【大変動】『緑の親指』アダム奪還を阻止せよ

そうすけ

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シナリオID:984

オープニング

●
「その話、間違いないわね?」
 肌を削ぐような鋭い目に尋ねられ、男は媚びた顔を引きつらせつつ何度もうなずく。ガラス張りのテーブルに紙を広げて置くと、人差し指ですっと相手へ滑らせた。
「アダムさんは確かに、ブラックデスが所有するこの倉庫の地下に。そこに倉庫の見取り図と見張りに詰めているヤツらの数、それと得意な得物も調べて書いておきました」
「そう、ご苦労さま」
「それでは私はこれで。約束のものを頂けますか」
 メドゥの指先の一人、ミモザが煙管の雁首を煙草盆にコンと打ちつけて二服目の吸い殻を落としたとき、それがまるで合図のようにして奥のドアが音もなく開いた。
 奥からいずれも抜群の堂々たる体格に、一見して屈強の剣客とわかる男たちが出てくると、男は顔から媚びの色を完全に落として蒼白になった。椅子から腰を浮かせる。
 右か、左か。
 どちらに走り出すか、ほんの一瞬の、ささいな迷いが男の命取りになった。
 出口にたどり着く前にドアの奥から出てきた屈強な男たちに捕まってしまい、首を折られてあっけなく死んだ。
「たった八人で見張りねぇ。緑の親指ともあろうものが……アダムちゃん、落ちるところまで落ちちゃったわね。ここで私に助けられたりしたら、ますます性格が歪みそう。うふふ」
 ミモザは煙管を煙草盆に置くと、ゆるりと立ち上がった。
 帯は緩めに巻かれ、襟は大きく開かれ胸元が見えそうになっている。足に履くのは黒い薬塗りの下駄。朱色の鼻緒が唇の色と相まって妖しく目を惹きつける。
「あ、誰か一人残ってこの生ごみを始末しておいてちょうだい。残りは私と来て。オモチャ……アダムちゃんを取り返しに行くわよ」

●
 ゴールディ最大のマフィアであるブラックデスの幹部は、普段、裁縫などしない。普段でなくてもしない。だからダミー人形など作れるはずはないのだが、タ・ロウは違う。
 この男、怖い顔してマンガのヒロインをフィギュア化するのが密かな趣味なのだ。
「ま、こんなもんだろ。時間がありゃ、塞ぎかけの傷とかをもっとリアルにできるぜ」
「細かいとこはどうでもええ。隅に転がして布かけとくんやから。それより、みんな来てくれたで。はよ、説明し」
 ゴールディの情報屋ラズリーに促されて、タ・ロウは牢から出た。
 急遽、ブラックデスのとある店に呼び出された冒険者たちの前に立つ。前置きなしで用件を切り出した。
「メドゥの指先が先日捕えた幹部を奪い返しに来るって情報が入った。ヤツらを売った男がいてな。うちからもメドゥの指先からも金を取るつもりのようだったが……そういうやつは大体早死するんだよなぁ、ククク」
 なぜか嬉しそうに、口の中でくぐもった笑い声を立てる。
「ま、それはどうでもいい。本来ならブラックデスで対処すべき案件だが、生憎といま、サウゼルやら帝国やらのことに人が取られて手薄でな。お前たちで返り討ちにしてもらいてぇ。あとはここにいるラズリーから聞いてくれ」
 じゃあ頼んだぜ、と言いおいて、タ・ロウは階段を上がっていった。
「あ~、特に言うことないんやけど。アダム目当てに押し入ってきたアホどもをコテンパンにやっつけてくれるだけでええ」
 メドゥの指先幹部『緑の親指』アダムは別のアジトに移されたあとだ。撃退に失敗してもアダムを奪われることはない。
「そやけど、賊のボスでミモザという女狐だけは逃がしたらあかん。この女狐、ちょっと前にヴァイオレットレオンの跡取りをたぶらかして、ヴァイオレットレオンを潰そうとしてたんや。野放しにするとゴールディの治安が悪ぅなる」
 タ・ロウの希望はミモザの完全排除だ。幹部の身柄が手中にある今、ザコを捕えて得るものはない。
「希望は希望。どうするかはアンタらに一任する。ミモザは倒してもええし、捕まえてもええ。ほな、さっそく配置についてもらおうか。メドゥの指先、もうすぐ来るで」

