シーサーペントは蟹がお好き

桃谷かな

コメント 17

シナリオID:416

オープニング

 辺境都市群のとある海辺。その周辺の海は海流の影響を受け、季節を問わず荒れていた。
 特に冬ともなると海上には猛烈な寒風が吹き荒れ、数メートルの高波が絶えず発生する危険海域だ。

 しかしこの時期、一獲千金を夢見る男たちが集まるのも、この海である。

 命知らずの男たちが狙うはズバリ――冬場にのみ漁が解禁される「辺境蟹(へんきょうがに)」
 このあたりの海の過酷な環境でのみ美味しく育つ、大きくてしっかり身が詰まった最上級の冬の味覚だ。
 荒れ狂う海に放り出されて死ぬ者も、突然の高波を受けて転覆する船も珍しくはない。高値で取引される蟹を少しでも多く獲ろうと、何週間も港に戻らず過酷な漁を続けた末に病人や死者を出す船もあるくらいだ。
 それでも、彼らは蟹漁に命を賭ける。なぜなら、漁が解禁される約1ヶ月の間を生き延びれば、残りの11ヶ月を家族で食べていけるくらいの金が手に入るからだ。

 今年もまた、辺境都市群で蟹ドリームを掴むべく、小さな漁村に男たちが殺到していた――。

●
「頼む! 大海蛇(シーサーペント)を退治してくれ!!!」
 蟹漁の拠点として知られる漁村から最も近い街の、小さな冒険者ギルド支部。そこに転がり込んできたのは、いかにも海の男といった風情の屈強な青年だった。
「し、シーサーペントですか!?」
 単語の持つインパクトにビビる受付嬢。なにそれ強そう。
「ああ……。俺の村は、ここからちょっと行った通称『蟹ドリーム村』だ。今年も命知らずの出稼ぎ漁師が何百人と集まって、王国のお貴族様やら都市同盟の金持ち商人やらのために海に出てるんだ」
「辺境蟹、とっても美味しいらしいですね。高くて庶民には買えませんけど……」
 うっとりと夢見る表情で、まだ見ぬ高級蟹の姿を脳裏に思い描く受付嬢。しかし、漁師の彼は必死だった。
「最初はよかったんだ。漁に出た船もいつも通り……まあ1~2隻沈んだくらいで大体帰ってきた。だが、最近は漁に出たきり戻ってこない船が増えちまってな」
「それが、その大海蛇の仕業だと……?」
「ああ。ソイツはどうやら蟹の猟場を縄張りにしてるらしい。実際、他の船が沈められる現場に居合わせた船もいたんだ。その船はなんとか逃げ延びて、港まで戻ってこれたんだが……このままじゃ、さすがの俺たちも船を出せなくなっちまう」
 蟹漁の解禁期間は、たった1ヶ月しかない。この漁に1年の生活がかかっている者たちからすれば、大海蛇が気まぐれを起こして移動するのを待っている暇などないのだ。
 しかも大海蛇は、どうも辺境蟹を主食として気に入ってしまっているらしい。このままでは、貴重な蟹が根こそぎ食べられてしまうかもしれない。
「お願いだ! 船なら俺が出す! どうかヤツを始末してくれ!!」

