【闇刄】夜明けの刃
崎田航輝
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シナリオID:481
オープニング
薄闇に包まれた地下の空間。
その静謐の中に現れ、立て膝をついた配下を――漆黒の装束の男が見下ろしていた。
「どうだったでゴザるか」
「……帰還した者はおりません」
配下の言葉に、そうでゴザるかと呟く。
目深に被った頭巾、瞳に奔った傷。片時も刃を手放さずにいるシノビ――玄尾・右衛門。感情のない視線を配下へ向けていた。
「もういいでゴザる」
「……は」
「お前達は近隣の情報収集に向かうでゴザる」
去れ、と目線で語れば、配下は静かに頭を下げてから消えていく。
右衛門は暫し目を閉じてから、上に跳んで天井を開き、明るい空間へと出ていた。
そこは絨毯の敷かれた豪奢な部屋――同盟の都市ナザックの市長邸。
右衛門の姿に、部屋に佇んでいた痩せぎすの男が目を向けてくる。
「右衛門か。ランツォールの件はどうなっている」
「心配は不要でゴザる。シノビは取り逃がしたでゴザるが、それは問題にならないでゴザる」
ならいいが、と彼は息をつく。
彫りの深い面立ちに用心深さを欠かさぬ瞳。
どこか神経質な印象を抱かせるその男は――ナザック市長、グレゴワ。
人はこの中年男に不気味な印象を抱くだろう。
だが右衛門は、その奥に鋭いまでの野心がある事を知っていた。
同時に手段を選ばぬ残忍さと狡猾さも併せ持っている。ランツォールへの妨害工作も、グレゴワが命じて始めた事だった。
それは無辜の人間を傷つけるに至る作戦だが――右衛門はためらいなく実行している。自分の実力を認め、腕を買ってくれたグレゴワに忠義を尽くそうという思いがあるからだ。
これまでの作戦にも、右衛門の助言が大きく貢献している。
「下の人間がいくら捕まろうとも証拠にはならないでゴザる。ランツォールに出来る事があるとすれば、精々直接打って出る事くらいでゴザる」
「ならば安心だな」
グレゴワは言葉通りの表情を見せる。
「ギルドの冒険者だろうが、他所のシノビだろうが。束になってかかってこようとも右衛門には敵わん」
その声に右衛門は頷いている。
グレゴワは、小物なのだろう。だからこそ、自分のやり方で尽くす事が出来る。それに右衛門は満足していた。
シャルガネのシノビは一枚岩ではなく、分派していく形で多様な進化を遂げている。
シノビと言っても様々な考えを持つものがいて――自分のような存在がいても、シャルガネにとってはおそらく些末な事。
今回の事が知られても、シノビ同士の単なる小競り合いが起こっているという程度にしか捉えられないだろう。
――何処までもぬるい。
右衛門はそう思う。
流れ者だった父は「自分の道は自分で作らねばならない」と言った。そうしなければ俺のようになる、と。
生まれた里を追い出された父は、最後には百賀に行き着いたが――その頃には既に弱っており、右衛門が大きくなる前に亡くなった。
どこでも身を立てる事が出来ず、志半ばで潰えたのだ。
「……俺は父のようにはならないでゴザる」
だから里にも、百賀のシノビにも、師にも頼ってこなかった。
信じられるのは己の腕だけ。
世を忍ぶとは、闇と一体となる事。自分の中にそれを受け入れ、自分自身が暗部そのものとなる事だ。
そこは慈悲のない世界。
だから邪魔する者は全て、敵。道を阻みそうな者がいるなら、その芽は徹底的に摘むべきなのだ。
今回ランツォールを上手く御する事が出来なかったのは、簡単な仕事だと侮って賊や配下に任せていたからだ。
力の無い者に委ねた自分の落ち度。甘すぎた。
次は失敗しない。
