり観光したりしても構いませんし、行事の実施に伴って発生する仕事(警備や、放流した小舟の回収など)の手伝いを申し出ても構いません。
自由な形で行事に関わってください。
●NPC
皆さんのお声かけ次第で、以下のNPCが登場したりしなかったりするかもしれません。
▽シリス・アローゼア
冒険者の宿「女神の賽子亭」の女主人であるエルフ。
自身の身内としては、故郷の森で母親を亡くしているとのこと。
▽アネータ・シブリングス
女神の賽子亭のお隣さん。
両親を亡くし、働きながら妹のイスタを養っている。
▽イスタ・シブリングス
まだ子供、といった雰囲気のアネータの妹。
▽青果商の男
河川沿いで屋台を出している男。
屋敷の庭に巨大な実がなる柿を植えており、その実を小さく切って飴でくるんだ柿飴を売っている。
▽アックス・ドレッド
エルタ・リコの近くにあるカラーフレムという集落で、慰霊行事に用いる色付き炎の蝋燭を生産している男性。
カラーフレムでは昨年、クリーパーに襲われ多くの住人が犠牲になる事件が発生し、集落の仲間を多く失っている。
再び色付き炎の蝋燭を生産できるように、アックスもカラーフレムの復興に尽くしていた。
●その他
慰霊行事で用いられる蝋燭は、この行事のために用意されるものであり、慰霊の火として神聖視されている背景もあって、他の目的に持ち出すことは禁止されています(この蝋燭を他シナリオへ持ち出すことはできません)。
また、蝋燭はエルタ・リコで作られているものではないため、蝋燭の製造を見学したり手伝ったりすることは、このシナリオ内ではできないのでご注意ください。
マスターより
お世話になっております、空色みなもです。
連動【FF】でのリリースとなります。
空色みなもが過去にリリースしたシナリオと関連もありますが、それらに参加していなくとも問題なくお楽しみ頂けます。
関連NPCにシリス・アローゼアが紐づけられています。
相談掲示板では基本的に出発48時間前までに行われた質問に回答します。
スケジュールの都合により納期を延長しておりますので、ご了承のうえご参加頂けると幸いです。
闇夜を照らす光のような皆さんのプレイングをお待ちしております。
リプレイ
●
宵闇に灯るは星。
いや、そればかりではない。
妖精の放つ温かな光が、エルタ・リコの夜空を彩っている。
そして忘れてはならないのが、今宵の主演。
蝋燭の色鮮やかな炎が、光の川をなしていた。
「小舟に乗せた蝋燭、綺麗ですね……! この町は以前も来ましたので、なんだか懐かしいです」
スィーリーンはエルタ・リコの街並みを眺めながら目を細めていた。
その手には、青果商の屋台で求めた柿飴が握られている。
「こうして柿飴を味わっていると、前にここで柿のシャーベットをみんなで分けたことを思い出します」
かつてスィーリーンがこの町を訪れた際、青果商は巨大柿をシャーベットにして売っていた。
一人では食べきれない大きさだったので、あの時は居合わせた人たちとシャーベットを分け合ったものだ。
「あ、おねーちゃん! スィーリーンさんだよ」
「スィーリーンさんじゃないですか。あの時はお世話になりました」
イスタ・シブリングスに袖を引かれたことで、アネータ・シブリングスもスィーリーンに気付いたようだ。
もともと、柿のシャーベットを分け合うことになったのは、シブリングス姉妹がきっかけだったのだ。
見れば、イスタの手にも柿飴が収まっていた。
「アネータ様にイスタ様、お久しぶりです」
スィーリーンも見知った顔を見つけて、顔をほころばせる。
「そうそう、私も蝋燭を流してみたいんです。どこに行けば蝋燭を頂けますか」
「あ、それなら川に沿ってもう少し上流に行ったところですね」
スィーリーンはアネータから蝋燭配布の会場を聞き出すと、別れ際に手を振って来るイスタに手を振り返す。
「わぁ……」
会場に到着し、スィーリーンが受け取った蝋燭には明るい紫の炎が灯った。
闇の中に、炎に照らされたスィーリーンの姿が浮かび上がる。
「かわ、ながす?」
「ふふ、こんばんは。可愛らしい妖精様」
光に釣られて寄ってきた妖精に見守られながら、スィーリーンは蝋燭を乗せた小舟を川に送り出した。
「送られる魂も喜んでくれていると良いのですけれど」
スィーリーンは流れていく小舟が見えなくなるまで見送ったのだった。
●
「炒りアーモンドか……酒を飲みたくなるが、我慢だな。一応、仕事中だからな」
行事中の警備を請け負っていたナハシュは、町の平和をいいことに屋台を物色していた。
「へぇ、柿も飴にできるんだな……初めて見た。一つくれ」
「まいどあり」
ナハシュは威勢よく客寄せをしていた柿飴の屋台を目に留めると、青果商から飴を買う。
「なんていうか、素朴な味ってやつだな。こういうのもいいもんだ」
柿飴を咥えながら、町をぶらぶらするナハシュ。
まだトラブルらしいトラブルは起こっていないが、警備の腕章をつけた冒険者がうろついていることそのものが、抑止力に繋がっているのはあるだろう。
こうして屋台に足を運ぶのも、警備の存在をアピールできるので、店にとってはありがたいはずだ。
警備の者が立ち寄る店で、よからぬことをたくらむ者もそういないであろうから。
「慰霊や鎮魂の儀もそこそこ見てきたが、この川で流すってやつは見てて楽しいな」
ナハシュが川に目を向けると、そこには蝋燭の灯りが列を作って流れている。
幅広い川の穏やかな流れは、町に流れるゆったりとした時間をそのまま表しているようで。
冒険者として戦いに追われる慌ただしい日々を、この時だけは忘れられるような気もした。
(これだけ妖精も喜んでると、むしろ妖精のための行事になってるような気もするな)
川の上空で舞い踊るように揺れる光を眺めて、ナハシュは苦笑する。
もともと死者を送るための行事であるが、なんの因果か、妖精を喜ばせる結果になっている。
妖精の美しさによって、死者の慰めになるのであれば、それで構わないのかもしれないが。
