コボルトの長い牙
馬車猪
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シナリオID:39
オープニング
石が胸に当たって息が詰まる。
石が足に当たって倒れそうになる。
額に当たったときなんて、目を開いているのに火花しか見えなくなった。
「このやろう」
大丈夫。足の感覚はある。
重くて固い柄の感触もてのひらにある。
「死ぃ」
視界が回復する。
草原の中にいるのは小柄な人型。
これまで何度も見たクリーパーとは全く違う、ただの化物だ。
鱗と毛皮を持つ見慣れない生き物なのに、焦っているのが何故だか感じられる。
「ねぇっ!!」
両手に力を込め、腕から足まで全ての力で振り下ろす。
錆が浮いた鉄の塊が、投石紐と石しか持っていないコボルトに当たりかけて、ぎりぎりで外れた。
切っ先が草を砕いて地面に埋まる。
コボルトは安堵し、怒り、嫌らしい笑みを浮かべて半円状に包囲してくる。
至近距離からの石つぶてが、汗臭いマント越しに何度も体を打ち据えた。
「ハッ」
笑う。
地面ごと剣を抜くつもりで力を込める。
湿った土と一緒に剣が跳ね上がり、コボルトの細い腕を砕き、不用意に近づいたもう1匹の腹を割く。
血と糞尿の臭いが押し寄せても、1月は水浴びもしていないので特に何も感じない。
「うっとうしいんだよっ!!」
すっぽ抜けそうになる剣を必死に握りしめ、とにかく力を込めて剣を振り回す。
手応えはなく、遠心力による痛みだけが残る。
「あ?」
敵は逃げ出した。
同族の死体を置き捨てて一直線に後ろへ。
その退却が整然としていることには気付けない。
戦士としての教育も、親から与えられる教養も、スラム育ちの彼は何一つ持っていないからだ。
「逃がすかよ、っと」
駆け出そうとして立ち止まる。
猛烈に嫌な予感がする。剣の柄を握り直して周囲を見渡す。
近くにあるのは死体だけ。
そのはずなのに、嫌な予感はますます強くなる。
「クソッ!」
コボルトの懐を漁って食料を探すこともせず、足早に元来た道を戻る。
草にまぎれて忍び寄っていたコボルトが、遠ざかる背中を冷たい瞳で見つめていた。
●冒険者ギルドにて
「ああ、その依頼かい?」
依頼票の前に立ち止まった冒険者に、ギルドの職員が声をかけた。
「帝国の騒ぎに関係した依頼さ」
場所は王国北部の国境近く。
目的は帝国からの避難民の誘導。
依頼人は王国ではなく都市同盟の有力商人。
何もかもがちぐはぐな依頼だ。
「裏は無いぜ」
難民に助力する依頼だ。
帝国には余裕がなく、王国には積極的に助ける理由がない。
都市同盟は帝国に効率よく恩を売る機会と考えているのかもしれないし、帝国の国力低下を食い止め三国鼎立維持を目指しているのかもしれない。
「難民を見つけたら適当に警護してやれば良い。それで依頼は成功さ」
多少の食料や医薬品は依頼人が準備するし、王国の都市は無理だがしばらく滞在出来そうな場所だって紹介してもらえる。
「不十分と思うなら、元気付けたり入れ知恵してやればいい」
職員は軽い口調だが目は真剣だ。
「お前さん方は武力だけの存在じゃないだろ? 冒険者らしく、好きなことをやればいいのさ」
用意された物資は、質量どちらも予想を上回っていた。
●冒険者の出番
舐めた口をきこうとした男を睨み付ける。
若く未熟とはいえ授恵者による殺気混じりの視線だ。
苛立ちをぶつける意図しか無かった元チンピラは威圧されてしまい、卑屈な笑みを浮かべた。
「メシもねぇ水もねぇ。おまけに」
この場にいるただ1人の授恵者は焦っている。
コボルトがこちらを見ている。
これみよがしに投擲紐を振り回し、彼の他には授恵者どころか兵士もいない一行を威嚇する。
「クソッ」
石が数歩先の地面に落ちる。
動揺が広がり、寸前まで機嫌が良かった赤子がぐずりだす。
敵は複数の班に分かれて行動している。
彼が片方を追えば、もう片方は彼がいない一行を襲い、食料にしてしまうだろう。
(恨むぜジジイ)
柄を握りしめる。
国境を越えるまで守ってくれていた男はもういない。
クリーパーを足止めするために笑って残り、それっきりだ。
「リット……リットちゃん」
スラム時代からのツレが囁く。
