【帝国】『黄の小指』同伴の先行偵察
岩岡志摩
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シナリオID:3322
オープニング
『預言の魔女』オペラは、帝国皇帝ヨゼフ・バルダス一派と征竜が帝都に現れる夢を見た。
――帝国皇帝ヨゼフ・バルダスと征竜は、11月の終わりにイダ・バルダスと幽界樹の居城たる帝都シルトラースに現れる、と。
この事態に対し、シルトラース帝国、リーンエス王国、エラトゥーン都市同盟、辺境都市群、ドワーフ王国、ディズル大湿地帯、フィルエス大森林、シグモル火山帯、ゴールディは『ロスガリア大陸連合軍』を組織する。
シルトラース帝国第八皇子レイウェスト・バルダス皇子を旗頭とした帝国軍、並びに彼を支持する国々の支援から成るロスガリア大陸連合軍による帝都シルトラース奪還へと動き始めていた。
現在帝都シルトラースには『神に至れる者』イダ・バルダスと、帝国を崩壊に導いた超大型級クリーパー『天霧りに消ゆる幽界樹』が居座っている。
更にその周辺には大小無数のクリーパーが跋扈しており、然るべき準備を整えて挑まなければほぼ確実にロスガリア大陸連合軍は苦戦する。
今回冒険者ギルド支部へ持ち込まれた依頼も、そうした準備の一つだった。
●依頼
依頼人は帝国軍の一部隊を率いる指揮官だった。
名をベイ・リスといい。以前ベイの部隊はヴィント付近において、移住ゴブリン達が居を構える村やその周囲の治安維持を担っていた。
【鬼哭】事件において、開拓に協力していたゴブリン達が一次的に狂暴化し、暴れはじめた際には冒険者達の助力を受けて鎮圧に尽力したこともあるため、冒険者達と顔を合わせる機会も多かった。
そのベイが冒険者ギルド支部へ持ち込んだ依頼は、ベイが報酬の増額を提示するほど重要な案件だった。
詳細は個室で説明したいとベイが要望し、応対した冒険者ギルド支部職員アルヒ・ラスカスは個室へとベイを案内する。
「帝都シルトラース周辺に偵察を行う。重要だが危険な任務となるため冒険者達の力が必要だ」
個室でベイは持参した地図を広げ、その中から古砦都市シャルトと書かれた場所を指し示す。
依頼内容は大きく分けると以下の2つとなる。
1つ目は古砦都市シャルトやその周囲にある拠点より、帝都シルトラースまでの進軍路ならびに補給路となりうるルート候補地の調査を行い、これを確保すること。
なお帝都へのルートは複数あったほうがいいとの方針から、偵察依頼は複数斡旋されることとなり、ベイからの依頼はその1つだった。
「帝都まではクリーパーの掃討が済んでいない。恐らくどこかで遭遇することになる」
ベイはそうしたクリーパー達を率先して排除してほしいと要望を出す。
2つ目はこれと並行して帝都まで足を伸ばして城壁を調べ、突入時に破壊が容易と思われる箇所を見つけ出すことだ。
「具体的にはひび割れが生じている個所など脆くなっているところを見つけ出し、可能な限り記録する形となる」
必要となる筆記用具や紙は依頼人側が用意するとのことだ。
なお帝都の城壁が見えるような距離に近づく場合、薄いながらも黒い霧が周囲を包んでいるため、その影響は避けられないという。
これに加え、帝都付近ではもう一つ危険な要素が存在している。
「そこまで近づけば、帝都より幽界樹の仔が複数差し向けられてくるのは確実だ」
城壁の状態を把握するため長い時間をかけていれば、それだけ危険が増す。
危険を承知でより多くの情報を得るか。
ある程度の情報を得たら、即時退却に移るか。
2つのうちいずれかの選択を迫られることになるだろう。
●増援?
