【帝国】ヴェルターゼン復興譚 街並み修繕計画

革酎

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シナリオID:1228

オープニング

●ヴェルターゼン復興に向けて
 帝国南部都市ヴィントは一大軍事都市である。
 その周辺には衛星小都市、或いは衛星市街が環状に散在しており、そのうちのひとつが工房街ヴェルターゼンだ。ヴィントから見て東北東に位置し、半日程度、馬車で旧街道を突き進めば簡素な外壁に挟まれた街門に到達することが出来る。
 帝国崩壊前のヴェルターゼンはその呼び名の通り、多数の工房が半数以上の路地にひしめき合う職人達の町であった。各種紋具工房や商業用道具工房、生活雑貨工房等の他、木材や金属材を扱う資材加工工房等も充実しており、この町そのものがひとつの巨大工房という様相を呈していた。
 勿論食料を買い求めることが出来る市場や初等教育学級もひと通り揃っており、ひとびとは安定した生活を送ることが出来ていた。
 人口はおよそ5000人程。小都市としては中程度の規模といえるだろうか。市街の中央を河川が貫通している為に生活用水の確保には事欠かず、地盤は強固且つ水はけの良い平地の為、市街形勢条件としては上等の部類に入る。
 だが、市街そのものの構成は少々特殊だ。中央部は数十年前に区画が新たに整備され、新市街と呼ばれるようになった。この新市街には工房職人の中でも師匠クラスの熟練者が多く住み、また一方では工房経営者、或いは帝国の役人等が多く住んでいた。工房の所在地も、大半がこの新市街に置かれている。
 一方、新市街を囲む形で旧市街が外縁部を形成している。こちらは下級職人や農耕従事者、一般の商店経営者等が多く生活しており、昔ながらの下町の風情が残されていた。
 新市街と旧市街では町並みの構造そのものが著しく異なり、新市街は整然、旧市街は雑然という言葉がぴったりと当てはまり、実に対照的な光景を見ることが出来た。
 帝国崩壊直後にはこのヴェルターゼンも他の都市や町と同じくクリーパーや魔獣の侵攻に見舞われたが、ウォレス伯爵私兵団とロモズ歩兵団が奪還戦に臨み、ヴェルターゼン内外の全ての敵を駆逐した。
 そして、現在――。
 工房街ヴェルターゼンはかつての賑わいを取り戻すべく、復興の槌音を響かせ始めていた。

●街並み修繕計画
 徐々にではあるが、かつての住民達が帰還しつつあるヴェルターゼン。
 しかし街並みはどうかというと、修繕すべき箇所が非常に多い。現在の帰還人数ならば破損の少ない家屋を選んで居住させることで急場は凌げるが、帰還作業が波に乗ればいずれ家屋不足に陥る。
 そうなる前に、半壊或いは全壊状態の家屋をある程度修繕しておく必要があるだろう。
 この計画について話し合う為に、ロモズ歩兵団長リーヴァー・シュランドル帝国子爵はヴェルターゼン新市街の中央に鎮座する帝国行政庁内の一室で、帝国崩壊前までヴェルターゼン行政副長官を務めていたブライアッティ・カンディル伯爵と額を突き合わせていた。
 カンディル伯爵は五十代半ばのベテラン役人といった風体の人物で、貴族でありながら物腰が柔らかく、どちらかといえば商人的な気質を持つ貴族であった。
「修繕し易いのは新市街の方でしょうな。こちらは新しい建築技術を採用している為、手直しも容易です」
「ただ損壊部位も多いのですよ。中型クリーパーが四体も徘徊しておりましたから」
 逆に旧市街の方は軽微な損壊で済んでいる家屋が多いと付け加えるリーヴァー。乱雑で入り組んだ街並みが特徴的で、外観のみならず、建築技術や使用されている建材も非常に古いものが多い為、修繕対象としては少々面倒な家屋が多いのも事実ではあったが。
「噂にお聞きする、カルケルーア・ロモズの様な最新鋭の技術を導入して復興する訳にはいきませんか」
「あそこは建材や水源も豊富で、且つ全体面積もヴェルターゼンには遠く及びませんから、細かなところまで最新技術を投入することが出来たのです。ヴェルターゼン程の規模ともなれば、流石に難しいでしょう」
 端正な面に渋い表情を浮かべるリーヴァー。カンディル伯爵も早々に諦めた様子で、それもそうですなと肩を竦めた。
 ところで、とカンディル伯爵は少しばかり話題の方向性を変えた。
 ロモズ歩兵団から復興の為の教導技師を派遣して貰うことは出来ないか、との打診であった。帰還民達自身の手による復興作業がある程度波に乗るまでは、修繕等の実務にも力を貸して欲しい、とも付け加える。
 この点についてはリーヴァーも織り込み済みで、ロモズ歩兵団から数個部隊を臨時工兵隊として拠出し、しばらくの間ヴェルターゼンに駐留させる腹積もりであった。勿論、そう長く留め置くつもりも無かったが。
「それは助かります。帰還民もそれぞれが過ごした難民キャンプである程度の家屋修繕経験は積んでいるでしょうが、本格的な作業ともなると若干覚束ないところもあるでしょうからな」
 そんな訳で、リーヴァーは遊兵1番隊長ディーグ・ディオロンを呼び、件の臨時工兵隊の長に任命することとした。
 同時に、冒険者ギルドにも教導技師としての冒険者を募集する旨の告知を出させる。
 尚、報酬はヴェルターゼン都市予算から出る。帝国崩壊後に未執行だった都市行政予算数カ月分を復興予算として組み直し、そこから冒険者ギルド経由で支払われるのだという。