ちゃん付けはやめろと言いかけ、ツレが目立たぬよう指差す先に気付く。
冒険者が到着したのだ。
「ありゃぁ、何だ?」
兵士には見えず、愚連隊にも見えない。
リットは冒険者が何かを知らず、しかし何故だか未来が拓けた気がしていた。
解説
マスターより
リプレイ
小柄なコボルトが放つ殺意は並の兵士より濃厚だった。
「さて諸君、事前の計画通りだ。サクっとこなしてサクっと救おうではないか!」
木の柄の槍を堂々と構えて宣言するのはクリエーナ・バーリフェルト。
傲慢とすらいえる態度に大きな脅威を感じたコボルト達が警戒を強める。
(こういうのは言ったもん勝ちよ)
実際はこれが初依頼の新人冒険者である。
ただし、冒険者歴と問題解決能力は比例しない。
左右に分かれて連携するはずだったコボルト投石隊が、長距離攻撃能力を持たないクリエーナへ過剰に意識を向けてしまった。
「はいはい、ウル=アルティスの加護があるようにネ。ぐっどらーっく」
ヨル・スレイマンが戦槌を高々と掲げる。
真正面へ突き進むナハシュの足に光が集まり、その動きを一段上の領域に到達させた。
「っははは!! お前等軍隊かよおい! 頭いいなー、俺らボッコボコだぜ!?」
ナハシュが嘲笑混じりの挑発をする。
剣とプロテクターのみの軽装なので素晴らしく速くそして目立ちにくい。
草むらの近くを進路に選び、低い姿勢で疾走することでコボルトにとって見つけにくい対象になる。
真正面の集団はともかく、もう1つの集団はナハシュに気付いてすらいない。
口元に笑みを浮かべ、冷たい目で刃にエーテルを集める。
投石紐を振り回すコボルトの横を駆け抜ける瞬間、無防備なふくらはぎに剣先を突き刺し、抉り、駆け抜ける。
「だってのにとにかく行ってぶっ飛ばすしかねえってんだから楽しくなってきたじゃねえか。なあ?」
敵集団の後ろに回り込む。
投石隊は前後を同時に警戒するしかなく、注意も散漫になり動きを乱す。
コボルトが振り返りながら放った投石を、ナハシュはかすらせもせず易々と躱していた。
「んじゃ……一狩り行きますか」
エルフを思わせる優美な顔立ちのケン・Z・ブラッドリーが、大剣を構え全身を覆う鎧を着たまま速度を落とさず一直線に近づく。
大きな装備はとにかく目立つ。
何より、これほどの重装備でも問題なく動ける体力にコボルトは脅威を感じる。
3つの石がケンを狙い、うち1つがケンの頭上十数センチを超え、残り2つが胸部と左膝に命中した。
コボルトの顔に得意気な表情が浮かび、すぐに絶望顔に変わる。
ケンの防御も厚さも体の頑丈さも、彼等蛮族の予想をはるかに超えていた。
「囲んでくれると助かるんだがな」
コボルトは投石直後に無様な後退を開始する。
背後のヨルが怖くて体勢が崩れてしまってはいるが、訓練の痕跡らしきものが動きに見える。
ケンは無理な攻撃はしない。
しっかりと追い付いてから、死を運ぶ刃を横に旋回させ腕を砕いて腹を割く。
鮮血が地面の土に混じり、異臭が周囲に漂った。
●罠
「初仕事で蛮族部隊相手か」
クラーク・エアハルトは速度を落とす。
鉄の盾で片方を守り、木製とはいえ人型モンスターを撃ち殺せる威力を秘めた剣で反対側を警戒する。
未だ無傷の投石兵4匹が、草原をかきわけるようにしてこちらへ向かって来る。
それが酷くうるさくて、敵の伏兵を警戒しようにもうまくいかない。
わおん! と元気な声が背後から聞こえる。
ヘレン・ワーグナーの狼が鋭敏な鼻で異常に気づいて警戒を促してくれてはいるのだが、エーテルリンクラインが繋がって居ないので普通の飼い犬もとい飼い狼としての活躍が精一杯だ。
ちらっ、と狼がヘレンを見る。
ご褒美を期待しているのが非常に分かり易く、心は狼というより犬に近いのかもしれなかった。
「俺も出る」
避難民を守っていた少年が戦場へ向かおうとする。
「まぁまぁ、他の皆があいつらやっつけるまで昼寝でもして待ってよっか……」
ヘレンはカバリングと同じ要領で新人授恵者に近づき押し止める。
帝国からここまでの旅路で疲れ果てているようで、あまり力を込めていないのに圧倒出来ていた。
「これもまた、竜、いや、神の与えし試練……」
ガンシャルアが骨の兜の下で緊張の汗を滲ませる。
コボルトの軍勢は草むらという地形を巧みに使い、投石兵以外の戦力を冒険者の目から隠している。