なお今回の偵察には、幾つかの陣営より支援の申し出があった。
まずリーンエス王国に属するフローラ・ウォレス伯爵配下の私兵団。
フローラ伯爵領は王国北部の一画に存在するため、伯爵は寄親と共に王国北部を守る貴族でもある。
そして現在フローラ伯爵は、寄親を間に挟む形で間接的ながら王国貴族メルヴィン・トマス・アーチボルト辺境伯の指揮下で動いていた。
次にディズル大湿地帯よりアシムベート・グリオウの意志に呼応して駆けつけた、ギシュム族の若者ヴァーロゥムやリザードマン達の戦士達。
ヴァーロゥム達は【泥乱】事件において冒険者達に助けられた恩義もあり、征竜に対する複雑な思いを抱えながらも今回駆け付けた。
そして辺境都市群からも、シャルガネ居住区から派遣されたシノビ部隊の一個分隊が偵察に協力する旨を伝えてきた。
ここまではベイやアルヒも歓迎していたが、ある人物の申し出に関しては苦慮している。
その者はメイレを名乗り、古砦都市シャルトから帝都シルトラースに向かうのに最適なルートを案内すると言ってきた。
アルヒはメイレがメドゥの指先幹部『黄の小指』ロコだと知っている。
「信用できるのか?」
アルヒからメイレの素性について話を聞いたベイは、疑いの目で見ている。
「ルートを知っているというのは確かな話だと思われます」
アルヒはロコからの申し出自体に嘘はないと思う一方、助力を申し出る理由がわからなかった。
ロコの動機を判明させたのは、ターミル族出身のリザードマン、ディノだった。
ディノもディズル大湿地帯からの増援という形でこの地までやってきた一人だが、ロコとは複雑な因縁を抱えている。
「以前、実際に本人と会って話を聞きました」
ディノはロコから聞き出した情報をベイやアルヒに一通り説明し、ロコの動機をこう明かす。
「あいつはこの作戦で死ぬつもりです」
ディノの話を聞いたアルヒは、支援を申し出てくれたフローラ伯爵やヴァーロゥム、シノビ部隊の分隊長にも事情を伝え、ベイやディノも交えて検討を重ねる。
最終的にはロコと接触経験もあるフローラ伯爵が、寄親やアーチボルト辺境伯にも話を通した上で、今回の偵察における全責任を負い、ベイも追認する形でロコの同伴を認めることになった。
様々な戦力と思惑が混在する偵察隊が、冒険者やロコ達と共に帝都シルトラースへと向かう。
●聞き出した話
かつてはターミル族の集落を襲撃したロコだったが、【泥乱】の際はギシュム族集落を守る味方となった。
当初ロコの考えがわからなかったディノだが、【呑竜】にてリスタ子爵領内で発生した出来事を経験し、必要な情報を得ることができた。
その後ロコに遭遇したディノは、ある指摘を行っていた。
「一連の話を聞いた上で。お前の言動を見ると気づいたことがある」
ディノは自身から見えたものを語る。
「お前の望みは犯罪者の汚名を着せられた人達の名誉回復もあるが――」
そしてディノはロコにこう告げる。
「それ以上にお前が望むのは――黄の小指が討たれることだ」
ロコが最も憎悪しているのは、大切な人達を守り切れなかった自身だと。
「その通りです。人の心もない化物などいなくなったほうがいい」
ディノは笑みと共に告げられたロコの言葉が、本心からのものだと気づく。
メイレはあまりにも大切なものを奪われてしまった。
人生において、同じ場所で共に過ごし、日常という貴重なひと時を共有した人達との絆を。
日常の中で慈しみ、道を誤れば叱って止める。
時には甘えることも認め、お互いの成長を見守り優しく包みこむ家族愛を。
それ以外に、今のメイレは何も持ち合わせていなかった。
他者の目には狂っていると断罪できる。
納得した上で罪を糾弾することもできる。
けれどディノにはどうしてもそれができなかった。
だから、ただ深いため息をついた。
解説
マスターより
リプレイ
この依頼は冒険者達に2つの任務を託している。
1つ目は帝都シルトラースまでのルートを確保すること。
2つ目は帝都シルトラースの城壁まで先行偵察し、突入時に破壊が容易と思われる個所を見つけ出すこと。
