【学乱】音楽祭のリハーサルと令嬢たちの闘い
陵かなめ
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シナリオID:1264
オープニング
「音楽祭のリハーサルだと?! 準備は順調です……だとっ!! 一体どういうことだ! 私の学園復帰はどうなった!」
バニスター伯爵は娘からの手紙を握りつぶして喚いた。
「くそ、ティアンナにまかせていた私が馬鹿だった。……少々危険だが、学園に戻って私の権威を示さねばならん」
ウロウロと部屋を行き来し侍従を呼びつける。
「至急、学園に戻る準備を。すべての騎士に声をかけるのだ。なあに、どうせ小娘の誘拐はなかった。何の罪に問われようか。音楽祭のリハーサルの場を利用すればよいのだ。大勢を黙らせ、ティアンナとアーリス家の小倅の婚約を発表すれば……」
自分の意見にさも正当性があるかのように伯爵は笑った。
「貴族派の家門を増やした私の功績が認められるだろうな!!」
●アーリス家では
「母上、ナーテ……無事で良かった」
ヒュー・K・アーリスは母親と妹を抱きしめた。
「迷惑をかけてしまったようね。助けに来てくれてありがとうヒュー」
「お兄様!! 怖かったの、怖かったのよ!」
「もう大丈夫だ」
3人はもう一度固く抱き合う。
「それじゃあ、僕は学園に戻るよ」
「そんな、大丈夫なの?! それに、アーニーさんとの婚約も……」
ヒューは首を振る。
「2人が捕らえられていたことを証明しなければならないんだ。そのためには学園で……、何とかバニスター伯爵の悪事を詳らかにしなければ……」
もうすぐ生徒会総選挙が始まってしまう。
心配する家族を屋敷に残し、ヒューは学園へと向かった。
●音楽祭はリハーサルへ
「警備の計画は良いものができました。パンフレットも素晴らしいものが完成しましたわね」
ティアンナ・バニスターは書類を眺めてうなずいた。
音楽祭の練習も無事終わり、あとはリハーサルを行えば本番当日を待つのみだ。
冒険者たちの手を借りて警備計画もパンフレットも、そして会場の飾り付けも素晴らしいものができあがっている。
ティアンナの手伝いをする学生たちも笑顔でうなずきあった。
そして、その中にはアーニー・グレイス・フラートンの姿もある。
「ティアンナ様、リハーサルの出演順なのですが……」
「ティアンナ様、少々よろしいでしょうか」
アーニーの言葉をさえぎって他の学生が話し始めた。
「……お話は順番にお伺いしますわ。アーニー様、出演の順番についてまとめてくださったのですよね。ありがとうございます」
ティアンナの采配はいつでも公平のようだ。
しかし――。
「ティアンナ様に無礼を働いて、よくこの場にいることができますわね」
「厚顔無恥にも程がありますわ」
「本来なら、謝罪して誠意を見せるのが筋なのでは」
ひそひそと、聞こえよがしにアーニーを非難する声がする。
アーニーは顔を上げた。冒険者達がここまで舞台を整えてくれた思いを無駄にはできないと、歯を食いしばる。
「……アーニー様、何かわたくしに言いたいことがありますか?」
首をかしげるティアンナ。
「いいえ、何もございません」
アーニーは首を振る。しかしティアンナは立ち上がり、アーニーの腕を引いた。
「せっかくの機会ですわ。わたくしたち、少し話し合いが必要だと思います」
そして後のことを学生たちに任せ、個室へと向かう。
「彼女たちは生粋の貴族派ですわね……、王党派、貴族派、それぞれの思いを否定するわけではありませんけれども」
ティアンナは深くため息をついて個室のドアを閉めた。
「実は、わたくしは冒険者の方にお話を聞いた学園派も気になっていますの」
「ティアンナ様、お話とは」
「はい。実はわたくしの父が部下を引き連れて学園に向かっているという情報が入りました」
