幻覚キノコを(楽しみながら)狩りつくそう

岩岡志摩

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シナリオID:3316

オープニング

●幻覚キノコ現る
 冒険者ギルド支部には、日々様々な依頼が持ち込まれる。
 今回冒険者ギルド支部職員アルヒ・ラスカスが応対したのは、ある村からの訴えだった。
「森で奇妙なキノコが増えたことで、村での日常生活に支障をきたしています」
 依頼人となった村の長は、現在村で発生している困りごとを説明する。
 依頼人が長を務めるのは山あいで林業が盛んな村だという。
 林業の活動範囲は村の周囲に広がる森となるが、ここ最近になって森の中に非常に目立つ見た目をしたキノコが増え出したらしい。
「そのキノコですが、あまりにも危険なのです」
 依頼人の話では、キノコがある場所へ近づいた村人は次々と異常な行動をとり、そのまま倒れたという。
 異常を察知したほかの人達は、倒れた村人をなんとか救助できたものの、村人はしばらく動けなかった。
 たまたま村の中で医療や薬学に詳しい人がいたため、救助できた村人を診察してもらったところ、毒で動けなくなっていることが分かり処置が施された。
 その結果、なんとか解毒できた村人から詳しい話を聞くことができた。
 どうやら村人はキノコの周囲に漂う何かを吸い込み、幻覚を見たようだ。
 さらに吸い込んだものが毒となって体に取り込まれたため、幻覚を見た村人は身動きができなくなったという。
「キノコが原因だとわかりましたが、近づけないことには対処しようがありません」
 その後キノコは急激に数が増し、キノコがばら撒く胞子を吸いこんでしまい、幻覚を見る村人達も増えてきた。
 ある村人は菓子でできた家の幻を見て、思わずかじりついた。
 しかし村人が噛みついたのは木の幹だったことから、解毒後も村人はしばらく固いものが食べられなくなった。
 別の村人達は、魅力的な異性が現れる幻覚を見て、思わず幻へとキスをした。
 しかし実際には隣にいた同性とお互いキスする形となり、毒が抜けても2人は「誰か俺の記憶を消してくれ」と苦しむ羽目になった。
 また別の村人は、自身が見た幻があまりにも衝撃的だったのか、解毒後も立ち直るのが遅れたらしい。
 これ以外にも様々な幻覚に村人達は悩まされ、今ではキノコが生えている個所やその周囲に近づくことができず、村も本来なら森から得られるはずの収入が減り始めている。
「それでは、村人達を苦しめるキノコをできるだけ除去するということでよろしいですね?」
 村の窮状が依頼人より語られる中、アルヒは冷静に依頼条件を詰めていく。
「お話を伺っていると、駆除に当たる冒険者も危険にさらされることになりますので、危険手当もつけていただけると――」
「いやいや。そのような余裕など村にはありません。村でこしらえた秘蔵の酒を進呈しますのでどうか――」
 なお報酬の面で、依頼人とアルヒの間できわどい話が続いたことは追記させていただく。

