【学乱】伯爵子息は奮闘する

陵かなめ

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シナリオID:1128

オープニング

●アーリス家の事情
「おかえりなさいませ、ヒュー様」
「父上はどうしている?」
 家令から手紙の束を受け取り、ヒュー・K・アーリスはざっと重要な書類に目を通す。
「相変わらずでございます。食事は1日に2度……、しかしまだ起き上がることができず伏せっておいでです」
「そうか、母上たちからの連絡は?」
 家令が首を振った。
 アーリス伯爵は高齢だ。そのため、度々体調を崩しては寝込む時がある。そんな時はヒューが父に代わり伯爵の業務を行うのだ。もちろん学園にも通うが、学園と実家の往復はなかなかに忙しい。
 しかしそれは些末なこと。
 彼を悩ませているのは母親と妹の安否、そして元婚約者であるアーニーのことだ。
 気分転換にとバニスター伯爵に勧められた母と妹は、バニスター伯爵領の観光地へと招待されて出かけていった。
 そして、母たちが観光地に着いた途端バニスター伯爵から脅しを受けたのだ。
 アーニーと婚約を破棄し、王党派から貴族派に乗り換えろ。
 そして生徒会総選挙で貴族派を支持しろという脅しを。
「ヒュー様、どこか王党派のお家にご相談されては……」
「いや、我が家の事情でバニスター伯爵家の攻撃を広げるわけにはいかない。それに……今がチャンスだ」
 バニスター伯爵が不祥事を起こした疑いで自宅に引きこもったのだ。
 もしそれがアーニーと冒険者の功績であるなら、母と妹を助けに行くのは今しかない。
「すぐに出立の準備を。ああ、それに……同行してくれる冒険者を探そう。僕が襲われたら元も子もないからな」
 こうしてヒューは母と妹を救出するため、バニスター伯爵の観光地へと向かうのであった。

●依頼
『バニスター伯爵領観光地への道中の警護とアーリス家親子の奪還、そしてバニスター領からの脱出の手助けをしてくれる冒険者を求む。
 親子が軟禁されている屋敷は判明している。
 確実に親子を安全な場所へと移動させたい。
 よろしく頼む。
 ヒュー・K・アーリス』

 先日、アーニー・グレイス・フラートンが無実の罪で婚約破棄を言い渡され、その直後に誘拐されかけたという事件があった。
 結果、冒険者の活躍により誘拐を指示したバニスター伯爵家の侍従は捕らえられたのだ。
 だがバニスター伯爵は侍従との関係を否定。
 侍従が単独で起こした事件だと主張し自宅に引きこもってしまったという。
「それを好機と見たのがヒュー・K・アーリスさ」
 ギルドの受付はこう切り出した。
「ヒュー氏は母親と妹の安全を盾にバニスター伯爵から脅しを受けていたようだ。バニスター伯爵が自宅に引きこもっている今、母親たちを助け出すチャンスなのさ」
 ヒューの母親と妹はバニスター家の観光地にいるという。
 もちろんバニスター伯爵が不在であったとしても、その部下が抵抗してくる可能性はある。しかし、今多少の無理をしてでも母親と妹を安全な場所へ移動させなければ、ヒューはこのままバニスター伯爵の言いなりになってしまうだろう。
「ヒュー氏は伯爵家のお坊ちゃんだからね、戦いの経験はない。まず母親と妹が軟禁されている場所へ向かい奪還。合流後はヒュー氏を含めて3人を守りながらバニスター伯爵領を脱出しなければならないだろう」
 親子が軟禁されている屋敷の場所は判明している。
 屋敷へどのように入るか、忍び込むのか強行突破家は冒険者に任せるということだ。
 バニスター家の部下が抵抗すれば、楽しく賑わう観光地で何度か戦わなければならないだろう。
「でもね、もしアーリス家の母と娘が軟禁されていたことが発覚すれば、バニスター伯爵は今度こそ言い逃れはできないだろうね」
 ギルドの受付係はそう言ってニヤリと笑った。