ティアンナが話し出した内容に、アーニーの表情が硬くなる。
「音楽祭のリハーサルの場を制圧して、わたくしとヒュー様との婚約を発表する心づもりのようですわね」
「……そ……」
たしかに、音楽祭のリハーサルはそれなりに人が集まることが予想される。
舞台設備も十分だ。
しかし……。ヒューから一方的に婚約を破棄された立場であるアーニーは、真っ青になった。
「アーニー様、ですがこれはチャンスです。どうせ父が人を集めてくれるのですから、リハーサルの舞台を利用することも可能ですわね」
「あ……はい……あの」
「はっきり申し上げますけれど、わたくしはバニスター家の実権を握りたいと考えております。そのためには……父にはこのあたりで失脚していただく必要がありますのよ」
2人の令嬢は、それぞれの思いを抱えてしばし見つめあった。
●依頼
『音楽祭のリハーサルを襲撃してくるバニスター伯爵を止めてください。
バニスター伯爵の悪事を暴くため、一緒に舞台で証拠を提示していただきたいのです。
音楽祭のリハーサルを成功させるため。
そして、今まで貴族派の威光を笠に着て好き放題していた伯爵を失脚させるため。
お力をお貸しください。
ティアンナ・バニスター並びにアーニー・グレイス・フラートン』
「ついにバニスター伯爵との直接対決だね」
ギルドの受付係が詳しい説明を述べた。
ことの発端は、アーニー・グレイス・フラートンがヒュー・K・アーリスに婚約を一方的に破棄されたことに遡る。
その後、誘拐されかかったアーニーを助けたのが冒険者だ。
また、ティアンナ・バニスターが企画した音楽祭の準備や練習会にも多くの冒険者が参加した。
そしてバニスター伯爵がヒューを操るために軟禁していたアーリスの母と娘を助け出したのも冒険者だ。
「バニスター伯爵は音楽祭のリハーサル会場を制圧しようと騎士を引き連れてきているよ。皆には、リハーサル会場でこれを阻止してほしい。騎士の中には、伯爵に疑問を持つものもいるからね。説得して無力化するのも良いだろう」
騎士は冒険者ほどの力を持たない。冒険者であればすぐに無力化できるはずだ。
「そして、その後さ。バニスター伯爵の悪事を詳らかにし、失脚させてしまおう。それは娘であるティアンナ・バニスターの希望でもある。これまでの事件の証拠をつきつける必要があるね」
証拠といえば、取引に現れ捕らえたバニスター家の男達や母娘を縛っていたロープなどだろうか。それに加えて、当事者であるアーニーやヒューの証言も利用できるかもしれない。証拠はギルドが保管しているので、当日貸し出しすることができるとのこと。
「ちなみに、ヒュー氏も学園に向かっているようだ。どのように伯爵を追い詰めるかアドバイスしてあげてもいいだろう」
パンクリアース学園は、そろそろ生徒会総選挙が迫っている。
バニスター伯爵の一件だけでも決着がつけばよいのだがと、ギルドの受付係が表情を引き締めた。
「そういえば、今は生徒会役員への立候補も受け付けているようだね。音楽祭のリハーサルは大きな舞台だ。もし立候補する気持ちがあるのなら、やってみるのも良いかもね」
ともあれ、事件は大詰めだ。
最後のひと押しが冒険者に託された。
解説
マスターより
リプレイ
「音楽祭のリハーサルか。最近は洒落た事をするようになったんだな」
ロドリック・アルカインは会場内の様子をぐるりと見回した。
音楽祭のリハーサルは着々と進んでいる。飾り付けられた会場は、音楽祭にふさわしい華やかな雰囲気だ。楽器を抱えた生徒たちが自分の出番を待っている。
会場の裏手では、冒険者と相談をする令嬢たちの姿があった。
「騎士の処遇について、実力行使は止むを得ない場合のみとしたいのだが……どうだろうか」
サマエラ=フォリウムがティアンナの意向を確認する。
「それは……父の命令をどこまで無力化できるか……」
貴族に仕える騎士というだけあって、命令には忠実だということだろうか。
