【帝国】ヨゼフの亡霊(前編)
おおくまねこ
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シナリオID:3460
オープニング
「冒険者たちよ、久しぶりだな。今日は依頼を持ってきた。もっとも私は代理に過ぎないのだが……本当の依頼人はイネスだ」
その日、ディズル大湿地帯の冒険者ギルドにやってきたのは、ギシュム族のリザードマンの若者、サラマンダーと、帝国近衛連隊の中隊長、アイギスだった。アイギスがイネスの名を口にした瞬間、酒場にピリッとした空気が生まれた。
イネス・コンテスティは『第三の征竜の巫女』を名乗った傾国の美女の名である。その実態は帝国過激派が送り込んだ偽物であり、ヨゼフ皇帝が極北で征竜と同盟を結ぶまでの間、世界各国の目をディズル湿地帯に引き付けておくための「目くらまし」であった。当のイネスは帝国近衛連隊の作戦失敗により、雲霞鳥が大氾濫を起こした際に、帝国宰相バルバスティンと共にヨラヒムへと引き返していった。
そしてイネスは帝都の最終決戦の最中、バルバスティンと共に冒険者と交戦し、敗北して捕縛された。その後、イネスは帝国からギシュム族へと引き渡され、刑罰が決まるのを待っている状況のはずである。
「依頼内容は『帝国西部鎮守都市ヨラヒム』のどこかにいるという、イネス殿の息子プルートの捜索だ。ヨラヒムまでの道に詳しい者も同行させるので、彼女と共にヨラヒムへと向かってくれ。必然的に帝国過激派残党のアジトに乗り込むことになるので危険が予想される。それでなくとも、真冬の帝国は極寒の地だ。過酷な旅になると思うが……」
アイギスは神妙な面持ちで言葉を続ける。
「リザードマン達や、レイウェスト皇子殿下もイネスの息子については気にしている。息子が実在すれば彼女の量刑にも関わってくるしな。そうでなくても、いずれヨラヒムには帝国から兵を送る必要がある。君達冒険者に先行偵察してもらえるのならば、願ってもない話だ。そんなわけで、イネスからの依頼はアシムベートからも許可がもらえた。依頼の報酬についてもリザードマン達からも支払われるそうだ(帝国と折半になるかもしれないが)」
イネスの息子を探すのならばまずはヨラヒムから、というのは道理だ。危険な旅路であり、空振りの可能性はあっても、ヨラヒムを偵察すること自体は、シルトラース帝国としてもやっておきたいことなのだろう。
「この依頼はレイウェスト皇子殿下や、リザードマン達の為でもある。冒険者達よ。どうか引き受けてくれないか」
●
「嗚呼、偉大なる我が君、ヨゼフ皇帝陛下よ、なぜ亡くなられてしまったのか! あなたはまさにシルトラースの太陽だった! あなたさえ健在なら、シルトラースは何度でも蘇ると、我々は信じていたのに!!」
元帝国近衛連隊兵中隊長、ダハーカはヨゼフ皇帝の肖像画にしがみつき、号泣していた。ヨゼフが征竜と共にレイウェストに討たれたあの日、ダハーカも部下達と共に帝都にいた。ヨゼフが征竜の背から墜ちた時、周囲のクリーパー相手に露払いをしていたダハーカ達はすぐさまヨゼフの元に馳せ参じようとした。しかし、ダハーカの部隊は突如として戦場に出現した巨大な邪竜の妨害に遭い、ヨゼフとの合流は果たせなかった。そして、ヨゼフの訃報を知ったダハーカ達は失意のまま、ヨラヒムへと引き返したのだ。
「偉大なる我が父も、神祖たるメドゥの右腕も、そしてヨゼフ皇帝陛下も死んだ。傑物から先に死ぬ行くのがこの世の定めだというのか! そうなのですか、ヨゼフ陛下!」
今ではヨゼフの肖像画の前で毎日30分ほど号泣することが彼の日課となった。だが、慟哭するダハーカの問いに答えが返ってくることはもちろんなかった。
「ふう。一人の時間はやはり大切だな。そろそろ狩りの時間だな。……ふむ、まだ少しだけ時間に余裕がある。プルート君の顔でも見に行くか」
我に返ったダハーカは、イネスの息子の顔を見に行くことにした。
●
「やあ、こんばんは。プルート君」
ダハーカがイネスの息子に挨拶すると、プルートは読書を中断して立ち上がり、ぺこりとお辞儀をした。
「こんばんは。お久しぶりです。ダハーカさん」
「ああ、そうかしこまらんでくれ。君は尊い血の持ち主なのだからね。本来ならば、私が敬語を使うべき立場だ」
「いえ、めっそうもありません。一人では狩りも満足にできないぼくに、そんな資格はありません」
「そうか。君はとても謙虚だな。将来は立派な統治者になれるだろう」
(やはり、この子は7才にしては相当賢い……宰相殿が目を掛けていただけのことはある)
ずっと被ったままの獅子の仮面の奥から、ダハーカは値踏みするようにプルートを見る。この少年は、今は亡き宰相バルバスティンがディズル大湿原での作戦の前に、イネスから取り上げた子だ。もっとも、プルート本人は詳しい事情は知らされておらず、「母は帝都でヨゼフと共に戦死した」と教えられている。
もしもイネスが我が子を宰相から奪い返せばヨゼフ皇帝から離反する恐れもあり、人手不足のヨゼフ一派には幼子を養う余力も乏しかったため、始末しておくべきではないかという意見も出たのだが、宰相の『帝国再興後を見据えるならば、貴族の子は生かしておく価値がある』という意見により、プルートはヨラヒムで丁重に世話をされることになった。その宰相も帝都でヨゼフと共に散ったが、プルートは世話役を命じられた侍女ともども、なんとかダハーカ達がヨラヒムに帰還するまでの間生き延びていた。
「プルート君。何か要望はあるかね。なんでも言ってくれたまえ。今のヨラヒムに大したものはないが、私は君の御父上とは友人だった。大切な友の忘れ形見の願いは可能な限り叶えてやりたい」
「ありがとうございます。ダハーカさん。では、二つ質問が」
「うむ。何かな」
「ダハーカさんはなぜ、いつもその仮面を被っているのですか?」
プルートが尋ねると。ダハーカは肩を竦めた後、自分の顔を引っ張った。
「実はね。これは取ろうとしても取れないのだよ。私はこの仮面にとても気に入られてしまってね」
「そ、そうなんですか。あともう一つだけ」
