【竜盤】ドワーフ王国解放戦線

匠王としての証である、自らが鍛造したドワーフ王国最高の刀をしげしげと眺めながらシグルランは問いかけた。
「邪竜はクリエスター山脈のジモティだから基本シャルガネまでは行かないじゃん?」
シグルランは邪竜を模した石像を前に、刀をぶんぶか振り回した。彼女は鍛造には精通しているが一流の戦士というわけではなく、どことなく馴れていないのが窺えた。
「ドワーフ王国の兵士や冒険者たちがいなければ、マミダ地域はケントスやブリークナ、アトレーすらも完全に制圧されていたでしょう。マミダ地域が支配されればシャルガネはもう目の前です。それに……」
シャルガネ居住区の宿の女将であるキサキ・アカネは眩しそうにシグルランの持つ刀を見た。
辺境都市群はどの都市も文化の気色が異なることで知られているが、中でもシャルガネ居住区は殊更異彩を放っている。体の前で合わせる衣装、発酵の性質に精通しているからこそ生まれた食品や染料。それに切れ味に特化した武器。そう、シグルランが今、手にしているような。
「ドワーフ王国があるからこそ、シャルガネもシャルガネであることができるのだと思います。だからこそ放っておくわけにはいかないのです」
今回、邪竜バイアーディスらがやっているのは『戦闘』ではなく『戦争』だ。『戦争』は数多の命、心、文化すら奪い去り、変容させていく。
「なるへそ。お得意様共同戦線ってワケね。でもアタシちょー心配なんだよね。この刀は今でもアタシの自慢だけど……あいつの喉元を貫くには、ちょっち遠すぎるんだよね」
そう言うシグルランの顔は真剣そのものだった。切れ味だけならあの邪竜の鱗だって切り落とせる自信はあるが『戦争』を覚えた竜の喉元は、都市をいくつも挟む距離にある。
「だから武器を作り直そうって思うんだ。この都市を全部貫き徹せるヤツ」
「……ええ。それならまず、陥落させられた都市を取り返しましょう。都市に残った人、残った道具、残った想いを取り戻して、材料にすればいいと思います。邪竜の組織メルトウォールももちろん抵抗してくるでしょうが……こうした駆け引きは私たちに一日の長があります。相手の統制を崩しつつ、都市を、人を、道具を、経済を。私たちの味方につけ、道につなげていけば、必ず届くと思いますよ」
その言葉にシグルランは真剣な顔のまま首を傾げた。
「ご、めんご。取り返すのが大事なのは分かるけど、武器作りと繋がる意味がよくわっかんないんだけど……」
「都市を守りつつ、奪われた都市を取り戻せば武器にもなるし、邪竜を倒す道にもなりますよね。ということですよ」
「あー、なるほど。キサキっち、あったまいー! もしかして天才じゃね?」
シグルランが目をキラキラとさせてそう言ったことに、キサキは楚々とした笑みをこぼして曖昧に答えるばかりだった。
「とりあえず都市奪還やりゃいいんだね。おっけまる! アタシ一人じゃなんともなんないけど、ドワーフ王国はみんなで協力するのは慣れっこだし! 一人が槌上げりゃ、もう一人が自然と相槌打つ。ボケたらツッコむ。これを阿吽の呼吸でできるのがドワーフのいいところってことよ!」
シグルランの笑顔に不安の顔色は一つもない。それこそ彼女が持つ刀のように曇りの一つもないほどに。
それほどまでに信頼されているドワーフの民たちはきっと幸せなことだろうとキサキはにこやかにうなずいた。
そしてキサキ自身も、シグルランの笑顔を見ていると、不思議と気持ちが和らいでくる。心に響く槌の音は、キサキにとってよく共鳴しているようであった。
「私たちも全力で応援します」
執筆:DoLLer
assignment【竜盤】ドワーフ王国解放戦線 特設ページ
【竜盤】ドワーフ王国解放戦線では、ドワーフ王国を襲撃する邪竜との戦いが描かれます。従来の気まぐれな散発的な襲撃とは違い、組織だった行動にドワーフ王国は浮足立つ中、冒険者ギルドが協力に応じます。
assignmentここまでの流れ
