【澱道】暗濁の向こう
崎田航輝
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シナリオID:771
オープニング
俺には出来なかった事をやってくれたのさ、と。
ロルフはその墓石に語りかけていた。
イーヴォにあるロルフの家、そのほど近くにあるカミルの墓だ。
一見では墓とも言えないような、盛り土と石による急造のもの。いつかきちんとした墓を建ててやると、ロルフは言っていた。
「兄貴は華美なのは嫌うだろうけどな」
その我儘だけは聞いてもらうさ、と。
立ち上がったロルフは冒険者達へ振り返る。
そうして改めて頭を下げた。
「あんた達のおかげで兄貴も少しは浮かばれる」
感謝させてくれ、と。
心の中の全てが洗い流された訳ではないだろう。それでもロルフは思いの一端を遂げられたような、静かな表情をしていた。
ただ、それでもまだ話すべき事があるというように、家へ案内する。
「入ってくれるか」
●報告
「まず、ギーブルの方は問題なしだ」
部屋の中へ招いた冒険者達へロルフは言った。
先日行われた奴隷市への潜入と、ギーブルファミリー幹部ヘルムートへの襲撃。それは周到に完遂され、こちらの足取りは追われなかった。
「逆にギーブルは幹部が減って、闇市での印象も悪くなったんだろう。大きな“へま”をした扱いで弱体化しつつある」
収入源が減り、他所に付け入る隙を与えた。元が規模の大きくない組だからでもあろう、にわかに脅威が減りつつあるという。
「市場から助けたガキ達は、全員無事だ」
今は別件でギルドに依頼して、一時的に別の街に置いてもらえないか画策しているという。
「勿論、うちに置く事も考えている。だがその為に、やらなくちゃならねえ事があるのさ」
ロルフは書類の束を机に置いた。
「ヘルムートの持ち物の一つだ」
そこに書かれているのは地理、人、動き、体制。
「ヘルムートが言っていた奴隷商人――ルゴール商会の情報さ」
ルゴール商会。
表向きには当たり障りのない商人の集まりだが――その裏で人身売買を行う組織。
マフィアの中でも一部しかその裏の姿を知らぬような存在らしく……目立った拠点を置かず、町から町へ、あるいは国から国へ流動的に動いては各地で“仕事”をこなしているようだ。
「ヘルムートはこの商会から奴隷商売の仕方を教わっていた。ルゴールにとっても、ギーブルの幹部と繋がるのは利益だったのかもな」
ただ、それはルゴールにとってのミスだったと言えるだろう。
ヘルムートは野心の塊だった。
自分以外の全てが道具でしかなく――故に使えると判断したものについては徹底的に調べて利用価値を判断していたようだ。
「いつかは出し抜くつもりでもあったのかもな。内部にまで取り入って、余程熱心に調べたんだろう――商会の構成、近隣での地盤、ここに全部書いてある」
それで判った事は、とロルフは声を静めた。
「ルゴールが悪人の集まりだって事だ。金を動かし、儲けて、次の仕事に繋げる――人の身が、文字通りの商売道具って訳だ」
身寄りのない子供を攫うだけではない。時に力のない人々や小さな村を襲い――“商材”を力尽くで調達しているのだ。
そして過去、ゴールディの片隅でもとある田舎を襲っていたという。
「それが、俺と兄貴の生まれ故郷さ」
●因果
自分がどう生まれ、赤子として過ごしたのかロルフは知らない。
「兄貴も物心付く前の子供で、ろくに記憶は無かった筈だ。だが、そこで俺達が暮らしていたのは事実らしいとは前に言っていた」
元々名もない集落で、今はもう形跡も消え去って隣町のスラムに取り込まれる状態となっているはずだ。
ロルフの記憶があるのは、それ以降の暮らし。
だから明確なことは言えないが――
「集落の消えた時期が、ルゴールがその辺りを襲った時期と一致している」
元々治安の悪い場所でもあった。それに乗じて、ルゴールが奴隷を調達しようと集落を潰したのだとしたら――
「……ルゴール商会は故郷の仇でもある」
自分やカミルが助かった理由は判らない。
集落の人間に助けられたのかも知れないし、兄弟とも幼かったから、奴隷にはならないと捨て置かれただけかも知れない。
「別段、故郷に思い入れなんてないさ」
だが兄と自分を汚泥にまみれた日々に追いやった、その原因がルゴールにあるのなら。
「落とし前くらいは、つけさせたい」
何より、とロルフは窓から墓の方向を見やる。
「奴隷商人なんてものを、兄貴なら野放しにしないからな。ガキ達を安心させる為にも――ルゴールは見過ごせない」
ルゴールは最近強気だったようで、王国でも人攫いや奴隷の調達を行っていたらしい。
「捕まえりゃ、王国で裁かせる事が出来る」
そうなれば商会は消えるだろう。
「向こうも常に警戒くらいはしてるだろうし、相手も一人や二人じゃねえ。だから簡単じゃねえだろうが――頼む」
ギーブルはもう奴隷を使った商売には容易に手を出せまい。イーヴォの事を気にしている余裕もない為、ルゴールさえなくなればイーヴォは暫くは安泰だ。