解説

●成功条件  アーリス家の母と娘を助け出す。 ●失敗条件  アーリス家の母と娘の救出に失敗する。 ●屋敷内の人員配置  侍従やメイドの他、バニスター家の騎士も十数名在住しています。  バニスター家の騎士は母と娘が脱出したと分かれば追ってくるでしょう。 ●その他補足  母と娘の輸送にはアーリス家の用意した馬車を想定しています。  ・屋敷への侵入  ・奪還時の戦闘  ・バニスター領を出るための護衛  などの行動が考えられます。全員がすべての行動を行うのではなく、どこかひとつのポイントに的を絞ったプレイングや作戦・人員配分もOKです。 ●ヒュー・K・アーリス  伯爵子息。アーニー・グレイス・フラートンに婚約破棄を言い渡したのだが……?  アーリス伯爵家は王党派でしたが、つい最近その主張をやめました。  脅迫の材料にされている母と妹を助けたいようです。 ●バニスター伯爵  アーニーを誘拐しようとしたとして侍従が捕らえられました。  バニスター伯爵は侍従との関係を否定して自宅に引きこもっています。  バニスター家は貴族派です。

マスターより

 こんにちは、よろしくお願いします。  学乱シナリオです。アーリス家の母親と娘をヒューとともに助け出しましょう。  軟禁されている屋敷の場所は判明しています。  リプレイは軟禁場所の屋敷に到着した辺りからの描写になる予定です。  「【学乱】無実を証明したい悪役令嬢ですが危険ですか?」「【学乱】悪役令嬢の受け渡しはお手柔らかに」の続編のような位置付けですが、このシナリオ単体でご参加いただけます。母と娘を助け出して、バニスター伯爵の悪事を暴いてください。  無事二人を助け出すことができたら、さらに物語は続くかもしれません。  その場合でも、各シナリオ単体で参加いただけます。  なお、アーニー・グレイス・フラートンとバニスター伯爵の娘であるティアンナ・バニスターが今何をしているかは「【学乱】楽しい音楽祭開催の知らせと帰還した悪役令嬢」を御覧ください。  それでは、ご参加お待ちしています!

リプレイ

●
 ――深夜。
 闇に紛れるようにして集まった冒険者たちは、ヒュー・K・アーリスと最後の確認を行っていた。
「相手の家族を人質に取るとは、矜持の欠片もありませんね」
 セロンガード・シュタインドルフは知らずため息をつく。
 貴族派が悪く言われるのは、こういった卑劣な一面が浮き彫りになったことも理由のひとつなのかもしれないと思った。
「……皆さん、この度はよろしくお願いします」
 ヒューは冒険者たちに頭を下げる。母親と妹を救出することができなければ、彼はこの先もずっとバニスター伯爵の言いなりになるかもしれない。
「私達は二手に分かれて行動する。2人を逃がすための馬車で待機していて欲しい」
 サマエラ=フォリウムが作戦を説明すると、ヒューは静かにうなずいた。
 まずは屋敷から親子を助け出すことだ。
 暗闇であっても暗視を使えば視界は確保できる。
 馬車の位置を確認しながらトゥーリがヒューに尋ねた。
「お屋敷の間取りとかって分かるかなあ? 内部の構造が分かってると、忍び込むときに全然違うんだよね」
「詳しい間取りは不明だが……、おそらく1階は応接室や大広間があるだろう。2階か3階にゲストルームがあるはずだ。……地下や屋根裏部屋は使用人の場所だろうな。……母や妹がそこにいないことを祈るばかりだ」
 一般的な貴族の屋敷ということなのだろう。外観からも同じような推測ができる。
 セリオス・オーガストは屋敷を見ながら提案した。
「侵入後に、もし可能ならサーチをかけて探ろう」
「それは良いかもね!」
 トゥーリがうなずく。
 目的はくだらない派閥争いに巻き込まれてしまった母と娘を救出することなのだ。
 レラ・シュマリはヒューに2人の特徴を尋ねた。
「母は僕と同じダークブロンドの髪色だ。名前をエグラヴィ・アーリスという。背はそれほど高くない。10歳になる妹はナーテ。アッシュブロンドの髪を持つ」
「分かりました」
 2人の特徴を頭に入れながらレラは思う。
 正直、貴族派だとか王党派とかは自分にとってはどうでもいい話なのだ。
 けれど、卑怯で下衆な方法を取った伯爵を追い落とすことには何の躊躇もない。
「バニスター伯爵には表舞台からは消えて貰いましょう」
 馬車は指定の場所に隠した。バニスター伯爵家の屋敷は目の前だ。
 馬車に身を隠すヒューに向かってベルク・オスマットが言った。
「ああ、そうだ坊主。こういう事情があったとはいえ、アレだけされてまだ自分を信じてくれるいい女に恵まれたんだ」
 それは、おそらくヒューが婚約破棄を言い渡した令嬢のことだ。
「全部終わったらさっさと顔を出して謝ってきな。もちろん彼女の父親には殴られる覚悟を決めてだがね」
「……それは……」
 事件のあらましを知っているベルクからの言葉に、ヒューが顔を伏せる。
 ともあれ、事前の確認を終えた冒険者たちは行動を開始した。