「ふむ」
「なぜ、いつも夜に狩りに出るのですか? 昼間の方が、狩りはしやすいと思うのですが」
「ああ、それはね……私は夜襲が得意なのだよ。下手な獣よりもよほど目も良い」
ダハーカの仮面の奥では、赤い瞳がぎらついていた。
●
「役者でございますね」
「シュライバー君か」
プルートの部屋を出た後、屋根の上から声をかけられ、ダハーカは上を見上げた。するとそこには、夜を切り取ったかのように黒い外套を着た、獣人の男が立っていた。
「今日の君の任務は昼間の哨戒だっただろう。休まなくていいのかね?」
「ええ。少し、予感がしまして」
「ふむ。何か見えたのかね。『千里眼』殿」
男の不思議な物言いに、ダハーカは真剣な眼差しで尋ねた。
「ええ。近い内に敵が来ます」
「ふむ、レイウェスト派がここに来るのはもっと先だと踏んでいたが……先行偵察隊が近づいているというのか?」
「ええ。恐らく。ですが、来るのはレイウェスト皇子の兵隊ではございませぬ」
「……冒険者か。部下達にも用心するように伝えておこう。陛下の仇を討ちたいのは山々だが、我らにはそれよりも先に為さねばならぬことがある。感謝するよ、シュライバー君」
「礼には及びませぬ。貴殿らのなさろうとしていることは、僕も無視できませぬゆえ」
最果ての地ヨラヒムにて。帝国過激派の残党たちが何か邪悪な企てを為そうとしていた。
解説
マスターより
リプレイ
「イネスの息子さんが過激派の潜伏先に居ると分かれば、彼女が過激派に組するしかなかった証明にはなるわね。過激派の残党も、このまま降伏する日を待っているとは思えないし、行ってみましょう。ヨラヒムの街へ」
ロゼットを含め、七名の冒険者はイネスからの依頼を引き受けることにした。犯罪者からの依頼だったが、それぞれの思惑を胸に冒険者達はヨラヒムを目指した。そして、早数週間――。冒険者達は帝国西部鎮護都市ヨラヒムへと至る、最後の山道を歩いていた。山頂付近で道案内役のユズリハが崖の方へと移動し、冒険者達にちょいちょいと手招きした。
「あそこに見える街がヨラヒムよ。向こうからもこっちが見える距離だから、覗く時は注意して」
冒険者達がユズリハの示す方向を見ると、確かに城壁に囲まれた、北部鎮守都市や南部鎮守都市に劣らぬ規模の大きな街が見えた。
「ヨラヒムって今どんな感じなんですか?」
白いフード付きマントで顔を隠し、匍匐前進で崖へと近づきながら、トーラが尋ねた。
「一応、人里としてはまだ機能していると思う。もう『街』と呼べる規模ではないかもしれないけど。……一応最初から説明しましょうか。帝国西部鎮護都市ヨラヒムは帝国魔導院があった都市だったから、帝都崩壊の日、街に『幽界分樹』が生えたわ。ヨラヒムはこの時、一度滅んだ。分樹の黒い霧、分樹と一緒に湧いた大量のクリーパーのせいね」
「……」
冒険者達は皆集中し、ユズリハの言葉に静かに聞いている。
「かつての皇帝ヨゼフ派……いわゆる帝国過激派がヨラヒムに辿り着いた時、街は城壁も破られてクリーパーの巣窟になっていた。この時、『西部鎮守都市なら皇帝の仮住まいに相応しき格がある。ここを本拠地とする!』という皇帝の号令で、私達はヨラヒムを奪還するためにクリーパー達に戦いを挑んだわ。これが、皇帝がシグモルに出陣するよりも前の話」
ユズリハの言葉に、かつて南部鎮守都市ヴィント奪還作戦や、東部鎮守都市エスタルでの幽界分樹との決戦、そして、シグモル火山帯での火神ボルカニスクと人造授恵者を巡る戦いに参加した者達は息を呑む。その時、グレイブ・ヤードが口を挟んだ。
「激しい戦いだったのでしょうね。ですが、その時期ならば先帝派は幽界樹の黒い霧が効かない先帝ヨゼフ・バルダスに加え、マクシミリアン連隊長を含む帝国近衛連隊の強者や、宰相バルバスティン、ザフィーアやアルルカンなどの宮廷派閥の授恵者など、強力な戦力を有していたはずです。恐らく、犠牲はそこまで多くはなかったのでは?」
「ええ。その通りよ。前線に出た授恵者にはそれなりの犠牲は出たけど、帝都から逃げ延びた非授恵者のヨゼフ派も生き残れる程度には、私達は余力を残して勝ち、ヨラヒムを奪還できたわ」
「なるほど。……続きをお願いします」
グレイブに促され、ユズリハはヨラヒムについての語りを続けた。
「そしてヨラヒムはヨゼフ派の本拠地となった。破壊された城壁も修復して、かつて人口規模はかなり小さくなったけど、再び街として機能しだしたの。……で、その後はシグモルでの戦い、フィルエス大森林での戦い、ディズルでの近衛連隊の切り捨てと、ヨゼフ派はだんだん数を減らしていったわ」
(戦いだったものね。殆どの過激派と分かり合えなかったことは残念だけど、私達にも譲れないものがあったから)
ユズリハは淡々と述べる事実を、ロゼットは神妙な表情で聞いていた。
「そして、征竜と同盟を結んだヨゼフは帝都でイ……イ……名前が出てこないな……ええと、『国賊の女』とレイウェスト派に最後の戦いを挑んだ。あの戦いで戦力を出し惜しみする意味はないから、ヨゼフ派の総力を投入していたはず。つまり、ヨゼフ派の授恵者はほとんどが帝都で散ったことになる。
だから、ヨラヒムにはほとんど人は残ってないはずなのよ。残ってるのは非授恵者の皇帝の召使いとか、食料生産者とか、弱い魔獣相手ならなんとか戦える、戦闘に向かないクラスの授恵者とか……束になってもこの人数の冒険者と戦いになるような人達じゃない。……と、ここまでが今のヨラヒムについての、私の見解」
ユズリハはそこで一度言葉を切った。
「なんだけれど、一つ無視できない情報があるわ。帝国軍の斥候が、ヨゼフが死んだ時にまとまった人数で帝都から撤退していくヨゼフ派の一団を目撃している。もしかしたら、そいつらはヨラヒムに引き返していて、今も潜伏しているかもしれない」
「誰なんだ、そいつら?」
ハヤト=ガラン=ヴォルファングがチョコレートをかじりながら尋ねた。
「帝国近衛連隊中隊長ダハーカの一派。ディズル大湿地帯での皇帝の帝国近衛連隊切り捨ての際に多くの部下を見捨ててヨゼフの下に残った、かつての私の上官よ」
