【死軍】廃墟に潜む死の影

霧柄頼道

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シナリオID:352

オープニング

●
 帝国軍と王国軍、そして冒険者達の奮闘により、ヴァイセントラフ砦は押し寄せる死者の兵団を撃破した。
 四万にも及んだアンデッドの群れの大半は倒され、残る敵もまた散り散りに潰走。砦は守られ、勝利の報が大陸を駆け抜けた。
 けれども、戦域から逃げ去った多くの敵は、いまだシルトラース領において狼藉を働いているはずだ。
 ほとんどは統率を失ったゾンビゆえに組織だった行動はできないものの、中には生き残ったクリーパーも混じっていたり、ヤコブ配下の吸血鬼も隠れ潜み、人々の安全を脅かしている事には間違いない。
「よし……この村だな」
 大崩壊に巻き込まれ、大きな火災が起きて滅んだ小さな村。ヴァイセントラフ砦から派遣された追討部隊は、ここに死軍残党が逃げ込んだとの情報を元に、足を踏み入れた。
 とはいっても、ヴァイセントラフ砦は戦後処理に追われ、そうやすやすとまともな部隊が編成できるわけではない。
 ここにいるのは偵察に徹した役目の、装備も軽いほんの十名ほどの分隊だ。
 もしもクリーパーや吸血鬼とでくわしたなら、対抗するのは難しい――。
「見たところ、うろついているのはゾンビだけのようだな」
 見渡す限り、炎によって燃え、瓦礫となって崩れた廃墟の景色が広がるばかりだ。灰の残り香が漂う中を、ゾンビ達がうめきながら、あてもなく歩き回っている。
「これなら、俺たちだけでもなんとかなるか……?」
 装備や人数は頼りないが、こちらだって訓練されたシルトラース軍人だ。先の決戦をも生き残り、自信だってついている。
 多少のゾンビ群程度、討伐するのにわけはない――。
 ゾンビ達を倒すべく、部隊が一丸となって斬りかかった、その矢先だった。
 ――先頭に立っていた兵が突如、叫びを上げて倒れる。
「ど、どうした!?」
 とっさに後ろにいた同僚が支えると、彼の肩には大人の腕ほどもある極太の針らしき物体が刺さっており、背中側に突き出た先端からは鮮血が滴り落ちていた。
 思考を巡らせる間もなく、周囲の仲間達もまた、どこかから撃ち込まれた針に貫かれ、みるみる負傷者が増えていく。
 これではまともな戦いにならない。やむを得ず、撤退を決断する。
 その中の一人が去り際に振り返り、見た。
 崩れ落ちた瓦礫の中。その隙間の空間に、岩めいた奇怪な存在が浮遊しているのを。

●
「みんな、先だっての決戦ではよくやってくれた。おかげで死者の兵団は大部分が殲滅され、ヴァイセントラフ砦はひとまずの静けさを取り戻している」
 冒険者ギルドに集まる冒険者達へ、受付の男が労をねぎらっていた。
「しかしながら、生き残った敵――ゾンビやクリーパーを始めとする残党は、放置しておけば間違いなく周辺を荒らし、脅威になるだろう」
 そうなる前に、冒険者のみんなにはこれらの追討を頼みたい――受付は言って、状況の詳しい説明を始める。
「今回の目的は、ある廃村にとどまっている、ゾンビとクリーパーの討伐だ」
 偵察に向かった部隊だけでは任務達成が厳しく、またそちらに回す戦力も砦だけでは足りないとして、冒険者に依頼が寄せられたという次第だ。
「ゾンビだけならば物の数じゃないが、問題はクリーパーだ。こいつらはそういう習性なのか、村のあちこちへ隠れ、不意を打って奇襲してくる」
 目の前のゾンビと戦っている間に、あらぬ方向から射撃攻撃を撃ち込まれて部隊は混乱し、撤退する羽目になった――実際に対峙した帝国兵らからは、そのような情報も届いている。
「索敵を厳にし、クリーパーの位置を見破りながら倒したいところだ」
 もちろん、人数という意味で敵戦力の多数を占めるゾンビへの対処もおろそかにしてはいけない。
「とはいえ、今回はなにがしかの時間制限があるわけじゃない。こっちもじっくり、腰を据えてかかるべきだな」
 敵を全滅できたら、ゾンビの遺体を墓へ葬ってやるのもいいだろう。
「彼らも元は帝国の住人達だった。家族や友人らに代わって、その死を悼むくらいはしてもいいさ」
 この村は一切の施設が破壊された壊滅状態ではあるが、墓地だけは直されているらしい。
 通りがかった旅人や商人――あるいは命令の合間を縫って訪れた帝国兵らが、せめて死者に安息を、という心持ちで少しずつ修繕していたという噂だ。
「戦争の後始末を頼むようで悪いが、これもいずれきたる帝国復興の一助になるはずだ。残党を一掃し、村に静かな眠りを返してやってくれ……!」