 青年の切実な訴えを聞き、受付嬢はこれを正式な依頼として貼り出すことにした。

解説

●依頼内容 ・漁船で沖へ出て、辺境蟹漁を邪魔する大海蛇(シーサーペント)を倒してください。 ●敵 ・大海蛇(シーサーペント)×1  体長15mのデカい海蛇。胴回りは直径1.5mほど。  縄張りに侵入した船を攻撃し、今までに何隻か沈めているようです。  手口としては、櫂や蟹漁の音を聞きつけて船に接近し、浮上。上半身や尻尾を海上に出し、船を上から叩き潰すように攻撃してくるようです。時折、船の側面にタックルもしてきます。  船に乗っている人ではなく、船そのものを敵と見なしているもよう。  (今回は、船で大海蛇の縄張りに入った時点からリプレイ開始です) ●戦場の状況  恐ろしいくらい荒れ狂っている海上での戦闘になります。漁船はそれなりに大きく、甲板では複数人が武器を振り回すことができます。  船は大海蛇の攻撃をまともに5発食らうと沈みますので、4発食らった時点で速やかな撤退が必要になります。  船上は死ぬほど揺れるし何なら大波をかぶることもあるし、吹き荒れる風は極寒です。できるだけ海が落ち着いている日を狙って船を出しますが、それでも海に放り出されかねないほど揺れる瞬間が何度も来ますので、注意してください。  なお、ウォーターウォークで歩ける状態の海ではないです。 ●船員  一般人の船員(漁師)が8名同乗。船の操舵や水の汲み出しなどを行いますが、戦闘が始まると船倉に避難します。  戦闘終了または作戦失敗(撤退)の合図で船倉から出てきます。 ●ご褒美  大海蛇を倒せたら、近くの宿で蟹パーティーを開いてくれます。  辺境蟹が食べ放題。鍋、焼き、ボイル、刺身……お好きな食べ方でどうぞ。

マスターより

めっきり寒くなりましたね。 冬といえば蟹、蟹といえば荒れ狂う海と一獲千金です。 現地はマジで寒いので、がんばってくださいね!

リプレイ

 ハルハン・ツァガーンナルは、素直に漁師を尊敬した。
「こんな海風の中で仕事してるなんて……!」
 めちゃくちゃ寒い。大海蛇の縄張りに錨を下ろした漁船は大波に揺られまくっている。授恵者でもない、彼女のようにバランス感覚が優れているわけでもない漁師達がこんな環境で働いているなど、実際に目にしなければ信じなかったかもしれない。
「もー! 大海蛇め~……よりにもよって辺境蟹の漁場を縄張りにするなんて、もっと空気読めってカンジだよね!?」
「この状況が続けば、漁師達の生活が立ち行かなくなるのは明らかだ。災難だが――俺達が倒してしまえば問題はない」
 船倉へ避難して行く漁師達を見つめ、気遣いを知らぬ大海蛇に苛立ちを隠せないエルゼリオ・レイノーラ。漁に関しては知識と心得があるナハティガル=ラーもまた、一隻も漁に出られていない現地の様子に事態の深刻さを痛感していた。
「う……。覚悟はしていましたが、揺れますね……!」
「……船酔いで動けなくなる前に決着つけないと」
 長引けば、何かが口から出るかもしれない。そんな不安すら覚え抱えながら、ロープで腰と船の手摺を繋いでいるのはコルネリウス・アーラと海神・江流だ。海への転落を防ぐため、多くの冒険者達が彼女らと同様に命綱を船に繋いでいた。
 ナハティガルの進言もあり、船は波を乗り越えやすい角度を向いている。波を被る頻度は減るが、揺れと傾きがやはり尋常ではない。寒さに強いコルネリウスでも、転落して戻れなければ命の保証はないだろう。
 しかし、
「姉ちゃん、アンタ本当に大丈夫か?」
「大丈夫。クーは授恵者だし、きっと耐えられる」
 この荒れ狂う海に、自ら飛び込もうという者がいた。ロープで腰に空樽を繋いだクー=ウィッシュだ。心配して足を止めた漁師に、彼女は平然と頷いてみせる。
「蟹を食わせてもらえるらしいしね。退治できても、船の修理費で大赤字では切な過ぎだろう」
 授恵者なら、息を止めていられる時間が長い。寒さに耐性もあるし、大海蛇とて波間に浮かぶ人間を正確に狙うのは難しいはずだ。シーザーロアで海上の自分に大海蛇の注意を向けられれば船の損傷を抑えることができると、クーは自ら地獄行きを選んだ。
「ただでさえ危険な漁だっていうのに、これ以上漁師さん達の犠牲が出たら大変だ。絶対に倒さなきゃ」
「15mか。でかいね、竜みたいだ。まあやれるだけはやろう」
 船倉に続く入口が閉まるのを確認して、ララベル・サン・ディーベルとヨル・スレイマンが広大な海へと視線を巡らす。
 目の良いものは目を、耳の良い者は耳を。感覚を限界まで研ぎ澄まし、冒険者達は大海蛇の襲来を待った。

