【死軍】不落の防壁を目指して
真柄 葉
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シナリオID:243
オープニング
「隊長ー! ガヌ隊長ー!! あれ、ここにも居ないな」
城門の上にある櫓で見張りに立っていた兵士の元に、一人の工兵がやってきた。
「ガヌ隊長なら、来てないぞ?」
「そっか。なんか北を気にしてたからここかと思ったんだけどな。ありがとな!」
「ああ、それならいつもの所じゃないか?」
と、見張りの兵士が踵を返した工兵に声をかける。
「あー、またあそこか。わかった行ってみるよ」
工兵は兵士に礼を言い階段を駆け下りた。
「隊長!」
門から続く堀を渡す橋の上からかけられた声に、工兵隊長ガヌ・マイラフが振り返る。
「うん? おお、お前か。どうした?」
ガヌは酒で焼けた声で橋の上の兵士に答えた。
「またここで作業ですか? 何度やっても一緒だと思うんですけど」
「わかってねぇな。ここの角度を1度変えるだけで、この堀はさらに難攻不落になるんだよ」
と、空堀に向かって声をかけた兵士に、ガヌは答える。そう、ガヌがいるのは堀の底。深さ10mもある、このヴァイセントラフ砦の防衛の要だ。
「この砦は城壁が低いからな。この堀で敵を止めねぇとすぐに落ちちまう」
ガヌは丁度橋のたもと、城壁から続く堀の側壁で作業していた。
「この堀を越えてこられる敵なんているんですかねぇ。王国の軍だってちょっとやそっとじゃ越えられませんぜ?」
「ちょっとやそっとで越えられるようなもん造ってなんになる。まったく越えられねぇもん造ってこその工兵だろうが」
「そんなの考えてるの隊長ぐらいですよぉ……」
橋の上にしゃがみこみ堀の底を見下ろす工兵が、呆れて肩をすくめる。
「まったくお前等は……。そんで? なんか用か?」
「あ、そうだった」
と、ガヌの声に工兵はポンと手を打つ。
「隊長、バルディオン将軍がお呼びですよ?」
「……馬鹿野郎! それを先に言え!」
工兵の声に、はっと目を見開いたガヌは、酒に枯れた声を張り上げた。
●
ヴァイセントラフ砦の指令所。
最奥に腰かけたバルディオン将軍の元へガヌは訪れていた。
「工兵長ガヌ・マイラフ。お呼びによりまかり越しました」
「よく来てくれた。座ってくれ」
短い手で敬礼するガヌに向け、バルディオンは着席を促した。
「今日はどのようなご用件で?」
「うむ、率直に言おう。近々敵の大攻勢がある」
ガヌの着席を待って、バルディオンは話し始める。
「そ、それは誠ですか!?」
バルディオンの口から出た言葉に、ガヌは折角着席した席を蹴倒しそうになった。
「……このような文が届いておる」
と、バルディオンはしわくちゃになった文をガヌに差し出す。
「兵達の元にも同様のものが届けられている。内容は同じだ。読んでくれ」
「拝読いたします」
ガヌはバルディオンから渡された文を開き、ゆっくりと読み進めた。
「死霊どもが……!」
文を読み終えたガヌは、その内容のあまりのばかばかしさに歯噛みする。
「先刻、王国に援軍を申請した。色の良い返事ももらっている」
一方、バルディオンは声色を変える事無く淡々と話しを続けた。
「だが、我々も援軍だけに頼るわけにはいかない」
「はい」
「大攻勢まで、もう僅かな時しかないが、この砦の防備の強化をしてもらいたい」
「それはもちろんやらせていただきますが……死霊どもに対する防備ですか……」
バルディオンの申し出は至極当然のもの。ガヌも自らの職務である砦の防備強化は当然であると思うのだが、相手が死霊となるとすぐに何をすればいいのか思いつかなかった。
「元々この砦は、王国と戦うために作られた砦だ」
「はい」
「人との戦いであれば、百戦をもっても百勝するだろう。しかし、今回の相手はそういう訳にはいかない」
