【焔手】それでも火山に日は昇る
コースケ
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シナリオID:3358
オープニング
●ボルガニスク神殿
「神官と神徒達は今どの辺であろうか。大陸の行く末を決めるとはいえ、厳しい戦いになるであろうな……」
神殿の長であるオルグレイは、黒曜子レイウェスト・バルダスを筆頭とするロスガリア大陸連合軍への応援として派遣した各神殿の神官と神徒達を思い溜め息をついた。
「シグモルの者としてわしも参加すべきなのであろうが、この老体が行ったところでどれ程の力となれるか。年は取りたくないものだな……」
「オルグレイ様には神殿でボルガニスク様をお守り頂かねばなりません。緑の小指は討たれましたが、同じことを考える者が現れぬとは限りませんので」
再び溜め息をつくオルグレイを、神徒の教育係を務める老年の女性、マグダリアが嗜める。
「それは分かっておる。だが、あのヨゼフ・バルダスと極北の征竜、神すら食らうイダ・バルダスに語らずの智者エフレム。その様な者達が争う戦場に、わしのような年寄りが行かず先のある若者を向かわせねばならんのがな。わしがあと30、いや20若ければと思わずにはおれんのだ」
豊かな白髪の下で眉間の皺を深くするオルグレイに、マグダリアは諭すように声をかける。
「確かに厳しい戦いとなるでしょう。ですが、彼らを死にに行かせるつもりで送り出した訳では無いでしょう? 少なくとも、私は彼らを死地に赴かせたつもりはありません。そして、大陸の未来を決めるのであればこそ、若者に委ねるべきでは無いでしょうか」
「おぬしらしいな。……それは自慢の教え子とやらも含まれるのか?」
顔を上げるオルグレイに、マグダリアは『どうでしょう?』と答え続ける。
「100年先のシグモル、信仰のために何を残してあげられるか……我々はその為にも、神と彼らが戻ってくるこの地を守らねばならないのです」
そう言って、マグダリアは人手が減った穴を埋めるべく冒険者ギルドへ出す依頼書を取り出した。
●辺獄
異空間から取り出した岩石を、その形に合わせて組み上げ積み上げる。重いものを持たなくて良い分身体は楽だが、しっかり噛み合わせて積まなければ強度が保てず、最悪の場合崩れてしまうため、神経がすり減る様な作業だった。
何より、その範囲が広いためいくら積み上げても終わる気がしない。
「キッツ。これいつまでかかるんだよ。いっそのこと天井崩して埋めちまった方が楽だし手っ取り早くねえか?」
「そうは言っても兄ちゃん、下手すりゃ生き埋めになるし強度の保証が出来ねえ。やるなら地質とか天井の構造や強度も調べた上で綿密な計算の上崩さなきゃなんねえんじゃねえかな。今いる人間じゃとても出来ねぇよ」
延々と続く作業に音を上げる何でも屋のオッターに、ドワーフの石工が気持ちは分かるがと加えながら水筒を差し出す。オッターは礼を言ってそれに口を付け、ひと息つくと辺りを見渡す。
「そうだなあ。神徒達も帝国に出て人手不足だし、これいつまでかかるか分かんねえな……」
「なに言ってんだい。10年や20年かかる訳でもあるまいし、目の前の事に集中してれば数年で終わるよ」
オッターがぼやいていると、巨大な魔獣を伴って魔獣使いのディアナが現れる。
「師匠! そんなに身が持たねぇって。てか、奥はどうだった?」
「特に代わりはないね。魔物は多いけど、サピラが居てくれるから警戒してる」
『グル……』
オッターに師匠と呼ばれたディアナは、傍らの魔獣――アーマーハウンドの特異個体であるサピラ――に手をあてて答える。人が多い内は魔物の警戒にあてる人員もあったのだが、人手が減ったためディアナがサピラに頼んで魔物を近付けないようにして貰っているのだ。
「しかし、こんな大きな魔獣が言うことを聞くもんなんだな」
最初はサピラを恐れていた石工達も、ディアナの言うことを聞く姿にある程度は慣れていた(ディアナが傍にいる事が条件ではあるが……)
「それと、マグダリアから使いが来たよ。冒険者を呼んで作業を手伝って貰うそうだ」
「やっとか! これで先が見えてきたぜ! ……しかし、師匠も人が悪いな。数年とか言わずに最初から言ってくれれば良かったのによ」
「お前がヤワなこと言ってるからだよ」
喜ぶオッターを横目で睨み、ディアナは溜め息を付いた。