解説

●勝利条件  ゾンビ及びクリーパーの全滅 ●小型クリーパー×五体  大人が広げた腕に抱えられる程度のサイズの灰色のクリーパー。  ごつごつした六面体の石のような形状で、体力や攻撃力は普通。  地表から高度五十センチ程度を飛行し、動きは直角的で素早いです。  浮いていますがあくまで低空にとどまり、ゲーム的な補正は足音がない程度です。  身体には透明な帯みたいな器官が何枚も等間隔に生え揃い、体内で生成した針をその器官を通して発射し、精密な遠距離攻撃をしてきます。  多くの敵に対しては、一度に複数の帯から針を拡散させて射出します。これは一発ずつ撃つ場合よりも命中率が低下します。  接近戦では、体当たりで攻撃します。  目や鼻、耳はありませんが、第六感的な超感覚で、付近にいる敵のおおまかな位置を把握します。  獲物を狩る際には物陰などに隠れ、隠蔽状態で奇襲攻撃をします。看破された場合、諦めて普通に襲って来ます。 ●ゾンビ×三十体  知性はなく、鈍く、遅い、普通のゾンビ。村中を闊歩しています。  たまにロングアクションで掴みかかり、しばらく移動を阻害する拘束攻撃を行ってきます。 ●場所  大規模な火災で家が焼け、人の住めなくなった廃村。  どの通りも倒壊した家々の残骸や穴、灰であふれ返り、寒々しい景色です。  村の共同墓地だけは、たまに訪れる墓参りの人達が掃除し、清めてあります。 ●状況  このクリーパーはほとんどが、瓦礫と化した家屋などの建物の隙間や死角に潜伏しているため、そうした場所へ見当を付けて攻撃すれば、驚いて出てくる事があります。

マスターより

 霧柄頼道です。よろしくお願いします。  すでに滅んでしまった村ですが、だからといってさらに荒らされるのを座視してはいられません。  敵を撃破し、死軍決戦の締めくくりとしましょう……!