そうなった暁には、とロルフは穏やかに笑みを作る。
澱みにまみれた世界。その先に光明を見るように。
「兄貴が途中にしてた、本格的な孤児院を建ててみてえんだ」
だからその為に――協力してくれよな、と。
●拘泥
樹海に食い込んだ、ひとけの無い森林の中。
そこに建てられた隠れ家で、商会の長ルゴールは札束を数えていた。
ケースに収められたそれは、今回の遠征で儲けた分。一財産と言っていい金額だ。
「ふん、悪くない」
呟くルゴールは、銭勘定をするには些か不釣り合いな程の体躯を持っている。
事実、四十がらみとはいえ戦う力も若い頃から衰えていない。コートの下の肉体は、部下の誰よりも頑強だった。
とはいえ見せびらかす為の力ではない。商材調達に、どうしても必要になった時に振るうだけのものだ。
究極的には、力仕事も商売も金で人にやらせる事が出来る。
それによって出した以上に金が返ってくるのだから、ルゴールにとっては金の事だけを考えるのが一番賢い生き方だった。
力も権威も、自衛出来るだけあればいい。
それをひけらかし、あまつさえ人目につく形で徒党を組んで大きな家を構える……そんな事をするマフィアは馬鹿ばかりだ、と。
「隠れてこそこそ稼げばいいのだ」
ぱっとひと束放り投げ、札の雨を降らす。
金で大体の問題は解決するし、危うくなってもすぐ逃げて、別の場所に居を構えられる。ファミリーだの自分の街だの、故郷だなどと……ルゴールには全てが下らなく思えた。
そこでノックが鳴る。
通すと、部下の一人が片膝をついた。
「報告か。何か変わった事は」
「商会に関しては。ただ、ギーブルのヘルムートが死んだようです。襲撃を受けて、奴隷市は壊滅だと」
「自分が矢面に立つからだ、馬鹿め」
ルゴールは言ってため息をつく。
ヘルムートはいい手足になりそうだったから残念ではあるが……逆に言えば結局、それまでの器だったという事だろう。
ギーブルの街周辺も、今回はそろそろ潮時だ。
「明日、立つ。周りは引き続き見張らせておけ」
はっ、と下がる部下を見送り――ルゴールは金を荷物に詰めた。
これさえあれば生きていける。自分達の扱う商材――奴隷はどこでも調達が出来るのが最大の長所なのだから。
「次は、どこに行くかな――」
まるで旅行の計画でも立てるように、ルゴールは呟いていた。
解説
マスターより
リプレイ
冷たい風に葉が擦れて、木々が静かな響きを立てる。
その音と夜闇に紛れて樹海に入った冒険者達は――その一角にある敷地を、遠方から望んでいた。
見えるのは見張りの姿と、その奥の建物。
「ルゴール商会――ロルフさんの故郷の仇でもあったのですね」
様子を窺いながらも、オゴスは静かに声を零す。
ならず者達の、その更に裏で暗躍していた人身売買組織。コルネリウス・アーラは微かに目を伏せ、胸の前で自身の手を握る。
「この組織が無ければ……平和に過ごせた子供達も多かったのでしょうね……」
命を落とした者もいるだろう。思うほど、声音は静まってゆく。
ルアンナ・ミュラーも、心に擡げる感情は強かった。
故にこそ頷いて、見据える。
「ここを潰す事が出来れば、奴隷として売られる子供達を少しでも減らせます。必ずルゴールを捕まえましょう!」
「ええ。皆さんの調査のお陰でこのチャンスが生まれたのですから」
視線を巡らせるのはイズレンディル・パラリム。
仲間達が手繰り、引き寄せ、辿り着いた千載一遇の機会。逃せば次には訪れないだろうと、判っているからこそ。
「無駄にはしません」
必ず捕まえましょうと、目線を前に戻せば――アウル・アンサラーもまた頷いて、軽く自らの拳を打ち合わせた。
「ま、この仕事も大詰めって所だな」
ならばやる事はこれまでと変わらない、と。
「――キッチリ片付けて、報酬を頂くかァ」
「見張りは四方に三人ずつです」
「不意を打つのは難しくなさそうだね」
サーマルアイで敵の位置を余さず見取るイズレンディルに、自身も暗視を効かせて応えるのはヨル・スレイマン。情報を共有した後、敷地の一辺へと向かい始めていた。
皆もそれぞれの方向へと散っており……八人で四手に別れる形。
(まずは手筈通り、俺から行くよ)
見張りの近くにまで辿り着いたヨルは、同道するルアンナに言うと――木の陰から疾駆。戦いになる前に、視線を一人へと合わせた。
するとその見張りは睡魔に襲われ膝をつく。
横にいた二人の見張りが、それに気づいてとっさ弓を向けようとするが――そこへルアンナが魔弾を発射。鋭い一撃で一人の体力を奪い去っていた。
それでも残る一人が矢を射って来るが、ヨルは身を躱す。直後にはルアンナが次弾を放ち、その見張りも気絶させていた。
反対方向から動き出すのはセリオス・オーガストだ。
黒いマントを被って自身の姿を夜陰に溶け込ませながら、携えるのは鋭い細剣。別方向の仲間が仕掛けるのを確認しつつ、自身も音を殺して前進する。
(俺は右の方をやる)
(では僕は向こうを!)
