【呑竜】義勇兵、レイウェスト皇子暗殺を謀る【茜蔓】
岩岡志摩
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シナリオID:3182
オープニング
この日フローラ伯爵は予め決められた手続きを重ねた末に、メアリー王女へ拝謁する機会を得た。
型通りの挨拶を行った後、フローラ伯爵はメアリー王女への暗殺に動いたリスタ子爵に関する内容を報告する。
既にメアリー王女も新生『王家の耳』を介して正確な情報を得ていたが、フローラ伯爵の報告には王家の耳もまだ掴んでいない内容も含まれていた。
「それは確かな話ですの?」
メアリー王女の問いかけに、フローラ伯爵は持参した書類を傍らに控える王国騎士へと差し出した。
「詳細はこちらにございます」
フローラ伯爵が頭を下げる中、一通り内容を確認した王国騎士がメアリー王女のもとへ書類を捧げ持つ。
受け取ったメアリー王女は書類の内容を確かめる。
その中にはメアリー王女暗殺計画を阻止した冒険者達が現場で得た情報も含まれていた。
――リスタ子爵家はレイウェスト・バルダス皇子への暗殺にも動いている。
既にレイウェスト皇子はリーンエス王国へ『龍挺架』が持ち込まれていたことを受け、クライス・アクバーらを連れて王国入りしている。
そのレイウェスト皇子に対しても、ヒューマン至上主義を掲げる貴族達が敵意を向けていることはメアリー王女も知っていた。
だが実際に暗殺へと動いたのは、メアリー・リーンエス王女暗殺に失敗したリスタ子爵家だった。
家の評判が潰され、軍事行動に出ることは難しいと思われたが、リスタ子爵は義勇兵を派遣したと書類には記載されている。
「この義勇兵とは何者ですの?」
「もとは様々な種族の者達が種族の垣根を越えて手を携え、犯罪者達を討つ集団と言われています」
メアリー王女の疑問に答える形で、フローラ伯爵は収集できた情報を言上する。
これまでリスタ子爵は様々な種族の人間達を扇動し、義勇兵に仕立て上げて様々な事件の実行役を担わせていた。
その中にはメドゥの指先幹部『黄の小指』ロコの故郷やその周囲で暮らす人々に犯罪者の汚名を着せ、虐殺した事件も含まれる。
発覚しなかったのは、義勇兵達が目撃者となりうる近隣の集落や村の人々も皆殺しにしたためだ。
死者は何も語らない。
村や集落を統治する者達も含めた全員が犯罪者として殺されたため、子爵の暗躍により義勇兵達の行動は義挙として讃えられた。
しかし【泥乱】事件においてギシュム族集落の防衛戦が展開される中、元義勇兵プドルがその身柄を確保され、大酋長アシムベード・グリオウ立会いのもと供述が得られたことで、その実情が明らかとなった。
そしてギシュム族集落防衛に助力したロコがメイレの名でアルヒへと提出した証拠も、犠牲となった人達の冤罪を晴らす一助となった。
証拠の中には義勇兵に滅ぼされた村の民として、ロコと故郷の人々が認められたことを示す書類も含まれている。
「レイウェスト皇子殿下のもとへ向かう前に、リスタ子爵の手勢は阻止いたします」
既にフローラ伯爵はリスタ子爵がレイウェスト皇子暗殺に動いたことを知った時から、自身が使える伝手をフル活用し様々な偽装工作を行った。
その結果、フローラ伯爵はリスタ子爵に「レイウェスト皇子とその一行がウォレス伯爵領に立ち寄る」との偽情報を信じ込ませることに成功し、リスタ子爵は義勇兵達をフローラ伯爵の領内へと侵攻させた。
だが本物のレイウェスト皇子とその一行がフローラ伯爵の領地に立ち入ることはなく、後はフローラ伯爵自身が領内にいる義勇兵達を一網打尽にすれば、今回の暗殺は阻止できる。
「私めの領地内であれば、賊として始末できます」
フローラ伯爵の意図を読み取ったメアリー王女は頷きを返し、今回の一件をフローラ伯爵に任せることにした。