ユズリハがかつて仕えた男の名を告げると、ディレイン・オールドケイジとレピド・クロサイトが反応した。
「その名前、前に一度聞いたな。ディズル大湿原に変態仮面を送った雇い主だね」
「ここでまた奴の名を聞くことになるとはな(注:変態仮面は奴の名ではない)。当時は何でいるんだと思ったが……確か、あの男雲霞鳥の氾濫の時のどさくさで魔獣を操る力を持つ神具の仮面を盗んで逃げた、と聞いた。ギシュム族の教練は表向きの仕事で、神具を強奪することがあの男の本当の任務だったんだろう。……なら、魔獣を操る力を持つ男がヨラヒムいることも想定するべきだな」
冒険者達は、ヨラヒムで帝国過激派残党との戦いになる予感を強く感じていた。
●
山の上からも、ヨラヒムの門の周辺は除雪がなされていることを確認できた。それはつまり、今もヨラヒムには人が住んでいることを意味する。冒険者は日が沈むのを待ち、ヨラヒムへの潜入作戦を開始した。深夜までは待たなかった。人がまだ活動している時間帯の方が、プルートの捜索には都合がいいからだ。ヨラヒムに侵入するのはレピド、トーラとユズリハの栗鼠の二人+一匹のみ。残りの5人の冒険者とユズリハ、そしてギシュム族のサラマンダーは囮役の手はずである。
「狼の魔獣がたくさんうろついています。恐らく猟犬代わりでしょう。気付かれないように森を迂回しながら進みましょう」
ナハト・シュライバーの言葉に冒険者達は頷く。二手に別れた冒険者達は最大限に周囲を警戒しながら、ヨラヒムへと近づいていった……。
●
(皇帝も宰相も亡き今、過激派が一矢報いようといまだに徒党を組んでるのはまだわかる。
でも足手纏いにしかならない子どもを囲い続けるのはどうしてなんだろ。何か企んでるなら阻止したいところだけど……まずは子どもの救出が先かな。……宰相と戦った時よりはマシだといいなあ)
ディレインは宰相の鉄拳で死ぬ寸前まで殴られた時のことを思い出し、腹をさすった。
「子を想う母親の願い……叶えてやらないとな」
普段とは違う真っ白な外套に身を包んだレピドは、トーラと共に裏門から少し離れた場所で待機していた。平時ならば、門の内側にも敵がいるはずだ。陽動が敵の注意を引き付けるまでは、しばらく待つ必要がある。
●
キィイイイイイン……。
(何の音だ……?)
風を切って何かが飛んでくる音を、ハヤトとディレインは聞いた。城壁まではあと百メートルほど。射手のみが攻撃を許される間合いだ。
「気を付けろ! 森の方なんか来る!」
「みんな、森から何かが――」
二人が警告しようとした次の瞬間、轟音と共に巨大な光弾が降ってきた。光弾は冒険者達の手前で炸裂し、先頭にいたハヤトとユズリハを襲った。ハヤトはなんとか身を翻したが、ユズリハは避け切れずに巻き込まれ、深手を負った。
「ごめん、ドジッた……」
「今の投石器みてえな狙撃は並みの腕じゃねえぞ……こんな奴がまだ帝国過激派に残っていたとはな」
ハヤトは『矢』が飛んできた方をギロリと睨みつけた。
「――過激派、という犯罪者じみた呼称は好きではございませぬ。我らの刃には一点の曇りはなし。誇り高き帝国近衛連隊は皇帝陛下の『剣』であり、『矢』であるがございますが故に」
木々をなぎ倒し、大きく抉られた森の奥では、黒衣を纏った獣人が弓を放った姿勢で立っていた。
「ルフ兄様!」
森に隠れていたナハトは思わずその名を叫んでしまった。その姿をナハトが見間違うはずもない。その男こそはナハトの実兄にして、『千里眼』と謳われた帝国近衛連隊兵。ターゲスアンブルフ・シュライバーであった。
――もしかしたら、とは思っていた。あの戦いの後、ヨゼフがいた戦場でルフ兄様の遺体は確認できなかった。あの規模の戦いでは、死体が消し飛んでいても不思議はなかったのだが、ナハトは心のどこかで、兄の生存を期待していた。
「まだ……生きておられたのですね」
「今すぐここから引き返すんだ、ナー君」
ターゲスアンブルフは冷たい声音でナハトに応じると、新たな矢を放つべく、エーテルの塊を手の内に生み出した。
バァン!
その瞬間、ヨラヒムの城門が内側から勢いよく開け放たれた。中から出てきたのは、巨大な像に乗った獅子の仮面の男と、4本の腕や獣の脚などのキメラの肉体を持つ、十二人の異形の兵士達だった。そして、兜の隙間から覗く兵士達の目は、一様に紅かった。
(プルートらしき子供はいないですね。まあ、当然ですが)
とりあえず敵に捜索対象が混ざっていないことを確認し、グレイブは安堵した。
「吸血鬼ですって……! しかも、改造されてる……!?」
ロゼットは目を細める。彼らはどうやら、強くなる為に外法に手を染めてしまったようだ。
(グリゼルダのキメラゾンビによく似ているわ。彼女から技術供与でも受けたのかしら)
「ようこそ、西部鎮守都市ヨラヒムへ! その統一感のない武装……帝国の斥候ではなく冒険者達だったとはな! ここまでは『千里眼』にも読めなかったか」
象の背に乗った獅子仮面の男――ダハーカ中隊長はハイテンションに叫んだ。
「ここまで来て、尻尾を巻いて逃げる気はないのだろう? ならば、我ら『シン・シルトラース』の恐ろしさを眼に焼き付けて死んでいくがいい! 総員! 戦闘開始!」
――ウオオオオオオオッ!!
ダハーカが号令を発すると、吸血鬼達は一斉に突撃を開始した。
「うるぁ! ブレイブファング傭兵団のハヤト様が相手になってやんぜ!!」
ハヤトは大地を蹴り、敵の先頭にいたダハーカに向かって突進した。とはいえ、ダハーカは巨大な象の魔獣の背の上にいる。攻撃を加えることは容易ではない。
(この、ダハーカとかいうおっさんが大将だな。まずはこいつを象の上から引きずり下ろす!)
「俺がヨゼフに直接引導を渡したハヤト様だ! テメェも仲良くヨゼフのとこに送ってやんぜ!!」
ハヤトは敵を自分に引き寄せるために大声で叫ぶと、魔象の腹の下に滑り込み、双刀で一突きにした。象にとっての死角から放たれたその一撃は、分厚い腹の皮膚を容易に突き破り、体内にまで到達した。
(さすがに象の内臓の位置までは分かんねーが、今のは効いたはずだ!)