小声で応えるのはギーゼラ。槌を握りながらセリオスの行く進路を僅かにそれて、狙うのは三人の内二人。
限界まで近くに忍び寄り、射程に捉えると横合いから疾駆。
後は容赦なく、闘気を込めて――強烈に振り下ろした一撃で衝撃の同心円を作り出し、二人を一気に気絶させた。
その頃には三人目にセリオスが肉迫。夜闇を裂くように剣閃を奔らせ、僅かな風音だけを響かせて体力と意識を奪い去ってゆく。
セリオス達から見て右方、西側でもアウルとオゴスが襲撃開始。
まずはオゴスが魔導書の頁を繰り、放つ闇色の魔力で一人を倒すと――アウルも弓を引いて一撃。腹部を穿って二人目の意識を奪った。
「……! 何だ!」
三人目が矢を手に取ろうとするが――その頃にはオゴスが次撃。素早くその見張りも打倒してゆく。
オゴスはそのまま猿轡を噛ませ、彼らをロープで拘束。静寂の内に無力化していった。
「……向こうの方も、問題ないそうです」
ギーゼラからテレパスを受け取りながら、コルネリウスは小声を使う。
そこにもまた、気絶した三人の見張りが倒れていた。イズレンディルは頷きながら、建物に視線を移す。
そこに、今は変化は見られない。それでも向こうが事態に気づくまで、時間はかからないだろう。
「急ぎましょう」
敵の迎撃態勢が整っていないであろう今が、最大の好機。
頷くコルネリウスもテレパスで連絡。一度集まった冒険者達は、改めて二手に分かれ直して――素早く進軍を開始する。
●挟撃
それは目立たぬ木造建築だった。
華美さは皆無で、ただ景色に溶け込み、潜伏場所としてだけの役割を果たしている。
逃げやすくする為だろうか、周囲に罠はないが――それでも注意深く、同時にためらわず、ヨルは正面から扉を蹴破って侵入した。
すると見えるのは長い廊下と複数の扉。直後にそれが開き、見張りの交代要員らしき男と――商会員らしき面々も現れた。
「何だ、てめぇら!」
「君達を捕まえにきたのさ」
ヨルの言葉に、商会員達ははっとする。そこで初めて見張りが機能していない事に気づいたのだろう。
「外もてめぇらがやったのか」
「ああ。投降するなら今のうちだと思うよ」
「……誰が!」
彼らはナイフを手に取る。ならばとヨルは刃を構えていた。
「どうしてもやるというなら、来ると良い。さあ――俺達が相手だ!」
瞬間、刃先から魔法の矢を放って先頭の一人を撃ち倒す。
すると敵も怒声と共にナイフを放ってきた。
が、前面のコルネリウスは盾で薙ぐように逸らして衝撃を減らす。
そのままひらりと前進すると大剣で縦一閃。鮮烈に瞬く衝撃波を拡散させて、一人を気絶させた。
商会員達も余波を受けていたが、一撃では倒れず反撃のナイフを放つ。だがそれもコルネリウスが受け流してみせれば――
「後は、私が」
イズレンディルが杖を翳していた。
刹那、自身の体を覆った膨大な魔力が、杖先に流れ行く。次の一瞬、解け消えた光が虚空から現れて無数の光弾へと変貌。眩い衝撃となって敵に降り注いだ。
そのまま二人が倒れると、ヨルは残る一人も放っておかず挑発的な声を投げる。
「君達の上司は出てこないみたいだけど。逃げたのかな。なかなか大変だね」
「……手を煩わせるまでもないだけだ」
商会員は言いながらも怒りを滲ませて踏み込んできた。ならば作戦通りと、ヨルは鋭利に形成した魔法の鏃を突き刺してその一人も沈めてゆく。
視認出来る敵がいなくなると、イズレンディルはコルネリウスへ声をかけた。
「コルネさん、危なくなれば下がって下さいね。短時間なら代わりを引き受けられますから」
「ありがとうございます。でもまだ、大丈夫ですから」
ほんの少し相貌を和らげて。コルネリウスは応えると、すぐにまた前を向いて、皆と共に進み出した。
建物の中枢。
ルゴールは入り口での騒ぎに気づいていた。
「他のマフィアか……いや」
金を詰めたケースを握りながら呟く。直接襲撃をかけてくる相手に心当たりはなかった。
それでも逃げるのが最善だろうと、一度小窓から森を窺う――と。
そこに焔が閃いた。
「……!」
硝子が砕け、窓枠が焼け落ちる。