解説

●依頼内容 メドゥの指先ミモザの逮捕、または撃破。 逃げられると失敗です。 ※ミモザの取り巻きは逃がしてもOKです。 ●場所 ブラックデスのとある倉庫。地上一階、地下一階になっています。 地上倉庫の出入口は正面の大扉と裏の勝手口の二か所。 地下へ降りる階段は一か所です。 地上は葡萄酒と麦酒の瓶が入った木箱が置かれています。 地下には葡萄酒の樽が並び、奥に牢屋が作られています。 牢屋の扉は一つ。 奥隅に等身大のアダム身代り人形が置かれています。 ●敵1 メドゥの指先ミモザ。ハーフビーストです。 キャスターで武器は鉄扇。 【アシッドブリット】、【マジックディソナンス改】、【エーテルバリア】、【魔矢(エーテルアロー)】の他に、以下の独自スキルを持っています。 【狐抜け】場が混乱すればするほど、逃げやすくなります。 ●敵2……8人 ミモザの取り巻きです。 いずれも屈強な肉体を持っており、力が強いです。全員が熊のハーフビースト。 クラスはウォーリア、武器は鋼の手斧。 黒装束に身を包んでおり、【模写】という特殊なコピースキルを持っています。 【模写】面と向かい合った相手の、武器や防具によらないスキルを1つコピーして使います。 ※【狐抜け】はコピーできません。 ●その他 タ・ロウもラズリーも戦いには参加しません。 地上倉庫の扉は正面も裏も、ミモザたちを引き入れるためにわざと鍵がかけてられていません。 地下牢の扉は締められています。鍵もかかっています。

マスターより

よろしければご参加ください。お待ちしております。

リプレイ

●
 タ・ロウとラズリーが地下牢を去った後、冒険者たちは円陣を組んだ作戦を立てた。
 以前、ミモザとやりあったときは、まんまと逃げられている。今度は確実に、仕留められずとも身柄だけは取りたい。
 そう主張したのは、ハヤト=ガラン=ヴォルファングとナハティガル=ラー、中村・右衛門佐・勘次郎の三人だ。
「うちの従兄弟を誑(たぶら)かしてくれたあのけしからんバディの女狐がメドゥの指先だったとはな……今度は絶対ぇ逃がさねぇぜ!」
 ハヤトが右手の拳を左のてのひらに打ちつけると、パシリと小気味のいい音が石造りの地下に響いた。
 ナハティガルが不敵な笑みを浮かべる。
「前回は獲り逃がしたが、今回はそうはいかん」
 すでにミモザの手は割れている
「お手並み拝見といこうじゃないか」
 勘次郎は横柄に腕を組むと、胸を思いきり反らせた。
「はッ! 上等だ……。毒婦が向こうからやって来ってンなら、賭場での借り、きっちり返してやンよ」
 セロンガード・シュタインドルフは鉄格子越しに、ボロの毛布が被せられたアダムの身代わり人形を眺めた。
(彼女はなかなかの野心家のようですね。ですが、やはりこの襲撃はリスクが大きい。一体、なぜこんな無茶なことを)
 よほど親しかったのだろうか。
 セロンガードの物思いを、ギャメルの元気な声が破る。
「二手に分かれるに賛成だ。で、オレは地下に残る。怖いからとかそんなんじゃねえ、人形に細工するいいアイデアを思いついたんだよ」
「おなじく、おれもいいこと思いついた」
 そういったのはサイラスだ。
「おれは上で雑魚どもを片づけようと思っているけど、その前にオトリの偽鍵をちょちょいと作りたい。それで一瞬でもミモザの注意が引ければいいなって」
 イーヤ・レプリスは微笑んだ。
「サイラスさんは手先が器用なんですね」
 実際、サイラスの彫金の腕はなかなかものものだ。時間があれば、合鍵として使えるものも作れるだろう。
 サイラスは牢の扉の前に移動すると、鍵穴の大きさや深さを調べ始めた。
 それで、とイーヤはギャメルに優しい目を向ける。
「ギャメルさんはあの人形に何をなさるおつもり?」
「オレか? オレはタ・ロウが作ったこの人形にアダムのニオイをつけて、より本物らしくするぜ。牢の中に入って毛布をとるまで、ミモザにも偽物だって気づかれないようにな」
 ザザ=ステルヴィナが、二人のアイデアを褒める。
「短時間でよく思いついたわね、すごい」
 透明感のあるブルーアッシュの髪を小指の先ですくいあげ、耳にかける。
「それにしても――タ・ロウさんってば見掛けに寄らず手先が器用でビックリよ」
 あんな強面の顔をしているのにね、とザザは春風のような笑い声をそよがせた。
 ハヤトが、ほのぼのとした雰囲気を引き締めるように、手を叩いてみんなの注意を集めた。
「よし! 作戦と持ち場も決まったことだし、そろそろ配置につこうぜ」
「そうさな、あっしもちぃっと準備しておきたいことがある。上にあがるとしよう。そうそう、例の毒婦もひっくるめて、あっしたちが捕まえちまったら御免よ」
 ニヤリと左の口角をあげて、勘次郎は前衿を合わせた。
「おいおい、こっちの出番も残しといてくれよ」
「そのつもりで戦いに臨む、ということだ。俺たちだけでやれればそれにこしたことはないが、今回だけは逃がすわけにはいかん。ミモザはわざと地下に送って退路をたつ。そうだな、勘次郎?」
「ナハティガルのいうとおり。ここを頼んだぜ、お三方。さ、御婦人たち、サイラスも、客人の出迎えに行くぜ」