今回冒険者達は様々な増援を得た上で、この2つを達成するためにそれぞれ動いていた。
●誘引と確保
ハヤト=ガラン=ヴォルファングとグレイブ・ヤードは、ルート上に存在するクリーパーの掃討を担当している。
「味方に死者が出ないよう、的確な指示を出す必要があるな」
ハヤトは天眼を駆使して戦場となる区域を見渡し、主なクリーパーとなる幽界樹の仔達を捕捉していく。
今回ハヤトとグレイブには、増援としてフローラ・ウォレス伯爵の私兵団とギシュム族の戦士ヴァーロゥムと同志のリザードマン達が加わっていた。
この他にもハヤトの指示に従い、アルヒ・ラスカスやターミル族出身のディノも増援としてこの場にいる。
「まずは霧を踏まえてどう周囲の状況を把握するかですかね」
グレイブもハヤトと範囲を分担する形で天眼を駆使し、状況の把握に努めていた。
グレイブは増援としてこの場にいる味方に対し、できることから役割を担わせる。
「天眼など、視界に係るスキルがある方は先導役を。そうでない方はできるだけ全方向に注意を払うなり、物音に気を付けるなりでしょうか?」
グレイブの指示に従い、該当するスキルを持つ授恵者達が周囲を警戒し、お互いに整理分析することで状況の把握を進める。
やがて帝都のある方角より、宙を浮遊するクリーパー旧型と、人型のクリーパー新型が一塊となって、冒険者達のいる方角へと近づいてきた。
「人型のうち投石を行うやつから片付けろ。敵に投げさせるな」
軍神の祝福より最適な行動を導き出したハヤトは、私兵団やヴァーロゥム達リザードマンに向け、弓による一斉射撃を指示する。
「どうせ誘導込みなのです、物音を出しても問題はありません」
グレイブも王気を駆使して私兵団やヴァーロゥム達をまとめ、導く。
ハヤトの指示やグレイブからの導きに従い、私兵団やヴァーロゥム達は一声に矢を放つ。
宙にまき散らされた矢羽根の飛翔音がクリーパー群へと降り注ぎ、突き刺さる。
射抜かれたクリーパー達の大半は人の形を取った新型だったが、宙に浮かぶ旧型もまとめて貫かれ、共に地面へと叩きつけられていく。
「うるぁ! これがブレイブファングの戦い方だぜ!」
ハヤトは味方を鼓舞するように吠え、最も近い位置にいる新型の1体へと切り込んだ。
一気に距離を詰めたハヤトが身体能力のリミッターを切って跳躍し、宙で真横に旋回すると、紅雷纏う竜巻のごとき連撃を繰り出し、双神刀 紅狗璃と天狼の蹴甲がクリーパーを斬り裂き、穿ち、再度斬り裂いた。
着地したハヤトが巧みな身のこなしを駆使して後方へと飛び退き、生命を断たれたクリーパーが仰向けに倒れ、動かなくなる。
「ルート確保のための人員を維持すること。それが私の役目です」
グレイブは周囲を見渡すと、己の身や装備よりエーテルを引き出して増幅し、負傷を癒す強い光と成して味方の1人へと撃ち放ち、その負傷を回復する。
グレイブが見せる王気は遠き日の、誰かの在り方。
その一挙手一投足全てが庇護すべきものの迷いを振り払う。
そして「己の心を信じよ」と、その背中を押すのだ。
●帝都へ
味方がルート確保も兼ねて、クリーパー達を引き付けている間に、先行偵察を請け負った冒険者達が帝都シルトラースへの道を進んでいく。
「帝都奪還の第一歩です。突入孔を探し出しましょう!」
トーラは帝都へ続くルートを進みながら、意気軒高に叫ぶ。
今回冒険者達の増援として、シャルガネ居住区より派遣されたシノビ分隊の者達が同伴していた。
シノビ達は今進んでいるルートの地形や状態をつぶさに記録し、今後の作戦進行に必要な情報を集めている。
「クリーパーらしき反応を複数感知しました。場所と数ですが――」
時折幽界樹の仔と思しきクリーパー達が現れるものの、トーラの駆使する宗波がそうしたクリーパー達を全て捕捉し、味方に報せていた。
トーラからの情報に従い、冒険者達と案内人は余裕をもってクリーパー達を迎撃している。
トーラ自身も新型の懐へと踏み込み、斬りあがった小人の薄刃が新型の胸に斬痕を刻むと、巧みな身のこなしを駆使して再び距離を置いていた。