●やること
 今回皆様は、幻覚症状を引き起こすキノコの駆除依頼に応じました。
 現場近くの村は林業が盛んなことが特徴で、村人達の多くは森の木々を伐採して収入を得ています。
 しかし最近あるキノコが森の中に発生したことで、村の状況は一変しました。
 依頼人によるとそのキノコは毒があり、身を食したりキノコが周囲にばらまくものを吸い込むと、毒で体が動かなくなったり幻が見えるようになったりと、村人達にも被害が出ています。
 さらにこのキノコは急激に数を増し、生えている個所も範囲が広がっているため、村人達は森の中へ入ることが難しくなりました。
 このため村の収入は激減し、日々の生活も脅かされています。
 応対した職員アルヒ・ラスカスが友人であり授恵者でもあるディノに先行調査を頼み、このキノコについてわかる範囲で調べてもらったところ、以下のことが判明しています。
 まずキノコの毒ですが、一般人には動けなくなるほどの威力を発揮しても、授恵者に対しては軽微にとどまります。
 キノコよりまき散らされる胞子にも毒が含まれているため、これを吸い込めば授恵者でも幻を見てしまいます。
 実際に確認したディノによれば、幻は毒が解除された段階で消えるとのことでした。
 その一方で、再び胞子を吸い込むなど毒を受ける状態になった場合は、毒が解除されるまで新たな幻を見てしまうようです。
 ディノの話によると、見える幻は食べ物や魔獣、アンデッドなど様々ですが、時々自身が思い浮かべたイメージも幻に反映されるような気がした模様です。
 たとえばアンデッドの群れが幻となって現れた時、なぜか手のひらサイズに小さくなって逃げ惑い、その後ろからディノの姿をした別の幻がアンデッドを追いかけて踏みつぶすという幻覚を見たそうです。
 他にも敵が突如上空まで打ちあがり、宙で爆発する幻など色々なものを見たと、ディノはどこか晴れやかな表情で語っていました。
 どうやらキノコが原因で見えてしまう幻は、ある程度皆様が望むような形で現れるようです。
 キノコ自体は授恵者なら駆け出しでも一撃で壊せるほど脆弱ですが、その数や生息範囲は侮れないため、駆除は複数の授恵者が必要になるとディノから報告が届いています。
 キノコの駆除方法ですが、その場で攻撃すると胞子まじりの破片が周囲に飛び散り、そこから新たなキノコが生えてくる可能性も考えられるため、一か所に集めてからまとめて燃やし、灰は地面に埋める形が妥当と思われます。
 駆除に目途がついた後は、村でイノシシ肉とシカ肉を中心とした料理が作られ、昼食として皆様にふるまわれる予定です。
 また村で製造されたワインも皆様へと進呈されますので、土産としてお持ち帰りください。
 皆様の助力を、現地で暮らす村人達はお待ちしております。

解説

●目標  森の中にある幻覚キノコを可能な限り除去  副目標:森自体への被害拡大を防ぐ  登場  幻覚キノコ×20  現場となる森で急激に増えているキノコ。大きさは15cm程度。その身やまき散らされた胞子には毒があり、体に取り込むと様々な幻覚を見せられる。略称「茸」。  幻覚自体は視覚に作用するだけで、聴覚や嗅覚など他の感覚には影響を及ぼさない。  一般人は毒でしばらく身動きが取れなくなるほどの威力だが、授恵者の場合は幻を見せられるが毒は軽微なもので済む。  黄色に青い斑点を持つ傘が特徴で、遠目にも目立つため判別は用意。  1つ1つは駆け出しの冒険者でも容易に破壊できるほど脆いが、数の多さと範囲の広さがネックとなる。  なお皆様が見ることになる幻は、皆様が望んだ通りのイメージになる模様。幻は見えてから1ラウンド経過すれば消える。  以下はその一例。  例1:食べてみたい料理の幻が現れる。  例2:敵の幻が小さな姿で逃げ惑い、皆様の姿をした幻が皆様の思い通りに動き、敵を倒していく。  例3:敵の姿をした幻が大空へと吹き飛ばされ、宙で爆散する。  村の人達  今回の依頼人。現在森に入ることができず困っている。  キノコを排除できたら、村にてイノシシ肉とシカ肉を中心とした料理を皆様にふるまい、追加報酬として村製造のワインを1本ずつ土産として提供する予定。  アルヒ・ラスカスとディノ  今回の増援。皆様の指示に従う。アルヒの使用スキルはヒーリングオーラ、解呪。ディノは疾風足とダブルエッジ。汎用スキルは共通でテレパス。  状況  村近くにある森の中。現地時刻は正午で快晴だが、森の中は若干見通しが悪い。  今の段階で幻覚キノコは下記見取り図内にとどまっている。幻覚キノコを回収する袋や作業着となる衣類、道具の類は皆様へ貸与されている。  以下簡易見取り図。1マスあたり10×10mくらい。  北↑   ABCDEFGHI  1木☆木木木木木茸木  2木口口口口口口口☆  3木口木口茸木茸口木  4木口木茸木木口口木  5木口木木木茸口木木  6☆口口口口  茸木  7木口口木木 集 木  8木茸茸木木茸 茸木  9木木木木木木☆木木  ☆:スタート地点。自由に選択・重複可。  木:森。視界はやや悪い。  □:獣道。他の場所よりは通行に向く。  茸:幻覚キノコの生育場所。1つにつき2つ以上生えている。  集:駆除した幻覚キノコの仮置き場。ここで焼却して埋める。

