【蠱毒】ギシュムの亡霊武人

おおくまねこ

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シナリオID:683

オープニング

●
「アシムベート様、どうかご再考を。私も儀式に参加させていただきたい!」
 ギシュム族の大酋長アシムベート・グリオウに嘆願しているのは、まだ年若いリザードマンだった。ギシュム族は超大型クリーパー『泥血啜る月吸蟲』の封印を管理する部族だ。『儀式』とは、封印を維持する為、ギシュム族を中心としたディズル大湿原のリザードマンたちが定期的に行っている月吸蟲への攻撃を意味するのだが、月吸蟲は非常に強力なクリーパーである為、ギシュム族は厳正な選定を行い、戦士を厳選している。
 彼は自分が儀式の選定に落ちてしまったことがどうしても納得いかず、アシムベートの元まで直訴にやってきたのだ。

「駄目だ。選定に選ばれなかったお主を戦わせるわけにはいかん」
 アシムベートは首を横に振った。たまたま選定を見ていたが、この青年は月吸蟲と戦うには明らかに力不足な戦士だった。恐らく儀式に参加すれば、五分と経たずに命を散らすだろう。だが、儀式への参加を諦めきれない青年はなおも食い下がった。

「確かに私より優れた戦士は何人もいるかもしれない。だが、死すら覚悟の上です! 魂を磨き、いつか竜へと至る為ならば、この命、惜しくはありません! ですから、どうか!」

 本心だった。リザードマンとは、竜になることを望んだ蜥蜴が『天に溶けし征竜』に認められ、竜人になったとされる人々だと言われている。彼らは輪廻転生を信じており、魂を磨き続けることで、新たな生で竜に生まれ変わることを目標としているのだ。
 月吸蟲との戦いは危険だが、強敵だからこそ魂を磨くまたとない機会でもある。その為ならば、命を賭けることも恐ろしくはない。青年はそう考えていた。
 だが、青年の必死の嘆願にもアシムベートは前言を翻すことはなかった。

「選定結果は覆らん。帰るがいい。戦士ならば、部族の為に他にもできることがあるはずだ」
「なぜだ! アシムベート! 何故分かってくれない! やはりお前は噂通りギシュム族だけを贔屓しているのか!? そうなんだろう!?」

 青年の言葉にアシムベートは眉を吊り上げた。他部族の間でそういった噂が流れていることはアシムベートも聞き及んでいた。だが、それは事実無根だ。アシムベートやギシュム族は単純な実力だけではなく、諸部族の未来を考慮して選定を行っている。だからこそ、選定結果が歪に見えることもあるのだろう。

「儂は贔屓などしておらんさ。封印の管理者として儀式にふさわしい者を選定しているだけだ」
「この……ッ!」
「いい加減にしろ!」
 激昂した青年がアシムベートに殴りかかろうとしたその時、見かねた側近が目にも止まらぬ速度で青年の足を払い、地面に叩き伏せた。余りの早業に、青年には何が起こったのかすら分からなかった。
「貴様、大酋長にこれ以上の無礼は許さんぞ! さあ、今すぐここを出ていけ! それとも、今ここで私が腕をへし折ってやろうか!?」
「く、くそぉおお!」
 青年はその場を走り去った。その煤けた背中を見送ったアシムベートは溜息をついた。

 これでいい。諸部族の防護を考慮すると希望者全員を月吸蟲との戦闘に回すわけにはいかないし、ましてや未来ある若者をみすみす死地に送り込むことなどできない。
 あえて選定の基準を下げ、未熟な戦士を捨て駒にすれば、経験豊富で優秀なギシュムの戦士の犠牲を減らすこともできる。
 だが、アシムベートはそれを良しとしなかった。誇り高き死もいい。けれど、多くの同胞の死を見送ってきた彼は、残された者の哀しみも知っている。
 だから、彼(アシムベート)はなるべく多くの同胞が生きて残れる戦い方を選んだのだ。
 月吸蟲は決して外には出さない。ディズル大湿原に生きるリザードマン達の未来も守る。
 それが、封印の管理者としての彼の矜持だった。

 だが、そんな彼の想いを踏みにじるような邪悪な影が、ひっそりと忍び寄っていたのだった……。

●
「クソッ……! アシムベートめ! どうして私が留守番なんだ……!」
 アシムベートに追い返されたリザードマンは、悪態をつきながらとぼとぼと帰路についていた。辺りはすでに薄暗いが、急げばなんとか部族の里に戻れるだろう。
彼が湿原地帯を足早に移動していると、不意に老人の声がした。

「ふむ。その出で立ち、さては貴様も選定漏れした戦士じゃな」
「誰だ? ……!? ぼ、亡霊!?」

 振り向いた青年はぎょっとした。そこには大小二つの白骨死体が立っていたのだ。巨大な剣を持った、巨漢の白骨死体と、魔法使い然とした姿の白骨死体。骨格からして、どちらも同族(リザードマン)なのは確かなようだが……。

「やれ、ヴァルザム」
「――」
 そこで、青年の視界は暗転した。
 その巨体からは想像もつかぬほど洗練された静かな一撃だった。
 視認できぬほどの速さで薙ぎ払われたエーテルの斬撃は、一撃で青年の命脈を断ち切っていた。

「うむ。流石じゃ。さすがはギシュム族の英雄ヴァルザムよ。有象無象のスケルトンとは出来が違う。じゃが、雑魚の命にもそれはそれで使い道があるというもの」
 しわがれた声で語る髑髏の老人は短く拍手すると、青年の魂を死霊術で捕らえた。

「喜べ。貴様が鍛えた魂と肉体、ワシが有効に使ってやろう。我が永遠の命の為にな」
 ニヤリと笑う髑髏の老人の腰に、死と不死の女神の聖印が揺れていた。

●
「新しい依頼が来てるよ。依頼人はアシムベート・グリオウ様。ギシュム族の大酋長!」
 リザードマンの受付嬢は一枚の依頼書を取り出すと、掲示板の目立つ所にペタリと貼った。

「依頼の内容は行方不明となったリザードマンの戦士達の捜索なんだけど、ギルド側で『容疑者』について有力な情報を掴んでるので、依頼書にも追記しておいたよ。けっこう胸糞悪い奴だ」
 