「この光景を目に焼き付けて、ゴールディで念写でもしたら流行るかもしれねぇな……記憶には刻んで帰るとするかね」
そう呟いたナハシュの金色の瞳は、無数の明滅を映しこんでいた。
●
「柿飴? ほほぅ、それは美味しそうな……」
「わぁ、柿飴。食べる~」
町を連れ立って歩いていたシャロン・ラ・モリエールと月が、柿飴の屋台に引き寄せられる。
「ねぇねぇ、おじさん。ルナ、柿飴オマケして欲しいな~」
月の半分はやらしさで成り立っている――かどうかは知らないが、月は屋台の主へ気まぐれに色仕掛けを試みる。
「お嬢さん、可愛いからオマケしちゃおうかなあ。もう一本買ってくれたら、さらにもう一本つけちゃおう」
「あ、おじさんったら商売上手~」
鼻の下を伸ばしながらも、そこは青果商も商売人、ちゃっかりしている。
月も言い出した手前、オマケつきのもう一本を買うことにする。
なにも損な話ではなかったこともある。
「慰霊というとシスターの出番な気がしますが、私は向いてないですね。現実主義者なので」
シスター服に身を包みこそすれ、シャロンはそれほど信仰が篤いわけでもないらしい。
本来自身が帰依する神より、絵画の神ドゥジン信仰のほうが熱心なくらいには。
ドゥジン信徒の祈りの捧げ方といえば、主に絵物語をしたためるというもので――つまりはそういうことだ。
「きゃっ!?」
シャロンが突然、高い声を上げたのは、月が連れていた狼のバルバトスをけしかけたからだ。
「あはは、シャロン驚いてる~」
「お洋服が汚れますから加減してくださいね!」
サプライズが成功した月は、それを見て無邪気に喜んでいる。
シャロンは一応の抗議をしつつも、狼を撫でまわして毛並みを堪能していた。
「それはそれとして、蝋燭は綺麗な光景です」
「わ~、きれ~だね~。たまには女の子どうしで、あてもなくぶらぶらするのもい~よぉ」
狼とじゃれ合いながらも、シャロンは蝋燭の流れる川に見とれていた。
月も散策を楽しんでいるようで、上機嫌。
二人の手には、先ほど買った柿飴が二本ずつ。
最初に一本ずつ買ったものと、追加で買った一本とオマケ一本だ。
「あめちゃん~」
「あ、妖精さん! かわいいっ」
柿飴に惹かれてか、妖精がふらふらとシャロンのもとへ飛んでくる。
「これ、美味しいですよ。いかがですか」
シャロンは柿飴の代わりに、ペースト状の携帯食を差し出してみた。
猫系ハーフビーストに大人気、てゅ~るチョコレート味。
「わあ、思った通り。ペロペロしてくれてますよ」
「うんま~」
シャロンの期待に違わず、妖精は小袋からにゅ~っと練り出した携帯食を、チロチロと舐めとっている。
かわいい。
「捕まえたよぉ~」
「や~、きゃはは」
月は寄ってきた妖精と追いかけっこして捕まえた挙句、妖精のお腹をこしょこしょとくすぐっている。
妖精は嫌がっているんだか喜んでいるんだか分からない様子で転げまわると、やがて疲れたのかくてっとしてしまう。
「お菓子が欲しいのかい? マザキヤのチョコパン食べる? クッキーもあるよぉ」
「おかし!」
月が大の字に寝ている妖精の目前にチョコパンを差し出すと、妖精はガバッと勢いよく体を起こす。
――そして、顔をボフッとチョコパンにぶつけた。
「ありえないしあわせ」
そのまま顔をうずめたチョコパンをかじり始める妖精。
「ふふ、幸せなら何よりです」
「ルナも今、幸せだよぉ~」
それを見たシャロンと月も、顔を見合わせて微笑みあったのだった。
●
「慰霊の火……でございますか……」
ララノアは流れゆく蝋燭の光を目で追いかけながら独り言つ。
(思えば……たくさんの死を見てきました。助けられなかった人々……理不尽に奪われる、命)
ララノアの脳裏に、これまで目にした様々な死がよぎっていく。
霊を悼むということは、その裏には死者というものが確かに存在するものだ。
命の輝きを思わせる蝋燭の炎は、同時にそれが潰える瞬間も思い起こさせる。
(人を殺めもしました……冒険者として、これで一人前なのでしょうか……)
その手で奪った命のことをも想い、自身の掌をじっと見つめるララノア。
(森の外は怖くて、どれだけ私は守られていたのか……)
過去に思いを馳せ、ララノアはぎゅっと目を閉じる。
「そして、同時に世界の美しさも知りました」
ララノアは目を見開くと同時に、顔を上げる。
その目に映るは、蝋燭の炎と妖精の光に彩られた世界であった。
「こちらへどうぞ、妖精さん」
「かき~」
ララノアは妖精に柿飴を分け与えながら、小舟を流す会場へと至る。
「あの……小舟を三つ流させて頂くことはできるでしょうか」
係員に声をかけ、ララノアは三艘の小舟と蝋燭を受け取った。
「妖精さんも流しましょう。お手伝いしますよ?」
「する~」
ララノアが受け取った小舟のうち、一つは妖精の分。
妖精は見様見真似で、蝋燭を乗せた小舟を川へと放す。
「こちらは亡くなった人の分。そして……これはオババ様の」
ララノアの流した小舟の中でも、最後の一つは特別、想いのこもったもので。
奪われたことに対する嘆きも、内に秘めた憎しみも。
全て小舟に乗せて、願わくばどこまでも流れていってしまえば――。
「まて~」
「私もっと頑張ります……哀しい灯りが一つでも減るように」
そんな心を知ってか知らずか、妖精は流れゆく小舟を追いかけて飛んでいく。
ララノアの心に落ちた影を、果たして蝋燭と妖精の光は照らすことができたのであろうか。
それは、ララノアだけが知っている――。
●
「おねえさん、小舟を二つ流したいのだけれど、構わないかしら?」
エミリア・シバもまた、係員に複数の小舟を求めていた。
もちろん、係員は快く小舟をエミリアに渡してくれる。
エミリアのように、小舟を複数、流そうとする者も珍しくないという。
極端に多い数を希望したり、蝋燭を持ち出したりするのでなければ、特に問題はないらしい。
「気づけば、冒険者としてお仕事するようになってから、周りで亡くなった方も多くなったわね」
