臍を噛む前に

革酎

コメント 9

シナリオID:3408

オープニング

●ふたつの現実
 何ということだ――リーンエス王国貴族ウォーレス・クレビオン伯爵は想定外の事態を受けて、思わず天を仰いだ。
 彼の領内で、或る伝染病が猛威を振るい始めていたのである。
 その伝染病は決して不治の病ではない。だが、その治療薬を製剤するには厄介な障害を乗り越えなければならない。
 この苦難に、打ち克つことが出来るのか。
 クレビオン伯爵は深い溜息を漏らした。

 少し前のことだった。
 クレビオン伯爵は自領民を己の医療技術向上の実験台に用いようとした。
 が、寄り親たるルーヴェン・アクファリテ西方辺境伯からの横槍が入り、その目論見は敢え無く瓦解した。のみならず、クレビオン伯爵は決して認めたくはない現実を目の当たりにさせられた。
(あの男は、一体何者なのだ……?)
 西方辺境伯が送り込んできた冒険者達の中にひとり、恐るべき医療技術を誇る男が居た。
 その男はクレビオン伯爵が未だ実験途中にあった薬剤を目分量だけで調合し、見事な効果を発揮せしめた。
 全く信じられない光景ではあったが、クレビオン伯爵はその時、決定的な敗北を喫した。医術者としての実力があの男には到底及ばない事実を、これでもかと突きつけられた。
 今の自分では、どうにも超えられない壁がそこに立ちはだかっていると認めざるを得なかった。
 正直なところをいえば、亡き父が褒めてくれるのであれば、何でも良かった。必ずしも医術者である必要など無かった。
 だが今は、クレビオン伯爵は医術以外に為すべき道が無い。
 あの男に敗北した現在、果たして自分には、他に何が出来るというのだろう。
 どうにも出口の見えない迷路に彷徨い込んだ気分を味わっていたまさにその時、件の伝染病発生の報が舞い込んできた。
 泣きっ面に蜂とは、まさにこのことであろう。

●伯爵の決断
 クレビオン領内で発生した伝染病は、恐るべき速度で領内に広がりつつあった。
 その異常性に思い当たる節があり、クレビオン伯爵は自邸内のあらゆる記録を調べ上げた。その結果、この伝染病は過去にも領内で発生していた事実を突き止めた。
 その記録は、かつて父から『絶対に超えてみせろ』と迫られていた、全く見知らぬ叔父が残した診療録であった。そこには伝染病の特効薬を製剤する方法も記されていたが、その材料となるのは領内山間部に見られる自生植物だった。
 だが、ひとつ問題がある。
 件の自生植物の植生地には現在、厄介な魔獣共が棲息していた。これらを排除せぬ限り、問題の自生植物を獲得することは不可能だろう。
 そして更に面倒なことに、クレビオン伯爵は自らが敷いた領内での薬剤取扱規制の影響で、領内全域に伝染病の症状を和らげる薬剤がほとんど流通していない現状に陥っていた。
 ロスガリア大陸にはそもそも医術者が極端に少ない。医者という存在が極めて稀有なのだ。
 薬も無く、医者も居ないこの現状は、クレビオン伯爵領に於いては致命的といって良い。
 だが、このまま黙って指を咥えている訳にはいかない。
 臍を噛む様な事態に陥る前に、苦渋の決断を下さなければならない。
 全領民を失う危機を前にして、クレビオン伯爵は冒険者ギルドに助力の依頼を出す腹を固めた。