●
 冒険者達が大海蛇の姿を捉えたのは、索敵を開始してすぐのことだった。
 遠くの波間に一瞬動くものが見えたかと思うと、まるで竜のような咆哮が寒風を裂いて響き渡る。
「来たか。兎にも角にも倒さなければね。少しでも早く。ここは彼の舞台なのだし」
 天眼で距離を測り、牧杖を構えるヨル。赤褐色の鱗を波間にくねらせ、時に海面から顔を出しながら、大海蛇は確実に船を目指していた。
「……よし。皆、素早く止めを頼むぞ」
「クー、気をつけてくださいね!」
 右舷側の波音が変わった瞬間、ツァガーンナルの目の前で空樽を抱えたクーが跳んだ。着水の様子は見てあげられない。耳をつんざく咆哮とともに、頭をもたげた大海蛇がこちらを睨みつけているから。
「動き回られるのは厄介。――我が縛糸の針で突き穿つ!」
 敵が頭を振り下ろすより数段速く、ナハティガルが空を滑りその首に取りつく。赤光のエーテルが鱗を這う頃には彼の姿が消え、入れ替わりにララベルが跳躍していた。
「これ以上お前の好きにはさせないよ……喰らえ疾風三連斬!」
 双剣が閃く。大海蛇の首元に三筋の傷を残し、ララベルは再び空を滑って船側面に着地した。
 苦悶と怒りに身をよじらせ、大口を開けて船を威嚇する大海蛇。その眼前を一陣の風が行き過ぎる。危険を察知した大海蛇が頭を下げかけた時にはもう、江流の刃が左の瞼を掠めていた。
「視覚が全てって訳じゃないだろうけど、こちとら船をやられる訳にはいかないんでね!」
 悲鳴を上げ、左目を塞ぐ自らの血液を振り払おうとする大海蛇。注ぎ込まれた毒が、未だ絡みつく赤糸が、その体を蝕み拘束していく。
 漁船から反撃らしい反撃など受けたことがなかった大海蛇にとって、これは想定外の事態だった。
 そしてシーフ3人が船に戻った次の瞬間、大海蛇はさらに驚かされることになる。
「聖なる六紡の星 盟約の言葉によりその一切を封印せよ!」
 帆柱を中心に、高さ20mの光輝く六角柱が突如として現れた。エルゼリオの光縛封だ。本来は横向きに召喚できないものかと試していたが上手くいかず、ヨルの提案で帆柱とその周囲を守る形にしたのだが――、
「この海蛇……本当に私達が目に入っていないのでしょうか」
 重い装備と脚力、手摺を握る片手で大揺れを耐え抜きながら、コルネリウスが言った。攻撃を仕掛けているのは人間たちだというのに、その動きを注視する様子はない。しかし、光縛封で急に大きさを増したように見える漁船の姿には、若干の警戒心を抱いているようだ。
「今だ! ぶちかませ!」
 結界にたじろぐ大海蛇の顔目掛け、ヨルの魔矢が飛ぶ。コルネリウスもまた、自身の身長ほどもある大太刀で空を一閃。猛烈な海風にも負けぬ衝撃波を大海蛇へと放った。
 額と頬に二撃を受けた大海蛇は、短い悲鳴とともに我に返り、怒りに燃える目で漁船へと攻撃を仕掛ける。標的は、ど真ん中で偉そうに光っている六角柱だ。
「……! 危ない!」
 光縛封の結界は、大海蛇の攻撃を通さない。帆柱が折れることはない。結界の側壁に沿って滑り落ちてきた大海蛇の首が船体と衝突するより早く、鋼の盾を掲げたツァガーンナルが甲板を疾る。
「くっ……ううぅぅぅ!!!」
 不安定な足場をものともせず、両脚を踏ん張るツァガーンナル。凄まじい衝撃を盾越しに受け止め、船外に押し返そうとする。
(耐えきります! 護り切る! そう決めたら、貫き通すだけ!)
 激痛。何かが折れる音。砕ける音。ツァガーンナルの骨何本かを犠牲に、大海蛇の頭は船の縁をわずかに破壊した程度で海上に墜ちた。
「よくやった。さあ、一度退がって傷を癒すんだ」
 ヨルが駆け寄り、立ち上がれないツァガーンナルを左舷側へ引きずっていく。
「攻撃は重いようですが、受けきれない程でもないようですね……」
 ツァガーンナルが後退した今、あれを受けられる者は恐らく自分しかいない。コルネリウスは覚悟を決めると、敵が標的にするであろう六角柱の足元へと位置を変えた。
 激しい揺れとともに、再び海上に頭をもたげる大海蛇。しかし、その目は何か、違うものを追っていた。

