エスト・ポーラ・ランドシップ
真柄 葉
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シナリオID:745
オープニング
港湾都市エスト・ポーラ。
長きにわたり同盟領の最大港湾都市として君臨したのも、今は昔。
現在では、新興のリブラネスタに大きく水をあけられた状態が続いていた。
しかし、だからと言って、街が寂れているわけでは決してない。日々、数多の船舶が往来し、様々な荷が港に上がる。同盟都市第二の港の名は伊達ではなかった。
だからこそ、商人達の熾烈な生存競争もまた、ここでは日常茶飯事の事で――。
「これはこれは、ようこそおいでくださいました、ペドロ議員」
「お招きいただき感謝いたしますぞ、ロベルト女史」
「こちらへ。今日はいい百合茶が入っておりますの」
「ほう、それは楽しみですな」
商館の中でも最も豪奢な部屋へと大切な客人を通したのは、この館の主『ネム・ロベルト』。
ロベルト家の現当主である彼女の家は、穀物商として長く続く由緒正しき豪商の血筋だった。
「それで、相談とは?」
と、ネムの正面に座る初老の男が問いかける。
「はい、実はエスト・ポーラの未来についてのお話なのですが」
「ふむ、これは壮大な話になりそうですな」
出された最高級紅茶で口を湿らせたペトロは、続きを話せと女主人に視線で訴える。
「この数年でエスト・ポーラの勢力図に少し変化があったのをご存知でしょうか」
「勢力図というと、商人のそれですな。いえ、残念ながら存じ上げない」
ネムの問いに答えたペドロ。しかし、それが嘘だという事はその落ち着きから容易に察知できる。
「ベイカー」
そんな古狸をたきつけるようにネムが口にしたその名に、案の定ペドロはピクリと眉を動かした。
「最近、名を売ってきている商会の名ですわ。現当主は三代目。これが神眼と謂われた初代を上回る辣腕ぶりなのです」
「……おかしいですね。私の記憶が確かならば、その商会は――」
言葉を返すペドロを遮り、ネムは話を続ける。
「そうです。貴方が二代目をそそのかし破産寸前まで追いやった、あの商会です」
「……何のことを言っておられるのかわかりませんね」
妖艶に微笑むネムに、ペドロは小さく首を振る。
「あら、これは失礼いたしました。私の掴んだ情報の確度が低かったようですわ」
否定されたことに大仰に驚いたネムは優雅に頭を下げた。
「ですが、このベイカーが再びこの街に影を落とそうとしているのです」
「街に影を、ですか。なるほど」
ロベルト家に影を、の間違いだろうと内心毒づいたペドロ。
「いかがでしょう。議員のお手をお借りすることはできないでしょうか。――あの時のように」
そんな内心まで読んでか、ネムはすがる様な声で懇願したのだった。
●
この日の港の空は、厚い雲に覆われていた。
「行商人をしておられたのですから、さぞ道にはお詳しいのでしょうね」
「それはもう! この辺りの道はけもの道に至るまで全てこの頭の中に入っていますよ!」
執事風の男と並び歩くガリウス・シーンは、大仰に両腕を広げる。
「それは頼もしい。やはり貴方を選んでよかった」
それに対し、執事はにこやかに賞賛した。
「それで荷物はどこに?」
「はい、この先に停泊している『船』です」
にこやかな笑顔で港を指さした執事。
「荷物の総量は……そうですね。荷馬車6台分。と言ったところでしょうか」
「6台分……なかなかの量ですね」
「はい、それだけの『大物』ですから」
そうやって仕事について話していると、二人は港に辿り着いた。
「あの船ですね。それでは荷下ろしを行います。水夫を呼んでくるので少しお待ちください」
目的の船を見つけ、荷下ろし夫を雇う為に詰所へと向かおうとしたガリウス。
「いえ、荷下ろしは必要ありません」
しかし、執事の声に足を止めた。
「はい? 一体どういうことですか……?」
不思議に思いガリウスが問いかけるが――。
「運んでもらうモノは、この『船』です」
「……なんですって?」
「聞こえませんでしたか。運んでいただくのは、この『船』です」
「こ、この船を陸送しろと仰るのですか……?」