 その依頼書には、以下のような事が記されていた。

●
 事件の概要:
 ここ一週間ほど、ディズル大湿原で数人のリザードマンが立て続けに行方不明となっている。行方不明者はみな、月吸蟲との戦いの儀への参加を希望し、選定漏れについてアシムベートに直訴に行った者たちだ。行方不明となったタイミングはみな、帰る途中だと思われる。なお、襲撃から逃げ延びた目撃者(湿地帯で依頼をこなしていた冒険者)の証言からして、犯人は後述の『死霊術師ドレイク』及び『亡霊武人』の一派の可能性が濃厚。なお、行方不明者の死体は見つかっていない。
 
『死霊術師ドレイク』
 しゃべるリザードマンのアンデッド。二週間ほど前に封印地帯で『撃破』された死霊術師と特徴が一致しており、本事件の主犯の可能性が高い。なぜ生存しているかは不明。また、『メドゥの指先』の構成員であることが確認されている。

『亡霊武人』について
 黒い角を生やした巨大なリザードマンの白骨剣士。生前はアシムベート・グリオウに匹敵する巨漢だったと思われる。
 
 その他、5~6体のスケルトンも目撃されている。

「アシムベート様からの依頼は『行方不明者捜索』ってことになってるけど、ギルドは既にこの件を殺人事件だと判断してる。犯人が(多分)死霊術師だしね。……あとここだけの話、噂に尾ひれが付いて『アシムベート様が自分に盾突いた奴を闇討ちしてるんじゃないか』って噂まで流れてるんだよね。そんなわけないっしょ。ってことを証明する為にも、さっさと犯人を捕まえて欲しいんだ。さあ、この依頼を受けてくれる人は挙手してね!」

解説

●解説  リザードマンを闇討ちし、遺体と魂を収集している死霊術師を発見、撃破しましょう。  今回は犯人側が強者の死体を必要としており、授恵者が夕方~夜間に事件現場に近づけば向こうの方から寄ってきますが、隠れる場所が多い地形の為、不意討ちされる可能性はあります。  事件現場の地形:広々とした湿原です。沼地が点在している他、木々が密集している場所もあり、見通しはあまり良いとは言えません。 ●登場NPC  アシムベート・グリオウ  ディズル大湿地帯の最大派閥であるギシュム族の酋長。ギシュム族が泥血啜る月吸蟲を封印している一帯の管理を担うことから、大酋長とも呼ばれる。武威ばった人物ではあるが、人柄は良く義理堅い。帝国近衛騎士になったエフレムの兄貴分でもあり、マナズィールも共にしたことがある(ステータスシートより抜粋)。  今回の依頼人です。依頼には同行せず、結果報告のシーンにのみ登場します。  冒険者ギルドが真偽が確定するまで情報を止めているので、犯人一派についてはまだ何も知らされていません。   死霊術師ドレイク  主犯であるリザードマンのスケルトンのネクロマンサーです。『死霊術師を追撃せよ』にて、冒険者たちに撃破されたはずですが……?  氷嵐、エーテルバリア、魔矢などの魔法を使用します。また、死霊術による魔力の負担が大きいせいか、以前出現した時よりも弱体化しています。  また、死霊術師ドレイクはメドゥの指先の構成員であり、『死と不死の女神メス』の過激な信者であることも知られています。 ●亡霊武人ヴァルザム  ドレイクに使役されている2m超のリザードマンのスケルトン・ウォーリアです。 『薙ぎ払い』『闘気塊』『エーテルブレード』『殺界』『チャージング』『衝撃刃』のスキルを使用します。武器は大きな剣です。  生前はギシュム族の戦士であり、アシムベートの魂の友の一人でしたが、前回の月吸蟲との戦いで戦死しました。  言語能力は喪われており、戦闘中に会話はできませんが、倒された場合は昇天する前にアシムベート宛に遺言を残します。ギルドは名前までは掴んでいませんが、ドレイクが名前を呼ぶので冒険者は戦闘前に名前を把握できます。 ●スケルトン×5  駆け出しの授恵者(レベル1~5程度)と同程度の実力を持つスケルトンです。種族はバラバラですが、一体はオープニングで殺されていたリザードマンです。

マスターより

 こんにちは。おおくまねこです。ディズル大湿原連動シナリオの第二フェイズの依頼となります。  ディズル大湿原でアシムベート大酋長と握手!  前回の依頼の敵NPCが続投しておりますが、前回参加されていなかった方のご参加ももちろん歓迎いたします。よろしくお願いいたします。  ※なお、死と不死の女神メスの設定についてはリーズ・クラヴィエさんの公認設定からお借りしました。

リプレイ

●捜索開始
「やはり、仕留め切れていませんでしたか」
 集合場所へとやってきたルーファス・W・ワーズワースは言った。見れば、他にも見覚えのある冒険者達がいる。
「あの死霊術師、生きていたのですね。『生きている』と言っていいかは分かりませんけれど。ともあれ、これ以上の悪事は止めなければ」
 ルーファス・W・ワーズワースの言葉にスィーリーンは頷いた。
「嫌な予感が当たってしまいましたね。……お久しぶりです。ルーファスさん、スィーリーンさん」
 レイヤ・ダライ=カホールは二人はぺこりと頭を下げた。この三人こそは以前封印地帯の結界の綻びの調査の際、死霊術師ドレイクを実際に討伐したパーティの冒険者達だ。
「そのドレイクっていう奴は確かに死んだんだろう? ネクロマンサー自身がアンデッド化したとかか?」
 ゲルトがぽつりと疑問を口にした。
 死霊術では、死体に魂を入れてアンデッドを作ったり、捉えた魂を人形に入れてゴーレムを作ったり、といった利用法が広く知られている。だがその本質は本来の肉体を喪い、アストラル界に昇天するはずの魂を操る術だ。死したる際に己の魂をも死霊として現世に留める秘術があっても不思議ではない。

(恰好を真似た偽物、もしくはドレイク自体が死霊? 材料が少なすぎてわかりません。今の段階では明日の朝に何を食べるかを考えていた方が有意義です)
 リディリディ・トゥラ・イェレミースは仲間達の話を聞きながら、そんなことを考えていた。

