モリネコ牧場は換毛期真っ盛り
鳩子
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シナリオID:203
オープニング
「あんたが依頼人か?」
知り合いから、困ってるやつがいるから話を聞いてやってほしいと言われて、冒険者ギルドに所属するヒューマンのウォーリア、ハドリー・オークショットは街の食堂を訪れた。店内はそれなりに賑わっている。夜には酒場になる店だとかでカウンターの奥には酒のボトルがずらりと並び、日の落ちないうちからジョッキを傾ける姿もちらほらと見えた。
指定されていた席に座っていたドワーフの娘は、エッシ・リッポネンと名乗った。
「よろしゅうお願いします、旦那様」
エッシは見た目だけなら二十歳そこらのヒューマンの娘とそう変わりない風貌で、ふくよかな体形に刺繍入りのエプロンドレスがよく似合っている。
かわいらしい依頼者じゃないかと、ハドリーは思った。四人掛けのテーブルがエッシの飲み干した空のジョッキで埋まるまでは。
「ええと、その、ご存じの通り、我々ドワーフというのは国ではもっぱら地下都市で暮らしておりますが、そのア、ワタクシは地上で牧場を営んでおりまして……」
ビールジョッキを片手に話すエッシに、ハドリーは溜息を隠さず吐き出す。ビールをものすごい勢いで飲み干す間に話をするのだが、まったく要領を得ないのだ。
ハドリーは店員を呼び止めて、テーブルの片付けを頼んだ。
「……なあ、あんた。いったん飲むのを止めたらどうだ。酔ったらわかる話もわからなくなるだろ」
「とんっでもない!! アタシから酒を取ったらますますなんにもできねぇ、でくのぼうになっちまいます! ああッ、いけないいけない、冒険者の旦那様にこんなはすっぱな物言いをしちゃあいけね……いけないんでした、それで、ワタクシ……」
「好きな話し方でいいから、早く用件を言ってくれ」
やれやれとハドリーは手を振った。
エッシは落ち着かない様子で三つ編みにした赤毛をいじりながら、よろしいんでしょうか? と上目遣いにハドリーを伺い、頷き返されるとようやくまともに話し始めた。
「ドワーフには石やら金属やらを扱うのがうまい連中が多いのは旦那様もご存じでしょうが、アタシはちょいと違いまして、毛糸を扱うのが好きなんです。それで、地下にゃあこもらず牧場をやっとります」
「はぁん。羊でも飼ってるのか?」
「いえ、ネコです」
「なんだって?」
予想外の返答に、ハドリーは思わず聞き返した。
「モリネコってぇネコです。昔はモリモリモリモリ……いや、ええと、モリ、モリ、モリ、ネコって呼んでたらしいんですが、今では単にモリネコって言ってます」
「ははぁ……その猫から、毛が採れるのか」
「へぇ。ちょっとした水気や汚れなら弾いちまうので、これで毛織物なんかを作るとめっぽう良いものが出来るんですよ。最近は防寒着にも人気です」
エッシは誇らしげに言った。
「アタシの牧場じゃ、このネコを五十匹も飼ってるんです。まあ、勝手にどんどん増えちまっただけなんですが……だだっぴろい牧場の地面に、巣穴を掘って暮らしとります」
「地面に穴を掘って暮らすネコ、なぁ。いまいち想像つかんが、それで?」
「ネコは年に二回、換毛期があります。んで、ちょうど今頃は、夏毛から冬毛に生え変わります。羊と違って刃物で剃る必要はねぇんですが、でっかいクシでちょいと強めにくしけずってやらねぇといけません。アタシ一人だけじゃあ手に負えねぇんで、いつもは馴染みの連中に手伝いを頼んでるんですが……ついこの間、クリーパーとかなんとかいうバケモンに襲われて……」
沈鬱な声になってうつむいたエッシに、ハドリーも表情を改めた。
「そりゃあ、気の毒だったな」
「いえ、まあ、びっくりして逃げる途中すっころんで足の骨を折ったやつがいたくらいで、みんな無事だったんですが」