「神官と神徒達は今どの辺であろうか。大陸の行く末を決めるとはいえ、厳しい戦いになるであろうな……」
神殿の長であるオルグレイは、黒曜子レイウェスト・バルダスを筆頭とするロスガリア大陸連合軍への応援として派遣した各神殿の神官と神徒達を思い溜め息をついた。
「シグモルの者としてわしも参加すべきなのであろうが、この老体が行ったところでどれ程の力となれるか。年は取りたくないものだな……」
「オルグレイ様には神殿でボルガニスク様をお守り頂かねばなりません。緑の小指は討たれましたが、同じことを考える者が現れぬとは限りませんので」
再び溜め息をつくオルグレイを、神徒の教育係を務める老年の女性、マグダリアが嗜める。
「それは分かっておる。だが、あのヨゼフ・バルダスと極北の征竜、神すら食らうイダ・バルダスに語らずの智者エフレム。その様な者達が争う戦場に、わしのような年寄りが行かず先のある若者を向かわせねばならんのがな。わしがあと30、いや20若ければと思わずにはおれんのだ」
豊かな白髪の下で眉間の皺を深くするオルグレイに、マグダリアは諭すように声をかける。
「確かに厳しい戦いとなるでしょう。ですが、彼らを死にに行かせるつもりで送り出した訳では無いでしょう? 少なくとも、私は彼らを死地に赴かせたつもりはありません。そして、大陸の未来を決めるのであればこそ、若者に委ねるべきでは無いでしょうか」
「おぬしらしいな。……それは自慢の教え子とやらも含まれるのか?」
顔を上げるオルグレイに、マグダリアは『どうでしょう?』と答え続ける。
「100年先のシグモル、信仰のために何を残してあげられるか……我々はその為にも、神と彼らが戻ってくるこの地を守らねばならないのです」
そう言って、マグダリアは人手が減った穴を埋めるべく冒険者ギルドへ出す依頼書を取り出した。
●辺獄
異空間から取り出した岩石を、その形に合わせて組み上げ積み上げる。重いものを持たなくて良い分身体は楽だが、しっかり噛み合わせて積まなければ強度が保てず、最悪の場合崩れてしまうため、神経がすり減る様な作業だった。
何より、その範囲が広いためいくら積み上げても終わる気がしない。
「キッツ。これいつまでかかるんだよ。いっそのこと天井崩して埋めちまった方が楽だし手っ取り早くねえか?」
「そうは言っても兄ちゃん、下手すりゃ生き埋めになるし強度の保証が出来ねえ。やるなら地質とか天井の構造や強度も調べた上で綿密な計算の上崩さなきゃなんねえんじゃねえかな。今いる人間じゃとても出来ねぇよ」
延々と続く作業に音を上げる何でも屋のオッターに、ドワーフの石工が気持ちは分かるがと加えながら水筒を差し出す。オッターは礼を言ってそれに口を付け、ひと息つくと辺りを見渡す。
「そうだなあ。神徒達も帝国に出て人手不足だし、これいつまでかかるか分かんねえな……」
「なに言ってんだい。10年や20年かかる訳でもあるまいし、目の前の事に集中してれば数年で終わるよ」
オッターがぼやいていると、巨大な魔獣を伴って魔獣使いのディアナが現れる。
「師匠! そんなに身が持たねぇって。てか、奥はどうだった?」
「特に代わりはないね。魔物は多いけど、サピラが居てくれるから警戒してる」
『グル……』
オッターに師匠と呼ばれたディアナは、傍らの魔獣――アーマーハウンドの特異個体であるサピラ――に手をあてて答える。人が多い内は魔物の警戒にあてる人員もあったのだが、人手が減ったためディアナがサピラに頼んで魔物を近付けないようにして貰っているのだ。
「しかし、こんな大きな魔獣が言うことを聞くもんなんだな」
最初はサピラを恐れていた石工達も、ディアナの言うことを聞く姿にある程度は慣れていた(ディアナが傍にいる事が条件ではあるが……)
「それと、マグダリアから使いが来たよ。冒険者を呼んで作業を手伝って貰うそうだ」
「やっとか! これで先が見えてきたぜ! ……しかし、師匠も人が悪いな。数年とか言わずに最初から言ってくれれば良かったのによ」
「お前がヤワなこと言ってるからだよ」
喜ぶオッターを横目で睨み、ディアナは溜め息を付いた。
解説
PCは辺獄内の封印付近の洞窟の物理的封鎖の依頼を受けてシグモル火山帯を訪れました。
リプレイは作業を行っている場面か、その合間の自由行動の描写となります(自由行動のプレイングのみだったとしても作業は行っているものとして扱います)