「一度『撃破』されたってのは理解した。だが、死んだかどうか。遺体がどうなったかまでは聞いてないぜ」
 特徴的な髪型(ヘアースタイル)をゆっさゆっさと揺らしながら、ドーマ・アザーリが言った。ギルドからの依頼書にはドレイクが『討伐された』という事実しか書かれていなかった。実際に討伐に参加した冒険者が今回の依頼にも参加しているというなら、事実関係をはっきりさせておきたい。

「遺体は、仲間が回収してギルドに提出しました。だから、あのスケルトンがそのまま動き出した、ということは無いと思います。行方不明になってたら騒ぎになると思いますし」
 レイヤが言った。ドレイクを討伐した際、流暢に喋るアンデッド、という極めて特異な亡者であったドレイクを冒険者の内の何名かが可能なら生け捕りにしようと考えたのだ。
 実際にはある程度ダメージを与えたら全く動かなくなった……つまり『死亡』したので、せめて遺体だけでも確保しようと、ある冒険者がギルドまで担いで帰ったのだ。故に、ドレイクが倒されたその場で復活することは不可能だった。
 レイヤの説明を聞き、ドーマは唸る。
「なら、すんでで死ななかったか、あるいはアストラル界からの干渉で手前(てめえ)で手前(てめえ)を操作したか……って可能性は消えるか……? いや、確か封印地帯の内側は元からリザードマンの白骨死体がゴロゴロしてるって場所だったな。となると、別の死体に取り憑いて生き延びたって可能性もあるか……。
 どっちにせよ、同等の犯行が起きてて、リザードマンが犠牲になってるってのなら対処しなきゃ話にならねェ! それこそ、月吸蟲の生贄や、敵の戦力増強に利用されてりゃア、魂が浮かばれねェよなァ!!」
 ドーマは叫ぶと、両拳を胸の前でガツンと打ち合わせた。
「どんな手段で生き延びたにせよ、一度蘇ったなら今回もまた復活するかもしれないわ。倒した後も細心の注意を払いましょう」
 アウレーリア・フォン・ネーベルベルクは言った。彼女の瞳の奥には、邪悪なる死霊術師への静かな怒りが蝋燭の灯りのようにゆらゆらと揺れている。

 事件の背景の確認を終えた冒険者達は捜索方法の打ち合わせを始めた。
「さて、どうやって探そうか? 事件は日が沈んだ後の時間帯に集中しているそうだが……」
 アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトが渋い顔で言った。生粋の戦士であるアルベルトは夜目が効く方ではない。戦闘をするのなら日中の方が有利なのだ。

「日中のうちに行方不明者が出てる湿原地帯を捜索しよう」
 セリオス・オーガストが言った。シューターである彼は夜目が効く方だが、全員がそうではない。強力な魔法の使い手であるドレイクに加え、『亡霊武人』と呼ばれている強力なスケルトンも目撃されている以上、夜間の戦闘は危険だと考えた為だ。
「同感だな。夕方以降は敵のアドバンテージがデカすぎる」
「死霊というと夜間に出没するというように思えますが、今回の場合、天然物の死霊ではなくネクロマンサーの仕業ということですから、恐らく日中に捜索しても問題はないと思います」
 ドーマとリディリディもセリオスに同意した。反対するものはおらず、結局、捜査は日中から行うことになった。

「離れすぎると、合流までのタイムラグが厄介ですから、ある程度の距離を保ったまま捜索をしましょう」
 ルーファスが提案し、冒険者達は何人かずつの班に分かれて、あまり離れずに捜索を行うこととなった。

●
「夕方の沼地に亡霊なんて、本当に陰気な場所……住民には悪いけれど、あまり長居したくはないわ。明るいうちに早く見つけて帰りましょう」
 見通しの悪い湿地帯をだるそうに見渡しながら、アウレーリアは溜息を吐いた。
 このディズル大湿原は、異種族からは『死の沼』とまで呼ばれているほど厳しい土地である。クリーパーや凶悪な原生生物との遭遇率も高い為、本来居住区には適さない土地だが、己の魂を鍛える為、あえてリザードマン達はこの地に好んで住んでいるのだという。
 とはいえ、人間であり、もっと言うとかつては高貴な身分であったアウレーリアには、この沼地を見ても陰気で不衛生な場所にしか見えないのであった。
「なんとか、明るい内に見つけたいですね」
 アウレーリアの言葉にリディリディは頷いた。捜索班は探査向けの能力を持つ冒険者と、そうでない者の組み合わせを基本として班分けされている。アウレーリアは優れた視覚を使い、リディリディは駄目元で植物共感能力を使って捜索をしているが、成果は芳しくなかった。

「いないな……」
 ルチル・プルメリア・グレイハーツはぼやいた。鷹並みの視力にエーテルリンクした栗鼠のラト、エーテルを用いた捜波と、シューターとしてのスキルを総動員して痕跡を探しているが感知網に何も引っかかって来ない。ルチルと同等かそれ以上に探知能力に長けているセリオスもいるのにも関わらず、である。
「いませんね……」
 スィーリーンも超視覚で目を凝らしているが、それらしき人物は見つからない。やはり日中はどこか別の場所にいるのだろうか。
「根気よく探そう。標的は見逃すわけにはいかない外道だからな」

●
「だいぶ日が沈んで来たな……」
 誰かが呟いた。できれば日の出ている内にケリを着けたかったが、あと十五分ほどで日没だ。かなり広範囲に渡って捜索したものの、捜波や超聴覚、植物共感などのスキルのフル活用を以てしても何の痕跡も発見できないとなると、向こうも二十四時間体制で張り込んでいるわけではないのだろうか。アンデッドならば体力は無尽蔵にあっても良さそうなものだが――。
 完全に日が沈んだ状況で交戦するのはできる限り避けたい。だが、人命がかかっている以上、調査を打ち切って撤収する気もない。冒険者達に焦りが見え始めた頃、とうとうセリオス、ルチル、アウレーリアの眼が怪しい気配を捉えた。
「「「見つけた」」」
 ローブを纏ったスケルトンに、鎧を着た雑多な種族のスケルトンが5体。そして、『亡霊武人』と思しき一際大きい黒い角の生えたリザードマンのスケルトンが一体。何かを探すようにウロウロしながらこちらに近づいてくる。あれが探していた死霊術師ドレイクに間違いあるまい。