ルゴールは強烈な熱量に呻きながら後退。倒れこそしなかったが……直後、朽ちた窓から入ってくる一人の姿を目の当たりにした。
それは杖先から煙を揺蕩わす、ルアンナ。外から建物を注視して、目立たぬ小さな窓も見逃していなかったのだ。
「ルゴール様!」
商会員の一人が駆けつけてくると、そこにもルアンナは視線をやっていた。
「ごきげんよう、悪徳商人の皆様。監獄までお迎えに上がりました」
「……授恵者。まさかギルドの連中か」
ルゴールは苦虫を噛むように顔を歪める。
それでもすぐに逃げると決めてか、裏口側の廊下へ飛び出た。残る商会員がナイフを構えるが――ルアンナは既に杖を向けている。
「遅いですよ」
刹那、放った魔弾でその一人を気絶させた。
そのままルアンナも廊下へ走り出す。その瞳に、焦りの色はない。
「――逃げても無駄ですよ」
ルアンナの言葉に違わず、裏口には既に別働隊の四人がいた。
聴覚とエーテルの波動によって内部の動きを窺っていたセリオスは――こちらに近づく存在を早々に察知する。
「向かってくる敵は一人だ」
「ルゴール、でしょうね」
応えるのはオゴス。
既に建物の内部構造も把握済み。戦う仲間を置いて、その中心から慌てて退避してくるなら、それ以外にはあり得まい、と。
「正面の方は問題なさそうですから、こちらで迎え撃ちましょう!」
テレパスを受け取りながらギーゼラが言えば、皆も頷き前へ。程なく近づいてきた気配に――アウルはハッと一つ声を零す。
「間違いなかったみてぇだなァ」
それは確かに強者のもの。アウルは即座に奔り出し――角を曲がった先にいるルゴールを見つけると一撃。苛烈な矢撃で足を穿ってみせる。
驚愕の相貌でよろめいたルゴールへ、アウルはよォ、と声を投げていた。
「逃げてくるならてめぇだと思ってたぜ。随分と姑息な……いやァ悪ぃ。“慎重”なヤツだって聞いてたからよ」
「……冒険者」
ルゴールは小さく歯噛みする。ようやく挟撃を受けたと気づいたのだろう。
それでも大事に握られているケースに、オゴスは視線をやる。
「そんな荷物を持って、旅行にでも出るつもりでしたか? ならば――そちらにぴったりの場所をご案内できますよ」
――王国の豚小屋なんていかがでしょうか。
言いながら壁を蹴って上方を取り、魔法の矢を撃ち下ろしていた。
肩口を抉られてルゴールは呻く。そこへセリオスも一息に直走って零距離へ入っていた。
はっとするルゴールが、反撃態勢に入るより早く――刺突。剣閃で直線を描き腹部を貫いた。
血を零すルゴールは、それでも倒れず拳を握り込む、が。
「無駄ですよ!」
槌を振りかぶるのがギーゼラ。
その先端に流動させた魔力を解放し、空間を光で埋め尽くすと――その輝きを凝集して檻を形成。ルゴールを閉じ込めていた。
「殺されるのを待つ籠の鳥になった気分はどうですかぁ?」
ギーゼラの言葉にルゴールは唇を結び、拳をぶつけるが――光の檻は物理的な衝撃では傷一つつかない。
「そんな攻撃で壊れませんよ? 無様だなぁ!」
ギーゼラはそれから散々に煽って、敵意だけは引きつけておく。
そうして時間の経過によって檻が消えると、ルゴールは反撃に出ようとするが――その頃には背後から燦めく光。
「そこまでです」
それはイズレンディルが杖に収束した魔力。
正面班の仲間、そしてルアンナとも共に包囲する位置につくと――魔力の塊を発射。強烈な一撃をルゴールに撃ち込んでゆく。
●夢
「……全て作戦通りというわけか」
ルゴールはふらつきながら、血を零す。
既に逃げ道はなく、口をついて出るのは毒づきの言葉だ。
「理解出来んな。リスクを冒して、こんな森にまで踏み込んで。そこまでして私達の仕事の邪魔をしたいか」
「俺ァ別にアンタの“仕事”自体に興味はねェよ」
奴隷商だろうが何だろうが勝手にしろ、と。
アウルは言いながら、だが、と弓弦を引いていた。
「俺の方も“仕事”なんでなァ。アンタが善人だろうが悪人だろうが、やる事ァ変わらねぇってだけさ」
「ま、人の命で私腹を肥やしたツケを払う時が来たんじゃないかい?」
ヨルも声を継ぐと、ルゴールは苛立ちを露わにして踏み込んでくる。が、セリオスが床を蹴ってその眼前へ接近している。
