【CP】FORTRAN~老兵たちの一夜城
韮瀬隈則
コメント 15
シナリオID:861
オープニング
「あの姫様の息子だ。こんなことで斃れる運命ではなかろう」
しわがれた声の、しかし逞しい腕を持つ老兵が呟く。
「無論だとも。ああ、無論だとも。だから儂らがこうやって、廃れて久しい道の先に築きにいくのだろうがよ。一夜城を!」
もう少し張りのある、やはり老兵の声が応える。
荷馬車が荒れた路面に虐められ、ぎい、と不満の声を上げた。
帝国南部の都市ヴィントに続く旧街道。
帝国健在の頃よりすでに廃れかけていた、そのほとんどを山路が占める悪道である。
とはいえ――
問題だらけの難民キャンプを抱えた亡国の皇子、レイウェストの目指す帝国帰還には藁すじ一本ほどの細道とて無駄にはできぬ。ましてや、街道の先にヴィント奪還に不可欠な、過去に吸血鬼群に陥落した砦をのぞむとあれば。
ぎい。
荷馬車がまた悲鳴を上げる。
荷馬車が連なり、老兵たちが従順な馬を牽く。
「見えたぞ。思っていたより上等だ」
「そうだ。上等だ。良い砦じゃあないか。いや、良い城じゃあないか」
白髪頭が見上げる先に、焼けて見捨てられた小さな砦の物見櫓が煤くれた姿を森の青葉からのぞかせていた。
●
難民キャンプのギルド出張所で、受付嬢が片眉を歪めて冒険者の顔を覗き込んだのが昨晩のことだ。
「本当に受けてもらえるの? いえ、難易度や報酬の話じゃなくって……」
声をぐっと顰める。大っぴらには言えぬ、しかし重要な懸念。
「レ……元の依頼人の容態次第で運用の計画が無駄になるのよ? 誤解しないで。最悪云々じゃなくて戦略上の話で、ね?」
依頼人と受付嬢はいうが、この依頼、本来の依頼人が出したわけではない。
「姉ェちゃん、今の依頼人は儂たちだ。この作戦はなにがあっても成功させなくっちゃなんねェ、帝国帰還の一歩だ。皇子様が起きた時、儂たちが動揺して募兵の手を止めていたら、儂らは姫様に申し訳がたたんのよ」
白髪頭を掻き掻き、既に退役久しいだろう老兵が割って入った。
「心配すンな。俺たちは元工兵でな、吸血鬼と死人に焼き荒らされた砦程度なら、朝飯前に直しちまうのさ。なンせ皇子殿下の御母堂お輿入れのおり、直前の災害で崩れた街道を一晩で……」
もう一人、赤銅色に焼けた禿頭の老兵が受付嬢の説得にあたり、仲間の老人たちに「あの昔話は長くてくどいぞ」と囃される。
この老人たち。
まさに今、頓挫しかけている募兵に関連し、南部奪還の橋頭保としてヴィントへと臨む旧街道を押さえんと、数か月前に焼け落ち放置された小規模な砦を確保する作戦を強行する元帝国工兵。――ただし、その退役者である。
問題の砦は、鄙びた旧街道と谷状になった山肌の隙間にへばり付くように建造された、関所兼用の駐屯兵詰め所だ。
規模はおよそ奥行30m×幅70mの敷地。
石と漆喰と土塁で固められ腰高ほど嵩上げされた外構の山肌に密着し、奥行20m×幅50m程の建造物が建つ。いや、建っていた、が正しいだろう。
4m幅の中央入口入ってすぐの平屋だった広間は、その屋根のほとんどを失っている。石造りの柱は健在だが壁は一部が崩れ、窓の数を増やしているかのようだ。広さは奥行約20m×幅約30m。
建物に向かって右。3階建ての物見櫓は一見すれば健在。しかし、石と漆喰造りの外壁は無事でも、内装の一部、木造部分は焼け落ちて吹き抜け状となっているだろう。つまり、銃眼のみの開口部しかないこの物見櫓のアクセスは、建物内部から通じる1階部分の2m幅ドアからだけとなる。広さは約10m四方。
