【蠱毒】駄目リザードマン覚醒す?

馬車猪

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シナリオID:605

オープニング

●
 ディズル大湿地帯。
 リザードマン以外にとっては生活し辛いが生命力に溢れた土地だ。
 彼等はこの地で暮らし、戦い、人生を全うする。
 しかし全員幸せを感じている訳ではない。
 特に、戦士として身を立てることに失敗した者達の中には、帝国皇子(レイウェスト)来訪を利用しようとする者もいた。
「俺達に戦場をよこせー!」
「戦場をよこせー!!」
 デモ行進である。
 鍛え抜かれた筋肉は鱗を押し上げていて非常に威圧的だ。
「戦いに連れてけー」
「連れてけー!!」
 しかし隊列すら作れず動きはばらばら。
 大きな槍を携えてはいるが扱い切れていない。
「俺達はつよいんだー!」
「つよいんだぞー!!」
 食料を大量に食べる割りに弱く、しかも部族の指導部に反発しがちな、文字通りの問題児であった。

●
「リザードマンにも色々な人がいるのだね」
 レイウェストが精一杯表現を穏やかにして感想を述べた。
 皇子来訪中にデモを起こされ、羞恥と怒りで震えていた老リザードマンが全身を震わせ激情に耐える。
「封印地帯へ行きたいのだろうか」
 レイウェストは高貴な身分ではあるが順風満帆に生きてきた訳ではない。
 比喩的な意味で冷や飯を食わされたし、陰謀の標的や道具になりかかったことだってある。
 が、ここまで馬鹿な者達を見たのは初めてに近かった。
 老リザードマンがやめてくれと全身で否定する。
 護衛に徹していたエフレム(護衛騎士)も、役に立たないどころか糧食を食いつぶす分有害であると端的に言う。あまりに酷くてつい口を出してしまった。
「そうか」
 レイウェストは忠臣(エフレム)の言葉を受け入れた上で考え続ける。
 彼等は本当に役に立たないのか。
 このまま埋もれるか、暴発するか、あるいは使い潰されるのを放置するか。
 帝国奪還のためあらゆる手を打たねばならない自身が、彼等に関わる余裕があるのか。
「長殿、1ついいだろうか」
 レイウェストは、冒険者の力を借りる(に丸投げ)することを決めた。

●引率依頼
 冒険者達が案内されたのは、リザードマン集落の外れであった。
「あの連中です」
 指差された若手リザードマンは怠けている。
 本人達は自主的に訓練したり見回りをしているつもりなのかもしれないが、訓練は温く見回りも散歩でしかない。
「扱いに困っとるのです」
 彼等(馬鹿共)がただの無能なら話は簡単だった。
 戦士として生きるのを諦めさせるなり、怠業を理由に使い捨てとして扱うことも出来た。
 しかし素質はあるのだ。
 リザードマンとしても優れた体格と筋肉というのは貴重な素質だ。
 なりたての授恵者(レシーバー)に近い物理攻撃力があるのだから凄まじい。
 しかし他の能力は酷い。
 戦技が未熟なため攻撃がろくに当たらず、心が未熟なため忍耐が必要な仕事をこなせず、勇気が足りないので本当に危険な任務からは逃げ出してしまう。
「同じ部族だからこそ許し難い」
 リザードマン基準ではかなり甘い彼が内心怒り狂うほど、彼等(馬鹿共)の評判は良くない。
「半数死んでも構いません。奴等をたたき直してください」
 幹部候補の授恵者リザードマンは、冒険者に対して深く頭を下げた。

●討伐依頼
 ディズル大湿地帯へ出発する前、冒険者はギルドで説明を受けていた。
「カマキリ型クリーパーを退治して下さい」
 冒険者の実力を大湿地帯のリザードマンに示すという目的もあるが気にする必要はない。
 集落の近くに現れた、異様に鋭い鎌を持つクリーパーを倒すのが主目的だ。
「依頼人(殿下)から、可能なら引率をして欲しいという要望が出されています」
 自分達が強いと思い込んでいる脳味噌筋肉達だ。
 連れて行けば依頼の難易度が上がる。
「ですが」
 その上で職員が提案する。
 冒険者がより自由に冒険出来るように。
「彼等(駄目人間共)を鍛えて戦力に変えることが出来れば、レイウェスト皇子の(帝国奪還に使える)戦力に出来るかもしれません」
 非授恵者が10人程度戦力になっても帝国奪還には全く足りない。
 そもそも、皇子がリザードマンから協力を得られるかどうかも今はまだ分からない。
 だが0ではない。少しずつでも積み上げなければ帝国奪還は遠いままだ。
「彼等(駄目人間共)は頑丈だそうです。多分雑に扱っても死にはしないと思いますので、余裕があれば構ってあげてください」
 いずれにせよ、このままでは彼等(駄目人間共)に明るい未来はない。
 集落の安全だけでなく、脳味噌筋肉リザードマンの将来も冒険者の肩にかかっていた。