●
 一階に上がった五人は、木箱や樽を動かして隠れる場所を作った。
 ザザは階段付近にインクをまく。ミモザを逃がさないためのちょっとした工夫だ。地下にとじこめることができずに倉庫の外へ逃がしたとしても、インクの足跡をたどればすぐに見つけられる。
 一足先に入り口近くに身を潜ませていたナハティガルが、襲撃者たちの気配を感じ取り、みんなに声をかけた。
「隠れろ」
 倉庫の扉が突然に開き、八人の大柄な男たちとミモザが怒濤の勢いで突入してきた。ミモザは手斧を構えた厳つい熊のハーフビーストに囲まれている。
 襲撃者たちは固まったまま、倉庫の中央付近まで進み、止まった。緩やかに散開して辺りを見回す。
「ミモザさま、誰もいません!」
 一瞬のスキをついて、ナハティガルは木箱の裏から飛び出した。
 疾風迅雷の勢いでミモザを振り返った男に接近すると、武器を持った手首を鋼の短刀で切りつけて血を吹かせ、鋼の剣を振って胴を薙ぎ、軽やかな足さばきで半身をまわす。最後の悪足掻きで、ナハティガルの術を模倣してやろうと目を見開いた男の胸に、刃を赤く染めた鋼の短刀を根元まで沈ませた。
「待ち伏せ?! あの裏切り者のしわざね」
「簡単に組織を売るような男を信じたのが間違いだったな」
 ミモザが、散れ、と鋭く命令を飛ばす。
 手下たちは四方に走った。ミモザは積み上げられた木箱を蹴り崩して埃と木片を飛び散らせると、混乱に乗じて身を隠した。
 ナハティガルは天眼を用いて素早く倉庫内を俯瞰(ふかん)する。ミモザを見つけるとマークした。同時にエーテルの波動を走らせて、四方に散った手下たちの位置を割り出す。
「くそ、誰かイーヤを守れ!」
 守れといったはいいが、勘次郎とサイラスは倉庫の最奥、階段付近にいる。それにさっき、向こうから木箱が壊れる音と怒声が聞こえた。すでに戦いが始まっているのだ。仮にふたりが入り口付近にいるイーヤの元に走れたとしても、間に合わない。
 間に合うとすれば――。
 ザザはイーヤの手前に空でジグザグに跳ね返る稲妻のような光を生じさせた。
「天光満ちて流れよ。異界の門開きて奏でよその旋律。――出でよ〝アーケインテンペスト〟!」
恐ろしい形相で手斧を振り上げて走る男の一人を、稲妻のような光が絡め取る。
「それっ」
 イーヤが扉の脇に置かれていた小樽を、もう一人の熊男めがけていきおいよく転がした。
 男は跳んでかわそうとしたが遅く、転がってきた小樽に足をひっかけて倒れた。
「ナイスシュートよ、イーヤ」
 ザザが炎球を放って襲撃者たちの背を焼く。
「このアマども!」
「思い知らせてやる!」
 熊男たちは手をついて立ちあがると、それぞれイーヤとザザに手斧をなげつけた。
 倉庫の奥では、勘次郎が熊男たちを挑発していた。
「オラ、来いよ三下共。纏めて相手してやンよ」
 サイラスが、「まあ……捕まえなくてもいい訳だけど、生かしとく理由自体なくね?」と殺界を形成したあと、再見の挨拶もそこそこにミモザの相手を任せ、手下五人の殺意を一手に引きつけようとしたのだが……。
(ひい、ふう、みい……。いまの口上でむかっ腹立てたのは、五人中の三人かい。すまねえ、サイラス)
 三人の熊男たちが勘次郎を囲む。が、何かにとまどっているらしく、なかなか攻撃を仕掛けてこない。
 背の後ろで刃が激しくぶつかり合う金属音が連続したあと、緑色の光が弾けた。ミモザがアシッドブリットをサイラスに放ったか。
 どさりと重い音がした。
 勘次郎はサイラスが無事か気になったが、自分自身も敵に囲まれている。いまは振り返れない。
「オラオラどうした。『どうして術が盗めない』ってか? アホが、こちとらバッチリ対策済みよ。ざまぁ見やがれ」
 勘次郎は体を回転させながら、エーテル光を纏って巨大化した大太刀を力いっぱい振るった。
 光輝の大太刀は一人目の熊男の胴を真っ二つにしたあと減速し、二人目の熊男のシャツを切り裂いて毛深い腹から腸を飛びださせ、手斧で刃を受け止めた三人目の熊男を叩き伏せた。
「おっと、三人瞬殺は無理だったか。だが、一人殺して、一人は半死……上等、上等」
 一度振って刃についた血を落とし、とん、と肩に大太刀を担いだ。
 まずは半死にトドメを、と大太刀を振りあげた瞬間、ミモザの怒声がした。
「なによ。この鍵、偽物じゃない!」
「あれ、ばれちゃった?」
 顔を後ろへまわすと、サイラスが床に倒れていた。肩で息をする熊男たちが、二人がかりで背を押さえつけている。
「よくも時間を無駄にしてくれたわね。さっさと殺して。一人でできるでしょ。あなたは私と下にきて」
 ミモザが熊男を一人連れ、階段へ向かう。
 もがくサイラスの頭上で、明り取り窓から差し込む光を受けた手斧が光る。
 助けに行こうとした勘次郎の足首を、死にかけた男の冷たい手が強く掴んだ。
「てめぇ――」
 サイラスは体を強引に捻って熊男を転がし、手斧の刃をかわした。急いで立ち上がり、熊男の顎に蹴りを入れてすっ飛ばす。
「勘次郎、上だ!」
 床に叩き伏せた熊男が、いつの間に立ちあがっていたのか。手斧を振り上げて、木箱のうえから勘次郎目がけて飛び降りた。
 