グレゴワが他の都市を蹴落とそうとするのなら、自分はその為に全力を振るう。いずれ必要とあらば、シャルガネの足すら掬ってやる。
これは小競り合いなどではなく、命を懸けた遣り取りなのだから。
「俺は結果を手に入れるでゴザる」
●戦いへ
「ご足労、感謝するで御座る」
同盟の都市ランツォールの市長邸。
龍尾・左衛門は市長ベルナールと共に冒険者を迎えていた。
先日、冒険者と共にシャルガネまで足を運んだ左衛門だが……冒険者の力で追手も振り払えた事で、こうして目的を済ませてランツォールに戻る事が出来ていた。
ただ、と左衛門は声音を静める。
「こうして拙者が戻った事は、ナザックにもすぐに知られてしまうで御座ろう」
ここで何もしなければまたナザックは強襲や妨害を行ってくるに違いない。
「ランツォールとしてもここ暫く大人しくしているので、不審がる者も増え始めてきました。次の祭りの予告をするなどして、繋いでいますが――」
ベルナールはそう付け足していた。
街が不安定になってしまえば、それだけ付け込まれる隙も生まれるだろう。
故に、と左衛門は皆を見据えて。
「今こそ、打って出る時で御座る!」
それは即ちナザックへ攻め、右衛門を捕らえるという事だ。
「実力は少なくとも、拙者より遥か上。簡単な仕事ではないで御座るが――」
左衛門の師である宗衛門の情報によって、右衛門の能力や動きは予想出来る。
以前に捕まえた敵方のシノビからも、手に入れた情報はある。決して不利ではない戦況を作る事が出来るだろう。
「ナザックも、ランツォールにかかりきりという訳にはいかない筈で御座る。そういうタイミングで、ナザックが手薄になった時を狙うで御座るよ」
右衛門は自分の実力を一番に信用するタイプだ。
作戦の失敗が続いた事で、今では傍に配下を多く置いていないかも知れない。そういう意味でも、好機と言えるだろう。
「それでも敵の牙城に攻め込むには違いないで御座る……だからどうか、力を貸して欲しいで御座るよ」
左衛門の言葉に、ベルナールもまた頭を下げる。
「私はただ、皆さんの帰りを待つことしか出来ませんが――それでも健闘を祈っています。人々が笑って祭りを楽しめるように」
どうかご無事で、と真摯に伝えた。
解説
マスターより
リプレイ
夜の中、正門から灯りが溢れている。
見た目には只の豪奢な邸宅。だがその内に闇を抱えているかのような不気味さを思わす――ナザック市長邸。
遠目にその敷地を見据えながら、ハヤト=ガラン=ヴォルファングは自身の拳同士を軽く打ち付けている。
「いよいよ本丸と直接対決だな!」
「うん。グレゴワと玄尾……二名を捕まえる事が出来れば全ての決着はつく」
セレネ・ヴァーミリオンも、続いた戦いを想起しながら目を閉じて。
「皆、油断せずに行こうね」
「勿論!」
ランツォールの為に、安心して人々が祭りを楽しめる為に。ララベル・サン・ディーベルも拳をぐっと握っていた。
「僕が、影を照らす」
「ええ。ここが正念場です」
フリーダ=ブロムヴィストも自身の神から啓示を受けるよう、一度だけ瞑目して。
「行きましょうか」
言葉を機に、皆は二手に分かれ駆け始める。
水路側へ向かう面々へ、ゴルバルティアは目をやっていた。ララベルとも、そしてセリオス・オーガストとも分かれる形となるからこそ。
「うしっ、二人の為にも私が頑張らねぇとな!!」
「気を付けるんだぞ」
セリオスが言えば、ゴルバルティアは互いになと応えて、後は背を見せる。
「参りましょう」
ルーファス・W・ワーズワースが続けば、フリーダも頷き同道。そして残る五人と左衛門は水路へと走った。
水路は、静かな暗がりだ。