捜索に長けたガンシャルアでも、何かがいることしか分からない。
「リット以下避難民はその場で警戒だ。動くな」
守りのためのエーテルを準備して、自らの囮に敵の反応を誘うために前へ出た。
クラークが反転する。
銀の後ろ髪が本体に追随しきれずクラークの口元を隠す。
急所を貫こうとした石製のナイフを硬木製の刃で受け止めつばぜりあいに持ち込んだ。
「コボルト……有力部族か?」
ナイフごと叩き折ろうとするが躱される。
僅かに上体が崩れたクラークの首筋目がけて逆手持ちナイフの切っ先が迫り、しかし剣での防御がなんとか間に合った。
「貴方達相手に手は抜かない」
切り札を使う。
新人故決して多くはないエネルギーを注ぎ込んで加速し、機敏なコボルトを上回る速度で剣をコンパクトに振る。
コボルト軽戦士はナイフを巧みに使って大剣を防ごうとして、速度は拮抗していても力で上回る一撃を受けきれない。
ナイフが砕け、硬木製大剣によって腹に押し込まれる。
素速さを得るため服すら身につけていない肌では防ぎきれず、腹の皮膚と中身をずたずたに裂かれて絶命した。
「リットとやら、見ているか。これが戦いというものだ」
クリエーナがコボルト相手の混戦を演じながら草むらを見る。
コボルトの数が減った分妨害も減っている。クリエーナはじっくり準備したエーテル波動で茂みの中を調査する。
反応はない。
つまり別の所にいる。
身振りで合図すると、毒でまた1体コボルトの始末を終えたナハシュが楽しそうに笑った。
「ガキを言いくるめる悪党め。今回は付き合ってやるさ」
クリエーナと手分けをして捜波を使う。
一度で直径15メートルを調べてしまえる技だ
広範囲の調査が瞬く間に終わり、息を殺してじりじりと迫っていたものを発見した。
声に出してコボルトに知らせるような素人はいない。
敵の伏兵の位置と、敵の伏兵が他には存在しないことを避難民を守る冒険者へ身振りで伝えた。
(こちとら万年ヒッキー鍛冶師なんだけどな)
黙っていれば竜を思わせる顔立ちと優れた体格を兼ね備えたサイラスが、斧と盾と甲冑という超重装備であるのに爆発的に加速する。
「スゲェ」
サイラスのヒールで重傷から軽傷に変わったリットが、憧れの視線を大きな背中に向ける。
(こいつは拙いね。奇襲されると鎧も完全には効果がない)
敵の場所を教えられてもよく分からない。
コボルト軽戦士はサイラスの目から逃れるほどの使い手であり、地形を活かす術を心得た戦巧者だ。
(けど)
「一匹残らず首を狩らせてもらうぜ」
投石兵1集団の始末を終えたケンが駆け出す。
コボルトの戦力の底は見えた。
伏兵のいない場所を全力で駆け抜けて、速度を落とさず剣を構えたまま、もう1つの投石集団へ突っ込む。
投石戦術の要は距離の維持だ。
仲間を助けに向かおうとしていたコボルト達はケンの速度を読み違え、剣の間合に飛び込む形になる。
刃が胸を貫通する音は、以外と軽く、何故か切なく響いた。
「受け取れ」
サイラスの斬撃。
十分な速度を得た斧は破滅的な威力を持つ。
柔らかな草が散る。
地面に伏せていた精鋭コボルトが身をよじっても避けきれない。
皮膚も肉も骨も断ち割り、内臓の断片ごと斧が地面にめり込んだ。
「クソ、勝ってるのか?」
目まぐるしく変化する戦場を、知識も経験も薄いリットは理解出来ない。
ガンシャルアはエーテルを防御に集中することで、飛来した石を自らの胸で受け止める。
ウォーリアとは違って軽装のガンシャルアに投石が効いていないのに気付いて、まだ3体残っているコボルト投石兵は混乱し、怯えた。
「俺も前も出る!」
「無用」
ガンシャルアの言葉がリットの心を斬り捨てる。
悪意が全くないのが分かるからこそ精神的ダメージが大きい。
歳の割には小柄なリットよりも小さなガンシャルアが、投石兵に殴りかかる。
「お前は見て学ぶべき」
戦いの天秤は冒険者の側に傾いた。敵の逃亡阻止を考えねばならない状況だ。
エーテルで強化した戦槌にさらなるエーテルを込めて振り下ろす。
ガンシャルアの巧みな技はただの投石兵では回避出来ず、コボルトの体では強化に強化を重ねた戦槌に耐えられない。
中身ごと体が潰れる音は、避難民の老若男女を怯えさせた。
