【恨縁】前門の魔獣 後門の蟻亜人
広大野人
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シナリオID:3184
オープニング
王国騎士エナハルト・ティルムとイェルド・ルリンの二人は、本部からの命令変更書を受け取っていた。
魔獣使いマガリー・アフレ及びその関係者の捕縛または討伐。
潜んでいる場所は前回、追跡した冒険者が発見した領都郊外の屋敷だった。
「調査中の急な命令変更は、何かの意図があるのでしょうか?」
首を傾げたエナハルトにイェルドは低く唸ってから応える。
「だろうな。上層部の方で動きがあったという事だ」
そこには、ある貴族と王家との政治的な取引を含んだものがあるのだが、王国騎士二人が知る由もないし、明るみになる事もないだろう。
「屋敷が領主の所有物という事、これまでの経過を見れば、領主とマガリーの繋がりはほぼ確定といって良いでしょう。屋敷に踏み込んだ時、領主がいても命令は変わらないという事ですね」
「そんな命令だからな。まぁ、踏み込むタイミングが大事になるだろうよ。念の為、冒険者にも声を掛けよう。最悪、領主らを相手にするかもしれねぇからな」
全ての情報が末端まで届かない事はよくある事だが、それで大惨事になってしまうのは避けたい。不貞腐れた態度でイェルドはソファーにどかりと身を預けるのであった。
●???
領主館の一室ではザンディラ・レルドク子爵が先程届いた書状を手にわなわなと怒りを抑えて震えていた。
「あの若造めぇ! わざと黙認して旨い所だけ、かっさらっていくつもりか!」
『本家』から届いた書状には、レルドク子爵が違法な事をしているのではないか、その件について弁明の機会を与えると記されていたのだ。
「時間を掛けて、国境外の資源を調べ、邪魔な集落を排除し、これまでの注いだ分以上を、ようやく手に出来るようになったのだぞ!」
唾をまき散らしながら叫ぶ領主。対して、マガリーは疲れた様子だった。
「怒鳴った所で解決はしないものよ」
「分かっておる……恐らく、この件は内密に処理させようとするはずだ。そうでなければ、旨みが全くなくなるからな。忍んで来た所を、魔獣の襲撃で口封じしてしまえば良い」
「手持ちの子はいないわ」
両手を挙げたマガリーにレルドク子爵がニヤリと笑う。
「『親』がまだいるだろう」
「あれを支配するのは無理よ。今だって特別な術式を組み込んだ部屋に閉じ込めているのだから。万が一でも解き放たれれば……あぁ、なるほどね。わざと放てと」
「護衛はついているだろうが、混乱を突けば、我らの手で始末する事も出来るはずだ」
獰猛な魔獣が『本家』の者共を、喰らえばそれでよし。できなければ、戦っている隙を突いて暗殺させてしまえばいいだけの事。
王家や他貴族には魔獣に喰われたと報告すれば解決だ。
レルドク子爵は落ち着きを取り戻したのか、思案するように窓の外の風景をジッと見つめる。
「……郊外の屋敷に呼び出して、玄関を開けたら『親』だな。塀と門の間の植え込みに手勢を隠れさせて、退路を断つ……これでいく」
「相手は『本家』よ。いいの?」
「ふん。若造に貴族の厳しさというものを見せてやるのだ。権謀術数渦巻く戦場が、この国の姿だという事をな」
絶対ヒューマン主義が行きつく先は、平和ではない。その思想の根底にあるのは、結局の所、弱肉強食に過ぎない。如何なる手段を用いても、人の上に立ち続ける者と絶対的な権力を目指し続ける者が戦い続ける修羅の道なのだ。
●???
選りすぐりのメンバーが集められた。いずれもレルドク子爵の私兵だ。
非授恵者もいるが、武芸においてはそれなりの実力を持つ者ばかり。つまり、レルドク領軍の精鋭に当たる。
「……なんだ? ボトゥはどうした?」
隊長と思われる人物が点呼を取っていたが、一人、足りなかった。
弓を使えば威力は兎も角、百発百中の弓兵ボトゥの姿が見当たらないのだ。奴には『目標』の暗殺という役目を与えていた。
「それが昨晩から姿が見えなくて……」
「なんだと……。まさか、密告か!?」
驚く隊長。しかし、『目標』が誰なのかは知らせていない。風貌と年齢を教えただけだ。
それに、『若造』のスパイではないはず。ボトゥはこの街で生まれ、不自由なく過ごしてきた。レルドク子爵に大恩があり、忠誠心も高い……だからこそ、メンバーに選出された。成功すれば、より良い待遇も約束している。
「暴徒の騒ぎの後から、彼奴、少し変だったな」
「あぁ、なんだか、エーテルを使えるようになったとか」
「そうそう。非授恵者が使える訳ねぇのにな!」
同僚達がなにやら口々に話す。
隊長は暫し悩んだ末に、ボトゥの行方を衛兵に任せる事とした。
「俺達は準備がある。各自、数日は家に戻れないと思え」
計画に変更は無い……無いのだが、強い不安を感じずにはいられなかった。
●???