一艘に乗せる想いは、エミリアが冒険者として出会い、そして命を失った人々の魂への慈しみ。
当然、その中にはメドゥの指先など、敵として出会った者たちは含まれない。
あくまで無辜の民に向けたものである。
そして、もう一艘は――。
「もうあの頃のように、機械的に人を手にかけることはないわ――」
冒険者になる前のエミリアが『仕事』で殺めた者たちに手向けたものであった。
無論、冒険者となった今でも、メドゥの指先や犯罪者など、相手によっては息の根を止めることもある。
しかしそれは、ただ言われるがままにターゲットを始末していた、暗殺者の時代とは違う。
少なくとも、エミリアはそう思いたかった。
「当時のターゲットたちからしたら、だからどうしたって感じでしょうけども、ね」
エミリアが見送る先で、流した小舟に興味を引かれたのか、岸にいた妖精たちが様子を見に飛んでくる。
小さな妖精たちがいっせいにふわっと飛び立つ様子は、さながら宙を雪が舞うようで。
妖精たちは細かな光を振りまきつつ、小舟の上をぐるぐる回りながらついていくのだった。
●
「ごめん、待った?」
「いや、俺も着いたところだ。向こうで小舟と蝋燭を配っている――行こう」
小舟流しの会場でサラがぱたぱたと駆け寄った先に、だわは佇んでいた。
だわはサラの姿を認めると、蝋燭を配る係員へと向かう。
サラが選んだのは、緑の炎を灯すという蝋燭。
そして、だわは青の蝋燭に手を伸ばそうとして――。
一瞬の逡巡の後、朱色の蝋燭を手に取った。
「緑は、ね……亡くしたエルフのおばあちゃんの、目の色」
小舟をそっと川に放しながら、そう語るサラの身体特徴は、明らかにドワーフのものであった。
「血は繋がって、無かったけれど。記憶、無くして、路頭に迷ってたわたしを、助けて、慈しんでくれた……」
どうやらサラは拾い子、ということらしい。
それでもこうして魂を悼むを見るに、その繋がりは深かったものと窺える。
「一緒に過ごした時間は、本当に短かった、けれど」
サラは徐々に下流へと流れていく蝋燭をいつまでも目で追いかけている。
蝋燭の放つ緑の輝きが、サラの持つ緑のまなこを照らしていた。
「祖母と言うべき人か……優しい人だったんだな」
その言葉を聞いていただわは、サラのおばあちゃんの冥福を、ただそっと、心の中で祈っておく。
「綺麗な風景……喪った人を悼む人が、たくさんいるんだ、ね」
サラの視線の先で、二人の流した蝋燭が灯す緑と朱色が、仲良く並んで川を進む。
二人の小舟は、先を進んでいた色とりどりの蝋燭に追いつき、列に加わった。
それを見て寄り集まってきた妖精たちが、二人の蝋燭を真似してか、緑と朱色に光っている。
「……だわおにいちゃん、蝋燭の色、途中で変えたの……どうして?」
朱色の炎を見ていて、サラはふと気になったのであろう疑問を口にする。
「気づいてたか。青い光は綺麗だけど……今、相応しいのは悼むべき故郷の色、と思ってな」
だわはしみじみとした様子で、その問いに答えた。
「父さんは厳しかったが、俺を想ってくれていたし、母さんのアップルパイは何より好きだった」
幸せだった、と語るだわの脳裏には、その幸福を過去のものにした存在がよぎっていた。
水の災害――故郷を流し潰した、魔物。
蝋燭を流す、という行為は違うはずだが、嫌でも重なってしまう。
沈んだ表情を見られまいとしてか、だわはフードを深くかぶり直す。
「辛い記憶、なんだね……」
しばし押し黙ったサラは、おもむろにだわの頭に手を伸ばした。
無意識のうちに手を避けようと、だわの頭がぴくりと動く。
しかし、フードを取り去る気ではないと分かると、だわは大人しくサラに撫でられている。
「……お前は?」
「わたし……わたしは、わかんない、の。憶えてない、から」
問い返しただわに、サラは俯き加減で答える。
「お父さんも、お母さんも、憶えてない。いつか、思い出せたら……会える日が来るの、かな」
「……会えるといいな」
顔を上げたサラと目が合い、だわは静かに頷いた。
「柿飴、買いに行くか」
「うん、食べたい。いこ?」
ゆっくりと立ち上がっただわの手に、サラの手がそっと重ねられる。
だわはその手を、優しく握り返したのだった。
●
「おっ、さっき聞いた通りだ。蝋燭流し、もう始まってる」
薬師として一仕事を終えたばかりのシェオルは、帰り際に蝋燭の光に彩られた川を目にしていた。
ちょうど、薬の届け先で慰霊行事が催されると話題に上ったばかり。
会話に花を咲かせているうちに、いつの間にか開催時刻を過ぎていたらしい。
「話には聞いていたけれど、直に見るのは初めてだなぁ」
これだけの景色を目の前にして、なにも帰りを急ぐこともあるまいと、シェオルは町を観光していくことにする。
人波をすり抜け、川辺へと至るシェオル。
「ん~……すごいね」
川を中心として広がる夜景の美しさに、シェオルから思わず深い息が漏れる。
「こんなにたくさんの色があるのに、全部が調和している気がする……綺麗だねー」
蝋燭の光をよく見ようと、知らず知らずのうちに、シェオルは身を乗り出していた。
小舟に乗せられた蝋燭は、一つ一つが異なる色を灯している。
淡い紫に、仲睦まじげに寄り添う緑と朱色の光。
あれらには、どういった想いがこめられているのだろう。
宙を舞う妖精の光もまた、個性を持っており。
全ての光が交じり合って生み出す一つの光景は、巨匠の描く絵画ほどの価値があるように思えた。
「気持ちがこもっているからこそ、こんなに綺麗なのかな? ……うん」
いってらっしゃい、の気持ちを込めて、蝋燭たちを見送るシェオルは小さく手を振る。
それを見た妖精たちが、自分たちへの挨拶とでも思ったのか、手を振り返して飛び去って行った。
●
「これはまた、なんとも幻想的な……」
まるで色彩の雨に降られているようだ、とサマエラ=フォリウムは感嘆する。
黒を背景に灯る、赤、青、緑――実際、この世に存在する色が、一堂に会したように。
エルタ・リコの町は夜闇の中で煌々と輝いていた。