解説

状況:  PCの皆様はヴェルターゼン復興の為の教導技師として馳せ参じたところからスタートします。  どの様な技術を指導するのかについては皆様の自由です。  単に技術指導だけに留めても良いですし、或いは自らの手で直接修繕作業に当たっても結構です。  炊き出しや帰還民の心身のケアについては、今回は要求されておりません。絶対にやってはいけない、という訳でもありませんが、然程に感謝されることも無いでしょう。  尚、投入された臨時工兵隊としての歩兵団各隊は基本的にはNPCの隊長若しくは副長が率いてきていることになっていますが、参加PCがロモズ歩兵団各隊の隊長、副長、臨時兵長の称号を持っている場合は、代わりに自身が率いる隊を連れてきているということにして、自隊の指揮を執ることも出来ます。 NPC:  主なNPCはリーヴァー・シュランドル帝国子爵とロモズ歩兵団遊兵1番隊長のディーグ・ディオロンの他、ブライアッティ・カンディル伯爵が登場する予定です。また、帰還民のモブNPCが登場するかも知れません。

マスターより

 皆様、こんにちは。  連動【帝国】の事後シナリオをご提供致します。  今回は帝国南部地方のひとつの町、工房街ヴェルターゼンの復興編です。技術指導や修繕作業がメインとなる為、戦闘は発生しません。  本シナリオ中に全ての修繕を完了させる訳ではなく、帰還民達が今後継続して復興を進めていけるよう道筋をつけるだけに留めます。