けろっと顔を上げてエッシは言った。どうも、うつむいたのはテーブル横を通った店員が運ぶビールを見ないようにした結果の仕草であったらしい。追加注文したいのをこらえているのだろう。
調子が狂う。
「ああ、そうかい。それで?」
「そんでまあ、無事ではあったんですが怪我してるのもいるし、壊された塀の建て直しもあるってんで、馴染みの連中はみんな牧場の手伝いにはこれねえってことになっちまいまして……」
「その手伝いをギルドに頼みたいと?」
困っているのはわかったが、猫の毛を集めるのにわざわざ冒険者ギルドを頼るというのがハドリーにはいまひとつ納得いかなかった。多少特別な性質があると言っても、所詮は猫だろう。五十匹もいれば時間はかかるかもしれないが、暇な村の連中を集めればそれで事足りるのではないか。
ハドリーが気乗りしない様子なので、エッシはいたたまれなさそうに肩をちぢこめた。
「冒険者の旦那様方にこんなことぉ、頼むのは良い顔されねぇだろうってわかっちゃあいるんですが、ネコってのはでかくてすばしっこいんで、そこらの人たちにゃあ、ちいと手に余っちまうんです」
「でかい?」
猫なんだろ? とハドリーは首を傾げた。
「いっとうでけえのだと、こんくらい……」
エッシは両手を広げる。小柄な彼女の腕はハドリーより短いといっても、今話題にしているのは猫である。
「……猫なんだよな?」
「モリネコです、旦那様。小さいのならこの半分くらいで……今はまあ、毛がモリモリしちまってるからちょっとのろくなってるけど、普段はすげえ足も速いんで、気を付けねえと突き飛ばされて怪我をします」
「あー……わかった、なるほどな。了解した」
「ほんとですか、旦那様!」
期待にきらきらと目を輝かせるエッシに、ハドリーはうなずいた。有志を募って、集まってきた連中に押し付けよう、と決心する。ハドリーはもっと単純な護衛だとか悪党をけちらすとか、そういう荒事が好きなのだ。
「ああ、わかった。そういうのが得意そうな連中を集めてあんたの牧場に向かわせる。費用はそれなりに掛かるが、大丈夫なんだな?」
「もちろんです! モリネコの毛糸は羊より高く売れるんで、金には困ってねぇんです。仕事終わりのビールもつけます!!」
最後のは自分のためだろうな、とは思ったものの、報酬がきちんと支払えるのなら、問題はなかった。
解説
マスターより
リプレイ
エッシが住む丸太小屋と倉庫の前には、広大な牧場が広がっていた。
「近所の猫を思い出しながら準備してきたんだが……」
ヒューマンのブルーテ・ビシアは、遠目にモリネコを眺めて呟く。ビールに惹かれてやってきた口ではあるが、仕事はちゃんとこなすつもりだ。ただ、想像を超える大きさに不安がよぎった。
「こういう仕事もあるんだね」
動物の頭蓋骨を被った印象的ないでたちのヒューマン、ヨル・スレイマンは、ネコ用のクシをしげしげと眺めた。
お馴染みの依頼は危険に備えた護衛や討伐といったもので、平和的なものもいくらかあるが牧場の手伝いは珍しい。
「ご、ご面倒かけて申し訳ねぇです」
「いや。動物の世話なんてあまりしないから、不思議な感じがすると思っただけだよ」
「そうとも!」
誤解を訂正するヨルの横から、陽気な声が割って入る。
「もふもふな動物を戯れる事が出来る上に、報酬と宴会が約束されているだって……! 最高じゃないか!」
大きな三角帽子のエルフ、ロベリアだ。
「ドワーフだろうが関係ない、キミの事を好きになってしまいそうだよ。いや、好きだ!」
エルフとドワーフはなにかと衝突しがちな種族である。そんな相手にはっきりと好意を明言されて、エッシはぱちぱちと瞬いた。それから、へへっと笑う。
「宴会好きに悪い奴ぁ、いねぇです。よろしく頼みます」
ヨルも頷く。
「美味しいエールのために頑張ろうじゃないか」
小屋の階段に腰を下ろし、ディレイン・オールドケイジは端切れと木の棒を手にしていた。傍らで講師を務めるのはハーフリングのゲルダ・クラインだ。