「コホ、コホ、コホ」
 セリオスは三度咳き込んだ。事前に打ち合わせしていた標的発見の合図だ。
 仲間の位置にも気を配っていたルチルはすぐに気づき、木の上から降りて来た。ルチルのペットの栗鼠による伝令で冒険者達は異変を察し、セリオス達の近くに集まる。アイコンタクトと身振り手振りで合図をした後、ルチルとセリオスが狙撃態勢に入った。
 続いて、キャスター達も魔法による狙撃の準備を開始する。今回のパーティは十名中五名がキャスターだ。近づかれる前にシューターとキャスターの集中砲火を浴びせれば、一気に仕留められるかもしれない。
 前衛のアルベルトとルーファスは狙撃の邪魔にならないようしゃがんだ姿勢で前に出て、ヒーラーのゲルトは仲間達の後ろにつく。
「先にかけとくよ」
 ゲルトは大急ぎでパーティ全員にサークルプロテクションを、何人かに堅甲と輝刃をかけた。ちなみに多数にかけなかったのは別にいじめとかではない。単に多くにかけては最初に付与した人の持続時間が切れるからである。

「……」
 冒険者達は息を殺し、アンデッド達が近づいてくるのを待った。
 攻撃開始は魔法の射程の限界、敵が約五十五メートルまで近づいた時だ。冒険者たちは全神経を集中し――。

「今だ!」
 セリオスの合図と共に、冒険者達は一斉に攻撃を開始した!
 ドウッ!
 セリオスのバスターアローが亡霊武人へと放たれ、続いてルチルの強射が一番前にいたスケルトンを粉々に打ち砕いた。
「ウオオオオオ!」
 亡霊武人はセリオスのバスターアローの直撃を受け、臨戦態勢に入った! 矢が鎧を貫き、肋骨が少し欠けたが、見た目通り、一撃で倒れるほどヤワではないようだ。
「な、なんじゃっ!?」
 狼狽した声を上げるドレイク。

「行くぞオラァ!」
 続いてドーマの杖から爆炎が放たれ、アンデッド達に直撃した。五体のスケルトン達は纏めて黒焦げになり、バラバラと崩れ去っていく。
「ぬう!?」
 ドレイクだけはエーテルバリアを発動し、炎の直撃を避けたが、爆ぜた灼熱の炎はバリアを貫通し、ドレイクの紫のローブを焼き焦がした。
 亡霊武人も爆風巻き込まれたが――少し焦げただけで、平然と立っていた。
「オレのモヒカンセンサーにもビンビン来てるぜ! あの二体はオレより強い!」

(あれは……リザードマンの戦士……? あれほど立派な体格なら、もしかすると名のある戦士だったのかもしれません)
「災い成すものに呪いあれ」
 レイヤの魔蝕が亡霊武人へと飛んだ。エーテルが亡霊武人の腕に纏わりつき、その動きを阻害する。

 リディリディは爆炎を放った。残るはドレイクと亡霊武人のみ。リディリディの爆炎はドレイクと亡霊武人を纏めて焼くはずだったが、ドレイクは身を翻し、炎を回避した。
 爆炎は亡霊武人だけを呑み込み、その身を焼き焦がす。
 スィーリーンのフリーズボルトが飛び、亡霊武人に直撃した。冷気が炸裂し、亡霊武人の動きが鈍る。
 
「行きますよ! アルベルトさん!」
「おう! 死者を冒涜する輩を俺は絶対に許さないぜ! 俺が絶対に倒す!」
 ルーファスとアルベルトはチャージングを発動し、スケルトン達との距離を詰めた。
 アウレーリアはヴァルザムの足元にアーケインテンペストを放った。これで、荒れ狂う稲妻が敵の接近を阻止してくれるはずだ。

「やってくれたのう、冒険者共! ヴァルザムよ! 次の獲物はこやつらじゃ!」
 後ろに下がりながら、ドレイクは亡霊武人に命令を下した。ヴァルザム。それがこの巨大リザードマン・スケルトンの名らしい。

「オオオオオオオオッ!」
 亡霊武人は背中に背負っていた巨大剣を抜いたかと思うと、十メートルほどの距離まで近づいていたルーファスに向けて一閃した。
 ギャンッ!
(衝撃刃!)
 ルーファスは重点硬化でエーテルを盾に集中させ、飛来したエーテルの刃を受け止める。
 さらにグロリアスアーマーによってダメージを減らす。
 ザシュッ!
 だが、亡霊武人の衝撃刃は盾を構えた左腕を弾き、鎧を貫通してルーファスの胴まで到達した。
「直接触れずしてこの威力とは……!」
 ルーファスの顔が苦痛に歪む。亡霊武人の一撃は恐るべき破壊力だ。恐らく前衛である自分とアルベルトが抜かれれば、後衛は瞬く間に崩されてしまう!

「……ヴァルザム? あのヴァルザムですか!?」
 レイヤはその名に聞き覚えがあった。父に聞いたことがある。ヴァルザムは大酋長アシムベート・グリオウと並び立つギシュムの誉れ高き戦士であったと。

「ほう、知っておるか。いかにも、こやつはギシュム族の英雄ヴァルザム。五年前の『儀式』の際に戦死したのじゃが、昇天させるのは惜しいと思い、亡骸と魂を儂が貰い受けたのよ」
 ドレイクは距離を保ったまま、ヴァルザムの来歴について語り出した。ヴァルザムも追撃してくる気配はない。
 冒険者たちもこいつには聞きたいことが山ほどある。戦いを中断して会話がしたいというなら、乗ってやることにした。

「おのれ、ドレイク……! 輪廻の流れを、魂の研鑽を阻み。思いあがって竜(ドレイク)を名乗り。征竜様との約束を、誇りを穢し。英霊の刃を同胞たちに向けるなどっ!」
 レイヤは歯ぎしりし、ドレイクに対する激情を露わにした。

 リザードマンとは、魂を磨き、いつか竜へと転生することを夢見る種族だ。だからこそ、リザードマンの戦士達は魂を磨く為に強敵との命を賭けた戦いに挑むことを良しとし、異種族には『死の沼』とさえ呼ばれるこのディズル大湿原に多くの部族が居を構えている。その戦士の魂の昇天を阻み、あまつさえ同族を殺す為に利用しようとは……!
 なんという冒涜。この地に生まれたものとして、絶対に、赦さない。