バルディオンはもう察しているであろうガヌに、言葉で明示していく。
「いくらお主が錬磨の工兵であっても、戦の事は素人。それも人ではないものとなるとなおさらだろう」
「お恥ずかしながら」
バルディオンの言葉にガヌは目を伏せた。
「恥じることではない。そもそもそういう風にこの砦は建てられておらぬし、防備も同様だ」
「……」
「工兵隊には知恵者を回す」
「知恵者、ですと?」
突然飛び出したワードに、ガヌは思わず聞き返す。
「対クリーパーの要にして、人類の最前線」
「まさか……」
その代名詞にガヌは息をのむ。
「そうだ――冒険者達だ」
そう言ってバルディオンは、ガヌに一枚の指令書を手渡した。
●
都市ヴィントを発して南下している死者の群れの存在はすぐに知れ渡った。ほとんどがゾンビで、クリーパーも混ざっている。会話ができる何者かもいるらしい。
『この砦をもって、死者の兵団を撃滅する』
ヴァイセントラフ砦の方針は、そのように定まった。相手の足は遅く、たどり着くまでにはまだしばらくの猶予があるだろう。しかし、難民でごった返す今の砦が戦えるようになるのと奴らの到着のどちらが早いか、いまだに予断を許さぬ状況だった。
冒険者ギルドにもすぐに依頼がならびはじめる。敵を探るもの、敵を減らすもの、味方の支援を行うもの。冒険者の対応力の高さを示すような、多種多様な依頼が。
解説
マスターより
リプレイ
「あそこからゾンビがねぇ」
城壁の上に座り、景色を肴にイヴァンが一杯ひっかけていた。
「敵は恐るべき大群と聞きます。この砦はまさに人類の最後の命綱となるでしょう」
「大袈裟――ってわけでもなさそうだもんなぁ」
すぐ隣で彼方をうかがうハリス・アル・ターミルに向け、イヴァンは杯を差し出す。
「いえ、結構です。祝杯は全てが済んでから美味しくいただきたいですね」
「景気付けの一杯も悪くないぜ?」
と、笑ってからまた杯を煽ったイヴァンに、ハリスは肩をすくめる。
「酒はほどほどに。では、私は作業に戻りますが――ああ、そう言えばガヌ隊長が呼んでいましたよ」
「あー、もうそんな時間か。わかった、行ってくる」
そう言い残して城壁を西へと歩いていくイヴァンを見送り、ハリスは砦内へ続く階段を下った。
●
「おーらいおーらい! そうそう、そのままー! そこにおいてくださいーい!」
木材を運ぶ工兵に向け、エルゼリオ・レイノーラはてきぱきと指示を出す。
「あと半分、よろしくおねがいしますー!」
エルゼリオの声に手を上げて答えてくる工兵達に、笑顔を向けて手を振り返した。
「あ、ごめんね。それでね、ここをこうして、こう。どうかな?」
エルゼリオはすぐに視線を戻すと、士官クラスの工兵達との打ち合わせを再開する。
「ふむ、ただこれじゃ重すぎるんじゃないか?」
「うん、だから軽量化を計ろうと思ってるんだ」
「それはいいが、問題は強度だな」
「大丈夫、ここに筋交いさえ入れておけば、こことここの木材は抜けるはずだよ」
「ふむ……」
工兵はもちろんだが、エルゼリオもまた建築の分野に明るかった為、議論は白熱していた。
「それから移動用の車輪もお願いしたいんだ。できれば鉄軸がありがたいんだけど、どうかな?」
「鉄か。鍛冶師に聞いてみるか」
「うん、ありがとう」
時折、意見はぶつかるものの打ち合わせは順調に進んでいた。
●
「ここを使っていいんですか?」
「ああ、好きにしてくれ。元々は避難民が使っていた場所だ」
工兵に案内され、リサ・ベイカーは大きな倉庫を訪れていた。
「ありがとうございます! これだけのスペースがあればっ!」
難民は南へと退避し終え、この場所はすっかり無人になっていた。
「何か手伝えることはあるか?」
