絡む君へ
革酎
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シナリオID:3481
オープニング
●私を酒場に連れてって
元シルトラース帝国子爵リーヴァー・シュランドルは、帝都奪還後も元気に冒険者活動を続けている。
そんなある日、彼女はリーンエス王国王都グランスパーダの某酒場で、冒険者川柳の作成に励んでいた。
冒険者ギルドのグランスパーダ支部で、とある職員が趣味で川柳を始めたらしいのだが、その職員が有志を募って冒険者川柳の会合を開こうといい出したのだ。
で、偶々その場に居合わせたリーヴァーも参加しないかと誘われ、何の気無しに応じた。
今回のお題は、酒。
リーヴァー自身は酒量も酒癖もまぁまぁ普通だ(と、本人は思っている)。
しかし川柳として発表するには、色々な冒険者の酒癖やら酒量やらを参考にしてみたい。
そんな訳でリーヴァーは、帝国子爵時代から貯め込んでいたへそくりから奮発し、冒険者ギルドに依頼を出すことにした。
依頼の件名は、貴方の呑み方を教えて下さい、だ。
(さて、どんな連中が集まってくれるかな?)
冒険者ギルドの受付カウンターで依頼票に諸々の記入を済ませたリーヴァーは、まだ見ぬ酒豪達の姿を思い描いて、むふふと変な笑いを漏らした。
勿論飲食費は全てリーヴァーが出す。これはただ飯とただ酒が楽しめるチャンスの筈だ。
美味い酒と美味い料理に出会うというのは、或る意味一期一会の奇跡だ。
話が弾めば、ついついお酒だって進むというもの。
ひとりでも良いし、連れ合いが居ても良い。
楽しく呑むのも自由だし、しんみり呑んだって構わない。
さぁ皆さんで、Let's drinking!
尚、リーヴァーは本人の記憶とは裏腹に、呑み過ぎると結構絡み酒が酷い。そこは適当にあしらおう。
元シルトラース帝国子爵リーヴァー・シュランドルは、帝都奪還後も元気に冒険者活動を続けている。
そんなある日、彼女はリーンエス王国王都グランスパーダの某酒場で、冒険者川柳の作成に励んでいた。
冒険者ギルドのグランスパーダ支部で、とある職員が趣味で川柳を始めたらしいのだが、その職員が有志を募って冒険者川柳の会合を開こうといい出したのだ。
で、偶々その場に居合わせたリーヴァーも参加しないかと誘われ、何の気無しに応じた。
今回のお題は、酒。
リーヴァー自身は酒量も酒癖もまぁまぁ普通だ(と、本人は思っている)。
しかし川柳として発表するには、色々な冒険者の酒癖やら酒量やらを参考にしてみたい。
そんな訳でリーヴァーは、帝国子爵時代から貯め込んでいたへそくりから奮発し、冒険者ギルドに依頼を出すことにした。
依頼の件名は、貴方の呑み方を教えて下さい、だ。
(さて、どんな連中が集まってくれるかな?)
冒険者ギルドの受付カウンターで依頼票に諸々の記入を済ませたリーヴァーは、まだ見ぬ酒豪達の姿を思い描いて、むふふと変な笑いを漏らした。
勿論飲食費は全てリーヴァーが出す。これはただ飯とただ酒が楽しめるチャンスの筈だ。
美味い酒と美味い料理に出会うというのは、或る意味一期一会の奇跡だ。
話が弾めば、ついついお酒だって進むというもの。
ひとりでも良いし、連れ合いが居ても良い。
楽しく呑むのも自由だし、しんみり呑んだって構わない。
さぁ皆さんで、Let's drinking!