「……なるほど。金髪緑眼の顔立ちの整った青年の暗殺か……わざわざ、切札を使ってまで殺したいというのは、相当な地位の者なのだろうな」
『赤の親指』ミュルコレオが弓兵ボトゥから一連の話を聞いていた……いや、ボトゥの知っている情報を吐き出させていたと表現する方が正しいか。
「ニチジ……フメイ……」
虚ろな目で呟くボトゥ。
末端なので知らされていないのだろう。これ以上の情報が得られない事、今から戻しても警戒される事を鑑み、次の指令を発するエーテルを放った。
そのエーテルに従い、ボトゥは腰の短剣を抜くと躊躇する事なく、自身の頸動脈を突き刺した。
迸る血飛沫。
幾体もの蟻亜人がそれらを舐め取っていく。
「絶好の機会よ」
子爵がいれば上出来だが、マガリーを倒せればそれで良い。その程度は自らが手を下すまでもない。今はそれよりも、撒いておきたい事があるのだから。
●前門の魔獣 後門の蟻亜人
二人の王国騎士の護衛を依頼された冒険者達は、立会人と名乗る人物らと共に領都郊外の屋敷へと到着した。
立会人は3人。一人は青年だった。エナハルトほどではないが、金髪緑眼のイケメン。残り二人は老執事と給仕娘だったが、物騒な事に武装していた。
老執事は鉾槍。給仕娘は大きな弩だ。
「我らの護衛は必要ございませぬ。皆様方は王国騎士殿をお守りください」
「せいぜいー、死なねーよーになー」
直後、暴言を吐いた可愛らしい顔立ちの給仕娘の頭に老執事の鉄拳が振り落とされる。
どんな関係性なのか分からないが……腕は立つようなので、万が一の時、守る必要性はなさそうだ。
緊張感の無いやり取りにエナハルトが乾いた笑いを浮かべた。
立会人の取り扱いについては、彼も難儀しているようだ。
「恐らく、戦いになります。最後の悪足掻きと言うべきでしょうけど」
イェルドは鋭い視線を周囲に向けて警戒していた。
「生き残りの狼型魔獣も出るかもしれねぇから、注意は必要だ……それに、なんだか……嫌な予感がするぜ」
「先輩の予感は嫌な方向に当たりますからね。勘弁して下さいよ」
「そうは言ってもな……ずっと監視されているような気配を感じるんだ……あぁ、エナに変な虫がつくかもしれねぇ」
「笑えない冗談ですよ。実際、蟻亜人の行方は分かっていませんからね」
そんなやり取りをしながら、一行はいよいよ領都郊外の屋敷、その玄関にまで辿り着くのであった。
これから死闘が繰り広げられる事になる、戦場に――。
解説
マスターより
リプレイ
屋敷の玄関が内側から豪快に開く。
人の手で開けたと言うよりも、狼型魔獣が外に出る為に扉をド突き開いた方が正しいだろう。
「捕縛か討伐……マガリーに訊きたい事はあるけど、とりあえず、この戦いに勝たない事には……ね」
ルベア・ベルニは呟くと仲間達に目配せする。塀から玄関までの間、塀側の植え込みに多数の伏兵を察知していたからだ。
ここは領主が保有している屋敷だ。手勢を潜ませておく事など造作もないはず。
キオルティスが一歩踏み出した。
「このタイミングで襲って来ないのは、俺達が魔獣と本格的な戦いが始まってからかな」
様子見されているのだろう。あるいは、別の理由もあるのかもしれない。
冒険者達は知る由もないが、玄関から現れた魔獣はマガリーの支配下に無いからだ。
立会人達に向かってシルヴィア・A・カペルは声を掛けた。
「背後に敵が潜んでいるのなら、私達は魔獣を突破して屋敷に入ってしまおう」
「妙案だ。ならば、従者には援護させよう」
金髪緑眼の青年が抜刀しつつ、そう応える。
屋敷の中が分からない以上、リスクはある。他にも魔獣が残っているかもしれないし、領主の私兵が詰めているかもしれない。
玄関から現れた魔獣にナハティガル=ラーが意識を向ける。大きさや毛並み、全身から発せられる雰囲気はいつもと異なっていた。
「これまで戦って来た狼型魔獣の上位種か?」
「とりあえず、屋敷の中からは他に魔獣の音は聞こえないようだが、油断はできないな」
セリオス・オーガストは耳から入ってくる様々な音を分析していた。
息を潜めているような呼吸は背後の茂みから聞こえるが、屋敷からは聞こえない。現状のままだと挟み撃ちを受ける可能性があるのなら、魔獣を抜けた方が戦いやすいというもの。