『パォオオオオオオオオオオオオオ!!』
激痛に魔象は嘶き、前脚で立ち上がろうとした。
「静まれ! 静まるのだヨゼフィー!」
ダハーカが手綱を引きながら一喝すると、魔象は大人しくなった。
「ここから立ち去る気はないのでございますね。ならば、僕は今は亡き皇帝陛下の矢となりましょう」
ターゲスアンブルフはそう呟き、第二矢を放った。放たれた矢はロゼットの肩に突き刺さり、彼女に小さくない傷を負わせた。
「アォオオオオ――ン!」
遠吠えと共に、ヨラヒムの内外から白い狼の魔獣が集まってきた。その数、数十。やはり神具でコントロールされているのか、狼たちは吸血鬼たちは無視し、冒険者達だけを獲物と見定めているようだ。
「ヨゼフ皇帝はもう居ないわ! 玉砕なんて真似は止めて投降しなさい!」
ロゼットは叫ぶと、吸血鬼の群れへと飛び込み、祭棍を力任せに振り回した。魔象ごとダハーカを光縛封に閉じ込めることも考えたが、大きすぎて魔象は結界からはみ出そうだったので断念した。
「ふっ!」
ロゼットの薙ぎ払いの軌跡に巻き込まれ、吸血鬼の二体が吹き飛んだが、殴られた吸血鬼たちは笑っていた。
「フハハハ! おかしなことを! 玉砕!? 我らは、確固たる意志と目的を前にここにいる!」
(戦意を失ってない。自棄になってる訳じゃないなら何か目算が……?)
「そこから降りてきてください、ルフ兄様!」
ナハトは十二体の吸血鬼の群れに向け、貫通衝撃射を放った。敵の目前で破裂した矢は三体の吸血鬼をずたずたにしたが、一人も仕留めるには至っていない。
(ヨゼフが死んで、帝国が再興に向けて新たな一歩を踏み出そうとして尚……何をされようとしているのか。僕は、確かめなければいけない)
「く、こやつら、噂に聞く吸血鬼か! 腕が四本あるとは面妖な……!」
サラマンダーは腕が四本ある吸血鬼の一体に体当たりし、城壁まで吹き飛ばした。
「うおおお! 皇帝陛下の仇を討つぞっ!」
「待てっ! ハヤトは陽動だ! 後ろに控えているヒーラー共を先に落とせ!」
「「……了解であります! 偉大なるダハーカ中隊長殿!」」
ダハーカの号令に従い、吸血鬼兵達は迂回してディレインとグレイブの方に突っ込んできた。
「このままここで戦うのはこちらが不利です! 狙撃は怖いですが、森に逃げ込みましょう!」
「よっしゃ! 殿は俺に任せろ!」
グレイブが閃光塗弾を敵へと投げつけながら叫ぶと、ハヤトは即座に反応した。グレイブたちの目的は敵の陽動である。白狼達を含め、敵の大半は城門の前に集まっているはずだ。ならば、何も真正面からやり合う必要はない。
カッ。
白い閃光が炸裂し、吸血鬼や狼達の目が眩む。
『パォオオオオオオオオオオオオオ!!』
「静まるのだヨゼフィー! ただの音と光だ!」
魔象が閃光で驚いてしまい、ダハーカはまた魔象から墜落しそうになっていた。
(何故ここに過激派がいるのか。彼らの掲げる先帝ヨゼフ・バルタスは討ち取られている。なのに彼らは何故殉じない? 帝国の国是である能力至上主義から言えば力が足りず追い落とされているという事になるが、そこまで敬愛しているというのに?)
グレイブはやはりヨラヒムに潜んでいたダハーカ一派の行動原理について考察していた。彼らは明らかに皇帝への忠義は捨てていない。だが、それならばなぜあの場で死ぬまで戦わなかったのか、グレイブは疑問を抱いていた。
(彼らの目的は何だ。レイウェスト皇子や冒険者ギルドへの復讐を企てていると考えれば一応の筋は通る、が……それも違う気がする。シュライバーさんの兄は『引き返せ』と言った。復讐者ならば、ヨゼフを討ち取った我々を決して見逃しはしないはずだ。ならば……『討ち取られている』という結果を覆す、何かがここにあるとでもいうのかね。……ホムンクルスのような)
「みんな、気を付けて。思ってたより敵の数が多い!」
ディレインはユズリハにヒールをかけると、共に森の方へと下がっていく。狼も含めれば、敵の数はこちらの数倍だ。レピドとトーラが別行動な今、数の差は10倍近い。時間稼ぎに専念すべきだという案には異論はなかった。
「閃光とは小癪な真似を……!」
ダハーカはグレイブに大口径の弩を向け、引き金を引いたが、数秒では閃光から回復できなかったのか、矢は外れた。
「逃げ帰るのかね、ユズリハ。貴様とターバスが雪百合の街での任務をちゃんと果たしてさえいれば、この弩ももっと強化できただろうなあ。あの時はガッカリしたぞ。ガッカリし過ぎて、ディズルでマクシミリアン達を皇帝陛下が切り捨てられるご決断をなされたことを、うっかりお前に伝え忘れちゃったほどだ」
「この、クソ野郎!!」
「ユズリハちゃん。気持ちは分かるけど挑発に乗らないで!」
ディレインは激昂するユズリハを窘めながら、一緒に後退していく。
(あの|変態仮面2号、なんとも不気味な雰囲気だな……言ってることがどこまで本気なのかさっぱり分かんない。一体何を企んでるんだ……?)