尚、リーヴァーは本人の記憶とは裏腹に、呑み過ぎると結構絡み酒が酷い。そこは適当にあしらおう。
解説
状況:
PCの皆様はリーヴァー・シュランドルからの依頼を受け、リーンエス王国王都グランスパーダの某酒場で美味い酒と美味い料理を堪能し、その呑みっぷりを披露して頂きます。
尚、未成年は禁酒ですので、しらふで盛り上がって下さい。
細かなルールはありません。ただ呑んで、食べて楽しんで下されば結構です。
その様を、リーヴァーがこっそり観察します。
NPC:
依頼主のリーヴァー・シュランドルが登場します。
その他、酒場の主人や店員といったモブが登場する可能性があります。
マスターより
皆様、こんにちは。
ただ呑んで食べようというだけのショートシナリオRをお届けします。
内容はそんなに難しい話ではなく、皆様それぞれでお酒と料理を楽しんで頂ければ結構です。
場合によってはしんみりと、場合によってはトンチキライクに。
アニエピカに於ける革酎ラストシナリオ、楽しく遊んで下さいませ。
それでは、ご縁があればご参加のご検討宜しくお願い致します。
リプレイ
●幸せな食卓
リーンエス王国王都グランスパーダの某酒場にて。
「あ、来た来た、来たわよぉ。この店自慢の超デカ盛りステーキなんだって」
元シルトラース帝国子爵リーヴァー・シュランドルが、自身が招待した冒険者達を笑顔で見渡した。
巨大な鉄板が客席卓の中央でじゅうじゅうと湯気を放ち、その熱い板上で肉汁たっぷりの分厚いステーキが旨そうな脂と肉汁を滲ませている。
冒険者川柳のお題『酒』の案出しの為にとリーヴァーが募集をかけた飲み食い仲間は全部で八人。
そのいずれもが、手にしたジョッキやカップから思わず口を離して、目の前に現れた山盛りの肉料理にちょっとした感動の声を上げた。
「おぉ~、良いじゃねぇか、良いじゃねぇか! こりゃもりもりイケるぜぇ!」
左手でエール入りの樽ジョッキを掲げながら、ナハシュは空いた右手で自身の取り皿にぶつ切りされたステーキ肉をどんどん積み上げてゆく。
ただ酒ただ飯にありつけるということでホイホイ参加したナハシュだったが、予想以上の豪勢なテーブルにテンション爆上がりだ。ついでにいえば野菜も食えなどと野暮なことをいう輩も居ないので尚一層、機嫌が良さそうだ。
「こんだけ呑んで食って、それで金もくれるって? これだから冒険者はやめられねえなあ!」
勿論、依頼主たるリーヴァーはリーヴァーできっちり皆の酒癖食い癖を観察しているから、どっちもWin―Winだ。参加者は日頃の自然体で食と酒を楽しんでくれれば、それで良い。
「これがこちらのお店オススメのお料理? 見た目は豪快だけど、味付けは繊細ねぇ。女子のお腹にもがっつり行けそう」
ナハシュの斜め向かいの席では、ザザ=ステルヴィナが機嫌良さそうにステーキ肉を他の面々の取り皿に取り分けていた。ザザはリーヴァーとは今回が初対面だったが、元貴族ながら全く気取った様子を見せないリーヴァーとはすぐに打ち解けられそうな気がした。
「初めまして、貴女がリーヴァーさん? 私はザザ=ステルヴィナ。お噂は兼ねがねお伺いしていてよ」
「宜しくね。でも噂って、どんな噂かしら。何だか嫌な予感しかしないなぁ」
挨拶の際も微妙に自虐ネタでザザを笑わせたリーヴァー。戦士系と聞いていたザザだが、案外社交術もしっかり持ち合わせているなという印象を抱いた。
「お、付け合わせの総菜と柔らかいパンも出てきたね。どれどれ、これはおじさんが取り分けて進ぜよう」
新たな大皿の登場を受けて、リーヴァーの右隣席からディレイン・オールドケイジが立ち上がる。
もうすっかり出来上がって結構な赤ら顔のディレインだったが、まだ呂律も廻っているし手元足元もしっかりしているから、もうしばらくは放っておいても良さそうだった。
しかしその視線は時折、卓を挟んで反対側の席に陣取っているハヤト=ガラン=ヴォルファングにちらちらと警戒を色を伺わせていた。
(ハヤト君……まぁた何かやらかすんじゃないだろなぁ)
酒を楽しみつつも、ディレインは少しどころか、かなり心配だった。
巨乳ハンターハヤトの数々の実績はちらほらと耳に飛び込んできている。リーヴァーも着やせするタイプながら胸のふくらみは結構大きい方だから、隙あらばきっとハヤトが仕掛けてくる筈だ。
何としてでも阻止せねば、などとおじさん特有の年長使命感を内心で燃え上がらせているディレインだが、今回はとても頼りになる助っ人が居る。
現ロモズ歩兵団長コルネリウス・アーラが、リーヴァーの左隣席に陣取っていた。
今回も、その見た目とは裏腹に結構な量をしれっとした顔つきで胃袋に放り込んでいるコルネリウス。もうそろそろ壁エルフに加えて、肉エルフ第二世代のふたつ名を拝命しそうな勢いだった。
そのコルネリウスは矢張り付き合いが長い分だけ、リーヴァーとの会話も大いに弾んでいる。
帝国崩壊後の難民キャンプから始まったロモズ歩兵団での戦いは、コルネリウスにとってのひとつの勲章だ。その歩兵団の団長職をリーヴァーから受け継いだ今は、嬉しさと同時に程良い緊張感で身が引き締まる毎日だった。
「リーヴァーさんには本当に、感謝しています。改めて歩兵団を任せて頂いたこと、嬉しかったです」
「普通なら色々問題が出始めて、そろそろ胃が痛くなる頃なんだけどね。でもそういって貰えて、私もコルネに団長職を任せて正解だったって自信が持てるわ」
コルネリウスのどこかほわほわした笑顔は多少の酒も入っているからなのだろうが、矢張り久々にリーヴァーとこうして食卓を囲み、盃を交わし合うことが出来ている嬉しさからきているのだろう。
そんなふたりのやり取りを、ディレインは微笑ましげに眺めていた。そしてより一層、決意を固める。
(リーヴァーちゃんの巨乳は、おじさんが必ず守ってみせる!)