冒険者達に《輝刃》エーテルを付与する為、意識を高めながらミア=リゼルはまだ姿が見えないマガリー・アフレを求めるように視線を巡らせていた。
(たとえ、真実が厳しいものだとしても、知らないまま後悔はしたくないです……険しい道のりでも手が伸ばせる事を、私は……諦めたくない)
それが唯一無二の友の為になると信じて。
●
魔獣の注意を引くように動くルベアとキオルティスの二人と側面から強力な攻撃を叩き込んだナハティガルに、魔獣から攻撃的なエーテルが届く。
「これは、炎と風の力なの?」
「隣接しているだけで、この威力は……危険だね」
ルベアの疑問にキオルティスが頷いて応えた。
かまいたちのように切り裂いてくる風の障壁に炎の力が合わさっているのだ。近くにいるだけで体力を消費するのは、炎を操る狼型魔獣を連想させた。
上位種という括り以上の存在だとナハティガルは推測する。
「この地方で戦ってきた狼型魔獣の『生みの親』かもしれないな」
雷の力を宿していないのは、その力を得る事が出来なかったのかもしれない。以前、別の依頼で雷の力を宿す狼型魔獣と戦った際、ミュルコレオが確実にトドメを差して回っていた事を思い出した。
キオルティスが魔獣の正面に回りつつ、立ち位置を確認する。
「ルベアさんも側面に回って。固まっていると範囲攻撃を受ける可能性があるから」
「それなら、任せたわ」
前衛組が魔獣と対峙している間にエナハルト・ティルムやイェルド・ルリンの王国騎士を含む他の仲間達は立会人らと共に屋敷の中へと向かうのだ。それまでの間、万が一でも大きなダメージを受けてしまえば作戦自体が崩壊する。
エーテルで生成された無数の氷棘の射出をナハティガルは辛うじて避けた。
「身体は炎と風のエーテルを纏い、牙や爪が届かない距離には氷を放ってくるか……今の所、遠近に隙は生じそうにないな」
複数の力を同時に操るその能力をナハティガルはしっかりと観察し続けた。
魔獣を迂回して屋敷の中へと飛び込んだシルヴィアは真っ先に安全を確認する。
大きなホールには人の姿が見えなかった。
「人の気配がない……? 好都合だが」
マガリーの支配下に無い魔獣を外に誘導する為に、屋敷の一階に人を配置できなかった領主側の都合があったのだが、冒険者達に有利に働いた。
エーテルを高めるシルヴィアの横にミアが並ぶ。
「今、回復魔法で援護します」
屋敷に入るまでの間、魔獣を引き付けた前衛組は致命的な傷を受けてはいないものの、無傷ではないからだ。
ミアは視線をエナハルトに向けると、彼はいつもの微笑を浮かべて応えた。
「イェルド先輩と他の出入り口を確認してくる」
「気をつけて、エナ」
見つめ合う二人に半分蚊帳の外のイェルドが揶揄うように口笛を鳴らした。
一応、貴族の屋敷なので勝手口はあるだろう。領主やマガリーの逃亡。あるいは、私兵が入ってくる可能性は十分に高い。二人が抜ける事で戦力の低下は避けられないが、作戦を継続する以上、やむを得ない対応だ。
奇襲が失敗しただけではなく、冒険者達の動きが面倒になった事に気が付いた私兵共が次々と植え込みから姿を現した。
「今頃になって仕掛けてきたようだ」
弓を構えたセリオスの警戒を促す言葉にシルヴィアは改めて状況を確認する。
「あの動きを見るに、魔獣はマガリーの支配下に無いとみていいようだね」
明らかに魔獣を警戒するように距離を詰めているからだ。
セリオスは領主私兵に向かって弓を放ちつつも気を緩めていなかった。
「……遠くから、何かがこっちに向かっているようだ」
半獣人特有の耳が音を掴むように細かく動く。
このタイミングで敵に増援とは考えにくいし、味方が来る話も聞いていない。となると、それ以外の存在という訳だ。
●
戦場の動きは流動的だ。
冒険者達が屋敷に入るという選択を取った事で生じた流れは、まず、冒険者達を襲った。
「わざわざ寡兵を分断するとは愚かだな」
「けれど、派手な魔法は使えないわよ」
ホールの2階からバルコニーに続く扉が開き、姿を現したのは完全武装のザンディラ・レルドク子爵とマガリー・アフレの二人だった。