入り口を覗き込むオゴスは――まずはエーテルの波を奔らせ構造を把握していた。
「広い通路ですね。退避を容易にする為でしょうか」
「それでも……っと」
中へ入ったララベルは、入り口側に黒く塗ったロープを張り巡らせて――にこっと微笑んだ。
「これで逃げるにも、時間のロスになると思うんだ」
「良い方法だな。では、進むか」
セリオスが歩めば、皆も静かに前進し始める。
各々が暗視を持つ為苦労はない。最大限に気配を消して道を辿り――邸宅の地下と思しき位置の手前で、ハヤトが何かを感じて止まった。
セリオスも停止のハンドサインを出し……角から先を窺った。
そこに見えるのは――
(……敵のシノビだね)
セレネの合図に、皆も頷く。
セリオスの探知用エーテルで、地上側にも強い気配を見つけていた。が、先んじて黒忍だけを相手取る事は十分に可能だ。
ならば、後は早い。
まずはオゴスが一息に闇を駆け、その敵影へ肉迫。斬閃を煌めかすと、その軌跡を光糸にして肉体を拘束した。
「今です」
その声に頷いたセリオスも弓を引き絞り射撃。鋭い鏃でその一人を直撃し、一瞬で意識を奪い去っていた。
その頃には、セレネがもう一人へ接近済み。
「あんた達に手間取る訳にはいかないんだ」
だからここで、と双剣を振るい足元を切り裂いて。
「皆、手早く済まそう!」
「ええ」
応えるオゴスも敵より早く次撃。魔力の矢を飛ばして戦闘不能へ追い込んだ。
それから倒れた二人を縛って万全を期した、が――
時を同じく、頭上の気配も動き始めていた。
それは私室にいる、紛うことなき――右衛門。次の瞬間には床を開け、こちらの様子を窺おうとしてきたが――
「一歩遅かったな!」
そこへ高く跳ぶのがハヤト。一瞬で私室へと侵入すると、強烈な剣撃で牽制していた。
「……!」
「右衛門っ、ここまでだよ!」
右衛門が僅かに後退した所へ、ララベルもまた軽やかに跳んで肉迫。両手の細剣を舞わせるように三連撃を繰り出してゆく。
「そろそろ、でしょうかね」
正門前。
頃合いと見たルーファスが門の隙間から邸宅へ視線を向けている。
フリーダもまた頷いて――透視をもって前方を見据えていた。
「入り口の左右にいるようです」
見えるのは、物陰に潜む黒忍。
正面から行けば衝突は免れないだろう、が――
「じゃ、行くか」
ゴルバルティアが堂々と門を飛び越えれば、二人も迷わず続く。
そう、行うのは隠密ではなく真正面からの突入。黒忍は無論、こちらへ意識を向けるが……それより疾くフリーダが駆けていた。
敵の機動力が高いとは判っていた。それ故に、距離を置かれての引き撃ちを警戒すべきとも。
だから、その前に距離を詰めて討つ。
「……!」
黒忍が瞠目する一瞬。至近に入ったフリーダは縦一閃の斬撃で肩を抉った。
逆側の一人が刃を降り下ろすが、それはゴルバルティアが短剣で弾き返している。
「よう、ここににんじゃ? のリーダーっぽい奴がいるってんだろ? ま、場所まで聞く気はねーよ」
だから、とそのまま刃を振り翳し。
「今は、ちぃとばかしおねんねしてくれねぇかなぁ!」
瞬間、一閃で地に伏さす。
その間に、ルーファスは扉を蹴破り邸内へ踏み込んでいた。
「ナザック都市長グレゴワ。卿には都市法規に基く違反事項が指摘されている。直ちに抵抗を止め出頭するならば良し。さもなくば強制的執行を行う」
返答は如何か、と。
言いながら、律儀に答えが返るとは思っていない。
ただこうしておけば、相手は自分の所在が割れていないと判断するだろう。その方が先回りしやすく、動きも読みやすい。
(右衛門も、少しは迷ってくれれば最善ですが)
何にせよ敵の行動は限定される。