「えっと、そうですね。まずは清掃から! 何人か得意な方が居れば手伝ってもらいたいんですけど、いますか?」
「ああ、わかった。連れてくるよ」
そう言って、工兵は兵舎へと戻っていく。
「さってと! やりますかっ!」
工兵を見送ったリサは、ぐっと腕まくり。レンガ造りの元倉庫の中へと足を踏み入れた。
●
「くあぁ……ねむ」
城壁の上で誰憚ることなく大欠伸をかますナハシュ。
「ねぇナハシュさん……そろそろ休みましょうよ……」
「あぁ? まだ10体しかできてねぇよ。全然足りねぇ」
「そ、そうはいってもこれ結構大変で……」
朝から作業してすでに昼を回った。休憩もなく黙々とナハシュ達が作っているもの――それは、敵の首魁ヤコブに似せたデコイだった。
「ゾンビを指揮してるのがヴァンパイアって話だからな。そいつらの目の前でこれをぶち壊してやりゃぁ――」
くくくと悪い笑みを浮かべるナハシュに、工兵達は疲れからかどーんと肩を落とす。
「そ、それで、あと何個作るんですか……?」
「そうだなぁ……50くらいか?」
「「「えっ!?」」」
「いいか? こいつはゾンビどもには効果がねぇ。あいつらただ突っ込んでくるだけだからな。狙いはゾンビどもを操ってるヴァンパイアだ。奴等はアンデッドのくせに頭がよくて、生みの親が大好きらしいからな」
すらすらと作戦の説明をするナハシュ。
「まぁ、壊して怒髪天! ってのはそうなんだけどよ。これを追っかけてでもしてくれりゃ、進軍ルートがある程度、操れるだろ?」
と、問いかけてくるナハシュを、工兵達は意外そうに見つめていた。
「あー、そうだな。何体かは落書きしてやろうぜ」
そんなことも気にせず、ナハシュは次なる悪だくみを思いつく。
「壊すだけじゃ面白くねぇからな。顔にひげとか書いてやれ。化粧させるのも面白いか? いや、いっそ女物のドレスでも着せてやるか?」
「よくそんなにいろいろ思いつきますね……」
「はっは! 育ちがちげぇからな育ちが」
呆れる工兵達に、ナハシュは再び悪い笑みを浮かべた。
●
「出来れば鏃を替えたい所なんですが、難しいですかね」
「そうだなぁ。鋳溶かして鍛造し直すってなるとちょっとな」
城壁の上に設置されたバリスタの元を訪れていたアクティオン。
「なるほど……でしたらやはり」
「何かいいアイデアでもあるのか?」
「ええ、今回の相手はアンデッドです。で、そのアンデッドにはこの矢では効果が薄い」
と、アクティオンはバリスタにセットされていた巨大な矢を指さした。
「すでに死に体であるゾンビなどには、貫通力より打撃力。すなわち、刺さるものよりも叩くものの方が効果が高いともうんです」
「ふむ、先端を改良しろっていう事だな」
「そうですね。理想を言えば先端を馬上槍の様に加工できれば一番なんですが、それほどの時間は取れないでしょう」
と、アクティオンはバリスタの脇に積まれた矢束を見る。
「なので、先端に石などを括り付ける。――それでも時間が足りないのでしたら、鏃を外すだけでも点が面に変わります」
シューターとして、弓の扱いには一日の長があるアクティオンの説明に、射手達もじっと聞き入る。
「残念ながら射程は短くなるでしょうが、対アンデッドの殲滅力は確実に上がると思います」
一息入れたアクティオンは、射手達を見渡す。質問があれば答えると、そう言おうとして――。
「良い案だと思う」
隊長格の男が同意を示した。
「お前達聞いただろう! 早速改良に取り掛かるぞ!」
男はすぐに部下達へ指示を飛ばすと、部下達は早速、矢の改良を始めた。
「同意いただけてうれしいです」
「いや、こちらこそ。良い案を提案してくれて助かるよ」
頭をたれたアクティオンに、男は敬礼をもって答えた。
●
「まさかこんな所で建築の勉強が役に立つなんて思いもよらなかったよ」