解説

■成功条件:カマキリ型クリーパーの撃破   駄目リザードマンの鍛える方法は色々ありますが、基本的には実戦が一番効率的です。 ■戦場  集落の近くにある湿地。  地上を移動する場合、通常の地形より時間がかかります。  所々に背の高い草が生えていて、背後にカマキリ型クリーパーが隠れていることがあります。 ■討伐リスト ・カマキリ型クリーパー  全高1メートル。鎌には不思議な光沢があり、一見物理攻撃ですが実際は魔法攻撃です。  飛行能力を持ち高速です。  しかし細かな動きは苦手で、回避は非常に低いです。  4体1組で行動し、不利になれば最も近くにいる大カマキリ型クリーパーに合流しようとします。  移動:6 最大射程:1 12体 ・大カマキリ型クリーパー  全高2メートル。草に隠れることは不可能です。  飛行能力はないですが湿地の影響を受けずに移動可能です。  鎌は非常に大きく頑丈で、高い物理攻撃力と物理防御力を本体に与えます。  単独で行動します。  移動:3 最大射程:1 3体 ■他 ・駄目リザードマン  筋肉しか取り柄がないリザードマンです。全員非授恵者。  人の言うことをほとんど聞かない駄目人間ですが、冒険者がクリーパー相手の戦いに誘うと喜んで同行します。  ただし、放置すると戦闘の邪魔になります。  装備は自作の大型槍と自前の鱗。  移動:3 最大射程:1 8人

マスターより

 駄目リザードマン達は、今回の依頼で生き延びて、その上で心が折れなければ、別の依頼でも登場予定です。

リプレイ

●
「ヒーラーのギーゼラです。皆さん強いのでしょう? 頼りにしていますね」
 いかにもヒーラーらしいギーゼラが微笑むと、これまでまともに頼りにされることなかった(自業自得の扱いを受けていた)駄目リザードマン達が任せろと断言した。
 冒険者達が困惑する。
 仲間(冒険者)が怪我をしたならギーゼラ自身が窮地陥ろうが癒やすが、役に立たない馬鹿共(駄目人間)なら放置しかねないギーゼラの性格を知っているからだ。
(僕の壁くらいにはなってくれないと困りますし)
 悪意や一時の気の迷いではなくギーゼラは本気でそう思っていた。
「前に立たずに、1列縦隊を2つ作って左右から守るのだ」
 ストレガ・L・リベルガストラはあまり実戦的でない指示を出す。
 彼等は魔法攻撃の邪魔にならないよう動くことすら出来ない。そんな彼等が実行可能なのはこれくらいだ。
(無能な働き者は獅子身中の虫、内部の敵、殺すのが正解、とどっかの戦術書に書いてあったのだ。しかしなんとか使えるレベルにするのが教導なのだ)
 気苦労が耐えない役割を買って出たストレガに、頑張れとか、サポートはする、という視線が他の冒険者から向けられる。
(全然後方警戒してないのだ)
 ストレガはリザードマンの代わりに後ろの様子を確かめながら行軍している。
(まずは自信を持たせてやる気を持たせるのだ)
 だから、効果は非常に薄くても役割を持たせて安心させる。
 本当に気苦労が多い役割だった。
(半数死んでも構わないとか駄目人間共とか、皆様ちょっと言葉がきつすぎますね……)
 フリーダ=ブロムヴィストの馴染みの神だかなんだかよく分からない存在も、まあ肉壁とか遮蔽物扱いで良いんじゃない? と言って(啓示を下して)いる気がする。
(こうなったら私達が彼らをフォローして一人前に……)
 リザードマン達は、既に敵地である湿地にいるのにだらだら歩いていた。
(これは厳しい)
 人格を破壊してから戦士の形に整えるか、とことん親身になってあらゆることを教え込むか。手段は思いつけるが時間がない。
「全員注目!」
 フリーダは笛を吹き鳴らして注目を集める。
 武功の証明である従軍記章をに注目が集まる。
「右、左で一斉に足を下ろしてください。いいですね、いきますよ!!」
 手間のかかる子供に対するような態度で、フリーダが駄目人間達の面倒を見ていた。
(ははぁ、要はガキのお守りだな)
 ナハシュは割り切った。
 図体は大きく筋力はあっても、彼等の中身は子供だ。
 テテリカと手分けして捜波を飛ばし、平凡なクリーパーでは逃れられない索敵手段を維持しつつ自らは気配と姿を隠す。
「いたぜ。魔法の気配がする蟷螂型が10以上」
 ナハシュが言うとリザードマンの足が止まり、無意識に逃げ道を探し始める。
「護衛を任されてんだろぉ? 精々何が来ても護ってやれよ」
 駄目人間達は、ナハシュがどこにいるか気付くことすら出来なかった。