帝国が壊滅して間もなく、ドワーフ王国ではバイアーディスという巨大な力をもつ邪竜が活動を開始しました。バイアーディスはアイオーンと呼ばれるもう一匹の邪竜と共に、ドワーフたちから奪った土地で、バルバロイや魔獣などを従え組織を作り上げました。
そして今、力を蓄えた彼らは蹂躙する為に動き始めます。
(2021/9/26追記)
バイアーディスとメルトウォールの急襲を受けた「マミダ地域」全15都市のうち、12都市が陥落しました。しかし、ドワーフ王国および冒険者の尽力によりケントス、ブリークナ、アトレーの3都市が死守されています。陥落した都市においても、冒険者の活躍により多くの民衆が命を助けられ、避難しました。避難民からの情報提供を受けてマミダ地域における戦況が判明し、また奪還に向けての士気も高く維持されています。また対抗手段についても模索が始められ対邪竜武器の開発が始まりました。
person_pin関連NPC
刀の製法を再発見し、その功績を持って若くして匠王の座に就いたドワーフ。性格のチャラさは生まれつきだが、鍛冶への情熱は深い。
《本連動での動き》
匠王として邪竜との戦いに指揮官として身を投じる。なお、指揮の腕はヤバたんという自負がある。
表の顔は、シャルガネ居住区の宿場街の女将頭。裏の顔はシノビの頭領であるという噂もあるが、実情は定かではない。
《本連動での動き》
シグルランの友人であり、そして邪竜とその周囲の不穏な動きをいち早く察知した情報提供者。兵士の指揮や各種運用に忙しいシグルランに代わって冒険者に協力を依頼したり、秘密の小径を整備するなどしてドワーフ王国に協働している。
王国第二の都市群「マミダ地域」を襲う邪竜。性格は好戦的で獰猛と本来の邪竜らしいところはあるが、ドワーフ達の命や財貨を奪うだけでなく逃がさないようにするなどの計画性も窺える。
《本連動での動き》
侵略者のトップであり、最大戦力。現在のところはメルトウォールに動きを任せ、ドワーフ王国軍そして冒険者達の動きを悠々と眺めているようだ。
王国第二の都市群「マミダ地域」を襲う邪竜。バイアーディスと違い冷静・知能が高いようで、メルトウォールと呼ばれる種族混成軍をまとめ上げている。
《本連動での動き》
メルトウォールの指揮官として各都市への侵略などを取りまとめている。またメドゥの指先をはじめ、外部と協力体制を組むの交渉なども行っているようで、シグルランと指揮能力の差がヤバたん丸。と噂になっている。
menu_book関連用語・情報
邪竜
クリエスター山脈に生息する黒竜たちです。自らの領域である山脈に住まうドワーフたちを嫌ってか、執拗にドワーフ王国を襲います。
時には邪悪極まる漆黒の翼を有した竜人の姿となって単身でドワーフ王国を強襲していきますが、今回襲来したバイアーディスとアイオーンの2体はその中でも特異とされています。この2体の特異な点として、単独活動をする邪竜が二匹同時活動してること、ただ奪うだけでなく、その地を支配すること、アイオーンは特にバイアーディスを補佐し、またメルトウォールと呼ばれる軍団を指揮しているなどがあげられます。
メルトウォール
邪竜アイオーンによって統率されているメルトウォールは様々な種族、人類と異種族だけでなく、動物や魔獣といった括りまで共に過ごす理想郷を作り出すことを目的として活動する組織です。彼らはそれぞれの強みを生かした軍隊としてだけでなく、お互いの長所と短所を補い合うことで発揮できる力――そしてそれが可能な社会という、彼らにとっての理想の姿を体現して降伏を訴えてきます。
マミダ地域
クリエスター山脈北東部における平野地域。帝国・辺境都市群へとつながる交易地もあり、ドワーフ王国の玄関口とも呼ばれる王国の第二都市群。中心地は、ドワーフ達が大好きな火酒の原料である農作物を育てる農業地帯であり、主要な醸造所が立ち並ぶ都市「マミダ」です。マミダを含め、15の都市が地域内に存在しています。