作業に汗を流す工兵達に笑顔で手を振りつつ、エルゼリオは砦内を歩く。
『将来の為にも建築の知識は身につけておけ』
そう言われたのはいつの事だったか。なんでこんな勉強をと昔は思いもしたがそれが生きるとは――。
「先輩の言う事は聞いておくもんだね」
頭の中で「生意気言うなよ小僧」とすごまれつつも、エルゼリオは次の作業場へと向かった。
●
「相当な圧が予想されます! 固定は念入りにお願いします!」
城壁の上で工兵達に指示を飛ばすハリス。
「胸壁を利用して丸太を固定してください!」
ハリスが発案した大掛かりな仕掛け、『ゾンビ返し』の設置は着実に進んでいた。
「ハリスさん! やっぱり全面に張り巡らせるのは資材的に厳しいみたいっす!」
「ふむ……であれば、北側を重点的に、次いで東西、南方は余剰資材で設置しましょう。南方は多少、手薄になりますが無いものねだりもできません」
「了解っす!」
そう言って工兵の男は仲間達の元へ駆けていく。
「ハリスさん! 丸太落としの装置なんですけど、そっちに資材を回すと落とす丸太が少なくなるってガヌ隊長が!」
「なるほど。それでは製作済みの装置のみ配備します! 他の箇所は内側の胸壁に丸太をロープで固定するだけで構いません! ロープを切れば丸太が落下する様に設置してください!」
突貫工事であるが故か、一つ問題を解決すれば、またすぐ問題が噴出した。
しかし、ハリスはその一つ一つに的確な指示を出していく。
「ハリスさん! 昇降機の人員が不足してるんですが、どうしましょう! 人数を割きますか?」
「いえ、そちらに人員をとられると時間が足りません。ですので――このような形で改良できないか考えてみてください」
リサとハリスの発案で設置されたロープと滑車を利用した昇降機が、資材をどんどん城壁へと運んでいるのだが、人力ではどうしても限界がある。
そんな問題に対しても、ハリスは井戸を模した釣瓶式のアイデアを紙に書き工兵へと託した。
「決戦まであまり時間がありません! 皆さん、大変ではありますがここが踏ん張りどころです! 我らが手でこの砦の不落を証明しようではありませんか!!」
連日の作業で工兵達の疲労も溜まってきている。ハリスは時折、工兵達を鼓舞するようにそう叫びながら、城壁に立ち続けた。
●
「ふーむ、もうちょっと資材があればよかったが。まぁこんなものだろう」
橋の上から堀の底を見下ろしガヌが呟く。
堀の底では、アクティオンが発案した足取りの罠が設置されていた。
「その……ありがとうございます」
「あ? 礼を言うのはこっちだろう」
「いえ、作業に対してではなく。その……ドワーフはリザードマンをあまりよく思っていないと聞くもので」
この工兵隊長は、リザードマンである自分の案を嫌がるそぶりすら見せず、自ら進んで実行してくれる。本来であれば、忌避すべき種族の言葉など――。
「ははっ、変なこと気にする奴だ!」
そんなアクティオンの考えは、豪快な笑いで吹き飛ばされた。
「そ、そうでしょうか?」
「ああ。ここにいるってこたぁ命を預ける戦友だぞ? そんな細かいこと気にしてる奴なんていねぇさ」
「細かい事、ですか」
アクティオンはガヌの言葉を反芻する。
ロスガリアの歴史に横たわってきた未解決の問題も、ここでは些末事だという。
「さすが歴戦の工兵は言う事が違うな」
と、堀の底で作業をしていたイヴァンが上がってきた。
「ふむ? まぁ、心の底ではないとはいえんがな。そんなもん表に出す奴は素人だ。――なぁ?」
と、ガヌは答える代わりにイヴァンに意味深な視線を送る。
「さあな。素人の俺にはわからねぇよ」
だが、当のイヴァンは何の事やらと肩を竦めた。
「さて、こっちの作業はあらかた終わったが、他の場所に手伝いに出ていいか?」
「ああ、任せる。好きにやってくれ」