「丸めた綿を詰めて……で、閉じるときに紐も一緒に留めたらいいんだな」
「はい! こうして……この紐を枝に結びつけたら、完成です」
ネズミを模したおもちゃが出来上がった。綿を詰めた体には、小さな耳としっぽもついている。
「釣りみたいにやってみるか。待ってろよー、うまい酒ー」
ディレインは早くも打ち上げに思いを馳せた。
「休憩や交代も必要だと思うけど……ゲルダさん、よければ私とクシを担当しない?」
ゲルダに声をかけたのは、同じくハーフリングのファルマ・アラーティ。
「このクシ、二人で使うでしょう? 背格好が近い方が、やりやすいと思うのよね」
「確かにそうですね。ではよろしくお願いします、ファルマ様」
長身のヨルとブルーテ、小柄なゲルダでは身長差が63cmもある。ハーフリング同士で組むのは合理的と言えた。
「某は毛の採取を受け持たせていただく」
ネコをあやすのも誘い出すのもうまい手が浮かばない。ゴブリアは、十代半ばの年にそぐわぬ気難し気な顔で言った。
「わたくしはモリネコをあやす係を担当しましょう」
ダルメシアンの特徴を持つハーフビースト、ダルタニアが申し出る。
おおよその班分けをし、一行は牧場の中心部へと向かった。
●ネコを招くあの手この手、其の一
「おーい」
細かい毛を防ぐためにバンダナで口元を覆ったブルーテは、穴の中へ声をかけた。ネコの名を呼べればいいのだが、エッシに聞いたところ白いネコは全部シロ、黒いのは全部クロといった具合であった。
「ここにいるのはクロみたいだな」
紐を結んだ羽ペンを放り投げてみる。ペン先は丸く整形してあるので、モリネコがくわえても怪我をすることはないはずだ。
紐を引っ張れば、羽がぱたぱたと動く。
「出てくるかねえ」
「うーん、こっちを見てはいるみたいなんだが」
もう一方の穴を見張るディレインに応じながら、また紐を動かす。
「ほーい……っと」
ぱしっ――暗がりから伸びた手が羽ペンをはたいた。すかさず強めに跳ね上げる。さらにネコパンチ。じらすようにタイミングをずらして動かしながら、紐をたぐる。
日の当たる場所へ現れた大きな黒ネコの頭に、ブルーテはバンダナの奥で笑みを深くした。
「よしよし」
「うまく釣り上げたな」
警戒心より好奇心が勝ったらしい。くんくんと鼻を動かす様子を見ながら、ブルーテはその頭を撫でた。毛が抜けかけているせいで毛の層が厚く、指が沈む。
「……ふむ。良い感じのふわふわだな」
「毛がり、じゃないや、毛抜き、でもないな……何て呼べばいいんだ、これ。ええと、クシ班、準備良いか?」
穴の見張りが必要なくなったので、ディレインも立ち上がってネコのそばに寄った。
クシを手に、ヨルとゴブリアが応じる。
「うまく出来るかは、やってみないとわからないけどね」
「最善を尽くす所存だ」
モリネコは誘導するブルーテにじゃれ付こうとしたが、ディレインがエサ団子をちらつかせると素直にクシのそばへ座り込んだ。
「おもちゃとエサ、両方用意して正解だったな」
野生ではないとはいえ、相手は言葉の通じぬ動物。ゴブリアはネコを驚かさぬようまずはその体を撫で、慣れた頃にヨルへ目配せした。
毛のもこもことした首元へクシをあてる。
「なかなかコツがいるね」
「想像以上に難しいな」
当然だが、モリネコの背は平坦ではない。力加減が分からず次第にクシが浮いてしまう。かといって、あまり強く押し付けるのもネコが痛がりそうだ。
「尾近くの毛がだいぶ残ってしまったな。スレイマン様、もう一度」
「うん。エッシ君のようにはいかないね」
ひとまず採れた毛はブルーテとディレインで回収し、やり直す。
そのうちにエサを食べ終わったモリネコが、拙い毛づくろいに焦れて身をよじった。
「これ、動くでない」
ゴブリアはとっさに押さえつけようとしたが、それが悪手だった。
シャッ――不機嫌な声を上げたかと思うと、モリネコは巨体に似合わぬしなやかさで包囲網を抜け、巣穴へ駆け戻ってしまった。
「……め、面目ない」
