【ロモズ歩兵団】紅煙漂う魔窟
革酎
コメント 14
シナリオID:754
オープニング
シルトラース帝国の難民がリーンエス王国との国境付近に流入してから、早数カ月。
彼らはそこかしこで難民キャンプを形成しており、ロモズ旧村もまた、それら難民キャンプのひとつとして稼働している。そしてこのロモズ旧村に於いては過日、難民を主兵力とする歩兵団が発足した。
その名もロモズ歩兵団。
近い将来、帝国奪還戦が実施されるであろうことを想定し、一部の有志が難民という立場でありながらも歩兵候補として入団したのが始まりではあったが、入団数は日増しに右肩上がりとなり、既に八百名を超える難民が歩兵訓練を受ける毎日を過ごしていた。
このロモズ歩兵団は、現在では近隣一帯の中でも屈指の精強さを誇る戦闘集団として認知されつつあり、今も尚、入団を希望する難民が後を絶たない。
そして十分な訓練を施された初期入団歩兵は周辺山岳の哨戒任務や、人里に害を為す魔物或いは亜人討伐の補助戦力としての派兵任務に、度々就任する様になっていた。
ある日、数名の冒険者から成る一団が、ロモズ旧村から程近いコルーゾという集落からの依頼を受け、紅煙窟と呼ばれる謎の地下空間に対する調査を実施する運びとなった。
紅煙窟はコルーゾのみならず、ロモズ旧村からも決して遠くはない位置にあり、その進入路は深い山間の断崖の麓にぽっかりと口を開けているらしい。この紅煙窟から小型クリーパーと思しき魔物が複数出現しているとの未確認情報が寄せられたのである。
依頼内容としては単に調査するだけでなく、クリーパーの所在が確認された場合には討伐することも含まれていた。
この紅煙窟の調査にはロモズ歩兵団からも人員を供する運びとなった。統括者たるリーヴァー・シュランドル子爵が、選り抜きの歩兵を供出してきたのである。どうやら彼らに、危険な場所に於ける調査活動経験を積ませたい腹積もりの様だ。
勿論、クリーパーが出現した場合はその対処を冒険者に一任することになるが、見ることもまた経験であるとの主旨から、選抜歩兵達は冒険者と行動を共にすることを前提としていた。
つまり今回の依頼はコルーゾからの調査依頼に加えて、選抜歩兵の護衛と指導を別口から依頼された格好になっており、その分、報酬も上乗せされていた。
●敵意満つる召喚
紅煙窟の奥深くに、ふたつの人影が蝋燭の灯の中で揺らめいていた。
一方は白銀虎のハーフビースト。そしてもう一方はリザードマンの魔術師らしき人物であった。
「冒険者がここを調査するらしいぜ。どうするつもりだい、レンボイ爺さん」
「どうするもこうするもない。迎え撃つのみよ……ジルベル、よもや手を貸してくれるのか?」
ジルベルと呼ばれた白銀虎は、んな訳ゃあねぇだろうと軽く笑った。
リザードマンの魔術師レンボイ老は、やれやれとかぶりを振りながら苦笑を返した。
「けどよぉ、冒険者の連中がここやあんたをどうやって攻略するのかってことにゃあ興味がある。ちょいと見物させて貰うぜぇ」
「まさかとは思うが貴様、儂の邪魔をするつもりではあるまいな?」
レンボイ老に問われ、ジルベルは口元を意味ありげな笑みに歪める。その意図を察したレンボイ老は宙空に魔力の光弾を召喚し、ジルベルに叩きつけた。ジルベルは飛来する光弾を僅かな所作だけで軽く躱す。背後の岩壁が盛大に弾けた。
「うちに味方しねぇなら、あんたも敵だ……少なくとも上は、そう考えてるみてぇだぜ」
「貴様とは数年来の付き合いだが、そろそろ潮時の様だな」
レンボイ老は両手で素早く印を組み、召喚術の態勢に入った。その瞬間、足元に描かれている召喚儀式の魔法陣が淡い光を帯び始めた。