解説

状況:  PCの皆様はクレビオン伯爵領から程近い町の冒険者ギルドで依頼を受け、クレビオン伯爵領内に足を踏み入れたところからスタートして頂きます。  主な舞台はクレビオン伯爵領都内のとある山間部です。樹々が生い茂り、小さな河川が流れ、然程高くない標高の山々が連なる、余り特徴の無い山地といった感じです。  特に険しい山道という訳でも無い為、到着するまでの道のりや、特効薬の材料となる自生植物を探すだけならば然程に苦労しないでしょう。  但し問題は、その自生植物が植生する近辺に数体の魔獣が棲みついていることです。  哺乳類と蜘蛛を掛け合わせたような奇怪な怪物で、八本の足を持ち、鋭い牙と爪、毒針の生えた尾を武器とする様です。巨体の割には動きが素早く、群れを汲んで連携攻撃を見せてきます。  スパイダーウルフと名付けられていますが、その正体は誰も知りません。 敵:  スパイダーウルフが五体、登場します。  能力は上述の通りで、中々にタフな怪物です。連携して攻撃するなど、狼レベルの知性はある様です。 NPC:  依頼主としてEXCのウォーレス・クレビオン伯爵が登場します。

マスターより

 皆様、こんにちは。  以前ショートシナリオR『医餓』で担当させて頂いたクレビオン伯爵が再び登場します。  今回は悪の親玉ではなく、領民を救う為に依頼を出したという割りと常識人的な振る舞いをしており、敵は魔獣のスパイダーウルフちゃん達です。  クレビオン伯爵に恩を売る良い機会かも知れません。是非彼の苦境を助けてあげましょう。  それではご縁が御座いましたら、ご参加のご検討宜しくお願い致します。

リプレイ

●複雑怪奇な胸中
 リーンエス王国クレビオン伯爵領は現在、崖っぷちの危機に追いやられているといっても良い。
 領内で発生した謎の伝染病が猛威を振るい、多くの領民が感染症に倒れたからだ。
 そんな中、ウォーレス・クレビオン伯爵の依頼に応じて八人の冒険者達が特効薬の材料となる自生植物の採取へと動き出した。
 植生地は既に分かっているし、ただその地へ足を運べば良いだろうと思われたが、その地にはスパイダーウルフなる奇妙な魔獣が棲息している。とてもではないが、一般人だけでどうにかなる状況ではなかった。
 そして冬の寒い或る日、早朝にクレビオン伯爵領都に到着した冒険者達はそのまま伯爵邸へと足を運び、そこで改めて諸々の説明を受ける運びとなった。
「うーん……またここに足を運ぶことになるたぁねぇ……」
 ディレイン・オールドケイジは渋い表情で広い玄関ホールに立った。
 過日、彼は仲間の冒険者達と共にクレビオン邸から人体実験の窮地に陥った領民達を救出した。その当時は、クレビオン伯爵は明らかに敵だったのだが、今回は依頼主である。
「まぁ、今回はここが戦場になる訳ではありませんし……それに、意地やプライドに縛られず、領民の為に誰かに助けを求めることが出来たのなら、それは大いに進歩したともいえます」
「とはいっても、やっぱり複雑ですねぇ」
 傍らのコルネリウス・アーラは苦笑気味だったが、ルアンナ・ミュラーは何ともいえない顔つきだった。
 いずれにせよ、冒険者ギルドを介しての正式な依頼である以上、心理的なわだかまりはこの際、一旦脇に置いておくしか無いだろう。
「医術研鑽の為の道具として領民を使うのではなく、領民の為にその医術を振るうというのなら、僕は喜んで協力するよ」
 件の事件でディレインと共に領民救出に当たったローザリカ・L・ディオールは、小さく肩を竦めた。彼女自身、医療系貴族に嫁ぐ身だ。医術のあるべき姿に力を貸すということであれば、過去のいきさつ云々ではなく、今後の行動に希望を持とうという性分なのだろう。
「どこまで改心したかは知らねぇが、今は領民を救うことだけ考えようぜ」
 ハヤト=ガラン=ヴォルファングも同意見だ。彼は元々が傭兵団の団長という立場上、敵味方に関しては然程気にしない方だ。傭兵という稼業はいつ誰が、どの様な立場で敵になったり味方になったりするかは分からないものである。
 そういう意味ではディレインやルアンナとは気の持ちようが随分と異なった。
「スパイダーウルフとやらの解剖記録も残しておきたいのだ」
 とは、ストレガ・L・リベルガストラの弁。彼女はクレビオン伯爵領への訪問は今回が初めてである為、別段何も気にする素振りは無く、ただ純粋に依頼の遂行と、現地魔獣の観察にのみ意識が向いていた。
 同じくユニス・ソロアーヌ・アクエリリーアも、クレビオン伯爵個人には何の色眼鏡も持たない立場だから、自らの知識と能力を活かすことが出来ればそれで良いという立場だった。
「でも、目的は飽くまでも材料の植物採集だから、そこは履き違えない様にしないとね」
 ユニスに釘を刺され、ストレガは乾いた笑いを漏らしながら頭を掻いた。
 肝心要の自生植物採集に失敗してしまったら、魔獣の解剖云々どころではなくなるだろう。
「……依頼主が来たぞ」
 それまでひと言も発していなかったレピド・クロサイトの鉄仮面が、玄関ホール奥から姿を現した貴族然たる男の姿に向けられた。
 クレビオン伯爵は幾分驚いた様子を見せている。まさか、過日自身を打ち破った冒険者達が、今度は依頼を受ける側として登場するなどとは、想像もしていなかったのだろう。