その心意気は大変素晴らしいのだが、恐らく口に出していってしまうと、ただのセクハラになってしまうだろう。
●楽しみ方色々
同じ卓の端の一方には、レピド・クロサイトとストレガ・L・リベルガストラが向かい合って座っている。
ふたりは酒と料理を楽しむというよりは、色々と分析しているといった様子に見えた。
レピドは元々の好みが食の方に偏っていることもあり、今までは己の酒癖や酒量については余り意識したことが無かった。
だが今回は、自身の酒の限界を知る良い機会だという余人にはよく分からない理論で甘みがあるアルコール類をちびちびと嗜んでいた。
その成果かどうかは分からないが、いつもより顔色が良い。全然白くない。寧ろ、普通の人間っぽい。若干雰囲気がぽわぽわし始めているが、自分で認識出来ているのかどうか。
その証拠に、いきなりザザに向かって、
「性別はどっちだ?」
などと禁句気味のクエスチョンを叩きつけてザザの頬に強張った笑みを浮かべさせたり、或いは突然ハヤトに親愛のハグを提供して、
「俺、そっちの趣味ねぇんだけど」
と困惑させるなどしていた。尚、レピドのハグは普通のハグだ。それ以上でもそれ以下でもない。
ここまで警戒心が薄れているのは、医者ディレイン同席という安心感がそうさせているのだろう。多少の食い過ぎならディレインが何とかしてくれる筈だ。
結局レピドは戦闘の場面でも宴会の場面でもディレインを悩ませていることに違いはなさそうだった。
「ふむ……この料理には、こっちの酒が良さそうなのだ」
一歩ストレガは、日頃は作る側に廻ることが多いからか、客としての目線よりも料理人の顔がちらほらと覗いている。食いながらレシピを考察し始める程だから、生粋の料理人だといって良い。
酒量も控え目だ。ちびちびやりながら、密かにリーヴァーを観察したりもしている。リーヴァーが酔い潰れた場合には、ストレガが代わって全員の酒癖記録を書き残す腹積もりだった。そしてその対象にはリーヴァーも含まれている。
(きっとご自身の酒癖にも興味があることだろう。自覚がある方が良い筈だ)
その結果として冒険者川柳で良い作品を生み出すことが出来れば、きっとリーヴァーも本望だろう――というのはストレガの勝手な想像なのだが。
ともあれ、リーヴァーのサポートという意味合いでも他の面々の酒癖は要チェックだ。手始めに、ハグ酒が始まっている目の前のレピドの醜態をあんなことやこんなことまで、きっちり書き残すに越したことは無い。これは依頼なのだ。何を躊躇する必要があろう。
反対側の卓の端では、ルアンナ・ミュラーがザザとナハシュに何やら熱弁を振るっていた。
既に帝都シルトラースでの最終決戦から二カ月程が経ち、ルアンナ自身は余り戦いの場に身を置くことは無くなった。
ところが――。
「でも、まだ身体が戦いを覚えてるんですかね? 時々変わった夢をみることがあって……」
聞けば、どうやら悪魔や歩く植物、或いは吸血鬼が跋扈する世界線で大立ち回りしている夢を最近特によく見る様になっているのだが、それがとても楽しいというのである。
が、毎回ベッドから転げ落ちて目が覚める為、最後まで見られないのが少し残念なのだとか。
「まぁ本業はパン屋なので、お店の営業に悪影響が出なければそれで良いんですけどね」
お代わりで注文した甘いカクテル系の酒を手に取り、軽く口をつけながら苦笑するルアンナ。だがその笑みの裏側には未だ戦い足りない本能の様なものが見え隠れしている。
ザザとナハシュは思わず互いに顔を見合わせた。
「こりゃあ、アレだな」
「身体が闘争を求める系女子ね」
そんな系統の女子が居るのかどうかはさておき、取り敢えずふたりの間ではルアンナはそういう方向性なのだろうと結論付けられていた。
●水面下の攻防と艶やかな舞踏
と、ここでハヤトがお重らしきものをテーブル上に広げた。
リーヴァーは持ち込みOKの店を選んでいたから、ハヤトが行楽弁当を持参しても店側は何もいわず、店員も店長も黙ってにこにこしていた。
「よぉーし、んじゃあここらで軽くお口直しだ。どんどん食ってくれ」
ハヤトが自ら重箱を抱えてテーブルの各席を廻って配り歩いた。
既に蒸留酒やワインなどを結構な勢いで呑んでいたにも関わらず、足取りも呂律もしっかりしている。酒癖など微塵も出ていない。完璧な素面状態だ。
(今ならイケる……イケるぞ! 自分を信じろハヤト!)