●
 背丈は6割。体の厚みは半分にも満たない。
 しかしテテリカの戦果はリザードマン(駄目人間)全員より大きい。
 鋼の魔弓から次々に矢を放ち、湿地の地面も緑も空すら我が物としていた蟷螂型クリーパーに次々と当てていく。
「タフな戦士の護衛は心強い。敵は単独とは限らない。一体見つけても接近せず、そばで守ってくれるとありがたい」
 彼等が逃げ出す寸前であることに気付いていないふりをして対等の戦士として扱う。
 テテリカのペットである大鼬は、見張りの役割すら果たせぬ彼等(馬鹿共)を補うため敵の接近を警戒している。
「戦いは腕力だけでなく索敵や回復、支援も重要だ。守ってもらいはするが、貴方達の利益となることを約束しよう」
 守ってもらうのではなくテテリカが守っているのが現実だが彼等(馬鹿共)は気付きもしない。
 怯える手で大槍を構える。全く役には立っていないが邪魔しない程度にはなった。
「これはっ……ええ、素晴らしいです。行って参ります!」
 ヴィルヘルミナは礼儀正しくストレガに一礼し、水と泥と少量の陸地で構成された湿地へ踏み込む。
 敢えて水上をいくことでウォーターウォークを最大限に活かし、固い地面を走っているときと同じ速さで敵に近付く。
 テテリカの矢とエーテルによる攻撃で草むらから追い払われているので、全高1メートルの蟷螂は非常に見つけ易いし狙い易い。
 口元が微かに吊り上がる。
 鉄すら切り裂く魔性の鎌と飛翔能力を兼ね備えたクリーパーが獲物にしか見えない。4体で1つの隊を組んでいてもだ。
「まず1つ」
 感情を改めて律して大太刀を振るう。
 不可視の衝撃波を飛ばす、一般的には射程の分威力が低い技だがヴィルヘルミナはウォーリアでしかもドワーフだ。
 威力と精度が低下してもただのクリーパーには十分以上で、射程と効果範囲が拡大した結果巨大蟷螂を切り裂く巨大な刃と化す。
「この一刀を以て、幕引きといたしましょう」
 表面が切断され、中身が宙に零れ、3体分の死骸が宙から落ちて湿地を汚した。
 槍が1本落ち、4人がか細い悲鳴をあげ、3人が逃げるために背を向ける。
「戦いに連れてけと言いながらしっぽを巻いて逃げる、恥というものすら置いてきましたか」
 蟷螂を1隊潰し終える前にもう1隊が現れる。
 攻撃面では圧倒的に優勢だがヴィルヘルミナの魔法防御はあまり高くなく、不気味な色合いの鎌で浅くないダメージを負う。
 だが彼等(臆病者)とは違って怯えず焦らず、自らの生存と勝利を両立させるため戦い続ける。
「強いというのであればその身を以て、証を立てて見せてください」
 ドワーフ(ヴィルヘルミナ)の姿があまりにも眩しく、リザードマン達は逃げるのは止めたが目を逸らしてしまった。
「へいへーい、あっそぼうぜぇ」
 ナハシュが4体を翻弄している。
 遠くに見える2メートル級蟷螂に近付けないよう注意しながら、優れたバランス感覚と上から戦場を見下ろしているかのような判断能力で4体に仕事をさせない。
(そろそろか?)
 茂みの陰に隠れて4体の様子を伺う。
 仕留めてはいないがかなり削った。これならあの連中でも、最悪でも短時間なら持ちこたえることが出来るだろう。
「つえぇんだろ? 一丁やってみろよ。連携してくるから気を付けな」
 トレインしてなすりつけると、8人もいるリザードマンがパニックになりかかった。
「ふふふふ、まさかあんなに強いと主張して! 戦場を欲していた貴方達が! こんな雑魚相手に逃げるんですか?」
 ギーゼラの笑い声は楽しげですらある。
 緑の瞳は理性的にも狂気的にも見え、ひょっとしたら理性が強すぎるために狂気に見えるのかもしれない。
「貴方達にはここで死ぬか、戦って生き残るかしか道はないんですよ!!」
 放置されたら再び堕落するはずだったリザードマンを、威圧感たっぷりな態度と言葉で3集団目のクリーパー迎撃に向かわせる。
 槍の狙いは本当に酷い。
 全く当たらないし近くに冒険者がいれば確実に巻きこまれていた。
 しかし威力はなかなかだ。
 草や泥を文字通りえぐり取り、蟷螂型クリーパーはダメージは受けていないが明らかにリザードマンを警戒して攻めあぐねている。
 リザードマンの体にいくつもの魔法攻撃が行われ、そのまま重傷になるかと思われた。
「ぎりぎりまで戦う意志を見せたご褒美ですよ!!」
 重傷直前の者に対してだけヒールを使う。
 通常なら強力な治癒術ではないがギーゼラの技術があれば特級の癒やしになる。
 治癒されたリザードマンは安堵しギーゼラに感謝を捧げ、傷を受けたままの者は恐れを抱く。
 結果的に、半ば洗脳に近かった。
 ウォーターウォークは10分持続するが回数制限がある。
 その恩恵を受けられないリザードマンが、時間が過ぎるほど泥濘に足をとられるようになる。
「足場が悪い。敵から逃げても背後から襲われるだけだな。協力して撃破する方が安全だ」
 テテリカは矢も放ってはいるがほとんどお守り専門だ。
 体格と膂力に優れた8人を、他は全く駄目でも鍛える価値があると判断した。
「これで少しはマシなはずだ」
 攪乱射撃でクリーパーにダメージと状態異常を与える。
 蟷螂の攻撃成功率が低下し8人が最悪の窮地は脱する。しかしリザードマンの攻撃成功率は低いままだ。優れた体格がもたらす生命と、ギーゼラの支援によりなんとか持ちこたえる。
 大鼬がテテリカから離れて右端の蟷螂を外側から襲う。
 クリーパーの首をかみ切る寸前でふと思いついてリンクでテテリカと相談。
 わざと止めをささずに少しだけ距離をとる。
 御膳立てされたことに気付かず、槍が1体のクリーパーを刺し貫き彼等の初めての戦果となった。
「助かった、ありがとう」
 テテリカに褒められ、疲労と緊張に強張った顔に笑みが浮かんだ。