「……っと、そちらにばかり集中していてはダメだな。蝋燭を持ち出す者がいてもいけない」
サマエラは冒険者として、警備の仕事を引き受けていた。
気持ちを切り替えるため、軽く首を振ったサマエラは、会場の巡回を再開する。
持ち出しの禁止されている蝋燭に目を光らせていることもあって、くすねようとする不届き者も現れていない。
冒険者としての腕っぷしを披露する機会にはならないが、トラブルは未然に防げるに越したことはないだろう。
「しかし、慰霊の火、か。死後の魂も、美しきに触れれば、安らかに過ごせるだろうか。迷うことも、嘆くこともなく……」
であれば己が神が望むところでもあるのだろうな、とサマエラは小さく呟き。
そっと目を伏せて、祈りを捧げる。
サマエラの信ずる神は、静かな眠りと安寧をもたらす夜闇を司る。
静かに燃える蝋燭の炎は、サマエラには闇夜というゆりかごに包まれた魂の火のようにも思えた。
「……よし」
短い黙とうの後、サマエラは目を開く。
「では、次の経路に向かうか」
サマエラは思う。
この光景は、妨げられてはならないものだ、と。
ならば、警備も一層、気を入れねばなるまい。
再び歩き始めたサマエラの背中を、妖精の光が筋を描いて追いかけていた。
●
「シリス、と言ったかのう。宿の客も出払っておるだろうし、どうじゃ? しばし、わしにつきあってくれんか?」
町を見て回っていたラオ=レイは一足早く、女神の賽子亭に戻っていた。
「何を隠そう、こう見えて旅に出たばかりのぺーぺーでのう。誘う相手もおらんのじゃ。一杯つきあっておくれ」
「奇遇だね。あたしはこう見えて宿の女将をやって長いのさ。一杯と言わず、二杯でも三杯でもつきあうよ」
それなりに年季の入った様子のハーフビーストであるレイに対し、シリス・アローゼアはエルフ流の軽口で返す。
「たくさん飲んで貰った方が、宿の稼ぎになるからね」
「はっはっは、こいつは酔い潰されんようにしなければの」
シリスの運んできたワインを、レイはちびちびと口に運び始める。
「そこのおちびちゃんもどうじゃ? 土産の柿飴もあるぞい」
「やまぶきいろ~。おぬし、わるよの~」
レイはテーブルの上に妖精の姿を認めると、柿飴を与えてみる。
妖精はよく分からない台詞を口にしながら、差し出された柿飴に頬ずりしていた。
「……昨年のこと、詳しくは聞かん。じゃが、何があったかは容易に想像できる」
それまで朗らかに笑っていたレイは、しかしここでスッと目つきを険しくする。
「皆、今日という日を一つの支えにやってきたんじゃろう。そうして、明日も生きていく……」
レイは窓の外に視線を向けた。
視線の先で、カラーフレムの青年、アックス・ドレッドが川を見つめながら、じっと佇んでいる。
昨年のこと、というのはカラーフレムで起きた事件のことを指すのだろう。
カラーフレムは一年前、クリーパーによる襲撃により壊滅的な被害を受けたのだ。
そして、村がクリーパーにより襲われたことがあるのは、レイもまた同じだった。
レイは自身の経験に、カラーフレムの出来事を重ねているのであろうか――。
「いや、スマン。年をとると話が湿っぽくなっていかんの。二人とも、今日はつきあってくれてありがとうな」
「なに、話を聞くくらい安いものさ。高くつくのは、お酒を飲むほうだろ?」
レイはシリスに向き直ると、一礼して勘定を済ませた。
支払いを受け取りながら、シリスは冗談めかして片目を瞑ってみせる。
「カリカリ~」
妖精はそうしたやりとりを特に気にするでもなく、柿をコーティングした飴を齧りとっていたのだった。
●
「慰霊行事は生者にこそ必要なモンだ。開催可能なところまで復興が進んで何よりだ」
小舟が最終的に流れつく下流に、ヴァンゲルス・ロッドはいた。
ヴァンゲルスは小舟回収作業の手伝いを申し出ていたのだ。
「ん、このあたり流れが穏やかだな」
最初の小舟が辿り着く前にと、ヴァンゲルスは川の中でも流れの穏やかな位置を選定する。
そのためには、エーテルの波動による地形走査も役に立った。
万一にも小舟が沖に流れてしまうことのないよう、川幅に合わせて網を張るヴァンゲルス。
「お、第一陣がおいでなすったか」
ヴァンゲルスがそうこうしている間にも、川の上流から光の群れが近づいてきた。
蝋燭を乗せた小舟が、流れて来たのだ。
「こうして見ても、風情なもんだね。と、見とれていちゃ仕事にならねぇな」
小舟を回収すべく、ヴァンゲルスは授恵者の力も発揮して走り回る。
時にヴァンゲルスは宙すらも駆け、驚いた妖精が慌てて通り道を譲っていた。
ヴァンゲルスの軌跡を中心に、妖精の放つ光がふわりと広がっていく。
「しかし、この蝋燭もよくできたもんだ」
ヴァンゲルスは回収した蝋燭の燃え残りを、しみじみと眺める。
思えば、色のついた炎が灯るというのは不思議な話である。
これも、カラーフレムの蝋燭職人の努力の賜物であるとは聞いている。
慰霊行事で川を流れる時間に合わせて、蝋燭の長さも調節してあるようだった。
「ま、おかげでいいもんが見れたよ」
ヴァンゲルスはしっかりと消火した蝋燭を、回収用の麻袋に詰めていく。
袋が一杯になれば収納用異空間に格納し、身軽になったヴァンゲルスは再び回収作業に戻るのだった。
●
(この灯火の一つ一つが、誰かにとって大切な誰かなんですね……)
ドゥーンフォルトもまた、下流で小舟を回収していた。
こちらは岸の近くを流れる小舟を丁寧に拾い上げていく。
(昨年、クリーパーの被害があったと聞くし、いつもより灯火の数も多いのでしょう……)
ドゥーンフォルトもカラーフレムに起こった事件のことは聞き及んでいる。
カラーフレムはエルタ・リコとは少しだけ離れているが、自分たちの集落で作られた蝋燭で同胞を送りたいと、多くの住人が会場を訪れているのが窺えた。
(授恵者となり、クリーパーに抗う術を得てもまだまだ、世界にはクリーパーによる被害が後を絶たない……)
ドゥーンフォルトがふと顔を上げると、目の前をふらりと妖精の光が横切っていく。