●
「うっ……ぷはっ……!」
 荒波に揉まれて海中と海面を行ったり来たりしながらも、空樽を頼りに何とか息を繋ぐクー。海は氷のように冷たく、絶えず大波が襲い来る中にあっては、さすがの彼女も長くは保たなさそうだ。
(――成功した!?)
 樽にしがみついて見れば、頭をもたげた巨大な大海蛇が彼女の方を向いている。一度目のシーザーロアは通用しなかった。大波に翻弄されながら機会を待ち、何とか放った二度目の殺気が、やっとのことで大海蛇を惹きつけたらしい。
「ぶっ――ゲホゲホゲホッ!!」
 思った通り、大海蛇は波間に揺れる木の葉のようなクーを捉えることができなかった。もしかすると、あまり視力が良くないのかもしれない。上半身を大雑把に叩きつける攻撃スタイルではクーにダメージを与えることはできなかった。
 しかし、その衝撃で生まれた波と水流は、クーを容赦なく海中へと引きずり込む。息を止め、海面の方向を見失わないように耐え続けることだけが、今のクーに残された唯一の生存手段だった。

「早く決着をつけなきゃ……! 皆、今のうちに少しでもダメージを稼ごう!」
「急所を狙うなら今しかないな。俺はもう一度、目潰しを狙ってみる」
 クーの状況を見て、ララベルと江流が再び空を飛ぶ。浮き沈みを繰り返す小さな的を追うことに必死な大海蛇が、彼らの接近に気づくことはない。
 白刃が五度、閃く。右目に十字、首筋に三筋の深手を負った大海蛇がもんどり打つように海面に頭を落とし、咆哮を上げて尾を振り回す。
「天光満つる処に我は在り 黄泉の門開く処に汝在り。出でよ――祈雷」
 エルゼリオの祈りに応え、暴れる大海蛇の周囲の海上にうっすらとした霧が生まれた。
「大揺れが来るぞ!」
 天眼で船の周りを視ていたヨルが、特大の海のうねりを察知して叫ぶ。今にも飛び立とうとしていたナハティガルを含め、全員が船の手摺を強く握って揺れに備えた。船首が信じられない高さまで持ち上がり、甲板が大きく傾く。
「うわっ、わわわ!?」
「エルゼリオさん!」
 足を滑らせて船尾方向へ転がりかけたエルゼリオの外套に、間一髪でコルネリウスの靴が届いた。命綱があるとはいえ、揺れる船上でコントロールを失うのは危険でしかない。
「ありがとう! ……っと、うわわわわっ!?」
 船は海面が見えなくなるほど高い位置で一瞬水平になり、今度は逆方向へ急激に傾きを変えていく。
「片腕は生きてる? 俺にしっかり掴まるんだ」
「は、はい……!」
 それは数秒のことではあったが、まだ回復し切らないツァガーンナルを抱えたヨルにとっては随分と長い時間にも感じられた。
「大海蛇は――まだウィッシュさんを狙ってるのか」
「クーが沈む前に息の根を止めなければな」
 体勢を立て直した江流とナハティガルの視線の先では、右目を潰され、瞼からの流血で左目の視力も怪しい大海蛇が、それでも海面を睨んでいる。
「来たっ!」
 明滅する眩い光。何とか起き上がったエルゼリオが歓声をあげる中、応雷の雷嵐が大海蛇の上半身を派手に包み込んだ。