変な方向に気合が入っているハヤトは、コルネリウスには呑み過ぎるなと気を遣い、ディレインには父と呑んだ時の話を振って意識を逸らせ、レピドにはこれからやろうとしていることの激励を贈る。
そう、完璧だ。今のところは誰もハヤトの目論見に気付いてはいない筈だ。
そして獲物は現在ほろ酔い気分でそろそろ絡み酒態勢に入っている。この万全な流れの中でしくじれば、ブレイブファング傭兵団長の名が泣くというものだ。
団員らが別の意味で『情けないです団長』と泣いてしまう可能性は全く考慮の外だったが。
そんなこんなでハヤトは隙だらけのリーヴァーの背後を取った。が、ここで愕然とした。左右から壁エルフとおじさんドクターの絶対的な守りが、ハヤトの腕の軌道を完璧に封じていたのである。
愕然とするハヤト。この時コルネリウスはどこか甘えた様な声音でご機嫌な笑みを見せつつ、リーヴァーとディレイン相手に楽しげな様子で会話を交わしていたが、一瞬だけ、まるで素に戻ったかの如く不敵な笑みをハヤトにちらりと見せた。
(流石だよ、コルネちゃん)
ディレインは卓の下でさりげなくサムズアップ。
その一方でハヤトの忸怩たる思いは如何ばかりであろう。
これが壁エルフか――皇帝ヨゼフ・バルダスを討ち取った時ですら、これ程の手強さを感じたことは無かったが、ここにきてまさかの完全敗北。ハヤトは心の中で真っ白に燃え尽きていた。
(ふむ……奥方への報告は避けられぬのだ)
ハヤトvsコルネリウス&ディレインの静かな攻防をこっそりとさりげなくガン見していたストレガは、誰にも気づかれぬ速さでハヤト殿まさかの巨乳攻略失敗というパワーフレーズをメモ帳に書き込んだ。
それにしても、皆案外自重している、とストレガは見た。念の為に酔い覚ましの水も持参していたが、この調子なら使わずに済むかもしれない。ディレインが酔い潰れた際のサブ介護を自認していたストレガだったが、このまま安心して酒と料理を楽しむことが出来そうだ。
その時、ザザがリーヴァーに柑橘系の果物入りの料理を勧めた。
「あら、美味しい。更に食欲が増してしまいそうね……リーヴァーさんも、お酒は程々になさった方が宜しくてよ? ほら、お料理も沢山召し上がって」
リーヴァーがそろそろコイバナはどうだとか、彼氏彼女は居るのかとか変な方向に絡み始めたのを見て、ザザは一旦小休止させようと試みた。が、その程度で止まるリーヴァーではない。
ならばここでひとつ、全く別方向に視点を変えさせる必要があるだろう。
そんな訳でザザは店の許可を取った上で、踊りを披露することにした。
店主がショールを貸してくれた一方、店員らはザザの舞踏の為に店内の一部の卓を移動させてスペースを作ってくれた。
「……今宵一夜の夢を、とくとご照覧あれ!」
情感たっぷりの踊りに、誰もが目を奪われた。
帝国崩壊から現在に至るまでの道程を、ザザは時に激しく、時に切なく、そして未来に希望を感じることが出来る朗らかな締めで表現し切った。
店内からはやんやの喝采と拍手。
ストレガなどは思わぬ余興に歓声を送った。彼女の中では、ゴブリン式の宴会は騒がしく楽しいのがセオリーらしい。
●宴も過ぎて
何故か、ディレインは泣いていた。
勝手に大粒の涙が零れているらしい。笑っているのに、泣いている。気分がふわふわして泣いている自覚も無かった。
酒に弱い方ではなかったし、医者として色々気を付けながら盃を重ね、料理を楽しんでいたつもりなのだが、何故こんなことになっているのか、自分でもよく分からなかった。
そのディレインを尻目に眺めつつ、レピドはハグ魔と化していた。
ルアンナとハグ、ナハシュとハグ、ストレガとハグ、コルネリウスとハグ、ザザとハグ、そして最後はリーヴァーともハグ。
この時レピドは相当に大きな胸のふくらみをリーヴァーの胸元から感じていたが、レピド自身はそんなことはどうでも良く、相手の体温と鼓動から、お互いに生きていることを実感することが出来て、柄にもなくにこにこしていた。
後でハヤトが嗚呼その手があったか、などと悔しがったかどうかはさておき。
「それより、この肉うめぇ! もっと食えよ! お代わりどんどん持ってきて貰おうぜ!」