「そうです。主人のお孫様がどうしても別荘でお船遊びがしたいと申しまして。いやはや、主人の人の好さにも困ったものです」
執事はやれやれと首を横に振りつつ、愕然とするガリウスを見やる。
「まさか、出来ないとは仰いませんよね?」
そう言うと執事は懐から一枚の羊皮紙を取り出した。
「そ、それは! しかし、話が違うじゃありませんか!!」
「なにも違いません。契約には『荷船』としっかりと記載しています」
執事は焦りを露にするガリウスに羊皮紙を開いて見せる。
「そ、そんな……そこは『船荷』だったはず……!」
「なにを仰います。最初から『荷船』ですよ。貴方が読み違えたのでしょう」
そう言って薄く微笑んだ執事は羊皮紙をくるくると丸め懐にしまう。
「これは契約です。商人が命よりも大切にしなければならないものと伺っていますが?」
「ぐぅっ……」
執事の問いかけにガリウスは何の答えも返せなかった。
●
「ベイカーさん!!」
「これはガリウスさん、どうかされましたか?」
執務室に駆け込んできた知り合いの商人に、セドリック・ベイカーは商人特有の笑顔で迎えた。
「助けてください!!」
「ふむ、穏やかではありませんね。一体どうされたのですか?」
はぁはぁと息を切らし執務机に身を乗り出す知り合いに、セドリックは笑顔をのままに問いかける。
「た、大変な……大変な仕事を請け負ってしまいました」
「ふむ。詳しく聞かせてもらえますか?」
顔面蒼白な知り合いを不憫に思ったのか、セドリックは筆を置き聞く態勢に入った。
「あ、ありがとうございます!!」
ガリウスは沈んでいた表情をぱっと明るくし、セドリックに事の経緯を事細かに説明した。
「……なるほど、お話は分かりました」
「な、何とか助けてはいただけないでしょうか!」
「ふむ……お助けしたいのは山々ですが、ことこの件に関してはガリウスさん、貴方に全ての責がある。私が出て、どうこうという話ではありません」
「そ、そんな……」
色のいい返事を聞けなかったガリウスは、膝の力が抜けたのかその場でへたり込んでしまった。
「申し訳ありません」
――とさっ。
セドリックの返事にへたり込んだガリウスの懐から丸めた羊皮紙が転がり落ちる。
「なにか落ちましたよ」
セドリックが声をかけるも呆然とするガリウスはその事にも気付いていない。
最早拾う元気もないのかと、セドリックは半ば呆れながら机を回り羊皮紙を拾う。
「これがこの度の契約書で……っ!?」
羊皮紙を封印していた封蝋に、セドリックの視線が釘付けになった。
「……ペドロ議員なのですか?」
「え? は、はい。そうです、ペドロ議員からのご依頼です」
突然出た名前に一瞬戸惑うも、セドリックの一言に我に返ったガリウスは、依頼主の事を聞かれていると判断し肯定した。
「……わかりました。この件、私が手を貸しましょう」
「ええっ!?」
先ほどまでの態度はいったいどこへ行ったのか。突然の豹変にガリウスは困惑する。
「ありがとうございます……ありがとうございます! ベイカー商会がお力を貸してくれるのであれば、この商談は成功したも同然です!」
「いえ、ベイカー商会は関与しません」
「へ?」
「この件は私個人で手を貸します」
「そ、それはいったいどういう事ですか……?」
「商会は関係ない、ただの……個人の私怨です」
そう言ってセドリックは、契約の右手をガリウスに差し出した。
解説
マスターより
リプレイ
「――ああ、その値段でいい。だから、下手な物は積み込んでくれるなよ?」
材木商相手に【交渉】を繰り広げていた海神・江流が、注文書にサインする。
材木商は満面の笑みで注文書を受け取ると、水夫達に指示を飛ばした。
「どうやら交渉はうまくいったようですね」
と、そこへ船のタラップを降りてアクティオンがやってきた。
「ああ。そっちは?」
「船の点検は完了しました。中古の船でしたから、やはり大小いくつかの傷がありましたね」
「お疲れ様。依頼主には伝えてくれたか?」
「ええ、じっくりと見聞してもらい、サインもいただいてます」
「重畳。これで後でいちゃもんつけられることはないな」
「傷が増えなければ、の話ですけどね」
「違いないな」
とアクティオンは、『商品』である船を見上げる。
「別の手も打ちましたし、クレームはないものと思いたいですね」