●
「あんまり派手にやると派閥抗争が政争から武力抗争に発展しかねないからなぁ」
 ベルクは黒染めのボロ布で全身を覆った。
 特に今回の依頼では人命を奪うことは武力衝突の元になってしまうだろう。
 正直なところ、面倒ではある。
「もう少し気軽に首を刈れる相手は出てこないものか」
 言いながら、狐の面をかぶった。これで、いかにも胡散臭い盗人に見えるだろう。
「さて、今宵はこの身はただの盗人火付け人」
 あとは屋敷へ侵入した仲間の時間を稼いでやるだけだ。
「私は見回りの騎士を引きつけてこよう。『時間を稼ぐことができれば、2階の窓から侵入できそう』とのことだ」
 フードを深くかぶったサマエラが立ち上がった。
 サマエラは屋敷へ侵入するトゥーリとテレパスで情報をやり取りしている。
 屋敷へ侵入するための窓にあたりは付けたが、どうにも見回りをする騎士が気になるとのこと。
 それならとセロンガードもマントを身に着けた。
「2階の窓から侵入ですか。それならタイミングを見計らい1階でボヤ騒ぎを起こしてみます。できるだけドアに遠い場所が良いでしょうね」
 サマエラとベルクがうなずく。
 屋敷に侵入する仲間たちに捜索する時間を作ってやることも必要だ。
 3人はそれぞれ動き出す。

 まずサマエラがフラフラとした足取りで屋敷へと近づいていった。
 マントの合わせ部分をしきりに気にしたりフードを何度も触ってみたりと、いかにも怪しい動作をしながら屋敷の塀に沿って歩く。
 するとすぐに遠くから探るような明かりが当てられた。
「……そこにいるのは、誰だ?!」
 巡回の騎士だろう。まだ距離は遠い。
「……」
 サマエラはたっぷりと時間をかけて、わざと騎士の目にとまるように壁際を歩いて一旦その場を離れた。
 背後から足音が聞こえている。
 騎士が様子をうかがいに来たのだ。
 さて、騎士が動いたことを見てセロンガードは1階の窓に近づいた。
 少し時間を稼ぐことができれば、仲間が2階から侵入する時間を確保できるはずだ。
 サマエラの姿を追う騎士が近づいてきたタイミングで蒸留酒を適量撒いて火を付けた。
 炎はあっという間に大きくなり、周囲を明るく照らす。
「私は一旦退散しましょう」
 すぐに騎士が駆けつけるはずだ。
 セロンガードはロープを屋根に飛ばし、スルスルと屋敷の壁を登っていく。
 それほど大きな炎ではない。うまくすればすぐに消し止められるだろう。
「おい! 誰かいないか! ボヤだ!」
「すぐに火を消せ! 水は――」
 セロンガードの思惑通り、数名の騎士が火消しに集まってきた。
 屋敷の外が徐々に騒がしくなる。
 見回りをする騎士の足止めに成功したという連絡を受けて、トゥーリたちは2階の窓を目指した。
「簡単な鍵だから小さな穴をあけて開錠するね」
 鍵の状態を見て、シーフズツールでどうにかできると判断する。これなら窓を割る必要はない。トゥーリは器用に小さな穴をあけ、内側からかかっている鍵を外して窓を開いた。
 一度屋敷内の廊下を確認してから体を滑り込ませる。
 窓の近くにあった燭台の蝋燭の火を消し、仲間を招き入れた。