●スパイダーウルフ
 その日の午後。
 件の自生植物の植生地まであと一時間程という位置に、冒険者達は歩を進めた。なだらかな山間の道無き道を踏み越えてゆく訳だが、然程の疲労は感じない。途中までは伯爵の馬車に揺られてきた為、体力の消耗を極力抑えることが出来たのが大きいだろう。
 しかしそんな中にあって、ディレインの表情は恐ろしく神妙だった。原因ははっきりしている。
 伯爵邸で彼が見た過去の診療録には、見覚えのある文字が躍っていたからだ。
(あれは……親父の字だった)
 記載者は知らぬ名だったが、父の筆跡を見間違える筈はない。あの診療録はディレインの父が書き残したものであった。
(親父の根っこは、ここだったんだな)
 意外な展開に正直、心の奥底が大いにかき乱されている。同時に、父が見つけた薬なら確実に効果がある筈だという確信も湧いていた。
 そんなディレインの内なる葛藤を知ってか知らずか、ローザリカが幾分ほっとした様子で笑顔を向けた。
「あれだけ克明に材料植物の絵や特徴が記されていたなら、間違えようも無いね」
「採集時間の短縮にも繋がりそうね」
 ユニスも助かったと二度三度、頷き返した。
 一方でストレガは、スパイダーウルフに関する文献や情報がクレビオン邸に存在したことに驚きを禁じ得なかった。見た目や習性は奇抜だが、実はそんなに珍しい魔獣という訳でもないのだろうか。
 と、そこへ斥候に走っていたハヤトとレピドが引き返してきた。スパイダーウルフの数と配置、そして自生植物の植生地についても事細かに調べ上げてきた様だ。
「蜘蛛狼共は、西側の開けた場所に誘い出す。その間にディレインは採集を進めて欲しい」
 レピドは同時並行で進めることが可能だと判断していた。スパイダーウルフは初めて遭遇する敵である以上、それなりの警戒は必要であろうが、他の七人で十分に対処出来るとの目星をつけていた。
「私は、援護射撃に徹することにさせて貰うわ」
 それだけいい置いて、ユニスは愛用の弓を手に戦闘地点から少し離れた位置へと足早に駆けてゆく。
「初手は任せてくれ。重力大禍で何体かの動きを止めるのだ」
「では、私はボス格を引き受けます。後は連携を取らせない様に、各個撃破ですね」
 ストレガとコルネリウスが示した大枠の方針で、戦術はほぼ決まった。
 釣り出し役はハヤトとレピドだ。いずれかひとりだけとなるとディレインが心配し過ぎる為、ふたりで相互に死角をカバーしながら敵を誘い出すという作戦となった。
「随分と珍しい魔獣みてぇだが、本物の狼の恐ろしさってやつを教えてやんよ!」
 植生地のある、薄暗い森の中。
 ハヤトが手近の一体に向けて素早く接近し、ひと太刀浴びせた。すると頭上から別の個体が躍りかかってきたが、こちらはレピドが咄嗟に毒撃を叩き込んで注意を逸らした。
 そして残りの個体も、ハヤトとレピドの存在に気付き、獰猛な勢いで間合いを詰めてくる。
 ふたりは一斉に西側の草原へと駆け出した。
「確かに狼とも蜘蛛ともいえる奇妙な生き物ですね……ですが、耐久力比べなら、こちらも負けませんよ」
 ハヤトとレピドが誘い出してきた群れに対して、真っ向勝負を挑む位置に立つコルネリウス。
 流石に群れ全体を一気に相手に廻すのは自殺行為だが、そのうちの数体は突進力が極端に鈍った。
 ストレガの重力魔術が炸裂したのである。
「植生地から引き離せば楽勝……材料を巻き込まない様に気を付けて戦いましょう!」
 ルアンナがすかさず、動きの軽い個体に向けて魔糸を絡ませる。
 同時にローザリカと、転進したハヤト、レピドの三人がコルネリウスとは別の個体に対してそれぞれ間合いを詰めていった。