領主は腕に自信があるのか、弓を投げ捨てると大剣を手にして一階に降りる為、階段を目指して走り出した。
「ここは私が」
踏み出したのはミアだ。回復魔法を使えば時間稼ぎ位は出来ると踏んだ。だが、それを立会人の青年が腕を伸ばして制する。
「君は回復に専念しなよ。それが本職だろう」
剣を構えて走り出した青年に領主が何か叫んでいるが、マガリーが冒険者達に言い放った言葉で遮られてしまった。
「ここでお前達を倒して仕切り直しよ。ハーフビーストも、ゴブリンも、リザードマンも、この手で全て滅ぼす為に!」
直後、冒険者達に降り注ぐ光釘のエーテル。
シルヴィアは攻撃魔法から回復魔法に切り替える。
「これは……少し、厄介な状態だよ」
前衛組はまだ魔獣を足止めしている以上、後衛だけでマガリーに対処しなければならないが、シルヴィアもミアも回復に専念しなければならない状況だから、手が空かないのだ。
忙しく矢を番えたセリオスが応える。
「全くだ。だが、事態が動くかもしれない」
「何か策が?」
「そうじゃない。屋敷の外から――」
後衛組の視線が門へ向けられた。直後、大型馬車が急停車したのだ。
そして、その中から多数の蟻亜人が飛び降りて来る。
「蟻亜人です!」
ミアの声が前線組にも、私兵団にも届くのであった。
背後から蟻亜人が襲撃してくる事態になって浮足立った私兵団の動きをキオルティスは見逃さなかった。
「二人は先に屋敷へ!」
その言葉を受け、ナハティガルとルベアは全力で屋敷へと飛び込むように移動する。開きっぱなしの扉の中央に立つナハティガルは並び立とうとするルベアに声を掛ける。
「屋敷内の敵を任せた。出入口は俺とキオルティスで抑える」
頷いたルベアから視線を魔獣へと戻すナハティガル。
キオルティスが一人、乱戦状態になろうとしている戦場のど真ん中に残される形となってしまったからだ。更に蟻亜人の襲来により状況は混迷としている。
「マガリーを討ちに来たのか? だが、何かが引っ掛かる……ミュルコレオには他にも狙いがある様に思えるが」
エーテルを振り絞り、ナハティガルは短剣を魔獣に振るう。強力な攻撃を叩き込めば、注意を引けるだろうという算段があった。
それがなければキオルティスの狙いは上手くいかなかっただろう。ナハティガルに注意を向けた魔獣、後ろから迫る蟻亜人を気にする私兵団……その一瞬の隙を突いて、キオルティスは閃光塗弾を破裂させたのだ。
「これなら!」
想定していた動きと若干異なるが、戦闘の流れを冒険者側に引き戻すには十分だった。
ホライゾナルジャンプを駆使して屋敷の扉へと移動したキオルティスを見失った魔獣は、門の外へと向かう障害が一つ減ったと判断し、自ら私兵団に襲い掛かっていったからだ。
前後を魔獣と蟻亜人に襲われ私兵団は恐慌状態となり、逃亡する者も出る始末だ。
●
士気が崩壊した私兵団は次々に脱落者が目立つようになり、魔獣は外に向かって進む。
「夷を以て夷を制すだな。だが、魔獣を外に出す訳にはいかない、か」
ナハティガルが発した言葉に射程調整の為に一歩進んだセリオスが応える。
「蟻亜人諸共、撃つが加減は必要か」
今、蟻亜人が門を塞いでいる形だからだ。
キオルティスが呼吸を整えるとエーテルを高めつつ、二人に言った。
「小細工はミュルコレオには通じないだろうけどね。だけど、私兵団に寄生型魔獣を植えさせたくないから、急ごうか」
何気なく発したキオルティスの台詞に、ナハティガルが引っ掛かっていた何かに気が付いた。
「あの馬車……蟻亜人が御者を務められるとは思えない。だとすると、手綱を引いていたのはミュルコレオか」
「だが、そこにいるのもミュルコレオだろう」
狙いをつけるセリオスの言葉通り、冒険者達の視界の中にはミュルコレオの姿があった。
キオルティスはその正体を見抜く。
「……分体という事なんだね」
「だとしたら、本体が向かった先は……」
意見を求めるようにナハティガルはセリオスに視線を向け、彼は応じるように頷く。
「馬車は街へと向かったな。領主がここにいる以上、向こうは指揮系統に乱れやすいはずだ」
ミュルコレオの狙いは街中で寄生型魔獣を放つ事にあったのだろう。
それは新たな脅威である事は間違いないが、今からどうこう出来る事ではない。3人は頷き合うと魔獣へと視線を向き直した。