「悪いが、先手は譲らない」
相手の拳が放たれるより早く、一直線に刺突。鋭い風切り音と共に腕元を貫いてみせた。
呻くルゴールは、それでも反撃を目論むが――直前、コルネリウスがエーテルの塊をぶつけて注意を誘引。己に狙いを向けさせ、放たれた拳圧を受けきる。
そのダメージも小さくない。が、そこへギーゼラが癒やしの光を発現。コルネリウスの体力を即座に回復させていた。
相手の射程外ついたまま、ギーゼラはあくまで言葉でも煽ってゆく。
「こっちまでは届かないんですね? ボスのくせに弱すぎてガッカリ!」
「――」
ルゴールは感情に任せて再度の攻撃を狙うが、その頃にはイズレンディルが魔力の光を投射。手元を撃ち払って体勢を崩させた。
「皆さん、お願いします」
「ええ」
ルアンナがその隙に不可視の波動を飛ばし、ルゴールの守りを減衰させた上で魔弾をぶつければ――ヨルも魔力の矢をその足先に突き立てる。
傾いだルゴールへ、アウルも追撃。足を穿って床に転倒させていた。
「最後は譲るぜ」
「判りました」
声を返すのはオゴス。
その手に湛える魔力は濃密に、定める狙いは正確に。
この因果には、ここで蹴りをつけねばならないから。
「最後としましょう」
瞬間、放つ光の矢で鋭くルゴールを貫き、体力を奪い去った。
「さて、終わったね」
静寂の中で、ヨルは見回す。
頷く皆は、互いに無事を確認して息をついていた。
イズレンディルもコルネリウスへ歩み寄る。
「大丈夫ですか?」
「ええ、私は平気です」
コルネリウスはそっと応えて――ルゴールを見やっていた。
ルゴールは既に捕縛されている。
コルネリウスはそこへ殊更に声をかける事はしなかった。ただ、これで終わらせるべき事が終わるのだと、その実感だけを抱いていた。
その後、ルゴールは王国側へと引き渡された。
明らかになった罪は一つや二つではなく、重く裁かれる事となるだろう。ルゴール商会は壊滅し――イーヴォの村近隣にも平和が訪れる事となった。
「やり遂げてくれたんだな」
冒険者達を出迎えたロルフは、どこか晴れやかな面持ちだった。
アウルは軽く肩を竦めて応える。
「これも仕事さ」
「他の誰にも、出来ない仕事だったさ。きっと」
ロルフは言って、改めて頭を下げて礼を述べる。
セリオスは遠くへ視線をやっていた。
「近隣の治安はどうだ」
「悪くない。ギーブルも弱り続けていて、自然消滅するかも知れないしな」
ロルフは応えた。元が混沌とした地域でもある。また別のマフィアが生まれるかも知れないし、生まれないかも知れない。
だがもう好きにはやらせないさと、ロルフは言った。
と、そこで子供達の声が向こうから聞こえてくる。ルアンナはそちらに目を向けた。
「子供達は皆、元気ですか?」
「ああ」
ロルフが案内すると、子供達は駆け回って遊んでいる。
ロルフはその一角に孤児院を建てるつもりだと言った。ギーゼラは頷き笑みを見せる。
「立派なものを建ててあげてくださいね!」
「勿論さ。だが良かったのか、あんな金をもらって」
「元はルゴールが貯め込んでいたものです。役に立つ事に使えるなら、それが一番でしょう」
オゴスは応える。
王国からも褒賞が出たが、ギーゼラ達はそれもロルフへと提供していた。すぐにでも、夢の実現に取り掛かる事が出来るだろう。
「すまねえな」
「いいえ」
コルネリウスは静かに言って、子供達を見つめていた。
――自分は成すべき事が出来ているのか。
そう思う心は今もある。
ただ、ロルフや彼が護る子供達――今、この手が届く人を救う事が出来たのは間違いない。
だから仄かにだけ、表情を柔らかくして。コルネリウスは子供達の声に耳を傾けていた。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2021年04月20日 14時56分27秒 公開
相談掲示板
