【CP】帝国難民キャンプ 1-2
●
「止まれ。大人しくしてれば命だけは助けてやる」
荒んだ顔の男達が、荷馬車の行く手を遮った。
使い古した皮鎧に木の槍という装備だが弱くは見えない。
穂先には犠牲者の血が赤黒く染みこんでいて威圧感は十分だ。
「畜生聞いてねぇぞ」
「俺は降りるっ」
護衛達が逃げ出す。
馬を奪って逃げようとして槍に突き殺される者までいた。
「へへ、賢い選択って奴だな」
賊達が甲高く笑う。
人から奪って生きることを決めた時点で精神の平衡が崩れたのか、賊として生きてきたからこうなったのかは分からない。
確実なのは、逃げなかった人間は皆殺しにするということだけだ。
「おーい、おっちゃーん!!」
元気な声がする。
「聞こえねーのかー? おっちゃーん、たまに飴玉くれるおっちゃーん!!」
賊達よりも薄汚れた子供が反対側から駆けてくる。
その子供は、護衛よりずっと弱そうに見えた。
捕まえて売るか、痛めつけて楽しむか、無法者の間で話し合いが行われる。
走ってくる子供が授恵者であることに、皮鎧ごと腹を切り裂かれるまで気づけなかった。
●
「おっちゃんも大変だなー」
新人授恵者リットは平然とした顔で死体を漁っている。
商人はようやく馬を落ち着かせ、地面に落ちていた帽子を取って自分の頭へのせた。
「おっちゃん言うな。だが助かった。さすが授恵者だな」
「冒険者のおっさんやねーちゃん達より弱いけどな。……こんなもんか」
剥ぎ取った装備と服を雑にまとめる。
授恵者になる前はスラムで生き抜いていたリットは、良くも悪くも人の死に慣れている。
「助かったぜおっちゃん」
戦利品を馬車にのせてもらって一緒にキャンプへ向かう。
鋪装などないので揺れが酷い。御者台の商人もうんざりした表情だ。
「おう感謝しろ。飴玉はやらないけどな。あれ結構高いんだぜ」
「ガキじゃねーんだから強請りはしねーよ」
リットは子供じみた表情ですねて、しかしすぐに真顔になる。
「他のおっちゃん達の荷馬車が遅れてんだよ」
「おい、そいつは……」
商人の顔色が変わる。
帝国からの避難民を受け入れるキャンプは王国の僻地中の僻地にある。
まともな道などない。
待ち伏せしたら確実に荷馬車に遭遇出来る場所などない訳で、その状況で荷が届いていないということは賊の集団が複数いるということだ。
「俺はいいんだけどガキどもが風邪気味でよ。おっちゃんが来てくれて助かったぜ」
それきり、キャンプにつくまで会話はなかった。
●
「お受け取り下さい」
その封書に刻まれている紋章は、帝国貴族なら誰でも知っている。
リオン・レスティは緊張し過ぎて固まる。
リュシエンヌ・テタールも驚いてはいるがリオンよりは落ち着いている。
「実物を目にすることになるなんて」
リオンが落ち着くのを待って、2人同時に中身を確認する。
リュシエンヌの健康的な肌から見る見る血の気が引き、リオンは今にも気絶してしまいそうだ。
「レイウェスト皇子本人の視察!?」
「あのっ」
リオンは怖じ気づいてもいるが目に力がある。
「皇子殿下は、どのような方なのでしょうか」
高位の者が下の者も虐げることも、高位の者が下の者に気付かず踏み潰してしまうこともありふれている悲劇だ。
リオンを信じてついてきてくれる領民を守るため、まず情報が必要だった。
「そうですね」
男は、難民であると同時に貴族である少女達へ開示できる情報を探す。
「皇子としての役割を懸命に果たそうとされています」
経験が浅く、少なくとも邪悪ではない。
リオンは礼儀正しく礼を述べる。
だが心の中は混乱と恐怖で一杯だ。
外から運び込まれる物資を狙って賊が集まり、届けられる物資が危険なほど減ってしまった。
その上、万が一があれば難民キャンプが吹き飛びかねない要人までやって来る。
冒険者の助けがなければ、確実に破綻する状況であった。
執筆:馬車猪
「止まれ。大人しくしてれば命だけは助けてやる」