リプレイ

●
 冒険者達はいまだ惨劇の名残が散見される、廃墟となった村へと足を踏み入れていた。
「ったく、あちこちに忘れモンされたんじゃ溜まったもんじゃねえやなぁ?」
 ナハシュはぼやきながらも左右へ目を配り、透視によって周辺の確認をする。
 ゾンビ達の姿はそこら中にあるものの、クリーパーは見当たらない。
 とはいえ村へ入った途端、いきなり四方八方から敵の不意打ち――という事態は避けられるだろう。
 仲間達と足並みを揃えて進み、時折エーテルの波を走らせて警戒を続行する。
「墓地はあまり荒らしたくないからね。例えば広場みたいな……村の外れとかにいい場所ないかな」
 バクル・バスリーは戦闘に適した場所を探しつつ、道中で見かけるゾンビらへ石を投げ込み、注目させて引き付けた。
 じわじわ近づいてくる死者達。間合いを詰めてきた集団めがけ、闘気槌を発動。
「その身体から解放してあげるよ!」
 光塊を纏った斧を叩き込み、あふれ出す衝撃でもって一息に薙ぎ払う。
 ゾンビに見つからないよう進むのは困難だが、こうして少しずつでも倒していけば、後で一気に大量の敵に包囲される心配もなくなるはずだ。
「統率の取れてない残党ほど面倒なものは無いな……」
 レギン・アンドヴァリはしんがりを務めつつ、ゾンビのみならずあたりの瓦礫に注意を払い、クリーパーの奇襲に備えていた。
「ゾンビの群れが相手では、投降もなにも無いから殲滅しかないのも拍車をかけている」
 知性ある相手には通用する戦法が使えない。最後の一体まで確実に潰さなければ、後始末は終わらないのだ。
「――まあ、盗賊化しないだけ人間の軍隊よりマシとも見る事は出来るが……」
 のろのろと追いすがってくるゾンビの端から、エーテルブレードでリーチを延長した斧を見舞って斬り払い、小さく息をつく。
「クリーパーも似たようなものよね。趣味の悪い敵だわ……」
 リノアも眉を少しひそめながら、周囲を見回して索敵する。
 依頼を寄せてきた帝国兵らの報告では、クリーパーはゾンビとの戦闘を行っている最中の相手を狙う風にも捉えられる。
 となれば、もういつ攻撃してきてもおかしくはないはずだ――。
「廃村になったとは言っても、元は人々が暮らしていた場所。クリーパーやゾンビの住処にはさせておけないよ……」
 これ以上の被害も出て欲しくないし、とララベル・サン・ディーベルは沈痛ながらも確かな決意を込める。
「この沢山のゾンビ、倒したらちゃんとお墓に埋葬して、ゆっくり眠らせてあげたいよね……」
 ララベルは瓦礫の隙間をはじめ、角度的に見にくかったり見逃しそうな場所、さらに射線の通る細い道や空隙を中心に視線を走らせる。
 透視も駆使して観察する事しばし。ほどなくララベルは、崩れ落ちた民家の奥で、もぞもぞとうごめく影を発見した。即座に小声で仲間に伝達する。
「あっち、何かいるよ……!」
 相手は岩じみた外見をしているが、それでも生物ならば――とリノアもすぐさまサーマルアイに切り替え、そちらを注視した。
「……いたわ。私達を追って来てる」
 広場へ向かうリノア達を、ゾンビ群に紛れて追跡して来ているのだと思われる。
 それならそれで好都合。このまま気づいている事を悟らせなければ、こちらが先手を打てるはず。
「村の住人は皆、安全な場所へ逃げられたのでしょうか? それだけが気掛かりです」
 セロンガード・シュタインドルフは憂いを帯びた声を漏らしながらも、ゾンビ達が集まり次第に炸光矢を放ち、光の破片を爆ぜさせてまんべんなくダメージを与える。
「少なくとも、もう誰もいないみたいね……」
 アウレーリア・フォン・ネーベルベルクも独り言のように呟く。
 この村に住んでいた人々がどうなったのかは、ようとして知れない。
 生き残りの何人かは難民キャンプなどに身を寄せているという噂もギルドで耳にしたが、それでも多くの犠牲者が出てしまっているだろう。
(知らない村だけど、一人でも多く、どこかで生きていたらと願わずにいられない……)
 ――なんて、身勝手な期待だろうか。唇を噛み、眩暈を抑えた。
「彼らのため、せめて今してあげられる事は、静けさを取り戻す事だけなのですね……」
 重い吐息交じりのセロンガードの言葉に、頷く。
 きっと、いずれ、それでも――帝国にはいつか、復興の気運や時局が訪れるはずだ。
「それじゃ、いっちょ派手におっ始めるか!」
 広場に到着した冒険者達。中心に立ったナハシュがサウンドボマーを併用しながら手を打ち叩き、空間を震わせる拍手音でゾンビ達を一斉に誘き寄せていく。
 次いでアウレーリアがスタティックフィールドを展開し、前方のゾンビ達の動きを押しとどめる。
「ごめんね静かに寝ているところを邪魔しちゃって、少しお掃除するだけだからさ」
 そこへめがけ、閃く爆光によって魔力を増幅させたマーハ・アセトシソンが、かざした掌中に強烈な光の粒子を、一つの眩い塊となるまで収束させ――。
「我が手中に煌めくは鎮魂の焔! エクスープロージョンッ! エクストラ!」
 華奢な手の中より飛び出す輝く巨弾が、群れ寄るゾンビ達の前で炸裂する。
 激しい爆風が標的を思うさま薙ぎ払い、中空で飛散した無数の光の礫が降り注ぐ。鋭い一発一発がゾンビ達へ突き刺さり、まとめて地へ倒れ伏させた。