「モリネコは掴まれるのが嫌いなんだね」
がくりと項垂れるゴブリアをよそに、ヨルは一つ発見したとばかりに呟く。
ブルーテはのんびりと笑った。
「気にすることないぞ、ゴブリア。やっていくうちに上達するさ」
「今のネコは機嫌がよくなってからやり直せば良いでしょ。次は俺が誘い出してみるかね」
ネズミのおもちゃを手に、ディレインはあたりを見回した。
ほどなく、四人は二匹目のモリネコを囲んでいた。
ネコの口元ではネズミが綿をのぞかせて死んでいる。巣穴の入り口でチッチッと声を立ててオモチャを動かした次の瞬間には、そうなっていたのだ。
がぶりと野生の名残を見せられたディレインは、すぐさま気を取り直した。
「ネズミは後で作り直すとして……」
ブランケットでネコの体を包み込む。薄暗い巣穴を住まいにするネコは頭部を覆われても気にしないどころか、落ち着いた様子でネズミをがぶがぶと噛んでいる。一応、傍らにエサも置いた。
「これなら逃げにくくなるんじゃないか」
「名案だ、ディレイン様」
今度こそとゴブリアは意気込んだ。
背中部分のブランケットをまくり、二人掛かりでクシをあてる。ネコの動きを押さえつけないようになだらかな凹凸に沿ってクシを動かせば、ずももも、と気持ちいいくらいに毛が抜けた。
クシの角度を調整しながら数度繰り返すと、一抱えするほどの毛が集まった。風に飛ばされそうになった小さな塊もゴブリアが律儀に拾って、麻袋へ残らず詰める。
「毛を梳いてやらないと病気になってしまうってのは、なんだかすごいね。君達、そんなんで生きていけるのかい」
ヨルはいまだ上機嫌でエサを食むネコを撫でる。気持ちよく寝て食べているだけで稼げるとは、ちょっと羨ましい。
「ほんと……もふもふしてる……」
抜けた毛もふかふかであったが、古い毛をきれいさっぱり取り除いたネコの触り心地もまた格別であった。
●ネコを招くあの手この手、其の二
生の鶏肉、ネコのエサ、干し肉。ダルタニアは、エサを巣の奥から手前へ間隔をあけて並べた。モリネコに合わせて用意した巨大猫じゃらしを手に、じっと反応を待つ。
「にゃ、にゃおぅ」
「にゃおぅ?」
「にゃあーお……」
「にゃぁ~お?」
聞こえてくるのは、ネコの鳴き声ではない。反対側の穴のそばで、エッシとロベリアが珍妙な鳴き真似を繰り返しているのだった。
「も、申し訳ねぇ、冒険者様。アタシにゃ、ネコの声はわからねぇです」
「フフ! それは悪いことをしたね。モリネコの誘惑する鳴き声を真似てみようと思ったんだけど……」
「ロベリアさん、こちらからネコが出てきましたよ」
「おや! 先を越されてしまったようだね」
ダルタニアの目の前の穴から、ぬぅっと三毛の頭が現れた。油断なく周囲を見回したのち、干し肉の匂いを嗅ぐ。
「別物って言ってもいいぐらい、普通の猫とはかけ離れていますね」
この前に引き受けた依頼でも猫と触れ合う機会があったが、ずいぶんと趣が違う。サイズ的にはもはや猛獣の域だ。ただ、顔を見れば豹などよりは普通の猫に近い雰囲気だった。ネコの毛を加工するというのも初耳で、興味深い。
ネコは生肉が気に入ったようだ。パクリと食らいつくと、あっという間に飲み込んだ。すかさず鼻先へ猫じゃらしをちらつかせる。
みゃっと甘えた声を出して、ネコが飛びかかった。猫じゃらしを奪われないよう、巧妙に場所をずらしながらダルタニアは後退する。
ネコの体がすっかり外へ抜け出たところで、ゲルダとファルマが穴をふさぐように陣取った。
「本当に大きいわね。私のほうが小さいのじゃないかしら」
「モリネコちゃん、かわいい……。わわっ、いけない、お仕事でした……っ!」
ゲルダは慌ててファルマを手伝い、ブランケットを地面に広げた。
「さあ、どうぞ」
ダルタニアンがブランケットの上へ猫じゃらしを弾ませると、ぼふんとモリネコが乗りあげる。ふかっとした感触が気に入ったのか、ネコは座りこんで頬をすりつけている。