●
冒険者達がダハーカ達と激闘を繰り広げている頃、レピドとトーラはヨラヒムへの侵入を果たしていた。レピドがトーラをおんぶして城壁を『壁歩き』でよじ登ったので、裏門の内側にいた見張りにも気付かれずに中に入ることができた。二人は二手に分かれ、プルートの捜索を開始した。レピドは聞き耳、トーラは宗波で周囲の気配を探りながら、ヨラヒムを進んでいく。立派な都市だが、驚くほど人の気配は少なかった。
「人の声が一か所に集まっている……集団で生活しているのか?」
人の声がすることに気付いたレピドは、大きな建物へと近づいていった。トーラも同じ建物を怪しいと思ったのか、近くで見かけたので二人はまた合流した。
「レピドさん。子供の声、聞こえますか?」
「ああ、聞こえる。プルートかもしれない」
二人は子供の声が聞こえる部屋へと、窓をこじ開けて侵入した。
「誰……!?」
中にいたのは、金髪の少年と、若い侍女だった。二人に気付いた侍女はプルートを背中に隠し、短剣を構えて叫んだ。
「曲者! プルート様、お逃げ下さい!」
「待ってください! 武器を捨てて下さい!」
「「!」」
トーラは大声を出して侍女とプルートを威圧した。すると、二人は恐怖のあまり、失神してしまった。
「トーラ……いくらなんでも脅かし過ぎでは?」
「すみません、加減ができなくて……」
二人は気絶した侍女と少年を担ぎ上げ、すぐに窓から脱出した。
●
「森に逃げた連中を追うのだ! 一人でも捕まえれば人質交渉ができるかもしれない!」
「どうした? かかって来いよ。腰抜け共が! 征竜から落っことされて死んだ、間抜けなヨゼフの仇はここだぜ?」
「皇帝陛下への侮辱、万死に値する! だが、あえてスルーしようじゃないか。我らの大義の為に」
(この仮面野郎、ずいぶん冷静じゃねえか。元帝国近衛連隊の中隊長なだけのことはありやがる……)
森へと後退していく仲間達の殿を務めていたハヤトは、敵の隙間をすり抜けるように雪上を駆け抜けた。一瞬遅れて血の花が咲き、4体の白狼が胴を裂かれて大地に崩れ落ちる。この中で一番強い敵は恐らく魔象かダハーカなのだろうが、今は敵の数を減らすことが最優先だと判断したのだ。また、『ヨゼフを討ち取ったのは自分だ』と公言したにも関わらず、敵がダハーカの指揮に従い、戦力をきちんと分散させていることも気にかかった。ハヤトはダハーカを足止めした状態で白狼の群れに包囲されているが、吸血鬼達はしっかり森に逃げ込んだハヤトの仲間達を追いかけに行っている。
(あの仮面をぶっ壊せば魔獣はコントロールできなくなるかもだが、戦いながら象の上によじ登るのはさすがに難しいな……。神具らしいし、どの程度硬いかも分からねえ)
「貴様はもう少し狼の群れと戯れていろ。仲間のはらわたを引きずり出してやる」
ダハーカはそう捨て台詞を吐くと、魔象を駆り、自身も木々をなぎ倒しながら森へと突っ込んでいった。
「あんにゃろ、逃がすかよ!」
●
(ルフ兄様……僕は狙わないのですね……)
ナハトは木々の隙間に身を隠しながら、森に入ってきた吸血鬼に対し、貫通衝撃射を仕掛けていた。放たれた矢は木々を吹き飛ばし、吸血鬼達に手傷を負わせた。時折兄が放った矢が飛んできたが、どうやら自分だけは狙うつもりはないようだ。
グレイブとロゼット、ディレインはサラマンダー、ユズリハと共に行動し、ナハトの射線にうまく敵を誘導しながら戦っていた。だが相手は十二体に対し、こちらは五名。冒険者達はあくまで、時間を稼ぐことだけを考えて戦っている。幸い、隠れやすい冬の森の地形と、グレイブの閃光塗弾は時間稼ぎにはうってつけだったし、ヒーラーの比率が高いのも時間稼ぎには有利な点だった。
●
「やはりまだ戦っているようだ、急ごう!」
「はい、目的は果たしました。これ以上戦う必要はありませんから」
レピドとトーラはユズリハのペットの栗鼠の後を追い、森へと走っていく。二人の背には意識を失ったプルートと侍女がおぶわれている。あとは、プルート(とついでにヨラヒムの内情を知っているであろう侍女)を依頼主に引き渡せば、任務は完了だ。
「動物王国はもう終わりか? さっさと降りて来いよ!」
「やってくれたじゃないか! ハヤト君! この魔獣達を調教するのは大変だったんだぞ。皇帝陛下を討った、というのもまんざら出鱈目ではなかったようだな」
白狼の群れを一人で全滅させたハヤトは、森の入り口に入ったところでダハーカの狩る魔象と激しく戦っていた。だが、未だにダハーカは無傷のままであり、魔象も激しく傷ついてはいたが、まだ存命だった。
(中隊長殿。どうやら弟たちは陽動であったようでございます。プルート殿と侍女を背負った冒険者が逃げていきます)
(なんだと?)
ハヤトと交戦している最中にテレパスで呼び掛けられたダハーカは目を丸くしたが、突然、大声で怒鳴った。
「総員! 集合ぉおおおお!」
「な、なんだ!?」
ハヤトは敵の奇行に一瞬困惑するが、彼の体は反射的に動いていた。
『ブオオオオオオオオオ!!』
前脚を深々と貫かれた魔象はズシン、と音を立てて崩れ落ちた。だが、いつの間にかダハーカは魔象の背から消失しており、部下達と共に森の一か所に集まっていた。
(消えた……? 違う! 吸血鬼の霧化能力だな)
「どうやら貴様ら全員囮だったようだな。まんまと騙されたわ。まさかイネスの息子を取り戻しにきたとは、予想外だった」
冒険者達は固唾をのみ、ダハーカ達の様子を注視している。
「イネスの息子は望み通り貴様らにくれてやる。貴族の生き残りである彼には帝国再興の要となってもらうつもりだったが……それに固執してこれ以上貴重な戦力を失うわけにはいかん。このまま退くなら、この場は見逃そう」
ダハーカは油断なく剣を構えたまま、停戦を申し出た。
「それと……ナハト君だったかな? お兄様からの伝言だ。『……さようならだ、ナー君。……もう我々には関わるな』……だそうだ」
「ルフ兄さん……」
その言葉を聞き、ナハトは項垂れたが、すぐに敵に視線を戻した。
「……帰りましょう。イネスからの依頼は果たしたわ」
ユズリハの栗鼠が足元に来ているのを確認したロゼットは言った。こうして、冒険者達は『シン・シルトラース』との戦いを中断し、帰路へとついたのだった。
●
「この子がプルートさんです。名前を呼ばれていましたから間違いないかと」
トーラは合流した仲間に、プルートを確保したことを報告した。
「良かった。ちゃんと生きてたんだね。……そっちのメイドさんは誰?」
「トーラが失神させてしまったので、つい連れてきてしまった。そういえば、この人は別に置いてきてもよかったかもしれないな……」
ディレインの問いかけに、レピドは目を泳がせた。
「いえ、プルートさん以外にも、ヨラヒムの現状を証言してくれる大人がいた方がイネスさんにとっても帝国にとっても都合がいいでしょう。むしろファインプレーではないかと!」
トーラは慌ててレピドをフォローした。
「依頼が果たせて何よりね。……でもいくつか気になることがある。ダハーカ達は自らを吸血鬼と化していた。ヨラヒムの中にいた人達は、無事だったのかしら?」
ロゼットはレピドとトーラに尋ねた。
「分からない。じっくり街を回る時間はなかったからな」
「同じくです。余裕があれば武器庫も破壊したかったのですが……。ただ、吸血鬼は生きていく為に血液が必要なはず。こういう言い方はあまりしたくないですが、街の人は食糧として生かされていたんじゃないでしょうか」