「かの高名なエフレム殿の猿真似じゃあ、俺は潰せねぇぜ。そもそもあんたの技量でクリーパーを完全に操るなんざぁ、無理な話さ」
「ふん……瘴気が薄らいだとはいえ、ここがダンジョンだということを忘れたか。完全に操れなくとも、儂以外の生物を襲わせるぐらいのことは雑作も無いわ」
完全なる敵意が、ジルベルに向けられた。ジルベルは端正な面を笑みの形に歪めたまま、真紅の薄い瘴気が漂う空間をぐるりと眺めた。
現在、この紅煙窟に充満する瘴気は相当に薄らいでおり、一般人の肉体にも害を及ぼさない程に弱体化しているが、クリーパー召喚には十分な量のエーテルを集約させることは可能であった。
「あんただけが有利なのは、フェアじゃねぇなぁ……あぁそうだ。冒険者に色々チクっちまおう。その方が見てる分には面白ぇからな」
「貴様ッ!」
レンボイ老の怒りが沸点に達した。両者は完全に決別した。
ジルベルは懐から取り出した煙幕玉を足元の固い岩面に叩きつけた。シャルガネ居住区で入手した代物で、レンボイ老の視界を遮るには十分な効果を発揮した。
「んじゃなぁ。頑張れよレンボイ爺さん」
呑気な声が急速に遠ざかってゆく。レンボイ老は尚も意識を集中させたまま、魔法陣を駆使した召喚術の完成に神経を注いだ。
やがてレンボイ老の目の前で瘴気が渦を巻いて一点に集中し、光が水中で屈折したかの様に空間がぐにゃりと歪んだ。何かが虚空に染み出してきたかと思った次の瞬間には、それは醜い姿を持つ異形の小型クリーパーとなった。それも一体だけではなく、二体、三体と立て続けに湧き出してくる。
レンボイ老は続けて、足元に横たえていた長杖を素早く手に取り、別の魔術を発動した。所謂、混沌魔法の一種らしい。
数体のクリーパー共は、出現した直後はレンボイ老の肉体から滲み出るエーテルに反応して振り向きかけていたが、レンボイ老が新たに仕掛けた術式が完成すると、クリーパー共はそこにレンボイ老が居ないかの如く、彼の存在を全く無視する様になった。
(さぁ行け、怪物共。冒険者共とジルベルをなぶり殺しにして来い)
レンボイ老の思念が通じた訳ではないが、クリーパー共は外界へと通じる入り口方面に向かって、紅煙窟内を徘徊し始めた。
解説
マスターより
リプレイ
紅煙が充満する洞窟内は、予想外に広かった。
剥き出しの岩肌で形作られる経路が複雑に入り乱れ、視界の見通しは決して良くはなかったが、紅煙自体が微かに発光していることもあり、暗闇に悩まされる心配は無かった。
そんな中で、数名のロモズ歩兵団員を先に歩かせているバーネット・フォーサイスとアウレーリア・フォン・ネーベルベルクの両名は先行する中衛班の後姿を眺めつつ、両側の死角にも意識を飛ばす様にと指示を出していた。
現在、洞窟内を探索するロモズ歩兵団はバーネットの発案に従い、三つの配置で動いている。
即ち前衛、中衛、そして後衛だ。バーネットとアウレーリアは後衛を率いていた。
「各班、互いの姿を視界に収められる距離を保てよ」
探索開始前、バーネットは歩兵団員達に繰り返し説いた。視界が利かない場所に於いては孤立が最大の敵なのだ。
そこで後ろの班は前の班の最後尾を視覚で捕捉することで、全体としての連携を確保したのだ。
だがそれ以外の移動方針については、バーネットはロモズ歩兵団員の判断に委ねた。緊急時や以外は、基本的には歩兵団員主体で動かせることで経験を積ませようという算段である。
それはアウレーリアも同意の上だった。
「今回は貴方達にとってはようやくの初実戦ね……いえ、実戦の様なもの、かしら」