●
 ゾンビ集団と交戦する冒険者達。数分が経過したものの、クリーパーは今のところ攻撃してくる気配はないが、油断はできない。
「はぁっ……!」
 裂帛の気勢を張り上げ、レギンが衝撃波を放つ。
 立ちはだかるゾンビ達はピンよろしく吹き飛び、物言わぬ屍へと還っていく。
 が、最後尾にいたためかろうじて直撃を免れたゾンビが、倒れ掛かるみたいにレギンへ掴みかかる。
 とっさにガードしたが、敵の膂力は強く、互いに動けぬ膠着状態となってしまう。
 この体勢では今、もしクリーパーに撃ち込まれたら、対応できない――。
 刹那、横合いから飛び出したナハシュがゾンビの腕へ刃を躍らせ、流れるように叩き切った。
「簡単だ、切り落としちまえば掴めねえじゃねえか!」
 ナハシュの機転によって解放されるレギン。
 その直後、遠くの瓦礫の奥よりクリーパーが寸時顔を出し、針を射出しようとする。
「よっしゃ後は任せた――と、撃ってくるぜ、後ろからだ!」
 気配を消しつつ引き続き警戒に努めるナハシュが、攻撃の前兆を警告した。
「了解です。撃たれる前に撃ちましょう」
 セロンガードが応じ、鋭く研ぎ澄ました五感で敵の正確な位置を読み取り。
「そこですね……!」
 つがえた矢を発射する。その一射はクリーパーの隠れ潜む瓦礫の中へ飛び込み、狭い空間の中で光破片を盛大に炸裂させた。
 逃げ場のないクリーパーは、それらをまともに受けて吹き飛ぶ。
「あんな狭い所、良く潜ってるなぁ」
 手傷を負ったクリーパーが慌てて瓦礫の中から逃げ出すのを、付近に隠れていたララベルは感心したような呆れたような声を漏らしつつ、しっかりと追う。
「陰からの一撃は、お前だけじゃない……影の闇に沈め!」
 疾風足で先回りするや、練りに練ったエーテルを宿した剣を振り上げ、大上段から兜割りに叩きつける。
 真っ二つにぶち割れるクリーパー。飛び散る破片を尻目にララベルはその場から離脱し、再び身を隠して次の攻撃の機を窺う。
「! あっちにもクリーパーが出たよ!」
 バクルも対ゾンビ班とは一歩離れて戦場を索敵していたが、瓦礫から移動する最中のクリーパーの姿を認め、声を上げて仲間達へ報告する。
 そのクリーパーは帯のような器官を膨張させ、後衛を狙い凶悪な針を撃ち放った。
 高速で飛来するその一発を、バクルはとっさに割り込んで受け止める。そのまま強引にチャージングで踏み込み、距離を詰めて打ちかかった!
「――さぁ、大人しくぼくと戦ってもらおうか!」
 戦闘の隙間を縫うかのようにクリーパー達が出没し始めているが、そちらばかりに気を取られていては、今度はゾンビの群れに足元をすくわれかねない。
「我が天に集うは弔いの星! メテオライト・エクストラ!」
 だからマーハは目の前の敵に集中する。かざした杖を振り下ろせば、頭上に集まった大量の光弾が五月雨の如く降り注ぎ、ゾンビ達をこれでもかと弾き飛ばして殲滅せしめる。
「……今、向こうで何かが動いたよ!」
 無論、クリーパーへの注意もおろそかにはしない。少しでも索敵の手助けになればと、敵の気配を察知しては積極的に声を張り、位置を伝え合って仲間と協力していく。
「こっち側は私に任せて」
 一方でリノアは、そこかしこから伝達されるクリーパーの位置情報を元に、こまめに立ち回りながらハリケーンウォールを展開していた。
「風よ、我が身を守りたまえ」
 逆巻くエーテルの風を纏えば、クリーパーが撃ち込んでくる針を、ひらりと逸らしてのける。
 敵の位置さえ判明すれば対処はそれほど難しくない上、こうしてリノアが一方向の安全を確保するだけでも、仲間達の戦いは格段に楽になるのだ。
「受けなさい」
 お返しとばかりに差し向けた杖先より、氷の矢を放って穿つ。敵は動きを阻害され、こちらへの攻勢そのものは目に見えて鈍くなり――リノアは余裕を持って応戦を続ける。
 よろめき、うめき、苦しみあえぐように接近するゾンビ達を前に、アウレーリアはそっと杖をかざした。
「あの熱も、揺らめく陽炎も、焦げ付く匂いも……」
 その先端を美しい緑の瞳に重ねて映すや、いまだ己が心象の中に焼き付き、そして離れぬ光景を引きずり出す。
「全てわたしの内にある」
 悪夢を今一度解き放つように、たぎる魔力が炎となってあふれ出し――さまよう哀れな亡骸を、死で満ちたこの村を、なおも追い打つかの如く焼き払う。
 駆け抜ける熱風。ふらつき、倒れ、灰と化しゆく亡者達。アウレーリアはそれらの様から一寸たりとて目を離す事なく、胸中で祈る。
 どうか、せめてこの火が、彼らに清めと安らぎを齎しますように――。