少なくとも、魔獣をこの場で討伐しておかないと後々、面倒な事になるからだ。
「奴等にこっちの脅威を知らせておくか」
そう言うと、セリオスはエーテルを込めて強烈な一撃を放つ。
蟻亜人とはいえ、強い弱い位は理解出来るだろう。魔獣の後ろに手強い冒険者達が控えていると分かっていれば慎重にもなるはず。
ナハティガルとキオルティスの二人が魔獣へと斬りかかった。
「ミュルコレオが分体であれば、温存する必要もないだろう」
「そうだね。ついでに、分体の能力も確認できるだろうから」
冒険者達が優位な位置を取った事で、屋敷外の戦いは安定するのであった。
一方、屋敷内での戦いも動きがあった。
立会人達が見事な連携で領主と追い詰めていく中、マガリーは状況を打破する為、ホールに飛び降りたのだ。そこでルベアと対峙する。
「アナタには私を殺せないのかもしれないけど、私がアナタをどうするかは……アナタが知っていること次第よ!」
「邪魔をするなら、倒すまでの事!」
短剣と短剣がぶつかり合う音が響く。ルベアの三連撃は届いたが、まだまだ浅い。対してマガリーはエーテルによって短剣を鞭のように操り、ルベアの太ももを切り裂いた。
しかし、その傷はシルヴィアが青い炎のエーテルを奏で回復させる。
前衛組も射程に入るように位置取りに気を遣いつつ、シルヴィアが声を掛けた。
「回復は私が持つから、ミアはルベアの援護を」
ミアは頷いて細剣を手にマガリーの側面へと回る。
室内と室外、両方の戦況とタイミングを見計らってシルヴィアは回復魔法を行使する為、エーテルを高めていく。ミアは言葉にしなかったが、既に回復魔法が枯渇していた。
ここが正念場だ。シルヴィアはマガリーから言質を取るように訊ねた。
「貴方達が憎む種族とは、如何なる手段を持っても分かり合えないのだろうか?」
「血は何よりも尊いもの。奴等がいる事で血が穢されるのよ!」
そう叫び返すとマガリーはルベアの執拗な攻撃を最低限の動きで避けつつ、エーテル操作した短剣で反撃する。
「穢されているのよ、私も、君も、同じようにね!」
「同じ血が流れてるなんて、嘘でしょ!」
冗談だって――続いた言葉は最後まで紡がれなかった。避けたと思ったマガリーの短剣は急旋回してルベアの首筋を切り裂いたからだ。
「血も、言葉も、分かり合えるものなんか、もう無いのよ!」
勝利を確信したマガリーの怨恨の叫び――だが、ルベアは倒れていなかった。
致命的な一撃はミアがスケープセイントで身代りになったのだ。
「言葉が全て解決してくれる訳でも……分かち合える訳じゃなくても……そうだと知っているからこそ、私は、それでも……」
流れ出る血を抑えながらミアは膝をついた。
駆け寄ろうとするルベアに手を挙げて止める。ダメージを受けたが戦闘不能になる程ではない。頑健さの違いだろう。
「……知るには……言葉が、必要だから……」
ルベアの持つ短剣がエーテルを宿して淡く光る。
友の想いにルベアは頷いて応えると低い腰だめから一気に距離を詰めた。逃れるように避けようとしたマガリーだったが、その動きが一瞬、ズレる。
魔獣に攻撃を専念していたセリオスからの絶妙な援護射撃によるものだ。
「くっ!?」
「たぁぁ!!」
身体ごとぶつかった短剣は、マガリーの右腰下部に深く突き刺さった。
●
屋敷内での戦いは間もなく終了した。領主が立会人の青年に討たれたからだ。
二人の王国騎士と、立会人の従者二人が屋敷外で戦闘に加わった事で魔獣と蟻亜人共は殲滅。生き残りの私兵団は降伏した。
「……領主は瀕死のようだな?」
魔獣の死を確認しながら呟くように言ったセリオス。
それに応えたのはキオルティスだった。
「捕縛に一歩届かなかったみたい……それに立会人、領主と関係する血族じゃないかな」
「しかも、領主よりも上の立場と見てもいいかもしれん」
ナハティガルが屋敷の中に視線を向けながら補足する。
屋内では重傷を負ったマガリーにミアが応急処置を施していた。刺された後も戦闘を継続していたが血を流し過ぎたようで意識を失ったのだ。
「命に別状はないでしょうけど……」
「これから先、どうなるかだね」