何者かが手引きしている感が否めない、とアウレーリアは顔馴染みの若い歩兵団員達に苦笑を向けた。だが今回は冒険者が引率しているのだ。ここで万が一にも落伍者が出ようものなら、過日実施されたブートキャンプのやり直しも考慮しなければならない。
「まぁ、やるだけやってみなさい」
「大丈夫だ。ケツは持ってやるからよ」
アウレーリアとバーネットの檄に対し、若い歩兵団員達は居住まいを正して、
「はいッ! 教導官殿ッ!」
と緊張感を帯びた声を返してきた。これにはバーネットも驚いたらしく、アウレーリアに視線を流す。そのアウレーリアは別の意味での苦笑を浮かべた。
「実はブートキャンプでの指導内容が評価されてね」
小さく肩を竦めるアウレーリア。帝国武門ネーベルベルク家の面目躍如ともいえる。
一方、後衛班から背中を注視される格好の中衛班にはナタリア・フィッツジェラルドの姿があった。
ナタリアも同じく帝国出身の冒険者だが、ロモズ歩兵団と関わるのは今回が最初だ。その為ナタリア自身も幾分手探りの感覚の中にあった。
(難民達の憧れの存在か……そうまで期待を抱かれた以上、醜態を晒す訳にはいかないな)
初の洞窟探索任務に硬い表情を浮かべる歩兵団達。その彼らを左右に眺めつつ、ナタリアは時折声をかけて、過度に高まる緊張感をほぐしてやった。
斥候たる前衛班を抜けて接敵された場合の備えや、ダンジョン探索時の基本的な心構え等、教えることは少なくない。だが限られた時間内では如何に効率的に教えてやれるかが、経験ある冒険者の腕の見せ所ともいえるだろう。
勿論、強敵を相手に廻す場合にはナタリア自身が矢面に立つことも厭わないが、従軍治癒師出身という立場を最大限に活かしつつ、なるべく歩兵団員達に戦闘の経験を積ませるという方針を貫くならば、彼ら自身が刃を振るう機会を確保してやるべきだろう。
(単純に指導といっても、こちらも考えることが山積みだな)
ただ教壇に立つのとは訳が違う。ナタリアもまた指導の難しさを実感している最中であった。
●青の中指
前衛班はサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブ、ハヤト=ガラン=ヴォルファング、そしてナハティガル=ラーの三人がそれぞれ数名ずつを率いて、三方向に分散しての斥候活動に入っている。
当初は探索活動が大半の時間を占めると考えていた三人だったが、いきなり小型クリーパーが行く手を阻んできたのには多少の驚きを禁じ得なかった。
しかし敵の数は決して多くはなく、歩兵団員が主力となって討伐戦に突入することには何の問題も無かった。サフィラ、ハヤト、ナハティガルは歩兵団員達から一歩退いた位置で戦局を見据え、要所で自身の刃を振るうだけで良かった。
「にゃっ! ただの難民じゃなくて、もう立派な歩兵団だねっ!」
「ちっとばかし見ねぇ間に、これだけ屈強になるとはな……見違えたぜ」
クリーパーを討ち斃した若い歩兵団員達に、サフィラもハヤトも気分が明るくなった。だが、そんなふたりの表情もすぐに緊張と敵意で凝り固まる。
予想外の声音が、洞窟内に鳴り響いたからだ。
「想像以上に成長してるなぁ。流石、冒険者直々に指導しただけのこたぁある」
「……アンタは、男爵姫からの依頼の際にヴァンティール歩兵団と接触していた白銀虎の半獣人?」
得物を構え、歩兵団員達を退かせながら、ナハティガルは薄闇の中に姿を現した暗殺者と対峙した。そのナハティガルを援護する為に、ハヤトとサフィラも前へと出る。
現れたのはメドゥの指先の幹部『青の中指』ジルベルだった。ジルベルは得物を鞘に収めたまま、随分のんびりした様子で手頃な岩に腰を下ろしていた。