「Ahhhhhhh!! 隠れてないで出て来やがれ! 俺は! ここだ!!!」
最初は支援に徹していたとは思えない威圧感を振りまいて、ヨルは戦槌を片手に残存コボルトを牽制する。
敵は残り4体。
今、ケンが盾で拳を逸らして剣で突き刺し3体になった。
「傷が?」
まだ残っていた傷がいつの間にか消えていることに気付いてリットが戸惑う。
ヨルを中心に直径15メートルに渡り広がるオーラは非常に強力で、味方だけを癒してコボルトに慈悲を与えない。
「ぼんやりしている暇はないわよ。負けそうになって諦める奴なんて滅多にいない。あのコボルト、どう動くと思う?」
ヘレンが警戒を促す。
ナイフしか持っていない、しかし鍛えに鍛えた体を持つコボルトは諦めてなどいない。
「どうって……まさか」
リットは遅く、コボルト軽戦士は速く、しかしヘレンはそれ以上に速い。
抵抗する術を持たない幼子に向かう軽戦士の進路へヘレンが割り込み、鉄の盾で受け止める。
人質を捕らえるつもりで伸ばされた手が、鉄盾で突き指して跳ね返された。
「ヘレン!」
ガンシャルアが反転する。
まだエネルギーが残っている戦槌にさらなるエネルギーを与えて背後から急襲する。
軽戦士は横に跳んで避けはした。
だがそこは、避難民を狙うにも撤退するにも適していない場所だ。
「集中が途切れたね?」
ヨルの声からは興奮が消え、しかし瞳から感じられる戦意はリットが緊張し生唾を飲み込むほどだ。
「抵抗してもいいよ。苦しむ時間が長くなるだけどね」
挑発は続けても油断は皆無だ。
通常時でも巧みな戦技がじっくり狙うことで鋭さを増し、その上にエーテルブローによる強化が加わる。
コボルトが吼える。
冒険者に半ば包囲されている。目の前のヨルを倒すか、せめて怯ませないと逃げ出すことも出来ないと判断する。
鋭く研がれたナイフが、大柄なヨルの胸当てに傷をつけた。
「これを真似しては駄目だよリット君」
なかなかに痛いがヨルの予想の範囲内だ。
攻撃直後のコボルトの頭上から、新人授恵者とは到底思えない速度と精度で得物を振り下ろす。
コボルトがナイフを犠牲にして受ける。
砕けた破片がコボルトだけでなくヨルも傷つけ、しかしヨルだけは動きの精度が増していく。
「自棄の一撃と勝利のための攻撃は違う」
逃げるつもりなら、ヨルに背後から攻撃されることを覚悟して退路をこじ開けるべきだったのだ。
ヨルは慈悲も悪意もなく、護衛対象の安全と冒険者の生存という勝利条件を満たすため最善の行動をとる。
コボルトの腕が砕け、足が萎え、胴に戦槌がめり込む。
少年は、頬を上気させ決着の瞬間に魅入っていた。
●キャンプへ
避難民は、誰も、何も言えなかった。
全滅も覚悟していた状況があまりにも鮮やかに変わり、生き延びたことは分かっているのに心がついていかない。
「うむ……ごくろうごくろう」
ヘレンはしゃがみ込んで狼を褒めている。
狼は澄まし顔だが、尻尾を得意気に上げて高速で振っている。控えめに表現しても大興奮だ。
「改めて挨拶しよう。俺はクラーク・エアハルト。俺も含めて全員冒険者だ」
「ぼうけん? なんだそりゃ」
恩人に対する口のきき方では無い。
しかしこれでもリットにしては最大限丁寧な言葉だ。
「詳しいことは安全な場所まで移動してからでいい。そうだろう?」
預かってきた地図を見せても、リットは理解するための教養を持っていなかった。
クラークはリットを馬鹿にせず、平易な言葉と身振りでなんとか理解させる。
「君が皆を守っていただろ? よく頑張った」
「あんたらと比べたらたいしたことはできてねぇさ」
照れくさそうに鼻をこすっていた。
「俺たちが来たからにはもう大丈夫だ。俺も同郷のよしみとして出来る範囲で手を貸そう」
クリエーナの言葉に嘘はないが下心もたっぷりだ。
野望を実現するためにはコネも必要だし土台も必要だ。
必要なものを手に入れる努力を怠るつもりはない。
「すっげーなあんた」
クリエーナのうまれと今の力を無意識に感じ取り、リットは憧れの先輩に向けるような目でクリエーナを見ている。
「知っているか? 帝国より南でもこのあたりだと冬は厳しい。越冬のための準備は大変だぞ?」
クリエーナは基本的な知識を高く売りつける。