●
 何度も襲い来る激しい揺れと戦いながら、冒険者達は確実に大海蛇の生命力を削っていく。
 大海蛇の胴を衝撃波で切り裂き、ふと振り返ったコルネリウスの目に映ったのは、弱々しく明滅する六角柱の壁だった。
「光縛封が消えます!」
 彼女の声に、ヨルが牧杖を掲げる。エルゼリオのそれと同様に帆柱を守る位置に再び結界を置き、大海蛇の攻撃に備えた。
「これでもう少し、保つと良いんだけどね⋯⋯!」
 結界は十数秒しか保たない。ヨルの隣で、銀糸の髪を靡かせながらナハティガルが空を舞った。大海蛇の背中へ暗針が深々と突き立ち、甲高い咆哮が空気を震わせる。
「だいぶ弱ってきてるかな……? あっ、こっち向いた!」
 ララベルが見つめる先で、大海蛇の目がギョロリと動いた。クーへの執着から解き放たれた敵は一度海中に沈むと、ほぼ無傷の尻尾を勢いよく海上へ振り上げて船を狙う。
「させません!」
 戦線に復帰したツァガーンナルが、尻尾を見上げて斧を振るった。不可視の衝撃波が空を裂き、赤褐色の鱗を砕いて尾の先を斬り飛ばす。あまりの痛みに一度動きを止め、ヤケクソじみて振り下ろされた尾を受け止めたのは、覚悟を決めたコルネリウスの盾だ。
(重い――!)
 装甲防御で守りを固めていなかったら、コルネリウスとて骨の数本はダメになっていたかもしれない。歪む盾の下で関節の軋みを聞きながら、彼女は渾身の力で敵の尾を海へと受け流した。
「大丈夫!? 今、回復するね!」
 力が抜けた途端、傾きに足をとられて転倒するコルネリウス。即座にエルゼリオが助け起こし、癒しの光で彼女を包み込んだ。その目の前で、再び海上に頭をもたげる大海蛇。
「こっちだ! 耳はまだ生きてるんだろう?」
 恐らく今は視覚より聴覚のほうが反応するだろうと、江流が船尾側へ移動しながら大声で大海蛇の注意を引いた。
 そちらへと顔を向けかけた瞬間を狙い、ヨルの光の矢が鼻先を抉る。悲鳴を上げて頭を振り、船を叩き壊そうとすればツァガーンナルに防がれる。立ち上がったコルネリウスがエーテルブレードで刃を伸ばし、骨にまで達する斬撃を叩き込んでくる。
 もはや満身創痍。至るところから血を流し、ふらついた大海蛇の頭が甲板に近づき、ナハティガルの刃が容赦なく突き刺さった。
 これを好機とみたララベルが、大海蛇の体を壁歩きで一気に駆け上っていく。
「これで止めだっ……登蛇疾風三連撃!」
 赤褐色の鱗に覆われた、その脳天に。
 目にもとまらぬ速さで、止めの三連撃が突き下ろされた。

●
「うわあぁ~~! すっごい!」
 テーブルの上に所狭しと並べられた辺境蟹料理の数々に、エルゼリオはきらきらと目を輝かせた。
「夢にまで見た辺境蟹食べ放題! へっへーん、今度父上に自慢してやるんだ~!」
 新鮮な刺身をとり、大ぶりの身を一口でパクリ。しっかりとした身の弾力、粘り、甘み、そして旨味――最上級の冬の味覚に酔いしれ、エルゼリオの両手は無意識のうちに両頬へ。
「なかなか過酷だったけど、美味しいものを食べると疲れも吹っ飛ぶね」
 ヨルたち大人組には、蟹料理に合うお酒も用意されていた。帰港後は宿の風呂も使わせてもらい、美味しい鍋と酒で体はすっかりポッカポカ。
「美味しい……あの海に飛び込んでよかった」
 相変わらずの無表情で、マイペースに焼き蟹を頬張るクー。彼女は大海蛇のお陰でちょっと遠くに流されかけていたが、ツァガーンナルが投げてくれたミニ樽つきロープを掴んで無事生還。今は中々とれない蟹の身と格闘中だ。
「わぁ、故郷の港町の蟹も美味しかったけど、それ以上だ」
「蟹は初めてですが……驚きました。海の中にいるのに、こんなに甘いんですね」
 鍋に刺身に焼き、ボイル……それぞれの味を楽しみながら、うっとりした表情で言い交わすララベルとコルネリウス。蟹味噌のビジュアルに若干の戸惑いをみせたコルネリウスだったが、ララベルの勧めで一口トライ。この日、彼女の味覚に新しい扉が開かれた。
「うーん! どれも美味しいです! 頑張った甲斐が、ありました」
「ハルハンさんは2回も船の身代わりになったからね。本当に頑張ったよ」
 さっきまで全身の骨バッキバキだった人とは思えぬ動きで、のんびり蟹を堪能するツァガーンナル。江流に褒められ、ちょっぴりシャイな笑顔をみせた。
(美味しいけど、蟹の身をほじるの面倒だな~)
 そんなことを思いつつ、蟹鍋をつついていた江流。ふと、ナハティガルが一口も蟹を食べずに自分を見つめ続けていることに気づく。他の仲間たちも気づき、どうしたんだろうと首を傾げた。
「もしかして、蟹、苦手だった?」
「いや――」
 心配そうなララベルに、ナハティガルはクールな表情を崩さぬまま、頭を横に振る。そして、深刻な声音で問う。