マスターより

 こちらはリクエストシナリオになります。  幻覚キノコは一般人が駆除を行うのは難しいため、今回皆様冒険者に依頼が持ち込まれました。  キノコ自体は皆様なら容易に撃破できますが、数と範囲が少し厄介です。  駆除の際には幻覚を見せられることになりますが、見える幻は皆様の方である程度指定や操作が可能です。  幻を楽しみながら、森の中にある幻覚キノコを駆除して下されば目標は達成扱いとなります。  なお幻で登場する敵ですが、今までに私のシナリオで登場した敵に限られますので、予めご了承ください。  ご不明な点がございましたら、出発36時間前まででしたらアルヒが答えられる範囲のことは答えます。

リプレイ

●駆除開始
 依頼を受けた冒険者達は、現場となる森に到着すると、それぞれの方角から森の中へと進みだす。
「幻覚を見せるキノコ……使い方次第では悪用もできそうな感じですね」
 ヴィルヘルミナは、幻覚キノコの使い道について思案を巡らせる。
「閃光塗弾の塗料を胞子の粉末に変えるとか。しんどい気分の時に幻覚で誤魔化すとか」
 そうした方法が思いつく一方、ヴィルヘルミナは別の危険にも目を向ける。
「……依存性があったらまずいですけど」
 そこまで考えたところで、ヴィルヘルミナは東の方角へと歩を進める。
 そしてヴィルヘルミナは黄色に青い斑点を持つ傘が特徴の幻覚キノコを発見すると、あることを試す。
 木の大剣にエーテル光をまとわせ(エーテルブレードを使い)、刃を成して射程を延長したヴィルヘルミナは、幻覚キノコが生えている個所に刃を突き立てて堀り返りし、回収していく。
「幻覚を見せる茸か。村人達にとっては恐ろしい存在だろう」
 森の西側より進出したレタラ・スマリは、今回の駆除対象が村にとって脅威だと認識している。
「出来うる限り処理して早いところ安寧を取り戻してやらないとな」
 レタラはそう決意すると、南方面へと続く獣道に目を向ける。
 まずレタラはエーテルリンク2を駆使して栗鼠との間にエーテルリンクを結ぶと、森の中へと栗鼠を走らせた。
 続けてレタラはエーテルの波動(捜波)を走らせ、周囲に幻覚キノコらしき存在がいないか調べ始める。
 レタラが捜索した結果、幻覚キノコを複数発見できた。
 同じころ、ルアンナ・ミュラーは持参したバンダナで鼻や口を覆い、幻覚キノコの胞子を吸わないよう予防しながら、森の中を進んでいた。
「胞子がヤバいキノコとのことなので」
 ルアンナが依頼説明時に聞いた話では、今回の幻覚キノコは食べたり胞子を吸い込んだりした場合、毒も受けるようだ。
「でも多少吸い込んじゃうんだろうなあ……」
 ルアンナは何となく、幻覚キノコの胞子を完全に防ぐことはできないと予感していたが、今は幻覚キノコの駆除が優先だと意識を引き戻す。
 この頃、コルネリウス・アーラは森の南東側より足を踏み入れていた。
「私は皆さんとはなるべく違う方向から、採集していきましょう」
 コルネリウスは村より借りた布を口に当てながら、看破スキルを駆使して幻覚キノコを探し始める。
「手分けした方が早く終わりますからね」
 コルネリウスは発見した幻覚キノコを、村より借りた道具や採集スキルを駆使して回収していく。
(なるべく胞子を吸い込まないように)
 コルネリウスはその場にあった幻覚キノコをひとまとめにすると、胞子を吸わないよう心掛けつつ、仮置き場として定めた場所へと運んでいく。
 そして森の北東方向では、ディレイン・オールドケイジが近くにある幻覚キノコの回収を始めていた。
「まずはここにあるキノコを全てかな」
 村より借りた道具と採集スキルを駆使して、ディレインは幻覚キノコを集めていく。
 回収用の道具に入れた幻覚キノコが一杯になったので、ディレインは一度幻覚キノコを仮置き場まで運ぶことにした。
 途中に生えていた幻覚キノコも、ディレインは採集スキルを駆使して可能な限り集めていく。
 その一方でディレインは、視界に移るクリーパーらしき存在の姿が気になっていた。
 それは過去【嵐竜】事件において、リブラネスタを襲おうとしていた超大型級クリーパー『嵐逆巻く魔海竜』に酷似していた。
 ――大きさがディレインの手のひらよりも小さく、数も複数で、地面でピチピチと跳ね回っていたが。
 ディレインはそれらを見て、これが幻覚キノコによる幻だと気づく。
「いやもうあいつらはお腹いっぱいなんだけどなあ」
 ディレインがそう呟く中、地面を跳ねまわるミニサイズの『嵐逆巻く魔海竜』は、ディレインの姿を取った幻に踏みつぶされていく。
 それを見届けたディレインがエーテルを活性化させ抵抗力を増幅させる光(解呪)を自身に付与すると、幻覚キノコの毒や見えていた幻も消えていった。