●辺獄の封印
七世紀にクカイという神徒が施した魔物(魔獣とクリーパー)を通さない為の魔術的封印で、現在の技術では再現が出来ない。
辺獄内部にも幾重にも施されていたが、緑の小指により一部が破壊され魔物の通行を止めることが出来ない状態となっている。
ただし、破壊されたのが一部であることと辺獄の複雑な地形、外への最も大きな出口は神徒が封鎖し監視していることにより今のところ魔物の流出は抑えられている。
●行動内容(以下から選択)
A.魔物排除
地上付近まで移動して来たり、空洞封鎖の障害になる魔物の排除。魔物は辺獄内に適応した生物が魔獣化したものと、岩のような外見のクリーパーなどからなり、脅威度や数も様々。強いものほど個体での行動が多く、弱いものは群れる傾向がある。クリーパーは最大で中型まで。
B.空洞封鎖
破壊された封印付近の空洞を物理的に封鎖し魔物の通行を阻止・阻害する。建築・土木等の一般スキルによる壁の作成や、攻撃スキルなどによる人為的な崩落など方法はある程度は任される。
C.NPC・EXCとの交流
所在は下記『●NPC及びEXC』参照。
D.自由行動
PC同士の交流など上記以外の行動。
●NPC及びEXC
・オルグレイ
ボルガニスク神殿の長で、火山帯全体の意見調整を担う老人。ボルガニスク神殿で帝都攻略の成功を祈りつつ、その抜けた穴をカバーすべく各種の調整を行っている。
・マグダリア
神徒の教育係でもある老年の女性。A.魔物排除に参加し後方で指揮を取る。
・アーマーハウンド・サピラ
アーマーハウンドの特異個体。交流のあるPCが一緒ならA.魔物排除に連れていくことも可能。そうならなければ辺獄内の泉に居る。
・ディアナ・ローロシェーナス
魔獣使い。相棒の影猫と共にA.魔獣排除に参加。
・オッター
何でも屋。B.空洞封鎖でひたすら石を積み上げ壁を立てている。
・その他NPC
神徒やシグモル火山帯の住人など名もなきNPC。居場所は様々。
マスターより
お世話になっております。
予定より遅れましたが【焔手】連作のエピローグシナリオをリリースさせていただきます。連作ではありますが、このシナリオ単体でもやることはありますので、初めての方も気になりましたら遠慮なく参加していただければと思います。
緑の小指による騒動は終わりを見せましたが、その爪痕は残り、また大陸も大きく動き出しています。
皆さんにはその痕を埋めたり、その合間に想いや決戦の意気込みを語り合ったりなど自由に行動して頂ければと思います。
勿論緑の指先や起こした事件について何か語るのでも構いません。
行動内容を用意させて頂きましたが、特に制限はしませんので好きな様に行動していただければと思います。
ただ、プレイングもリプレイも字数は有限ですので、広く浅くか、集中して濃く行動や描写を得るかの判断をお願いします。
なにか分かりにくい部分がありましたら、質問して頂ければディアナが答えます。
それでは、よろしければご参加お願いいたします。
リプレイ
●辺獄の魔獣
「溶岩蚯蚓が出ました! あれを放置しては封鎖が無意味となります。必ず排除を!」
地下空洞にマグダリアの声が響く。冒険者達はその指示に従い、岩盤を掘り進んで来る溶岩蚯蚓を迎え撃つべく散開した。
「あの魔物の攻撃は守りを半減させて来ます。注意して下さい」
「なら躱せばいいだけの話だろ?」
硬い岩盤を砕いて進む溶岩蚯蚓の特性を知るグレイブ・ヤードの警告に、ハヤト=ガラン=ヴォルファングが犬歯を剥き出して獰猛に笑う。
その言葉に相応しい実力を持つハヤトは、軍神の祝福とまで呼ばれる戦闘センスで状況を読み、蚯蚓の起こす振動を頼りに洞窟の側面を駆け、双神刀 紅狗璃で岩を叩いて蚯蚓を誘導する。
「へっ、こんだけ騒がしけりゃ狙いが丸分かりだぜ!?」
岩盤を破砕して飛び出した頭部をひらりと躱し、足裏に込めたエーテルで洞窟の壁を垂直に登って蚯蚓を誘う。
「させるかよ!」
ハヤトを追った頭部が壁に潜ろうとする直前、天狼の蹴甲と名付けた具足が横から蹴り込まれ、蚯蚓の身体が大きくのけ反った。
「うるぁ! これで引きずり出してやるぜ!!」
ハヤトは双神刀を頭部に突き立て、足裏のエーテルを解き勢いと体重を込めて溶岩蚯蚓を地面に引きずり落とす!