「はは、これか」
言って二人は辺りを見渡す。港はこの前代未聞の搬送劇を見ようと野次馬が詰めかけていた。
「まさか、見物人を証人にしようとはね」
「依頼主からの証文だけでは、どうにも心が休まりませんでしたので」
やれやれと二人して肩を竦めた。
「出航の準備もできた、ます! 積み荷に異常はない、です! いつでも行ける、です!」
そんな二人に船縁から顔をのぞかせた、蒋・璃龍が声をかける。
「風よし、波よし、人目よし。それじゃ行きますか」
江流は璃龍に手を振り返しつつ、アクティオンに話しかけた。
「ええ。では、現地で」
「ああ、現地で」
そう言って、江流はタラップへ。アクティオンは他の仲間の元へと別れた。
●
春のうららかな陽気がかすかな眠気を誘う。
「街道は平和そのものだね」
心地のいい春風に頬を撫でられながら、ララベル・サン・ディーベルはあくびを噛み殺す。
「これだけ見晴らしがイイっスから、流石に襲ってこないっスよ」
先頭の荷車の御者台に座るカタラが、ララベルに答えた。
「しっかし、とんでもない事を考えるんだな、冒険者ってのは」
「正攻法で行けば、妨害されているのは目に見えてるからね。裏の裏をかかなきゃ」
並走する荷馬車にはガリウスとエルゼリオ・レイノーラが座っている。
「一人、不審な去り方をした人影が居ました」
と、先頭の馬車の手綱を引き【ホークアイ】で索敵していたアクティオンが皆に声をかけた。
「妨害工作員か斥候ってところかな。ご苦労様だね、でもこっちには何もないよー」
アクティオンの指さした方を見つめるララベルがくすくすと笑う。
「残念っスけど、こっちは本命じゃないっスよー」
そして、敵が居た場所に向けカタラが気だるげに後ろ髪をフルフルと振るものだから、皆の笑いを誘った。
「今頃、遡上してくる船の妨害をどうするか、頑張って考えてるんじゃないかな?」
「ええ。妨害を避ける為にも、どこで揚陸するかが重要になりますね」
「うん、出来るだけ早く場所の確保と設備の組み立てをしないとね」
アクティオンとエルゼリオの二人は、そう話し合うとゆっくりと流れる川面を見た。
●
幸いにして風は海風。遡上を助ける春の風は、帆をパンパンに膨らませた。
「――斥候っぽい奴を見つけたそうだ」
「という事は、船が川を遡上してるって事がバレたのか、ます」
ララベルからの【テレパス】を受け、江流はマストの上の璃龍に伝える。
「まぁ、あれだけ派手に出港したしな。いずれバレただろうけど」
「初手は潰したかもしれないけど、他の手を打ってくるはず、です。もっと警戒する、ます」
と、璃龍は瞳を閉じ風に耳を傾けた。
「危険は風と空が教えてくれる、です」
遮るものの何もないマストの上、春風が璃龍の頬を撫でる。
「見張りは任せるよ。俺は――英気を養っておく」
そんな璃龍を見上げた江流は、マストに背を預けると瞳を閉じた。
●
先行する荷馬車が馬を止めた。
「この辺りがいいんじゃないっスかね?」
カタラが河原の一角を指さす。そこは砂利は均一にならされ、荷揚げ用の丸太を敷くにも都合がよさそうに見える。
「うん、あの奥の土手は荷馬車に船を載せるのに使えそうだね」
と、エルゼリオが対岸の土手を指さした。
「対岸で揚陸できるなら、橋を渡る必要もないもんね。いい場所があってよかった」
「とはいえ、この荷馬車は橋を渡らなければなりません」
ララベルとアクティオンが上流に視線を向けると、50m程先に欄干の無い橋が架かっている。
「きっと何か細工をされてるよね。僕、先に行って調べるよ」
「ええ。船揚げには時間がかかります。周囲の脅威はできるだけなくしていきましょう」
再び馬に鞭を入れた地上班は、川を渡る為、一路橋を目指した。
●
馬車を渡す予定だった橋にはやはり細工がしてあった。しかし、それもアクティオンが【看破】で見抜き、ララベルがロープでがっちりと補強する。そうして、荷馬車は無事に橋を渡り、揚陸場所での引き上げ装置の建設を開始していた。
「うん! そのままそのまま……ストップ!」
【建築・土木】に明るいエルゼリオが陣頭指揮に立ち、仲間達が指示を受け丸太を組み上げていく。
「エルゼリオ! どうかな、水平になってる?」