●幻を楽しむ
 ヴィルヘルミナは、エーテルブレードも使いながら、その場にあった幻覚キノコをすべて回収していた。
「入れている袋ごとしまったほうがいいでしょうか」
 ヴィルヘルミナは、運んでいる最中に幻覚キノコから胞子が漏れ出て、それを自身が吸ってしまう可能性にも目を向ける。
(幻覚を見るのが短時間で済むのなら、その場でじっとしているのが一番楽かもしれませんが……)
 思案した後、村より借りた袋に幻覚キノコを詰めたヴィルヘルミナは、袋ごとマジカルポケットにしまう。
「幻覚は……自分が見た事がないものまで見てしまうのでしょうか?」
 ヴィルヘルミナが聞いた話では、幻覚の大半は自身の心理状態に影響されるものが多いらしい。
「見られるなら空でも飛んでみたいですね」
 ――ビッグオウムに運ばれている時しか経験できない事ですし。
 ヴィルヘルミナは、自力で空を飛んでいる幻が見えるなら、幻を楽しむこともできるかもしれないと考え、試してみることにした。
 途中で採集出来た幻覚キノコを、軽く叩いてみる。
 すると幻覚キノコより胞子らしきものがばら撒かれ、ヴィルヘルミナの身に纏わりついてきた。
 その直後、ヴィルヘルミナの視界に魔獣らしきものが現れる。
 それを見たヴィルヘルミナは、木の大剣にエーテルブレードによる刃をまとわせた状態で、斜めに斬り下ろす。
 ヴィルヘルミナの斬撃は魔獣をすり抜け、地面すれすれで止まる。
「やはり手ごたえはありませんでしたね。実は本物が混じっていましたとかだったら危ないですけど――」
 ヴィルヘルミナが見つめる中、魔獣は急に小さくなり、その後ろからヴィルヘルミナの姿をした幻が魔獣を蹴散らす。
「そういう話は聞いていませんし」
 魔獣を踏みつぶしていく自身の幻を見つめながら、ヴィルヘルミナはそんな呟きを漏らす。
 同じころ、森の南西付近ではレタラが幻覚キノコの回収にあたっていた。
「……しかし、幻覚か」
 ふとレタラはある可能性に思い至る。
「もしかすると、オレが普段脳内で思い描いているネタも視覚化出来るんだろうか?」
 レタラは村より借りた道具を使い、持参したバックパックに幻覚キノコを入れる。
「だとしたら、一度は見てみたいような気もするが」
 新たに見つけた幻覚キノコを前に、ふとレタラは幻覚を見てみようかと考え始め――。
「……いや、油断してはいけない」
 すぐに思い直し、その幻覚キノコもバックパックに入れ、胞子が漏れないようにする。
「とはいえ、ドゥジン作家としてはやはり、一度喰らってネタの糧にしてみたい欲も少し……」
 だがレタラとしては、体験できる機会がある以上それをスルーするのも難しい。
「……ゴホン。とにかく、間違いなく駆除していかなくてはな」
 ひとまず幻覚については棚上げし、レタラは回収作業を進める。
 今のところ竜骨の魔弓を使う必要はないが、いつでも使用できるようレタラは警戒を怠っていない。
 そのレタラよりやや離れた場所では、ルアンナも幻覚キノコの回収に勤しんでいる。
 ルアンナは極力胞子を吸い込まないよう努力していた。
 しかしルアンナは、ちまちました何かが足元で蠢いているのに気づき、足元へ目を向ける。
 それは小さくなった魔獣の群れだった。
 その事に気づいたルアンナは、自身が幻覚キノコの胞子を吸い込んでしまったと理解する。
(わちゃわちゃしているので、踏まないように……)
 ルアンナは足踏みを続け、足元で枯れ葉の割れる音がいくつも響く。
 やがてルアンナは枯れ葉に足を取られ、転倒した周囲に枯れ葉の束が舞い上がる。
 パラパラと降ってきた枯れ葉を払いのけ、ルアンナが起き上がると、その横には小さくなった自身――正確には自身の幻が見えた。
(確かに思い通り動いていますね)
 小さくなってもルアンナの幻は強く、さらに小さくなった魔獣達を踏みつぶしていく。
 ルアンナは幻の活躍をじっと観察していた。
 なお森の南東部にある仮置き場には、既にコルネリウスが採集した幻覚キノコを運び込んでいる。
 作業の中でコルネリウスは幻覚キノコの胞子を吸ってしまったのか、様々な幻覚が見えていた。
「あぁ、これ私たぶん……今大分お腹が空いている気がしますね」
 いまコルネリウスが見ている幻は、山積みにされた大量のパンと、自分の周囲に集まってくる仔猫や小鳥たち。
「パンが見えるだけで、匂いまでしないのは良かったですが……」
 増えていくパンの幻覚を、コルネリウスは頑張って払いのけている。
「このところ多忙で(花鳥園のある)ベールコートにも帰っていないので、鳥さんたちとも遊べていませんし」
 仔猫や小鳥の幻も徐々に増えているが、それを見たコルネリウスはそのことに思い至る。
「……ひと段落ついたら、一度帰りましょうか……冬支度の準備もしなくてはいけませんから」
 ――お手伝いさんに任せきりにしてはいられませんものね。
 ひとまずはこの幻覚キノコを処理することから。
「手早くお仕事を終わらせて、お昼にしましょうか……」
 コルネリウスは意識を引き戻すと、幻覚キノコを仮置き場に集めていく。
 同じころ、ディレインも回収できた幻覚キノコを抱え、仮置き場に向かっていた。
「お!?」
 その途中、ディレインは鍋を視界に捉え、近づいてみた。
 匂いもしないことから、ディレインは今も見えている鍋が幻覚だと気づく。
(依頼の後に振る舞われる予定の料理や酒が楽しみだったのかな?)
 幻が見えた理由をディレインはそう分析していた。
「……懐かしいもの見せてくれちゃって」
 ディレインは鍋の幻に見覚えがあった。
 今は亡き家族が使っていたのと同じ小花柄をした鍋と、その中で煮立たせている料理も。
「はーやれやれ」
 少しの間、その幻を見つめていたディレインはため息をつきながら、鍋の傍にあった幻覚キノコを採取する。
 その後、再び自身へ解呪を使い、毒を解除したディレインは再び歩き出し、仮置き場に到着した。
「大丈夫? ヒールいる? 解呪しようか?」
 ちょうど仮置き場にいたコルネリウスに対し、ディレインはヒールや解呪をかける必要があるか確認すると、仮置き場に幻覚キノコをまとめていく。
「解呪をお願いします」
 コルネリウスの要請を受け、ディレインはエーテルを活性化させ抵抗力を増幅させる光(解呪)をコルネリウスに向けて放ち、毒を解除した。