イヴァンの問いにガヌが答える。イヴァンはその知識と経験を活かし各所の手伝いをして回っているのだ。
「――なぁ、お前、工兵になる気はないか?」
と、そんなイヴァンにガヌが突然変なことを言い出した。
「また、いきなりだな」
「人を見る目はあると思ってるんだがな」
「はは、悪いな。軍人の給料で賄えるほど、俺は安くないんでな」
「くくっ、言いやがるな」
去り際に手をひらひらと振って、イヴァンは次の現場へと向かった。
●
「簡単な壁で大丈夫です! でもちゃんと視線が遮られるようにお願いしますっ!」
倉庫の中ではリサの指示で工兵達が忙しく動いていた。
リサは身振り手振りでイメージを伝え、工兵達と共に汗を流す。
「リサさーん。飼い葉貰ってきましたよ!」
そんなリサの元に工兵達が荷車に山盛りの麦藁を携え戻ってきた。
「ありがとうございます! それじゃ、仕切りの中にどどーんと放り込んじゃってください!」
冷たい石床に座っては、休憩の効果も上がらない。
「ベッドがあればよかったんだけど……こればっかりは贅沢だよね」
リサはせめて直接床に座らずに済む方法を考えていた。
「リサさん、かまどはどこに作りますか?」
今度は外で作業していた工兵がリサに声をかけてきた。
「かまどは……どこか邪魔にならない場所ありそうですか?」
「えっと。場所ならいくつかあるんですけど――」
と、工兵はリサに一枚の図面を見せる。
「ちょっと案がありまして。こんなのはどうでしょう?」
「……あ、これって。もしかして熱を使うって事ですか?」
「ええ、これから寒くなってきますし」
「すごくいいと思います! そっか、ここの壁はレンガですもんね!」
リサは工兵のアイデアに何度も頷いた。
季節はもうすぐ冬になる。凍える倉庫の中で休憩したとしても気は休まらない。だから、工兵はかまどを倉庫の外壁に設置することで中を温めようと提案したのだ。
「きっとこれなら疲れた兵士の方たちもゆっくり休めると思いますっ!」
「ありがとうございます。では、早速作業にかかりますね」
リサの言葉を受け、工兵が外の作業に戻る。
「少しでも体力と気力を回復してもらえたら、いいな」
作業が進む倉庫内を見渡し、リサが小さく呟いた。
●
日が沈んだ。
作業を終えた工兵達は食事を終え、一日で唯一の自由な時間を過ごしていた。
「いよぉ、呑んでるかー!」
イヴァンが100を超える工兵達一人一人に声をかけていく。
「おいおい、どうしたよ、元気がないぞ、青年!」
「もっと呑め呑め! あっちに行ったら酒なんて飲めないぞー!」
「腹減ってないか? 俺特製の燻製だ。酒にぴったりだぜ!」
連日の作業で工兵達の疲労度は高い。それはイヴァン達冒険者も同じこと。
だが、そんな疲れなど一切見せず、イヴァンは工兵達と共に酒を交わし笑い合う。
「俺達はいわば最後の盾だ。俺達の後ろには沢山の人々が不安で震えてる。だからここで敵を止めなきゃならない」
「でもまぁ、心配ないな。きっと敵さん、度肝抜かれるぜ。なんだこの砦!? 落とせるのかってな」
「その前に本隊がゾンビどもを全部ぶっ殺してくるかもだけどな。ははは!」
底抜けに明るいイヴァンの言葉に、作業で疲れた工兵達は毎夜元気をもらっていた。
一方、冒険者達が囲む焚火では。
「お疲れさま。皆、順調?」
リサが他の皆にジョッキを配っていく。
「できることは大体やったかな。後は野となれ山となれ――って感じ」
注がれた飲み物に口をつけながら、エルゼリオが答える。
「でも、流石本職だね。こっちが1を言えば10くらいの成果を返してくれるよ」
「それは確かに感じますね。統率も取れているし士気も高い。とてもいい隊です」
エルゼリオの言葉に同意するアクティオンが、焼けた魚を手に取った。