荒んだ顔の男達が、荷馬車の行く手を遮った。
使い古した皮鎧に木の槍という装備だが弱くは見えない。
穂先には犠牲者の血が赤黒く染みこんでいて威圧感は十分だ。
「畜生聞いてねぇぞ」
「俺は降りるっ」
護衛達が逃げ出す。
馬を奪って逃げようとして槍に突き殺される者までいた。
「へへ、賢い選択って奴だな」
賊達が甲高く笑う。
人から奪って生きることを決めた時点で精神の平衡が崩れたのか、賊として生きてきたからこうなったのかは分からない。
確実なのは、逃げなかった人間は皆殺しにするということだけだ。
「おーい、おっちゃーん!!」
元気な声がする。
「聞こえねーのかー? おっちゃーん、たまに飴玉くれるおっちゃーん!!」
賊達よりも薄汚れた子供が反対側から駆けてくる。
その子供は、護衛よりずっと弱そうに見えた。
捕まえて売るか、痛めつけて楽しむか、無法者の間で話し合いが行われる。
走ってくる子供が授恵者であることに、皮鎧ごと腹を切り裂かれるまで気づけなかった。
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「おっちゃんも大変だなー」
新人授恵者リットは平然とした顔で死体を漁っている。
商人はようやく馬を落ち着かせ、地面に落ちていた帽子を取って自分の頭へのせた。
「おっちゃん言うな。だが助かった。さすが授恵者だな」
「冒険者のおっさんやねーちゃん達より弱いけどな。……こんなもんか」
剥ぎ取った装備と服を雑にまとめる。
授恵者になる前はスラムで生き抜いていたリットは、良くも悪くも人の死に慣れている。
「助かったぜおっちゃん」
戦利品を馬車にのせてもらって一緒にキャンプへ向かう。
鋪装などないので揺れが酷い。御者台の商人もうんざりした表情だ。
「おう感謝しろ。飴玉はやらないけどな。あれ結構高いんだぜ」
「ガキじゃねーんだから強請りはしねーよ」
リットは子供じみた表情ですねて、しかしすぐに真顔になる。
「他のおっちゃん達の荷馬車が遅れてんだよ」
「おい、そいつは……」
商人の顔色が変わる。
帝国からの避難民を受け入れるキャンプは王国の僻地中の僻地にある。
まともな道などない。
待ち伏せしたら確実に荷馬車に遭遇出来る場所などない訳で、その状況で荷が届いていないということは賊の集団が複数いるということだ。
「俺はいいんだけどガキどもが風邪気味でよ。おっちゃんが来てくれて助かったぜ」
それきり、キャンプにつくまで会話はなかった。
●
「お受け取り下さい」
その封書に刻まれている紋章は、帝国貴族なら誰でも知っている。
リオン・レスティは緊張し過ぎて固まる。
リュシエンヌ・テタールも驚いてはいるがリオンよりは落ち着いている。
「実物を目にすることになるなんて」
リオンが落ち着くのを待って、2人同時に中身を確認する。
リュシエンヌの健康的な肌から見る見る血の気が引き、リオンは今にも気絶してしまいそうだ。
「レイウェスト皇子本人の視察!?」
「あのっ」
リオンは怖じ気づいてもいるが目に力がある。
「皇子殿下は、どのような方なのでしょうか」
高位の者が下の者も虐げることも、高位の者が下の者に気付かず踏み潰してしまうこともありふれている悲劇だ。
リオンを信じてついてきてくれる領民を守るため、まず情報が必要だった。
「そうですね」
男は、難民であると同時に貴族である少女達へ開示できる情報を探す。
「皇子としての役割を懸命に果たそうとされています」
経験が浅く、少なくとも邪悪ではない。
リオンは礼儀正しく礼を述べる。
だが心の中は混乱と恐怖で一杯だ。
外から運び込まれる物資を狙って賊が集まり、届けられる物資が危険なほど減ってしまった。
その上、万が一があれば難民キャンプが吹き飛びかねない要人までやって来る。
冒険者の助けがなければ、確実に破綻する状況であった。
執筆:馬車猪