「全く無茶をする」
グレイブが仮面の下で呆れたように呟くが、地面に激突する寸前に離れたハヤトは地面に叩き付けられながらも受け身を取り、素早く立ち上がり落下の衝撃に硬直している溶岩蚯蚓に向かっていた。
「今の内に畳み込め! また潜られたら逃げられんぞ!!」
「とは言え、あまり放っておくとほかの方の迷惑になりそうですからね」
グレイブも溶岩蚯蚓へ向かう。ハヤトの言う様にここで逃がすと追跡は困難であり、今後の事を考えれば多少無理をしてでも討伐する必要がある以上、負傷者も多くなるだろう。
「役割に専念するつもりでしたが、思いの外仕事は多そうです」
無銘祭祀刀を抜いたグレイブは、溶岩蚯蚓の胴体へそれを振り下ろした!
●斧槍の行方
溶岩蚯蚓を討伐し、更に何体かの魔獣やクリーパーの排除を終えた冒険者と神徒達は、比較的安全な拠点を確保しそこで傷の手当と休憩を行っていた。
「マグダリア先生、相談があるのですが……」
「……聞きましょう」
シグモル火山帯の出身であり、マグダリアの教育を受けたロゼットは、神徒達へ指示を出している恩師へ声をかけた。マグダリアはロゼットの表情を見ると別の神徒へ残りの指示を任せ、休憩所として用意された横穴へ移動する。
「お忙しいところすみません」
「良いのですよ。立ち続けて休みたかったところです」
そう言ってお茶を用意しようとする恩師を制し、ロゼットは代わりに薬草茶を入れてマグダリアへ渡し、自分の分も用意すると、椅子代わりの岩に腰掛けたマグダリアの向かいに座る。
「ありがとうございます。疲れを取るにはこれに限りますね。――それで、相談というのは?」
ひと息つくなり話を切り出されたロゼットは、先生らしいなと思いつつ背筋を伸ばす。
「はい。レムナントの遺品である斧槍を、ドワーフ王国に返還することは出来ないでしょうか?」
「あれをですか?」
メドゥの指先幹部である緑の小指ことレムナントは、眠りに就くボルガニスク神の力を狙ってシグモル火山帯で暗躍し、住民を殺傷し辺獄の封印の一部を破壊するなど大きな爪痕を残した。
そのレムナントはロゼット達によって討たれたが、神徒にとっては大敵と言って良い相手だ。
「彼はドワーフ王国で、王候補だったと聞きました。なら遺品ぐらいは故郷に戻してあげて良いのではないかなと」
今は難しくても、いつか名匠として名が残るかもしれませんし……と続けるロゼットに、マグダリアはしばし無言だったが口を開く。
「……それは、彼への供養となるのでしょうか。レムナントは貴女にメドゥの指先へ入った時の事を語ったのでしょう? 己の欠落を埋めるため捨てたものに、彼にとって意味があるとは思えません」
マグダリアの言葉にそうかもしれませんと返しつつ、ロゼットは緑の小指の最後を思い返す。この手は何も掴めないと言い残し灰となった隻眼の老人に必要だったのは、奪うことでなく与える事では無いのかとの想いを、ロゼットは抱いていた。
「私は冒険者になって、何人かのメドゥの指先と出会いました。冒険者になる前は、危険な犯罪者ぐらいに思っていたんですが、彼らも出会いや境遇によっては、道を外れずに済んだのではと――そう、思うようになったんです」
「それが、貴女の答えなのですね」
「はい」
「シグモルを出て冒険者になると言い出した時と同じ顔で何を言ってくるかと思えば――」
自分の視線をまっすぐ受け止めて頷くロゼットに、マグダリアはため息をついて口を開く。
「公にドワーフ王国へメドゥの指先幹部の遺品を届ける事は、シグモルや神徒としては難しいでしょう。緑の小指の行いは、シグモルの地に大きな被害を出したのですから」
「ですが……」
言葉を続けようとするロゼットを手で制し、マグダリアは言葉を続ける。
「話は最後まで聞きなさい。あの遺品はシグモルに不要なものです。貴女が個人で届けるというのなら、それを止める理由はありません。他の国家等からの異論がなければ、自由にすると良いでしょう。オルグレイ様には私から伝えておきますので」
「ありがとうございます!」
恩師の言葉に、ロゼットは勢い良く頭を下げた。
●辺獄の這者
「纏めて殲滅します!」
『ガウッ!!』
Alexandra・Hexe・Claudiaの支援を受け、サピラの周囲に浮かんだ石片がエーテルの輝きを増し、眼前の岩の様な這者の群れへ殺到する!
石片を受けたクリーパーはその身を砕かれ動かなくなるか、中型の個体が今だ動くのを見てハヤトが飛び込む!