「てめぇはジルベル……こんなところで、何企んでやがんだ?」
歩兵団員を庇いつつの戦闘は無理があると承知の上で、ハヤトは警戒感の籠もった声を叩きつける。幸いながらジルベルは殺気を漂わせてはいない。戦う意思が無いらしい。
「俺はナハティガル=ラー。ジルベル、というのがアンタの名か……?」
冷静に会話を試みるナハティガル。ハヤトとサフィラは相手の出方次第では戦闘も辞さぬ構えを見せていたのだが、ふたりの意に反してジルベルは頭の後ろで手を組んだまま呑気に笑い続けていた。
「もう気づいてると思うが、この紅い煙はエーテル溜りから溢れ出た瘴気さ。かなり薄くなってるから、有害かどうかって点は心配するこたぁ無いがね」
「……洞窟っていうより、どう見てもダンジョンって感じだったけど、そういうことだったんだね」
警戒心をあらわにしつつも、サフィラはようやく合点がいったと首肯を返した。ナハティガルもその点についてはある程度の想像を巡らせていた。
「紅煙窟と呼ばれるのにも由来があるとは思っていたが、矢張りエーテル溜りだったか。それならばクリーパーの出現が多いのも頷ける。仮に人為的な力が働いているのならば、尚更」
ナハティガルの推察にはジルベルも驚きを素直に表現した。そこまで見抜いているのなら、と美貌の半獣人は洞窟の奥を指差しながら説明を加えた。
「この奥にレンボイっていう召喚大好きな爺さんが居てなぁ。ここの瘴気を利用してクリーパー共を呼び出しまくってんのは、その爺さんの仕業さ」
「……成程、読めたぜ。てめぇがわざわざ教えるってこたぁ、俺達にその爺さんを始末させようって腹か。メドゥの指先はレンボイって野郎を敵と見做した訳だな?」
ハヤトの低い声音に、ジルベルは嬉しそうな様子で数度、頷いた。
●レンボイ出現
各班は一旦、やや開けた空間で集結した。
思わぬ形で遭遇したジルベルからの情報と、これまでの探索活動の結果を総合する為だ。
「ジルベルが? それ、信用出来る?」
驚きを禁じ得ないアウレーリアの反問には、大半の者が答える術を持っていなかったが、バーネットだけは敢えて乗っても良かろうと渋い表情ながら二度三度、頷き返した。
「但し、そのレンボイってのを叩くのは俺達の仕事だ。歩兵団はクリーパーの排除に専念させる」
「ならば私も、対クリーパーだな。歩兵団だけに任せるのは危険が大きい」
小さく肩を竦めつつ、ナタリアは若い歩兵団員達の顔を横目で捉えた。歩兵団員達としても、ナタリアが共に戦ってくれるのは非常に大きな心の支えとなっている様であった。
尤も、レンボイを発見するまでにはまだ幾らかの曲折があろう。引き続き探索を進める為に、アウレーリアやサフィラ辺りが探索のノウハウと心構えについて更に細かく指導する必要があった。
「んじゃ、前衛班っ! 地図取りの基本をおさらいするよっ!」
サフィラが前衛班を集めて再度の指導を加える一方、アウレーリアは残りの歩兵団員を呼び集め、淡々とした調子で杖尻を硬い地面にこつこつと打ち付けた。
「中衛班と、それから後衛班も。人員運用、地図作成、索敵方法、及び戦闘計画立案についてもう一度説明を。既習範囲の応用で対処出来る筈だから、辛めに採点するわよ」
指導者としての立ち居振る舞いがすっかり板についているアウレーリアを横目で見遣りながら、バーネットとハヤトは彼女の生徒でなくて良かったなと軽い冗談を交わし合った。
そうしておよそ数分程度の再レクチャーが終わったところで、歩兵団員達はそれぞれの配置に就いた。
「では、行くか」
ナハティガルが先頭に立って、前衛班と共に奥を目指す。ジルベルの情報が正しければレンボイとの距離はそう遠くはない。