リプレイ

●計画者達
 工房街ヴェルターゼン新市街。
 その中央に位置する帝国行政庁内の大会議室が、街並み修繕計画の本部に充てられた。
 壁という壁には諸々の図面や表が貼り出されており、書棚や会議卓には多くの文書が山積みにされている。そんな中でロモズ歩兵団重兵5番隊長エルゼリオ・レイノーラと遊兵3番隊長サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブの両名は、ヴェルターゼンの前行政副長官ブライアッティ・カンディル伯爵と共に、計画の土台となる調査報告書の精査や取り纏めに当たっていた。
 三人が担当しているのは新市街と旧市街それぞれで得られた各種の測量及び検査結果、各区画図、基本的な建築技術資料、材質資料、区画整理計画書等、実に多岐に亘った。
「ふぃー、こりゃあ計画書を策定するだけで何日もかかっちゃいそうだねー」
 木椅子の背もたれに上体を預け、大きく伸びをするサフィラ。
 彼女は遊兵3番隊を動員して各区毎に破損状況を調べ上げ、それぞれの損壊程度によって五段階にランク分けしていた。このランク分け結果を地図にも色付きで書き込み、優先順位を決めるという作業を数日前から実施していたのだが、やっと今日になってその工程が終了したばかりであった。
「ご苦労様。うん、確かにこれなら分かり易いね」
 エルゼリオが横合いから覗き込み、納得した様子で頷く。彼もサフィラと同じく各区の損壊状況を調査し、その程度毎に区分けするという作業を実施していたが、彼も配下の重兵5番隊を動員し、10班に分けて調査を進めさせた。
 そしてエルゼリオ自身も地質学や建築技術、土木技能を総動員し、損壊状況を数値化するところまで踏み込んでいたのである。このエルゼリオが叩き出した結果も、サフィラは優先順位決めの際の参考としていた。
「重点復興地区、復興促進地区、復興誘導地区はまた別の色で区分けするねっ」
「ありがとう。これで見た目でもかなり分かり易くなったね」
 サフィラに応じながら、エルゼリオは三段階に分けられた復興計画書を綴じる作業に取り掛かった。
「後はこれをあちこちにばら撒くだけだね……ところでこういうの、何っていうんだっけ? とりあーじ?」
「建築や土木の知識に乏しい市民には意味が分からんでしょうから、単純に優先順位付けで宜しいんじゃないでしょうかねぇ」
 カンディル伯爵の好々爺然とした笑みに、サフィラも納得して頷き返す。実際に作業を継続するのは帰還民達なのだ。無理に冒険者の目線に合わせさせる必要も無いだろう。
 その時、大会議室の開け放たれた木扉を軽くノックする音が響いた。三人が一斉に視線を転じると、遊兵8番隊長アウレーリア・フォン・ネーベルベルクが何冊かの文書を抱えて佇んでいた。彼女は今の今まで別室で旧市街復興用の資料を取り纏めていたのである。
「ちょっと良いかしら? ある程度形になったから、一応見て貰いたいんだけど」
 エルゼリオとサフィラが会議卓の一角を空けると、アウレーリアは礼を口にしながら手にしていた資料をそこに広げた。
「旧市街の再建及び再開発起案書、作業計画工程表、現場監督官要請手順書、後はそれらに添付する副資料……自分でいうのも何だけど、結構な量になってしまったわね」
 アウレーリアもまたエルゼリオやサフィラと同じく、遊兵8番隊を動員して実地調査、及び市街地図と比較した損壊状況の確認へと走らせていた。
「旧市街に結構、手を入れるんだね」
「まぁ、あくまでも提案よ。実際に住民が望むかどうかは別だから」
 旧市街の大半を占める老朽建築物は、如何に軽微な損壊であっても実用寿命が大幅に失われている可能性が高い。また、過度に乱雑な区域では防災や救助活動、衛生面等に於いても課題が残る。
 勿論、住民達が愛着を抱いているであろう街並みの雰囲気やランドマーク的な建築物はある程度残しつつ、しかしその一方で場所によっては思い切った区画整理も必要だ、というのがアウレーリアの考えであった。
「いやまぁ、その発想で整理されたのが新市街ですからねぇ」
 カンディル伯爵はアウレーリアの提案を特に否定はしなかった。ある程度までは、同様の考えを抱いていたのかも知れない。
「街門や通りの拡幅、動線の整理、一部建築物の高層化……結構、新市街の構想に近いね」
「後は、工房街としての性格上、効率重視になりがちな余裕の無い設計にも手を入れたいんだけど……例えば公園や花壇の整理とか、ね」
 ゆとりのある住環境を提案したい、というのがアウレーリアが考えた旧市街復興計画の骨子だ。
 当然ながら時間もコストもかかるだろう。しかし住民がこの提案に乗るなら、予算を充てても良いというのがカンディル伯爵の回答であった。