レピドとトーラが答えると、空気が重くなった。
「ルフ兄……僕の兄も吸血鬼ではなかったと思います。街の人が全員吸血鬼化してしまったらそれはそれで弊害も出るでしょうし、吸血鬼化していたのは少数だったんじゃないでしょうか」
ナハトはそう付け加えた。
「あれは私も驚いたわ。吸血鬼になったのは、ディズルでの一件より後のことだと思う。たぶんメドゥの右腕と接触して、本人か眷属に吸血鬼にしてもらってたのね」
ユズリハはダハーカが吸血鬼であることは知らなかった、と釈明した。
「まあ、なんにせよ、実際にヨラヒムに住んでた二人に聞いた方が早いかもな。せっかくレピドがうら若きメイドさんを誘拐してきてくれたんだしよ」
ハヤトは自分が背中に背負っている侍女を指差した。
「う~ん……」
侍女よりも先に目を覚ましたのは、プルートの方だった。プルートが目を覚ました時、彼はディレインと手首をロープで結ばれた状態で彼におぶわれていた。
「起きた? 頭とか痛くない? ごめんね。おじさん達は君やメイドさんを傷つけるつもりは全くないんだけど、暴れられると危ないからちょっと拘束させてもらった。冬の山道だしさ」
ディレインはすぐに足を止め、プルートを地面に降ろした。プルートはばっとディレインから距離を取り、懐を探ったが、すぐにナイフが取り上げられていることに気付いた。
「……悪いが、ナイフは預からせてもらった」
レピドは淡々と告げた。
「……イオナはどうしました? 僕の側に侍女がいたはずです」
「イオナ……? ああ、メイドさんならハヤト君がおぶっているよ」
ディレインが指差した方向には、メイドをおんぶしているハヤトがいた。
「お、ボウズ、起きたか。安心しろよ。このメイドさんに危害は加えてねえ」
「プルート。私達はイネス……貴方のお母さんに頼まれて、貴方を探しにきたのよ」
ロゼットは腰を落とし、プルートに優しく話しかけた。
「嘘をつくな! 母は、帝都で死んだと聞いた! レイウェスト・バルダスやその手下たちから、皇帝陛下を守って死んだと!」
プルートは叫んだ。その目は怒りに満ちている。
(やっぱり、何も知らされていないのね。彼には私達がお母さんの仇に見えているんだわ)
ロゼットは悲しげな目でプルートを見た。
「俺達は嘘をついていない。これがその証拠だ」
レピドは懐から一枚の手紙を取り出した。出発前に、イネス本人に書いてもらった、息子宛の手紙だ。
「読んでみろ」
「……!」
プルートはひったくるようにレピドから手紙を受け取る。そして、夢中で手紙を読んだ。
「確かにこれは母上の筆跡だ……」
イネスの手紙には、帝都で起こったことが全て書かれていた。そしてイネスが我が子を守るために、大罪人となることを覚悟の上でディズル大湿地帯での任務に臨んだことも。
『強く生きなさい。もう二度と会えないかもしれないけれど、母はいつもあなたのことを想っています』
手紙の最後はそう結ばれていた。
「母上……! 私の為に、貴方は……」
プルートは母の手紙を握りしめ、大声で泣いた。
「なぜそんな顔をしているんだ、ディレイン?」
「おじさん、こういうのには弱いんだよ、レピド君……」
「さ~て、イネスの息子を見つけた報酬はパフパフ何回にしよっかな~♪ ムフフ♪」
「プルートさんの教育上よくなさそうなので、ハヤトさんはここに置いて行きませんか?」
「うん、私も賛成」
ハヤトの言葉に、トーラとユズリハは冷たい視線を送った。
●
プルートと一緒に拉致されたメイドのイオナは目を覚ました後、プルートと同じ話を聞かされ、プルートと共に冒険者達に投降した。元々彼女はイネスの知り合いだったようだ。
「イネス殿のことは私にお任せ下さい。極刑は免じられるよう、必ずや、アシムベート殿や長老方を説得してみせます。我らリザードマンは同胞の絆を何より重んじる。イオナ殿とプルート殿の証言もあれば、心を動かされる者は必ずいるはずです」
イネスの手紙を握りしめたサラマンダーは、涙の滲む目でプルートの肩に手を置いた。
●
「イオナさん。貴方にお伺いしたいことがあります。『シン・シルトラース』と言いましたか。彼らはヨラヒムで一体何を計画していたんです?」
グレイブが侍女へと問いかけると、イオナは首を横に振った。
「私も、詳しいことは知らされておりません。何しろ極秘の計画でしたから……ただ、あの方々は『北壁山脈』に向かう準備をしておりました」
「え……北壁山脈、ですか?」
まさかここでその名前を聞くことになるとは思わなかったトーラは目を丸くした。
「北壁山脈とは確か……」
レピドの言葉に、トーラは頷いた。
「はい、帝国北東部から、ヨルド氷雪帯……すなわち『極北』に行く時に通過する場所です」
●
トーラ達はヨラヒムで起こったことを報告書にまとめ、シルトラース帝国に提出した。帝国上層部はヨラヒムにまだ組織だったヨゼフ派が残っていたことに驚いたが、冒険者達のもたらした情報に深く感謝した。そして、イネスの息子プルートは、ディズル大湿地帯で待つイネスの下に送られた。
「プルート! プルート! 生きていたのね! 会いたかった!」
「母上! 生きて……生きておられたのですね!」
わずかな時間ではあったものの、イネスは息子と面会が許された。
「イネスの言葉は真実であったようだ。その罪は重いが、冒険者達の助命の歎願と、イネスの息子に免じて、極刑は免じてやるべきだ」
リザードマンの長老たちはそう判断した。具体的な刑罰については帝国とも相談して決めることになるのだろうが、強力な授恵者であるイネスは、恐らくその戦闘力を生かした懲役刑になるだろう。
ナハトの兄ターゲスアンブルフやシン・シルトラースの目的……いくつかの謎は残したものの、冒険者達は、見事イネスの親子を救うことに成功したのだった。
マスターコメント
ロングシナリオ難しい 報酬:多い7 / 6〜12人
2024年02月26日 14時45分59秒 公開
相談掲示板
【誤記修正のお知らせ】 お世話になっております。イネスの息子の年齢の表記が誤っておりましたため、予約受付期間中に修正しております。この度は申し訳ありません。 (誤)10才 (正)7才
さて、何とかしたいところではありますが ヒーラー、グレイブ・ヤードです。 頑張りましょうか
ヒーラーの神官ロゼットよ。よろしくね。 私たちの目的はイネスの息子さんを捜索すること。 ヨラヒムの街自体は敵地ではないようだけど、 どこに過激派の目があるか分からないから騒ぎは起こさず、 過激派の動向やプルートの所在を探る感じになるかしら? 道中の過程は省略、道案内もいるなら行動はヨラヒムの街で どう動くかに絞って良い感じかな。
シューターのナハトです、よろしくお願いします。 道中というのはヨラヒムの街近辺までではないかという認識でした。 なので街に入るところからイネスさんの息子さんを探すまでに、想定される敵戦力をどう捌くかが問題になるかと。 PL情報ではありますが、ヨラヒムの街に近づくとどうしても兄や狼達に補足されて騒ぎになってしまいそうな印象です。 シューターのペットによるエーテルリンクが1番目を掻い潜り易いかもしれませんが、ある程度街に近づく必要はありますし……シーフの方が来て下さるなら敵の姿を模倣して紛れ込むなども出来るかと。 あとは敵の相手をしながら後退したように見せて敵戦力を幾らか街から引き離し、その間に別働隊が街中に入って調査するとかでしょうか?