「現状ではシノビ部隊による調査は難しそうだな。敵の撃破を優先しよう」
ライナ・フレイヴァルツはトーラからの情報からそう判断すると、自身も対処に乗り出す。
「敵は複数。今のところ味方を巻き込む状況ではなさそうだ」
ライナは自身の超聴覚も駆使し、敵の周囲に味方がいないことを確認した上で、捕捉できたクリーパー達に向け、暗く深い闇の色をした巨大な黒弾を撃ち放つ。
直後、クリーパー達のただ中に雷のような一撃が炸裂して周囲を薙ぎ払い、その身を裂かれたクリーパー達は絶命し、地面に倒れていく。
「ここは安全を優先します!」
フロマーシュ・ダイヤドロップも超聴覚を駆使し、周囲の音を拾い上げて防戦に当たる。
人型のクリーパーが地面を踏みしめる音。
振りかぶった腕と放たれた石が風を切る音。
そうした音よりおよその方角を把握したフロマーシュは守りたいという強い思いに従い、全速力で戦場を駆け抜ける。
その身を一瞬白いヴェールめいたものが包み、フロマーシュはシノビ分隊の前方に自身を割り込ませると、ひらめく白衣の盾を掲げて飛来した石を防ぎとめる。
「仲間への襲撃はさせません!」
フロマーシュは迫りくるクリーパー達の前に立ちはだかり、十分引き付けたところで巨大な光塊をまとわせた神材の祭刀が強く振り下ろされ、クリーパー達だけにその威力が叩きつけられる。
まともにフロマーシュの範囲攻撃を浴びたクリーパー達は、大幅に生命を削り取られ、体をよろめかせる。
少し離れた場所では、ロゼットが案内人ことメイレの戦いにも目を向けていた。
そのロコは今、赤いエーテル光をまとった姿で周囲に刃の輝きを煌めかせ、クリーパー達を切り刻み続けている。
ロゼットはディノを介し、メイレが今回の作戦に協力する理由を知っている。
「自ら死に向かおうとする人間は引き止めたい」
それは相手がメドゥの指先幹部『黄の小指』であっても変わらない。
「けど今は考え直してもらう言葉が見つからないわ……」
今の時点でロコに翻意を促す言葉を、ロゼットは持ち合わせていない。
「せめてこの作戦では、死なせはしない」
呟きと共に、ロゼットは自身よりエーテルを引き出して増幅し、負傷を癒す強い光を形成し、ロコに向けて撃ち放つ。
直後、ロゼットからのヒール4はロコの身に当たり、消費された生命を回復させる。
「感謝します」
ロコからの礼は素っ気なかったが、ロゼットは自身の行動によって、ロコも含めこの場にいる全員を生還させると決めていた。
やや後方では、アンジェも防戦に努めている。
「……アンジェ、にも、できることがあれば……」
アンジェは今回城壁の調査以外にも、戦闘時は回復要員に回るなど、できることを可能な限り引き受けるつもりでいる。
「……家族愛……ですか」
アンジェもまた、ロコのことを気にかけていた。
(この前幽界分樹と墓所で戦闘になった時も……。配下の人たち、犠牲にさせてしまったし……)
アンジェはそのときの戦いで生き残り、投降したスアやブオ達のことも思い出す。
「……スアさんとブオさん、今どうなっているのかな……?」
その後の2人についてはアンジェも知りようがなく、そこまで考えたところでアンジェは意識を引き戻し、超視覚を駆使して負傷者がいないか確認し始める。
「……回復、します……」
そしてアンジェはシノビ隊を守るフロマーシュの負傷に気づくと、自身よりエーテルを引き出して負傷を癒す光と成し、フロマーシュに向けて撃ち放つ。
「ありがとうございます」
アンジェよりヒール2を受けたフロマーシュは感謝を伝えた。
そのままフロマーシュは、神材の祭刀にエーテル光をまとわせることで長大な刃を形成すると共に、不可視のエーテルを周囲へと張り巡らせることで、範囲内にいたクリーパー達の通過を不可能にしていく。
そしてフロマーシュより範囲内にいたクリーパー達へと斬撃が迸り、既に損傷を蓄積させていたクリーパー達はまとめて断ち割られて地面に横転し、沈黙した。
●掃討のち救援