「遅ぇんだよっ!」
クリーパーはハヤトの速さを捉えきれず、その動きに翻弄され出来た隙にAlexandraとサピラの魔法を受け、大きく身体をのけ反らせる。
「あちらは任せて良さそうですね」
Alexandra達が優勢と見たグレイブは、神徒が対応している残りの小型クリーパーへ向かった。
「これらを放置する方が後々厄介でしょうから」
そう言って祭祀刀をクリーパーへ突き出す。グレイブの言うように群れとなった時の驚異もあるが、小型ゆえに見落としやすく、しかし非授恵者である石工達には対応の難しい驚異であることには変わらないのだ。
「助力、感謝します!」
「魔獣は生活圏の食い合いですが、クリーパーは根源的にこの世界の異物ですからね。しっかり排除してゆきましょう」
グレイブの王気にあてられ神徒の士気も上がる。小型クリーパーの群れを殲滅させたグレイブは、癒しと医療の心得を活かし負傷者を手当して次へ向かう。
敵の数は多く、冒険者達が滞在する時間も限られるからだ。
●吐露
「……どうかしたか?」
辺獄の泉のほとりに佇むAlexandraを見かけ、通りがかったオッターが声をかける。Alexandraの様子が物憂げに見えたからだ。
「別に……」
「けどよ、絶対何か抱えてるだろ? よかったら聞くぜ。良いアドバイスが出来る訳じゃ無いが、口に出せば整理が着くこともあるんじゃねえの?」
オッターの言葉に、Alexandraは仕方なくといった様子でぽつり、ぽつりと呟くように口を開く。
「……邪なる悪を断てば、陽の下で彼と共に生きる事が出来ると思っていました――」
Alexandraは自身で打ち上げた誓い……それが急激に非現実味を帯びてきた事に対する不安を吐露してゆく。
「超越者。人ならざる領域に踏み出し、人という在り方を忘れる者達。超越者の異能は人の理解の外だ。イダ・バルダスの魅了然り……きっと彼には全てが脅威となる」
「……」
最初はゆっくりと。だが、関を切ったように胸中に溜まっていたものが溢れ出した。
「ではどうする。皆殺しか? 超越者は人間を、意志を認識しないから。不理解を罪に殺意を込め――」
「……莫迦な。それを誰が、彼が、私が認めるものか」
「脅威として立ち塞がるなら殺す。それは違いない。では、脅威となり得るなら?」
Alexandraの最後の問いは、泉の水音に溶ける。それを聞いていたオッターは、自信無さげに声をかけた。
「あー……、見当違いのこと言ってたら申し訳無いんだが、それってやらなきゃいけない事かね?」
意図を問うAlexandraの目を受けながら、オッターは続ける。
「イダやヨゼフが驚異なのは違いないし、他に超越者の域に達しようとしてる奴が居るのも知ってる。けどよ、それら全部が驚異になるかも知れないからって殺すとか殺さないとか、極端過ぎねえか?」
「……では、危険を無視しろと?」
Alexandraの言葉に、オッターは頷いた。
「場合によってはな。幽界樹で大陸を滅ぼしかねないイダと、大陸制覇を狙うヨゼフは倒さなきゃいけない。けど、俺はエフレムは単独じゃ害にはならないと思ってる。むしろ、手を出す方が薮蛇になるんじゃねえか?」
「…………」
「他の超越者もそうだ。害になる可能性が高ければ手を打つ、低ければ手は出さない。それが一番だと思うがね。そもそも超越者とかに関係なく、あんたみたいな高位の授恵者はその気になれば簡単に人を殺傷出来るだろう?」
「私が理由もなくそんな事をするとでも?」
険のある目で睨まれ、オッターは首を竦めるが、それでも言葉を続けた。
「だが、その理由によっては可能性はある。けど、それで警戒される事が無いのは、その可能性が低いからだ。超越者だって同じだよ。力を持つだけじゃ排除する理由にはならないと思うぜ?」
Alexandraの背を見送るオッターは、息を吐いて脱力する。
「納得してくれたかね? ――んで、何故居るんだよ?」
「ほう、良く気付いたね。サピラがAlexandraの元気が無いって心配してたから見に来たのさ」
岩影から現れたディアナに、オッターは半眼でため息をつく。
「そういう事かよ。姿表してAlexandraに変なこと吹き込むんじゃないかってハラハラしてたぜ」
「まあ、あの子が神になればサピラが出歩けるよう世界のルールを変えることも出来るとは思ったけどね」
「本末転倒じゃねーか。まさか本気じゃねぇよな!?」
予想以上の事を考えていた師匠の言葉に、呆れた様なオッターの声が泉に響いた。