建物に向かって左が、この砦の居室兼倉庫である。地下倉庫への階段は焼け落ち、さらに排水設備の損壊で倉庫にはガラクタと汚水が腰のあたりまで溜まっている。1階の居住部分は堅牢で、木造の間仕切りが焼け崩れたあとも寝泊りに耐えるだろうと、元工兵の老人たちは作業拠点としてこの部分を見込んでいた。アクセスは鉄格子付きの明かり取り数か所と、鉄製の勝手口1箇所、内部の2m幅のドア2箇所。奥行約20m×幅約10m。
上記の見取り図を拡げて、受付嬢が念を押す。
「と、ここまでが昨年までの調査報告よ」
ばさり、と見取り図の上に置かれたここ最近の討伐依頼傾向。
「春先に討伐されたと思われたコボルトが、また息を吹き返してきたみたい。旧街道沿いに魔法能力持ちの個体目撃報告もある。この砦も巣になっていると見ていいの。だから、冒険者を護衛につける……ってわけ」
ふぅ。と溜息。
ギルド出張所前に停められた荷馬車は5台。
積荷は驚くほど簡素だ。組み立て式の工作機械と護身用を兼ねた工具、申し訳程度の弓矢。土嚢袋が大量に積まれているのは、一夜城として急ぎ形を作る必要があるからだろう。それ以外の建材は現地調達を基本とし、不足分は本格運用時に搬入するのだ。
●
出発前。退役して数年以上になるだろう20名の老兵たちは、護衛の冒険者相手に血管の浮く腕で力こぶをつくり若さ自慢に精を出している。
(年寄りの冷や水であっても、皇子生還を信じて築かなければいけない砦はあるのだわ……)
凍結された皇子名義の依頼を引き継ぐ老兵の忠義、引き受ける冒険者の漢気。
そして受付嬢の不安は的中する。
直近の討伐失敗例として受付嬢が提示した報告書。
数日前にエルフの集落を無残に焼いたコボルト群――回復能力持ちの特異個体1匹に指揮された10余匹の鉈持ちコボルトが村人を追い込む先に、もう1匹の特異個体の攻撃魔法が放たれた陰惨な事件。
その一群こそが、老人たちが築く一夜城となる砦を根城としていたのだから……。
解説
マスターより
リプレイ
「あぁ! これが20数年前にヴァイセントラフ砦を改修した腕ですか!」
イオ・ラヴバロックはご満悦の体で老兵の腕にぶらさがっている。
へちへちと音のしない拍手を贈るのはナハシュ。実際……老兵たちの体躯は同年代の一般人を軽く上回る。
「その前は国境の橋に、帝都の城壁と監獄の大補修たぁ……いや大したもんだ」
軍事の合間にソレです。と、ナハシュの感嘆にイオは付け加え素の細目を更に細める。
砦の手前、倒木で見晴らしの悪くなった街道脇の車停め。荷馬車へ森林迷彩を兼ねた補修布をかけ、老兵たちとイオとナハシュは斥候部隊の報告を待っている。
老兵たちの手には弓、背には矢筒に腰には斧。聞いた武勇伝からさして老化していない力と技量だ。例え砦に巣食うと予測される害獣が未解決報告書にあったコボルトの一団だとて、魔獣うろつく荒野の防衛戦を思えば苦でもあるまい。
「小動物の様子から分析するに砦と街道に近付かなければ怖くない。つまりおそらく全個体が砦敷地内と砦前の街道に居ると推測されますが」
ふむ。と思案するイオに、アタリみたいだぜとナハシュが呟く。
視線の向こう。斥候部隊の後詰め役アスティン・ヴェルラインが、身を屈めた小走りで戻ってくる。童顔が真剣味あふれて別人のようだ。
「彼の様子なら例の特異個体入りだ。斥候頼んで正解だったぜ」
●
数分前のことだ――。
「おーい。ヤバくなったら私呼べよ? 奇襲が吶喊に急変したって大丈夫だ。即応スタンバってるからなー」
十数m後方。砦を臨む街道脇に山と積まれた瓦礫の影から口パクで斥候部隊である彼、セリオス・オーガストを案じるゴルバルティアに、「大丈夫」と目くばせをして、セリオスは山肌を伝い建造物屋根へ張り付いてサーマルアイを働かせる。事前に超視覚と砦の見取り図で見当をつけていたとはいえ、彼女が後詰してくれるのは心強い。