ハヤトとグレイブ主導のもと、ヴァーロゥムらギシュム族の若手戦士達と私兵団、そしてアルヒやディノ達は順調にクリーパー達の掃討を続けている。
投石による遠距離攻撃を行うクリーパー達もいたが、ハヤトやグレイブの指示を受けたヴァーロゥム達や私兵団が集中攻撃を行い、順次撃破している。
やがて坂の向こうから、小型クリーパー達を押しのけるようにして中型クリーパーが現れた。
巨人を模した姿の中型クリーパーは、地響きを鳴らしてヴァーロゥム達や私兵団のいる方角へと迫るが、既にハヤトは天眼によってその存在を探知していた。
「手を出すな。アレは俺が倒す」
ハヤトは軍神の祝福から最適な行動を宇導き出すと、ヴァーロゥム達や私兵団に短く指示を伝え、自身は瞬間的な加速を駆使して、中型クリーパーへと突っ込んでいく。
「こいつには威力増の連撃を叩き込んでやるぜ」
速度を力に転じ相手へと叩き込む技前によって、その加速力を威力に転化したハヤトは中型クリーパーとの距離を一気に詰めるとそのまま跳躍し、宙でその身が縦に旋回した。
弾駆牙によって威力を増した双神刀 紅狗璃と天狼の蹴甲が竜巻の如き連撃と化して繰り出され、宙に円月を描いた双神刀 紅狗璃が中型クリーパーを縦に斬り裂き、さらに回転したハヤトの足より天狼の蹴甲が中型クリーパーの身に打ち下ろされ、その損傷を深くする。
そのままハヤトの体が落下に転じ、もう一度回転したハヤトより双神刀 紅狗璃が縦に一回転して中型クリーパーを斬り裂き、ハヤトの足が地面を踏む。
怒涛の連撃を受け、体をよろめかせた中型クリーパーは仰向けに倒れ、地響きを散らして絶命した。
「戦線の維持は私が努めます。皆さんは残りの敵を順次倒してください」
その間にもグレイブは味方の回復を請け負いつつも、ヴァーロゥム達や私兵団に対し、残る小型クリーパー達の中から脅威となりうる個体を優先して倒すよう指示する。
グレイブの指示に従い、私兵団の弓より放たれる矢が激しさを増した。
矢の雨にその身を貫かれ、地面に叩きつけられたクリーパー達が動きを止めると、その隙を突く形でヴァーロゥム達ギシュム族の若手戦士が槍先を揃えてクリーパー達に突進する。
「何の為に生まれ、何の為に生きるのか、とは言いますがね」
槍を振るい、猛然とクリーパー達を押し崩すヴァーロゥム達やその周囲の戦況を見定めていたグレイブは、そう独り言ちる。
(戦闘後は、リラックスできるものを飲用するのもいいかもしれませんね)
自身と装備からエーテルを引き出し、負傷を癒す光を形成しながらグレイブは今後についても意識を向けながら、負傷した味方へと撃ち放つ。
グレイブが放ったヒール3は私兵団所属の授恵者を包み込むと、その生命を回復していく。
「感謝します」
授恵者はグレイブに一礼すると、戦線に復帰し味方と連携してクリーパー達を倒していく。
やがて他の中型クリーパーを片付けたハヤトが戻り、ルート上に存在するクリーパー達が粗方始末できたところで、一行は調査に向かった冒険者達を支援するため、帝都への道を進み始めた。
●城壁調査と退却
一方調査を担当する冒険者達は、既に帝都の城壁が見える位置まで到達していた。
周囲にはうっすらとだが黒い霧が漂い、帝都の城壁より奥にあるものを覆い隠している。
今のところ周囲にクリーパー達の姿はなく、調査を実施するなら今が好機だった。
(今のうちに脆い部分や破損している部分を探りましょう)
トーラは隠蔽スキルを駆使して隠蔽状態になると、静かに城壁への接近を試みる。
そして城壁を射程内に捉えたところで、トーラは宗波を使い、探波のエーテル波動を城壁へと走らせることで、城壁の情報を集め始める。
看破スキルも駆使し、城壁に関する情報を可能な限り集めたトーラは、貸与された紙と筆記用具を用いて情報を記録していく。
(内部にどれだけの敵がいるのかも、できる限り調べましょう)
トーラは再び宗波を使うことで、捜波のエーテル波動を走らせると、城壁の向こう側にいるクリーパーらしき反応を複数感知することができた。