「わたしにも、逆鱗はあるんですよ……?」
 レイヤの中で、母(リザードマン)の血が怒りに震えていた。

「ドレイクと言いましたね。貴方は本物のドレイクなのですか」
 リディリディは静かに問いかけた。不死身の秘密は恐らく聞いても無駄だろうが、本人確認ぐらいならば答えるかもしれない、と思ってのことだ。

「いかにも、我が名は死霊術師ドレイク。そこのリザードマン二人と、人間の戦士とは二度目じゃな。同じ相手と『敵として』二度遭うのは初めてなのじゃが」
 ドレイクはカタカタと歯を鳴らして笑った。スィーリーン、レイヤ、ルーファスについての記憶もある。どうやら討伐された本人に間違いなさそうだ。

「ドレイク。お前がギシュム族の里から帰る途中のリザードマンを襲撃してた犯人だな? みんな、お前が殺したのか」
 アルベルトも怒りを堪えながらドレイクに問いただした。状況証拠でまず間違いないだろうが、念の為の確認だ。
「うむ、相違ない。もっとも、苦労して集めた死体の内の一つは先ほどお主らに破壊されてしまったがの」
 ドレイク首を縦に振り、歯を鳴らして笑った。

「誇り高きリザードマンの戦士を、道具として扱うなんて……!」
 ドレイクのあまりに非道な仕打ちに、スィーリーンも憤った。

「お前がドレイク……メドゥの指先の構成員か」
 リザードマンの情報屋、ルチルはぽつりと呟いた。
 戦士であればいつ死んでもおかしくはない。殺し殺される事があるのはまあいいが、その死体を操り死者の尊厳を冒涜する事は許されないと、ルチルは考えている。
 ましてや、死霊術師ドレイクは(正体は人間だとかいうオチが無ければ)リザードマンの死霊術師だ。同胞達が魂を磨くことを何よりも大切にしていることは、知っているはずだろうに。この男のやり口については、ルチルも嫌悪感を隠せなかった。
「犯人が同じリザードマンなら、余計その卑劣さが際立つな。やれやれ、あっちはこんなヤツしかいないのかね」
 ルチルは溜息を吐いた。

「ほう。儂の所属まで割れておるか。冒険者ギルドの情報網も存外侮れぬな」
 くくく、と笑うドレイク。すでに二度の爆炎を浴び、その体は崩れかかっているにも関わらず、冒険者との問答を楽しんでいるようなその態度には、どこか余裕を感じさせた。

「こそこそと悪事を働きやがって……気にくわねェな。手前《てめぇ》らは一体何が目的なんだ!?」
 ドーマが苛立ちを隠さずに問いかけた。以前、ドーマはリザードマンの集落からタマゴが盗まれるという事件を解決したことがある。もしかしたらこのディズルで起こっている事件は組織的犯罪なのではないかという、疑念からのカマかけだった。ついでにさりげなくエンライトを発動し、戦場の光源も確保しておく。

「はて、何のことやら。儂には死霊共以外に仲間などおらぬがのう?」
 ドレイクは大袈裟に首を傾げた。

(こいつ……どう見ても死体だけど、本当に死霊術師なのか……)
 ドレイクが会話に気をとられている間に、こっそりとヒールをかけ、ルーファスの傷を完治させたゲルトは注意深くドレイクの様子を観察していた。
 意識はハッキリしているように見えるが、呼吸している様子はない。そもそも焼け焦げたローブの下はちゃんと白骨死体になっているので、生者が死体のフリをしているという線もなさそうだ。

(だが、骨格が以前と違う……。あんな場所に角は無かったはずだ)
 その時、ルーファスの超視覚がローブの焦げた隙間から覗くドレイクの顔を捉えた。今回もやはりスケルトンのようだが、この『ドレイク』は以前とは別人の遺体である可能性が高い。やはり以前推理したように、本体が別にどこかにいて、このドレイクも傀儡なのだろうか?

「ドレイク。その体、どうせ倒しても『代え』があるのでしょう。今の身体だってどこで拾ってきたものやら。人の力と経験を道具のように使い捨てる外道。借り物で何も得ることのない、がらんどうのお前らしい姿だわ」
 アウレーリアも侮蔑の感情を隠さず、吐き捨てるように言った。

「ふはははは! ずいぶんと嫌われたものじゃな! 儂は貴様らを高く評価しておるのじゃがのう! さて、話は終わりじゃ! 貴様らの魂と肉体も、まとめてこの儂が貰い受けてやろう! やれ! ヴァルザム!」
 
●
「行くぞ! ヴァルザム、貴方の魂は俺が解放する!」
 アルベルトは吠え、攻撃に全神経を集中した。
「ここは我々が食い止めます! 皆さん、魔法で攻撃を!」
 対して、ルーファスは防御に神経を集中する。こいつらの攻撃を決して後衛まで届かせるわけにはいかない!

「ウオオオオオオッ!」
 亡霊武人――ヴァルザムが吠える。その声が聞こえたのかどうかは定かではないが、チャージングで一気に距離を詰めたヴァルザムは、アルベルトの頭蓋を断ち割らんと、エーテルで射程を伸ばした巨大剣を水平に薙ぎ払った!
「うおおおおっ!」
 アルベルトはヴァルザムの巨大剣を避けるべく身を引いた。しかし、それよりわずかに速かった一撃は、アルベルトの胴に命中し、爆撃のような凄まじい音が辺りに響いた!
「がはっ! だが、これぐらいでッ!」
 吐血しながらも、アルベルトはヴァルザムと距離を詰め、大太刀で研ぎ澄まされた一撃を叩き込んだ。刀身を燃えるように輝かせながら放たれた渾身の一撃はヴァルザムの頭蓋骨に食い込み、その巨体を二メートルほど後ろへと吹き飛ばした!
「……」
 アルベルトの一撃でヴァルザムは頭蓋骨が半分砕けていた。もし相手が生身だったならそのままあの世に送れていただろう。