「居室兼倉庫に3体、中央広間に6体、物見櫓に1体。残りは4体が、目視の通りに敷地前の空き地で警備の真似事か……」
小声と動作で、セリオスは同行するエリザ・A・ミシャールに探索結果を伝える。
シューター同士、浸透と偵察は連携まで含めてお手の物だ。
「ディディおかえり。セスタも隙を見てお戻り」
エリザは、ゴルバルティアと共に後詰で控えるアスティンから託された彼の鼬ディディを肩に乗せ、自身の栗鼠も呼び戻す。リンク結果と見取り図を合わせた分析ならびに戦略調整はアスティンがこなすだろう。
「建物は焼失報告を受けたまま改修されていない。……少なくとも大規模には。巣にされて日が短いせいもあるだろうが、逆に罠に転用可能な破損もそのままというわけだ。物見櫓が櫓でなくて幸いだが、その吹き抜けに陣取るのは特異個体のどちらかだ」
思案顔になって「セスタ、虫取り」と呟けば、カシャリと屋内で物が倒れる音と犬の唸り声。何事かと瞠目するセリオスにエリザは片目をパチリとやってみせ、灯り取りの穴から逃げてきた栗鼠をよしよしと迎えて撫でる。
「知能レベルが高いのが居室兼倉庫に1体。装備もヒーラーだ。栗鼠が虫を狩ってるフリをさせたが2回目は無理な警戒度かな」
「……威力偵察とは無茶をする」
「ウチのは強いんだ。それよりアンタの反応で彼女の方が心配そうだが?」
溜息をつくセリオスにエリザが微笑まし気に笑う。
ハンドサインがてらゴルバルティアとアスティンを見やれば、あわあわ百面相の婚約者が睨んでいた。
――そして今。
目立たぬよう大回りをして偵察から帰った鼬を抱き上げ、アスティンは見取り図に敵布陣を描き込む。
「居室兼倉庫にヒーラー、櫓にキャスター……下手に踏み込めない配置かな?」
「浸透したふたり、配置場所居残りで大丈夫かな? 万一、不測の事態には、敵に連携取られる前に広場へ吶喊して陽動分断する。私の身に代えても! ……だっ、だから早めに作戦開始をだな」
砦と見取り図を交互に、ゴルバルティアが視線を往復させている。
「うん。でも大丈夫。先制をとれるプランは出来た。お爺さん達に弾幕頼めば、ゴブリンの散開も防げる。探ってもらった敵の反応だと、防衛線構築前に混乱させれば膠着で詰むこともなさそうだよ」
じゃ、すぐ展開するから。と、身を屈めたままアスティンは走る。
正直辛い姿勢だが関係なかった。
●
「ヒッ! コボルトだぁっ」
街道に間抜けな悲鳴に乱れた足音が続き、複数のコボルトの唸り声が追う。
逃げるのは丸腰の男だ。楽に仕留めて荷物を奪う機会を、見張り役の4匹が逃すはずがなかった。
敷地から街道へまろび出て瓦礫の詰みあがる一角に差し掛かれば、ひゅんっ! と小さな風切り音がひとつ。ひとつ。またひとつ。
「足止め以上の精度じゃないですか! これは心強い!」
老兵たちの射撃に感嘆の声をあげるアスティンに鼻を鳴らし老兵が応える。
「おびき出されて来るとわかってる相手だからの!」
照れと自負と、本職ではない限界を知る者の言葉だ。なるほど、ならばアスティンとイオが老兵たちに頼む仕事は、まさに適材適所となるだろう。
「逃がすかっ! 大人しく間引かれてろっての」
アスティンの鋭射を喰らって絶命したコボルトが盾になったのだろう。老兵たちの矢ぶすまから逃れた2匹をイオと挟撃にして、ナハシュが速攻で血祭りにあげる。
「こっちは首を一撃に、こちらは両脚の腱が一刀両断。見事なものですナハシュさん」