相手がクリーパーとは限らないが、妖精もまた、各地で土地を追われる被害を受けているらしい。
故郷を魔獣に襲われた過去を持つドゥーンフォルトにとっては、それも他人事のように思えなかった。
「……む、いけません。自分が暗くなったところでどうにもなりません」
気持ちが沈みかけていることに気付いたドゥーンフォルトは、気を引き締め直す。
自分にできることは、これ以上クリーパー被害による灯火を増やさぬように戦い続けることだけ、と。
そう、悲しみに暮れる誰かを一人でも減らせるように。
川を往く蝋燭の炎は、そして妖精の煌めきは、誰かにとっての『光』になっただろうか。
その答えは、人々の心の中に――。
宵闇に灯るは星。
いや、そればかりではない。
妖精の放つ温かな光が、エルタ・リコの夜空を彩っている。
そして忘れてはならないのが、今宵の主演。
蝋燭の色鮮やかな炎が、光の川をなしていた。
「小舟に乗せた蝋燭、綺麗ですね……! この町は以前も来ましたので、なんだか懐かしいです」
スィーリーンはエルタ・リコの街並みを眺めながら目を細めていた。
その手には、青果商の屋台で求めた柿飴が握られている。
「こうして柿飴を味わっていると、前にここで柿のシャーベットをみんなで分けたことを思い出します」
かつてスィーリーンがこの町を訪れた際、青果商は巨大柿をシャーベットにして売っていた。
一人では食べきれない大きさだったので、あの時は居合わせた人たちとシャーベットを分け合ったものだ。
「あ、おねーちゃん! スィーリーンさんだよ」
「スィーリーンさんじゃないですか。あの時はお世話になりました」
イスタ・シブリングスに袖を引かれたことで、アネータ・シブリングスもスィーリーンに気付いたようだ。
もともと、柿のシャーベットを分け合うことになったのは、シブリングス姉妹がきっかけだったのだ。
見れば、イスタの手にも柿飴が収まっていた。
「アネータ様にイスタ様、お久しぶりです」
スィーリーンも見知った顔を見つけて、顔をほころばせる。
「そうそう、私も蝋燭を流してみたいんです。どこに行けば蝋燭を頂けますか」
「あ、それなら川に沿ってもう少し上流に行ったところですね」
スィーリーンはアネータから蝋燭配布の会場を聞き出すと、別れ際に手を振って来るイスタに手を振り返す。
「わぁ……」
会場に到着し、スィーリーンが受け取った蝋燭には明るい紫の炎が灯った。
闇の中に、炎に照らされたスィーリーンの姿が浮かび上がる。
「かわ、ながす?」
「ふふ、こんばんは。可愛らしい妖精様」
光に釣られて寄ってきた妖精に見守られながら、スィーリーンは蝋燭を乗せた小舟を川に送り出した。
「送られる魂も喜んでくれていると良いのですけれど」
スィーリーンは流れていく小舟が見えなくなるまで見送ったのだった。
●
「炒りアーモンドか……酒を飲みたくなるが、我慢だな。一応、仕事中だからな」
行事中の警備を請け負っていたナハシュは、町の平和をいいことに屋台を物色していた。
「へぇ、柿も飴にできるんだな……初めて見た。一つくれ」
「まいどあり」
ナハシュは威勢よく客寄せをしていた柿飴の屋台を目に留めると、青果商から飴を買う。
「なんていうか、素朴な味ってやつだな。こういうのもいいもんだ」
柿飴を咥えながら、町をぶらぶらするナハシュ。
まだトラブルらしいトラブルは起こっていないが、警備の腕章をつけた冒険者がうろついていることそのものが、抑止力に繋がっているのはあるだろう。
こうして屋台に足を運ぶのも、警備の存在をアピールできるので、店にとってはありがたいはずだ。
警備の者が立ち寄る店で、よからぬことをたくらむ者もそういないであろうから。
「慰霊や鎮魂の儀もそこそこ見てきたが、この川で流すってやつは見てて楽しいな」
ナハシュが川に目を向けると、そこには蝋燭の灯りが列を作って流れている。
幅広い川の穏やかな流れは、町に流れるゆったりとした時間をそのまま表しているようで。
冒険者として戦いに追われる慌ただしい日々を、この時だけは忘れられるような気もした。
(これだけ妖精も喜んでると、むしろ妖精のための行事になってるような気もするな)
川の上空で舞い踊るように揺れる光を眺めて、ナハシュは苦笑する。
もともと死者を送るための行事であるが、なんの因果か、妖精を喜ばせる結果になっている。
妖精の美しさによって、死者の慰めになるのであれば、それで構わないのかもしれないが。
「この光景を目に焼き付けて、ゴールディで念写でもしたら流行るかもしれねぇな……記憶には刻んで帰るとするかね」
そう呟いたナハシュの金色の瞳は、無数の明滅を映しこんでいた。
●
「柿飴? ほほぅ、それは美味しそうな……」
「わぁ、柿飴。食べる~」
町を連れ立って歩いていたシャロン・ラ・モリエールと月が、柿飴の屋台に引き寄せられる。
「ねぇねぇ、おじさん。ルナ、柿飴オマケして欲しいな~」
月の半分はやらしさで成り立っている――かどうかは知らないが、月は屋台の主へ気まぐれに色仕掛けを試みる。
「お嬢さん、可愛いからオマケしちゃおうかなあ。もう一本買ってくれたら、さらにもう一本つけちゃおう」
「あ、おじさんったら商売上手~」
鼻の下を伸ばしながらも、そこは青果商も商売人、ちゃっかりしている。
月も言い出した手前、オマケつきのもう一本を買うことにする。
なにも損な話ではなかったこともある。
「慰霊というとシスターの出番な気がしますが、私は向いてないですね。現実主義者なので」
シスター服に身を包みこそすれ、シャロンはそれほど信仰が篤いわけでもないらしい。
本来自身が帰依する神より、絵画の神ドゥジン信仰のほうが熱心なくらいには。
ドゥジン信徒の祈りの捧げ方といえば、主に絵物語をしたためるというもので――つまりはそういうことだ。
「きゃっ!?」
シャロンが突然、高い声を上げたのは、月が連れていた狼のバルバトスをけしかけたからだ。