●
 2階の廊下に降り立ったレラが仲間を手招きした。
 エリアサイレンスを使用して、音を消してから周囲を確認する。
「無事に侵入できましたね。さっそく捜索を開始しましょう」
「2階にゲストルームがあるはずだよね? どこだろう?」
 トゥーリがキョロキョロと周囲を見回した。2階には同じような扉がいくつも並んでいる。人影は見えないが、決して油断はできない。
「孤高者の捜波を利用しよう」
 セリオスは届く範囲でサーチをかけて何かしら反応がないか確かめる。
「扉の外に立つ見張りはいませんね」
 レラが周囲の様子を見た。その言葉通り廊下に屋敷の者の姿はない。
 そしているうちに、セリオスが片手を上げた。
「次の扉の中に複数の者がいるようだ」
「その部屋だけに? 変だよね?」
「そうですね。その部屋にだけ人が集まっているのは不自然かもしれません」
 トゥーリとレラが顔を見合わせる。
「確かめてみる価値はある」
 セリオスが扉の前に近づいた。音消しをしているので、多少の足音は大丈夫のはず。
 トゥーリとレラも表情を引き締め静かに構えた。
 互いに目配せをしてタイミングを合わせる。
「一気に制圧だ」
 そう言って、セリオスが扉を勢いよく蹴破った。

 一方、屋敷の外ではセロンガードの起こしたボヤが消えかけていた。
 騎士たちが協力して火を消し止めたようだ。
「だが、まだ屋敷に戻らせるわけにはいかんなぁ」
 ベルクはあらかじめ見つけておいた物置小屋に向かって油を撒き散らし、火を放った。
 先程のボヤとは違い、炎は一気に物置小屋に燃え広がっていく。
 狙い通りだ。
 すでに簡単な消火では消えないほどの炎になったことを確認してベルクは大声を上げた。
「火事だー!!」
 屋敷から使用人が飛び出してくるのが見える。
 もちろん、屋敷の外を見回っていた騎士たちも集まってくるだろう。
 物陰に身を隠しながら、ベルクはその様子を見ていた。

●
 扉を蹴破った音はまだ消されたまま。部屋の入口で騎士が武器を構えている姿を冒険者たちは見た。侵入者に向けてではなく、ベッドに向けて恫喝しているようにも取れる。
 騎士の反応は遅かった。セリオスが懐に飛び込んだときに、ようやく侵入者を認識した様子。
「そ……」
 セリオスは騎士がすべてを言い終わらないうちに無力化する。
 扉付近に立っていた2人の騎士に襲いかかり、あっという間に気を失わせた。
 その間に、レラが部屋の中央へ走る。
 そこには1台のベッドが置かれており、ダークブロンドの女性がアッシュブロンドの女の子を抱えるようにして眠っていた。
「これは……、卑劣な……!」
 2人を揺り起こそうとしたレラの手が止まる。
「2人はいたのかな?」
 レラの背後からトゥーリが顔をのぞかせた。
 そして、あっと声を漏らす。
 眠る母と娘はロープで互いの身体を繋がれていた。そして、さらにその先を柱に括り付けられている。
「何これ、こんな頑丈なロープで繋がれてるの?!」
 トゥーリの声を聞いてセリオスも走り寄ってきた。
「……ロープの端を切ります」
 レラが短剣でロープを切断して、まず柱から母と娘を解き放つ。
「ん……、あなた、たちは……?」
 流石に気配を感じたのだろう。そのとき、ダークブロンドの女性がゆっくりと目を開けた。
「どうか怖がらないでほしい。ヒューの依頼を受けて助けに来た」
 セリオスがヒューの名前を出すと、女性は勢いよく体を起こす。
 そして、目を見開いた。
「ヒューが……! ああ……」
「確認します。貴女がエグラヴィ・アーリスですか?」
「はい。そして……娘のナーテです」
 レラは聞いていた特徴と女性たちを比べ、軟禁されている母娘に違いないと判断する。
「歩けるか? 今すぐ脱出しよう」
「はい。ナーテは……、私が抱えます」
 母はまだ眠る娘を抱えて立ち上がった。
「……2人を見つけたよ。……うん、分かった。今から向かうね」
 テレパスを使い外にいるサマエラと状況を確認していたのはトゥーリだ。
 母娘を確保したことを報告し、外の状況を聞いた。
「外に使用人が集まっているみたいだよ。火を消すために使用人用の裏口を使っているみたい」
「それならいっそのこと、正面玄関から脱出しましょうか」
 レラが再びエリアサイレンスを発動させる。
「どうか私の近くにいてください。馬車を要していますので、外に出ましょう」
「こっちだ。今は誰もいない」
 廊下の様子を確認してセリオスが手招きした。
 エグラヴィは娘を抱えて歩き出す。
「書き損じの脅迫状とか、親交のある貴族とのやり取りとか残ってないかな?」
 トゥーリが部屋を見回した。
 しかしそれらしい書類は見つからない。
「うーん、一応このロープは持っていこうかな」
 軟禁されていた母娘には嫌なものだろうけれど、何かしらの物証につながるかもしれない。
 部屋を出る際、倒れている騎士を見てエグラヴィが辛そうに目を逸らした。
「殺してはいない。少々手荒な真似をしてしまったが……」
 怯えさせないようにとセリオスが説明する。
 しかしエグラヴィは首を振ってこう言った。
「いいえ。あなた方が怖いのではありません。ただ……、部屋から出るなと、ずっと……剣を構えた騎士に見張られていたものですから……」
「そうか」
 今は慰める時間もない。
 母娘を連れた冒険者たちは馬車を目指した。