「イオのへっぴり腰からの容赦ない反転攻勢も、なかなかのもんだったぜ」
ははは。
明るく不敵に。
見張り役のコボルト4匹が屠られる直前。砦敷地内に上がる蜂起の声。そこに――。
万が一にも敵を逃し、失敗してはならぬ一夜城構築。そこに貴重な老兵を戦力投入するのだ。
「ははっ! ははは!」
だからイオもナハシュも、アスティンまでも。太い腕を掲げる老人たちと共に、笑って戦場に赴く。彼らの信じる皇子を信じて。
●
蜂起の物音があがる数十秒前――。
「ヒッ!」
イオの裏返った悲鳴が合図だった。
どたどたと気の毒な獲物を追って、見張り役が去った砦前に立つ影ひとつ。
――突如爆音を立て、砦前の空き地と屋内を隔てる唯一のアクセス、砦中央広間の扉が吹き飛んだのが、蜂起の第一波。
慌て即応する通常個体のコボルト兵が、飛び散った扉の破片が降りしきる向こうに見た相手は、豪快に笑うハーフビーストの女がひとり。
「はははっ! 極悪非道の輩のねぐらには勿体ない。強制退去だ強制退去!」
ビンビンと。山路に響く胴間声。
じり……と通常個体のコボルトがゴルバルティアの実力を推し量るように広間入口に寄り、異常を告げに行ったのだろう個体の1匹が、居室兼倉庫からヒーラーとその護衛2匹から不機嫌な罵声を喰らっている。
「お前らなんかなぁ、背中で充分だ背中で」
つかつかと大股に広間入口へ歩き誘うように背を向けるゴルバルティアに、侮辱を察したコボルト兵2匹が彼女に負けじと雄叫びをあげ、身の丈に合わぬ業物の鉈を振りかざして飛びかかったのが、蜂起の第二波となった。
背中を向けた女が一人。
中央広間と外界をつなぐ扉を粉砕したのもこの女だろう。
その思い込みが愚かなコボルトの先兵2匹を地獄に送る。
「汚い手で妻に触れないで貰おうか」
居室屋根から入口へ。セリオスの感情の一切を省いた声音を載せ、ダマスカス鋼の鏃がゴルバルティアに斬りかかるコボルト1匹の脳天を貫いた。
「ちょ、妻て……妻って!」
ぅわぁ! 20mは離れてるのに聞こえたよ。まだ婚約者なのに!
もう1匹の鉈を受け、ゴルバルティアの盾が軋むのを邪魔をするなとばかりに蹴り散らかす。夫、いや婚約者の盾になるのは自分だから。だから広間に突入する。だから叫ぶ。
「遠慮せずにかかってこいやぁっ!」
「釣れてくれて嬉しいぞ、ヒーラー君」
中央広間、外界への扉を吹き飛ばした衝撃が、まさか背後頭上のエリザからとは思うまい。
耳障りな鳴声をあげて怒号を放つ、居室兼倉庫から護衛とともに這い出た特殊個体。分不相応な業物の祭刀は略奪品か? ……それとも?
首魁背後を衝けるこの期は逃さず。敵を蝕むエーテルを放ち、更に放つ。
「そろそろ増援が到着予定でね、据え膳は用意しておきたいんだ」
先程までヒーラーが籠っていた地下倉庫のある居室、そんな見え透いた地雷なぞエリザは仲間に突入させはしない。
エリザの作ったヒーラーの隙をセリオスは逃すはずもなく。
ゴルバルティアの作る混乱をセリオスが活用せぬはずもなく。
「汚いのは口から吐く悲鳴もか」
放つ破壊力と速度の暴力がヒーラー自身への回復を中断させ、よろけるヒーラーが攻撃者を振り返るその目前に、壊れた外壁伝いに広間に降り立つ。
『%死@;;償ェ+奴g!!』
片言混じりの呪詛と護衛コボルト2匹の吶喊なぞ、むしろ好機――。
「偉そうなの! 余所見してんじゃねぇ!」
「そう。攻撃にかまけると指揮と回復がお留守になるぞ」
衝撃波たるゴルバルティアの吶喊もエリザの護衛ごと焼き捨てる巨大な炎弾も、セリオスの続く二連射への連携だ。
『~殺s……魔*攻g&%殲+YO!』