●
 セロンガードは黒のマントで身を包み、葡萄酒を仕込んだ大樽の陰に隠れてミモザが地下に降りてくるのを待った。
 階段の上から仲間たちが苦戦している音が落ちてくる。何度も助けに向かおうと思ったが、ぐっと我慢した。
(きっと大丈夫……みなさんなら、きっと。私は私の役目を果たしましょう)
 誰かが降りてきた。高い踵が石段を叩く甲高い足音のすぐ後に、重い足音が続く。
 ランタンを手に牢の前に立つギャメルと目があい、頷きあう。
 身代り人形の陰に隠れたハヤトも気づいたようだ。すぐ見つからないよう、ボロ毛布を引き上げて頭まですっぽりと覆った。
 セロンガードもすぐ飛び出せるよう、大樽の陰の縁まで体を移動させた。
「アダムちゃん、無事? 助けに来たわよ」
 ミモザが地下に姿を現した。続いて熊男が入ってくる。
 ギャメルは目をせわしなく瞬かせ、鋼の祭刀を構えた。
「アダム、そこでじっとしててくれよな!」
「そこをお退き。鉄扇を脳天に見舞ってカチ割るわよ!」
 ミモザが鉄扇を下から上へ振り上げる。それは牢の鍵を壊して、ギャメルの鼻先をかすめた。
「うへぇ、おっかねぇ」
「さがれ、ギャメル!」
 セロンガードが熊男の振り降ろす手斧をかわして矢を放つ。ただの矢ではない。先端に強力なエーテルの重力波を収束させた矢だ。
「うっ……」
 矢はミモザの右肩に命中した。
 返す手で、宣言どおりギャメルの頭をカチ割ろうとしたミモザの動きを止める。
 ミモザは壁までさがってしまったギャメルを諦め、牢の扉を開いた。
「アダムちゃん、しっかりして。それでも幹部なの? またパフパフしてあげるから、元気だしなさ――ひぃぃ!!」
 アダム(の身代り人形)を覆っていたボロ毛布が勢いよくめくり上げられ、空を飛んだ。白い影が疾走し、ミモザに体当たりした。
「こいつは人形だ。残念だったな! 今回騙されたのはお前の方だぜ!!」
 ハヤテは勢いのままミモザを牢の床に押倒した。勢いがつき過ぎた、と見せかけて、ミモザの豊満な胸の間に顔をうずめる。
「お前はハヤテの従弟……」
「パフパブ(ハヤトだ)。ローフブパフパフパフフッ(ロープで縛らせてもらうぜ)」
 束縛を逃れようとミモザが身もだえするほど、ハヤテの顔を柔らかい肉が左右からうつ。
 く~、やわらけぇ。
「なにしてるんだよ、ハヤト! セロンガードがピンチだ、さっさと縛って助けてやれよ。べ、別に羨ましいなんて思っていったんじゃないからな!!」
 ギャメルは手斧を受けて血を流すセロンガードにヒールをかけた。
 短弓とはいえ、体が触れるほど接近されればどうしたって不利だ。チャンスは逃さずエーテルを乗せた矢を撃ちこみはするが致命傷を与えられない。相手は手斧を振るだけではなく、足で蹴ったりもしてくる。
 ついに隅に追い詰められてしまった。絶体絶命のピンチ。
「ハヤトってば!!」
「ちっ、待ってろ」
 あ、いま舌打ちしたな。ギャメルはミモザを大急ぎで縛るハヤトを半目で睨んだ。
「ちょっと、いまおしり『タダ』で触ったでしょ。胸の分と合わせてお金払いなさいよ!」
 牢からでるハヤトをミモザの罵声が追いかける。
「うるぁ! いいところだったのに、邪魔すんじゃねぇ!」
 紅蓮の焔と雷纏いし魔獣の爪牙が熊男の背に食い込む。
 いまだ、とギャメルがセロンガードの傷を癒した。
「やっちまえ、セロンガード」
 セロンガードは壁と熊男の間から抜け出すと、短弓に矢をつがえた。ハヤトに襲いかかろうとする熊男に向け撃つ。
 最後にギャメルの跳び蹴りを炸裂させ、熊男を倒した。