●それでも火山に日は昇る
依頼を終えた冒険者達は、シグモルの地を発つべく早朝のビッグオウム乗場に集まっていた。
「冒険者の皆様、この度もご助力感謝いたします。そして、帝国の決戦に向かわれる方へは戦神の加護があらんことを」
見送りに来ていたマグダリアの激励に、ロゼットは決意を口にする。
「私も帝都の奪還作戦に参加してきます。そこで起こることを、しっかり見てこようと思います」
「はい。武運を。そして無事に戻って来て下さい」
「そろそろ出発するゴブ!」
ロゼットは籠に乗り込み、ビッグオウムの上から恩師へ手を振った。
やがてその姿も見えなくなり、眼下に朝日に煌めく火山帯の風景が流れてゆく。その光景に、ロゼットは聖印を手に祈りの言葉を口にした。
「全ての命に、神のご加護がありますように」
「溶岩蚯蚓が出ました! あれを放置しては封鎖が無意味となります。必ず排除を!」
地下空洞にマグダリアの声が響く。冒険者達はその指示に従い、岩盤を掘り進んで来る溶岩蚯蚓を迎え撃つべく散開した。
「あの魔物の攻撃は守りを半減させて来ます。注意して下さい」
「なら躱せばいいだけの話だろ?」
硬い岩盤を砕いて進む溶岩蚯蚓の特性を知るグレイブ・ヤードの警告に、ハヤト=ガラン=ヴォルファングが犬歯を剥き出して獰猛に笑う。
その言葉に相応しい実力を持つハヤトは、軍神の祝福とまで呼ばれる戦闘センスで状況を読み、蚯蚓の起こす振動を頼りに洞窟の側面を駆け、双神刀 紅狗璃で岩を叩いて蚯蚓を誘導する。
「へっ、こんだけ騒がしけりゃ狙いが丸分かりだぜ!?」
岩盤を破砕して飛び出した頭部をひらりと躱し、足裏に込めたエーテルで洞窟の壁を垂直に登って蚯蚓を誘う。
「させるかよ!」
ハヤトを追った頭部が壁に潜ろうとする直前、天狼の蹴甲と名付けた具足が横から蹴り込まれ、蚯蚓の身体が大きくのけ反った。
「うるぁ! これで引きずり出してやるぜ!!」
ハヤトは双神刀を頭部に突き立て、足裏のエーテルを解き勢いと体重を込めて溶岩蚯蚓を地面に引きずり落とす!
「全く無茶をする」
グレイブが仮面の下で呆れたように呟くが、地面に激突する寸前に離れたハヤトは地面に叩き付けられながらも受け身を取り、素早く立ち上がり落下の衝撃に硬直している溶岩蚯蚓に向かっていた。
「今の内に畳み込め! また潜られたら逃げられんぞ!!」
「とは言え、あまり放っておくとほかの方の迷惑になりそうですからね」
グレイブも溶岩蚯蚓へ向かう。ハヤトの言う様にここで逃がすと追跡は困難であり、今後の事を考えれば多少無理をしてでも討伐する必要がある以上、負傷者も多くなるだろう。
「役割に専念するつもりでしたが、思いの外仕事は多そうです」
無銘祭祀刀を抜いたグレイブは、溶岩蚯蚓の胴体へそれを振り下ろした!
●斧槍の行方
溶岩蚯蚓を討伐し、更に何体かの魔獣やクリーパーの排除を終えた冒険者と神徒達は、比較的安全な拠点を確保しそこで傷の手当と休憩を行っていた。
「マグダリア先生、相談があるのですが……」
「……聞きましょう」
シグモル火山帯の出身であり、マグダリアの教育を受けたロゼットは、神徒達へ指示を出している恩師へ声をかけた。マグダリアはロゼットの表情を見ると別の神徒へ残りの指示を任せ、休憩所として用意された横穴へ移動する。
「お忙しいところすみません」
「良いのですよ。立ち続けて休みたかったところです」
そう言ってお茶を用意しようとする恩師を制し、ロゼットは代わりに薬草茶を入れてマグダリアへ渡し、自分の分も用意すると、椅子代わりの岩に腰掛けたマグダリアの向かいに座る。
「ありがとうございます。疲れを取るにはこれに限りますね。――それで、相談というのは?」
ひと息つくなり話を切り出されたロゼットは、先生らしいなと思いつつ背筋を伸ばす。
「はい。レムナントの遺品である斧槍を、ドワーフ王国に返還することは出来ないでしょうか?」
「あれをですか?」
メドゥの指先幹部である緑の小指ことレムナントは、眠りに就くボルガニスク神の力を狙ってシグモル火山帯で暗躍し、住民を殺傷し辺獄の封印の一部を破壊するなど大きな爪痕を残した。
そのレムナントはロゼット達によって討たれたが、神徒にとっては大敵と言って良い相手だ。
「彼はドワーフ王国で、王候補だったと聞きました。なら遺品ぐらいは故郷に戻してあげて良いのではないかなと」
今は難しくても、いつか名匠として名が残るかもしれませんし……と続けるロゼットに、マグダリアはしばし無言だったが口を開く。