今はそれで十分、と。ルーファスは戦いに加勢。衝撃波で残る黒忍を追い込むと――ゴルバルティアとフリーダも攻撃を重ね、その一人を倒していた。
あとは前進。
邪魔する使用人は、フリーダが催眠にかけて無力化し――ゴルバルティアは前へ向けて更に威圧の咆哮。強烈な爆音で邸内を震わせていた。
●相克
「ふーん……あなたが玄尾に――グレゴワ?」
部屋へと上がったセレネは右衛門と、傍にいる男――市長グレゴワへ視線を遣っていた。
グレゴワは、慌てた様子で扉の方を見る。
とっさに逃げようとしたのだろう。が、そこで正面入口の方からも冒険者達の声が大きく響いてきた。
怯んだ様相でグレゴワは足を止める。
「右衛門、どういう事だ」
「……挟撃でゴザろう。宗衛門から知恵を借りたか……本気で俺達を打倒するつもりのようでゴザるな」
ならば、と右衛門は戦意を漲らせた。
「役目を果たすだけでゴザる」
「……」
鋭い殺意を漂わす、その姿を見据えながら――オゴスは微かに口を噤む。
腕を買ってくれる者の為に尽くす。矜持すら感じられるその右衛門の生き方に、憧れに似た物を抱いていた。
或いは自身の事に思いが及んだからだろうか。どこか羨む気持ちも皆無ではなく。
(――)
それでも、思いを口には出さない。今自分が立っている立場を思えばこそ。
「こちらも、全力で当たるだけですよ」
「うん。悪いけど、此処でお縄についてもらうから!」
セレネが刃を構え直せば、ララベルもまた脚に力を込めている。
「そうだね。あの時は逃がしたけれど――今度は絶対に逃がさない!」
瞬間、床を蹴って加速。疾風の速度で右衛門の眼前に迫った。
「喰らえ、疾風三連突!」
そのまま突き出す細剣で、視認も叶わぬ程の連撃を加えていく。
血飛沫が飛び、僅かに右衛門が声を零す。それでも即座に反撃を狙う右衛門だが――ララベルが止まらず飛び退けば、入れ替わりに横合いへ奔るのがハヤト。
右衛門が気付く頃には、既に双刃を下段に構えていて。
「うるぁ!」
烈風の如き連閃。膚に深々と傷を刻まれ、右衛門は僅かによろめいた。
すぐに踏み留まり、ハヤトへ斬撃を返そうとするが――ハヤトはそれも予期していた。
何故ならそれは、百賀流の剣術に他ならないから。
この目で、肉体で、学んだハヤトにとってそれは見知った動作。刃で受け、逸らし、衝撃を殺す事も不可能ではなかった。
「百賀を飛び出したくせにそんなもんなのか?」
「……っ!」
右衛門は瞠目し、一瞬戸惑う。
そこへ、オゴスが刃先で光を描いて射出。眩い光印を右衛門の躰へ刻み込み、魔力の集中を乱していた。
その瞬間に、セリオスも番えた矢の狙いを右衛門へと合わせる。
弓弦を引く腕と、弓を握る手から溢れ出てくるのは鮮烈なまでの光。流動するそれは揺蕩うように、明滅するように鏃へと凝集されてゆき――
「――そこだ」
力が溜まり切ったと同時にセリオスは弦を弾く。
刹那、零れる光の粒子を白銀色に煌めかせ。神速で宙を翔けたその一矢が鋭く強烈に――右衛門の脚を貫いていた。
がっ、と声を洩らして右衛門が揺らげば、セリオスはすぐに視線を横へ。
「行けるか」
「勿論!」
応えるセレネは壁を蹴って立体機動。
右衛門の背後を見下ろせる位置までくれば、天井を蹴って真下へ加速。両手の刃で勢いのままに斬り下ろす。
この間、グレゴワは堪らず扉を開いたが――そこへは既に、正面突入組の姿が見えていた。
行きも下がれも出来ず、グレゴワは唇をわななかせる。
「……私達を裁くのか。他所の街を蹴落とす事など、誰でもやっているだろう」
零す声音は、訴えるようでもあった。
「当たり前の野心だ。それを責められる謂れが、あるか」
「――野心そのものを、悪と断じはしない」
返したのは、ルーファス。