「ほんと、エルゼリオさんの言葉じゃないけど、できることはしたよね。少しでも戦う人たちの助けになればいいな」
そう言いながらハリスの横に腰かけたリサ。
「しかし、我々の設備が使われないことが一番ですよ」
「おいおい、そりゃねぇぜ。折角あんなに造ったのによ!」
と、しんみりした空気を吹き飛ばす様にナハシュが声を上げた。
「はは、確かにあれは、なかなかの傑作でしたね」
「ええ、あれは見事でした。きっと敵の首魁も興味津々でしょう」
「あー、ボクも落書きしたかった!」
「お店に出せるかも? その節はどうぞご贔屓に」
「はっは! もっと褒めていいんだぜ?」
「お? 何の話だ?」
そんな賑やかな冒険者達の中に、工兵達の慰安を終えたイヴァンが合流した。
その夜、冒険者達はいつまでも尽きない会話に焚火の前を離れようとしなかった。
そして、いよいよ明日、決戦の火ぶたが切って落とされる――。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人
2020年11月27日 11時46分27秒 公開
相談掲示板
リサです!宜しくお願いします! 個人的には、籠城用の設備を充実させたいなと…
シューターのアクティオンです、よろしく。 死霊相手となればこちらも経験が豊富なわけではないですが……頑張りましょう。
ディズル大湿地帯、ターミル族のハリスと申します。どうぞ宜しく。 クラスはウォーリア。守勢を重視しております。 土木・建築方面に関しては故郷で一通りの経験はあります。 アロシュナバラ村の防衛戦にて、罠や防衛陣の設計も多少は。 資材運搬などの力仕事もお手伝いさせて頂きます。 >依頼内容 戦闘ではなく、工兵の方々と共に防衛設備の充実を狙うというものですね。 有効であろう火計の類は諸事情により困難との事ですから、工夫が要りそうです。 私は防衛用の罠と、城塞外壁の構造について考えようかと。 ただ、個人的には典型的ドワーフ職人であるところのガヌ殿に私やアクティオン殿の ようなリザードマンの提案を円滑に取り入れて頂けるかが少々不安ですね…( (ドワーフは邪竜からの被害が多く竜を信仰するリザードマンを嫌っている。 ドワーフ側からの一方的な感情であるためリザードマン側に悪感情はない) 有事にあっては些事とも言えましょうが、無用な諍いは避けたい所です…。
>依頼内容 単純に防衛力を増すだけでなく、死者たちを相手にする心理的負担も考慮……となると、敵を見ずに攻撃できるような仕掛けが欲しいかもしれませんね。 岩などを使った雑にまとめて攻撃するようなものとか、通れる個所を限定した上でそこを狙えるような固定弓とか。 あとは、圧倒的な物量をどういなすか……頭が回らない相手なら、迷路のような形で「進んでいるつもりだが進めていない」状況を作るというのも手ですか? >ドワーフ職人であること ……まあ反発されるならそれはそれ、反発を織り込んで提案すればいいのでは。 「○○してほしい」という意見がある場合は「○○なんて案は駄目だな」とか、「△△はこういう問題があるのでは」と言いたい時は「△△は良い!」みたいな( 個人的な好悪は抜きに意見はきちんと受け取られる方であればそれが一番なのですけどね。そのあたりは最初の接触で感触を見てみるということで。
〉反発 どうでしょう?本当のプロなら本当に有用な意見は 種族とかそんなこと気にしないと思うんじゃないでしょうか。 少なくとも、聞く耳持たない事は無いんじゃないかなぁ。 万が一、そういう偏見というか偏屈な場合は、わたしがガツン!と言いますよっ!(笑) わたしは、防衛に直接じゃないけど、 仮眠用の部屋とか小屋とか作れたりしないかなぁ…って、ちょっと思ってみたり… 防衛としては、塀にネズミ返し的なものを付けるとか?