組まれた櫓の天辺から、ララベルがエルゼリオに問いかける。
「大丈夫! そのまま固定して!」
「はーい!」
「引き馬用のスペースはこんな所っスかね」
土手の向こう。揚陸用の動力に馬を使おうと考えたカタラが、引馬用のスペースの確保を行っている。
「うん! 馬にもいっぱい頑張ってもらわないといけないから、出来るだけ綺麗に整地してあげて!」
「了解っス。それじゃ、大きな石とかもどけてしまうッス」
「滑車のかけ方はこれであっていますか?」
「うん、大丈夫! もう一個同じように右側に吊るしてもらえるかな!」
揚陸用のロープをかける為の滑車の設置を行うアクティオンが、エルゼリオに問いかけた。
「ここでいいでしょうか?」
「おっけー!」
それぞれが持ち場につき、エルゼリオの指揮の元、突貫で揚陸装置を作り上げていく。
●
「見張りご苦労さん。よかったらどうぞ」
見張り台へと上ってきた江流が璃龍に声をかけた。
「あっ、ありがとう、です」
春とはいえマストの上は寒いだろうと江流が差し出した温かな飲み物を受け取り、璃龍が頭を下げる。
「船側の準備は終わった。周りの様子はどうだ?」
「今の所、特に風は騒いでない、ます。こちらの警戒が厳重な事と、船を遡上させたことで相手の計画が色々と崩れていると思う、です」
「相手の冒険者を雇う所までは予想できただろうけどな」
江流の言葉に二人してくすくすと笑う。
「もうすぐ揚陸装置にほうも準備が終わるみたいだ」
「わかった、です。何とか、日暮れに間に合ってよかった、ます」
●
「おぉ……まさか、これだけの設備を半日で作るなんて……冒険者って何者なんだ」
出来上がった揚陸装置を前にガリウスが驚きをながらも、頭の中で「商売にならんかな」とそろばんを弾いていると、エルゼリオがやって来た。
「まだまだ、これからが本番だよ。強度と力量の計算は間違ってないと思うから、きっとうまくいくと思う」
「そうだったな。しかし、これをよくこの人数で……どこかで習ったのかい?」
「うーん、習ったと言えばそうなるのかな。一応、父上の教え、ってことで」
ガリウスの問いにエルゼリオは気恥ずかしそうに笑った。
「それじゃ行くっス!」
引馬の手綱を握りカタラが土手にいる仲間達に声をかけた。
普段は極力動かないことを信条にするカタラも、この時ばかりは働きたがらない身体に鞭を入れ――。
「さぁ、あたいの分もしっかりと働くっス!」
はせず、馬達の努力に期待した。
「よし、ロープが張った。――いくぞ、抜錨!」
甲板で土手の様子を眺めていた江流が、水夫達に声をかける。
停泊用に落としていた錨が上げられ、船はロープに引かれ岸へと船首を向けた。
「蒋さん、相手の動きは!」
「今のところまだ……うん?」
「どうした!」
答えた璃龍が風に耳を傾けた事に不安を覚え、江流は再び問いかけた。
「何かいる、です。林……木々が騒めいてる、ます!」
じっと空の音に意識を向けながら、璃龍がマストの上で叫ぶ。
「くっ、狙ってたのか……?」
璃龍からの報を聴き、江流はすかさず【テレパス】で仲間へ状況を報告した。
●
「僕が行くよ!」
江流からの報告に真っ先に飛び出したのはララベルだった。
揚陸作業を他の者に任せ、林道の入口へと急ぐ。
「一人ではもしもの時に対処が難しいですね。自分も一緒に――」
「待った! 今そこを離れられるときついんだ。ララベルさんを信じよう」
と、アクティオンが持ち場を離れようとしたところを、エルゼリオが止めた。
「ですが、もしもの時に一人では……」
「うん、それもわかってる。でも、今一人抜けると作業が大幅に遅れちゃうんだ」
「でしたら、出来るだけ急いで作業を――」
「あたいが行くっス」
急ぎ作業に戻ろうとした二人に声をかけたのはカタラだった。
「カタラさん?! でも、馬引きは」
「ガリウスさんに任せたっス。手綱を引くだけだからたぶん大丈夫っス」
驚くエルゼリオに、カタラはちらりと整地した場所を見る。
「――わかった、そっちは任せるね」
「了解っス」
そう言うとカタラは今までのぐうたらが嘘のようなスピードで、ララベルを追っていった。
●
「っ! 海神さん!!」