ヒーラーのディレイン・オールドケイジ。よろしく。 ユズリハちゃんの顔はもちろん割れてるだろうから、彼女の姿をどうにかカモフラージュできたらいいんだけどな。 あと、プルート君を見つけたとして、母親が亡くなったと信じてる彼を救出しようとしても拒否されそうだなあって思ったよ。イネスからのメッセージを何か持って行けたらいいんだけど…出発前にサラマンダー君に頼んでおくとかできるかな?
私もヨラヒムまでの道中の話かとは思っていました。 (でないと街中でうーがおー状態すぎてえらいことになりそうなので) ただ相手があちらの支配下の魔獣のみですよというくらいで (出ない相手にクリーパー関係の記述が含まれているので)
シーフのトーラです。 よろしくお願いします! 複数の狼の魔獣と千里眼と呼ばれるシューター相手に発見されない事は困難でしょうし、内部への潜入よりヨラヒム迄の道を調べて帝国の軍の進行を助けるということではないかと。 ただ、出来ればプルートさんの所在を確認するなどしてこの先に繋げる行動を取っておきたいですね。
あーなるほど、やっとわかった。 ヨラヒム到着までね。 兵は冬の森に溶け込む白い装備。狼は嗅覚が鋭い。奇襲を受けるだろうと想定するくらいで動いたほうがいいのかなあ。
ダハーカの「陛下の仇を討ちたいのは山々だが、我らには それよりも先に為さねばならぬことがある」の台詞を読んで、 迎撃には出てこないのかと思ってしまったわ。失礼。 そうすると、出来る出来ないを無視して考えるなら。 ・A案 敵戦力との遭遇を回避し、ヨラヒムに到着してプルートを探す。 (魔獣の嗅覚、『千里眼』の目から逃れるのは難易度が高い) ・B案 敵戦力を全て撃破し、ヨラヒムに到着してプルートを探す。 (敵の強さ、帝国兵の人数:不明もあり、勝利の難易度は高い) ・C案 敵戦力と一戦、前進と後退で街から引き離し、別働がプルートを探す。 (戦う方も探す方も少人数でこなす必要があり、難易度が高い) ざくっと、3パターンあたり? 人手がいりそうだけど、C案がまだ現実的なのかしら。 戦力を調べるための威力偵察みたいに思わせて、時間を稼ぐうちに イネスからの手紙か、使者と分かる証拠を持ってプルートを探す?
ちょっと気になるのは、あちらはこちらの目的を正確に把握しているかどうか、ですかねぇ。 いえ、OPのみだと「追ってきている(捕縛あるいは討伐しに来ている)」と捉えていそうというか。 >あちらの目的に関して ちょっと気になったのですが、ヨラヒム付近で何か出来そうな、というとかなり大雑把ですが、仕込みなどが出来そうな技術あるいは存在ってありますかね?関係しそうな事件情報とか >案としては C案ではないですかねぇ? 居るかどうかはわかりませんが、繋がる手がかりがあればとは思います。
ロゼットさんの挙げてくれた案は、わたしもCが良いと思います。 わたしは別動隊としてプルートさんを探そうと思います。 それで、温度耐性を持っていく方はいらっしゃらないでしょうか? 習得してみたんですけど、看破と隠蔽で枠が埋まってしまうので、もし持っていく方がいたらエーテルイミテイトで模倣させて頂けないでしょうか?