●
 全高2メートル、つまりそれまで戦っていたクリーパーより約8倍重い巨大蟷螂。
 近づかれるどころか目視した時点で、リザードマンの士気は極限まで落ち込んだ。
「苦しくなったら俺の背中を見ろ!」
 それまで彼等(馬鹿共)に戦う機会を与えるため控えめに動いていたアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトが本気を出した。
 ダマスカス鋼の大太刀に巨大な光塊をまとわせて一閃する。
 泥にもリザードマンにも影響を与えず、光に触れた全高1メートルの蟷螂をたったの一撃で潰しきる。
(帝国の難民と比べて鈍過ぎる)
 肉体的な素質ではリザードマンが圧倒的に勝ってはいるが、精神面では完全に逆だ。
(大型の敵は3つ。合流されるとこいつらは逃がすしかなくなるか)
 思考を巡らせたのは1秒にも満たない。
 アルベルトはウォーターウォークを利用し水の上を駆け抜け、最も近くにいた大型蟷螂(小型としては最大サイズの)クリーパーへ一気に近づく。
「俺の闘う姿を見て何かを感じろ! 考えるな! 感じるんだ!!」
 水面が強力な踏み込みを支える。
 良質な鋼で鍛えられた大太刀が一瞬燃え上がるように輝き、常人が振るえる以上の力を引き出される。
 その上で、アルベルトの長年の修練と最近の苛酷な戦いで得た技量で振るわれる。
 受け止めようとした鎌が半ばで断たれ、大型蟷螂の強靱かつ分厚い表皮が中身ごと切り裂かれた。
 欠けた鎌がアルベルトを打つ。
 鋼の盾と全身鎧があっても体に激痛が走るほど強烈で、見ていただけのリザードマン達が体を震わせる。
「真面目に戦闘術の訓練に励めば俺みたいに強くなれるぞ!」
 アルベルトは痛みをものともせず、止めの一撃を蟷螂へ突き入れた。
 ストレガは、近くにいる大蟷螂をスタティックフィールドに巻き込む。
 直後に放った氷矢は最も遠くにいる個体を狙う。
 付与技術に長けたストレガの術は両方効果を発揮。クリーパーは速度を落とし、戦力の分散が続くことになる。
 槍は多数で1を囲む戦いに向いている。
 彼等ほど未熟な場合、冒険者と違って剣で互いを傷つけかねないからだ。
「1体に対し複数でかかるのだ」
 ストレガの命令は分かり易い。
 リザードマン達は露骨に安堵し、数メートル離れてから巨大な蟷螂を槍で滅多打ちにし始めた。
「逃げると自分の身も危ないのだ。仲間と集まって戦ったほうが安全なのだ」
 教導の大変さを実感しているストレガであった。
 ここまでもったのが奇跡かもしれない。
 緊張に耐えられなくなった1人のリザードマンが槍を投げ捨て逃げようとして、すぐそこまで迫った鎌に気付く。
 死角から暗器が突き出される。
 大鎌を支える部位に命中。それで終わらず赤い光糸が腕に絡みつき大蟷螂の移動も戦闘能力も低下させる。
「はいバツイチ。次逃げるんならココ狙うぜ」
 ナハシュは首を指差し、冗談であることが分かるように言ったつもりだが怖じ気付いた8人全員が震え上がっていた。
 恐るべき大鎌がダマスカス鋼の盾と衝突する。
 それを支えるフリーダは大蟷螂とは比較にならないほど小柄なのに、装備の重さと防御の巧みさで大鎌の切れ味とクリーパーの重さを受け流す。
 音のない断末魔が斜め後ろから聞こえた。
(これで残り1つ。いけますね)
 大蟷螂の渾身の一撃もフリーダにとっては防御可能な攻撃でしかない。
 受け流すたびに位置をずらし、リザードマン8人が攻撃出来る位置へ誘導する。
「さあ、一生に一度もないかもしれない手柄のチャンスですよ!!」
(啓示でも「こういうのは最初が大事、自信が付けば成長するようになります」とありますし)
 穏やかな態度の割りに、フリーダは非常に厳しかった。