「ご機嫌な声が聞こえるね」
ネコのそばへ寄り、ロベリアは耳を澄ませる。
櫛を構えたゲルダとファルマは、せーの、と息を合わせてクシを動かした。
「モリネコちゃん、どこか痒いところはありませんか?」
ゲルダはネコの様子から気持ちを読み取りながら、クシを動かす速度や角度を調整する。僅かでも引っ掛かりを感じれば一旦クシを止め、無理はしない。
「ふわふわの素敵な毛ね。ふふ、腕まで潜っちゃいそうよ」
ファルマはふわふわ具合を楽しみながら絡まった毛を指でほぐした。
もふもふ、にゃんにゃん、ふわふわ――至福のひとときを堪能しているうちに、三色の毛が大きな山を作った。
「とっても良い子でした。えへへ、いいこいいこ」
ゲルダはご褒美におやつを与えながら、ネコのさっぱりとした頭やあごを撫でる。
「初めてにしてはうまくいったんじゃないかしら」
「うんうん、この調子でどんどんやっていこう! ネコの鳴き声も覚えたことだしね」
そして、とロベリアは意味ありげに間を置く。
「ボクは悪い魔女だからね。あふれ出る魅力で動物すらも魅了してしまうのさ!」
ばっと腕を大きく広げる仕草に、モリネコたちがぴくんと反応する。
「さぁ……おいで、もふもふ!」
みゃーう、と甘い鳴き真似を響かせる。効果はてきめんだった。ロベリアの髪や服装が、ひらひらとしてネコの気を惹くものだったせいもあるかもしれない。
「みゃう゛っ」
「ろ、ロベリア様」
付近の穴から飛び出してきたネコが、ロベリアを押し倒した。さらに傍らからも一匹、二匹と寄ってきたネコがふんふんと鼻先を首元にうずめる。
「大丈夫ですか、ロベリアさん」
ゲルダとダルタニアの心配に、もふもふの間から伸びたロベリアの手がOKサインを返す。
「アハハ! おっきいな! 重いけどもふもふだ~! ボクのことはいい、一思いにやってくれ!」
「この子たちが終わったら交代するから、しばらくそのままで耐えて。ゲルダさん、今のうちに採取しちゃいましょ」
「は、はい!」
ロベリアに懐くネコの背にクシを当てていく。
「それにしても、凄い量取れるものですね」
無作為にいろんな毛色のネコが集まってしまったので、ダルタニアンは混ざらぬように採れた端から袋へ詰めていった。
●疲労困憊の乾杯
紐やぬいぐるみでモリネコを誘い出したり、池で水を飲むネコの背に忍び寄ったり、逃げ出したネコを追いかけたり、逆に向かってくるネコの体当たりを回避したり――なんやかんやと苦労して五十匹すべての毛を集め終わる頃には、日が傾きかけていた。
途中、休憩や昼食を挟んだのだが、みな疲労困憊だった。エッシだけは溌溂とした様子で夕食の準備をする。
夕食の席は屋外に設けられた。ヒト用の味が濃い食事を狙われては困るので、猫たちは巣穴で食事中だ。テーブルの上には約束通り、山盛りのソーセージとハム、それからビールが並んでいる。
未成年の冒険者には、エルダーフラワーのシロップジュースが配られた。
「皆様方、今日はほんとにありがとうごぜぇました! 沢山食べて飲んでください」
エッシが口上を述べ、
「かんぱい!」
全員が声を合わせる。
「フフ……これでもボクはそれなりに呑むのでね。今日はがっつり行かせてもうよ!」
打ち上げを心待ちにしていたのはロベリアだけではない。みるみる空になるジョッキと嵩の減る料理に、ゲルダはジュースを飲みながら瞬いた。
「冒険者様って、たくさん食べるんですね……!」
エッシは早くもビールのおかわりをついでいる。
「ドワーフの方って、お酒が大好きって聞いたことがあります。エッシ様も?」
「大好きです! ビールがなくちゃ何も始まりやしません!」
「ふふ、エッシ君は飲みっぷりが気持ちいいね」
「エッシちゃんと楽しく飲めて、おじさんは嬉しいよ」
酒豪ぶりを大いに見せつけるエッシに、ヨルとディレインもジョッキを掲げる。
「ああ、楽しかった。こういう仕事も悪くない。最後にエールが飲めるなら尚更だ。はーーー! 美味しい⋯⋯」