「……それは、彼への供養となるのでしょうか。レムナントは貴女にメドゥの指先へ入った時の事を語ったのでしょう? 己の欠落を埋めるため捨てたものに、彼にとって意味があるとは思えません」
マグダリアの言葉にそうかもしれませんと返しつつ、ロゼットは緑の小指の最後を思い返す。この手は何も掴めないと言い残し灰となった隻眼の老人に必要だったのは、奪うことでなく与える事では無いのかとの想いを、ロゼットは抱いていた。
「私は冒険者になって、何人かのメドゥの指先と出会いました。冒険者になる前は、危険な犯罪者ぐらいに思っていたんですが、彼らも出会いや境遇によっては、道を外れずに済んだのではと――そう、思うようになったんです」
「それが、貴女の答えなのですね」
「はい」
「シグモルを出て冒険者になると言い出した時と同じ顔で何を言ってくるかと思えば――」
自分の視線をまっすぐ受け止めて頷くロゼットに、マグダリアはため息をついて口を開く。
「公にドワーフ王国へメドゥの指先幹部の遺品を届ける事は、シグモルや神徒としては難しいでしょう。緑の小指の行いは、シグモルの地に大きな被害を出したのですから」
「ですが……」
言葉を続けようとするロゼットを手で制し、マグダリアは言葉を続ける。
「話は最後まで聞きなさい。あの遺品はシグモルに不要なものです。貴女が個人で届けるというのなら、それを止める理由はありません。他の国家等からの異論がなければ、自由にすると良いでしょう。オルグレイ様には私から伝えておきますので」
「ありがとうございます!」
恩師の言葉に、ロゼットは勢い良く頭を下げた。
●辺獄の這者
「纏めて殲滅します!」
『ガウッ!!』
Alexandra・Hexe・Claudiaの支援を受け、サピラの周囲に浮かんだ石片がエーテルの輝きを増し、眼前の岩の様な這者の群れへ殺到する!
石片を受けたクリーパーはその身を砕かれ動かなくなるか、中型の個体が今だ動くのを見てハヤトが飛び込む!
「遅ぇんだよっ!」
クリーパーはハヤトの速さを捉えきれず、その動きに翻弄され出来た隙にAlexandraとサピラの魔法を受け、大きく身体をのけ反らせる。
「あちらは任せて良さそうですね」
Alexandra達が優勢と見たグレイブは、神徒が対応している残りの小型クリーパーへ向かった。
「これらを放置する方が後々厄介でしょうから」
そう言って祭祀刀をクリーパーへ突き出す。グレイブの言うように群れとなった時の驚異もあるが、小型ゆえに見落としやすく、しかし非授恵者である石工達には対応の難しい驚異であることには変わらないのだ。
「助力、感謝します!」
「魔獣は生活圏の食い合いですが、クリーパーは根源的にこの世界の異物ですからね。しっかり排除してゆきましょう」
グレイブの王気にあてられ神徒の士気も上がる。小型クリーパーの群れを殲滅させたグレイブは、癒しと医療の心得を活かし負傷者を手当して次へ向かう。
敵の数は多く、冒険者達が滞在する時間も限られるからだ。
●吐露
「……どうかしたか?」
辺獄の泉のほとりに佇むAlexandraを見かけ、通りがかったオッターが声をかける。Alexandraの様子が物憂げに見えたからだ。
「別に……」
「けどよ、絶対何か抱えてるだろ? よかったら聞くぜ。良いアドバイスが出来る訳じゃ無いが、口に出せば整理が着くこともあるんじゃねえの?」
オッターの言葉に、Alexandraは仕方なくといった様子でぽつり、ぽつりと呟くように口を開く。
「……邪なる悪を断てば、陽の下で彼と共に生きる事が出来ると思っていました――」
Alexandraは自身で打ち上げた誓い……それが急激に非現実味を帯びてきた事に対する不安を吐露してゆく。
「超越者。人ならざる領域に踏み出し、人という在り方を忘れる者達。超越者の異能は人の理解の外だ。イダ・バルダスの魅了然り……きっと彼には全てが脅威となる」
「……」
最初はゆっくりと。だが、関を切ったように胸中に溜まっていたものが溢れ出した。
「ではどうする。皆殺しか? 超越者は人間を、意志を認識しないから。不理解を罪に殺意を込め――」
「……莫迦な。それを誰が、彼が、私が認めるものか」
「脅威として立ち塞がるなら殺す。それは違いない。では、脅威となり得るなら?」
Alexandraの最後の問いは、泉の水音に溶ける。それを聞いていたオッターは、自信無さげに声をかけた。