●帰還民達と共に
 帝国行政庁の玄関ロビーは、結構な広さだ。それこそ近隣住民を集めて集会や講演を開くことが出来る程の空間がある。
 そこで重兵3番隊副長イズレンディル・パラリム、遊兵9番隊長シルヴィア・A・カペル、臨時兵長ネーヴェ・グラヌローザの三人は帰還民の中から希望者を募り、復興作業講習会を開くことにした。
 講習会には100名を超える帰還民が集まった。彼らのヴェルターゼン復興を望む意志が、ここでも如実に示された格好である。
「余裕を見て、多めに写本しておいて良かったよ」
 シルヴィアは副長ウーリバー・マグスと共に、講習会参加者全員に対して復興手順マニュアルを配布した。シルヴィア自身の文才が如何無く発揮され、非常に読み易い一冊となっている。
 内容を考えたのはネーヴェだった。彼女の卓越した建築土木技術を、一般市民にも理解し易いようにと平文に書き直したものだった。
 これは同時に、講師役を務めるイズレンディルの理解深化にも大いに貢献した。イズレンディル自身はネーヴェの技術や知識をすぐに吸収したが、これを素人である帰還民に対して、どのようにすれば分かり易く伝えられるかという点では、大いに頭を悩ましていたところでもあったからだ。
 マニュアル作成の際にはイズレンディルも参加し、作業内容の疑問点や、素人目線からの要点、補足が必要な箇所について意見を加えた。そうして出来上がったのか、この復興手順マニュアルだった。
 ネーヴェはイズレンディルとシルヴィアに対し、技術面だけではなく、安全面についても事細かに指導内容を伝えていた。目視、声掛け、確認は安全管理の基本である。修繕作業は場合によっては危険を伴う故、安全第一は基本中の基本といえるだろう。
「この内容はヴェルターゼンだけでなく、カルケルーア・ロモズの復興にも使えそうだね」
「それは、まさしく仰る通りですわ。土木建築は世界共通の必要技術ですもの、どの町に於いても応用可能であると信じておりますの」
 感心するシルヴィアに、ネーヴェは穏やかな笑みを返した。
 やがて、イズレンディルが講師役として立った復興作業講習会は滞り無く終了した。次は授恵者達自身が修繕作業現場に出て、直接帰還民達に指導を行う段である。
「私は重兵3番隊を連れて、各所に出向きます。修繕箇所、優先順位、必要な工数、動かせる人員、修繕進捗……管理すべき事項は枚挙に暇がありませんからね」
 ゆったりしたローブから、作業用の人夫着へと着替えを済ませたイズレンディル。その端正な面立ちと、現場作業員然とした姿に妙なギャップがあり、シルヴィアとネーヴェは新鮮なものを見る気分だった。
 ところがネーヴェ自身はもっと早い段階から人夫着を着込んでいた。可憐な美女なのに、その佇まいは既に親方である。重兵3番隊の班長達はネーヴェを棟梁と呼んでいたが、ネーヴェ自身悪い気はしなかった。
「流石ネーヴェ……建築に詳しいだけじゃなくて現場監督も出来るんだね」
「えぇ。自称、白の棟梁ですから」
 ならばシルヴィアも負けてはいられない。彼女はウーリバーに頼んで、自身の人夫着を持ってきて貰った。
「我が隊は寄る辺の紡ぎ手……戦闘だけではなく、復興作業も全員で学んでいかないと」
「ははは……隊長、よく似合ってますよ」
 真紅の歩兵団隊服から、下町風情が良く似合う人夫着へ――こういうのも悪くないな、とシルヴィアは軽い苦笑を浮かべた。
「私は足場の悪い高所作業を受け持ちますわね。イズさんとシルヴィアさんはどちらの区画に?」
「では私は、ネーヴェさんの技術をまず見学させて頂きましょう。矢張り実地でしっかり見ておかないことには指導も覚束ないですからね」
 ネーヴェに応じてから、イズレンディルはシルヴィアに視線を転じた。シルヴィアも、イズレンディルと同意見だった。復興作業はまだまだ長い。最初にしっかり基礎を叩き込んでおかなければ、後で惨事を招くだけであろう。
「指導の基本は四段階を必ず踏むこと。で宜しいですね?」
 イズレンディルは、矢張り教育者としての才に恵まれている。彼は指導に際しては、
  1.指導者による説明
  2.指導者が手本を示す
  3.生徒にやらせてみる(指導者は背後に立って、逐一アドバイスを送る)
  4.生徒自身の力だけでやらせてみる
 の四段階が絶対に必要であることを誰よりも理解していた。この点についてはシルヴィアもネーヴェも、イズレンディルの教育方法論に心から感心せざるを得ない。
「では、参りましょうか」
 ネーヴェは薄く微笑んだ。白の棟梁、本格デビューである。