そんなハヤトに、ナハシュが冷やかし半分で絡みに行った。お互い酒に強い者同士、ゴブリン同士。ルアンナもそこに加わって更に話の花が咲いた。
「ハヤトさん、最近の傭兵団はどんな感じなんですか?」
今も尚、対クリーパー戦などで各地を巡っているであろう傭兵団の活躍に目を輝かせるルアンナ。彼女もいずれ再び、爆炎の魔女として冒険の世界に舞い戻ってくるのだろうか。
ところが、そのルアンナにレピドが背後から椅子を寄せて来て、再びのハグ。が、そこで寝落ちてしまった。ルアンナはびっくりしたものの、レピドが余りに気持ちよさそうに寝ている為、そのまま抱き枕役を全うしてやることにした。
続けてディレインも陥落。気付けば卓に突っ伏して寝息を立てていた。
それでも宴は、まだ続いた。
後日リーヴァーが詠んだ冒険者川柳は下位の賞にすら、かすりもしなかったという。
らしいといえば、らしいといえた。
リーンエス王国王都グランスパーダの某酒場にて。
「あ、来た来た、来たわよぉ。この店自慢の超デカ盛りステーキなんだって」
元シルトラース帝国子爵リーヴァー・シュランドルが、自身が招待した冒険者達を笑顔で見渡した。
巨大な鉄板が客席卓の中央でじゅうじゅうと湯気を放ち、その熱い板上で肉汁たっぷりの分厚いステーキが旨そうな脂と肉汁を滲ませている。
冒険者川柳のお題『酒』の案出しの為にとリーヴァーが募集をかけた飲み食い仲間は全部で八人。
そのいずれもが、手にしたジョッキやカップから思わず口を離して、目の前に現れた山盛りの肉料理にちょっとした感動の声を上げた。
「おぉ~、良いじゃねぇか、良いじゃねぇか! こりゃもりもりイケるぜぇ!」
左手でエール入りの樽ジョッキを掲げながら、ナハシュは空いた右手で自身の取り皿にぶつ切りされたステーキ肉をどんどん積み上げてゆく。
ただ酒ただ飯にありつけるということでホイホイ参加したナハシュだったが、予想以上の豪勢なテーブルにテンション爆上がりだ。ついでにいえば野菜も食えなどと野暮なことをいう輩も居ないので尚一層、機嫌が良さそうだ。
「こんだけ呑んで食って、それで金もくれるって? これだから冒険者はやめられねえなあ!」
勿論、依頼主たるリーヴァーはリーヴァーできっちり皆の酒癖食い癖を観察しているから、どっちもWin―Winだ。参加者は日頃の自然体で食と酒を楽しんでくれれば、それで良い。
「これがこちらのお店オススメのお料理? 見た目は豪快だけど、味付けは繊細ねぇ。女子のお腹にもがっつり行けそう」
ナハシュの斜め向かいの席では、ザザ=ステルヴィナが機嫌良さそうにステーキ肉を他の面々の取り皿に取り分けていた。ザザはリーヴァーとは今回が初対面だったが、元貴族ながら全く気取った様子を見せないリーヴァーとはすぐに打ち解けられそうな気がした。
「初めまして、貴女がリーヴァーさん? 私はザザ=ステルヴィナ。お噂は兼ねがねお伺いしていてよ」
「宜しくね。でも噂って、どんな噂かしら。何だか嫌な予感しかしないなぁ」
挨拶の際も微妙に自虐ネタでザザを笑わせたリーヴァー。戦士系と聞いていたザザだが、案外社交術もしっかり持ち合わせているなという印象を抱いた。
「お、付け合わせの総菜と柔らかいパンも出てきたね。どれどれ、これはおじさんが取り分けて進ぜよう」
新たな大皿の登場を受けて、リーヴァーの右隣席からディレイン・オールドケイジが立ち上がる。
もうすっかり出来上がって結構な赤ら顔のディレインだったが、まだ呂律も廻っているし手元足元もしっかりしているから、もうしばらくは放っておいても良さそうだった。
しかしその視線は時折、卓を挟んで反対側の席に陣取っているハヤト=ガラン=ヴォルファングにちらちらと警戒を色を伺わせていた。
(ハヤト君……まぁた何かやらかすんじゃないだろなぁ)
酒を楽しみつつも、ディレインは少しどころか、かなり心配だった。
巨乳ハンターハヤトの数々の実績はちらほらと耳に飛び込んできている。リーヴァーも着やせするタイプながら胸のふくらみは結構大きい方だから、隙あらばきっとハヤトが仕掛けてくる筈だ。
何としてでも阻止せねば、などとおじさん特有の年長使命感を内心で燃え上がらせているディレインだが、今回はとても頼りになる助っ人が居る。
現ロモズ歩兵団長コルネリウス・アーラが、リーヴァーの左隣席に陣取っていた。