●
(帝国奪還に向けて、非授恵者を戦力にする殿下直々の依頼に加え、教育してやるのは威勢と肉体だけが取り柄の馬鹿どもとは)
 無数の障害物と悪い意味で動きが想像出来ない8人の素人がいる戦場で、ナタリア・フィッツジェラルドは天眼を酷使し距離を計る。
 使い捨てにするならともかく生き残らせるつもりならお荷物にも程があるリザードマン(8人)を攻防両面で支援するのは大変だ。
 鱗の防御力を増す堅甲は底をついた。
 クリーパーに最低限は脅威を感じさせないと無造作に首を飛ばされかねないので、リザードマンの槍に輝刃を使わざるを得ない。
「何と心が躍る案件か」
 思わず口に出してしまった。
 現在お荷物でしかない8人を戦力化することに成功すれば、レイウェスト(皇子殿下)のためにもなりナタリアの知識欲も満たせ、お荷物(馬鹿共)も一端の戦士になれるという理想的取引になる。
「残り1匹だ。全員一丸となって槍を繰り出せ」
 ヒールで癒やしてくれる相手に逆らう前衛は滅多にいない。
 8人は涙とそれ以外の水分を零しながら必死に槍を叩きつけ腕力を活かす。
(なるほど。では)
 ヴィルヘルミナがナタリアの狙いを悟って支援を開始する。
 腕力だけでは決して実現しない攻撃力で大蟷螂を攻め、しかし決して止めは刺さないよう気を付ける。
「お前達が強いというのが事実なら、この戦いはお前達を鼻つまみ者とした同族やエフレム様を見返す為の千載一遇の好機と思え!!」
 ナタリアが精神的に8人を追い詰める。
「さあどうした、お前達の筋肉は飾りか、見せてみろ!!」
 8人が泣き声とも罵声ともつかない声を放つ。
 ナタリアにより槍に光が付与されていることに気付きもせずに、大きな槍を抱えて後先を考えない突撃を行う。
 クリーパーの巨体が痙攣する。
 これまでずっと無能扱いされていた8人が、攻撃以外の全てを忘れて穂先を突き刺し柄で叩く。
「よくやった」
 気付いたときには息が切れて座り込み、原型が残らないほど破壊された大蟷螂が湿地に沈んでいた。