そのやり取りを聞いていたベルク・オスマットがティアンナに声をかけた。
「なに、やり方はいくらでもある」
ベルクは会場にいる学生たちに騎士を近づけないために動くつもりだ。
「そうですか。それでは、よろしくお願いいたします」
ティアンナは素直に頷いた。
サマエラは続けて、伯爵の行為を時系列に述べて証拠品を提示することや冒険者として証言することなども確認する。
証拠や証言についての話題が出たところでシェオルが咳払いをした。
「あー、あー……」
どうやら、今回に限っては慎重に話したほうが良さそうな雰囲気だ。
誘拐の件で捕まっているバニスター伯爵家の者たちも証言してほしい旨を伝える。
「何人かいるうち、少なくとも騎士の1人には脈があるらしいんだよ。良ければティアンナ君からも、彼等に口添え願えたら助かるかも」
「ええ、では話してみます」
伯爵を追い詰める相談や証拠について淡々と話を進めるティアンナを見てロドリックは思う。
(貴族の我儘には覚えがある。でも実の娘相手に戦争か……)
自分の仕えていた家はまだマシだったのかもしれないとも。
「ご確認をありがとうございます。流れも承知しました。冒険者の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。アーニー様、ヒュー様、いかがでしょうか」
ティアンナが立ち上がった。
「はい。私は冒険者の皆様を信じています」
アーニーは、これまでの経緯から冒険者に確かな信頼を寄せているようだ。
「僕からも問題はないように思う。……できる限りのことはさせてもらおう」
ヒューもまた、大きく頷いた。
アーニーとヒューは互いに微妙な距離を保って座っている。
ララノアは気遣うような視線を二人に向けた。一方的な婚約破棄をしたとはいえ、どうも
二人の気持ちは切れていないようにも感じられる。
事件に関わってきた者として、何か力になれるとよいのだけれども……。
しかし今は迫っている伯爵の対応をしなければならない。
ララノアは皆を励ますように、そして自分を励ますようにこう言った。
「お話は……苦手でしけど……が、がんばりまし! えっおー!」
ちなみにアーニーとヒューの距離感を見たベルクは、やれやれと肩をすくめていた。
●
リハーサル会場には、出演を待つ学生はもちろんのこと、音楽祭に興味のある者も続々と集まってきている。
皆がリハーサル開始を待っていた、と、その時。
突如、音楽祭会場のメイン扉が大きな音を立てて開かれた。
「ふむ。多くの生徒が集まっているな。結構」
そこに現れたのは、学園から一時姿を消していたバニスター伯爵だ。背後に多くの騎士を従えている。
「諸君、静粛に。今日この場で、重大な発表がある」
伯爵はいかにも教師然とした態度で舞台へと向かった。
周囲の学生たちは物々しい雰囲気と伯爵の気迫に態度を決めかねてオロオロとしている。
「こちらは音楽祭のリハーサルの場です。何用でしょう、お父様……?」
伯爵と真正面から対峙するようにティアンナが舞台に立った。
「何用だと? 貴様はバニスター家、つまり私のために働けば良いのだ。音楽祭など企画している場合ではない!」
勢いに乗った言葉とともに伯爵が手を挙げると、騎士たちが会場へとなだれ込んでくる。
学生たちが悲鳴を上げた。扉の前に伯爵が陣取っているため、逃げ場もない。
その時、サマエラが光輝を放つ六角形の柱を作り出した。
「こ、これは……?!」
騎士たちの足が止まる。
「ぉ、おやめ下さい! ……話を聞いてくだしゃい!」
ララノアは必死に騎士たちに訴えた。
戸惑う騎士たちに向け、サマエラも提案する。
「敵として争うことは、後からでもできる。まずは私達からこの場にいる者へ向けて、話をさせてもらいたい……頼む」
「ええい、さっさと制圧しろ!」