その数や動きを把握したトーラはさらに城壁へと近づき、自身のエーテルをうまく操ることで粘性とし、壁を踏んで垂直に歩き始めた。
(黒い霧で覆われている以上、敵が潜んでいる可能性も捨てきれない)
やや遅れてライナも城壁近くに到達すると、脆そうに思えた場所から密かに打音確認を開始する。
(警戒しながら調査をしよう)
超聴覚を駆使し、音の違いを確認しながらライナは慎重に調査を進め、時折暗視スキルも駆使して黒い霧の向こう側にも敵が近づいてこないか警戒を続けていた。
ライナの近くではフロマーシュも超聴覚を駆使し、音の違いから城壁の脆い個所を探そうと試みている。
(今のところ、黒い霧による影響はなさそうですが……)
フロマーシュは自身やこの場にいる冒険者達が、黒い霧によって方向感覚や位置感覚に狂いが生じていないことも確認できている。
なおフロマーシュは透視スキルも駆使して、城壁に薄いところがないか探っていたが、フロマーシュが見た範囲ではどこも1m以上の厚みがあったため、全てを見通すことはできなかった。
(他よりも劣化が進んでいそうな場所は……)
ロゼットも城壁への調査を始めていた。
ロゼットは自身が持つ建築・土木スキルを駆使して城壁の構造を調べ、脆そうに見える箇所を貸与された筆記用具と紙を駆使して記録する。
そしてアンジェはやや後方より超視覚や看破スキルを駆使し、見渡すことのできる範囲で城壁に脆い個所がないか調べていた。
(……周囲にも、注意……)
アンジェが周囲にも警戒の目を向けながら調査を進める中、城壁の上を目指していたトーラが宗波を使い、走らせたエーテル波動が複数の敵らしき反応を感知する。
ほぼ同じころ、ライナやフロマーシュの超聴覚も急速に接近してくる複数の地響きを捉え、後方にいたアンジェの超視覚も押し寄せる複数の影を視認した。
これ以上は危険だと判断したトーラは一気に城壁から駆け下り、味方の下へ急行する。
「複数の敵がこちらに向かってきています」
そしてトーラは自身が宗波で得た情報を仲間達に報せていく。
ライナやフロマーシュも超聴覚で迫りくる複数の存在を察知していたため、ただちに冒険者達は退却に移る。
このときロゼットはテレパスを介し、アルヒ達に向けた情報伝達を試みていたが、今の段階では距離が遠すぎたため思念を送ることはできなかった。
「……一度、アンジェの近くに集まって……下さい」
アンジェは仲間達全員を支援すると伝え、仲間達はアンジェが支援を行った後に動き出せるよう、アンジェの周囲に集まった後、行動を遅らせる。
ロコも含め、周囲に仲間達が集まったのを確認したアンジェは、エーテルの波動を開放し、範囲内にいた冒険者やロコのエーテルを急激に増幅し、その能力を向上させると共に、効果を受けた冒険者達の全身より青白い光が立ち登る。
そして黒い霧の向こうより巨人を模した姿の中型クリーパーが、束になって押し寄せてきた。
アンジェより援護を受けた冒険者達は2手に分かれて繰り引きをはじめ、退却戦を始める。
「追い付かれる前に撤退しましょう!」
追ってきたクリーパー達は中型が多いものの、トーラは臆することなくその1体との距離を詰めると、小人の薄刃で足に当たる部分を斬り裂いた。
攻撃を受けた中型クリーパーが足を止めると、巧みな身のこなしを駆使したトーラはそのまま後退する。
「撃退よりも情報の持ち帰りが最優先だ」
ライナは超聴覚も使いながら、周囲にいる敵味方の動向を把握すると、闇に漂う暗い霧のような空間を中型クリーパー達のただ中へ顕現させ、続いて発生した不可視の重力場が周囲にいる中型クリーパー達を絡めとる。
ライナの重力場に巻き込まれた中型クリーパー達が移動を阻害されると、暗く深い闇の色をしたエーテルの黒弾を大量に顕現して撃ち放つ。
ライナからの範囲攻撃は、中型クリーパー達のいる一帯へと雨のごとく降り注ぎ、その身を穿たれた中型クリーパー達は、胸や頭に大穴を開けて倒れ伏し、動かなくなる。
「ここにいる敵は足止めし、次の襲撃に備えます」
フロマーシュもライナや仲間達に後退を促すと、自身は神材の祭刀にエーテル光をまとわせることで長大な刃を形成した。