>こちらの目的(プルート捜索)に気づいているか さすがにまだ気づいていないと思うわ。 後々の帝国による残党討伐のための、偵察と思っていそう。 >過激派残党の企て想像 ヨラヒムの街が登場したこと自体、無いんじゃないかしら? >温度耐性 習得してはいるけど、方針や役割でもう少し保留にするわ。 >C案 敵戦力と一戦、前進と後退で街から引き離し別働がプルートを探す。 この案の場合、同行者のユズリハも別働側になるかしら? 街の位置や、過激派の潜伏先についても把握しているのならだけど。 同じく同行者のサラマンダーは、引き付け役の方で良いかな。
>目的関係 これによってあちらの動きも変わってくると思うのですよね。 しかし彼らにとっては本当にとばっちりといえばとばっちりですよねこれ (目的が嚙み合ってない意味で) こちらとしてもある意味想定外の接触というか。 >ヨラヒム関係 そうだとすると、ヨラヒム出身でもない限り、ユズリハさんから聞く以上の地の利はまずこちらにはないという前提として考えていいですかね。 >防寒 マントとか暖かい飲み物などを準備して冷えすぎないように注意するつもりではありますね。 温度耐性も考慮はしますが・・・長期運用は少し怖いかなと、あくまで文字通りの耐性ですからね。 >行動に関して ユズリハさんはむしろ本隊にいたほうがあちらを「釣りやすく」なるような気もします。 あちらの想定する斥候部隊としてはほどほどに知られている(想定できる)存在でもある、と思えますし。
僕もC案で。 同行者に関してはユズリハさんは別働で街の方へ、サラマンダーさんは惹き付けをお願いする形で良いと思います。 >こちらの目的に気づいているか 恐らく気付いてはいないでしょうが、プルート君へ接触したら流石にばれそうですね。 >温度耐性 他に持っていく方がいなければセットしていきましょう。 >個人行動 悩ましいのですが、惹き付けの方に回ろうかと。 千里眼と白狼の魔獣対応を主眼において別動隊が捜索できるよう支援したいと思います。
ああ、でもシーフの方だけの方が別働の方は動き易いですかね? その場合はグレイブさんの仰るようにユズリハさんは惹き付けの方にいて貰った方が良いかもしれません。
C案に異論はないよ。 おじさんは隠れるのは苦手だから、引きつけの方にしようかなと。 一応、防寒具としてのマントは持ってくよ。 別動班、シーフふたりでは…と思ったけど、ハヤト君とトーラちゃんならむしろ身軽に動けそうだね。
レピド・クロサイト、シーフだ。人手がいりそうなのと個人的に行く末が気にもなったので参加した。よろしく頼む。 >温度耐性 夏場の着ぐるみに耐えられるように取っていたから、必要なら持っていこうか。 逆にエーテルイミテイトでトーラの隠密をコピーさせて貰えると助かる。 >防寒 普段着ている外套があるからつけていく。 ……そういえば直球の「防寒着」って売ってないんだな。 >C案 基本方針に異論はない。 ユズリハに関しては……容姿を頑張って誤魔化すよりは引き付けで目立って貰った方がやりやすいのかな、とは思った。
レピドさん次第ですが、ユズリハさんとサラマンダーさんは陽動の方へ行って貰えたら。 ペットのリスはエーテルリンクしてあるのであれば連絡などにも有用ですし。 >レピドさん 隠蔽の模倣は大丈夫ですけど、エーテルイミテイトのテキストを見るにレベルは1として扱うようなのであまり効果は期待できないと思うのですが大丈夫でしょうか? 防寒はマントも持っていく予定ですけど、目立たないよう雪中に長時間いる可能性を考えると出来る限りの対策をしておきたいのでどなたかに温度耐性を模倣させていただけたら…。
私は潜入には不向きだし、敵の引き付けね。 もう手は挙がったけど「温度耐性」はセットしておくわ。 >敵戦力への対応 勝つことは目的ではないけど、あっさり負ける訳にはいかないわ。 敵の『千里眼』は、ナハトが縁があるなら主に対応してもらって、 白狼や帝国兵、ダハーカと魔象を何とかしないといけないわね。 特にダハーカは射程0では攻撃できず、魔象は相当に頑丈そう。 この敵への対応は、何かしら考えておかないと大変そう。 私は、普段は近接前衛なのだけど象の相手にまわるか、 帝国兵の牽制にまわるか、もう少し様子を見ているわ。 >ユズリハの配置 彼女はヨラヒムへの道案内でもあるから、分かれる地点によっては 別働側が街に着けなくなりそうな不安があるけど、大丈夫かしら? そこだけ心配がないなら、引き付け側でも構わないわ。
>道案内 これについては、あくまで私の考えですが「ユズリハさんはヨラヒムに入る時の身分保証役」みたいなものだと考えていました。 それなりの都市ですから、何らかの形で承認を得ないとで待たされるとかそういった手続きを省略する意味での「道案内役」だったかなと。 流石に見失うとか探すのが難しい位置にあるとは思いづらいのですが・・・。とはいえ実際はわからないのですけども >対応について 仲間を呼ばれそうな狼系に関しては・・・エリアサイレンスでも準備してみましょうか。 1m程度ですが、その中であれば音を遮断できますし。 嗅覚だけはどうしようもありませんけどね。 >配置 引付側を予定しております。
明後日が出発だから、そろそろ行動を決めておくわ。 C案で、敵戦力の引き付けの方に参加するわ。 >個人行動 近接前衛 「光縛封」で魔象(と騎乗するダハーカ)を一時足止め、 効果中に数の多い帝国兵や白狼を「薙ぎ払い」で減らす 回復スキルは外すから、不都合あったら言ってね。 >サラマンダー、ユズリハ サラマンダーには魔象を主に、ユズリハには帝国兵や白狼を お願いする感じで良いかしら。ナハト次第で、シューターの ユズリハを千里眼さん戦の加勢にって案もあるけど。
わたしは前の宣言通り別動隊で潜入に回ります。 温度耐性はロゼットさんから模倣させて貰いますね。ありがとうございます! 敵の引き付けには人数が多い方が成功の確率も高いと思うので個人的にはユズリハさんも回って欲しいと思っていたのですけれど、確かに案内役をお願いした方が良いかもしれませんね……。 では、ユズリハさんにも別動隊をお願いしましょうか? >エリアサイレンス 引き付けをやるのでしたら、音を消す必要は無いのではないでしょうか……?
おじさんは引き付け班の回復と補助をしようか。 ロゼットちゃんが回復スキルを外すならその分もやろうかな、と。 役に立つかわからないけど、超聴覚を持ってくね。 真っ白の世界なら視覚に頼るよりいいかなって思って。
出発は明日の夜19時となります。皆さん、よろしくお願いいたします。どうか息子を......。
>ユズリハの配置 敵との遭遇が、街が見えてる近さなら案内は必要ないから、 「案内が必要ない場所なら引き付け役に」と書いておくわ。 敵側も、そんなに街から離れた場所までは出てこないと思うから。
エリアサイレンスは戦闘中使用不可能でしたね、と反省して看破に入れ替えております。 隠れている何かとかあっても不思議ではないので
おーっす! 遅くなっちまったが、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ガラン=ヴォルファングだ、よろしくな!! プルートを探すのが一番の目的だってのはわかってるが、今んとこの参加メンバーと敵戦力から考えっと俺は別働隊で探索に回るより引き付け役で象を何とかした方が良かそうな気がしてんだよな。 レピドがトーラと2人で探索に回ってくれんなら俺は引き付け役に回ろうかと思ってるがどっちがいいとおもう?
それでは、ユズリハさんへのお願いはロゼットさんにお願いしますね。ありがとうございます! 引き付けに人数が多い方がより気を引けますし、ハヤトさんにそちらへ回って貰うのは大丈夫ですよ! その分しっかり偵察してきますので!
確かに、ダメージソースの観点から見れば、引き付け班にハヤト君がいるのはありだなあ… 輝刃の使用先とか調整しとくね。
>トーラ あ……そうだったレベル1で判定される事を忘れていた。うっかり。 それならば別のスキル……看破をセットしておこう。 それと俺の温度耐性はコピーしてもらって構わない。 >個人行動 トーラと探索に回るつもりだ。
んじゃ、俺は引き付け役のアタッカーってことで象に対しては真タナトスバイトで削って暴れることにすんぜ!!