●自生植物確保
 コルネリウスが相手に廻しているのは、最も大きな個体だ。恐らくこいつが、スパイダーウルフ共のボス格なのだろう。
 このボス格が中心になれば中々厄介な連携を仕掛けてくる可能性もあったが、他の個体はストレガに足止めを喰らったり、個別に別地点まで引きずり出されるなどして、それぞれが孤立した状態に陥っている。
 冒険者の側も決して勝負を急がず、じっくりと各戦術で始末をつける算段だった。
 最初にストレガが足を止めた二体に対しては、ストレガ自身の魔法攻撃に加え、ユニスの矢が次々と撃ち込まれていった。機敏さを一種の防御能力としているスパイダーウルフにとっては、重力波と遠隔攻撃は最大の天敵だといって良い。
 ストレガとユニスの攻撃は面白い程に立て続けにクリーンヒットし、あっという間にまず一体を仕留めた。
 一方、動き回る二体の個体に対してはハヤトとレピドがそれぞれ機動盾として張り付き、その後方からルアンナとローザリカが補助火力として攻撃を叩き込んでゆく。
 敵はいずれも機敏で、鋭い牙と爪、毒針の生えた尾などは確かに厄介だったが、それ以上の機動力を誇るハヤトとレピドにとっては然程の難敵という訳でもなかった。
 恐らくこのふたりなら一対一でも互角以上に戦えたのだろうが、そこにルアンナの魔法攻撃とローザリカの蹴り技が更なる火力として加わる。
 そして子分格の四体を他の面々が始末する間、コルネリウスは咆哮と殺界でボス格をひたすら足止めしつつ、同時に打撃も加えていった。
 最初にレピドが、七人でも十分何とかなると判断したのは、間違いではなかった。これは戦術的な観点ではなく、クレビオン邸でレピドが記憶してきたスパイダーウルフ共の情報から導き出された結論だった。
 その分析には、微塵の迷いも誤りも無かった。
「おぉ~い! もう良いよぉ!」
 と、そこへディレインが駆けつけてきた。必要量の材料分は確保したらしい。全てを採集するのは、今後の植生という面では宜しくない。本当に必要な分だけを確保して、残りは再び自生に任せるべきだろう。
「材料分は十分揃った! もうここに長居する必要は無いよ!」
「じゃあ、撤退ね。本来の目的は、採集だもの」
 ディレインに応じて、ユニスもそれまで身を隠していた樹々の裏側から飛び出してきた。スパイダーウルフの方も、子分格が既に一体が斃され、残る四体も相当痛い目に遭わされている。
 冒険者達が後退する様を、獰猛に唸りながら警戒はしているが、しかし追撃する様な気配は見せなかった。
「……全滅させて解剖したかったが、それは次回にお預けか」
 ストレガだけは幾分残念そうな表情を見せたが、今回の依頼の趣旨はスパイダーウルフの殲滅ではなく、材料となる自生植物の採集だ。
 目的さえ達してしまえば、それ以上の戦闘は不要となる。
「少しでも早く特効薬を完成させなければいけないからね……戦闘は二の次だ」
 ローザリカのこのひと言が、全てを物語っている。
 領民を少しでも早く、少しでも多く救う。それが依頼主たるクレビオン伯爵の望みなのだから、その意図に反する行動は控えるべきであろう。
「でも、すたこらさっさと急速離脱って、意外と記憶に少ないですね」
 ルアンナが一瞬、後方を振り返りながら静かに笑った。
 これまでに受けた戦闘依頼は、敵を全滅させるか、或いは撃退するまで戦い続けることが多かった様な気がする。そういう意味では、生き残った敵を背にして走り去るという今回の撤収戦は、少々新鮮な気がしないでも無かった。
「冒険者の仕事は戦いに勝つことじゃなくて、依頼を達成することだから」
 ユニスが苦笑に近い笑みを返す。確かに、その言には一理あった。
 ともあれ――冒険者達は植生地を一気に離脱し、元来た道を駆け戻っていった。