●
「訓練は怠るなよ」
 はしゃぐ8人にアルベルトが釘を刺す。
「本当によくやったのだ。だからさらなる研鑽に励むのだ」
 ストレガは褒めはする。
 帝国とリザードマン村に提出する予定の報告書は、8人の評価が正確過ぎて8人が見ればショックで寝込むのが確実だが。
「次も死なないように頑張って訓練とお仕事してくださいね?」
 ギーゼラの笑顔に脅迫され、容赦のないフリーダに行進を強制され、無駄飯食らいから1歩だけ脱した8人が故郷へ向かうのだった。

マスターコメント

 彼等の面倒を見ていた集落は、今後は彼等の扱いを冒険者に任せることに決めたようです。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 6〜8人

2021年02月28日 11時12分29秒 公開

成功

相談掲示板

  1. フリーダ=ブロムヴィスト

    ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 無難にやるとしたら、大カマキリを抑えている間に小カマキリを撃破していく形が良さそうですが、 今回はリザードマン達のサポートも考えなくてはいけませんね。 彼らに上手く自信を持たせて経験を積ませる事を考えると、 真正面から突っ込ませるのはそれなりに危ない気がしますし、 場合によっては逃走する事すらあり得るでしょう。 可能であればこちらである程度攻撃をして、 手負いあるいは瀕死の相手に優先的に取り掛かってもらうとか、 こちらが注意を引いている間に側面ないし背面から奇襲してもらうとか、 そういう形がベストになるでしょうか。

  2. ギーゼラ

    ヒーラーのギーゼラです。よろしくお願いします。 馬鹿なリザードマンを扱いやすくするために、たっぷりと虐めてあげましょう! 逃げなければヒールをかけて癒してあげます! 逃げようとするなら殺しましょう! 生きたければ自身の価値を示しなさい!価値のないクズは死ぬしかないんですよ!! と、僕はスパルタで行きたいですねぇ。 どうせ僕達の言う事なんて聞かない馬鹿なんでしょう? 何人か死んだところで、身の程を知ってこちらの言う事を聞くようになれば フリーダさんの奇襲させる案等もやりやすくなるかと思います。 カマキリが魔法攻撃でなければ、光縛封でリザードマンとカマキリを一緒に閉じ込めて どちらかが死ぬまで観察しても良かったのですけどねぇ。ざぁんねん!

  3. ヴィルヘルミナ

    ヴィルヘルミナです。今回はよろしくお願いします。 とりあえず依頼は成立しましたね。できれば定員まで人で欲しいところです。 クリーパーの退治と、ついでに問題児達の引率ですか。 言葉よりも実地で体感させた方が早そうなので、連れて行くのは別のいいのですが。 実際に相手させてみるなら小さいほうを一匹とかでしょうか。 非受恵者ですし戦力としては期待できませんので、これでもかなり手こずりそうですが。 戦わせて来いとは言われていないのですけど、強いんだぞーなんて言うからには多少は意地を見せて貰いたいものです。 上手くやってもモノになりそうなのは1~2人くらいな気もしますけど。 今回だけでなく色々と体験させて、ようやく……という感じで。 引率もそうですけど、クリーパー退治の方もきちんとしませんとね。 割と数がいますから楽勝とも言えないでしょうし。その辺りは人が揃ってからですか。