再び何かを察知し、見張り台から璃龍が甲板の江流に向け叫んだ。
「今度はどうした!」
「橋が! 補強してもらった橋に人影が見える、ます! 手に――多分松明を持ってる、です!」
「何っ!? まさか焼く気か!」
「そうかもしれない、です! 急いで向かわないと……!」
「くそっ……こっちは手を離せない! 陸の方もさっき林道の対処に二人向かった!」
「なら、ワタシが行く、ます!」
言うと璃龍はスルスルとマストから降りてきた。
「今橋が落とされたら、流れてきた丸太で船がダメージを受ける、です。それに、ワタシが抜けても作業自体に遅れは出ない、ます」
「……わかった、橋は任せる。見張りはこちらで何とかするよ」
璃龍の言葉にしばし考え込んだ江流は、静かに首を縦に振った。
「ありがとう! よろしくお願い、です!」
江流の許可を取り付けた璃龍は、船縁から陸にいる仲間にも声をかけると、ロープで河原に降りる。
「必ず止める、です!」
それだけを言い残し、璃龍は河原を川上に向け駆けて行った。
●
璃龍が見た通り、橋には不審な人影が数名、松明を揺らし蠢いている。人影はその松明を使ってララベル達が橋の補強を行ったロープを焼き切ろうとしていた。
「そうはさせない、です!」
不審な人影を見つけた璃龍は、河原から橋へと上がり対岸へ向け駆ける。
人影もそれに気づいたのか、慌ててロープに松明を当て着火をすると、すぐさま川に飛び込み逃げ出した。
「くっ……あんなに沢山……!」
松明で火を付けられた個所は複数に及び、一つ一つ消していたのでは間に合わない。
「それなら――」
璃龍はすぐにその事を悟ると、川へ向け大きく飛んだ。
「まとめて消す方法だって、ある! です!!」
空中で槍を大上段に構えた璃龍は、【闘気槌2】の光を纏わせ、川面に思いっきり打ち付けた。
●
警戒しながら林道を行くララベルとカタラ。
「璃龍は木が揺れてるって言ってたから、何か居ると思うんだけど」
「また妨害工作っスかね。それとも魔獣とか盗賊の襲撃とか?」
左右の森は不気味な静けさを纏っていた。
「道幅も狭いし、襲撃するならもってこいの場所だよね。もっとしっかり調べよう」
そう言ってララベルは辺りに耳を澄ませた。
「他の道を探すっスか?」
「ううん、ガリウスさんの話では、道はこの林道一本だけらしいから、やっぱりこれを通る必要があるよ」
辺りを警戒しながらも、ララベルが首を振る。
「そうっスよね、やっぱり……おや?」
「うん、どうかした?」
カタラがふと立ち止まり首を傾げた。
「雨なんて降ったっスかね?」
「え? いや、しばらく降ってないと思うけど……」
「うーん、じゃ、あれは不自然っすよね」
と、カタラが前方の地面を指さす。
「あれって……水たまり? なんでこんな所に」
「ちょっと不自然じゃないっスか?」
「うん、調べてみよう!」
そう言うと二人は駆け出した。そして、発見した水たまりは案の定――。
「油だ」
「火計っすか。見境ないっスね」
――罠であった。
●
「は、は、は……くちゅん。まだ水は冷たい、です……」
全身びしょ濡れの璃龍が戻ってきたころには、船は土手まで達していた。
「お疲れさま! で、帰ってきてすぐに申し訳ないんだけど、手伝ってもらえるかな?」
璃龍にタオルを手渡しながら、エルゼリオが頭を下げる。
「大丈夫、です。どこを手伝えばいい、ます?」
「ありがとう、それじゃ、コロの振り替えを――」
と、頷いた璃龍にエルゼリオは土手を指さした。
「よし、乗った! そのまま馬車に固定していくよ!」
作業人数を減らしながらも、揚陸作業は何とか馬車へと乗せる段階までこぎつけた。
「ロープを下ろすぞ! 受け取ってくれ!」
「いつでもどうぞ!」
甲板から江流が投げたロープを、下でアクティオンが受け取り、水夫達と協力して馬車に船体を固定していく。そして、陽も沈む頃、ようやく全ての作業が終わった。
●
ふらふらと不安定に揺れながらも、荷馬車に積まれた船はゆっくりと林道を進む。
「林の木に船体を擦らないよう、慎重に行こう!」
甲板から江流が声をかける。
「接触しそうな枝は撃ち落としていきます」
船首に立つアクティオンが弓を構えながら江流に答えた。
「このまま何もなければいいんだけど」