伯爵が大声で喚いた。しかし――。
「この線を見ろ。そこを超えたら盗賊が武力行使に出たと判断して叩き潰す」
学生たちに騎士を近づけないような位置に立ち、ベルクが宣言する。
騎士たちは瞬時にそれが本当のことであると感じたようだ。冒険者ほどの力はないまでも、剣を携えた者の勘だろう。
「会場に入ってきた騎士で全部だ。数はそれなりに多いようだけど、伏兵はいないようだよ」
伯爵の動きや騎士たちを探っていたシェオルが仲間に告げる。
彼に連れられているのは、ギルドで捕縛されていた『証言者』だ。
まだ何か言おうとしている伯爵にロドリックが近づいた。
「事情はわからないが、王立の学園に貴族の家臣が許可なく踏み込んで武器でも振ろうものなら大問題だ」
「そ……」
「伯爵家の名に大きな傷がつくだろうし、穏便に学園の外へお引き取り願えないか」
伯爵家の名に傷がつくと聞き騎士たちがたじろぐ。
伯爵もまた、ぐっと言葉を飲み込んだ。
ロドリックは静かになった伯爵を見て畳み掛ける。
「娘や息子の婚姻を利用するのはまあ、貴族の理屈としては分かる。だが、子に言う事を聞かせられなくてこうして王の庭へ兵隊を出す時点で、貴族家の長として責任放棄では」
「い、いや。だから私は……間違いを正そうと……」
「親子の話は部外者を交えず書斎ででもすれば良い。騎士の皆さんはどう思いますか」
その問いかけに、はっきりと否定を返す騎士はいなかった。
ここで学生たちを傷つけてしまえば、自分たちに正義がないといっているようなものだ。
「騎士よ、剣を引きなさい。お父様が望まれているようですから、話し合いをいたしましょうか」
最後にティアンナが呼びかけると、騎士たちは剣を引いて跪いた。
「ありがとうございます冒険者の皆様。音楽祭の会場で、物騒なことが起こらなかったのは皆様のおかげです」
ティアンナは冒険者たちに頭を下げる。
これでこの場にいる学生たちの安全は保証されたといって良いだろう。
「学園の皆様。わたくしたちに少しだけお時間をいただけますでしょうか」
多くの者が見守る中、話し合いが始まった。
●
「事の始まりは、伯爵によるアーリス家の母娘の軟禁から、だな。彼女等を人質に、ヒューに何を要求していたか……だ」
サマエラが話し始める。
「なぜそのような話題を私にするのだね? 私はあくまでも、娘と話し合いをしようと……」
目をそらした伯爵の前に、ヒューが立った。
「おお、アーリス家の……。君からも話してくれ、アーリス家の母娘軟禁? 一体何のことだか……」
「いいえ、伯爵様」
ヒューは静かに告げる。
ヒューの母と妹がバニスター伯爵に軟禁されていたこと。そして、冒険者が助け出してくれたことを。
「そ、そんな事があるわけ……」
「あなたは母と妹の安全と引き換えに、僕にアーニーとの婚約を破棄しろと命令しました。そして、僕は愚かにも……それに従ってしまった」
「馬鹿なことを言わないでくれ。君が婚約を破棄したのは、そうだ! 君も貴族派に鞍替えしたかったからだろう? 我がバニスター家と縁続きになれば、それも叶うと」
あたふたと都合のいい言い訳を並べ立てる伯爵の目の前に、頑丈なロープが投げ出された。
「……?」
「彼女達、もう救出済みなんだよねぇ。いくら脅しても、もう無駄なんじゃない? これが証拠……酷いことするなぁ、母娘を互いに縛り付けるなんて」
シェオルが言うと、伯爵はついにそれが本当のことだと理解したようだ。
「あ、いや……、いや違う。私はアーリス家のご家族を別荘に招待しただけで……」
「ほお、貴族流の招待とは、親子を縄で縛って留めおくことか?」
ベルクの鋭い言葉に、伯爵は目をそらす。
少しの間、会場に沈黙が訪れた。学生たちはそのやり取りを見ている。ロドリックがティアンナに近づき、小さな声で提案した。