●
 冒険者達の奮闘により、ゾンビは全て撃破された。
 残るは四体のクリーパーだが、その半数以上の居所は、緻密な索敵と緊密な連携により捕捉する事ができている。
「隠れてるつもりだろうが、こっちからしちゃとっくに見えてるんだよなぁ?」
 ナハシュは物陰を利用しながら敵へ忍び寄り――そいつが攻撃しかけた途端を狙い、勢いよく飛び掛かった。
「岩みてえでも中身が生物なら、毒は効くだろ!」
 背後から跳躍して組み付き、足で挟んでクリーパーの抵抗を抑え込みつつ、エーテル光を宿した得物を振りかぶり、垂直に突き刺す。
 鋼の暗針はクリーパーの体表を貫いて深々と食い込み、肉体を蝕むエーテルを注ぎ入れる。速やかに毒が回り、みるみる敵の威圧感が弱っていくのを、肌身で感じられた。
「おっと、反撃は食わねえぜ!」
 クリーパーがこちらを振り払わんと暴れる寸前、ナハシュは敵の身体を蹴って宙返りして着地するや――そのまま大地へ沈むように半身を屈め、体当たりを回避する。
 クリーパーは懲りずにナハシュへ狙い定めていたが、突然その背へ矢が突き立ち、空中でびくりと硬直した。
 死角に立っていたセロンガードが、ナハシュに気を取られていたクリーパーを射抜いて見せたのである。敵は糸の切れたみたいに地面へぼとりと落ち、動かなくなった。
 また別の場所では、ララベルが機動力を活かして敵と渡り合っている。
「喰らえ、疾風……!」
 針を躱しながら素早く懐へ飛び込み、目にも留まらぬスピードで下段からの斬り上げ、袈裟懸けの斬り下ろし、と連続で攻撃をつなげ。
「三連斬!」
 締めに上半身ごとぶつけるような刺突を浴びせてのけぞらせ、その隙に横っ飛びに転がって、崩れた家屋の後ろへ飛び込む。
 クリーパーはララベルを見失い、針を適当に散弾で飛ばすも、まったく当たらない。
「後ろが……がら空きだ!」
 そこを好機と、レギンが斧を振り抜き、不可視の刃を発射する。
 猛烈なパワーを含んだ衝撃刃は、攻撃直後で隙だらけのクリーパーへまっすぐ着弾。
 体躯が揺らぎ、岩じみた体表が音を立てて裂け――そうして一切の力を失ったかと思うと、灰の中へと落下して生命活動を停止する。
 さらに一方では、バクルが別のクリーパーを引き付けつつの、攻防が続いていた。
「もうきみに、隠れて人を襲う機会は訪れないよ! ここで倒すからね!」
 気合一声、真っ向から斧をぶちかます。
 もしもまた隠れられたら、戦況は厳しくなるだろう。だから多少の攻撃はなんのそのと、ガンガン攻め込んでいく。
 そしてここぞとばかりの、一際大振りの猛撃が、真横からクリーンヒットした。
 全身にヒビが入り、その上脳震盪でも起こしたみたいにふらふらする敵へ、リノアは狙いすまし。
「今ね……」
 光の矢を放てば、吸い込まれるようにクリーパーへ命中。衝撃に耐えきれなくなったクリーパーのヒビが放射状に砕けて身体の半分が爆砕し、息の根を止めてのけた。
 残るクリーパーはとにかく動き回ってこちらに的を絞らせまいとしていたが、間髪入れずにマーハが詠唱する。
「動きが早いのは厄介だ、そこ! ――アーケインテンペスト!」
 広場に雄々しく立つアーケイン。稲光がクリーパーの移動を阻み、その場へ縛り付けた。
「人の住処を荒らす悪辣で卑怯なサイコロ、お前達に手加減なんて不要ね」
 目を細めたアウレーリアが低い声音に怒りを込めて、全力の炎弾をぶっ放す。
 ろくに動けぬクリーパーを炎弾が襲ったかと思うと、瞬間凄まじい爆炎が巻き起こり、木っ端微塵に消し飛ばしたのだった――。