「あはは、シャロン驚いてる~」
「お洋服が汚れますから加減してくださいね!」
サプライズが成功した月は、それを見て無邪気に喜んでいる。
シャロンは一応の抗議をしつつも、狼を撫でまわして毛並みを堪能していた。
「それはそれとして、蝋燭は綺麗な光景です」
「わ~、きれ~だね~。たまには女の子どうしで、あてもなくぶらぶらするのもい~よぉ」
狼とじゃれ合いながらも、シャロンは蝋燭の流れる川に見とれていた。
月も散策を楽しんでいるようで、上機嫌。
二人の手には、先ほど買った柿飴が二本ずつ。
最初に一本ずつ買ったものと、追加で買った一本とオマケ一本だ。
「あめちゃん~」
「あ、妖精さん! かわいいっ」
柿飴に惹かれてか、妖精がふらふらとシャロンのもとへ飛んでくる。
「これ、美味しいですよ。いかがですか」
シャロンは柿飴の代わりに、ペースト状の携帯食を差し出してみた。
猫系ハーフビーストに大人気、てゅ~るチョコレート味。
「わあ、思った通り。ペロペロしてくれてますよ」
「うんま~」
シャロンの期待に違わず、妖精は小袋からにゅ~っと練り出した携帯食を、チロチロと舐めとっている。
かわいい。
「捕まえたよぉ~」
「や~、きゃはは」
月は寄ってきた妖精と追いかけっこして捕まえた挙句、妖精のお腹をこしょこしょとくすぐっている。
妖精は嫌がっているんだか喜んでいるんだか分からない様子で転げまわると、やがて疲れたのかくてっとしてしまう。
「お菓子が欲しいのかい? マザキヤのチョコパン食べる? クッキーもあるよぉ」
「おかし!」
月が大の字に寝ている妖精の目前にチョコパンを差し出すと、妖精はガバッと勢いよく体を起こす。
――そして、顔をボフッとチョコパンにぶつけた。
「ありえないしあわせ」
そのまま顔をうずめたチョコパンをかじり始める妖精。
「ふふ、幸せなら何よりです」
「ルナも今、幸せだよぉ~」
それを見たシャロンと月も、顔を見合わせて微笑みあったのだった。
●
「慰霊の火……でございますか……」
ララノアは流れゆく蝋燭の光を目で追いかけながら独り言つ。
(思えば……たくさんの死を見てきました。助けられなかった人々……理不尽に奪われる、命)
ララノアの脳裏に、これまで目にした様々な死がよぎっていく。
霊を悼むということは、その裏には死者というものが確かに存在するものだ。
命の輝きを思わせる蝋燭の炎は、同時にそれが潰える瞬間も思い起こさせる。
(人を殺めもしました……冒険者として、これで一人前なのでしょうか……)
その手で奪った命のことをも想い、自身の掌をじっと見つめるララノア。
(森の外は怖くて、どれだけ私は守られていたのか……)
過去に思いを馳せ、ララノアはぎゅっと目を閉じる。
「そして、同時に世界の美しさも知りました」
ララノアは目を見開くと同時に、顔を上げる。
その目に映るは、蝋燭の炎と妖精の光に彩られた世界であった。
「こちらへどうぞ、妖精さん」
「かき~」
ララノアは妖精に柿飴を分け与えながら、小舟を流す会場へと至る。
「あの……小舟を三つ流させて頂くことはできるでしょうか」
係員に声をかけ、ララノアは三艘の小舟と蝋燭を受け取った。
「妖精さんも流しましょう。お手伝いしますよ?」
「する~」
ララノアが受け取った小舟のうち、一つは妖精の分。
妖精は見様見真似で、蝋燭を乗せた小舟を川へと放す。
「こちらは亡くなった人の分。そして……これはオババ様の」
ララノアの流した小舟の中でも、最後の一つは特別、想いのこもったもので。
奪われたことに対する嘆きも、内に秘めた憎しみも。
全て小舟に乗せて、願わくばどこまでも流れていってしまえば――。
「まて~」
「私もっと頑張ります……哀しい灯りが一つでも減るように」
そんな心を知ってか知らずか、妖精は流れゆく小舟を追いかけて飛んでいく。
ララノアの心に落ちた影を、果たして蝋燭と妖精の光は照らすことができたのであろうか。
それは、ララノアだけが知っている――。
●
「おねえさん、小舟を二つ流したいのだけれど、構わないかしら?」
エミリア・シバもまた、係員に複数の小舟を求めていた。
もちろん、係員は快く小舟をエミリアに渡してくれる。
エミリアのように、小舟を複数、流そうとする者も珍しくないという。
極端に多い数を希望したり、蝋燭を持ち出したりするのでなければ、特に問題はないらしい。
「気づけば、冒険者としてお仕事するようになってから、周りで亡くなった方も多くなったわね」
一艘に乗せる想いは、エミリアが冒険者として出会い、そして命を失った人々の魂への慈しみ。
当然、その中にはメドゥの指先など、敵として出会った者たちは含まれない。
あくまで無辜の民に向けたものである。
そして、もう一艘は――。
「もうあの頃のように、機械的に人を手にかけることはないわ――」
冒険者になる前のエミリアが『仕事』で殺めた者たちに手向けたものであった。
無論、冒険者となった今でも、メドゥの指先や犯罪者など、相手によっては息の根を止めることもある。
しかしそれは、ただ言われるがままにターゲットを始末していた、暗殺者の時代とは違う。
少なくとも、エミリアはそう思いたかった。
「当時のターゲットたちからしたら、だからどうしたって感じでしょうけども、ね」
エミリアが見送る先で、流した小舟に興味を引かれたのか、岸にいた妖精たちが様子を見に飛んでくる。
小さな妖精たちがいっせいにふわっと飛び立つ様子は、さながら宙を雪が舞うようで。
妖精たちは細かな光を振りまきつつ、小舟の上をぐるぐる回りながらついていくのだった。
●
「ごめん、待った?」
「いや、俺も着いたところだ。向こうで小舟と蝋燭を配っている――行こう」
小舟流しの会場でサラがぱたぱたと駆け寄った先に、だわは佇んでいた。
だわはサラの姿を認めると、蝋燭を配る係員へと向かう。
サラが選んだのは、緑の炎を灯すという蝋燭。
そして、だわは青の蝋燭に手を伸ばそうとして――。
一瞬の逡巡の後、朱色の蝋燭を手に取った。