探索再開後、小型クリーパーと数度の接敵を果たしたが、そのいずれに於いても歩兵団主導で対処した。その際ナタリアが回復術と支援術を大いに駆使して、歩兵団員達を助けた。冒険者の刃に依らず、全て歩兵団員達の得物でクリーパーを斃すことが出来たのはナタリアの存在が極めて大きかった。
「私が接近戦に臨む必要が無いとは……戦闘技術は大したものだ」
ナタリアはロモズ歩兵団の戦術練度については安心出来る、と太鼓判を押した。後はダンジョン探索や斥候等の技量をどこまで伸ばしてやれるかといった点について考慮すれば良いだろう。
(彼らは十分に鍛えられている。今更ふるいにかける必要も無さそうだな)
後はレンボイを討伐することに冒険者達がどれ程の範を示すことが出来るのか。歩兵団員達が結果を出している以上、下手なことは出来ない。そういう意味ではハヤトもサフィラも若干気分が落ち着かなかったのだが、ふたりは決して顔には出さなかった。
「おい、ありゃあ魔法陣か」
そのハヤトが、サフィラに注意を促す。それまで前衛班にサバイバル技術の基礎について講釈しながら歩を進めてきていたサフィラも、ハヤトが指差す地点をじっと凝視した。
狭く、複雑に入り組んだ魔窟の中でひと際大きく開けた空間とぶつかった。ハヤトが指差す魔法陣の周辺に敵の気配が無いか、ナハティガルが薄闇の中を滑るように奔る。
そのナハティガルの体躯が弾ける様な勢いで横っ跳びに跳んだ。突然何も無い空間から超小型のクリーパーが出現し、襲い掛かってきたのである。ナハティガルの振るう刃は一瞬にして敵を屠ったが、いきなりクリーパーが現れたということは、近くに召喚師が潜んでいることの何よりの証左であった。
「そこかッ!」
バーネットの戦術眼がクリーパーの出現位置、広間の形状、ナハティガルが進んでいた位置から敵のおおよその位置を割り出した。
稲妻を思わせる光の波が、広間の左手側奥で迸る。バーネットは更に氷の矢を放ち、敵を炙り出しつつ、その可動範囲を極端に狭めようと試みた。
「歩兵団員、教えた通りだッ! ナタリアと協力して対クリーパー戦を警戒しろッ!」
バーネットの叫ぶ様な勢いの指示が、戦闘開始の合図となった。
現れたのは、老齢のリザードマン術師であった。
●歩兵団の明日
遂に姿を現したレンボイ。
先ずハヤトとナハティガルが疾風の如き勢いで距離を詰めてゆくが、敵も魔弾や氷弾で迎撃してくる。単なる召喚師ではなく、攻撃魔術にも長けた強敵だった。
「拙いッ! 総員散開ッ!」
アウレーリアは自身が用いる範囲攻撃魔術の発動手順を、レンボイが素早い所作で完成させつつあるのを咄嗟に見抜いた。直後、誰も居ない空間が激しい炎と爆風に包まれる。あと一瞬遅かったなら、歩兵団員達から少なくない数の犠牲者が出ていたかも知れない。
(あの術式発動の速さ……強敵ね)
如何にクリーパーを多数召喚しているとはいえ、これだけの人数の冒険者を相手に廻しても尚、強大な戦闘力を発揮する老齢のリザードマン術師。バーネットとアウレーリアが術を仕掛けて身動きを封じようとしても、敵は如何なる技を使ったのか、強引にその包囲網を突破して広い空間内を自在に駆け回った。
「ならば俺達の刃で動きを封じるしかないか」
「にゃっ! そういうことならお任せをばっ!」
レンボイの左右からナハティガルとサフィラが間合いを詰める。敵は前に出ようにも、バーネットとアウレーリアが放つ魔弾と光弾に行方を阻まれ、退路は極めて限定されていた。即ち、後ろだ。だがそこにはハヤトの振るう刃が待ち構えている。
「そうはいくかっつーんだよッ!」