 小休止を挟んだバクルら冒険者達は、遺体を村の墓地まで運んだ。
「戦いの後にも労働……、ダンジョンではいつもの事だからね」
 ゾンビとなったのは彼らのせいではない。だったら寒空の中に放置しておくのは寝覚めが悪いし、その死が悼まれてもいいだろう。
「きみ達の来世が、良いものでありますように」
 一人一人を埋葬し、かつて彼らが確かに過ごしていた、幸せだったはずの日常に思いを馳せる。
「なにか特定に繋がりそうな物があればいいんだがな……」
 レギンは身元の証になりそうなものを探す。手掛かりはわずかだが、例えば身に着けている物品などを難民キャンプや砦へ持って行けば、あるいは遺族が見つかるかも知れない。
「これでやっと静かに眠れるかな……花は用意できないけど、弔いの言葉ぐらいは許されるよね」
 墓の前で祈るマーハとララベル。セロンガードは持ち込んできた各種酒を供え、申し訳なさげに土の下へと声をかける。
「本当はカーネーション等も贈りたいのですが、そのような知識がございませんので……」
 けれど全員分というにはいかないものの、アウレーリアが蝋燭と一緒に花を供えてくれた。
 祈るのはもちろん、死者への冥福と――そして己に課した、一つの誓い。
「……いつか必ず、故郷にも戻ります」

マスターコメント

村を練り歩き、騒がせる死者やクリーパーが倒された事で、村には再び安らかな静寂が訪れる事でしょう。 みなさんの連携もお見事でした、お疲れさまです。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2020年12月18日 11時57分03秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ララベル・サン・ディーベル

    僕はシーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、よろしくね!

  2. リノア

    キャスターのリノア。 よろしくね?

  3. マーハ・アセトシソン

    紅蓮の炎キャスターのマーハ・アセトシソンだよ ・・うん、称号で挨拶するの恥ずかしいからやっぱりやめよう(ノノ) ララベルさんはまたあったね、今回も宜しく!