領地運用が綺麗事ばかりだと言えない事は知っている。
支配者とは君臨する物。
「その独善を。我欲を認めよう」
けれど、と見据える瞳は真っ直ぐだった。
「それは結果として最大多数の幸福が成るならばだ。卿の統治に、それは望めない。故に僕はこの血に掛けて僕の独善を執行する」
貴方に人の上に立つ資格は無い、と。
グレゴワは声も返せず、ただ歯噛んで逃げ出そうとする、が。
「逃さねーぞ!」
ゴルバルティアが大振りな尻尾を振り下ろし、再び咆哮を劈かせて威圧。びりびりと圧力を感じる程の声量に、グレゴワは正体を失ってよろめいた。
そこへルーファスがエーテルをぶつけ、確保する。
グレゴワは尚暴れようとするが――
「死罪を賜る位なら戦って死ぬ。その覚悟が有りますか」
「……っ」
「出来ませんか。出来ないのでしょうね」
グレゴワは恐怖に竦むだけ。ルーファスにはそれが判っていた。
だから刃は手に取らず。ただその場でグレゴワを拘束した。
「グレゴワ殿――」
右衛門が一瞬、そちらに視線を向ける。だがそれを遮るようにフリーダが眼前へ疾駆していた。
「させません」
暫しこちらへ向いていてもらいます、と。
高々と翳した大剣へ収束させるのは、目を惹く程のエーテル光。刃を振り抜いてそれを真正面からぶつける事で、無理矢理に注意を自分へ向けさせた。
右衛門は誘われるままに、フリーダへ一刀を加える。
が、フリーダはそれを正面から受け切った。ならばと右衛門は、ゴルバルティアを標的に二撃目を叩き込むが――
「……倒れるかよ!」
ゴルバルティアも真っ向から盾を構えて防御。強烈な衝撃に一歩だけ下がるが、後はしかと踏み留まっていた。
「ベル!」
「うん!」
応えるララベルは握り締めた刃に風を逆巻かせ――
「飛べ空刃、真空シュリケン!」
横一文字に奮った剣先から衝撃波を発射。右衛門の腱を抉り裂き、膝をつかせていた。
●黎明
一瞬の静寂に、右衛門は微かな苦悶の声を響かせていた。
グレゴワへ一度だけ視線を向けるも――取り戻すのは最早不可能。それを悟ったか、窓の方へと跳ぼうとする、が。
そこへ立ちはだかるのがオゴス。
「逃走もシノビの戦法だと理解していますが……そちらは影ですよね? なぜ影が主を置いて逃げるのです?」
「……命を失っては、意味がないのでゴザるよ……!」
右衛門は刀を振るい邪魔を排除しようとする。
故にオゴスは小さく息を吐いて。
「そうですか」
失望の心持ちと共に――ならば自身の美学を押し付けるだけだと。
「最後まで戦ってもらいましょう」
魔力を矢へ形成して、空いた懐へ突き刺した。
転げる右衛門は、是非もなしと腕を伸ばし――残った力を使い切るように雷撃を放射する。
だがララベルは五感を研ぎ澄ませて。
「広がれ知覚の眼……見切った!」
光の合間を縫うように奔り、紙一重で回避。
セレネもまた、稲妻に残像だけを貫かせて――自身は直上に跳び上がって避けていた。そのまま視線を巡らす。
「皆、大丈夫!?」
「ああ、なんとかな」
応えるゴルバルティアも、ナイフで雷光を弾く事で直撃を免れ――後ろの仲間を護っていた。
フリーダも盾から煙を上げながらしかと耐え抜いている。
無論、衝撃は決して浅くなかった。けれどもう、決着は目の前だから。
「問題ありません。後はお願いします」
「ああ」
声を返すセリオスは、放つ矢に風を纏わせ加速。右衛門の腕を貫通させていた。
そこへララベルが斬撃を重ねて追い込めば、ハヤトが刃を燃え上がるように輝かせて。
「これで終わりだぁ! 爆雷牙狼撃!!」
振り抜いた一刀から、紅きエーテルを纏う稲妻の如き光を発現。斬撃と共に爆発的な衝撃を齎して――右衛門を打ち倒した。