自身への回復を意地汚く続け、這いつくばって呪詛にならぬ呪詛を吐くヒーラーから、セリオス、ゴルバルティア、広間に降りたエリザは、残るコボルト兵と広間の向こう……物見櫓入口に立つもう一体の特殊個体を見遣る。
「コンビ打ちの相手に聞こえてっかなぁ? その戯言」
飄々としたナハシュの声が、止まぬ攻撃の騒音のなかのんきに響いた。
●
老兵を率いてアスティンが走る。
砦前の街道から、砦門前。そして砦の敷地へ。
「最終決戦は中央広間です。完全な閉所は分が悪く、徒に建造物を棄損出来ませんしね。なにより……弓での奇襲を兼ねた支援射撃、お見事でしたから」
彼らは元工兵なのだ。損壊した砦の弱点を知らぬハズもない。安全第一に嫌がらせを頼めば、最適解の動きをするはずだ。
「この子も預けますね」
戦況を見ればゴルバルティアが啖呵と共に中央広間に突入していく。
「先輩がた、どうか遮蔽物の陰からこの若輩者をお見守りください」
イオが老兵へ帝国式の敬礼をしてから、中央広間への入口を目指す。
「その遮蔽の陰に攻撃魔法野郎が居るんじゃねぇかよ!」
帝国式敬礼を見よう見まねでやってから、ナハシュも連携相手のイオの後を追う。
ぺこり。
「特殊個体と雑魚との分断をお願いします」
普通に老兵たちへ一礼したアスティンも続いて走る。
(ヒーラーは先遣の3人が潰してくれる筈だけど、地下倉庫の罠以外にも厄介事があるとはね。物見櫓の広間への開口部から、固定砲台射程に追い込まれる可能性高いかな?)
そして斥候兼ねる先遣3名に、第一の罠たる居室兼倉庫から引きずりだされたヒーラーら3匹が翻弄される頃――。
「右往左往して邪魔してんじゃねぇぞ。この犬ッコロ共がっ!」
「右往左往して混乱してくれてるぶんには、まぁ歓迎じゃあるんですけどね」
突入向かって左手の、酷い罵声はヒーラーのものだろう。
その声を気にしながらも新たな闖入者に吠え、鉈を振り上げ襲い掛かる通常コボルト兵4匹……。
鬱陶しい! と、ナハシュは一気に物見櫓入口にアクセス。挑発的な身振りは、得体のしれぬキャスターの本性を引きずり出すためだろう。半壊した物見櫓の扉からナハシュを睨めつける二つの光点。
「指揮系統が巧く働いてない状況は好機なんだけど、邪魔だよねやはり」
じり……とコボルト兵がナハシュ、少し離れたイオとアスティンを、物見櫓扉前に追い込むように鉈を振り回しては一撃離脱を目論んでゆく。
『$$追xた*』
『#応*!』
先遣隊のたてる攻撃の爆音に途切れる罵声に、けれども成功体験からの戦術を思い出したのか。不完全で見え見えのひとつ覚え。
「……馬鹿なんですかね?」
「馬鹿なんですよ」
ナハシュ、イオ、アスティンを射程へ収めんと祭刀を構えて踏み出した特殊個体キャスターが、前進動作姿勢のままつんのめって広間に転がり出る。
その背後から炸裂する爆炎。
固定砲台の砲口を見越して後ずさった兵4匹の、移動位置を見越して放たれた、広間入口からの矢衾と無数の光破片による十字砲火。アスティンの完璧な殲滅戦術。
浅知恵で勝利を確信した4匹には、無知蒙昧を晒す未来しか残らなかった。
「叩きだすとき、爆炎一発だけならOKって、先輩方に許可貰った甲斐があったというものです」
イオの紳士的な笑みの眼は笑っていない。
目の前には切り落とされた腕に唖然とするキャスターと転がる祭刀。ナハシュの早業。流石、彼も良い仕事をする、内心で。
「物見櫓に、だよな? 広間じゃ好き放題の無制限だよな?」
慌てて残る腕で祭刀拾って詠唱かます根性は少し評価してやって良いなと、特異個体からの水流を躱し、ナハシュは次弾はもう撃たせぬと返す刀でキャスターの眼を薙ぐ。
……想像より脆い!