  4. レギン・アンドヴァリ

    ウォーリアのレギン・アンドヴァリだ。 よろしく頼む。

  5. バクル・バスリー

    ウォーリアのバクルだよ。よろしくね。 数だ多いゾンビに、不意打ちが得意なクリーパーか……。 防御を固めた前衛陣が囮になってクリーパー達をおびき出すか、 逆に遠距離攻撃で引きずり出すか、 向こうの作戦に乗らないよう工夫が必要そうだね

  6. アウレーリア・フォン・ネーベルベルク

    ……アウレーリア。キャスターよ、宜しく。 サイコロのくせに随分悪辣ね、さっさと仕留めたいけど。 囮戦術でも撃ち合いでも、まずは隠れ場所の目星が必要ね。足を止めずに素早く探索しましょ。 最初から囲まれるような状況は避けたい、ゾンビは後回しが良さそうね。

  7. セロンガード・シュタインドルフ

    シューターのセロンガードです。 今回はよろしくお願いいたします。

  8. ナハシュ

    シーフのナハシュだ。よろしくな。 囮でもおびき寄せでもどちらでもいいんだが、後者だとおそらく音でゾンビが集まってきやすい気はすんな。撃って出てこなければスパッと移動みたいな感じかね。 囮を立てるってんなら、ガッツリ進んで出てきたところを叩いてすぐ移動、みたいな感じか? どちらにしろ捜波は持って行こうと思うし、戦闘中他の潜伏奴が近づいてくる可能性はあるかもしんねえから警戒はしておきてえかなと。 もしくは共同墓地だけは綺麗だってんなら、サウンドボマーとかでそっちにゾンビ呼んで、ゾンビ→クリーパーの順に殲滅もいいかもしれねえとは思ったが、行くまでにかち合うかぁ‥?どうだろな。

  9. レギン・アンドヴァリ

    基本は動きながら探すって感じか。 怪しい所を攻撃して回るにしろ、見落としはあるだろうから囮もあれば安心か。 と言う事は、前衛ウォーリア組はゾンビを蹴散らしながら村の中を歩き回る感じになるのか?

  10. マーハ・アセトシソン

    アウレーリアさんはこのタイミングで絵がついたのかな?とってもキュートだね。 っと雑談はここまでにして・・ 囮が引き出したらそこに総攻撃って感じなるのかな、まあ、必ずしも1体ずつってわけではないだろうけど・・・ ゾンビに関してはまとまってくれれば魔法でまとめでどーんって いうのもありなんだろうけど、クリーパーのこともあるからなぁ

  11. ナハシュ

    お、絵姿付いたのか。めでてぇな! 確かに囮も両方やった方が備えとしては万全かもしれねえ。 程よくやるなら俺ぁ普通に探索と、乱戦時の警戒重視で行くかね。 捜波の他、透視を持っていたからドンパチ乱戦になる前は多少あたりつけられると思うぜ。

  12. アウレーリア・フォン・ネーベルベルク

    えぇ、ありがと。思ったより早かったわ、絵師様にも感謝ね。 ゾンビを音で誘き寄せるのは悪くないわね。密度が下がれば索敵も楽になるでしょう。 周りにクリーパーを残したまま戦ってはOPの二の舞よ、危険だわ。 一度ゾンビを除けて、クリーパーを掃除してからが良いと思うのだけれど。 村の広場みたいな場所はないのかしら、墓地はあまり荒らしたくないの。

  13. バクル・バスリー

    おお、おめでとう! いいね! 確かに事前にゾンビだけを削れるなら、ベターだね。 でも全部はおそらく難しいだろうから、村の中で戦う時は「ゾンビ引き付け班」と「クリーパー対応班」に分かれれば、ゾンビに足止めされるメンバーを絞れるんじゃないかな。 勿論各個撃破のリスクはあるけど、少なくともひと塊でゾンビに足止めされるよりはいいんじゃないかな。 ナハシュさんの案通り、まずサウンドボマー等でどこかにおびき寄せてゾンビを叩く →「ゾンビ引き付け班」が先行して村の中に残ったゾンビを倒す&「クリーパー対応班」はゾンビに狙われない距離を保ってついていく →クリーパーが現れたら「クリーパー対応班」が対応 って感じ。どうかな。 後、個人的に、アウレーリアさんの言う「墓地をあまり荒らしたくない」のは分かるな。 時間制限もないみたいだし、事前に周りを調べて代わりになる場所を探してもいいかもしれないね。

  14. マーハ・アセトシソン

    引きつける班とクリーパーの対応班で分けるのはありだと 思う、僕はその案に賛成かな 派手に魔法を展開すると確かに墓地への被害も考えられそうだし 戦場は選びたいところだね。返って村内よりのほうがそういう被害は少ないかも?