  4. ナタリア・フィッツジェラルド

    ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 威勢と筋肉が取り柄の奴らの教導と聞いて参じてみた。 経験を積ませるために、ある程度弱いとか手負いの敵を相手させるのはいいのだが。 不利になれば最も近くにいる大カマキリに合流しようとするとある。 無駄に血の気が多いリザードマンどもの事だ、深追いして大物を相手する羽目になり死屍累々、なんて事になりかねん。 それにカマキリは細かい動きこそ苦手だが4体1組で動ける程度には連携が出来ると思われる。 人の言う事を殆ど聞かないとあるのに、同族同士での連携で対抗が出来るのか?とも疑問視せざるを得ない。 最善とされる結果と言えば、生かさず殺さずの塩梅で奴らに身の程を知って貰う事か。 ブロムヴィストの奇襲案も、敢えてカマキリを泳がせて大カマキリを特定してから、のほうが効果的かもしれん。

  5. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 駄目リザードマン連中は、いっその事淘汰された方が良いんじゃないかと思えてきた・・・ あんな調子じゃこの先、もっとシャレにならない迷惑をかけることになりそうだしな。

  6. テテリカ

    シューターのテテリカだ。よろしく頼む。 俺は草むらに隠れたカマキリを探しておこう。 駄目リザードマン達の扱いがある意味一番の難題か。 湿地移動中は、キャスター・ヒーラー・シューターのような後衛職の護衛を頼む、という体裁で俺達の目の届く範囲にいてもらうのはどうだろう? 言うことを素直に聞くタイプではなさそうなので、煽てて役に立っている気分にするとか……。

  7. ナタリア・フィッツジェラルド

    前回の発言で言い忘れたが、SPが14もあったのでバランス感覚と天眼を習得してみた。 或いは超視覚が必要になるかもしれないが、カマキリが大カマキリと合流しようとか、不穏な動きをある程度でも察知出来るようにはしてみた。

  8. ストレガ・L・リベルガストラ

    ストレガなのだ。よろしくなのだ 移動中に護衛させて自信つけさせるの良い案だと思うのだ 当たって砕けて帰ってこいとは言いつつも大カマキリに蹴散らされては鍛錬にならないのだ 個々が弱いなら相手カマキリの動き見て連携を真似させるといいと思ったのだ そこの補助なのだな 湿地対策でウォーターウォークが有効か試みるのだ 大カマキリはフリーズボルト。カマキリが纏まってたら範囲攻撃で散らしつつ弱らせてみるのだ

  9. ギーゼラ

    ふふふ、煽てて言う事を聞かせるも良し、護衛させるも良し、補助するも良し。 僕はきちんと戦う味方であればヒールしますし、駆除した方がいい雑魚リザードマンと判断したら捨て置くだけですので。 湿地ですので僕も【バランス感覚】は持っていこうと思います。 あとはリザードマン達が言う事を聞きたくなるように【威圧感】にしておきましょうか。 攻撃スキルはリザードマンを巻き込まない様に【闘気槌2】にします。 他は【ヒール】【ヒーリングオーラ】【サイドヒール改】でしっかり回復していきます。 僕がちゃぁんと癒してあげますので、皆さん安心して怪我をしてください!

  10. ナハシュ

    シーフのナハシュだ。よろしく。 いやリザードマンも色々だなー!知ってる連中とは大違いだ。 移動中は護衛ってなぁ同じく賛成だな。とりあえずついてこさせるにはもってこいだと思うわ。 後はまあ逃げ出そうとすんなら、多少俺らが手荒にぶっ飛ばしてもいいんじゃねえの?ヒールもあるなら尚更万全じゃねえか。何度死にかけようが安全ってことだからな。 逃げることは許されず、敵も待ってはくれねえ状況なら、さすがに連中も観念する‥‥といいな。 っと、個人的には同じくバランス感覚は持って行くつもりでいる。ウォーターウォークもありがてえな。他はまだ考え中だが、おそらくは索敵や攪乱中心の動きにはなると思うぜ。

  11. ヴィルヘルミナ

    「多少雑に扱っても死にはしない」「半数死んでも構いません」 こういう言われようを見ると多少厳しくても問題なさそうに見えてしまうのが何とも言えませんね。 口減らしとまでいかない辺りはまだ有情なのでしょうか。 とりあえず逃げずに最後まで戦場に立たせるくらいはしたいですけど。 私はバランス感覚と、あと一つをどうしようかなと。教導でも持っていこうかなとは思っていますが。 流石にいざという時くらいは言う事を聞いてくれると思いたい所です。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0