そしてフロマーシュは周囲に不可視のエーテルを張り巡らせ、範囲内にいたクリーパー達の通過を不可能にすることで足止めをはかる。
ライナとフロマーシュがクリーパー達の足止めを続ける間に、ロゼットは後方に待機させていたシノビ分隊への防衛に回る。
「先にシノビ分隊を退避させるわ」
今回増援として来てくれたシノビ分隊の者達は、黒い霧に対抗できるほどの強さはない。
このためシノビ分隊は冒険者達が城壁の調査を進めている間、黒い霧がある一帯よりも後方で待機していた。
エンライトによって自身の傍らに光の玉を形成したロゼットは、シノビ分隊に撤退を告げる。
「退却するわ。この明かりが目印よ」
ロゼットがシノビ分隊の者達に対し、光の玉のある方向に進むよう指示し、シノビ分隊はロゼットの誘導に従い退いていく。
「……邪魔にならないよう、動きます……」
アンジェは超視覚を駆使し、追ってくるクリーパー達や足止めを行う仲間達の動向を見定める。
今のところライナとフロマーシュが互いに助け合って足止めや後退を繰り返し、不意打ちを試みるクリーパー達にはトーラとロコがその都度跳ね返し、手ひどく痛めつけている。
そしてライナやフロマーシュ、トーラ達が射程内に後退するまで、アンジェはその場に踏みとどまる。
「……なるべく、多数に、かけられるように……」
アンジェは眩く温かく、太陽光にも似た癒しの光を周囲に向けて放つ。
「……回復、します……」
アンジェのハイパーヒーリングオーラは、クリーパー達との戦いで負傷した味方の負傷をまとめて癒していく。
その中でロゼットの駆使するテレパスがようやくアルヒやディノに繋がり、アンジェからの援護を受けた冒険者達は、クリーパー掃討を担っていたハヤトやグレイブ、私兵団やヴァーロゥム達との合流を目指し、帝都より遠ざかる。
●帰還。そして
その後合流を果たした冒険者達は、2手に分かれてそれぞれが反撃と足止めを繰り返し、整然と退いていく。
そして追手のクリーパー達を振り切った冒険者達は、増援として協力してくれた私兵団やヴァーロゥムらギシュム族の戦士達、そしてシノビ分隊と共に味方の勢力圏内へと帰還する。
ここでトーラは同行していたロコに対し、ある提案を行う。
「リスタ子爵は捕えられ、その罪は公になるでしょう。あなたも出頭して正しい裁きを受けませんか?」
ロコはトーラの話に無言のままだが、トーラはその理由を説明する。
「リスタ子爵の罪や各地での行動など減刑材料は十分あります。討たれて命を落とすことを、あなたの大切だった人達は望まないのでは無いですか?」
少し考えた後、ロコは言った。
「私は正しい裁きというものに興味はありません」
その一方でロコはトーラに対し、こう言葉を継ぐ。
「ただ、私は貴方がたの話なら従ってみようかと思います」
王国の法ではなく、トーラ達冒険者の存念に従うとロコは言った。
仇にあたるヴィガ・リスタ子爵を冒険者達が捕らえたことで、ロコもトーラ達冒険者に対し態度を軟化させていた。
その言葉通り、この後ロコは【呑竜】事件の際、多少関わったことがあるフローラ伯爵のもとへ出向き――。
「貴方がたの裁きを受けましょう」
――投降の意志を示した。
こうして冒険者達は様々な人達の協力を得た上で、帝都シルトラースの城壁に関する情報や、調査の上で確保された進軍経路など、今後の決戦に寄与する結果を手に入れることができた。
マスターコメント
イベントシナリオ難しい 報酬:多い7 / 6〜25人
2023年11月17日 19時01分54秒 公開
相談掲示板
ヒーラーのロゼットよ。よろしくね。 成立するか分からないけど、 選択肢1の側、陽動の討伐側を選んでおくわ。 >選択肢 1:帝都へのルート上に存在するクリーパー達を可能な限り排除 (討伐メイン) ロゼット 2:帝都城壁が見える場所まで近づき、脆い個所を発見する (調査メイン) >質問 NPCについて。 アルヒとディノは黒い靄には抵抗できない?抵抗できる?