「緑は、ね……亡くしたエルフのおばあちゃんの、目の色」
小舟をそっと川に放しながら、そう語るサラの身体特徴は、明らかにドワーフのものであった。
「血は繋がって、無かったけれど。記憶、無くして、路頭に迷ってたわたしを、助けて、慈しんでくれた……」
どうやらサラは拾い子、ということらしい。
それでもこうして魂を悼むを見るに、その繋がりは深かったものと窺える。
「一緒に過ごした時間は、本当に短かった、けれど」
サラは徐々に下流へと流れていく蝋燭をいつまでも目で追いかけている。
蝋燭の放つ緑の輝きが、サラの持つ緑のまなこを照らしていた。
「祖母と言うべき人か……優しい人だったんだな」
その言葉を聞いていただわは、サラのおばあちゃんの冥福を、ただそっと、心の中で祈っておく。
「綺麗な風景……喪った人を悼む人が、たくさんいるんだ、ね」
サラの視線の先で、二人の流した蝋燭が灯す緑と朱色が、仲良く並んで川を進む。
二人の小舟は、先を進んでいた色とりどりの蝋燭に追いつき、列に加わった。
それを見て寄り集まってきた妖精たちが、二人の蝋燭を真似してか、緑と朱色に光っている。
「……だわおにいちゃん、蝋燭の色、途中で変えたの……どうして?」
朱色の炎を見ていて、サラはふと気になったのであろう疑問を口にする。
「気づいてたか。青い光は綺麗だけど……今、相応しいのは悼むべき故郷の色、と思ってな」
だわはしみじみとした様子で、その問いに答えた。
「父さんは厳しかったが、俺を想ってくれていたし、母さんのアップルパイは何より好きだった」
幸せだった、と語るだわの脳裏には、その幸福を過去のものにした存在がよぎっていた。
水の災害――故郷を流し潰した、魔物。
蝋燭を流す、という行為は違うはずだが、嫌でも重なってしまう。
沈んだ表情を見られまいとしてか、だわはフードを深くかぶり直す。
「辛い記憶、なんだね……」
しばし押し黙ったサラは、おもむろにだわの頭に手を伸ばした。
無意識のうちに手を避けようと、だわの頭がぴくりと動く。
しかし、フードを取り去る気ではないと分かると、だわは大人しくサラに撫でられている。
「……お前は?」
「わたし……わたしは、わかんない、の。憶えてない、から」
問い返しただわに、サラは俯き加減で答える。
「お父さんも、お母さんも、憶えてない。いつか、思い出せたら……会える日が来るの、かな」
「……会えるといいな」
顔を上げたサラと目が合い、だわは静かに頷いた。
「柿飴、買いに行くか」
「うん、食べたい。いこ?」
ゆっくりと立ち上がっただわの手に、サラの手がそっと重ねられる。
だわはその手を、優しく握り返したのだった。
●
「おっ、さっき聞いた通りだ。蝋燭流し、もう始まってる」
薬師として一仕事を終えたばかりのシェオルは、帰り際に蝋燭の光に彩られた川を目にしていた。
ちょうど、薬の届け先で慰霊行事が催されると話題に上ったばかり。
会話に花を咲かせているうちに、いつの間にか開催時刻を過ぎていたらしい。
「話には聞いていたけれど、直に見るのは初めてだなぁ」
これだけの景色を目の前にして、なにも帰りを急ぐこともあるまいと、シェオルは町を観光していくことにする。
人波をすり抜け、川辺へと至るシェオル。
「ん~……すごいね」
川を中心として広がる夜景の美しさに、シェオルから思わず深い息が漏れる。
「こんなにたくさんの色があるのに、全部が調和している気がする……綺麗だねー」
蝋燭の光をよく見ようと、知らず知らずのうちに、シェオルは身を乗り出していた。
小舟に乗せられた蝋燭は、一つ一つが異なる色を灯している。
淡い紫に、仲睦まじげに寄り添う緑と朱色の光。
あれらには、どういった想いがこめられているのだろう。
宙を舞う妖精の光もまた、個性を持っており。
全ての光が交じり合って生み出す一つの光景は、巨匠の描く絵画ほどの価値があるように思えた。
「気持ちがこもっているからこそ、こんなに綺麗なのかな? ……うん」
いってらっしゃい、の気持ちを込めて、蝋燭たちを見送るシェオルは小さく手を振る。
それを見た妖精たちが、自分たちへの挨拶とでも思ったのか、手を振り返して飛び去って行った。
●
「これはまた、なんとも幻想的な……」
まるで色彩の雨に降られているようだ、とサマエラ=フォリウムは感嘆する。
黒を背景に灯る、赤、青、緑――実際、この世に存在する色が、一堂に会したように。
エルタ・リコの町は夜闇の中で煌々と輝いていた。
「……っと、そちらにばかり集中していてはダメだな。蝋燭を持ち出す者がいてもいけない」
サマエラは冒険者として、警備の仕事を引き受けていた。
気持ちを切り替えるため、軽く首を振ったサマエラは、会場の巡回を再開する。
持ち出しの禁止されている蝋燭に目を光らせていることもあって、くすねようとする不届き者も現れていない。
冒険者としての腕っぷしを披露する機会にはならないが、トラブルは未然に防げるに越したことはないだろう。
「しかし、慰霊の火、か。死後の魂も、美しきに触れれば、安らかに過ごせるだろうか。迷うことも、嘆くこともなく……」
であれば己が神が望むところでもあるのだろうな、とサマエラは小さく呟き。
そっと目を伏せて、祈りを捧げる。
サマエラの信ずる神は、静かな眠りと安寧をもたらす夜闇を司る。
静かに燃える蝋燭の炎は、サマエラには闇夜というゆりかごに包まれた魂の火のようにも思えた。
「……よし」
短い黙とうの後、サマエラは目を開く。
「では、次の経路に向かうか」
サマエラは思う。
この光景は、妨げられてはならないものだ、と。
ならば、警備も一層、気を入れねばなるまい。
再び歩き始めたサマエラの背中を、妖精の光が筋を描いて追いかけていた。
●
「シリス、と言ったかのう。宿の客も出払っておるだろうし、どうじゃ? しばし、わしにつきあってくれんか?」
町を見て回っていたラオ=レイは一足早く、女神の賽子亭に戻っていた。