  15. ララベル・サン・ディーベル

    絵付いたのは、おめでとうね。 >マーハ こちらこそ、今回も宜しくね! >クリーパー 予め位置が特定できていたらだけど、ゾンビとのドンパチで釣られて出てきた所を、逆に物陰に隠れててタナトスバイトで不意打ちしてみたいなと思ったり。 攻撃主体でスキルを積んでいくと、自分ではクリーパーの探索が透視くらいになっちゃうけど。

  16. リノア

    あら、おめでとう。 私もはやく欲しいわね・・・ 対応班を分けるのは賛成。 それでいくなら対応班を希望するわね。

  17. ナハシュ

    バクルの上げた流れで同じく異論はないな。 場所に関しちゃ、墓地がアレなら入口付近とかでおびき寄せるんでもいいんじゃねえの? クリーパーが潜んでいたとしても瓦礫の位置は前面固定にはなる‥‥他広場があんらそっちのが良いかもしれねえが。 分かれる方は俺もクリーパー対応にしとくかね。 先も言ったように探るのはそこそこできるとは思う。

  18. マーハ・アセトシソン

    締め切りも近づいてきたね。遅くても今日の夜までにはまとめないとだ じゃあ、僕は引きつけ班にいくとするよ。範囲魔法はまとまった敵を討つほうが向いてるしね、ゾンビの対応が終わり次第クリーパー対処に加勢する感じになるかな?

  19. セロンガード・シュタインドルフ

    (敬称略) 【ゾンビ引き付け班】 ・マーハ 【クリーパー対応班】 ・リノア ・ナハシュ 纏めました。抜けはなさそう…ですか? 私はどちらにも対応出来そうなのでもう少し保留致します。

  20. アウレーリア・フォン・ネーベルベルク

    場所は探索しながら決めていきましょう。 距離感とか見通しとか、実際に見ないと分からないところもあるわ、きっと。 私も引き付け班に行く。まだ範囲魔法しか使えないの、味方を巻き込んでしまうわ。 スタティックフィールドで足止めして、マーハを援護するのが良さそうね。 初撃の生き残りを片付けてから、対応班と合流します。

  21. アウレーリア・フォン・ネーベルベルク

    (敬称略) 【ゾンビ引き付け班】 ・マーハ ・アウレーリア 【クリーパー対応班】 ・リノア ・ナハシュ

  22. レギン・アンドヴァリ

    それなら私は引き付け班の方だな。 (敬称略) 【ゾンビ引き付け班】 ・マーハ ・アウレーリア ・レギン 【クリーパー対応班】 ・リノア ・ナハシュ

  23. バクル・バスリー

    じゃあ、僕もクリーパー対応に回るね。 現れた所をシーザーロアで引き付けたり、チャージングで近づいたりするよ (敬称略) 【ゾンビ引き付け班】 ・マーハ ・アウレーリア ・レギン 【クリーパー対応班】 ・リノア ・ナハシュ ・バクル

  24. ララベル・サン・ディーベル

    じゃあ僕は、クリーパー対応に回らせて貰うね。 (敬称略) 【ゾンビ引き付け班】 ・マーハ ・アウレーリア ・レギン 【クリーパー対応班】 ・リノア ・ナハシュ ・バクル ・ララベル

  25. セロンガード・シュタインドルフ

    それでは私はゾンビの引き付けに参ります。 (敬称略) 【ゾンビ引き付け班】 ・マーハ ・アウレーリア ・レギン ・セロンガード 【クリーパー対応班】 ・リノア ・ナハシュ ・バクル ・ララベル

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0