エルゼリオは荷崩れや咄嗟のトラブルに対応する為、馬車と共に地上を行く。
「誰か来る、です!」
そんな時、再び定位置の見張り台へと戻った璃龍が、声を上げた。
一向に緊張が走る中、前方から現れたのは――。
「おーい!」
大きく手を振るララベルと、疲れ切ったカタラだった。
火計の妨害を察知した二人は、ずっと地道な除去作業を行っていたのだ。
「――火計!? 見境ないな」
「同感っスっけど、事実っス」
油に汚れたカタラにタイルを貸しつつ江流が驚きの声を上げる。
「でも、何とか除去できたから、もう心配ないと思うよ!」
こちらもエルゼリオにタオルを受け取ったララベルが、指先で鼻を擦った。
こうして予想された様々な妨害の先を読み切った一行は、最後の林道を気を緩めずに進む。そして、すっかり夜も更けた頃、無事に目的地の別荘へと辿り着いたのだった。
マスターコメント
ショートシナリオR普通 報酬:標準6 / 4〜6人
2021年04月03日 07時07分43秒 公開
相談掲示板
シューターのアクティオンです、よろしく。 まずは陸路で運ぶか、川を通すかからですかね。 川から陸にあげる手段がいまのところピンときませんので、陸路の方がやりやすいかとも思いますが……川だと上流から障害物を流す、みたいな妨害もあり得そうですし。
シーフの海神江流だよ。今回は宜しくね。 アクティオンさんの言うように既定路線の陸路か、川を行くか。 先ずはそこから選ばないとかな。 道中のトラブルについては、陸路はもう「道の寸断や、渡河予定の橋の強度不足。林道の狭さや野盗、魔獣などの襲撃」とこんだけ予想が挙がってるんだよねぇ。 個人的には船で川を登ってみたい気もするけど。 川から陸に上げる方法… 川岸から丸太を並べて、陸に向けてロープで船を引きながら丸太の上に乗せていけば岸に上げる事自体は無理ではないんじゃないかな。 別荘の直前は林道となっているから、丸太を確保すること自体は手間はともかく無理ではなさそうな気もするけど。 船のサイズと重量、別荘にどういう状態で持ち込む必要があるのかによって、ここの難易度は全然変わっちまうような気がするんでホリーさんに確認してみようか。
教えてホリーさん。 Q1:荷船の運搬先について ”別荘でお船遊び”をする為に運べって事なんだけど、船遊びって事は水に浮かべるイメージがあるんだけど、別荘に面した湖や川に下ろせばいいのかな? それとも、到着地点の別荘の水場じゃない所に設置しないといけないって事になる? Q2:船の詳細について 荷車に積み込み済みって事なんだけど、どうやって荷車に積んだのか、ちょっと気になる。 本題としては、どれくらいの大きさなんだろう? 20フィートくらいの小型クルーザーサイズ。とかイメージを具体的にしたいので分かる範囲でお願いできれば。 あと、もし川を上る場合、何を動力にして動く感じなんだろうか? ってあたり、可能な範囲でお願いします。
ウォーリアの蒋・璃龍、です。よろしくお願いする、ます >運搬ルート 川から陸路に挙げるのは、船のサイズを考えるとかなり手間取りそう、です。 丸太をコロにして持ち上げるのは出来なくはなさそう、ですけれど、海神さんの言う通り、船のサイズと川の状況で難易度はばらつきそう、です。 それに、その際に妨害されてしまうことも考えて、対応しないといけないと思う、ます 馬を借りられるのなら、船を川から揚げる際に引っ張ってもらう、というのも悪くはなさそう、です
はい、お答えしますね! Q1:荷船の運搬先について 別荘に池やプールはありませんので、地面にそのまま置くことになりますね。 Q2:船の詳細について 船を荷車に積んだのは港に設置されている船引き上げ用の大型クレーンですね。 船の大きさは全長20m程の2本マストの帆船です(キャラベル級帆船と思ってください) ちなみに荷車1台は全長5m程で、二台を横に丸太で繋げて、それを三列縦に並べて船を載せています。 川を遡上する動力は風力です。幸い川は流れが緩やかなので、うまく風を受け操船すれば遡上も容易でしょう。なお、遡上する場合は港のクレーンで船を下ろします。 こんな所でしょうか! 依頼、頑張ってくださいね!