「人の嫌がることは進んでしましょう、という帝国軍紀を思い出しますね」
「嘘だろその軍紀」
ナハシュの呆れ声に斬撃の音が重なった。
●
キャスターもコボルト兵らも、もうヒーラーの指揮を聞くことはない。
耳障りな呻きに先遣3名によるトドメがさされる頃、老兵たちが静寂の広間にやってくる。
「お前さん達容赦がないな」
「先輩。始末ついでに死体処理もお任せください」
「……言い方。や、俺も死体引き摺ってるけどさ」
老兵たちに軽口をいうイオとナハシュを他所に、アスティンは考え込む。
(彼らも気付いてる)
「アスティンもか……」
先遣の3人、エリザがやはりと声をかける。
「逐次索敵をしていて感じた違和感、すぐ消えたのは錯覚ではなかったな」
私も手伝う! と死体を放るゴルバルティアも、セリオスへの目くばせ。
「コボルトの武器提供元、だと思う」
――老兵たちの一夜城となる砦は、何者かの監視下に置かれたのかもしれなかった。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準6 / 4〜6人
2021年05月12日 09時39分14秒 公開
相談掲示板
・・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえず復旧予定ならあまり施設を壊さないように戦う必要はありそうだな。 あとは通常コボルトが指示待ち傾向があるとあるから指揮官のヒーラーを先に倒せれば相手を烏合の衆にできそうだな
キャスターのイオ・ラヴバロックと申します、よろしくお願いします。 私も、ヒーラーを先に叩くという方針に同感です。 なんと幸いにも、シューターが三人もいらっしゃる。ヒーラーのコボルトも、キャスターも後方と予想していますから、とても有効そうです。 とはいえ、砦の場所によっては射線を通しづらいところもあるかもしれません。そのあたりはまた、少々工夫が必要でしょうか。 そして手分けして調査するか、固まって行動するか、そこも予め決めておいたほうがよさそうですね。 私は急ぎでもないので、全員でカバーできる距離感で行動するのがいいのではと考えています。 それと、老兵の方々にはどう動いてもらいましょう? 彼らは貴重な人力ですから、弓や投擲で通常個体を攻撃してもらうのがいいのではと考えています。 私がアーケインテンペストで動きを阻害すれば、授恵者に及ばない力であっても攻撃を確実に当てにいけるとも思いますからね。 行動の際も、我々が先行して敵を探すのがよろしいのではないかと。
シューターのアスティン。 よろしく。 んー…。初期開始時点がちょっと不明瞭だけど。 これ、砦近くで念のために斥候を出す、ってすれば うまくやれば敵にこっちだけ気付いて向こうに気付かれない状況 を作れないかな…? それこそシューターが複数にシーフの人もいるから、探知系の アビリティを駆使すれば…。 砦の内部構造の開示もあるし、さすがに潜入しての戦闘はちょっときついかもだけど 前衛系の敵をつり出して、得意個体に少数で奇襲をかけて落としにかかるとか。
シーフのナハシュダ。よろしく。 とりあえず砦をあんま壊さねえようにはしたいってのは同意だな。 開始位置もそうだが、俺らがそもそも「コボルトが巣食っている」という情報を知らないかもしれねえ可能性を思うと、同じく斥候は出した方が良い気がすんな。ギルドの直前の報告書で連中の存在だけは知ってんなら警戒するのは当然だし、ある程度つりだしたりもできるんじゃねえの? とはいえ砦内部は相当見晴らしが良さそうだし、気づかれねえようやるならシューターのペットが無難じゃねえかとも思う。隠蔽値を極限まで下げて俺が行ってもいい。 あとは指揮官であるヒーラーとその指示待ち共ってぇことは、向うがコッチを数だけの烏合の衆だと思ってくれりゃあかなり舐めたプレイも見込めるかもしれねえな。老兵をその辺で使うのもありな気はするぜ。 普通に援護射撃してもらうでも全然いいとも思うが、例えば1方向から防衛柵作って延々と矢を射掛けた場合、そっちに気ぃ取られたりしてくんねえかな。もしくは俺らが戦ってる時に側面から撃ちこんでくれてもいい。そレだけで結構な不意打ちになるのと、指揮が乱れりゃ特異個体を狙うのも少しは楽になるんじゃねえかとは思うがどーだろな。