「……殺さないでゴザるか」
拘束された右衛門は、意識を取り戻してから問うていた。
ララベルはうん、と応える。
「悪行をしっかりと、明らかにしないといけないからね」
「ええ、それに彼も――」
と、ルーファスは同じく捕らえられたグレゴワを見下ろす。
「小物です。殺すにすら値しませんよ」
どちらにしろ、痛みを知らない者に人を導く事など出来ないのだから、と。
右衛門は目を伏せようとして――左衛門の姿に気づく。
「……左衛門」
「右衛門。自身のやってきた事がシノビの道なのか、罪を償いながら考えるで御座るよ。……腕の及ばぬ者が、唯一出来る助言で御座る」
それきり左衛門は、ランツォールへ事情を伝えに戻っていった。
ゴルバルティアは息をついて見回す。
「怪我はねーか?」
「ああ。色々と、助かった」
ありがとう、と。セリオスが言えば――ララベルも皆と共に頷いて。ゴルバルティアはそっか、と軽く笑みを見せていた。
オゴスは私室を見て回っている。
「調べれば、悪事の証拠品なども見つかるかも知れませんね」
それで晴れて事件は解決になるのでしょう、と。
暁が訪れ、街が明るくなってゆく。
グレゴワ達は連行され、市長邸はこれから詳細な調査が行われる予定となった。
左衛門と共に戻ってきたベルナールは、皆へ頭を下げて礼を述べる。
「本当に、ありがとうございました」
「これでランツォールも元通りになるね」
セレネの言葉に、ええ、とベルナールは頷く。
「きっと、楽しい祭りを開きますよ」
「お力になる事が出来て、良かったです」
フリーダが応えれば、左衛門もまた改めて辞儀をしていた。
「冒険者殿の力がなければ、成し得ぬ事で御座った」
「これなら百賀のシノビの免許皆伝貰えそうか?」
ハヤトが言ってみせると、左衛門はうむと応える。
「勿論。師匠も認めてくれるで御座るよ。皆、志を共にしてくれた……百賀の仲間で御座る」
「――朝、ですね」
ルーファスは目を細める。
彼方から陽光が溢れ始めていた。闇が照らされて、消えゆくように。その光は冬風の中に柔らかな暖かさを運んでいた。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準8 / 4〜8人
2021年01月27日 14時25分28秒 公開
相談掲示板
シーフのセレネだよ。 今回は遂に玄尾・右衛門との直接対決、腕がなるね。 皆よろしくね。
オゴスと申します。よろしくお願いいたします。 BSを付与する戦い方を好むシーフです。回復力は乏しいですが一応ヒールを用意していきますね。
僕はシーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、今回もよろしくね!
・・・ン、シューターのセリオスだ、よろしく頼む どうやって侵入するかが肝かな、今回は
ウォーリアのゴルバルティアだぜ 出来るとしたら…陽動か?
陽動するのであれば正門と水路跡。 どちらを主としてどちらを副とするかも要点になりそうですね。 ウォーリア、ルーファスと言います。どうぞよしなに。
ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 基本的には前衛として斬った張ったになりそうな気がします。
正門からドンパチするのは余りオススメしないかなぁ…。 現状、玄尾か市長を捕まえないと犯罪の立証が出来ない。 そんな中で仮に正門から行くのは、失敗した時、人目を惹き付け過ぎる気がするよ。 もし陽動を仕掛けるんだとしたら、水路跡を主、正門を副にした方が良いんじゃないかな? 人目を忍んで速攻でかたをつけるに限ると思うけど、どうかな?