受け取るのは金銭ではなく尊敬だ。リット達が避難民より上の存在になれたなら、大きなものと引き替えに出来るかもしれない。
「よくやるなー」
ナハシュの言葉に皮肉の色はない。
避難民も得をする取引ではあるのだ。クリエーナの器用さと貪欲さを評価しつつ、ナハシュは自分の出来ることをする。
「ナイフ1本に、投石紐は……駄目だな。他に使えるのは……」
不潔なぼろきれ数枚に、砂粒サイズの岩塩がいくつか。
金銭に換算すれば今回の報酬0.1人分にもならない。だが避難民にとっては貴重な物資だ。
「助かる」
譲られたリットは、地面につく寸前まで頭を下げていた。
「これからどうすればよいか、か」
質問されたサイラスは重々しくうなずく。
(依頼人はこの子達を僻地に誘導するつもりらしい。近くに村すらない土地で……理屈は分かるが惨いね)
「腹ごしらえだ。腹が減っていては目的地に向かうことも出来ないし」
最後に言葉使いが崩れたがリットは気付けない。
敬語の存在も知らず、何よりサイラス達が運んで来た保存食と新鮮な水が魅力的過ぎた。
「本当に助かった」
リットが改めて頭を下げる。
冒険者の助けがなければ、リットは仲間が食われる様を見せ付けられた上で殺されていた。
コボルトが何かを知らなくても、スラムという生存競争の場で生きてきたリットにはどれほどの窮地にあったかを本能的に理解出来ていた。
狼が心配そうに彼を見上げている。
この避難民一行にはリットが唯一のまともな戦力だ。
リットにかかる負担は非常に大きい。
「デカくて格好いいよなぁ」
少年は狼に手を伸ばしかけ、汚れて異臭を放つ自身に気付いて手を下ろす。
「あと少し歩けば……」
難民キャンプ予定地には何もない。
支援が続く保証も皆無だ。
「俺もいつかあんたらみたいに強くなってやる」
「リットちゃんそれってたいげんそーごってやつだよー」
それでも、命を諦める人間は誰一人いない。
冒険者が示した希望は、避難民一行の心に刻みつけられていた。
帝国難民キャンプが始まる、数日前の出来事であった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2020年10月16日 13時22分33秒 公開
相談掲示板
……ガンシャルア。ヒーラーだが、どちらかといえば近接戦闘や陽動が得意だ。 一応火力バフは用意できる。よろしく頼む。
ヘレンだよー、よろしく。クラスはウォーリアで白兵戦とカバーリングができるよ。 避難民を護衛しながら、コボルト投石兵(隠避低)の第一波(4体)と第二波(4体)に、草地に潜んでるコボルト兵(3体)を倒せばいいんだね……。 こっちは8人だし、遠距離から攻撃してくる敵を積極的に倒しに行く人と、潜んでいる敵に対しては守りを固める人と分かれるのがいいんじゃないかなー……って思ったけど、どーかなー……。
クリエーナ・バーリフェルトだ。シーフだが……スカウトの様な探索能力は無い、回避型前衛と思ってくれ。 今回、後衛はヒーラーの二人しかいないし積極的に打って出る必要があるだろう。 ヘレンの意見に賛成で、ヒーラーを分けて二部隊編成で行くのが良いと思う。 しかし、敵の配置を含めて、まっとうに戦術を練って行動してる様だな……コボルトがどれほど賢いかは知らんが、投石兵は追いかければ素直に伏兵のいる方向へ逃げるかもしれんな。
よぉう、シーフのナハシュだ。 白兵戦がメインで、必要なら捜波による探索も出来る。ま、今回はよろしく頼まぁ。 基本方針は同じく2班に分かれる形でいいと思うぜ。 ただ解説文からして、俺らと難民の初期位置~伏兵の居る草原までの距離は直線距離で7~11hxある。 そんでもって俺達は見事に前衛ぞろい。投石連中を仕留めるには近づいてぶん殴るしかなく、伏兵はドンパチやってる後ろから寝首を掻くのが趣味なんだろ?良い趣味してるよな。 となると、難民を草原外に留めつつこいつらの護衛と、草原での迎撃に分かれた方が護るとかもいいんじゃねえかな。クリエーナのいうように投石連中が伏兵の居る方に逃げた場合、尚更奴等は迎撃に来た方を狙うことになるだろうしよ。
あー、書き直すと削除されましたが残るんだな。急ぎで誤字が多くてよ。すまねえすまねえ。