「――これはどうやって食べるんだ……?」

 生まれて初めての蟹料理。
 大海蛇にも怯まぬ彼は今、硬い甲殻に覆われた未知の食材を前に、全力で困惑していた――。

マスターコメント

極寒の海での戦闘、おつかれさまでした! 遠距離攻撃が得意なキャスターとシューターがいない中、皆さま本当にプレイングやスキルを工夫して、見事に大海蛇を退治してくださいました。 今冬の辺境蟹漁も、きっと大漁になるでしょう。 それでは、またの機会がございましたら、ロスガリア大陸のどこかでお会いしましょう!
ショートシナリオ

ショートシナリオ難しい 報酬:多い8 / 4〜8人

2021年01月14日 22時47分48秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. コルネリウス・アーラ

    ウォーリアのコルネリウスです。よろしくお願いします。 今回はウォーリア、シーフ、ヒーラーでのメンバーでしょうか? 大海蛇の船への直撃を、どう防いでいきましょうね。 ひとまず現時点では衝撃刃などの遠距離攻撃の検討と、上から来た時に耐えられるようにと考えています。

  2. エルゼリオ・レイノーラ

    ヒーラーのエルゼリオ・レイノーラだよ。 今回はヨロシクね! >船への直撃 コルネリウスさんが言ってるように、 船への直撃を防ぐ方法を考えないと相当厳しそうだよね。 今の段階で考え付いたのは、【光縛封】を船周りの何処か一箇所に設置する…とかかなぁ? 一箇所しか護れないけれど、無いよりはマシかなって考えてるよ。 >戦闘 ボクも魔法攻撃メインに調整して、魔矢とかでの遠距離攻撃をメインにする予定。 あとはヒールとか堅甲2を持って行くと思う。

  3. ヨル・スレイマン

    ヒーラーのヨルだ。宜しくね。 >船への直撃 光縛封は良さそうだね。俺も持っていけるから複数出すことも出来るかもだけど、最長3Tしか出せないことを考えると交代で張る方が良いかな。 あまり近付かれる前は、船を敵反対方向へ逃げるように動かしつつ引き撃ちできるといいのかもしれないけど⋯⋯船員は避難しちゃうから難しいかな? 船位置固定だとすると複数隻欲しいくらいだね⋯⋯。 >海に放り出されかねないほど揺れる これもちょっと考えておくべきかな。ロープで縛って固定したりしといた方がいいのかも。 もしくは放り出された場合のフォロー⋯⋯とはいえ助けに行くのはなかなか大変そうだけど。 >戦闘 作戦次第だが、現行だと俺も攻撃は魔矢がメインになりそうかな。 いつもはヒールを多めにするんだけど、今回は速く倒せた方が良さそうだから一つくらい輝刃にするかもしれない。

  4. クー=ウィッシュ

    壁ウォーリアのクー=ウィッシュだ。 大海蛇の攻撃、可能な限りクーが荒海に飛び込んでシーザーロアで引き受ける。 浮き輪代わりに空の樽を使わせてもらうよ。 大海蛇にとっては人間サイズの攻撃対象はかなり狙いづらいはずなんで 意外と耐えられると思う。 海中へ沈まなければ。