「当主の罪を全て正直に認めたら、伯爵より上の貴族に弱みを突かれて領地減ったり最悪取り潰されたりしそうだ。せめて詰めは観衆に見えない所で、どうだろう?」
「……確かに、一理ありますわね」
学園内でも教師と生徒には王党派と貴族派について温度差はある。しかしこの醜悪な話をすべて晒すのは得策ではない。
ティアンナはバニスター伯爵に近づき耳打ちした。
「お父様。これ以上の醜態を晒しては、本当にバニスター家が爵位を返上する事態になりかねません。こちらで詳しく話し合いましょう?」
「良いとも。王党派を貴族派に鞍替えさせようとしたのだ。褒められこそすれ、そしりを受けるいわれはないぞ!」
学生たちはことの成り行きを見守っている。
王党派と貴族派が争っていることは、皆気づいているのだ。そのため少し汚いやり方をしている者もいるのだろうという憶測もある。
それが貴族のやり方だというのであれば、そうかも知れない。
しかし一連の事件に関わってきたララノアは思う。
欲望のために忠誠を誓う者を犯罪に使い切り捨てる。それが、貴族なのだろうかと。
「アーニー様達の婚約を台無しにするだけでなく……他者を平気で傷つけ、他者の心を無碍に扱う貴族は……は、果たして本当に貴族たる責務を果たしているのでしょうか」
その言葉を、貴族の子息たちは複雑な表情で聞いていた。
「貴族とは……何なのでしょう……み、皆様にも……一度、お考え頂きたいのです」
ララノアの声は膝をついている騎士たちにも届く。彼らは沈痛な面持ちでその言葉を噛み締めていた。
●
ティアンナは会場にいる学生たちに詫びを入れ、伯爵と控室へと向かった。
話は『アーニー誘拐の企みについて』に及ぶ。
アーニーは顔を上げて、自分が誘拐されかけたことや誰かに引き渡されそうになったことを話した。
この件についても、伯爵はしらを切ろうとする。しかし冒険者たちは多くの証拠を突き出した。
「私達は……取引現場で彼らを捕縛しました」
ララノアに促され、捕縛された騎士が前に出る。
「騎士様お願いでし……。あなた方……『騎士』の名誉の為……真実を話して下さい」
騎士は冒険者たちを見た。次に伯爵、ティアンナを見る。そして最後にアーニーに目をやり小さく頭を下げた。
「私は……野盗からフラートン家の令嬢を引き取るために、小屋に向かいました」
「ふん。それと私と何の関係があるというのか。当家を貶めるための方便では?」
伯爵は屈しない。
「これはね、すでに周知のものなんだけど」
シェオルがすかさずバニスター家の家紋が入った明かりを伯爵の目の前に置いた。
「確かにバニスター家の家紋だね?」
「それがどうした?」
「何だと?」
伯爵の言葉を聞き咎めるように、サマエラが眉を寄せる。
「確かにそれは当家の家紋だ。だが、こうは考えられんかね? 私のことを思いやるあまりに、侍従や騎士が勝手に行動した、独断だったと!」
その言葉を聞いて、ベルクが冷ややかに返した。
「貴殿は、家中の統率という貴族家当主として最低限の能力もないド低能な無能、ということになるがよろしいのだな?」
「は?」
「これでは、今連れてきている者たちも貴殿の指揮下にあるとはいえず、貴族子弟の拉致を狙っている盗賊だと判断せざるを得ない」
辛辣な言葉だが、伯爵に部下を統率する者としての心構えがないことは明らかだ。
「身勝手に貶め、苦を与え、挙げ句に邪魔者として排除……か。……偉いものなのだな、伯爵とは」
サマエラも呆れたようにつぶやく。
「伯爵は君達とは関係がない、なんて言って切り捨てる気のようだけど。さて、本当なのかな?」
「それは……」
シェオルが憐れむように、証言をした騎士を見た。
一方、ララノアはティアンナに声をかける。
「あ、あの、ティアンナ様……。どうか」
その言葉を聞いてティアンナが動いた。
「あなたはバニスター家に仕えているはず。では、バニスター家の名誉のために、今選びなさい」