ヒーラーのヨルだよ。 白兵戦メインで、あまり広くはないが範囲回復ができる。どうぞ宜しく。 難民と俺たちの初期位置から草地の距離、ちょっとややこしいけど「敵が潜伏する草地まで20hx」じゃないかね。直線距離の算出が間違ってたらごめん。 草地地形の東西は60hxと広いから、この説明だとコボルトの1軍と2軍はお互いにかなり距離を取ってることになる。 見つけやすい投石兵を殴りに行ったところ、後ろから軽戦士が草地内で挟撃をしてくるのが戦法なのかなあ。 となるとやっぱり「投石兵を出来る限り早く倒す」のと「隠れた軽戦士に備える(できたら発見する)」の二組に分かれるのが良いかなと思ったかな。俺たちを無視して避難民の方に走られても困るから、護衛もしくはそれに備えておく人がいると安心なのも違いない。 何かあったら知らせるようにリット君に言っておくとかも大事かも。
No.9
ファイターのサイラスだよっと まあファイターらしいスキルはあまりないんだが 行動は2班に分かれるに賛成で。他の手段とか特に思いつかんし 後行動に関しては俺の班分けは備える側希望したいなと。申し訳ないんだが俺ダメージ与える系のスキル無いから早く倒すのには向かないんだよな。
ウォーリアーのクラーク・エアハルトと申します。 皆さん、よろしくお願いします。 白兵戦主体で、フェイントとか使えます。 二班編成で異論はありません。耐久はそれなりにあるつもりなので、前衛として切り込もうかと。
……言い忘れたが、一応俺には汎用の<看破>がある。 二手に分けるなら、ナハシュのいない方にでも分けてくれれば、多少は軽戦士への警戒も出来るかもしれん。
攻撃と護衛の二班って感じの流れかな……。それで、ナハシュ君の言う避難民はあまり伏兵に狙われないよう草原外に留めつつも、いいと思う。敵の処理とか時間掛かりそうだし。そのくらい慎重な方がいい。付け加えるなら、叢とか潜伏できそうなとこを剣なり斧なりで伐採しとくといいかもね。攻撃班が見逃した伏兵が万が一いると困るし。 私自身はカバリングと戦士の一断の両方を持ってるから、どっちもできるけど、どっちかにするとスキルが一つ腐りそう。ちょっと迷ったけど、伏兵にも一撃入れられそうな護衛班にしとくよー。 あ、便宜上班名と宣言ごとに分けとくけど、なんかわかりにくいとか文字数が多いとかあったら、言って……。 ■攻撃班 クラーク ■護衛班 サイラス ヘレン
攻撃班は移動が多そうだし、移動系スキル持ちだから俺は攻撃班を希望しておこうかな。 あと捜波も取ってきたので前を調べながら前進できるぞい。 班名称は分かりやすくていいんじゃないかな? 配置は……あれだな、草むらまでは20ヘクスだな。 〇←初期位置 ¦←20ヘクス 〇←草むら最北端 ¦←北南合計13ヘクス ◇―+―◇←西東合計60ヘクス ¦ 〇←草むら最南端 ◇=投石兵 大体コンナイメージなんだが……確か投石兵の距離すげぇな? こりゃぁ、東側を殴りに行っている間に西と伏兵が仕掛けるって形になりそうではあるな。 なんというか、前衛しかいないから伏兵を警戒しすぎて足が遅いと投石兵にやられるしだけだしで……伏兵とか無視してとにかく速攻で突っ込んで仕掛けるのが一番マシになりそうだよな。 力こそパワー。
20ヘクスか!ありがとな、あんま文章問題?得意じゃねえんだ。見てのとおり無学でよお。 要は伏兵の居る草原と俺らの間にゃ距離があり、投石兵の位置もそれぞれかなり距離があるってことを言いたかったから、まあそんな感じだぜ!図も分かり易くて助かるわ。 そうなんだよなー、距離がすげえから、片方の投石兵をぶっ潰してる間どうしてももう片方がフリーになる‥‥んだが、確かあれだろ?西側のやつら元々少し遠くて油断してんだろ? 西側が俺らや難民を射程内に収めるまでに東側をおとせりゃだいぶ楽じゃねえの?逆でもいいけど。力こそパワー、分かり易くて好きだぜ。 難民を東側に寄せれりゃもうちょい時間稼げるかもしれねえが、そこは解かんねえな! っと、俺も今んとこ一応攻撃班で、合わせて捜波なんかで伏兵の探索もやる感じで考えてる。 護衛‥は西側が動いたらそっちも対応するだろうから、一人いた方が良いならそっちでもいい。 可能なら言ってる通り草も刈っちまいてえな!