骨を被ったまま器用に飲み食いするヨルを、ブルーテは感心したように眺めた。
「うん、ビールが美味い。ハムもいける」
「肉が美味しくて、酒も進みますね。酔わないようにしないと……」
ダルタニアは自制しながらもハムをおかわりする。
「はぁ……くたくたでビールが一層美味しく感じちゃう」
中身の減ったジョッキを一旦置き、ファルマは背もたれに身を預けた。
牧場を歩き回るのも大変だし、ブラッシング自体、結構な肉体労働だ。
「……モリネコ、ギルドで取り扱い始まらないかしら?」
重労働だったが、嫌な仕事ではなかった。モリネコの、ふかふかとした感触は忘れがたい。
もう少し牧場を見て回りたいな、とブルーテも呟く。
「なかなかの量が取れたな」
ゴブリアの視線の先には、集めた毛の詰まった袋が山積みになっている。
「どんな糸や布になるのか、楽しみだな」
「うんうん! いずれ、モリネコたちの服を着てみたいものだ」
エッシは、にかりと笑う。
「とびきり良い品にして見せますよ!」
もふもふハンターたちの宴は、空に星が瞬いてもなお続いた。
マスターコメント
ショートシナリオ易しい 報酬:標準8 / 4〜8人
2020年11月18日 16時48分13秒 公開
相談掲示板
ファルマよ、よろしくね。 私の身長的だと、個体によってはモリネコのほうが大きくなっちゃうこともあるみたいだから一人でクシは難しそうだわ。 レンタルのクシも二人だと効率良いみたいだし、出来れば二人でクシの方向で一緒に行動してくれる方が居ると嬉しいわね。 誰かご一緒しない?
ゲルダです。大きな猫ちゃんのブラッシング、頑張ります。 えへへ、よろしくお願いしますね。 はい、解説にあるように、二人組のペアを作るのがいいかなって思いました。 ここでのご指名でも良いですし、マスターさんにお任せでも、楽しそうかなって。 ……二人組を作るという言葉に少し苦手意識はありますが、……ええと、それはそれ、ということで。 あ、でも、三人組になっても、猫ちゃんを宥めたりとか、きっとブラッシング以外にもお仕事はあると思うので、絶対に二人組じゃないと、とかは、あんまり考えなくてもいいかな、とも、思いました。 >ファルマ様 もしよろしければ、ええと、身長も同じぐらい……?なので、ご一緒しませんか? あの、わたしでよければ、ですけれど……
ディレイン・オールドケイジだ。 よろしく。 役割ごとに担当を決めるのか、 それとも班ごとに捕獲から採集までするのか…とか考えてたんだが、前者かね? どうするかな、とりあえず猫を追いかけるか…
>ディレインさん 班ごとのつもりで役割ごとにって分け方もあるのを完全に失念していたわ! 一人だと難しいような感じだったから、二人以上の組で捕獲から採集までと思っていて最初に発言させてもらってたわ。 二人以上、というのはゲルダさんの仰るとおり、クシ以外にもネコをなだめたりとお仕事があると思ったから。 ……だったのだけれど、二人でクシって言ってしまっているからこれも二人組推奨みたいな発言になってしまってるわね、つくづく申し訳ないわ。 役割ごとか班ごとかは、皆さんが来てから改めて決めていければと思うわ。 勝手に方向を決めるつもりはなかったの、最初に思い込みで発言してしまってごめんなさいね。 >ゲルダさん ありがとう、声をかけていただいて嬉しいわ。 役割ごとの場合はクシではないかもだけれど、班ごとでも役割ごとでも複数人で動くと思うしこちらからも是非お願いよ。
…お? あ、いや、責めてるわけじゃないからな? 俺があんまり深く考えずにぽんぽん口に出してるだけさ。 茶でも飲みながら他の奴らを待とうぜ。 …ちなみに俺は、打ち上げで飲めるはずの酒を目当てに参加した。
ああ、大丈夫よ責められたとは思っていないわありがとう、思い込みで動いた自分を恥じてたの。大きなもふもふを触れると思ったら楽しみで焦っちゃった。 そうね、お茶を飲んでゆっくりさせてもらうわ。 ふふ、お酒お好きなのかしら。私も飲む方だから作業後もよろしくね。