シルヴィアはそう応えると複雑な表情でマガリーを見つめるルベアの肩を叩いた。
ルベアは応えるように小さく、けれど、強い決意を感じられるように頷いた。
向き合える機会が必ず訪れるだろうから――。
マスターコメント
ショートシナリオ非常に難しい 報酬:多い6 / 4〜6人
2023年09月14日 11時41分29秒 公開
相談掲示板
エナに…悪い虫!? し、失礼しました。冷静さを欠いてしまった… いつも遅刻気味の私ですが、背後の忙しさがマシになってきたので早めに…ヒーラーのミア=リゼルです。よろしくお願いしますね。 …(PL情報ですが)増援がいっぱい! NPCさんもお強い面々なのでそこは心強いですが、囲まれると厄介そう… 遮蔽や障害物が少なそうな外よりも、屋敷の中なら機動力を制限できそう…ですけど、どうでしょう?
すまん、書き損じた。 シーフのナハティガル=ラーだ。――引き続き宜しく頼む。 >目的 今回の依頼目的は『敵勢力の捕縛もしくは討伐または撃退』だが、捕縛≒討伐>撃退の認識で構わないだろうか? >狼型魔獣 まずは出会い頭で相対するコイツの対処をどうするか、だな。 取り敢えず、序盤は回避集中で攪乱&手の内を探る方向で考えている。 >室内への誘引 俺としては室内戦の方が戦い易くはあるな。 ただ、こちらも範囲攻撃等は使い難くなるかも知れん。(最悪、建物倒壊や火事になる可能性がある為)
シーフのルベアよ、宜しく。 >目的 ナハティガルさんの認識でいいと思う。 …個人的には、子爵は兎も角マガリーは討伐じゃなく捕縛にしたいけど。 ちゃんと、確かめておきたいこともあるしね。 >室内への誘引 もし数減らし目的でやるなら、本格的に室内で戦う前に玄関に先に入って、 追撃してこようとおそらく固まってくる敵を一網打尽に出来ないかしら。 それだったら範囲攻撃を使うリスクも多少は減ると思うし… うまくいけば、私兵団と蟻亜人で勝手に数を削り合ってくれるかもしれないわ。 もちろん(その時まだ残ってれば)狼型魔獣とか、ミュルコレオには通じない… というか、特に蟻亜人は率先してミュルコレオの道は作りそうだけど。
シルヴィアだ。今回もよろしくね。 >目的 私もナハティガルの捕縛≒討伐>撃退の認識で良いと思うよ。 >敵の情報 事前に茂みに隠れている私兵団と、奇襲を仕掛けてくるミュルコレオ達。 出来るだけ早く情報を落とし込みたいし、索敵スキルは持って行きたいね。 >室内への誘引 そのまま戦えば数ラウンド後には別陣営の敵に挟撃される事になる。 混戦を避けるためにも、後から出現する敵を一網打尽にするのは良い案だと思った。 気掛かりな点は、今回の魔獣はマガリーにも制御不能だから、あたり構わず攻撃を繰り出してくるかもしれない事。炎と氷と風の攻撃を持っているから、室内で暴れられると既に言って貰っている様に火事・崩壊になる可能性が高いかも。 私兵団や蟻亜人を狙ってくれれば良いけれど、誘導は流石に難しいかな。 >狼型魔獣 狼型魔獣の攻撃で屋敷が崩壊しそうになった時と、後続の敵達の対処で手が回らなくなった時、光縛封で囲んで一旦攻撃を遮ろうかなと考え中(魔法攻撃持ちだろうから長くは持たない可能性が高いし、まだ確定では無いよ)
シーフのキオルティス。今回も宜しくね! >目的 俺も同様の認識だね。出来れば捕縛≧討伐>撃退くらいで行きたいけれど。 まだ何か、こちらで把握していないことをやってるとも限らないしね。 >索敵 そうだね…索敵に重宝するものなら所謂『索敵スキル』でなくとも 持って行ければ先手を打った行動を取れる可能性が高くなる。 少なくとも私兵団と蟻亜人たちには対応出来るかな…と。 >室内への誘引 悪くないね。 狼型魔獣の誘引か…室内からの追撃を一切止めて、回避の高い面子で 他勢力が攻撃して来たと見せ掛けるフェイクを入れる…くらいしか 思い付かない、かな。今のトコロ。 マガリーの言うことを聞いてくれるなら声帯模写とか使えたかもしれないけれど。