電光石火の三段連撃が、背後からレンボイに襲い掛かる。レンボイは耳障りな雄叫びを放って、至近距離から迎撃の魔弾を撃ち出した。
長い距離を一気に詰めてきたハヤトは咄嗟の離脱が叶わず、またクリーパーとの戦闘で脚力を使い切ってしまっていた為、彼の刃とレンボイの魔弾は半ば相討ちの格好となったのだが、より打撃を受けたのはレンボイの方であった。矢張り接近戦の妙に於いては、ハヤトに分があった。
「クロ確定っ! やっつけちゃうよっ!」
サフィラの刃から放たれる光で足を封じられたレンボイ。そこへ更にナハティガルが別角度から三段連撃を叩き込んだ。予告通り、刃で動きを封じたナハティガルとサフィラは、ハヤトを担いで一気に間合いを離す。
そこへ火力と命中率を重視したアウレーリアの爆炎が炸裂し、加えてバーネットの光弾が立て続けに襲い掛かった。
この瞬間、別方向から巨大なブーメランが飛来した様に思えたが、ふたりの魔術師は気にもかけず、最後の集中砲火に全神経を注いだ。
その一方でナハティガルとハヤトは、ブーメランの存在に気づいていた。そしてその鋭い切っ先がレンボイの膝を砕く。
「いかん……殺してしまうぞッ!」
「ジルベルが何か仕掛けて来たぜッ!」
ナハティガルとハヤトは同時に声を上げたが、アウレーリアとバーネットの術式発動を止めるにはタイミングが遅過ぎた。ふたりへの制止よりも早く、圧倒的な破壊の波動が回避力を失ったレンボイに襲い掛かっていたのである。
そして、薄闇の中に残ったのは膝を砕かれ、全身を焼き尽くされた老術師の哀れな遺体であった。
召喚師が斃れ、これ以上クリーパーが出現しないことの担保を得た一行は鮮やかな程の撤退戦を展開し、残るクリーパーを全て討伐しながら紅煙窟を脱出した。
歩兵団員からはただのひとりも犠牲者は出ていない。彼らは貴重な教えと経験を、この魔窟内で更に積み上げたといって良い。
「また一段と顔つきが変わったな」
「今日の採点は十分合格ってところね」
バーネットとアウレーリアの評価に、歩兵団員達の間に喜色が走る。
そういえばとサフィラがナハティガルに水を向けた。近々隊長選抜考査が実施されるらしい。
「彼らと共に戦うのも、悪くないな」
サフィラも同じことを考えていた。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:多い6 / 4〜6人
2021年04月11日 20時50分55秒 公開
相談掲示板
キャスターのバーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 やる事としては、偵察やら調査のイロハを叩きこみつつ、 クリーパーが現れたら護衛、又は援護って所か? 少数のクリーパー相手なら経験を積ませるために歩兵団主体で戦わせて、 纏まった数が出てきたら、俺らが主体になって歩兵団には周辺警戒とか、 ごく一部の敵の足止めを頼むとかがベターだと思う。
にゃ!シーフのサフィラだよっ! んー、あくまでも歩兵団のサポートが メインなんだねっ で、ヤバそうなクリーパーが出てきたら 援護してもらいながらあたし達で片付けるって感じなのかなっ? そうすると、あたしは歩兵団の斥候見習いの子と洞窟を探索しながら斥候のいろはを教えようかなっ
おーっす! ゴブリンのシーフ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、みんなよろしくな!! 今回はロモズ歩兵団がどんだけ使えるようになったか見極めつつクリーパーとの戦い方を見せて教えるって感じでいいんだよな? ロモズの連中とはそれなりの付き合いになるしきっちり仕事はこなすぜ!