●
 母と娘を確保したと連絡を受けたサマエラは、状況をベルクとセロンガードにも伝える。
「ふむ。それならば、我はあの者たちを引きつけるとするか」
 ベルクはあらかじめ用意しておいた装飾品を取り出して準備を始めた。
「たのむ。合流は後ほど。私も別方向で引きつけよう」
 サマエラもそのように動くつもりだ。
「2人とも気をつけてください。馬車を逃がす援護は私がしましょう」
 セロンガードは再び屋敷の屋根に登り、逃げていく仲間たちの姿を見た。
 屋敷の裏側では、ようやく物置小屋の火事を消し終えた使用人たちが一息ついている。
 そろそろ騎士たちが他の場所も警戒し始める頃だろう。
 ベルクがじゃらじゃらと宝石を付けた腕を上げて叫んだ。
「はっはっは、腐れ伯爵殿の財宝と不正書類は頂いた! これで失礼するよ、間抜けな騎士もどきども!」
 いかにも盗品を見せびらかせるような仕草で、騎士たちの前に躍り出る。
「な……! まさか、火事の間に盗みに入ったというのか……!」
 それを見た騎士たちが一斉にベルクに襲いかかってきた。
「ふっ、甘いわ!」
 最初の1波をさっと躱し、走り出す。
「ま、待てー!!」
 騎士たちは慌ててベルクを追いかける。
 その先にフードを深くかぶったサマエラの姿。
「うまくいったな相棒! 分け前はいかほどだ!」
 サマエラも大きく声を張り上げ――。
 ベルクとすれ違ってからは、まったく別の方へと走り出した。
「盗賊の仲間だ! 追え! 捕らえろ!」
 騎士たちが二手に分かれる。
 ベルクとサマエラは、意識して騎士たちの走る速度に合わせて逃走していた。姿を見せることにより、いつまでも追いかけさせることができるのだ。
 2人が騎士たちを引きつけて走り去ってから遅れること少し、母娘を連れた冒険者達が正面玄関を通り抜けて外に出た。
 後は馬車まで走れば……というときに、屋敷の中から騎士が飛び出してくる。
 どうやらようやく屋敷内の騒動に気がついた者たちのようだ。
 セロンガードは落ち着いて弓に矢を番えた。
「ここで追いかけさせるわけにはいきません」
 仲間と騎士たちの間を狙い、矢を放つ。
 少しの時間でも足止めになるはずだ。
 騎士たちが右往左往している様子を確認して、セロンガードは合流地点まで走った。