エルフのキャスター、イズレンディル・パラリムと申します。 こちらには途中参加となりますので様々教えて頂きながら頑張りますね。 ルゴールさんは腕っ節も立ちますが、何より合理的な考え方をされるタイプのようですね。 手間取ると逃げられてしまう恐れがありそうで、その対策は必須でしょうか。 状況的に警戒もされていそうなので油断を突くのも難しそうには感じますね。 打ち手も様々ありそうですが、やはり順当に考えると四隅の見張りを撃破してから、 建物内へ突入する流れ、でしょうか? 敵の数が多いですから、正面突入で敵全員と戦うという状況は避けたいと感じますね。 以上、一旦ですが状況と方針の所感になります。 改めてよろしくお願い致します。
ウォーリアのコルネリウスです、よろしくお願いします。 今回から参加の方も引き続きの方も、どうぞよろしくお願いします、頑張りましょう。 時間帯によっても動き方は変わってきそうですが、外の人数が多い事を考えれば、正面突破を避けるならば夜の方が動きやすいでしょうか? 成るべく時間を掛けずに内部に入れるようにするなど、逃走を阻止する形で考えていきたいです。
シーフのホブゴブリン、オゴスと申します。 この依頼に参加できて良かったです。お馴染みの方も初回の方もどうぞよろしくお願い致します。 敵の罠や隠し部屋で一杯食わされるのも癪ですし探波を持っていきましょうか。 捜波の方は用意できないかもしれません。 夜に襲撃する場合は暗視で対応できます。 正面突破を避けるには、こっそり忍び込む方法と一部の敵だけ誘き出す方法があるでしょうか? この辺りは装備の隠蔽の値も関わってきそうですね。
キャスターのルアンナです。引き続きよろしくお願いします。 そうですね。夜闇に紛れながら外の見張りを撃破し、中へ突入という流れになるでしょうか。 ルゴールに逃げられるリスクを考えて、2人くらいが裏口(あれば)に待機するとかは出来るでしょうか。
アウル、シューターだ。 さぁて、キッチリ終わらせてぇ所だなァ。 夜間に襲撃ってのはセオリー通りだな。 その場合、気が付かれたくねぇってなら明かり以外の索敵手段が幾つかねぇとキツイぜ? 俺が現時点で用意できんのは、捜波と超聴覚って所か。 木があって、視界は完全には開けてねぇようだな。 上手く身を隠しながら移動も出来るだろうが、移動力が-1されるってのは考慮しなきゃならねぇかもなァ。 バレりゃ一気に敵が来るか、ルゴールはさっさと逃げようとする可能性はあるなァ。 敢えて目立つ事で注意を引く、逃走経路を絞るってのもアリか? 挙げられてるが、伏兵を置く…俺らもある程度別れて配置するってのも良いんじゃねぇか。 固まってりゃ、それだけ目立ちもするからなァ。
ヒーラーのヨル。宜しく頼むよ。 周到な見張りの対策に見える。不意打ちに成功したとしても、初撃の後は普通に向こうも迎撃に移行してきそうだ。 目立つことで引きつける組と別方向から攻略する組、分かれるのは俺もありだと思う。 こちらの初撃以降、ルゴールが出てくるまで部下を減らし続けるか、建物内に入りルゴール本人を狙うかは⋯⋯敵が多いから後者の方が良さそうかな。 夜襲に対して持っていけるのは暗視くらいかな。森内に罠や仕掛けがないとは限らないから、そのあたりも心しておきたいね。
仰る通り夜間でしたら備えは必要ですね。サーマルアイと透視なら持参出来そうです。 今出していただいている内容に賛成です。 簡単にまとめさせていただくと大筋はこのような動きでしょうか? 1.夜間に作戦開始 2.分担して四方の見張りを奇襲で撃破する 3.主力と別動隊に別れて建物に突入する 主力が先に正面から入れば、敵が直ぐに逃げたとしても反対方向の別動隊が捕捉出来そうですね。 別動隊はすぐに突入するでも、ルアンナさんの仰るように見張りとして待ち受けるのも、どちらも良さそうですが…… 敵が逃げずに迎撃を選ぶと主力の負担が大きくなるので、別動隊も突入する方がよいかもしれませんね。 懸念としては、ヨルさんの仰る通り敵の迎撃が早いかもしれないことですよね。 その場合は主力が外で敵を引き付けている内に別動隊が建物へ突入になりますか。 ルゴールが出てくるまで部下を減らし続ける、の方針は確かに避けたいですからね。