ナハシュだ。よろしく。 ヴァンパイアやクリーパーの対応ってぇと何が良いんだろうな! 何かその辺出来ねえかちょっと考えてみるつもりでいる。 >種族的反発 こいつはどちらかってぇと、隊長クラスより戦闘中の一般兵の方で起こる問題じゃねえか? 隊長に話を通す分にはアクティオンやリサが言うようにまだ何とでも使用はあるだろうが、連日心身ともに厳しい籠城戦が続いた場合、普段は出さないようにしている諸々が原因で不和や場内でのもめ事を呼ぶ可能性は十分にあり得ると思うぜ。 休憩エリアをつくんなら、その辺踏まえてドワーフとエルフのエリアを離す、みてえなのでもいいし、不仲同士がかち合わねえエリアってのはあってもいいんじゃねえかな。
イヴァンだ。初めてのやつもそうじゃないやつもよろしくな。 >種族的反発 ゾンビになった方がなかよしこよしできるってのはどういう皮肉かね…… まぁ兵だし、そこまで規律を乱すようなやつがいないと願ってる。 工兵の間だけでも周知させとくか? あ、あと質問一ついいかな。 Q:水はどのような形で手に入るか。水源が近くにあるか、運搬して運び込んでいるか。
ご質問ありがとうございます。お答えしますね。 Q:水はどのような形で手に入るか。水源が近くにあるか、運搬して運び込んでいるか。 A:水源としては砦内のとある場所に水がわいている場所がありそこから引いているようですね。また、砦内の各所には井戸もあり、手軽に水を確保できるようになっています。 ただし、砦ということで敵に毒を盛られたりする危険性があるため、周囲からみて水源はわからないように工夫されてるようですよ。 以上、ご参考になれば幸いです。
>種族的反発 間に入っていただけるならばありがたく。 こういうの、嫌われてる側が「そんな偏見を」云々諭しても、余計に反発されるだけですからね。 そして兵士の間でも気が立っている時は危ういというのは確かにありそうな話。 休憩スペースを分けるとして、分断を生んではいけないので、名目上は反発阻止にせずに「それぞれの種族毎により快適な(休みやすい)スペースを作ればどうか」という形ですかね。 >防衛の仕掛け 鼠返し……死体が積みあがって足場に、という方法の対策としてはいいかもしれませんね。 後は、堀があるんでしたか。火は燃料の用意が難しいようですが……水を張っておき、一気に抜くような仕掛けが用意できれば、敵が貯まってきたところで押し流したり……は難しいですか。水も湧いている場所はあるとしてもどれほどの水量かはわからないし。 あとは防壁前や二重防壁の間に落とし穴で、さらに返し付きの杭でも仕掛けるとか?
顔出しが遅くなってゴメン! ヒーラーのエルゼリオ・レイノーラだよ。 今回はヨロシクね。 >防衛設備 ヴァイセントラフ砦に設置されてる防衛設備が具体的にはどんなのか分からないけど、 階段の類とかは戦時には撤去できる様にしたり、 砦の入口直上に張り出し櫓を設置したり…みたいな事を提案してみるつもり。 >掘に水を流す 砦設計時にその辺の事も考慮されてるとは思うから、不可能ではないと思うけど… ちょっと聞いてみないと分からないかも。 ――という事で質問です! Q:掘に水を流す事は可能でしょうか?
遅くなりました。お答えしますね。 Q:掘に水を流す事は可能でしょうか? A:水を『流しこむ』事は可能だと思いますが、『満たす』ことは水量的に無理だと思います。 直径2kmの砦の外堀ですし、深さ10m、幅20mもありますから……。仮に水を流し込んでも、地面に吸収されてしまうか、よくて多少のぬかるみを作る程度になると思われます。 以上です。ご参考ください!