父かそれとも自分か、どちらかを選べと。
騎士はしばらく考え、絞り出すようにこう言った。
「私は、伯爵様に……令嬢を受け取るように命令されました」
「馬鹿者が! 黙っておれば私は助かったはずだ!」
伯爵が激高する。
だがこの場の誰も、伯爵に賛同する者はいなかった。
「証拠は揃っている。お前はもう終わりなんだ」
ロドリックが諭すように伯爵にとどめを刺す。
「あ、そ……そんな、馬鹿な……」
ガクリとうなだれる伯爵に、ティアンナが宣告した。
「お父様、家督をわたくしに譲ると一筆書いていただければ、良い保養所を紹介いたしますわ」
それは容赦のない最後通達だった。
●
「ヒュー坊はさっさとケジメを付けろ。其方が態度を明らかにせんからこのド低能が最後の悪あがきの余地があると誤解して面倒ごとを引き起こしとるんだぞ?」
「僕はとんでもないことをしてしまった。だけど……」
ベルクに促され、ヒューがアーニーの手を取った。
「……ヒュー様。あの、アーリス家で何があったのか知りました。私は……」
互いに言葉にならない思いがこみ上げてきているようだ。
もうあとひと押し。
二人の様子を見ていたララノアが声をかける。
「ティアンナ様、アーニー様、ヒュー様。音楽祭を……皆様の名誉回復と再婚約の場としては?」
「それは良いアイデアですわね」
ティアンナが微笑んだ。
ヒューはアーニーの手を取って跪く。
「だがまずは、しなければならないことがある」
「ヒュー様、あ、あの?!」
「アーニー・グレイス・フラートン!」
その声は控室のみならず、廊下や舞台にまで届くような大きな声だった。
「僕が間違っていました。貴女に許されざることをしてしまった。懸命に音楽祭の手伝いをする貴女が、僕を責めることもせず耐え抜いてくれた貴女が、他の令嬢に酷い仕打ちをするはずがない」
「あ……」
「僕は、そんな貴女が……」
ヒューの告白を聞きながら、冒険者たちは手際良く伯爵を拘束する。
「あとは少し口裏を合わせれば家に累は及ばないだろう」
「ああ、無事に終わりそうだな」
ロドリックとサマエラが頷きあった。
「さて、音楽祭本番はどうなることやら」
シェオルが耳を澄ませる。
舞台からはリハーサルの演奏が漏れ聞こえてきた。
「これも皆様のおかげですわ。本当にありがとうございました」
令嬢が頭を下げる。
音楽祭までは、あと僅かのようだ。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:多い5 / 4〜8人
2021年08月19日 10時02分12秒 公開
相談掲示板
ぇと…ひとまず…進めておいて…損はないでしょうか… ヒーラーの…ララノアでし…。よろしゅくお願いいたしまし…(ぺこー また…頭から煙がでそうなのでしが…(ぷしゅー ぇっと、証拠など…でしよね… 以前、捕まえた【学乱】悪役令嬢の受け渡しはお手柔らかに」にいた…騎士さんなどを証人に呼べたらいいのかなと… 私たち自身も証言は…できるのでしょうか(ぅーん 家紋の入った証拠品なども押さえている…と思いましで…そのあたりも? 伯爵が引き連れてくる騎士さんたちも… 皆の前で説得できれば…よいのでしょうか…(ぅぅん
ゴブリン、ヒーラー。サマエラだ。 よろしく頼む。 騎士については、もし戦闘に入らざるを得なくなった場合でも、 一度光縛封あたりで止めて、対話を呼び掛けるのもありだろうか? あくまでこちらは暴力でなく、言葉で……というスタンスを、しっかり見せておけば、 その後実力で無力化することになっても、周囲の印象は違ってくるやも。 悪事を暴く方は、証拠は色々持ち込めそうだな。私達の証言も、使えると思う。 証人にという騎士は……ララノアが治療してあげた騎士か、 確かに雰囲気からして、本意ではなさそうだったものな。 もし言い渋ったとしても、ティアンナに頼んでもらえたら証言してくれるやも。 その件、伯爵は侍従が勝手にやったことだと、言っているようだが、 それを否定してくれれば、先に繋げ易くもなりそうだ。 アーニーやヒューの証言も、効果的そうだが…… アーニーは扱われ方が扱われ方なので、序盤で証言してもらっても、 さほど周りに聞く耳持ってもらえない可能性は、あるか。 順番やタイミングも考えていった方が、良いな……。