遅くなっちまってすまねぇな! ゴブリンのシーフ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな! ついに右衛門と直接対決だな! 俺も水路跡から侵入して仕掛けるのに賛成だぜ。 あとは挟撃の形を取れるようにする為に正面からも何人か回り込むってのがいいかもな。
右衛門を捕らえるのが目的ですし、最初から派手に動くと勘づかれてしまいそうですね。 俺は水路側から侵入するとしましょう。探波で地形を確認しながら進むつもりです。 特性スキルの枠の関係で捜波のセットは断念しましたが、これも役立ちそうなスキルですよね。悩みます。
ええと、認識齟齬が無ければ良いのですが、 水路跡を主、正門を副で陽動を仕掛ける……ということは、 「水路側に主力を置いて奇襲を仕掛け」 内部が騒がしくなるなり一定時間が経過するなりしたら、 「時間差で正門側に置いた別働隊が仕掛ける」という形ですよね? もしその通りで問題なければ、僕は正門側に回りましょう。 あまり隠密行動が得意という訳でも無いですし。
>対応 ルーファス様の認識で合っているのであれば、私も正面側から仕掛けてみようと思います。 相手は物陰に隠れているとのことですし、スキルに透視を持っていくつもりです。 遮蔽物越しから敵を発見できれば、奇襲を防げると思いますし。
>対応 私は水路跡から仕掛けるとするね。 私は皆と逆に、あんまり目立ちたくないから。 今の所、グループ分けは…、 ■正面 ・フリーダ=ブロムヴィスト ・ルーファス・W・ワーズワース ■水路跡 ・セレネ・ヴァーミリオン ・オゴス ・ハヤト=ガラン=ヴォルファング こんな感じかな? もし違っていたりしたら訂正お願いするね。
陽動なら私も正面だな ■正面 ・フリーダ=ブロムヴィスト ・ルーファス・W・ワーズワース ・ゴルバルティア ■水路跡 ・セレネ・ヴァーミリオン ・オゴス ・ハヤト=ガラン=ヴォルファング
流石に主と副で同数は主の側が押し切られると恐いので、 正門に3人回るなら残りは水路側でしょうかね。 左衛門さんも含めて6人。右衛門と黒忍2の抑えは可能かなと。 正門側は黒忍2人を潰すことと、市長を逃さないこと。 をこなした上で援軍に向かえば良いですよね。 僕も天眼と透視を持ち込みましょう。奇襲対応はお任せあれ。
正門側はウォーリアの皆さん三人が担当してくれることになったんですね。頼もしいです。 俺は水路側として、なるべく静かに邸内への侵入を目指そうと思います。 戦闘時のBSは、右衛門には魔乱印、黒忍には縛糸刃を優先的にかけるつもりです。 味方同士でBSの被りなどがあれば変更も可能です。
よっしゃ! んじゃ、俺は水路側で侵入。 基本的には右衛門の攻撃を引き付けてメイン火力のララベルやオゴスのBSを仕掛け易く出来る様に立ち回るぜ! 黒忍の方は抑えて貰えっと助かるな。 ウォーリア三人衆は正面制圧頼んだぜ!
ん、あまり相談に参加できず済まない 正門陽動水路本命了解した。 俺も水路側から潜入だな。まあできる限りばれないように進みたいから隠密行動で行けるように。 あとは右衛門は逃亡の可能性あるから入り口に立って逃げる邪魔をできればというところか
全然顔が出せなくてごめんなさい。 では、僕も水路側から潜入するね。 暗視と透視を持って行って、万が一の物陰からの奇襲を警戒したり、自分達が通る道以外に通路が無いかを探ろうと思うよ(逃げ道警戒)。
そういう時もありますよね。大丈夫ですよ。 同じ水路側のチームとして、よろしくお願いします。頼りにしています。 ハヤトさん。助かります。 黒忍の抑えですね、了解です。最初は右衛門に魔乱印でいきますが、以降は黒忍を狙っていきます。 地下を進む時に黒忍を発見したら、右衛門戦で合流してこないよう倒して拘束しておきましょう。