堀についての情報提供ありがとうございます。 ふむ、水についてはあまり、ですかね。ぬかるみに出来るなら歩行速度は遅くできそうですが…… 堀で侵攻を遅くしている隙に攻撃する遠隔手段を考えてみて、それが出来そうなら時間稼ぎに提案してみましょう。
〉堀に水 うーん、ホリーさんのご回答からすると、飲水やその他生活用水の事を考えると、もともと遅い敵ですし、ちょっともったいないかもしれませんね。 〉塀 こう、ネズミ返しもですけど、積み上がって来たところを、エイッと棒とかで押し倒す事が出来たら時間稼げるかも?
>堀 空堀ならばいっそ、下部に鎖や縄で脚絡みを作り移動を封じるというのも有りかと。 敵はその死骸を以て堀を埋め、塀を乗り越えるつもりのようです。 掘内部で自由な移動ができなくなれば土台の構築に相応の時間を要するかと。 >塀 ゾンビ返しの他、それをスロープ代わりにした「丸太落とし」など如何でしょう? この罠は既にアロシュナバラ村防衛戦にて起案したものです。 あの折はオークやオーガが相手でしたが、ゾンビ相手でも効果は見込めるかと。 前述しましたが敵は死骸を積み上げそれを登る形で塀を乗り越えんと企んでいます。 ゾンビ返しのみでは、初期は効果的でも死骸が重なるにつれ厳しくなりましょう。 敵が自ら作る死骸の坂に沿う形で転げ落とせる丸太ならばいかな場合も役立つかと。 丸太の利点としては他にもあり、石材や金属と比して格段に調達・加工が容易です。 なにしろ適当な木を切るだけで済みますからね。ただ、一応は確認も頂きたく。 Q:砦周辺にそれなりの重量の丸太に加工できそうな木はありますか? また、授恵者/通常の人間が伐採にかかる時間はどの程度でしょうか?
>ホリーさん 解答有り難う! なるなる。水を流し込んでも泥濘にしかならないのか~…。 >丸太落とし ボクは面白いと思うよ! 実戦で効果実証済みなら、尚更心強いし。
ご質問ありがとうございます。お答えしますね! Q:砦周辺にそれなりの重量の丸太に加工できそうな木はありますか? また、授恵者/通常の人間が伐採にかかる時間はどの程度でしょうか? A:残念ながら周りは草原ですので、木材採取ができそうな森や林はありませんね。 ただ、砦での防衛戦を決定した時点で、資材は豊富に用意されていますので、ある程度自由に使っていただいて構いません。もちろん未加工の丸太もたくさん積んでいます。 ただ、無限ではありませんので、使い捨てで使用する場合は、他の設備に使用する量との兼ね合いになるかと思います。 (実際は決戦シナリオで使用されるものを用意するシナリオなので、使用に関しては、決戦シナリオで砦防衛に参加されるPCさんにお任せになってしまいますね。なので、「一定量用意する」だけでも十分かと思います!) 以上です。ご参考になれば幸いです!
>堀 水の貴重さも考えれば、今出ている鎖や縄での脚絡みの方が堅実そうですね。 >ゾンビ返し >落とす 丸太を使った仕掛けも出来そう、ただし使い捨てなら無尽蔵とはいかない、ということですか。 ふむ、返しのところまで到達してきた相手に対しては丸太落としも用意するとして……例えば、壁の一部に棒を突き出すような穴を用意しておけば、内側からそこを通して押し崩すことも出来なくは? とりあえず、自分の方では堀の件と、あと最初の方に言っていた固定弓のようなものを提案しておこうかと。 敵は大量、なら個別に狙いをつけなくとも「その辺りに群れる」ことが分かっていれば大雑把にあてられる武器の準備は出来るかもしれませんし……