「おのれ! 小癪な!」
 ドレイクは短杖を振り上げると、アルベルトとルーファスを巻き込む位置に氷嵐を放った。凍てつく冷気が二人を襲う!
(以前よりも威力が弱い……!)
 氷嵐のダメージに顔を歪めながらも、ルーファスの脳裏には新たな疑念がよぎっていた。決して威力が低いわけではないが、以前浴びたドレイクの氷嵐はこんなものではなかったはずだ。グロリアスアーマーのおかげでもあるが、この氷嵐は以前の半分程度の威力しかないのではなかろうか。
「ぐっ……!」
 弱体化しているとはいえ、ドレイクの氷嵐はヴァルザムの一撃を受けていたアルベルトにとっては無視できないダメージだった。これ以上攻撃を受ければ意識を失いかねない。
(前衛達がこらえてくれている間に仕留めなければ)
 セリオスはヴァルザムに向けてエーテルを注ぎ込んだ矢を放った。バガンと音がして、ヴァルザムの鎧が砕ける。だが、まだ倒れる気配はない。

「貴公もさぞ無念でしょう……今しばらく辛抱を。我らがその魂の枷を断ち切ります。」
 レイヤは緑色の光弾を放ち、ヴァルザムの鎧を腐食させた。

「そこだ!」
 すかさずルーファスが鎧が腐食した部分に向け、エーテルブローを叩き込んだ。手に残る確かな手ごたえ。思った通り、生前はウォーリアであったのであろうヴァルザムは物理よりも魔法攻撃に弱い!
「戦士に対し徹底的に対策を打つのは、同じ戦士なら当たり前のこと。何より……僕は誇り高き死者が死霊術師だのテロリストだのに操られ、己が護りたかった物に剣を向けている光景を見るのが一番気に入らない。お前のことだよ、ドレイク」
 ルーファスはギロリと、忌まわしき死霊術師(ドレイク)を睨み付けた。

 ボウッ! ドムッ! ドンドンドンドン!
 リディリディとアウレーリアの爆炎が続けざまにヴァルザムの背後で炸裂し、スィーリーンのメテオライトがヴァルザムへと降り注いだ。キャスター達の猛攻を受け、ヴァルザムの巨躯がぐらりと揺れる。

「アルベルト! 大丈夫か!?」
 射程ギリギリまで近づき、ゲルトがアルベルトにヒールを飛ばした。アルベルトは優しいエーテルの光に包まれるが、傷はなお深い。

「このクソじじい! 往生しやがれ!」
 斜めから強引に射線を通しての一撃。ヴァルザムの後ろに隠れていたドレイクへと、ドーマの魔弾が放たれた!
「がはっ……!」
 その一撃が致命傷となったのか。光弾に貫かれたドレイクは地面へと崩れ落ちた。
「悪ィな、俺ァ精密性にゃちょいと自信あってな!」

「ウオオオオオッ!」
 しかし、術者であるドレイクが倒れたにも関わらず、やはりヴァルザムの動きは衰える気配はなかった。
「まだ動くのか……!」
 ルチルはヴァルザムに向けて攪乱射撃を放った。正確な射撃がヴァルザムの眉間を貫き、エーテルがヴァルザムの体を侵食するが、なおもヴァルザムは止まらない。

「ウオオオオオッ!」
「!」
 ヴァルザムの全身から、凄まじい量のエーテルが解き放たれた。『殺界』。自身の周囲にエーテルの結界を作り出し、内部にいる全ての者を同時に攻撃する凶悪な技だ。今ヴァルザムの放った殺界の範囲にいるのは――ルーファスとアルベルトだ。

(まずい!)
 ルーファスは己よりもアルベルトの身を心配した。自分は今無傷だが、アルベルトはまだ数秒前の負傷が残っている状態だ。あのヴァルザムの一撃をあと一発貰えば致命傷になりかねない!
(倒されるより先に倒してみせる!)
 当のアルベルトは敵のとてつもない殺気にも怯まず、ヴァルザムだけを見据えていた。殺界が展開されてから刃が飛んでくるまではほんの僅かだけタイムラグがある。その間に敵を仕留めればいい!

「喰らえ!」
 次の瞬間、セリオスの矢が殺界の内側へと飛び込んでいき、ヴァルザムの右腕に命中した。着弾と同時に矢に籠められたエーテルが爆発し、ヴァルザムの腕は付け根から吹き飛んだ。そして――ヴァルザムはとうとう動きを止めた。

●ヴァルザムの遺言
「すぐに治すぞ! よくこの怪我で動いてたな!」
 ゲルトはアルベルトに駆け寄り、ヒールを放った。四回ほどヒールをかけると、ようやくアルベルトの傷は完治した。
「ありがとう、ゲルト。 ――あれを見てみろ」
 アルベルトはヴァルザムの方を指差した。

 ヴァルザムの体がぼろぼろと崩れていく。ダメージが限界を超えたことで、死霊術に囚われていた魂が解放されようとしているのだ。
 冒険者たちは武器を降ろし、ヴァルザムの様子を固唾を呑んで見守る。
「……カタジケナイ」
 ぽつりと。ヴァルザムは確かに口にした。
「ヴァルザムさん! 私達は……!」
 スィーリーンは思わず涙汲んだ。
「長イ間……悪夢ヲ見テイタ……コノ手デ同胞ヲ傷ツケル夢ヲ……。
 拙者ヲ止メテクレタコト……感謝スル……」
 ガシャンと骸骨が地面に散らばり、そこから半透明なリザードマンの姿が浮かび上がった。昇天するヴァルザムの魂だろう。
「ドウカ……我ガ友、アシムベートニ……伝エテ欲シイ……先ニ逝ッテ済マヌガ……同胞ノ……ディズル大湿原ノ未来ヲ頼ムト……」
「その言葉、情報屋でありリザードマンのルチルがしかと聞き届けた。必ずや貴殿の朋友に伝えよう」
「貴方の誇りは、矜持は、守り抜くと約束する。眠れ、偉大なるリザードマンの武人よ」
 ルチルとルーファスの言葉にヴァルザムの霊は微笑むと、虚空に溶けて消えた。

「ふははは! 英雄ヴァルザムまでもが破られたか。これはちと、儂の読みが甘かったようじゃ。『次』は油断せず、全力でお前達冒険者に挑むとしよう」
 首だけになって転がっているドレイクの髑髏がカタカタと笑った。
「まだ、蠢いていたのね」
 アウレーリアは不愉快そうに眉を吊り上げた。レイヤは無言で杖を振り上げると、エーテルの弾丸を放ち、ドレイクの髑髏を真っ二つに叩き割った。
「何度でも、蘇ってくるがいい……。何度でも、殺してやりますよ」