・・・ん、遅くなったがシューターのセリオスだ、よろしく頼む 夜間のほうが襲撃はしやすそうだし、問題ないと思う とりあえず俺は暗視とサーマルアイはあるので明かりは大丈夫というところだ ルゴールを取り逃がすのが一番まずいから分かれての作戦でいいと思う。 ただ外は排除してから全員で突入し、中の護衛とルゴール本人の対応に分かれるぐらいでいいんじゃないか 別働だけで中に突入すると護衛の相手もしないとだろうから
遅くなってすみません。ヒーラーのギーゼラです。 初回参加で前回は逃してしまいましたが、引き続きよろしくお願いします。 フフフフフ、悪党は容赦なく殺してもいいので楽しみです! 方針は了解しました。 夜間でも暗視がありますので問題ありません。 分担して四方の見張りを倒すのであれば、2人で3人の見張りを倒す形でしょうか? 奇襲の範囲攻撃でさくっと駆除してしまいたいですねぇ。 テレパスもありますので、他にも用意出来る方がいれば通信用に持っていきましょう。 とても逃げ足の早い敵のようですので、主力が気を引いてる間に逃げられない様に気をつけたいですね。 必要ならば光縛封を持っていけますので、閉じ込めておきましょうか? 閉じ込めている間に商会員や見張りを倒して合流して貰えれば、負けることはないでしょう。 殺されるのを待つ籠の鳥!!偉そうにしてたクズが悔しそうに顔を歪ませる! あぁとても殺しがいがある!! 目的は捕縛?だぁいじょうぶ!ちゃぁんと分かっていますよ! ぎりぎりで生きていれば問題ないでしょう?
>光縛封 閉じ込めていただけるならありがたいです。 ルゴールは格闘が主体のようですし光縛封も長持ちしそうですね。 >見張り 汎用スキルの【ヒュプノシス】があれば、手っ取り早く無力化できそうですね。 眠らせた後、ロープや光縛呪で縛って猿轡をかませりゃ騒がれる心配もないですし。 授恵者や特別意志の強い相手には効きませんけどね。 俺はこのスキルを持ってませんが習得することは可能です。 ただ汎用スキルは【暗視】と【罠解除】を持っていくつもりでして。 もしすでに【ヒュプノシス】を覚えている方がいらっしゃったら、そちらにお願いできると助かります。 どなたかが【罠解除】で俺が【ヒュプノシス】という分担でもいけます。
セリオスさん、ギーゼラさん、宜しくお願い致します。 ギーゼラさんはとてもお久しぶりな気がいたしますね。またご一緒出来て嬉しいです。 以前と変わらずお元気そうで何よりです。ぎりぎりで問題ないと思いますよ! 四方の敵はギーゼラさんの仰る通り2人で3人を倒す形と思っております。 突入は状況次第とはなりそうですね。下記のような方針で良いかとは思います。 ・外の敵を速やかに排除した→両班一緒に屋敷へ突入 ・外の敵に梃子摺る(屋敷内から増援が出る等の状況)→別動隊だけでも屋敷へ突入 >光縛封 3ターンでも時間を稼げれば追いつくことも出来ますしね。とても助かります。 >ヒュプノシス 目が合うだけで眠らせるのは良いですね! ただ、私も所持していないのと、私の場合は範囲攻撃で一掃の方が良いかもしれませんね…。 >班分け 決戦で慌ただしくしておりましたが、もう明後日の昼12時に出発なのですね。 まだ様々相談したい気持ちなのですが、時間もないので一旦班分けを書かせて頂きますね。 正面にしておりますがどちらでも良いです。偏りそうなら移動致します。 ●正面班 イズレンディル ●別動隊
イズレンディルさん、纏めをありがとうございます。 俺は別動隊にいきますね。屋敷内の構造や罠なんかを探波で注意していこうと思います。 ●正面班 イズレンディル ●別動隊 オゴス
すみません、決戦の方に気を取られてしまっていました。出発が迫っていましたね。 イズさんは纏めをありがつございます。方針はその形がシンプルですし異論はありません。 >スキル 私もスキルは【暗視】を持っていきます。【テレパス】も準備できますので、必要でしたらギーゼラさんと連絡を取るように使いますよ。 あとは敵を逃がさないように【殺界】などでしょうか。 >班分け 一先ずは正面班へ希望を出しますね。移動は勿論出来ますので、全体の役割などを考えながら調整していきます。 ●正面班 イズレンディル コルネリウス ●別動隊 オゴス