「何を隠そう、こう見えて旅に出たばかりのぺーぺーでのう。誘う相手もおらんのじゃ。一杯つきあっておくれ」
「奇遇だね。あたしはこう見えて宿の女将をやって長いのさ。一杯と言わず、二杯でも三杯でもつきあうよ」
それなりに年季の入った様子のハーフビーストであるレイに対し、シリス・アローゼアはエルフ流の軽口で返す。
「たくさん飲んで貰った方が、宿の稼ぎになるからね」
「はっはっは、こいつは酔い潰されんようにしなければの」
シリスの運んできたワインを、レイはちびちびと口に運び始める。
「そこのおちびちゃんもどうじゃ? 土産の柿飴もあるぞい」
「やまぶきいろ~。おぬし、わるよの~」
レイはテーブルの上に妖精の姿を認めると、柿飴を与えてみる。
妖精はよく分からない台詞を口にしながら、差し出された柿飴に頬ずりしていた。
「……昨年のこと、詳しくは聞かん。じゃが、何があったかは容易に想像できる」
それまで朗らかに笑っていたレイは、しかしここでスッと目つきを険しくする。
「皆、今日という日を一つの支えにやってきたんじゃろう。そうして、明日も生きていく……」
レイは窓の外に視線を向けた。
視線の先で、カラーフレムの青年、アックス・ドレッドが川を見つめながら、じっと佇んでいる。
昨年のこと、というのはカラーフレムで起きた事件のことを指すのだろう。
カラーフレムは一年前、クリーパーによる襲撃により壊滅的な被害を受けたのだ。
そして、村がクリーパーにより襲われたことがあるのは、レイもまた同じだった。
レイは自身の経験に、カラーフレムの出来事を重ねているのであろうか――。
「いや、スマン。年をとると話が湿っぽくなっていかんの。二人とも、今日はつきあってくれてありがとうな」
「なに、話を聞くくらい安いものさ。高くつくのは、お酒を飲むほうだろ?」
レイはシリスに向き直ると、一礼して勘定を済ませた。
支払いを受け取りながら、シリスは冗談めかして片目を瞑ってみせる。
「カリカリ~」
妖精はそうしたやりとりを特に気にするでもなく、柿をコーティングした飴を齧りとっていたのだった。
●
「慰霊行事は生者にこそ必要なモンだ。開催可能なところまで復興が進んで何よりだ」
小舟が最終的に流れつく下流に、ヴァンゲルス・ロッドはいた。
ヴァンゲルスは小舟回収作業の手伝いを申し出ていたのだ。
「ん、このあたり流れが穏やかだな」
最初の小舟が辿り着く前にと、ヴァンゲルスは川の中でも流れの穏やかな位置を選定する。
そのためには、エーテルの波動による地形走査も役に立った。
万一にも小舟が沖に流れてしまうことのないよう、川幅に合わせて網を張るヴァンゲルス。
「お、第一陣がおいでなすったか」
ヴァンゲルスがそうこうしている間にも、川の上流から光の群れが近づいてきた。
蝋燭を乗せた小舟が、流れて来たのだ。
「こうして見ても、風情なもんだね。と、見とれていちゃ仕事にならねぇな」
小舟を回収すべく、ヴァンゲルスは授恵者の力も発揮して走り回る。
時にヴァンゲルスは宙すらも駆け、驚いた妖精が慌てて通り道を譲っていた。
ヴァンゲルスの軌跡を中心に、妖精の放つ光がふわりと広がっていく。
「しかし、この蝋燭もよくできたもんだ」
ヴァンゲルスは回収した蝋燭の燃え残りを、しみじみと眺める。
思えば、色のついた炎が灯るというのは不思議な話である。
これも、カラーフレムの蝋燭職人の努力の賜物であるとは聞いている。
慰霊行事で川を流れる時間に合わせて、蝋燭の長さも調節してあるようだった。
「ま、おかげでいいもんが見れたよ」
ヴァンゲルスはしっかりと消火した蝋燭を、回収用の麻袋に詰めていく。
袋が一杯になれば収納用異空間に格納し、身軽になったヴァンゲルスは再び回収作業に戻るのだった。
●
(この灯火の一つ一つが、誰かにとって大切な誰かなんですね……)
ドゥーンフォルトもまた、下流で小舟を回収していた。
こちらは岸の近くを流れる小舟を丁寧に拾い上げていく。
(昨年、クリーパーの被害があったと聞くし、いつもより灯火の数も多いのでしょう……)
ドゥーンフォルトもカラーフレムに起こった事件のことは聞き及んでいる。
カラーフレムはエルタ・リコとは少しだけ離れているが、自分たちの集落で作られた蝋燭で同胞を送りたいと、多くの住人が会場を訪れているのが窺えた。
(授恵者となり、クリーパーに抗う術を得てもまだまだ、世界にはクリーパーによる被害が後を絶たない……)
ドゥーンフォルトがふと顔を上げると、目の前をふらりと妖精の光が横切っていく。
相手がクリーパーとは限らないが、妖精もまた、各地で土地を追われる被害を受けているらしい。
故郷を魔獣に襲われた過去を持つドゥーンフォルトにとっては、それも他人事のように思えなかった。
「……む、いけません。自分が暗くなったところでどうにもなりません」
気持ちが沈みかけていることに気付いたドゥーンフォルトは、気を引き締め直す。
自分にできることは、これ以上クリーパー被害による灯火を増やさぬように戦い続けることだけ、と。
そう、悲しみに暮れる誰かを一人でも減らせるように。
川を往く蝋燭の炎は、そして妖精の煌めきは、誰かにとっての『光』になっただろうか。
その答えは、人々の心の中に――。
マスターコメント
お疲れ様でした。空色みなもです。
このたびは当シナリオにご参加頂き、誠にありがとうございました!
蝋燭の炎と妖精の光に彩られた慰霊行事は、しっとりと執り行われました。
冒険者の方々が、これからも人々にとっての光であり続けることを願います。
また皆さんにシナリオ参加して頂けるのを心よりお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
イベントシナリオ易しい 報酬:標準13 / 4〜25人
2021年10月31日 23時18分10秒 公開
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