>目的 私もその方針で問題ありません。 捕縛のために皆さんの命が危うくなる場合には、しかるべき対応に移らせていただきますね。 >戦域 では室内誘引の方針でそのデメリットを潰しつつ…屋敷内への突入に失敗した場合の策も同時に考えておかなくてはいけませんね。この敷地内で、どう布陣すれば効果的か…少し考えてみます。 >スキルについて ちょっとまだ早いかなと思うのですが、戦線維持に必要な情報かと思いますので早めに共有しておきますね! 私はコモンブラッドとスケープセイントの保険を主に、治療強化、ヒール、装甲防御、輝刃…の予定です。スキル枠の制限がつらい…!! ライフアンカーも、と思ったのですが、拡大輝刃で範囲攻撃と単体火力を一気に上げて殲滅力を高める方がむしろ安全…?と思いまして…攻撃は最大の防御… 装甲防御はデバフ解除系と入れ替えるかもしれません。
>索敵 あ、キオが言ってくれたように、索敵に使えそうなスキルならシーフやシューターの皆が持っている索敵スキルでなくても良いと思っているよ(分かりづらい書き方をしてごめんね……!) 私も超聴覚か看破を持って行くつもりだ。 >狼魔獣の誘引 誘引する時、回避の高いメンバーがラウンドの初めに一斉に行動できるよう仲間の行動順を調整して、ラウンド冒頭で他勢力がいる方向(おそらく入口)からフェイクを入れる……というのはどうだろう。私兵団にはシーフもいるから一番手になれるかは分からないけれど出来るだけ早めに。 他のメンバーは誘引の成功・失敗を確認した上で動けるかなって。 >室内誘引失敗の場合 狼魔獣を囲むように布陣にする、とかかな。 狼の自由な移動を防げるし、多方向から敵の索敵・警戒も出来る。 >予定スキル ミアがコモンブラッドとスケープセイントを持って行ってくれるなら、私は光縛封とハイパーヒーリングオーラにしよう。アクションスキルはヒールと解呪。残り二つのスキルはまだ考え中。 汎用スキルは超聴覚or看破と、戦術眼の予定。皆が持って行くスキルによって変更したいと思っているよ。 (誤字で書き直したよ。申し訳ない)
・・・ん、挨拶遅くなった、シューターのセリオスだ、よろしく頼む <目的 異論はない。まあ可能なら捕縛でぐらいだろうの気持ちで倒すのが手っ取り早いか >室内への誘引 増援が来るならなるべく多数を相手しやすい場所がいいと思うし、異論ない。 吹き飛ばし効果付きのスキルがあれば狼を室内に吹き飛ばせそうだが、今回ウォーリアいないからどうにか誘因はさせたいところだな。 あとは室内に入ったら扉は締めておいた方がいいのだろうか >索敵 俺も超聴覚など索敵できるのを持っていく予定だ。増援がくるのは俺たちはわからないことだしな。奇襲をそしするのに周囲の状況を探る形で先に発見しなければならんだろう。
あれ?俺が間違ってたかな…。 戦闘時の室内誘引についてなんだけれど。最初期の布陣としては 【俺たち ←室内|入口|→外 狼 増援】 その後、少しずつ敵勢力を室内に誘引しつつ、倒していく形を取る って言う風に考えてたんだけれど…違ったかな? 狼は最初手のセットアップ時に室内から外へ飛び出して来るんだよね? ならばまずは増援の有無を確認。 増援が攻撃してくる前にその存在が居ることが分かり次第、狼を外に 釘付けにしておいて、その間に俺たちが室内に陣取る。 増援が出てくるまでは室内から狼を攻撃。 増援が出次第、狼と増援をぶつけるように仕向けつつ、増援を範囲攻撃で 一気に淘汰しながらも、増援が大挙して押し寄せないように 室内と言う狭い場所(大挙し辛い場所)にて迎撃。 狼はナハティガルさんやシルヴィの言うように室内では危険分子であるから 増援→狼の順で誘引するのが良い。 …こんな風に考えてたんだけれど。 これで大丈夫なようなら、必要なのは狼が室内に戻らないように 俺たちが室内に入れること。 それから狼を増援とぶつけること。 この2点が一番のポイントだと思うんだけれど…間違ってたかな。 もし合ってるなら、まずは狼の意識を外に向けたまま、室内に入る。 その後、増援が姿を現し次第、狼にも攻撃を向けているように仕向けて 狼にも増援を淘汰して貰う。こんな感じじゃないかな…と。 で。後者の狼の意識を増援に持って行く手段として、先に俺の言った提案が あったんだけれど(フェイク云々)勘違いしてたならゴメン!