  5. 海神 江流

    シーフの海神江流だよ。 今回は宜しくね。 皆が皆、遠距離攻撃ってのもどうかと思ったんで【エアーライド】から【毒撃】や【バーストストライク】を狙ってみようかな。 飛び回ってるのが一人居れば、船へのヘイトを多少減らせるかなとも思うんでやってみたいなと思ってるよ。 >【光縛封】 上手く操船してもらって、片方の舷にだけ接するようにしてもらえれば的も絞れて効率良くなりそうだね。 【天眼】も持っていくつもりなんで、俯瞰視点から大海蛇の次の動きが予見できれば、操船指示にも使えそうかな、とか。

  6. ナハティガル=ラー

    ナハティガル=ラー。 不意討ち暗殺何でもござれのシーフだ。宜しく頼む。 >戦闘 遠距離攻撃の手段をほぼ持っていない為、 俺は【壁歩き】【エアーライド】で船から飛び掛かる形での戦法を予定。 物理攻撃力を落として付与を上げ、【縛糸刃】【毒撃2】等のBS攻撃メインの戦法になるかと。 >船員 戦闘が始まると船倉に避難してしまう為、 船の操舵は俺達が自力でやるしかないだろうか? >海に放り出されかねないほど揺れる ヨルの言う様に海上に出て戦う以外の参加者は、自身をロープで固定しておいた方が良いと思う。 海に投げ出された場合、戦闘中の救出はほぼ不可能そうだしな…。

  7. ララベル・サン・ディーベル

    僕はシーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、宜しくね! >戦闘 僕は【壁歩き】と【エアーライド】に【疾風足】を重ねて、船から飛びかかって3回攻撃して、シーサーペントから離れる(船の船体側面に戻る?)様な戦い方になると思う。 純粋に物理攻撃でダメージ重ねていくつもりだよ。

  8. ハルハン・ツァガーンナル

    ウォーリア。ハルハンの子、ツァガーンナルです。 よろしくおねがいします! >戦闘 揺れは、バランス感覚の汎用スキルで、頑張ろうかと。 大海蛇自体は、特には、遠距離攻撃はできない様子でしょうか 常に船の近くにいるなら、一応、近接攻撃でも届きそうな感じがしますね。 >船の防御 船……。船体も、カバーリングの対象になったりするでしょうか……? 大海蛇は船自体を敵とみなしている様子です。なので、試しに、カバーリングもやるだけやってみたいと思います >操舵 船が止まっている状態なら、必要無さそうですが、操舵することで、色々対応可能になることもありそうですね

  9. エルゼリオ・レイノーラ

    >光縛封 それじゃ、ボクとヨルさんとで光縛封を交互に張るカンジで良いかな? 張る位置に関しては迷い所なんだけど――… 『上半身や尻尾を海上に出し、船を上から叩き潰すように攻撃してくるようです。時折、船の側面にタックルもしてきます。』 …って記載されてるから、張るなら「船に対して真上水平方向」(←可能なら)か「船側面」のどちらかが良いかも。

  10. コルネリウス・アーラ

    >海に放り出されかねないほど揺れる 此方はロープなどで投げ出されないようにするのに異論ありません。 放り出されてしまったら救助は不可能という意識で挑みます。 >操舵 漁船ならアンカーはありますよね。 流されないように船を止めた状態で戦闘に集中するか、操舵しながらとなりそうですが操舵に手を割くとなるとちょっと大変かなという懸念はありますね…。

  11. ヨル・スレイマン

    >操舵 船外で戦う人が結構多そうだから、アンカーを沈めて固定と考えた方が良いかもだね。 動かせるかどうかもちょっとわからないし。意見くれた人はありがとうね。 >光縛封 そういえば水平に張ったことはなかったな。 側面に寄られた時に近づかれないように側面に張る感じが手堅いかな、と思ったけど、船に対して真上水平方向も張れたら面白そうだね。 場合によってはマストを守るように張れば、損壊自体を軽微に留めることはできるかも。 >シーザーロア 飛び込むの大丈夫かな⋯⋯!? ウォーターウォークもできないくらいっていうから純粋にちょっと心配になってしまうが⋯⋯もし本当に行くならせめて緊急ボートくらいは使って欲しい⋯⋯。 万が一武器を取り落とすとスキルも使えないし、ヒールも届かない可能性が高いよ。