ヒーラーのカタラっスよろしくっす あたいは川からルートに一票入れとくッス 川の中であれば浮力と水でどうにでもなる風や揺れでも、陸上だとやばいッス 船時代のあたりがあれッスから倒れやすいってのはこわい ッスよ、妨害を受けたときに倒れて壊れる、ぶち当たられて壊れるってのが考えられるッスから 陸揚げはちょっと手間ッスけどあげたい場所にまっすぐ直線で丸太を2本(もしくは2、2で4本)敷いて、その上をコロで転がして馬で牽いてやれば大文楽にはなると思うッスよ
>川から陸へ >丸太に乗せて転がして上げる 陸路用の荷車に丸太はあるので資材は問題なさそうですか。 馬と荷車と必要な道具は結局街道で運んでしまうとそっちも守らないといけないので、川を遡上する場合は船に積んでしまってもいいかもしれません。 何かをぶち当てられて破損、は川を遡上の場合でも問題になるので、やや先行気味に周辺偵察なんかもする必要がありますかね。
ヒーラーのエルゼリオ・レイノーラだよ。 今回は宜しくね! >ルート 陸上からの妨害とかを考えると、川で遡上する事が可能なら川ルートの方が良いかもねぇ。 問題は船の陸揚げだけど――カタラさんが言ってるように丸太を敷いて転がすのが良いと思う! 一応、建築・土木のスキル持ってるから、(資材さえあれば)テコの原理を利用した即席の引き上げ器を作成する事は出来るかも?
20m…思ったより大きかった。 今の所、川からの方が票が多い感じだね。 丸太の上を転がすのと、後ろからテコで押す。引き揚げ機が作れるならなおよし。 なんとか行けそうな気がしてきたかな。 川からは、最後で死ぬ程頑張らないといけないけど 陸路は正直、橋の強度不足で橋から落ちたらリカバリーの手段が思い付かないのもあるんだよね。
今の所、みんな川のほうが良いという意見が多い、ですので、その方向で考えた案で相談する、ます >船の陸揚げ 20mの大きさの船ならば、色々載せられそう、です もともと、陸路運搬で使おうとしていた荷車は6台(+丸太)ある、ますけれど、いくつか載せられるのであれば、コロだけではなくて、コロを利用して荷車へ載せてから、荷車で最後、運んでも良いかもしれない、です 荷車5mのサイズなので単純に平べったくは並べられない、ですけれど、船を載せても壊れなぐらい丈夫であれば、縦に重ねたり、あるいは、横にして平べったい状況で立て掛けてロープで固定したりしてうまく積み込めそう、です >妨害 川幅が広いので、通常の妨害は難しいと思う、ますけれど、渡河予定だった橋が、川ルートにかかっていたものだとすると、これを川に落とされたら、退かさないと船の進行の邪魔になりそう、です あと、動力が風なので、マストをやられてしまうと致命傷だと思う、ます。なので、マストはしっかり守りつつ、帆の予備とか、ロープの予備とか、破損した場合でもカバーが可能なところは予備を準備しておきたい、です
川での妨害ってなると、考えられるのは航行中の水面下での穴あけ、夜間の火矢、後は魔法による妨害ッスかね? 船体底のに関しては船倉下部で誰かが音を聞いておくってのは必要かもしれないッス 火矢等は防火水を樽に準備して甲板各所に置くとかッスかね? 蒋さんも言ってるッスけど、動かすために必須ッスからマストや帆を守るために交代で上で監視がいるッスね 橋もこわいッスけど、これ引き上げ時を狙われるのが怖いッス 引き上げで手いっぱいの所にくるっすから ウマを使っていかに迅速に引き上げるかが大切かもしれないッス 可能であれば馬車で先に丸太を運んで荷上場の選定と簡易線路を作るつってのもやりたいッスけど難しそうッスね 線路を作ってその上をコロ使って動かすッス
広い川の場合、橋を落とすとなると架け替える費用は甚大になるッス、となると元々古い、そろそろ架け替え時期、そして敵さんが落とした後に恩着せがましく架け替えられる場所であることなんてのも考えられるッスから、そこの確認を馬車で先行して丸太を運びつつお仕事してるように見せかけて、川にかかる橋の安全、工作がなされてないかってのを調べながら行ってもらうってのも考えてたっス 何かあったら連絡を取ってと
>馬車で先に丸太を運んで先行 この場合、あちらからすれば船か馬車組かどちらかを潰してしまえば良く、こちらは両方を守らねばならない問題が出るかと。 船自体は大きいようなので、丸太は船で運ぶに一票ですかね。 橋など、川を遡上する上で障害になるポイントを先に確認する・引き上げに適したポイントを探すといった身一つでの先行はアリと思いますが。船に人を乗せすぎても手が余ることもあるでしょうし。 自分自身は正直船上でやることがあまり思い浮かばないので、必要であれば先行しますが。 橋に細工にしても、木工スキル等もあるので、細工そのものをどうこうすることは出来なかったとしても「何かされている」看破はある程度出来るかもしれませんし。
>陸路で資材運搬 陸路で先回り⇒簡易的な船引き上げ器作成⇒船が到着次第、陸上に引き揚げ …って流れに出来れば理想的かなー?って思ってたけど、やっぱり難しいかなぁ…うーん…。 陸路での資材運搬が出来ないなら、 船に積み込める範囲内の資材で何とかして引き揚げ&運搬時に使う道具を賄うしかないか。 >班分け 川で船を運搬する班と、陸路で先行偵察する班に分かれるカンジになるのかな?