シーフのベルクだ。よろしく頼む。 バニスター盗賊団の親玉が手下を率いて殴り込みとはな。 さてはてどうやって潰してやろうかね。 まあとりあえず時系列順にやらかしを並び立てて無能かつ犯罪集団のレッテルを公に貼ってやるところから始めるかね。
お、お二人とも、よろしゅくお願いいたしますです(ぺこーー ぇっと、では…時系列の説明から入り、 証拠を出して固めていく…という形になりますでしょうか? 光縛封で壁を作って一度冷静にさせるのは良いかもしれませんね… 捕らえた侍従も一緒に連れてくれば… 伯爵と勝手に仲間割れしてくれそうにも思いますでし… はい、前回の騎士様です…。そうですね、ティアンナ様にお願いすれば… いろいろとお話ししてくれそうに思いましゅる… そうなると…彼に騎士団の説得を頼んでもよいのかもしれませんでしね…
よし、では光縛封は所持して、使うならばタイミングも窺ってみる。 侍従や騎士は、特に前者は最初から共に居るとややこしくなるかもしれないので、 こちらもタイミングを見て、連れてくる形だろうか? 騎士団も、同僚からの言葉ならば確かに……響き易いかもしれないな。 と、時系列順ならば、まずは……軟禁の話からに、なるか。 ならば非常にざっくりとだが、流れを一度まとめると、 1: (バニスター伯爵) アーリス家の母娘、ヒューの母と妹をバニスター領にて軟禁 彼女らを人質に、ヒューへアーニーとの婚約破棄、及び貴族派転向を要求 2: (バニスター伯爵) 婚約破棄の理由付けとして無実の罪を広められたアーニーが バニスター家へ訪れることを見越して、破落戸に誘拐を依頼 (冒険者) 誘拐阻止の依頼を受け、ここから介入 破落戸から報酬受け取り予定地を聞き出す 3: (冒険者) 受け取り予定地にて取引相手と接触・確保 家紋や発言から、バニスター家侍従などを特定 (バニスター伯爵) 侍従が勝手にやったこととして上記との関係を否定し、自宅に籠る 4: (冒険者) ヒューよりアーリス家の母娘の救助依頼を受け、行動 奪還成功し、母娘をバニスター領より脱出させる ……この流れで、順に証拠と証言を出して行けば、良いだろうか。 分かり易く話を展開していくなら、軟禁について触れた時点で、 既に救助し裏も取れているぞ、と提示するのも良さそうだ。
そろそろ出発も近いものの、最低あと1人か……結末は見たいな…… 少々強引だが、日付が変わってもまだ3人なら、私の方で1人連れてこよう。
サマエラ様、流れをありがとうございまし(ぺこー 光縛封は、私もサマエラ様に合わせましね(こく 侍従や騎士の方を連れてくるタイミングも…そうですね… ある程度の話が進んでからで良いと思います… ぅぅ;私も出発できるか心配しておりまして… サマエラ様、ありがとうございましで… なにぶん背後さん私しか動かしておりませんで…どうしようかと思っておりました…(へぅぅ
サマエラ殿助かる。 我もどうするか悩んでいたので。 そうだな、証人はある程度話が進んでからがいいだろう。 完全に切り捨てられて捨て駒にされたとわかればさすがに忠義も消え失せるだろう。 そうすれば口もある程度滑らかになってくれるだろうし、 事前に侍従や騎士に、協力してくれればティアンナ嬢という現伯爵とは比べるのが失礼なレベルでまともな人物が主君になるぞと囁いておけばより口が軽くなるかもしれんな。