●
 イーヤのもとに駆けつけたナハティガルは、自ら盾となって手斧を腕で受け止めた。刃が骨にまで達し、檄痛に美しい顔を歪める。
「ラーさん!!」
 イーヤはナハティガルの背に手を置いた。ヒーラーの奥義ともいうべき術を行おうとしたとき、ナハティガルが食いしばった歯の間から、唸るようにいった。
「俺はいい。ザザを助けに行ってくれ」
 躊躇は一瞬、イーヤは「わかったわ」と返事をすると、手斧を振り回す熊男から逃げまわって、倉庫の奥へ走ったザザを助けに向かった。
「さて、こちらは利き腕が使い物にならないが、まだ左腕が残っている。そっちは武器がないな。どうする?」
 ナハティガルは牙を剥いて突っ込んできた熊男の首を狙って、鋼の短刀を振った。
 ザザは勘次郎とサイラスの後ろに逃げ込んだ。勘次郎は右肩から左腰にかけて切られ、全身血まみれだ。サイラスも辛そうな顔をしている。
 半死の男はすでにこと切れていた。
 木箱の裏から回り込んだイーヤが三人に合流し、傷の手当てを始める。
「やるわよ」
 ザザは自分を追ってきた男と、勘次郎とサイラスが相手にしていた二人を、纏めてうごめく炎で焼いた。
「やるか、サイラス」
「やるぜ、勘次郎!」
 二人同時に武器にエーテルを纏わせて巨大化させる。
 左右に分かれて敵を挟み、討った。
 ナハティガルがやってきた。
「終わったな。地下へ急ごう」