●
「ああ、ヒュー!」
「母上! ご無事で何よりです」
 馬車の中で再開したヒューとエグラヴィが抱き合った。
「どうやら追手の心配はないようだ」
 セリオスが馬車の上から移動してきた。
「良かったね。サマエラたちがうまくやってくれたみたいだよ」
「はい、振り切ったようですね」
 馬車の窓から様子をうかがっていたトゥーリとレラも、安全が確保できたとうなずいた。
 屋敷を離れて随分経つ。
 ふいに馬車が速度を落とした。
 仲間と約束していた合流地点だ。
 そこにはベルクとサマエラ、そしてセロンガードの姿がある。
「本当に皆さんのおかげです。ありがとうございました」
 ヒューは深々と頭を下げた。
「これで、ようやく……」
 自由に動くことができると、言葉が続くはずだったのだろうか。
「んー……うん、うるさいの……おにいさま?」
 そのとき、ずっと眠っていたナーテが目を覚ました。
 走る馬車の中、皆は思わず笑ってしまったという。

マスターコメント

 皆様、母娘を助けていただきありがとうございました。  陽動班のしっかりとした引付けと、侵入班の鮮やかな奪還、とても素晴らしかったと思います。  ヒューが今後どうなるのか。  それはまた後日に……あるといいですね。  それでは、またどこかの機会でよろしくお願いします。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人

2021年07月24日 00時15分27秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. レラ・シュマリ

    シューターのレラ・シュマリと申します。 よろしくお願いします。 看破や超聴覚や捜波、天眼等でお二人の捜索が出来るかと思っています。

  2. サマエラ=フォリウム

    ゴブリン、ヒーラー。サマエラだ。 よろしく頼む。 ひとまず、方針として。 やるべきことは多いが、的を絞ったプレイングや配分も可ということで、 個人的には、そのように分担して対応できれば思った。 それでいけば私は、回復や時間稼ぎに寄せて、戦闘・護衛が比較的得手だろうか。 とはいえ、他作戦や役割でも問題ない。なるだけ足りないところを埋めるよう、動く。

  3. トゥーリ

    トゥーリだよ、よろしくね! こっそり助け出すのか、強行突破するのかはまず決めた方が良さそうだね! その上で、陽動や潜入、後の追手への対応をどう分担するかを考えるのがいいかな? 軟禁の証拠がアーリス家の証言だけだとちょっと弱いかも。 そう考えると、証拠品を確保したりとかも必要になりそうだからなるべくことを荒立てないでこっそりか、せめて短時間でパッと探して撤退するのが良さそうに思えるね……

  4. サマエラ=フォリウム

    潜入手段については……私も、なるだけ隠密寄りの方が、 救出対象の確保と安全に於いても、望ましいかなと思う。 と、潜入の時間帯は、特に決まっていなさそう……だろうか。 手段にも依るが、潜入も脱出も目立ちたくはないので、 とりあえずは夜間想定としても、良いだろうか?

  5. サマエラ=フォリウム

    いや、到着した辺りからすぐ潜入開始なら、昼間に動かねばならない可能性もあるか……?

  6. レラ・シュマリ

    強行すると二人が人質に使われる虞がありますよね。 出来れば隠密に動けると良いですね。 エリアサイレンスも使えますので夜の方が良いとも思えますが。

  7. ベルク・オスマット

    シーフのベルクだ、よろしく頼む。 屋敷の者を手あたり次第殺していいなら強硬策も取れるだろうが。 6名で十数人の騎士を相手するとなると、数に任せて足を止められている間に人質にされるのは確かにあり得るな。強硬にやるにしても脱出の際のみが好ましいな。

  8. セリオス・オーガスト

    ・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえず俺も隠密に救出でいいと思う まあバレたときの強硬策も考えておいたほうがいいだろうが。脱出時追われることを考えて馬車は二台用意して、囮が先に逃げて注意を引き付けるとかな とりあえず考えることは 侵入方法(時間、行動等 脱出方法(陽動で敵の目を引き付けるか、戦わずこっそり脱出するかなど 逃走時の対処(追手の足止め等 というところか

  9. サマエラ=フォリウム

    それでは、隠密予定で固めていこうか。 光源等整えておく必要はあるが、そのあたり問題なければ夜間想定として、 可能なら夜間に潜入する、など書き添えておくか……? 行動面は、 隠密と考えると、潜入者は少数名の方が動き易そうか。 ただその場合は、戦闘が発生した場合に時間を掛けると、囲まれ兼ねないので、 突破力もなるだけあれば、安心かと思う。……私は、あまり向かないやもしれないな。 戦わず気付かれず潜入・脱出できれば最良なものの、備えとして陽動も考えておけたらと。 潜入者がちょうど陽動を望んだタイミングで、動けたら良いのだが…… 何かしら、合図が必要だろうか。もしテレパスがあれば、連絡は取れるな。