せっかく憂いを絶てる機会だものな、無事に終わらせて解決としよう。 連れてくる者は、突貫ゆえレベルが1なので、戦闘面はほぼ頼らせてもらうことになるが…… 代わりに証拠品の管理や、証人……侍従あたりが控えている間に騒がないかどうかの、見張り。 それらが必要な際に、提示する役割を担うことにしようかと思う。 他にも手伝えることを探しておくつもりだが、何か行動の希望などあれば、 教えてもらえたら、幸いだ。
失礼、何やら人手がいるようだと声が聞こえたのでお邪魔した。 数日前にチラッと見たのだが、少々関連依頼が多くてしり込みしていたのだ……。 この前の経緯などは知らないので、証拠をつきつけたりアドバイスをするのは難しいな。 騎士を無力化する方向で向かわせて頂ければ幸いだ。
ざっとまとめてくれているものを読んだのだが。 学園生の見てる前で父親に証拠を突き付けて弾劾するのが依頼主の望みなのかい……。 誤魔化す手段を無くしたら、父親の失脚で済まずに伯爵家ごと潰れないだろうか。 ……って言うのは気になったので、一応依頼主に指摘しておく。 父を「証拠は揃ってる、お前はもう終わりだ」って脅して家督を継いでから、誘拐された人たちに「誘拐なんかされてない、病気になって休ませてもらってただけ」みたいに口裏を合わせてもらうのがスマートじゃないかと思うのだけれど。
おお、参加ありがたい……! ロドリックも、よろしく頼む。 伯爵への対処は、仮にそのようにすると、 ヒューがアーニーとの婚約破棄を言い放った理由や、アーニーに悪い噂が流れた理由が…… 説明し難くなってしまうかな、と思う。 ティアンナにしても、恐らくは家名に傷が付くとして、織り込み済みなのかな……とは。 ゆえ、依頼内容も悪事を暴いて失脚させろ、と直接的なのではと。 一応私も話や証拠提示の流れについて、事前にアーニー達含め確認しておくつもりではあるので、 もし何か不都合ありそうであれば、その時に指摘を頼んでみようか。
わぁ〜ロドリック様、ご参加ありがとうございましゅ!(がばちょー そうですね…家名に傷がつく…いえ、その傷をお父様に被せて切り捨てるおつもりなのでしょう… ここで彼女が正義をとることができれば…伯爵家も大丈夫なのではと… とはいえ、事前の確認も大事かと思いましゅので(こくこく 三人の希望に添えるように…話が出来るとよいでしね…お二人に感謝を(平伏 わ、私もがんばりましで!皆様、えっおーでございまして!
シェオル、エルフのシーフ。 成立済みではあるけれど、裏方役として僕も参加させてもらうよ。 要所要所で証拠品を投入するのと、証人として侍従や騎士を連れてくるのと、 あとはそうだねぇ……侍従や騎士への口添えは、僕からもティアンナ君に頼んでみようかな。 ああ、それとヒュー君の方にも何か証拠になりそうなものがなかったか、訊いておこうかな? 追加で使えそうなものがあったら準備しておくね。
あっ、 ごめん、うっかり直す前の設定で公認申請出したせいで、弄れなくなってるな……。 反映されないとは思うけれど、依頼に悪影響出そうな設定になってしまっているので、 一応プレイング内では影響無いようにと触れておくから……重ねて、ごめんね。 僕も成功のために頑張るつもりなのは本当なので、 よろしくしてもらえたら、嬉しいよ。
おはよう。プレイングを提出して来たよ。 最近の報告を眺めていると貴族っていうのはやはり油断ならない気がしてね……。 跡を継ぐ時など、他の領主がハイエナするのに最適なタイミングだろうから弱みは見せない方が良いだろうかと思った。 依頼人に懸念を伝えて提案をするだけなので、勝手はしない。 騎士には親子の意見の相違に武力を用いる事と、あと王立学園に私兵を入れて乱闘する事を指摘して帰ってくれないかお願いしてみた。 無理なら、学園生や施設に被害が出ないように戦うつもりだ。 現地ではよろしく。