●ヴェルターゼン、ひとり立ち
 重兵4番隊を率いる隊長ケン・Z・ブラッドリーは、新市街西区の公園を臨時の資材置き場に指定し、ここに必要な資材を集積させてから、往来が多い箇所を中心に瓦礫撤去作業に入っていた。
「ま……これも鍛錬の一環になるからな」
 重量物を部下の兵達に運搬させる際、ケンは自ら石材を抱え上げて重量物運搬方法の手本を示した。
 腰や膝に過大な負担をかけることなく、どうやれば効率的に重量物を運ぶことが出来るのか。まずは自ら実演してみせることで、隊員達の安全を確保しようという訳だ。
「まずは大通りからだ。あらかた片付いたら、すぐに裏通りに移る。あまりのんびりはしてられねぇぞ」
 ケンの声に、重兵4番隊の面々は気合の入った表情で頷き返した。そんな彼らの反応に満足げな笑みを浮かべつつ、ケンは先程届いたばかりの資料にちらりと目を落とした。
 既にケンの手元にはサフィラとエルゼリオが作成した街並み修繕計画書の要綱が届いており、その内容に従って修繕すべき建築物と、解体すべき建築物を実地で見て廻っている。サフィラとエルゼリオは現場作業については監督者たる各授恵者達に段取りを一任しており、ケンは己の頭の中で描いた手順に従って、配下の兵達を動かしていた。
 そうして瓦礫撤去作業に勤しんでいるケンの耳に、聞き慣れた声が飛び込んできた。遊兵5番隊長アルマ・ヴァレンタインの、帰還民達に対する技術指導の説明だった。
「さぁ、始めるよぉー。今日も一日、ご安全に!」
 まるでどこかの現場監督の様な台詞だったが、よくよく考えればヴェルターゼン全体が作業現場そのものだ。アルマが示した安全第一の理念は、寧ろ当然といって良い。
 休憩がてら、ケンがアルマの臨時講習会を覗いてみると、アルマはどこかから持ち出してきた黒板で図解入りの説明を施していた。
「道具は初心者向けと職人向けに用意したから、自分のレベルに合ったものを使ってねー」
 アルマが技術指導を行うのは、比較的修繕が容易な新市街に於いてである。今回は飽くまでも帰還民に修繕技術の手ほどきを加えることが目的であり、歩兵団自身で完全修復まで進めることではない。
 そこでアルマは帰還民目線での修繕指導に徹し、まず自らやってみせる、次に説明し、そして実地にやらせてみるという指導手順を踏んでいた。加えて、高所作業での転落防止の為にロープを用意して命綱とすることや、重労働では必須となる水分と塩分のこまめな摂取、休憩の必要性についても事細かに指導していた。
 臨時講習会が終わると、すぐに実地での作業へと入る。アルマは遊兵5番隊の面々に数名ずつの帰還民を従えさせて、各作業現場へと向かわせた。
「ヤバいと思ったら、すぐに手を止めてね。無理して良い仕事は出来ないからね!」
 アルマの激励に、帰還民達は引き締まった表情で頷き返す。そしてその台詞は、ケンの胸の奥にもずしりと響いた。鍛錬を兼ねた復興作業ではあるが、自身の隊にも同様に、無理だけはするなと戒めておく必要があるだろう。
(あいつら……俺が止めねぇと、結構普通に無茶ばっかりしやがるからな……)
 急に心配になってきたケンは、慌てて自身が受け持つ現場へと引き返していった。

 夜になって、リーヴァー・シュランドル帝国子爵がカルケルーア・ロモズから足を運んできた。リーヴァーは現況報告会を兼ねた食事会を開き、冒険者達からの直接報告の場を設けた。
「皆さん、本当に飲み込みが早くてびっくりですよ。意外と土木の心得のあるひとが多くて、そういった方々には班長になって頂きました」
 最初に口を開いたのは、エルゼリオだ。彼は仮設住宅や緊急避難場所の設営に励み、その際、帰還民達に指導を行いながらも彼らの手を上手く活用していた。
 一方でサフィラは授恵者としての能力を最大限に発揮し、破損箇所の特定や優先度格付けの補強に走った。その際にはケンやアルマの手も大いに借りることになったが、ふたりはサフィラが期待した以上によく働いてくれたのだという。
「この数日で帰還民の皆さん、全体的に修繕技術の習得が進んだと思います」
 とは、アルマの弁。
 イズレンディルやシルヴィア、そしてネーヴェといった優秀な指導者達の存在が何よりも大きい、とアルマは付け加えた。
 実際、ネーヴェの熟練技術は帰還民達の復興意欲を大いに掻き立てた、とイズレンディルは静かに笑った。
「計画通りに進めば、半年後には九割方、都市機能が回復するんじゃないかしら」
 アウレーリアからは全体工程の予実管理の報告だ。リーヴァーは作業工程表をじっと凝視している。勿論、色々な要素が絡んでくるだろうから、完全に予定通りにはいかないかも知れないが、一カ月や二カ月程度のずれは誤差の範囲といっても差し支えないだろう。
 ヴェルターゼンはいよいよ、自力での復興に第一歩を踏み出した、といって良い。
「ウーリバー、帝国に戻って来たね」
 あらゆる意味で、シルヴィアはウーリバー達帝国民の本当の帰還を実感した。勿論、帝国全土の奪還が終わるまでは、シルヴィア自身の仕事も終わらない。
「まだまだ道のりは長いけど……これからもよろしく頼むよ」
 ウーリバーは、勿論ですよと軽快に笑った。