 半刻後――。
 ギャメルが仲間の傷を癒している間に、セロンガードがラズリーを連れてきた。
 ハヤトがミモザを連れて行こうとしたラズリーを引きとめる。
「わざわざ場所を移さなくても、ここで尋問すりやいいじゃねえか。オレたちで知っていることを吐かせてやるぜ」
「あかん。依頼したんは捕まえるまでや。尋問はブラックデスがやる」
 悔しがるハヤトにギャメルがツッコミを入れた。
「ハヤト、またエッチなことしようと思っただろ?」
「なぁに、エッチなことって」
 イーヤとザザが目を尖らせる。
「誤解だ。あれは不可抗力!」
 口に布を噛まされたミモザがうーうー、と唸った。
 サイラスはハヤトの横に立つと、耳に口をよせてささやいた。
「……よかったか?」
 こくり、と頷くハヤト。
 ちくしょう、上手いことやりやがって、とハヤトの背を叩いた。
 ナハティガルは勘次郎に声をかける。
 こちらはマフィア顔負けの尋問をミモザに試みたかったようだ。
「俺たちが悪名を背負う必要はない。あとの始末はブラックデスに任せておけ」
「それもそうだな。じゃ、帰るか」

マスターコメント

おつかれさまです。 無事、ミモザの悪巧みを挫き、身柄を押さえることができました。 捕まえたミモザはブラックデスに引き取られています。 ラズリーによれば引き渡しの時、タ・ロウの鼻の下が伸びていたとか……。 ご参加ありがとうございました。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2021年06月19日 00時44分19秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ギャメル

    ヒーラーのギャメルだ! みんな、よろしくなー。 フィギュア化……。タ・ロウの意外な趣味が発覚。 場の混乱を抑えるには、天眼とかテレパスとかあるといいのかな? オレは天眼あり、テレパスなしだ。

  2. ナハティガル=ラー

    シーフのナハティガル=ラーだ。 初見も、そうではない者も宜しく頼む。 >ミモザ 逮捕か撃破か。…さて、どちらにするべきか。 まぁ、それ以前に逃げられたら失敗な訳だが…。 >敵スキル 【狐抜け】:場が混乱すればするほど、逃げやすくなります。 【模写】:面と向かい合った相手の、武器や防具によらないスキルを1つコピーして使います。 結構厄介なスキルだな。 【狐抜け】対策としてパッと思い付くのは、乱戦にならない様にミモザを取り巻き達から切り離す…等だろうか?(地下牢に陽動する等) 【模写】対策は…『武器や防具によらないスキル』を可能な限り持って行かないようにする…位しか考え付かんな。

  3. イーヤ・レプリス

    ヒーラーのイーヤよ、よろしく。 >スキル 私は天眼もテレパスも持ってるわね。 >ミモザ 趣味や興味で情報の吸出しはしてみたいけど、私はどちらでも構わないわ。 >敵スキル 模写はそれぐらいだと思うわね。 狐抜けは……そうね、牢屋の前まで敵を引き付けた後、階段を塞ぐとかもありじゃないかしら? 地下の光源について言及が無いし、明かりを確保して視界を確保するのも効果ありそうな気がするわ。

  4. ザザ=ステルヴィナ

    キャスターのザザ=ステルヴィナよ。今回は宜しくね。 >ミモザ 情報を引き出せる可能性があるし、『可能なら捕縛』する方向でどうかしらん? 捕縛が無理そうなら(こちらの被害が甚大だったり、逃走されそうだったり)、撃破するって感じで。 >スキル 現時点で持って行く予定のスキルは―― 汎用:暗視 特性:アーケインテンペスト改 アクション:メテオライト2/光縛呪(捕縛用) ――こんなカンジかしら?