>資材運搬 陸路では、妨害に対する懸念で、ワタシも難しそうだと思う、ます シンプルに、船で運んでしまって良さそう、です >先行偵察 身軽になって移動するなら、先行偵察する価値はあると思う、ます 荷車用の馬に乗って、歩くよりは速度が出る状況で先行して、様子見、トラブルがあれば狼煙を上げたり、川沿いの木に色のついた布を結んで、青で問題なし、黄色で要注意、赤で危険みたいなことをするとかはできそう、です 相談ができるポイントをいくつか決めて、大声を出せるスキルがあったかは覚えてない、ですけれど、超聴覚が使える人を船と偵察班とで準備して、離れていても会話できるようにする、とかで詳細な打ち合わせができそうかなと思う、ます
僕はシーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、よろしくね。 超聴覚は持っていこうと思ってるよ。 あと、船と偵察班にテレパス使える人がいたら、詳細連絡もし易くなるかなと(100メートルじゃ届かないほど川幅広かったらあれだけど・わたわた)…その場合は僕、テレパス持っていくね。 >班分け希望 僕は先行偵察の方に回りたいな。
こっちが分けなければいけないように、向こうさんも二手に分けなきゃいけないっていう罠にもできる可能性をかんがえたっスけど難しそうッスね 馬車の方はおとりで最悪は馬さえ残して逃げてもらえればいいとおもってたッス 本命は船で運ぶ資材、敵さん馬車を切り捨てて船を攻撃ならそれはそれで馬車で持って行った資材で先行エルゼリオさんの言う通りサクサクっと水揚げできるかもしれないって
すまないッス途中送信しちまったッス 自分はもしあれなら偵察の方にいってもと思ってたっス 回復使えるんで少々の気が気にせず動けるッスから
それじゃ、俺は船の方に入ろうかな。 必要そうならテレパスも持っていくよ。 あとは船に資材積み込む段で段取り良く行くように【交渉】を持参しておこうか。 他は、所持品に引き上げの際に使えそうなロープを入れておこうかな。ってくらい。 引き上げ機の作成はエルゼリオさんやスキル持ちの人に主導してもらう感じでお願いしてもいい感じかな? 引き上げの際には俺は【探波】で地形情報を正確にとって、陸揚げが一番ラクになりそうなルートの選定をしてみるね。 船の幅が通るかとか、少しでも高低差は少ない方がいいだろうしってことで。
それじゃあ、ワタシは船の方に乗って、超聴覚を持っていく、です テレパスが届かないときは、こっちで情報のやり取りをする、ます それ以外のときは船に乗って、超視覚を使って見張りをするつもり、です
>班分け じゃ、ボクは陸路での先行偵察班に回らせて貰うね。 馬車の資材が無事なら陸揚げ地点に先回りして、簡易的な船引き上げ器を作成して待機してるよ! >その他 緊急連絡用にボクもテレパスを持って行く予定。 100m以上離れている時は、狼煙を焚いて危険を報せる様にするね。
あたいは馬で資材を運ぶっすね 囮っス かかってくれればそれはそれ、かからなければ陸揚げが楽になる、程度のっスが 何かあればエルゼリアさんに連絡して緊急連絡をお願いするっス