今回も、その見た目とは裏腹に結構な量をしれっとした顔つきで胃袋に放り込んでいるコルネリウス。もうそろそろ壁エルフに加えて、肉エルフ第二世代のふたつ名を拝命しそうな勢いだった。
そのコルネリウスは矢張り付き合いが長い分だけ、リーヴァーとの会話も大いに弾んでいる。
帝国崩壊後の難民キャンプから始まったロモズ歩兵団での戦いは、コルネリウスにとってのひとつの勲章だ。その歩兵団の団長職をリーヴァーから受け継いだ今は、嬉しさと同時に程良い緊張感で身が引き締まる毎日だった。
「リーヴァーさんには本当に、感謝しています。改めて歩兵団を任せて頂いたこと、嬉しかったです」
「普通なら色々問題が出始めて、そろそろ胃が痛くなる頃なんだけどね。でもそういって貰えて、私もコルネに団長職を任せて正解だったって自信が持てるわ」
コルネリウスのどこかほわほわした笑顔は多少の酒も入っているからなのだろうが、矢張り久々にリーヴァーとこうして食卓を囲み、盃を交わし合うことが出来ている嬉しさからきているのだろう。
そんなふたりのやり取りを、ディレインは微笑ましげに眺めていた。そしてより一層、決意を固める。
(リーヴァーちゃんの巨乳は、おじさんが必ず守ってみせる!)
その心意気は大変素晴らしいのだが、恐らく口に出していってしまうと、ただのセクハラになってしまうだろう。
●楽しみ方色々
同じ卓の端の一方には、レピド・クロサイトとストレガ・L・リベルガストラが向かい合って座っている。
ふたりは酒と料理を楽しむというよりは、色々と分析しているといった様子に見えた。
レピドは元々の好みが食の方に偏っていることもあり、今までは己の酒癖や酒量については余り意識したことが無かった。
だが今回は、自身の酒の限界を知る良い機会だという余人にはよく分からない理論で甘みがあるアルコール類をちびちびと嗜んでいた。
その成果かどうかは分からないが、いつもより顔色が良い。全然白くない。寧ろ、普通の人間っぽい。若干雰囲気がぽわぽわし始めているが、自分で認識出来ているのかどうか。
その証拠に、いきなりザザに向かって、
「性別はどっちだ?」
などと禁句気味のクエスチョンを叩きつけてザザの頬に強張った笑みを浮かべさせたり、或いは突然ハヤトに親愛のハグを提供して、
「俺、そっちの趣味ねぇんだけど」
と困惑させるなどしていた。尚、レピドのハグは普通のハグだ。それ以上でもそれ以下でもない。
ここまで警戒心が薄れているのは、医者ディレイン同席という安心感がそうさせているのだろう。多少の食い過ぎならディレインが何とかしてくれる筈だ。
結局レピドは戦闘の場面でも宴会の場面でもディレインを悩ませていることに違いはなさそうだった。
「ふむ……この料理には、こっちの酒が良さそうなのだ」
一歩ストレガは、日頃は作る側に廻ることが多いからか、客としての目線よりも料理人の顔がちらほらと覗いている。食いながらレシピを考察し始める程だから、生粋の料理人だといって良い。
酒量も控え目だ。ちびちびやりながら、密かにリーヴァーを観察したりもしている。リーヴァーが酔い潰れた場合には、ストレガが代わって全員の酒癖記録を書き残す腹積もりだった。そしてその対象にはリーヴァーも含まれている。
(きっとご自身の酒癖にも興味があることだろう。自覚がある方が良い筈だ)
その結果として冒険者川柳で良い作品を生み出すことが出来れば、きっとリーヴァーも本望だろう――というのはストレガの勝手な想像なのだが。
ともあれ、リーヴァーのサポートという意味合いでも他の面々の酒癖は要チェックだ。手始めに、ハグ酒が始まっている目の前のレピドの醜態をあんなことやこんなことまで、きっちり書き残すに越したことは無い。これは依頼なのだ。何を躊躇する必要があろう。
反対側の卓の端では、ルアンナ・ミュラーがザザとナハシュに何やら熱弁を振るっていた。
既に帝都シルトラースでの最終決戦から二カ月程が経ち、ルアンナ自身は余り戦いの場に身を置くことは無くなった。
ところが――。
「でも、まだ身体が戦いを覚えてるんですかね? 時々変わった夢をみることがあって……」
聞けば、どうやら悪魔や歩く植物、或いは吸血鬼が跋扈する世界線で大立ち回りしている夢を最近特によく見る様になっているのだが、それがとても楽しいというのである。