  10. サマエラ=フォリウム

    分担するならば、そろそろある程度は進めていけたらと思うので、 潜入時(あるいは脱出時)の陽動と、逃走中の護衛。 そのあたりに絞って動けたらと、希望だけ出しておこう。

  11. レラ・シュマリ

    侵入は深夜、逃走は一番警戒能力が落ちる夜明け前に動けると最高ですよね。 陽動は2~3人程度、護衛侵入は3~4人程度がよろしいのではないでしょうか? スキルは捜波、エリアサイレンス、看破辺りでいこうかと思いますが変更は可能です。 使って欲しい物があれば仰って下さい。 先に上げたもの以外にも、暗視、超視覚、サーマルアイも使えますので。

  12. トゥーリ

    あ、もう24時間切ってたね。 >護衛侵入と陽動 レラさんの挙げてくれてる割り振りでいいと思うよ。 あまり大人数だと侵入が目立ちそうだから、3:3とか? 護衛侵入 レラさん、トゥーリ 陽動 サマエラさん >サマエラさん テレパスを持ち込んでもらえるかなぁ? ワタシ、レラさんに同行して護衛に就くけど、エリアサイレンスの内外って音が伝わらないから屋敷の人が近づいて来てても分からないんだよね。何かあったら状況をテレパスで教えてもらえると嬉しいな!

  13. サマエラ=フォリウム

    そうだな、人数配分は私もレラが挙げてくれたもので、良さそうに思う。 そしてなるほど、確かにエリアサイレンスを用いるならば、 尚更テレパスがあると便利そうだ……承知した、こちらでも持ち込もう。 騎士に動きがあった時、陽動に入った方が良さそうな時など、都度連絡するよう心掛けておく。 陽動の方は単純に、マントやフードで顔等隠した怪しげな風貌で、 正面から堂々押し入ろうとする不審者でも、装うかと思っているが、 何か動きに他の希望あれば、変更しよう。 脱出以降については状況次第で、共に馬車に乗り、護衛として務めるか、 陽動を続けて引き付けつつ、その後自力で離脱するか、 どちらか、行動し易い方でいく予定でいる。 何れにしても回復や時間稼ぎ、遅滞戦闘が主の動きにはなるだろうか。 こちらも希望あれば変更するので、もし何かあれば、教えてもらえたら幸いだ。

  14. レラ・シュマリ

    陽動は不審な格好でウロウロして付かず離れず程度で逃げ回って頂くと侵入し易いかと思います。 正面突破で騒ぎを起こすとすぐに人質を気にする人間も増えるでしょうし。

  15. サマエラ=フォリウム

    ああ、承知した。それではまずはそのように誘いをかけてみよう。 もし騎士達が乗って来なさそうなら、また改めて連絡しようか。

  16. ベルク・オスマット

    では我は陽動に回ろう。 正面から陽動ではなく潜伏して脱出の際に逃げる方向と反対側に火付けでもすれば騒ぎになるし火消しに人手も取られるだろう。 ついでに姿さらして逆方向に逃げれば陽動にもなって人質の奪還に襲いに行く騎士も減らせそうだしな。 護衛侵入 レラさん、トゥーリさん 陽動 サマエラさん、ベルク

  17. セリオス・オーガスト

    ふむ、では俺は侵入のほうに入っておく。 持ってくのは暗視と超聴覚と孤高者の捜波を持っていくつもりだ あとは撤退時に目くらましで濃煙炸弾とかだな 護衛侵入 レラさん、トゥーリさん、セリオス 陽動 サマエラさん、ベルク

  18. セロンガード・シュタインドルフ

    申し訳ありません、遅れました。 シューターのセロンガードです。 よろしくお願い致します。 了解致しました。私は陽動に入ります。 護衛侵入 レラさん、トゥーリさん、セリオス 陽動 サマエラさん、ベルク、セロンガード

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0