●駆除完了
 レタラは残る幻覚キノコを回収する際に、つい胞子を吸い込んでしまったことで幻が見えるようになった。
(この幻を目に焼き付けておく)
 見えた幻が、日頃考えていた物語の内容や推しだったことから、レタラは自身の記憶力スキルをフル活用し、見えた幻を可能な限り記憶にとどめていく。
 やや離れた場所でルアンナも幻を見ていたが、その内容は徐々に変化している。
「だんだん数が増えてきました」
 最初現れていた敵の姿は魔獣ばかりだったが、今はアンデッドの姿もあった。
 しかしいずれの敵も小さく、ルアンナの周囲でわちゃわちゃと動いているだけだ。
 一方ルアンナの姿をした幻も、今回依頼に応じた仲間達の幻を援軍として集めたようだ。
「味方も増えましたか」
 自分や仲間達の姿をした幻が、魔獣やアンデッド達の幻を追いかけ、蹂躙している様子をルアンナはまじまじと観察していた。
 時々魔獣やアンデッドの幻が宙へと浮きあがり、爆発する幻覚も見えた気がするが、ルアンナは気にしないことにする。
 時には幻を楽しみつつ、冒険者達は全ての幻覚キノコを回収し、仮置き場で焼却処分する。
 その際冒険者達が受けていた毒も、ディレインが解呪や解呪3を駆使して全て解除し、幻覚キノコは全て駆除された。
 幻覚キノコの完全駆除を確認した村は、冒険者達への感謝のしるしとして食事会を開く。
「終わりましたね。ではいただくことにしましょう」
 ヴィルヘルミナは目の前に並ぶ料理を味わい始める。
 今ヴィルヘルミナが食しているのはイノシシ肉のソテー。
 肉の弾力はあるが、はらりと噛み切れた。
 味付けはシンプルだがくどさがなく、付け合わせの野菜もやさしい味付けに仕上がっている。
「ワインはおみやげみたいなので、これを飲むことにします」
 ヴィルヘルミナは持参した蒸留酒を取り出し、切り分けた肉と交互に口へと運ぶ。
 ヴィルヘルミナが今味わっている蒸留酒は酒精が強いものの、フルーティーで芳醇な香りが鼻を通過し、まろやかな甘さを舌に伝えてくる。
 酒精の強い蒸留酒はたくさん飲めないはずだが、ヴィルヘルミナのうわばみスキルが良い仕事をしていた。
 その近くにいたコルネリウスは、鹿肉の煮込み料理を食している。
 肉自体は野性味が残るものの、クセはほとんどない。
 いい風味の後、うまみの濃い肉汁がたっぷりとあふれてきた。
 コルネリウスが咀嚼すれば、少し塩が濃いと感じた味は口の中でちょうどよくまとまっていく。
「この場でも頂きますが、ほろ酔い程度におさえておきます」
 コルネリウスは自身がそれほど酒に強くないと自覚しているのか、用意されたワインを少し嗜む程度に味わう。
 この村で作ったというワインは重すぎず、軽すぎないボディで、肉料理にはよく合った。
 一通り料理やワインを楽しんだコルネリウスは、周囲にいる仲間達に幻覚キノコが見せた幻について尋ねてみる。
「皆さんが見た幻覚ってどういうものだったのでしょうか?」
 ――支障がなければ聞いてみたいですね。
 コルネリウスが話を向けると、同じようなことをディレインも考えていたのだろう。
「何が見えたのか、聞いてもいい?」
 それまでイノシシ肉のシチューを味わっていたディレインも、無理強いはしない範囲で話に加わる。
 その中でディレインは、自身が見た幻として『嵐逆巻く魔海竜』だと打ち明ける。
「友人たちも一緒だしね。乾杯しよう乾杯」
(思い出は思い出。たまーに思い出すくらいでちょうどいいくらいだよ)
 こういうときは、笑い話や気晴らしになる話が出て来ればそれでいい。
 ディレインは内心そう思い、鍋のことを思い出したのか、少ししんみりしながらワインに口をつける。
 口当たりがよく、フルーティーな味わいがディレインの舌に伝わった。
 そして食事の席を一通り楽しんだレタラは、人のいない場所へと移動し、持参した紙と借用した筆記用具を取り出す。
「記憶が鮮明なうちに、全力デッサンだ」
(後でドゥジンシとして昇華してみせる)
 レタラは記憶力スキルによって、しっかりと覚えた幻を強くイメージしながら、絵画スキルや筆記用具を駆使し、紙に絵画を描き始めた。