なら、俺は護衛班にいく。 草の外なら奇襲はないと思うが、念を入れて、だ。 攻撃班で活かせる移動力、というわけでもないしな。
クリエーナ君はわかりやすい配置図を感謝する。俺もあんまり得意じゃないから聞いておいてよかった。 東側に速攻をかけるので良いと思うな。 それに合わせて難民自体を動かして貰うのもありだと思う。 護衛班が戦闘向けに備えるなら、リット君を頭数に入れても良いはずだ。 じゃあ俺は攻撃班かな。移動力、足は早くないけど⋯⋯(んー、と考えるように首を回し) 今回場所自体は開けているしね。大丈夫じゃないかな。 基本は東側投石兵から殴るような形で行動をする。 ■攻撃班 クラーク クリエーナ ナハシュ ヨル ■護衛班 サイラス ヘレン ガンシャルア
遅くなってすまん。 ウォーリアーのケンだ 作戦はいま出てるのでいいと思うよ 移動スキルを取れるので俺は攻撃班希望かな ■攻撃班 クラーク クリエーナ ナハシュ ヨル ケン ■護衛班 サイラス ヘレン ガンシャルア
動きとしては、投石兵の排除後、他に敵がいる様なら掃討という動きでよいですかね? 移動はそこまででもないですが、耐久はそこそこあるので耐えれればよいのですが。
後……攻撃班が投石兵を排除した後の護衛班への連絡ってどーする? 護衛班は攻撃班が間に合わず、西側の投石兵が動く場合は射程外への退避もプレに入れておくといいかもね……。
あ……追記……私狼持ってるから、こいつの遠吠えを救難信号代わりに使おうかなーって考えてる。西側のコボルト兵が追い付いてきた際には連絡するね。 他にもっといい案あったら、教えて。
……それは「西側のコボルトが避難民を攻撃するために動いたら」という事か? 救難信号を出すのも、避難民を退避させるのも構わんが、護衛班全員で下がったらさらにコボルトは進むだろうから、どこまで下がる事になるかわからんな。 俺はその場で踏みとどまろう。
んー……そうだね。西側のコボルト兵が避難民目指して進軍して射程内にとらえたら、避難民を全員カバーするのは難しいし、コボルト兵に向かっていって伏兵に避難民を狙われるのはまずいかなーって。 避難誘導だけならあんまり数はいらないかもだし、私はそうした方がいいかなって考えたからプレに盛り込んでおいたよ。どうするかの判断は皆に任せるね……。
正直ゴリ押すには手がたりんよなぁ。 アーチャーやキャスターがいればもうちょっとやりようがあるんだが……。 思い付きというか、面倒な手ではあるんだが、俺こと『クリエーナ、ナハシュ、ケン』の3名が東投石部隊に全速力で突っ込み、接敵した時点で『クラーク、ヨル』は護衛班に合流に戻るという手がある。 というのも、伏兵さえなければ投石部隊は3人も居れば蹴散らせるとおもうのだ。 そうすれば迫ってくる西投石部隊に兵が割けるだろう?理想としては西投石部隊が接敵する前に東を片づけて戻る事なんだがな。
確かに・・・後衛クラスがいたら違うやり方もできるが現状じゃ、クリエーナがいうようにある程度被弾覚悟で突っ込んで早めに投石兵をつぶすのがいいと思うな 一応投石対策で盾買っておくかな あと面倒なのは軽戦士か どこにいるかわからんからどのタイミングで戦闘になるかわからないのが厄介だな 最悪、奴らと出くわしたら一人残って足止めも考えるべきか? 護衛側から草の動きとかで奴らのことが分かればいいんだがな わかれば笛なり声なりでこちらに警告してくれれば対応しやすくなるんだが・・・・・
護衛班からの索敵なんだけど…、ペットを使えば、索敵と護衛の両方ができるかなーて。 私は狼に索敵させるつもり。視覚、聴覚は共有できるらしいから。