  12. ナハティガル=ラー

    >操舵 操船関係のスキルは現状存在しない様だし(調べてみた)、 アンカーを沈めて固定する方が良いかも知れないな。 >クー >シーザーロア 空の樽にしがみ付いた状態で大海蛇を惹き付けるのは、俺も流石に危険過ぎると思う。 船が沈まずとも、それで仲間が沈んでしまったら意味が無い。

  13. クー=ウィッシュ

    心配してくれて感謝する。 大丈夫だ。 馬鹿さも無茶さも、危険度も状況も。 PCの個性や、 プレイング的なアレコレも 全てを加味した上で実行可能な最善として行動を選んでいる。 この馬鹿への心配より 出来るだけ早く大海蛇へ止めを刺す方へ注力して欲しい。

  14. 海神 江流

    >クーさん 決意は硬いようだから、これ以上止めても平行線になりそうなので、1つばかりお願いを。 沈むにしろ、流されるにしろ、単純な戦線離脱だけじゃ済まない結果になりかねないと思うんだわ。 行方不明者が出てしまえば、依頼としては失敗とギルドも判定せざるを得ないと思うので、船から落ちないためではなくて、何かあったときに最悪、回収できるようにって意味で船の手摺とか使って命綱の用意はお願いできないかな。 いや、自分も4回しか使えないエアーライドだけに頼って海に飛び出すのあぶねーだろうなと思って、手摺に命綱くらいはしとくかなぁって思ったもんで、空中戦組以上に必要だろうなと思ったってあたりで。 俺個人は、復帰の現実性を考えると【壁歩き】もあった方が無難なのかな。って思ったんでバーストストライクは横に置いて、早期から毒撃主体で狙っていく方向にしてみるね。 【フェザーステップ】があれば、攻撃後の移動で戻るのにも無理ないだろうし、継戦重視って事で。

  15. コルネリウス・アーラ

    そうですね、クーさんは命綱は船に繋いでおいて頂ければと思います。 同行者が欠けてしまうのは戦力的にも心情的にも辛いものがありますので。 船はアンカーで固定という方向で良さそうですが、波で浚われないようにするのはかなり困難だと思われますから。 私個人の場合は空中戦も出来ないので、落ちたらまず戦線復帰は無理ですから船内に留まりながら耐えられるようにと考えています。 ロープでしっかり繋ぐ+やや重めの装備で出来るだけ揺れに振り回されないようにしようかと。 スキルは衝撃刃、装甲防御、ヒールは予定していますが後どのように動くかはまだ検討中です。

  16. ヨル・スレイマン

    そうだね、せめて命綱。 海が荒れているのはシーサーペントのせいではないだろうし、万一沈んでしまったらと思うと怖いよ。 同じく船内でロープ張りつつ、魔矢で攻撃をするのをメインにする。 光縛封はエルゼリオ君と交代、ないし必要そうであれば同時に別箇所に張る形で。 手数を減らさないことを考えると、普段はサブアクションのサイドヒールでこまめに回復させつつ、皆に攻撃して貰うのが一番かなーと思っているけど、もしヒーリングオーラの方が良いとかあれば言ってね。 もしもの時はヒールとサイドヒール合わせてそれなりに回復させられるはず。 代わりにちょっと保たなくなったので、俺は甲板組ヒール圏内ちょっと後ろにいるね。

  17. エルゼリオ・レイノーラ

    >命綱 ボクも腰をロープで固定して命綱にしたよ~。 >光縛封 初手で光縛封を『船に対して真上水平方向』(ルール的に不可能な場合は『船側面』)に展開 ※ヨルさんとは交互or別位置に展開 ――って記載しておいたよ。 >堅甲2 戦闘前に前衛メンバーに付与するね!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0