イズ君はまとめありがとう。わかりやすくていいと思う。 それだと半々か、四方への攻撃の後改めて編成する形で別働がやや少なめくらいの配分がいいのかな。 状況を考えると多分、正面の方が向いていると思うので俺はとりあえずそちらに。 バランスを見て移動も可能だよ。光縛封も持っていけるから、そこで分散するのもいい。 ヒュプノシスも持っていけるから、暗視じゃない方はそれにしておこうかと思う。 ●正面班 イズレンディル コルネリウス ヨル ●別動隊 オゴス
それでは、私は正面に回りましょうか。 突入後は派手に暴れてやりましょう! 見張りを倒すターンに備えて私も暗視を持っていきます。 ●正面班 イズレンディル コルネリウス ヨル ルアンナ ●別動隊 オゴス
基本的な流れはそうなるか。 四方から同時に仕掛けるって事ァその時点でどいつも存在がバレるだろうから、場合は役割によっちゃ初っ端から派手にやっちまうのもアリかも知れねぇなァ。 人数的に、別動隊に回っとくとするか。 オゴスが探波で罠やら何やらを探せるなら、俺ァ捜波で索敵でもやっとくぜ。 ●正面班 イズレンディル コルネリウス ヨル ルアンナ ●別動隊 オゴス アウル
ふむ、人数的に別動隊のほうがよさそうだな。 建物の中だから弓より近接のほうがよさそうなので孤高の零距離殺撃者で近接仕様にしていくつもりだ あとは孤高者の捜波とかで敵のサーチだな ●正面班 イズレンディル コルネリウス ヨル ルアンナ ●別動隊 オゴス アウル セリオス
えぇイズレンディルさんお久しぶりですねぇ。 フフフフフ、変わらず元気に皆さんを癒してますよぉ。 今回もちゃんと癒してあげますから、ご安心を! 光縛封もしっかりと用意しておきます! >テレパス コルネリウスさんテレパスの準備ありがとうございます。 これで連絡は問題ありませんねぇ。 >班分け それでは僕は別動隊に入りましょう。 ●正面班 イズレンディル コルネリウス ヨル ルアンナ ●別動隊 オゴス アウル セリオス ギーゼラ
>ヒュプノシス 助かります。ヨルさん、ありがとうございます。 ヒュプノシスで眠らせていくなら、あえて他の見張りには手を出さない方が良いかもしれませんね。 攻防の物音で気取られたりもしますし。 >索敵 アウルさん、セリオスさん、お願いいたします。
ご確認いただきありがとうございます。問題無さそうで良かったです。 私は透視とサーマルアイで参りますね。 方針に関しては一応私の方で下記のように記載致しました。 ***** +方針 目的:ルゴール捕縛 夜間行動 各自分担し四方の見張りを隠密からの奇襲速攻で撃破 正面班と別動班の2班に別れ建物へ突入 正面班:正面入り口から突入、陽動も兼任 別動班:建物裏口等の逃亡経路と推察される経路から突入 外の敵を速やかに排除した→両班一緒に屋敷へ突入 外の敵との交戦が長引く→別動隊だけでも屋敷へ突入 ***** >正面班 コルネさん、ヨルさん、ルアンナさん、宜しくお願い致します! 私は魔法攻撃を主に、念のため防御と回復も持参は致しますが、 前衛はコルネさん、回復はヨルさんに頼らせて頂けると助かります! 殺界はありがたいです、頼りにさせて頂きますね。
>ヒュプノシス 先手を取って眠らせていくのがいいかな。もし他の見張りに気づかれずに3人眠らせられたら、他の隅の見張りにも試してみてもいいのかもしれないか。 とはいえ完璧に効く保証はないし、どっちかというと奇襲後、ヒュプノシスが効いて速攻で片付いた場合、他を応援に行く形でヒュプノシスを使っていくほうがいいかも。 イズ君は方針をありがとう。 こちらは回復系、魔矢、光縛封の構成になると思う。宜しくね。
イズさんは方針の纏めをありがとうございます。 私の方は、今回は殺界での足止めと引き付けにシーザーロアを使用する予定です。 あとは破脚砕、強打での攻撃、防御は装甲防御という流れです。
わかりました。 ヒュプノスがきくまで手出ししない、というわけではなく、魔法による遠距離攻撃で見張りを攻撃しておきますね。