●帰還
 食事会も終わり、冒険者達は土産として村で作られたワインをもらい、それぞれ帰路に就く。
 幻覚キノコは駆除されたことで、この村の林業が再開する日もそう遠くないだろう。
 冒険者の皆様。今回は本当にお疲れ様でした。

マスターコメント

 幻覚キノコ狩り、お疲れ様でした。  森に被害を与えることなく全てのキノコを駆除できたので、大成功と判定いたしました。  改めましてこの度はご参加下さりありがとうございました。  また機会がございましたら、改めてよろしくお願いいたします。
ショートシナリオR

ショートシナリオR普通 報酬:標準5 / 4〜8人

2023年11月22日 11時28分48秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ディレイン・オールドケイジ

    成立したね。いやーよかったよかった。 ヒーラーのディレイン・オールドケイジ、よろしく。 各スタート地点から、キノコを狩りつつ置き場に向かう感じかな。 H1のキノコが気になるから、I2スタートにしようかなあ

  2. レタラ・スマリ

    無事成立して何よりだな。 シューターのレタラ・スマリだ。宜しく頼む。 オレはA6スタートで木々の狭間から茸を狙い撃つ形を取ろうと思う。 しかし、幻覚か……一体どんな幻が見えるのだろうな。願わくばドゥジンシのネタに出来ると良いのだが。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0