●
 冒険者達はスケルトン達の遺骨を回収した後、事の顛末の全てをアシムベートへと報告した。行方不明になっていたリザードマン達は恐らく全員殺されていること、犯人はドレイクと名乗るリザードマンの死霊術師であったこと。そして、前回の月吸蟲との戦いで名誉の戦死を遂げたギシュム族の英雄、ヴァルザムの亡骸と魂がドレイクに利用されていたこと。そして、ヴァルザムが最期にアシムベート宛に遺言を残したことを。
 アシムベートは怒りの余り、茶の入った陶器を握りつぶしていた。破片で傷付いた掌から血が流れ、まるで彼が泣いているように見えた。
「今更ご友人を掘り起こされ、良いように使われて業腹でしょうけど。奴を仕留めない限り、死者達の尊厳は泥に塗れ続けます」
 アウレーリアは言った。
「分かっておる。死霊術師ドレイクは儂らの敵だ。リザードマンの恥晒しめ! 必ず引導を渡してくれる!」
 アシムベートはドン、と無骨な大剣を地面に突き刺した。
 呼吸を整え、椅子に座りなおした後、アシムベートは落ち着いた声音で冒険者達に問いかける。

「それで……我が友ヴァルザムは最期になんと?」
「ヴァルザム殿は最後に、友である貴方にこう伝えて欲しいと言っていた。『先に逝って済まぬが……同胞の……ディズル大湿原の未来を頼む』、と」
 ルチルは一字一句違えず、ヴァルザムの遺言をアシムベートに告げた。
「そうか……ヴァルザムが儂に……」
 アシムベートは暫くの間、遠い目で大湿原の地平線を眺めていた。その瞳には、かつて肩を並べた友の姿を幻視しているのだろうか。
「礼を言おう。冒険者達よ。よくやってくれた。おぬしらの働きに感謝する。そして、できることなら、この大湿原の平和の為にまた力を貸して欲しい。我が友の最期を看取った冒険者達よ」
 言われるまでもない。冒険者達はアシムベートの言葉に深く頷いたのだった――。

マスターコメント

死霊術師ドレイクは撃退され、ヴァルザムの魂も無事に解き放たれました。結果は成功です! ウォーリアさん二人の移動力の差が絶妙だったので、殺界は一回しか使えませんでした。薙ぎ払いとか闘気塊とか範囲攻撃モリモリのヴァルザムさんでしたが、遠距離に偏ったメンバーだったので割とあっさり撃沈しました(もしタンク役0だったらそれはそれで被害激増だったかもしれませんが)。 ドレイクはまたそう遠くない内に冒険者の前に姿を現すでしょう。お疲れ様でした!
ショートEX

ショートEX難しい 報酬:多い10 / 8〜10人

2021年03月22日 10時45分00秒 公開

成功

相談掲示板

  1. ルーファス・W・ワーズワース

    さて、比較的シンプルな戦いになりそうですが、お相手がお相手なので。 これは奇襲警戒は必須ですね。真っ当にやったら押し切られそうです。 という事で、続きの方も初めましての方も。 ウォーリアのルーファスと言います。どうぞ良しなに。

  2. レイヤ・ダライ=カホール

    レイヤ・ダライ=カホールです。よろしくおねがいします。 今回は…ドレイクですか。まさかこんなに早く再戦することになるとは。 それにあのスケルトン・ウォーリア、相当な手練れです。 しっかり連携して、挑んでいきたいですね。

  3. ゲルト

    ヒーラーのゲルトだ。今回ヒーラーはオレだけみたいだな。 死んだはずの死霊術師がまた現れた、か。 誰かに亡骸を拾われて、そのままアンデッドにされたとかじゃないか? それにしては意識がはっきりしすぎてる気もするが…。 スキル構成は回復と強化に全振りしていくぞ。

  4. スィーリーン

    キャスターのスィーリーンと申します。 よろしくお願いします。 あの死霊術師、生きていたのですね。 『生きている』と言っていいかは分かりませんけれど。 ともあれ、これ以上の悪事は止めなければ。

  5. セリオス・オーガスト

    ・・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしくたのむ とりあえずルーファスも言う通り奇襲警戒だな。湿地帯で見通しも悪いようだからな <死霊術師 案外本体は別な場所にいて今いるのは依り代というか操り人形みたいなものだったりしてな。性能は使う個体に準ずるから今回は弱体化してるとか。

  6. No.6

    キャスターのリディリディです。 よ、よろしくお願いします。 奇襲警戒となると、日中に捜索という形になるのでしょうか。 生憎夜目は効かないので、どちらにせよ私は日中の方が都合は良いですが。

  7. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    ウオーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 俺も日中が良いかな・・・

  8. ドーマ・アザーリ

    よォ!オレァドーマってもんで!! 見てのとおりのキャスターよ!ヨロシク頼むぜ!! 面子の半分がキャスター、多少の防御魔法があっても夜に奇襲されりゃどう陣営を張ってても崩れやすくなっちまう。 オレも日中がいいと思うぜ!

  9. アウレーリア・フォン・ネーベルベルク

    キャスター、アウレーリアよ。宜しく。 私も日中の探索に賛成よ。敵に熟練と思しきウォーリアが混じっている。 明るい環境なら釣瓶撃ちで仕留められるけど、近付かれたら被害は免れないわ。 ただ、日中は隠れて出てこないのでしょう。適切な索敵スキルが必要ね。 見通しが悪いのだから、夜でなくとも接近戦の可能性はあることを念頭に置きましょう。

  10. レイヤ・ダライ=カホール

    日中に敵さんが出てくるかどうかが微妙なところですね。 多分ドレイクはアシムベート酋長に直訴に行った帰りのヒトを狙っていると思うので、 日中ここにいるのかどうか…確実に待ち伏せしてるのは夕方からになるでしょうか…? どちらせよ、索敵で早めに敵を見つけて、日が暮れるまでに決着をつけたいところです。 あと、今回の戦場は場所によっては足元があまり良くないです。沼地に注意ですね。 >死霊術師 わたしも本体は他所に居る感じだと思います。多分。 操られているこの個体が弱いのか…あるいは術者からの距離が遠いので弱体化している線も? ネクロマンサーといえば、たしかヴァイセントラフ砦の時にジャマーでの干渉とかしたヒトがいましたね。習得してる人がいれば使ってみるのもいいかも。