はじめまして、わたくし、ダルタニアと申します。 よろしくおねがいします。 それにしても、猫にしては、ものすごく大きいですね。 まるで、豹のようなかんじですね。 咬ん網期ってやつですよね。
某、ゴブリアと申す者。よろしくお頼み申す。 クシを使っての毛の採集を二人組でやるのが効率が良いという話だが、他の部分は何人いても構わないのではなかろうか? 全員が全員、最初から最後までを分担したいかどうかの希望も分かれそうな気がしておりますが。 NPCもいることですし、ある程度自由に動いてもいいのかと感じた次第。
ヨルだよ。宜しくね。 ・巣穴から誘き出す ・採集の間大人しくさせる ・くしを使って毛を採集する ざっくりこれを手分けする形なのかな。 誰もやらない項目があると困るくらいで、基本はやりたいことをやる形で大丈夫そう。 俺も初めての経験なので、くしを使うなら2人1組がいいかも。 そう、お酒も出るも出るんだったね。良い仕事だ。
でっかいもふもふだ!打ち上げパーティーだ!楽しい事しかなさそうな仕事だ! ボクはエルフのロベリア、見ての通り(?)悪い魔女さ。見知った顔も、そうじゃない人もよろしく頼むよ。 班分けは別にあっても良いと思うけど、ボクも既に言われている通り…くしを使うなら2人1組がいいんじゃないか?ってくらいかな。 後は、巣穴の出入り口が2か所必ずあるという事なので、班分けするとしても4人1組(ブラシ2名、巣穴入口待機・誘き出し2名)って感じがいいかなーって考えるよ。 ボクはとりあえず、誘き出し案があるので誘き出しをやってみようかなーと思うよ。 声帯模写で声真似して興味を引いて誘き出そうと考えているね。
なるほどなるほど。 誘き出し担当が、クシ使用中は大人しくさせる担当になるのも確かにありだな。 …光縛呪が頭に浮かんだが、無抵抗とは限らんよなあ。 エサや猫じゃらしくらいしか思い浮かばないから、クシ使うほうになるかねえ。 案をもらえるなら誘き出しでもまったくかまわんが。
どうも。ブルーテ・ビシアだ。よろしく頼む。 どう組み分けるにしても、50匹相手だから効率よくいきたいとこだな。 俺はどの役割でも構わんので、手が足りないとこ担当するつもりでいる。
……なるほど、4人一組と言うのは、確かに、いい案かもしれないです。 毛色ごとに分ける必要があるので、白と黒/茶と三毛、で、二組に別れるのが効率的でしょうか? 引き出し方、は、ええと、ねずみさんを餌にしているみたいなので、棒の先を紐を括って、紐のもう片方に丸いぬいぐるみのようなものをくっつけたおもちゃは、いかがでしょう? ねこじゃらし、の一種ですね。穴の前でぬいぐるみをぴょこぴょこ移動させたら、もりねこちゃんにも興味を持っていただけそうです。 ブラッシング中に大人しくさせるためには、エッシ様に木の実のお団子を用意していただいて、それを食べている間に……と、なるでしょうか。 ……あとは、あごのあたりを撫でたら、ゴロゴロって喉を鳴らしてくれないかな あ、ええと。わたし自身の役割、ですけれど。 ブラッシングもとっても魅力的ですが、他の方の希望によっては別の役割でも大丈夫です。
ふむふむ、ある程度自由に動いても…という意見もあるし。 4人一組で動くのを基本方針としながら詳細には分けない方がいい感じかね? (詳細には決めずに標的の巣穴を襲撃?する際には誘き出し2人、くし担当2人の4人で効率よく動くという方針) 疲労等もあるだろうし…何度か休憩も挟みつつ、適度に交代しながらをイメージしてるんだが、問題ないかな? とりあえず…今希望出てる感じだと ◆役割(敬称略) 「誘き出し・気を惹く担当」 ・ロベリア 「くしで毛の採取担当」 ・ファルマ ・ゲルダ こういう感じかな? 無論、どっちもやりたい!という希望があれば、適宜誰かと交代する感じでやっていこう。 あくまで誰も居ないって言うのを避けるための役割分担という訳だね。 >エッシ君の餌で 大人しくしてもらうにはとってもいい案だと思うよ。 基本案の一つとして使うのでいいんじゃないだろうか。 ボクの方は声真似で誘き出しのフェロモンで誘惑(?)してみようと思うよ。 悪い魔女は動物すらも虜にしてしまうのさ(キリッ) ………獣臭くはないよ。本当さ。