●新たな第一歩
 クレビオン邸へと引き返した冒険者達は、早速特効薬の精製へと着手した。
 本来であれば材料植物の採集までが依頼の達成目標であったが、ディレインの個人的な依頼で、特効薬の完成まで付き合うこととなった。
「そういうことなら、幾らでも手を貸すのだ」
 ストレガも調剤支援には前向きだった。スパイダーウルフの解剖は遂に為し得なかったが、特効薬の精製・調剤については最初から協力する方向で考えていたらしい。
 ローザリカやユニスも医学と薬学の心得があるということで、ディレインからの呼びかけには喜んで応じた。苦しむ領民を救う為なら、自分達の力を惜しみなく発揮することは吝かではない。
 一方、コルネリウスやハヤト、レピド、ルアンナといった面々は余り細かいところまでは助力出来ない。そこでディレインは素人でも助力可能な、簡単で単純な作業を任せることにした。
 この効果的な分担作業に、誰よりも驚いていたのはクレビオン伯爵だった。
「特効薬の精製と調剤を、分担制で……」
 それはクレビオン伯爵にとっても、斬新な光景だったに違いない。クレビオン伯爵家に於いては、医術と薬学は当主やその家族の特権であり、分業で各担当がそれぞれの作業に着手するという行為は、発想そのものが無かったといって良い。
 そういう意味では、クレビオン伯爵家の伝統医学は既に限界点を迎えつつあったのかも知れない。
「俺達はアンタほどに、この地にも今の状況にも詳しくない。そういう意味でいうなら、今、最も効果的に住民を助ける術を知るのは伯爵、アンタだ」
 淡々と葉と実をすり潰す作業に従事しながら、レピドが作業卓の横で呆然と立ち尽くすクレビオン伯爵に静かな声音を向けた。
 その傍らではルアンナが、
「自分がどんなことをやらかしたか、分かってるんでしょうね?」
 といわんばかりの威圧的な笑みを浮かべている。
 もうこの時点で、クレビオン伯爵は医術者としての精神面でも大いに敗北を喫していたといって良い。
 だが、冒険者達にしてみれば、クレビオン伯爵相手の勝ち負けなど、どうでも良かった。本当に気に掛けるべきは領民達の一刻も早い救済である。
 その想いが誰よりも強かったのは矢張り、ディレインだっただろう。
 そして冒険者達の献身的な協力もあって、特効薬は翌日の正午頃には配布可能な状態となっていた。
 クレビオン伯爵は早速、麾下の私兵団に命じて領内各所に特効薬を配らせる手配を進めた。この配布作業には冒険者達も参加した。
 しかし何よりも冒険者達を驚かせたのは、クレビオン伯爵自身も自ら馬を駆り、配布作業に加わったことであろう。
 少しでも多くの手が必要だということは誰もが分かっていたが、クレビオン伯爵のこの決断は、ひとつの大きな変化だといって良い。