エリザだ。よろしく頼むよ ナハシュの懸念だが、 >この砦も巣になっていると見ていい とあるし、斥候を出すのは自然な考えとしていいんじゃないか? 敵の存在が疑わしいからこそ、アタシら授恵者が雇われているんだろうしね 特に時間制限も無いようだし、事前の調査や陽動もアリだと思う >ヒーラーとキャスターの連携 これをどう崩すかが鍵だろうね テレパスやその他の方法での意思疎通ぐらいはしてくるかもしれない まあなんにしても……だ。排除、が目的である以上は一匹も逃せない 出来ることは全部やるとしよう >シューター3人 これは結構偏ったね…… ペットでの索敵強化や射程の利あたりは活用したいが、敵さんが引き籠ってくるとなるとちょっと難しいか。その意味でもやっぱり最初の攻め方が重要になりそうだ
遅くなったぜ ウォーリアのゴルバルティアだ、よろしくな ヒーラーとキャスターの連携か なら【チャージング】からの【ドラゴンチャリオッツ】でヒーラーをぶっ飛ばして引き剥がせば連携を乱せるしヒーラー狙いやすくなるんじゃねーかとな ちなみに陽動は得意だぜ!()
お、書いてあったな!じゃあ普通に偵察くらいするのが自然か。 なら特にその辺は懸念もねえ。ありがとさん。 >ヒーラーとキャスターの連携 この二人が固まって動いていた場合が一番面倒かもしれねえな。程よく回復範囲内にはいるとは思うんだが。こいつらの連携による被害を徹底的に阻害すんなら、俺の方でキャスターを請け負ってもいいとは思っている。 陽動にしろ乱戦にしろ隠れて一気にキャスターを狙い此方の排除に行動を割かせりゃ、早々攻撃を飛ばせはしねえんじゃねえかとは。ただヒーラーとダブルで来られるとちょいときつそうなんでそこが懸念だな。チャリオットやらで吹っ飛ばして来てくれんなら助かるが。
>シューター勢 ちょいと相談なんだが。 偵察なら小回りの利くリス、敵の分断が出来るのはZOCが使えるゴリラになろうかとは思う。 とはいえ、ペットの相棒をどう活用するかや、そもそもペットを連れていくかは人それぞれだ。 偵察をどうするか、がひとつ課題になりそうだけれどアンタらの希望はどう考えてる? アタシは――リスもゴリラもできればどっちも連れていきたいぐらいだけど、どちらでも構わない。ペット無しの選択肢はスキル的になさそう、ぐらいか。 >偵察後 かなり戦域が広いな。 物見櫓や土塁、罠なんかの防御施設をどう突破するか。内部侵入後にどこでの戦闘へ誘導するか。 これくらいは全体方針で決めておいた方が、中でバラバラになる危険性は減りそうだねぇ。
現状で確定している流れだけまとめてみるよ。 間違ってたらごめん 1.事前情報から偵察の必要性がある、ということで砦の近く、 コボルトたちの探知範囲外だろう位置から、斥候を出す。 (シューターとシーフが担当?) 2.通常個体と特異個体はできるだけ分断、特異個体を早急につぶす。 決めるべきこと 1.斥候隊の人数と割り振り(シューターとシーフ総出で行く?・テレパスなどの汎用スキル構成と分担は?) 2.戦場をどこにするか。(広間、建物外の空き地などが候補?) 3・老兵たちのポジション(敵を引き付ける防御陣地戦か、俺たちが敵を引っ張ってきて側面から射撃で奇襲してもらうのか?) こんな感じかな? <ペット 栗鼠か大鼬は偵察で有効そうだね。確かに。 ん-。栗鼠は俺が連れてってもいいけど。 <物櫓 広間にも屋根がないみたいだし、 物見櫓を抑えられれば高所から射撃し放題…なのかな? 逆にキャスターに櫓の上に行かれると面倒かも…。