アルヒ・ラスカスだ。今回はよろしく頼む。 Q1:NPCについて。 アルヒとディノは黒い靄には抵抗できない? 抵抗できる? A1:申し訳ない。恐らく私とディノ殿は黒い霧に抵抗できないと思われる。
キャスター、ライナ・フレイヴァルツだ。 なんとか成立だろうか?皆よろしくな。 調査をするにも黒い霧があり、それを強行して調査すると 一定レベル以上の冒険者やロコ以外は方向感覚や位置感覚が狂うということか。 2の方に行こうかなとは思っているが…範囲攻撃の手が必要なら1の方に回ろう。 きっと探すなら、シーフの【探波】が良いかもしれないが黒い霧の影響で 果たしてそう簡単に上手くいくかどうか…? 打音で薄そうな所の音を探るか、亀裂があるかどうかとかを探っていくしかなさそうだ。 ただあまり時間をかけられないのも事実なので、考えられる方法の全てをやっていいと思う。
シーフのトーラです。 よろしくお願いします! わたしは2へ行きますね。 壁の破損には宗波が有効かもしれませんし、ロコと話したいこともあるので。
選択肢に関しましては私としてはどちらでも、というところなので、8日時点の状況で動きたいと思います。
ウォーリアのフロマーシュ・ダイヤドロップと申します。皆様よろしくお願いいたしますっ! どちらに向かうにしても敵の襲撃があるため悩ましいのですが、今のところはこちらに不利な要素が多い2の方に向かう予定ですっ。 でも場合によっては1に向かい、そちらの皆様をお守りしていく事もできますのでっ。 調査の際には透視と何かもう一つを用意して行う予定ですっ。
ゴメンなさい>2重削除 NPCのアルヒとディノは黒い霧の影響を 受けるらしいから、選択肢1の方が良いかしら? アルヒに選択肢1をお願いするのと、PCヒーラーも 増えたから、私は選択肢2に移動させてもらうわ。 選択肢1が多ければ陽動の効果が大きくなるし、 選択肢2が多ければ調査が早く進むでしょうから、 基本的には好きな方を選んで良いのかなって。 >選択肢 1:帝都へのルート上に存在するクリーパー達を可能な限り排除 ウォレス伯爵私兵団(NPC) ヴァーロゥムやギシュム族戦士(NPC) アルヒ(NPCヒーラー) ディノ(NPCシーフ) 2:帝都城壁が見える場所まで近づき、脆い個所を発見する シノビ分隊(NPC) メイレ(NPC) ライナ トーラ ロゼット >アルヒ 回答ありがとう。
更新 >選択肢 1:帝都へのルート上に存在するクリーパー達を可能な限り排除 ウォレス伯爵私兵団(NPC) ヴァーロゥムやギシュム族戦士(NPC) アルヒ(NPCヒーラー) ディノ(NPCシーフ) 2:帝都城壁が見える場所まで近づき、脆い個所を発見する シノビ分隊(NPC) メイレ(NPC) ライナ トーラ フロマーシュ ロゼット
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! さて、2の調査の方がレベルによっちゃ位置感覚が狂うっつーと俺は2の方が調査の方が良さそうかと思ったが今んとこのバランスだと1が手薄になっちまいそーだしな。 んじゃ、暫定的に俺は1でクリーパー共を蹴散らしに行くことにすんぜ!
>選択肢 1:帝都へのルート上に存在するクリーパー達を可能な限り排除 ウォレス伯爵私兵団(NPC) ヴァーロゥムやギシュム族戦士(NPC) アルヒ(NPCヒーラー) ディノ(NPCシーフ) ハヤト 2:帝都城壁が見える場所まで近づき、脆い個所を発見する シノビ分隊(NPC) メイレ(NPC) ライナ トーラ フロマーシュ ロゼット
選択肢1が手薄で良いとは思わないけど、 選択肢2はシノビ分隊が戦闘不向きだから、 彼らの護衛を考えると薄くできないのよね…。 私はテレパスを入れて、選択肢1側のアルヒ達と 撤退時とかに連絡が取れるようにしておくわ。
では選択肢1を 通常通り支援に集中しますので
遅く、なりました…。 …あの、…アンジェ、です。ヒーラー…、です。 よろしく、お願いします…。(ぺこり) ええと、選択肢は…、アンジェ、もどちらでもいいですけど…。 …2、に行けばいいですか…?
>アンジュ 好きな方で良いけど、1はNPC含めてヒーラー2名だし、 2に来てもらってヒーラー2名にした方が安定するかな。 >選択肢 1:帝都へのルート上に存在するクリーパー達を可能な限り排除 ウォレス伯爵私兵団(NPC) ヴァーロゥムやギシュム族戦士(NPC) アルヒ(NPCヒーラー) ディノ(NPCシーフ) ハヤト グレイブ 2:帝都城壁が見える場所まで近づき、脆い個所を発見する シノビ分隊(NPC) メイレ(NPC) ライナ トーラ フロマーシュ ロゼット
>ロゼットさん …あ、はい、では、2に付いて行くことにします。 答えていただいて、ありがとうございます…。 >選択肢 1:帝都へのルート上に存在するクリーパー達を可能な限り排除 ウォレス伯爵私兵団(NPC) ヴァーロゥムやギシュム族戦士(NPC) アルヒ(NPCヒーラー) ディノ(NPCシーフ) ハヤト グレイブ 2:帝都城壁が見える場所まで近づき、脆い個所を発見する シノビ分隊(NPC) メイレ(NPC) ライナ トーラ フロマーシュ ロゼット アンジェ