が、毎回ベッドから転げ落ちて目が覚める為、最後まで見られないのが少し残念なのだとか。
「まぁ本業はパン屋なので、お店の営業に悪影響が出なければそれで良いんですけどね」
お代わりで注文した甘いカクテル系の酒を手に取り、軽く口をつけながら苦笑するルアンナ。だがその笑みの裏側には未だ戦い足りない本能の様なものが見え隠れしている。
ザザとナハシュは思わず互いに顔を見合わせた。
「こりゃあ、アレだな」
「身体が闘争を求める系女子ね」
そんな系統の女子が居るのかどうかはさておき、取り敢えずふたりの間ではルアンナはそういう方向性なのだろうと結論付けられていた。
●水面下の攻防と艶やかな舞踏
と、ここでハヤトがお重らしきものをテーブル上に広げた。
リーヴァーは持ち込みOKの店を選んでいたから、ハヤトが行楽弁当を持参しても店側は何もいわず、店員も店長も黙ってにこにこしていた。
「よぉーし、んじゃあここらで軽くお口直しだ。どんどん食ってくれ」
ハヤトが自ら重箱を抱えてテーブルの各席を廻って配り歩いた。
既に蒸留酒やワインなどを結構な勢いで呑んでいたにも関わらず、足取りも呂律もしっかりしている。酒癖など微塵も出ていない。完璧な素面状態だ。
(今ならイケる……イケるぞ! 自分を信じろハヤト!)
変な方向に気合が入っているハヤトは、コルネリウスには呑み過ぎるなと気を遣い、ディレインには父と呑んだ時の話を振って意識を逸らせ、レピドにはこれからやろうとしていることの激励を贈る。
そう、完璧だ。今のところは誰もハヤトの目論見に気付いてはいない筈だ。
そして獲物は現在ほろ酔い気分でそろそろ絡み酒態勢に入っている。この万全な流れの中でしくじれば、ブレイブファング傭兵団長の名が泣くというものだ。
団員らが別の意味で『情けないです団長』と泣いてしまう可能性は全く考慮の外だったが。
そんなこんなでハヤトは隙だらけのリーヴァーの背後を取った。が、ここで愕然とした。左右から壁エルフとおじさんドクターの絶対的な守りが、ハヤトの腕の軌道を完璧に封じていたのである。
愕然とするハヤト。この時コルネリウスはどこか甘えた様な声音でご機嫌な笑みを見せつつ、リーヴァーとディレイン相手に楽しげな様子で会話を交わしていたが、一瞬だけ、まるで素に戻ったかの如く不敵な笑みをハヤトにちらりと見せた。
(流石だよ、コルネちゃん)
ディレインは卓の下でさりげなくサムズアップ。
その一方でハヤトの忸怩たる思いは如何ばかりであろう。
これが壁エルフか――皇帝ヨゼフ・バルダスを討ち取った時ですら、これ程の手強さを感じたことは無かったが、ここにきてまさかの完全敗北。ハヤトは心の中で真っ白に燃え尽きていた。
(ふむ……奥方への報告は避けられぬのだ)
ハヤトvsコルネリウス&ディレインの静かな攻防をこっそりとさりげなくガン見していたストレガは、誰にも気づかれぬ速さでハヤト殿まさかの巨乳攻略失敗というパワーフレーズをメモ帳に書き込んだ。
それにしても、皆案外自重している、とストレガは見た。念の為に酔い覚ましの水も持参していたが、この調子なら使わずに済むかもしれない。ディレインが酔い潰れた際のサブ介護を自認していたストレガだったが、このまま安心して酒と料理を楽しむことが出来そうだ。
その時、ザザがリーヴァーに柑橘系の果物入りの料理を勧めた。
「あら、美味しい。更に食欲が増してしまいそうね……リーヴァーさんも、お酒は程々になさった方が宜しくてよ? ほら、お料理も沢山召し上がって」
リーヴァーがそろそろコイバナはどうだとか、彼氏彼女は居るのかとか変な方向に絡み始めたのを見て、ザザは一旦小休止させようと試みた。が、その程度で止まるリーヴァーではない。
ならばここでひとつ、全く別方向に視点を変えさせる必要があるだろう。
そんな訳でザザは店の許可を取った上で、踊りを披露することにした。
店主がショールを貸してくれた一方、店員らはザザの舞踏の為に店内の一部の卓を移動させてスペースを作ってくれた。
「……今宵一夜の夢を、とくとご照覧あれ!」
情感たっぷりの踊りに、誰もが目を奪われた。