マスターコメント

 皆様、お疲れ様でございました。  工房街ヴェルターゼン奪還から復興までの一連のストーリーは、本シナリオで一旦完結です。  ヴィントをささえる職人達の町として、これからどんどん復興が進んで行くことでしょう。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:多い8 / 4〜8人

2021年08月08日 17時54分05秒 公開

成功

相談掲示板

  1. シルヴィア・A・カペル

    遊兵9番隊長のシルヴィアだ。今回はよろしく頼むよ。 ……さて、自由度が高くて迷うね(苦笑 遊兵9番隊は直接修繕作業に当たる予定だ。技術指導で今のところ考えているのは、瓦礫を撤去して資材を運ぶルートの選定・確保と、作業の優先度を定め、資材・作業員がどの区域にどれだけ必要か振り分ける為の損害状況調査、修繕作業のマニュアル作り、かな……旧市街の家屋の方が建築技術と建材が多様なようだから、旧市街に向かうつもりだ。

  2. イズレンディル・パラリム

    重兵3番隊の副長、イズレンディル・パラリムと申します。 宜しくお願いしますね。 教導は得意としているのですが、修繕作業自体はあまり習得はしておらず、少々悩ましい所です。 もし良ければ、その辺りを得手としている方と一緒に行動が出来れば、とも思っております。私は兵や住民に修繕の仕方を教える役割、ですね。 難しい場合は直接の修繕以外で少し検討をして見ようかなとも思います。 良ければよろしくお願いしますね。

  3. シルヴィア・A・カペル

    >イズレンディル ふむ、私も修繕作業自体を得意としているわけではないけれど……イズレンディルが修繕方法の指導を、遊兵9番隊が修繕作業自体を、という形で分担するのは効率的で良さそうだ。イズレンディル、もし良かったら一緒に行動しても良いかい? 修繕作業、出来る限り頑張るよ。

  4. ネーヴェ・グラヌローザ

    発言遅くなりました。ネーヴェ・グラヌローザと申します。どうぞ宜しくお願い致します。 私、建築土木を得意としておりますので、宜しければイズさん、シルヴィアさんとご一緒しても宜しいでしょうか? 私は臨時兵長の肩書きしか御座いませんもので、逆に人手が足りませんの。 お二人と協力出来れば心強う御座いますわ。

  5. シルヴィア・A・カペル

    >ネーヴェ ネーヴェは建築土木が得意なのかい? それは心強いよ。私からも是非二人に同行をお願いしたい。隊員全員で作業に力を尽くさせてもらうよ。

  6. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    にゃ!遊兵3番隊隊長のサフィラだよっ! よろしくねっ! んー、遊3はどうしよっかなぁ? とりあえず建物の被害状況を調べて 修繕できる建物とそうでない建物のトリアージでもしようかなぁ

  7. アウレーリア・フォン・ネーベルベルク

    遊兵8番隊隊長、アウレーリアよ。宜しく。 私は奪還作戦の際に旧市街を一通り見て回っているから、こちらを担当しましょう。 そうね、元の街並みはなるべく生かしつつも。 防災や利便性の観点から、あまりに雑然としたエリアや老朽化の激しい建物はこの機に区画整理してしまおうかしら。思い切った手入れができるのは今しかないわ。 勿論、それでも新市街ほど綺麗にはならないでしょうけれど。出来る限りね。

  8. アルマ・ヴァレンタイン

    遊兵5番隊長のアルマだよ、どーぞよろしくねー。 建築・土木3(にする予定)と教導5なのでどこに回っても問題はないけどー… お手伝いの必要があればそっちに入るし、なければ技術指導をメインにしようかな

  9. イズレンディル・パラリム

    シルヴィアさん、ネーヴェさん、宜しければ是非ご一緒お願い致します! ではネーヴェさんの建築土木技術を重3隊とシルヴィアさんの遊9隊に教導でお伝えして、 動いて貰うように致しましょうか? 他にもどのような事が出来るか考えてみますね。 サフィラさんがトリアージ、アウレーリアさんが区画整理でしたら、 お二人に整理して頂いた情報を元に隊員を投入できそうですね。 アルマさんの技術指導は住民向けの予定でしょうか? もしそうでしたら、私は隊員を中心に指導する方針で分担出来れば良いかもしれません。 良ければご意見お聞かせくださいね!