ちょっと語弊があるかもしれないので、一言。 最初期の布陣って言うのは、狼が外に出て来た後、俺たちが室内に入った後、 って言う意味で、初期配置は 【狼 ←室内|入口|→外 俺たち 増援】 その後、セットアップ完了後は 【←室内|入口|→外 狼 俺たち 増援】 って形になるのは理解してるつもりだよ。 紛らわしくてゴメンね。
キオ、分かりやすい解説を有難う。読んでいて成程と思ったよ。 >誘引について 狼魔獣の機動力を制限する為に、まず狼魔獣を室内に誘引するのが最初の行動かなと考えていたのだけれど、確かにキオが言ってくれた作戦の方が良いね。狼の攻撃方向も制限出来るし、他陣営を狼の攻撃の巻き添えに出来る。味方勢力を守りやすい布陣に出来るのも良い。 「まず私達が室内に入る」「狼と増援をぶつける(増援→狼の順で誘引する)」というポイントも了解だ。 狼を玄関前に足止めしつつ、冒険者と味方勢力が室内に入る。他勢力が攻撃してきたと見せかける為に、回避の高い面々がフェイクを行う……という事で合っているかな。間違っていたら遠慮なく指摘して欲しい。 >持って行く汎用スキル セリオスが索敵に超聴覚を持って行ってくれるなら、私は看破を持って行くね。出来るだけ早く隠れている敵を見つけたい。
(ああ 背後の忙しさがマシになってきたとは なんだったのか…昨日お休みだったのに一日中ぐったりしておりまして 間が空いてしまいまして…) (頭が比較的回っている明日の午前中に書き込めたらと 思います…!)
>個人方針 現状、俺個人は下記の様な動きを予定。 初手から狼型魔獣の対処に当たる為、索敵する余裕はないと思われる。 1R目 室内から強襲してくる狼型魔獣を回避集中で迎撃 可能な限り狼型魔獣の執着を引き付ける 2R目以降 引き続き狼型魔獣の対処 増援察知した際は、狼型魔獣の攻撃指向が増援にも向かう様立ち回る ・ミュルコレオ達への対処 攻撃されたら対処する程度に留め、積極攻撃はせず 戦況によっては共闘 >スキル 特性:真トリプルファング、真・壁歩きor真バーストストライク 汎用:戦術眼、天眼 アクション:フェザーステップ、疾風足、(残り2枠) 上記のスキル構成を考えている。
よし…! では自分用に整理も含め、一旦まとめますね 取り違いなどあればご指摘いただければと思います。 ● 目標 優先度は 捕縛 ≧ 討伐>撃退 ● 全体タイムライン [START!]セットアップで玄関から狼型魔獣が飛び出してくる ↓増援の有無を確認(PL情報のため立ち回りには注意)支援系スキルはここでかける ↓ヘイトを取ったり罠などで狼魔獣を屋敷外にとどめておき、その隙に残りは屋敷内へ ↓増援が出てくるまでは室内から狼を攻撃、増援と狼をぶつける 何かしらの手がかりが残ることも期待して、屋敷が倒壊するのは避けたいところ…狼と増援の相打ち狙いは難易度が高いかと思われますが、鍵となるは狼の制御…でしょうか。 私は屋敷内に行くつもりですが…シーフのエナハルトさんと組んで探索したら、マガリーさんとも相対できる、かな…? 侵入を察知したマガリーさんに後ろから刺されたくないのもありますし、私は屋敷内の勢力の迎撃にあたろうかと。
1時間後には出発だね。プレは提出済だよ。 俺もナハティガルさんと同様、外に出る形で動いてみることにしてある。 それじゃ皆、戦場で会おう。良い結果になるといいね!
もうすぐ出発か。 私は二人が狼を引きつけてくれている間に索敵と情報共有。 屋敷内部の安全を確認してから仲間と味方勢力に続いて貰う形にしている。 無事成功しますように。現地ではよろしくね。