  11. ルーファス・W・ワーズワース

    そうですね。これは条件が正確なのであれば、 日中の場合恐らくこちらから主導的に探索しないとダメでしょう。 『夕方~夜間に事件現場』とあるので襲撃そのものが無い筈です。 そして探す宛が無い以上は、夕暮れに待ち構える。がギリギリかと。 強いて言えば夕暮れ前に現場に来て準備を整え夕暮れを待つ。 でも条件は成立するかもしれませんが、割とグレーですね。 >戦闘対応 基本、ドレイクを抑えて武人を討つか、 武人を抑えてドレイクを討つかの二択だと思いますが、 どちらを優先しましょうか。まあ、後者の方が楽そうではありますね。 ただ、遺言の条件が「倒された時」なので、 何かしらのヒントを得る事を重視するなら強制的に前者になるかと。 幸いキャスターが多いので、ウォーリアは比較的与し易いと思いますが。

  12. ルチル・プルメリア・グレイハーツ

    ちと出遅れた。 情報屋のルチルだ。よろしく。 確かに日中の方が比較的見通しがいいが、進んで出てくる事はないだろうな。 場所も広いし隠れ場所も多い。日中に見つかるとは残念ながらはっきり言えそうにないね。 日中に見つからなかった場合に備えた方がいいだろうね。 >戦闘 死霊術士なら本体を叩けば操られる側も倒れる…って考えられるが、もし生き残ってた理由が分身を使っているから、だったらそのままは倒せないだろうね。 それにヴァルザムに自分を守るように立たせる事も想像に難くない。 ヴァルザムとスケルトンたちを先に対処する必要がありそうな気がするね。

  13. レイヤ・ダライ=カホール

    しかしよりによってによってリザードマンを死霊術で操るとは許せません。 あまりに冒涜的です、輪廻の流れを阻むとは…。 個人行動の方、わたしは付与を高くしてBSとかで支援にあたろうと思います。 マジックディソナンスをドレイクに、アシッドブリットと魔蝕をヴァルザムに。 あとはメテオライトとかで攻撃な感じですかね。

  14. セリオス・オーガスト

    <日中で見つからない まあ確かにその可能性も考えておいて、暗視かランタンを持って行ったほうが無難かもな とりあえず探すならどうやって探すか 全員まとまって行動するか、少なくともお互いが見える範囲ぐらいで分かれて手分けして探すか 前者だったら奇襲を受けても全員で行動できるが、探すのに手間がかかる。後者なら探す範囲が広がるから見つけやすいかもしれないが、奇襲を受けた場合は集まるのに少し時間がかかりそうというところか

  15. No.15

    そう、ですね・・・、えっと私もグレイハーツさんの意見と同じく、スケルトン・ウォーリアやスケルトンを先に叩いた方が安心かなと思っています。 他の死霊術師がドレイクを含めてスケルトン・ウォーリア達を操っているかもしれません。 ええ、日中に見つからない可能性もありますよね。 捜索で時間が経過した時の為に、念のためランタンは持っていきます。 えーっと、あらためてみなさんのクラスを見たところ後衛職が多いですね。  ウォーリア2  ヒーラー1  シューター2  キャスター5 でしょうか。手分けするとしても、何人ずつで固まった方が良いかもしれませんね。

  16. スィーリーン

    日中に見つけたいところではありますけれど、 暗視は用意していくつもりです。 戦闘時は私もBS付与を主に考えています。 フリーズボルト等で移動阻害を与えようかと。 手分けはした方が効率は良さそうですけれど、 私は探索系のスキルを持っていませんので (超視覚を持って行くか迷ってはいます) 手分けする場合は探索が得意な方とご一緒させて頂けると嬉しいです。

  17. アウレーリア・フォン・ネーベルベルク

    まぁ日中は積極的に探して、見つからなかったらその時はその時よね。 夜間戦闘の対策は用意していった方が良いでしょう。私も暗視は持って行くわ。 >戦闘 そもそも、前回ドレイクは仕留めた筈だったのよね。でもまた出てきた。 じゃあ、何か特別な対策無しに今回また倒したところであまり意味はないでしょう。 ドレイクを抑えてヴァルザム優先で良いと思うわ。 「指」級の幹部か分からないけど、簡単にメドゥの指先の構成員を仕留められるとも思えないし。 雑魚スケルトンは多分、範囲攻撃を撃っている間に溶けると思う。 死角から不意の隙を抉じ開けられないよう、常に配置と人数は気を配っておくべきだけど。 >捜索 ある程度の範囲を確保しつつ、相互に連絡を取りやすい探し方なら横一列かしらね。 当然両端は襲われやすいのだけど、ウォーリアとキャスターを固めておくとか。

  18. ドーマ・アザーリ

    んじゃァ俺ァあまり移動範囲がとっちらからねェように留意しつつで探すぜ。 ま、俺のモヒカンにビビっとくればすぐ知らせるからよ!

  19. ルチル・プルメリア・グレイハーツ

    大体の方針は決まったようだね。 >捜索 何かあった時に備えて距離は離れすぎないでいいと思うね。 捜索時の配列はきっちり決めておく方が難しいし、念頭に置くようにするぐらいが適当だと思うよ。

  20. ルーファス・W・ワーズワース

    了解しました。 では、彼我の距離が離れすぎないように、と言う程度の範囲で 手分けしつつ捜索としましょう。僕も超視覚と天眼を利用しつつ 光源は自前で用意しておきます。 実際の戦闘についても、ヴァルザムとスケルトン優先。 ドレイクは両者の対応が終わり次第、ですね。了解しました。 であれば、魔法に対しても厚めに対策していきます。 後は、レイヤさんも途中で挙げてらっしゃいましたが、 ドレイクが端末の可能性があるので、所有している方は ジャマーを持ち込んで頂けると助かります……位でしょうか。 ともあれ、現状出来る範囲で最善を尽くしましょう。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0