シーフのナハティガル=ラーだ。 初見も、そうではない者も今回は宜しく頼む。 ロモズ歩兵団の選抜歩兵十数名を伴ないつつ、紅煙窟の調査とクリーパー討伐を行う訳か。 そうなると。先ずは調査を主体に洞窟内を探索する形となりそうだが、 全員で行動するには些か大所帯ではあるな…。
ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。 歩兵団との関わりはこれが初めてになるが、一つよろしく。 何分彼らの練度に関しても私からすれば知らない訳だから、それを確かめるのもそうだが死人を出さない為にも回復やバフでの支援を行う事が主となる。
キャスター、アウレーリアよ。宜しく。 とりあえず、歩兵団としてひと通りの仕事は出来るようになっている筈だけれど。 クリーパー相手の実戦は初めてだわ。損害を出させないよう援護しつつ、経験を積ませましょう。 索敵や戦術立案も、ある程度は彼らに任せて良いかも知れないわね。 ジルベルはともかく、レンボイと交戦する可能性が無いとは言えない。 その場合は流石に私達が前に立ちましょう。 ……一応、対キャスター戦術も教えはした心算だけれど。
>方針 >洞窟内 人数が多いと動きにくいのは確かだが、歩兵団を分割すると孤立した時の対処に不安がでる。 とはいえ一塊で動くのも効率が悪いし、いっそ俺達一人一人が何人かの歩兵団の引率をして、 指導兼護衛として動くってのは有りかもしれない。 斥候するにしたって、全員で同じ個所を確認する必要もないし、 待機して周辺警戒や退路の確保をする面子も居た方がいいしな。
んー、確かに洞窟内をわらわらと歩いてたらいざってときの対処が遅れるよねぇ いくつかチームに分けて移動するのはいいアイディアだと思うよっ! チーム別に動くとしたら シーフ引率のチームは先行して哨戒 ナタリん引率のチームが中盤を固めて キャスター組のチームが後方警戒 って感じで動いてみる?
>班分け バーネットやサフィラが挙げてくれている様に、役割毎に班分けしての行動を推させて貰う。 (俺達含めて)20名以上が一気に洞窟に入っても、戦闘が発生した際に身動きが取れるのは先頭か最後尾の一部分だけになるだろうしな。
No.13
やぁ冒険者諸君。 明日の朝一にゃあ出発だからな。白紙になってないか、しっかり確認しといてくれよぉ。
∑にゃ!?ジルベル!?
とりあえず、前回余分な文章添削し忘れてたが気にしない事にする。 >方針 ・前衛、中衛、後衛に班分けし、それぞれの班に最低一人は入り指導と護衛 ・前衛は斥候、中衛は戦闘に備えつつ周辺警戒、後衛は遊撃と退路の確保を主に行う 割と時間ギリギリだが、問題無ければこんな感じで俺の方で記載しておこう。 >個人行動 俺はこの分け方で言えば後衛、戦況に応じた遊撃と退路確保をやるつもりでいる。 戦術眼で戦況を把握してアドバイスしつつ、敵が群がって来たらアーケインテンペスト改で 足止めしたり、メテオライトで範囲攻撃って所だな。
>バーネット >方針 前衛、中衛、後衛での班分け了解した。 俺は前衛で斥候担当になるな。 現状だと捜波・改と探波はハヤトとサフィラが活性化している様なので、 俺はスカウトの心得で洞窟内を索敵する事にしよう。 >行動 ハヤト、サフィアと共に歩兵団の斥候希望者4~5名前後を引率して洞窟内を探索。 洞窟内の構造や罠の有無に注意しつつ進行。 クリーパーと遭遇した際は可能な限り戦闘は避けるが、無理なら速やかに撃破。 ――上記のような動きを予定しているが、何か問題があれば指摘をお願いする。 >ジルベル ――ん? 何か声が聞こえた様な…空耳か?(小首傾げ)
>班分 りょーかいっ! 先行して【探波】と【看破】地形とか敵が居ないかどうかを探っとくねっ! >行動 シーフ組は三人+各員それぞれ4~5名を引率って認識だねっ、おっけー! よわよわなクリーパーだったら歩兵団の人達にも手伝ってもらって経験値つんでもらおうかなっ!