おっと、東投石部隊を倒したときの合図については忘れていたが……何か大きな音を出せる道具はないし、大声と共にそっちに向かって槍でもなげるか……? 西部隊への対処としては、流石に急に後ろに伏兵が回り込む……なんてことはないだろうから、西投石部隊が近づいてきたら避難民は東よりに後退させれば問題ないと思うぞ。最悪リットとやらだけでも下げる事は出来るだろう。 護衛班は留まって足止め、深追いはせず、東側が片付くまで耐え忍ぶ……のが安全策。 遠距離より一方的に殴られるゆえ、そこまで来たら打って出ても良いかもしれんがな。 ペットを使っての索敵はアリだとおもうぞ。しかし、感覚共有はエーテルリンクが必要ではなかったかな? 伏兵の対処は出た所勝負しかなかろう、潜伏一の予測は出来ても確定では無い故に戦力を無駄に分散させるわけにもいくまい。 上手く探査に引っかかれば儲けもの、練度が高いとの事ゆえ一人で足止めするよりはその場にいる総出で片づけた方がいいだろう。
「千里の道も、一歩から」という。 これもまた、竜、いや、神の与えし試練……。 今回の俺は護衛班だ。 流民たちとともに進み、草原の入る手前のところで待機。東の投石部隊は攻撃班に任せ、警戒だ。 攻撃班で最も足が速い奴に輝刃を一度だけかけとこう。 俺には看破スキルがある。コボルト軽戦士が隠れてこちらの隙を伺ってるとかなら気付けるはず。 とはいえ、見つけたからってこっちから仕掛けるわけにはいかない。 仲間に伝えつつ、気づいていないふりをして向こうが様子を見る分の時間はしっかり稼ぐ。 攻撃班が戻ってくるのが間に合えばいい、あくまで応戦は仕掛けてきてからだ。 攻撃班が戻ってくるより前に、敵の投石隊がこっちに来てるようなら…… さすがにそのままでは流民を護り切れんか。 流民たちには下がってもらいつつ、俺はその場で待ち受けるとしよう。 俺に遠巻きに石を投げてくるだけなら、奴らも流民は追えまい。 流民を追って接近してくるようなら、俺の拳の射程内、というわけだ。 攻撃班と合流後は打って出る。 戦闘: ・投石だけが来ている時: 投石に対してのみ<輝甲>。効いてないところをアピールし「投石は無駄」と思わせ、やる気を削ぐ。 余計な奇襲を受けるのを避けるため、基本その場に留まり受け続ける。 ・ベース 基本的には<輝刃>を自分にかけ、効果があるうちは<エーテルブロー>で攻撃 体力の少ない味方がいればサブアクションで輝刃の乗ったサイドヒール // とりあえずこんな感じで書いている。 特に作戦部分で勘違いとか齟齬があれば教えてくれるとありがたい。 それ以外の部分でも何かあれば気軽に言ってくれ。
西側が追いついてくる場合、流民たちを後退させるのは賛成だ。なんならリットにその役をやってもらい、護衛班が足止めや耐える形もいいと思う。 伏兵については位置も何も分からねえが、基本草原から出ねえんだろ。 東側攻撃班が投石兵を落とすまで護衛班と流民が草原に入らねえようにすれば、奴等が仕掛ける場所とタイミングを東側→西側みたいに制限することはできるんじゃねえかと予測できるし、見越してヒーラーくらいは残ってほしいぜ。俺としてはだけどよ。 連中が奇襲仕掛けるまでに見つけられりゃあいいんだがな。俺も捜波と看破で気を張っては見るが、狼ってクッソ鼻が良いらしいじゃねえか。頼もしいぜ。
東側投石兵を速攻で片付けるのは賛成。 伏兵に関してはいつ仕掛けてくるかわからないので、3人の東側投石兵接敵時点で離れるのはちょっと怖いかなと思った⋯⋯ので、俺はどちらかというと伏兵に備えつつフォローする形にしておけば良いかな。 伏兵+西側投石兵が揃って避難民の方へ行くなら、その時に護衛班へ戻るようにしておくよ。 移動力からしてもまあ、そう遅れは取らないはずだ。
>エーテルリンク そうだったー…失念。ありがとう。 索敵だけに使うね。多少時間はかかるだろうけど、術式やらなんやらやってる暇はないしね。
と、ごめん……何度も。ルール見直してたら、そもそもエーテルリンクのスキル無いとペット動かせないっぽいから……狼で偵察云々は無しで……。時間も短いから、エーテルリンク無しでペットを偵察に出せるもんかプレに盛り込んじゃったから、 ペット使用不可の場合は、私自身が先行して敵がいないか確認するって付け加えておく(接敵は極力避けての偵察に絞るつもり)
……それはヘレンが索敵のため突出する、ということか。 なら、万が一の時にヘレンのヘルプに対応して飛び出すようにしておこう。