「あー……、見当違いのこと言ってたら申し訳無いんだが、それってやらなきゃいけない事かね?」
意図を問うAlexandraの目を受けながら、オッターは続ける。
「イダやヨゼフが驚異なのは違いないし、他に超越者の域に達しようとしてる奴が居るのも知ってる。けどよ、それら全部が驚異になるかも知れないからって殺すとか殺さないとか、極端過ぎねえか?」
「……では、危険を無視しろと?」
Alexandraの言葉に、オッターは頷いた。
「場合によってはな。幽界樹で大陸を滅ぼしかねないイダと、大陸制覇を狙うヨゼフは倒さなきゃいけない。けど、俺はエフレムは単独じゃ害にはならないと思ってる。むしろ、手を出す方が薮蛇になるんじゃねえか?」
「…………」
「他の超越者もそうだ。害になる可能性が高ければ手を打つ、低ければ手は出さない。それが一番だと思うがね。そもそも超越者とかに関係なく、あんたみたいな高位の授恵者はその気になれば簡単に人を殺傷出来るだろう?」
「私が理由もなくそんな事をするとでも?」
険のある目で睨まれ、オッターは首を竦めるが、それでも言葉を続けた。
「だが、その理由によっては可能性はある。けど、それで警戒される事が無いのは、その可能性が低いからだ。超越者だって同じだよ。力を持つだけじゃ排除する理由にはならないと思うぜ?」
Alexandraの背を見送るオッターは、息を吐いて脱力する。
「納得してくれたかね? ――んで、何故居るんだよ?」
「ほう、良く気付いたね。サピラがAlexandraの元気が無いって心配してたから見に来たのさ」
岩影から現れたディアナに、オッターは半眼でため息をつく。
「そういう事かよ。姿表してAlexandraに変なこと吹き込むんじゃないかってハラハラしてたぜ」
「まあ、あの子が神になればサピラが出歩けるよう世界のルールを変えることも出来るとは思ったけどね」
「本末転倒じゃねーか。まさか本気じゃねぇよな!?」
予想以上の事を考えていた師匠の言葉に、呆れた様なオッターの声が泉に響いた。
●それでも火山に日は昇る
依頼を終えた冒険者達は、シグモルの地を発つべく早朝のビッグオウム乗場に集まっていた。
「冒険者の皆様、この度もご助力感謝いたします。そして、帝国の決戦に向かわれる方へは戦神の加護があらんことを」
見送りに来ていたマグダリアの激励に、ロゼットは決意を口にする。
「私も帝都の奪還作戦に参加してきます。そこで起こることを、しっかり見てこようと思います」
「はい。武運を。そして無事に戻って来て下さい」
「そろそろ出発するゴブ!」
ロゼットは籠に乗り込み、ビッグオウムの上から恩師へ手を振った。
やがてその姿も見えなくなり、眼下に朝日に煌めく火山帯の風景が流れてゆく。その光景に、ロゼットは聖印を手に祈りの言葉を口にした。
「全ての命に、神のご加護がありますように」
マスターコメント
お待たせしました。
リプレイ楽しんで頂ければ幸いです。
そしてこれで【焔手】連作は終了となります。ご参加いただきありがとうございました。
世界の情勢は今だ不透明で、シグモル火山帯にも完全に解決していない問題はありますが、それでもひとまずの区切りは付けれたかと思います。
それに伴い、サピラさんとマグダリアさんの担当を運営に返却させて頂きます。
こちらも長い間お世話になりました。魅力的なEXCに関われてマスターとしても勉強させて頂きました。
ありがとうございました!
イベントシナリオ普通 報酬:多い4 / 4〜25人
2023年12月15日 14時28分59秒 公開
大成功
相談掲示板
―、ウァォンッ (見知った顔に気付いてか、声をかけてきた)
こんにちは、サピラ。声をかけたのは別の人でしょうけど。 ロゼットよ。よろしくね。 私事ながら、Cの交流に行きたいと思うわ。 (ゲーム期間中)最後の機会かもしれないしね。 ということで、なんとか成立してくれたら嬉しいわ。
ウォフ。─… (こちらも見知った、ともすれば世話になった人物。近くで頭を下ろしてみる)
クラウディアです、よしなに。 …ふふ。彼がこうして話しかけてくれるようになったのは嬉しい限りです。 ─よかったら、みなさんも彼との話しに付き合っていただければと。 こちらはAを担当…した足でCに加わるかたちを取ろうかな、などと。 場面としては、彼とともに戦闘から帰還したあたりで描写を狙う…みたいな。 まあ、細かいところは成立・全体の希望待ちですね。
グレイブ・ヤードです。 基本的にはAの選択肢を行うつもりです。