帝国崩壊から現在に至るまでの道程を、ザザは時に激しく、時に切なく、そして未来に希望を感じることが出来る朗らかな締めで表現し切った。
店内からはやんやの喝采と拍手。
ストレガなどは思わぬ余興に歓声を送った。彼女の中では、ゴブリン式の宴会は騒がしく楽しいのがセオリーらしい。
●宴も過ぎて
何故か、ディレインは泣いていた。
勝手に大粒の涙が零れているらしい。笑っているのに、泣いている。気分がふわふわして泣いている自覚も無かった。
酒に弱い方ではなかったし、医者として色々気を付けながら盃を重ね、料理を楽しんでいたつもりなのだが、何故こんなことになっているのか、自分でもよく分からなかった。
そのディレインを尻目に眺めつつ、レピドはハグ魔と化していた。
ルアンナとハグ、ナハシュとハグ、ストレガとハグ、コルネリウスとハグ、ザザとハグ、そして最後はリーヴァーともハグ。
この時レピドは相当に大きな胸のふくらみをリーヴァーの胸元から感じていたが、レピド自身はそんなことはどうでも良く、相手の体温と鼓動から、お互いに生きていることを実感することが出来て、柄にもなくにこにこしていた。
後でハヤトが嗚呼その手があったか、などと悔しがったかどうかはさておき。
「それより、この肉うめぇ! もっと食えよ! お代わりどんどん持ってきて貰おうぜ!」
そんなハヤトに、ナハシュが冷やかし半分で絡みに行った。お互い酒に強い者同士、ゴブリン同士。ルアンナもそこに加わって更に話の花が咲いた。
「ハヤトさん、最近の傭兵団はどんな感じなんですか?」
今も尚、対クリーパー戦などで各地を巡っているであろう傭兵団の活躍に目を輝かせるルアンナ。彼女もいずれ再び、爆炎の魔女として冒険の世界に舞い戻ってくるのだろうか。
ところが、そのルアンナにレピドが背後から椅子を寄せて来て、再びのハグ。が、そこで寝落ちてしまった。ルアンナはびっくりしたものの、レピドが余りに気持ちよさそうに寝ている為、そのまま抱き枕役を全うしてやることにした。
続けてディレインも陥落。気付けば卓に突っ伏して寝息を立てていた。
それでも宴は、まだ続いた。
後日リーヴァーが詠んだ冒険者川柳は下位の賞にすら、かすりもしなかったという。
らしいといえば、らしいといえた。
マスターコメント
ご参加ありがとうございました。
これにて革酎のアニエピカでのシナリオは終了で御座います。
私個人としましては、NPCリーヴァーに始まり、NPCリーヴァーに終わったという大変感慨深いラストとなりました。
これまで多くの皆様のロスガリア大陸冒険譚に携わることが出来たことを大変嬉しく、また光栄に思っております。
この場をお借りしまして、深く感謝申し上げます。
そして今後は引き続き、東京インソムニア1999の方でも宜しくお願い致します。
ショートシナリオR易しい 報酬:標準8 / 4〜8人
2024年03月11日 09時22分58秒 公開
大成功
相談掲示板
ただ飯とただ酒、ありがたいねえ。 ディレイン・オールドケイジ、よろしく。 というか、絡み絡まれになると予想してるので、本当によろしく。 自分では弱くはないと思うんだけど、場の雰囲気に酔うってこともあるからね。
酒!!!!肉!!!!!! (ナハシュです。よろしくお願いします)
ねこです、よろしくおねがいします。 (レピド・クロサイトだ、よろしく頼む)
コルネリウスです、よろしくお願いします。 リーヴァーさんともお酒を頂ける機会、嬉しいですね。 潰れないようには自制しますが、いっぱい楽しみたいです。
ドーモ、皆さん。メロンパンです。 (ルアンナです、よろしくお願いします♪)
ザザ=ステルヴィナよ、どうぞよろしくね。 美味しいお酒とお料理がいただけると聞いて参加させていただいたわ。 せっかくなんで舞踏でも披露しようかと考えている所よん。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤトだ、よろしくな!! 酒と宴か!? ついにリーヴァーのぷるるんを…ムフフ♪ これは酔い潰してからの~チャンスだぜ!!←✕
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 酒と料理の組み合わせというわけか。