わたくしとしては、餌で釣ったほうがいいんじゃないかと思って誘いだしの方にしますけど、櫛の方でも問題ないですが。
生き物だしなあ… 全部とはいかなくても、適宜その場の判断、になってくるのも仕方ないか。 体力使うだろうし、交代や休憩も必要だろうな。 よし、じゃあ俺は基本、誘き出すほうやるか。 ゲルダのネズミのおもちゃ案は使わせてもらいたい。 あと、追いかける必要が出たときのために、身軽な格好で移動力は確保しとくよ。
ざっくりと4人一組、私も賛成。 基本はクシを希望だけれど、交代やその時の状況で他の作業にも回れるようにしておくわね。 勿論クシの希望者が多かったら基本役回りを他のものにするもの大丈夫よ。 気を惹くのは餌やおもちゃの案に乗っからせてもらうわ。 後はブランケット、クシ中にその上でコロンとしてもらえたらとっても可愛……じゃなくて、ふかふかで落ち着いてくれないかしらと思うので持ち込んでみるわね。
おびき出しや捕獲と言われても正直なところ、身体ひとつで追いかけていくぐらいしか能がないものでな……その、クシを担当させてもらえるならその方がありがたい。 4人一組の案は良いと思う。某も賛成だ。
ロベリア君はまとめありがとう。ざっくり4人1組で良いと思う。 休憩を挟みつつ、というのは盲点だったな。確かにそうだ。 そういうわけならどっちもやってみても良いし、櫛の担当が奇数になってもあんまり問題ない感じな気はするね。 くし中にブランケットも良いアイデアだと思う。押さえつけておくよりそっちの方が双方幸せというものだね。 じゃあ俺は櫛の方に立候補しておこうかな。うんうん、良い仕事をして美味い酒を飲もう。
担当がちょうど半分に分かれそうなんで、俺は誘き出しをメインとしておこう。 ロベリア、ひな形借りるなー。感謝。 ◆役割(敬称略) 「誘き出し・気を惹く担当」 ・ロベリア ・ダルタニア ・ディレイン ・ブルーテ 「くしで毛の採取担当」 ・ファルマ ・ゲルダ ・ゴブリア ・ヨル 各担当から2人ずつ集まって、4人の班を2つ作る。で俺もいいと思う。 ネコの気を惹く……普通のネコだったら、ひらひらしたものにも興味示すか。 購入できるものだと羽根ペンとかうまく使えばいけるか……?
わっ、すみません、時間が空いてしまいました……! はい、細かくは決めるのではなく、ざっくりと四人一組、ですね。 途中の休憩と、交代も、とっても良いと思います……!ふふ、休憩の時、おやつとか食べたら、怒られちゃいますかね? わたしも、くし担当をメインにしながら、交代でもりねこちゃんと遊……じゃなかった。えへへ、もりねこちゃんを誘いだしたり、してみますね。 ねずみのおもちゃも、採用してくださるのとても嬉しいです。羽ペンも、確かにねこちゃんたちが好きそうで、……はい、とっても素敵なアイディアだと思いました。
あっ、すみません、大切なことを伝え忘れてて……!連投、失礼しますね。 ロベリア様、ブルーテ様、役割分担のまとめ、ありがとうございます。 えへへ、偏りなくて、よかったです。当日はどうぞ、よろしくお願いしますね。
丁度良い役割分担みたいになったようで何よりだね! ゲルダ君も、提案色々ありがとう。 ボクもブランケットや使えそうなものを持ち込んでおくかなぁ… 出発は明日の朝(8時)なので、準備(プレイング)は皆気を付けてね。 やあ…ボクもモリネコ達と遊ぶのが楽しみだな~(隠す気なし
よし、提出完了。 みんなでいい毛並みとうまい酒を堪能しようじゃないか。