  5. 中村・右衛門佐・勘次郎

    よォ、ウォーリアの勘次郎ってモンだ。 ミモザって毒婦に思う所あって助太刀するゼ よろしく頼む。 >ミモザ あっしもザザに賛同すンぜ。 メドゥと繋がりがある上に、悪事を働いたのも一度や二度じゃァなかろうしな。 【狐抜け】が厄介だが、イーヤの言うように 逃げ道を塞ぐことで逃走を防ぎてェ処だな。 >敵スキル 【狐抜け】以外だとやはり【模写】が面倒くせェな…一先ず、あっしは【シーザーロア】と【戦士の一断】、汎用は【天眼】を持ってく積もりだ。

  6. ギャメル

    頼れる味方が増えてうれしいぜ。改めてよろしくな。 >ミモザ 情報の引き出ししてくれるんなら助かる! 頼んだぜー! 逃走阻止なら光縛封が定番手段だけど相手はキャスター型っぽいな。使うとしても、タイミングをよく見計らってか。 あとは、万が一逃げられてもすぐ足取りを追えるよう仕掛けをしとくか? インクを足元にぶちまけたり、匂いのするものを投げつけたり。 逃げ道をふさぐには、木箱や樽をマジカルポケットで移動させりゃ手っ取り早そうだ。 >スキル 仮だけどオレのスキルはこんな感じ! 【模写】の対象はないはずだぜ。 特性「光縛封」「リヴァーオブヴァイタル」 汎用「天眼」 アクション「ヒール2」「解呪2」「聖別」

  7. No.7

    サイラスだ、よろしくなー とりあえず武器依存のスキルではあるし殺界+エーテルブレード使おうかなと 数人一箇所に短時間でも留められたらやり易そうだし。 後は闘気槌衝撃刃フェイント鋭撃とか? いやまあ近接武器という制限が武器や防具によらないスキルかどうかなんとなく不安だけど 後は天眼と時間停止とか何か?汎用も装備によらないスキルだからコピれるの対象っぽくてあまり冒険しないつもり

  8. セロンガード・シュタインドルフ

    遅れました、シューター、セロンガードです。 今回はよろしくお願い致します。 武器を媒介にしたスキル構成にするつもりではありますが、弓の他に回復用のヒール2以降も積もうと思っております。 【狐抜け】対策の為にどのタイミングで攻撃を始めるのかと、可能な限り混乱を避ける必要もありますね…その点に関してもスキルは気をつけなければ。 ミモザ自身もキャスターである為にいくつかスキルを扱ってくるようなので、そちらの対策を立てる事が出来れば、捕縛に一歩近づくと思います。

  9. イーヤ・レプリス

    >逃げ道 私は倉庫入り口近くの空箱にでも隠れてようかしら。 それで、ミモザ達が地下の階段を下りたら、倉庫で入り口に施錠か箱で塞ぐ。 その後後ろからミモザ達の退路を塞ぐように合流って感じで。 透視を持っていくから、天眼の変わりに明かりでも持ちこむわね。 戦闘は回復がメインになるわね。

  10. 中村・右衛門佐・勘次郎

    さァて、いよいよ明日出発だな。 ここらでちょいと纏めとくか。 ◉目標 ミモザの逮捕ないしは撃破 →『可能なら捕縛、最低でも撃破』 取り巻きは取り逃してもOK ◉敵スキル対策 【狐抜け】 →ミモザが地下牢まで接近したタイミングで 施錠or障害物で塞ぐ →冒険者が地下倉庫入り口に陣取り逃走できる可能性を潰す →陣形を維持、乱戦を防ぐ 【模倣】 →武器に依存しないスキルを装備する →どこまで対象なのか? 近接武器スキルや汎用も含むのか? ◉その他 ・キャスタースキルへの対策 ・倉庫の光源が不明→照明、スキルを準備 ・光縛封を使う?→タイミング次第 ・予め障害物をマジカルポケットに収納 こンな処か。 そうだな…あっしも照明対策に暗視でも取っておくか。天眼の代わりにマジカルポケットが取れりゃァそっちも持っていく。