  10. アルマ・ヴァレンタイン

    情報がもうまとまってきてるー、どうもありがとー それじゃあボクは住民さん向けの技術指導にするねー 大まかには初心者さんの道具箱(実際はいっぱい準備)を持ってって使い方の指導とか、 あとは教材が目の前にある状態だし、実地で修繕もすすめる感じにしようかなーと 細かい内容はこれから考えていくねー…

  11. エルゼリオ・レイノーラ

    重兵5番隊 隊長のエルゼリオ・レイノーラです。今回はヨロシクね! ボクも先ずは旧市街と新市街の被害状況を調査する感じになるかな~? その後、損壊や老朽化の激しい区画はアウレーリアさんも言ってるように区画整理も視野に入れる予定。 建築・土木のスキルが活かせれば良いな、って思ってるよ。

  12. シルヴィア・A・カペル

    >ネーヴェとイズレンディル 快諾感謝だ。二人とも、当日はよろしく頼むよ。 隊員を中心に指導する方針ということは、新市街と旧市街での分担はしないという事で合っているかな? ネーヴェとイズレンディルに教えて貰った内容については、今後の為にもマニュアル化したいと思っている。他にも何が出来るか考えてみるね。

  13. ネーヴェ・グラヌローザ

    >イズさん、シルヴィアさん ご了承頂きありがとうございます。微力ながら力を尽くして参りますわ。 では私は隊員の皆様が目で見て分かりやすいよう、修繕作業を目の前で実践致しましょうか。私だけでは言葉足らずな場面も御座いましょうから、作業内容を実際に講師をするのはイズさんにお任せ致します。どうぞ宜しくお願い致します。 私自身は指導と言うよりは修繕作業そのものが優先となりますので、どちらかの市街地へ向かえると良いのかな、と思っておりますが、いかがでしょう。 ただ、まだ細かな動きを決めておりませんので、お二人の決定に合わせますわね。

  14. イズレンディル・パラリム

    >シルヴィアさん、ネーヴェさん もう明日出発になりますね、宜しくお願い致します! そうですね、私自身は市街地の分担は特に決めずに動く予定で考えております。 ネーヴェさんの実践を元に隊員に教導をした後は、隊員達には人手が必要な場所に分散して向かって貰おうと思います。 ネーヴェさんには指導の後には修繕作業に向かって頂けるのは助かりますね。是非宜しくお願い致します! 私自身の指導後は今のところ人員の管理をしましょうか。 どこにどの程度の人数が必要か、というのを確認して手配をしようかと思います。

  15. シルヴィア・A・カペル

    ネーヴェが土木建築技・修繕作業を目の前で実践 イズレンディルが隊員中心に作業内容の指導と人員管理 私や各隊員が修繕作業自体を実行、今後の為にマニュアル化 ……ざっと纏めるとこんな感じかな? 市街地の分担は決めずに人員を振り分けるのも賛成だ。指導後、ネーヴェ自身の力を借りられるのも有難い。その方向でプレを書いてみるよ。 皆、現地ではよろしくね。

  16. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    にゃ!じゃあヴォルターゼンの地図を借りて 遊3のみんなと手分けして建物の破損具合を調べて記録付けてくねっ! ちょっと早めに現地入りしてみんなの修復作業が始める前には終わらせる感じで進めるねっ

  17. ネーヴェ・グラヌローザ

    出発ギリギリになってしまいまして申し訳ありません。 イズさんにシルヴィアさん、行動の詳細及びまとめを頂きありがとうございました。 私は実践形式で指導した後に、おさらいしながら修繕活動を行う方向でプレ提出致しました。 現地ではどうぞ宜しくお願い致します。 他の皆様方も、現地では共に頑張って参りましょうね。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0