ん、まとめ疲れ様だ とりあえず時間もあまりないことだし、決めておきたいところだな 斥候はとりあえず俺はサーマルアイと超視覚で建物の外から調べるつもりだ。どこにいるかを知らせるので中を調べられるのがいれば何がいるか調べられるだろうしな もし離れた場所にいる個体があれば先に潰して数を減らすのもありだとは思う。 老兵たちの支援射撃をしてもらうならなるべく広い中央広間だろうか。通常個体のほうを攻撃してもらって弾幕を張って足止めしてほしいところだが。その間に俺たちでヒーラーをつぶしたいところだな
見合っていてもしょうがないな。 アスティンのまとめに沿って進めよう。 アタシはエーテルリンク2のリスと、透視、暗視を持っていこう。 1.斥候隊の人数と割り振り セリオス:サーマルアイ・超視覚 エリザ:透視・暗視 2.戦場をどこにするか。(広間、建物外の空き地などが候補?) 建物内部。広間に2票(セリオス・エリザ) 3・老兵たちのポジション(敵を引き付ける防御陣地戦か、俺たちが敵を引っ張ってきて側面から射撃で奇襲してもらうのか?) 支援射撃と戦域からの敵離脱防止でいいんじゃないか? どちらかと言えば、積極的に攻勢を期待するんじゃなくて守りながら邪魔になってもらえればいいと思う。 >戦闘時の動き 限界まで付与を高めてハーツベインの後は、魔法攻撃一辺倒になると思う どちらかと言えば通常個体を爆炎でまとめて倒していく動きになるだろうか…… 耐久面は自衛がやっと、というぐらいだね 迷惑はかけないだろうが、他をカバーするほどの余裕はなさそうだ
なら私もそれに沿って 1.斥候隊の人数と割り振り 私はむしろ逆の陽動隊として、だな 2.戦場をどこにするか。(広間、建物外の空き地などが候補?) 広間なら斥候隊が準備でき次第咆哮(【サウンドボマー】)で敵を呼び寄せるつもりだ 3・老兵たちのポジション(敵を引き付ける防御陣地戦か、俺たちが敵を引っ張ってきて側面から射撃で奇襲してもらうのか?) まぁ、うん 無理に前衛する必要ないと思うし、射撃で奇襲してもらうのでいいんじゃないか? 戦闘時の動き
あ、まだ途中なのに発言ボタン押しちゃった…ま、いっか() とりあえず私は広場に敵を呼び寄せて敵の攻撃を受けつつ、【ドラゴンチャリオッツ】でヒーラーをぶっ飛ばして連携を崩す予定だ キャスターがちと厄介だがそれ以外はなんとかできそうだぜ
方針は、今提示されているそちらで異存ありません。 先に斥候、その後に砦の攻略、ですね。まあ既にボロではありますが。 戦闘場所に関しては、おびき寄せるのが可能なら空き地でも良さそうですが、総員が来てくれるかは微妙な気もします。 最初に外で見張りや巡回を可能なら呼び寄せて数を減らし、その後広間で残りを迎撃……というのはいかがでしょう? また、砦に入る際は私も超嗅覚で警戒して進む予定です。匂いなので遠くからの事前調査には向かないでしょうが、敵の接近の察知や居場所の発見にはある程度の効果も出るでしょう。 敵キャスターは一応、私がマジックディソナンスで魔法攻撃力の低下を狙います。 通常個体が現れたらアーケインテンペストで動きを遅らせ、特異個体を狙う時間を稼ぎましょう。こちらでも、魔矢などで優先して攻撃してみます。 ヒーラーとキャスターが同時にいる場合は……私は優先してヒーラーの行動を妨害してみます。その間に、キャスターへ皆さんの火力を集中させ沈めていただくというのが良いかと思いますが、どうでしょう?
なんか強引に流れを作ったみたいになってごめん。 今で斥候は2名。あと一人ぐらいかな?あまり多くても見つかるだろうし シーフのナハシュが出るなら俺は 斥候に出ずに警戒をする感じの方がいいかな。 誰かテレバスを持ち込むなら受信側としてテレパスを持っておくよ。 とりあえず今の流れで行くと 見張りや巡回は外で削り、広間を基本戦闘地域とする。 老兵たちには広間を射程に入れるように弓で待機。 奇襲と支援射撃。特に逃げそうなやつを狙って足止めをしてもらう。 って感じかな。