  11. ナハティガル=ラー

    勘次郎、纏めを感謝する。 >迎撃 俺は1階の扉か木箱の陰に隠れ、取り巻きに対して不意討ちを試みる予定だ。 取り巻き達は可能な限り1階に足止めし、ミモザは地下へと向かう様に仕向けたい処。 まぁアダム奪還を狙っている以上は地下牢を目指す筈だから、そう難しい事ではないとは思うが…。 強いて言えば、ミモザに怪しまれない様に追撃する際は本気で追撃する…位か? 念の為、【捜波・改】でミモザを【マーク】しておく事にする。 >スキル 特性:捜波・改、トリプルファング 汎用:暗視、天眼 アクション:フェザーステップ、疾風足、対魔感、魔乱印 上記の構成を考えている。 全てのスキルを武器・防具依存の物にするのは難しかったが―― 出来るだけ模写されても被害が少ない物をチョイスしてみた。 問題あれば変更するので言って貰いたい。

  12. No.15

    とりあえず障害物として殺界蓋代わりにぶっこもうかと。取り巻きメインで仕掛けようかと思うよ。ミモザはやりたい人いるだろから雑魚減らしに 後は相談出来るか怪しいし多少柔軟に動ける様にプレ書くわ

  13. ハヤト=ガラン=ヴォルファング

    おーっす!遅くなってすまねぇ! ゴブリンのシーフ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! うちの従兄弟を誑かしてくらたあの女狐がメドゥの手先だったとはな! こいつはきっちり捕まえてあのけしからんバディをお仕置してやらないとだぜ!← んじゃ、俺はあらかじめ牢屋の中のアダム人形の陰に身を潜めてミモザが入って来たところをがっつり三連揉みで捕える感じで動くぜ!! ちなみにスキルは 特性:トリプルファング、カウンターラウンジ 汎用:ラッキースケベ、嗅覚 アクション:フェザーステップ、疾風足、反応強化3、無拍子2 でいくつもりだぜ!!

  14. ギャメル

    あわわっ、イーヤの行動を読み違えてたのに気づいた! ごめんよ! 倉庫ってことは地上だよな。 それじゃオレは地下側にいく。潜伏はしないで普通の見張りらしく姿を見せるつもりだ。 牢屋には鍵がかかってるけど、偽物の鍵でも誰かのベルトにでも下げとくか?

  15. No.20

    偽鍵使えるなら俺は持ちたいなと。 俺に殺到してもらえると殺界で捕まえやすくなるし。偏見だけどハニトラ系なら取り巻きに奪わせにくると思うからなぁ。 天眼外して彫金か鍛治とかにすればなくても用意できて、相対した時に天眼取られることなくなって、かつ模倣の意味ないよねこれならと

  16. 中村・右衛門佐・勘次郎

    さてさて、役割分担も決まってきたか? あっしも入り口側に潜んで逃げ道を塞ぐ感じで動くつもりだ。 それと、詫びが一つ 纏めで書いた敵スキルの効果なンだが、後ろの奴が勘違いして真逆の事を書いていたな…

  17. ギャメル

    勘次郎はどんまーい。まとめてくれてありがとうな! サイラスが偽鍵用意して持ってくれんなら助かる! 頼んだぜ。 事前準備は階段にちょっぴり香水塗っておくのと、超嗅覚のコピー対策にアダム人形に本物アダムの服を着せとく。 地下用にランタン持ってく。道具枠がいっぱいになっちまって、捕縛用のロープとか持てなかった。 戦闘中はBS対応と支援魔法、負傷者の治療をするぜ。 光縛封はミモザが逃げだしそうな時の足止めに使う予定。あくまでも咄嗟の手段だ。使わずに済むんならそっちの方がいいと思う!

  18. ザザ=ステルヴィナ

    前回の発言から間が空いてしまってゴメンなさいね。 私は一階で取り巻き達の対応に回るわ。 連中を全て無力化してから、地下へと向かうつもりよ。 ミモザの無力化に成功した後は光縛呪で拘束する予定。 >スキル 特性:フレイムゲイズ、アーケインテンペスト改 汎用:暗視、天眼 アクション:魔弾、メテオライト2、エーテルバリア、光縛呪 このセッティングで行くわ。

  19. ナハティガル=ラー

    >スキル 魔乱印と衝撃刃3を変更したので報告を。 特性:捜波・改、トリプルファング 汎用:暗視、天眼 アクション:フェザーステップ、疾風足、対魔感、衝撃刃3 >取り巻き 一階の取り巻きを全て掃討後は、俺も地下に向かう予定だ。 不意討ちでミモザの脚部を狙った後、地下の取り巻きを優先的に撃破する。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0