 それから、数週間後。
 ある町の冒険者ギルドでたまたま顔を合わせた八人は、更に驚きの事実を知った。
 何と、クレビオン伯爵が自領内に医術薬学の為の学校を設立する方向で動いているという情報を耳にしたのである。
「喜ばしいことだけど……人間変われば、変わるもんだね」
 乾いた笑みを浮かべるローザリカ。医療系貴族に嫁ぐ立場としては悪い話ではないのだろうが、あのクレビオン伯爵の中で一体、何があったというのだろう。
 しかしディレインだけはクレビオン伯爵の心境の変化が何となく、分かった様な気がした。

マスターコメント

 皆様お疲れ様でございました。  依頼は無事に達成されたのみならず、クレビオン伯爵も医術者としての転換期を迎えた様です。  今後、彼の人生にどの様なストーリーが待ち受けているかは私にも分かりませんが、良い方向に進むことを祈ります。
ショートシナリオR

ショートシナリオR普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2024年01月04日 00時52分18秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ディレイン・オールドケイジ

    目分量で薬剤調合したおじさんです、よろしく。 というのはまあいいとして。 面倒な魔物がいるみたいだね。攻撃力が高い、素早い、毒持ち、連携する… こちらも連携するのが無難かな。 とりあえずデバフ解除は持ってくつもりだよ。

  2. ユニス・ソロアーヌ・アクエリリーア

    シューターのユニスよ。 今のところ、シューターがいないようなので参加させてもらったわ。 前衛は他の方に任せて、後方から弓での援護に徹するつもり。 よろしく。

  3. ストレガ・L・リベルガストラ

    魔獣解体したいストレガなのだ。よろしくなのだ。 スーパーグラビティとスネアージャベリンで何体かは足止めできるのだ。 撃ち漏らしは任せたのだ。

  4. レピド・クロサイト

    レピド・クロサイト、シーフだ。よろしく頼む。 目的の植物の近辺に出現、ということは植物を巻き込まないように気を付けて戦うなり誘き出すなりしないと不味そうか。 誘き出す方でいくなら囮になるつもり。

  5. ルアンナ・ミュラー

    キャスターのルアンナです、よろしくお願いします! 特効薬の材料の植物を巻き込まないように倒さないといけませんね。単体魔法主体でいきましょう。

  6. ローザリカ・D・ケレス

    ヒーラーのローザリカだ、よろしく頼もう。 素早く連携してくる敵相手の足止め助かるよ。 足止めで連携を崩したり、前衛が引き付けたりすることで各個撃破を狙えたらよさそうだ。 僕自身は抵抗80を確保できるから、毒を恐れず率先して前に出て戦おうと思う。 そのうえで味方を治すために解除手段として真サルベーションを持ち込むよ。 戦いながら回復も出来ればと思うからもう1枠はサイドヒールかワイドヒールプラスかな。 もちろんヒーラー同士分担など出来ればとは思うし、何かあれば変更するから遠慮なく。

  7. ハヤト=ガラン=ヴォルファング

    おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! 蜘蛛狼とは珍しい魔獣だな! 毒も攻撃を喰らわなきゃどーってことねーだろーし、俺はいつも通り前衛でフルボッコにしてやる予定だぜ!

  8. コルネリウス・アーラ

    ウォーリアのコルネリウスです。 よろしくお願いします。 複数体居ますので、私はストレガさんが抑えきれない分を殺界などで足止めを行おうと思います。

  9. ディレイン・オールドケイジ

    そうだねえ…植物の保護のためにも、できれば自生場所がわかってから魔物と戦いたいところではあるよね。 道中や採集中の警戒は得意な人にお願いしたいところ。 木々が生い茂ってるなら障害物の影に隠れてるたりとか…蜘蛛の脚なら樹上も気にしたほうがいいのかな。 道中で遭遇しないまま植物を見つけたなら、誘き出すのはありだと思う。…お肉焼けば来るかな…? ローザリカちゃんが回復を分担してくれるなら、おじさんはバフ持ってこうかな。インフィニティロアと輝刃とか。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0