「フローラ様の領内に、『黄の小指』が現れた場合のお話ですが」
メアリー王女は書類の中にあった、メドゥの指先幹部『黄の小指』ロコが義勇兵を襲う可能性について、ある見解を示す。
「フローラ様の責任において事を収める覚悟がおありなら、口を挟むつもりはありませんわ」
――現場で起きる義勇兵とロコの争いに王家が介入する気はない。
「御心のままに」
フローラ伯爵はメアリー王女に首を垂れ、その場より退出する。
その後フローラ伯爵は冒険者ギルド支部を訪れ、義勇兵退治の依頼を出した。
――重要な任務のため、報酬の増額を提示する形で。
●侮辱
そしてフローラ伯爵は自領内にて、自身の私兵団や依頼に応じた冒険者達と共に、レイウェスト皇子暗殺のため侵攻した義勇兵達の包囲に成功する。
そこは領内を走る街道の中でも人気のない平野だった。
「穢れた血を引く化物の存在そのものが我々を怒らせた! だから我々は正しい!」
しかし義勇兵の長スカムはその場に現れた皆様に向け、意味不明な叫びをあげる。
「何の権利があって我らを責める?」
「君達冒険者も自分が気に入らない連中を殺してきたじゃないか」
「私達は同じだよ、冒険者諸君」
スカムに続き、周囲にいる義勇兵達も勝手な言い分を口走るが、フローラは一蹴した。
「ここは私の領地で貴方がたは侵略者です」
「我々は侵略者ではない。陛下の御心を正しうる高貴な方々が我らの上におられるのだ」
スカムが尊大に構えて言い放った内容は、リスタ子爵以外にもレイウェスト皇子暗殺に賛同する者がいることを示唆していた。
「まもなく我々の増援がこの場に到着する。そうなれば君達は袋の鼠だ」
義勇兵達はレイウェスト皇子だけでなく、この地を治めるフローラ伯爵も殺すつもりだった。
「我々は正義のために、美しい人間賛歌を奏でるのだ」
近くにいる義勇兵達も唱和する。
――我らの行いはリーンエス王国が望む音楽。
――我らが奏でるのはレイウェストに味方する愚者への断罪劇。
そんなスカム達に、フローラ伯爵は冷めた口調で言い返す。
「増援なら来ませんよ」
「何を馬鹿な――」
スカムが鼻で笑いかけるが、遠くから湧き上がった喧騒の音に遮られる。
弓弦の唸りや増援と思しき人間達の咆哮、何かが断ち切られる異音、そして悲鳴が幾重にも響いてくる。
「実は貴方がたを赦せない者も近くまで来ているのですよ」
フローラ伯爵は義勇兵達を確実に仕留めるため、領内でロコが動くことを黙認していた。
スカムの表情が強張る中、フローラ伯爵は皆様に改めて依頼する。
「この愚物は私の手で確保します。皆様は他の義勇兵を一人残らずブチ殺してください」
絶望が始まる。
無論それは不退転の強者を相手取る、義勇兵達にとってであるが。
●敵の敵は歓喜する
「死は来まセリ。死は来まセリ。貴方がたは既に私と同じ罪人――」
義勇兵達を前にして、ロコの表情は喜悦に歪んでいた。
「そして私の獲物デス」
――キヒヒヒヒヒヒ。
赤いエーテル光に包まれたロコは歓喜と共に、その場にいる義勇兵達を薙ぎ倒していった。
●あの日そう言われた記憶はメイレにとって宝物だった
生きる方が、死ぬより難しい。
生きるには色々なもの、様々なことを必要とするからだ。
――。
……なぁ、メイレ。
生きてみないか?
我らと共に。
この国の。この村の民となって。
お前達は十分義務を果たした。
お前達が何者かなど関係ない。
共に生きることができる。
それが我々の幸せだ。
――。
……泣くな、メイレ。
今だからこそ、心から伝えたい。
一緒に生きてくれて。
俺達の家族になってくれて。
ほんとうにありがとうな。
解説
マスターより
リプレイ
包囲を終えた冒険者達が、義勇兵とぶつかり合う。
「うるぁ! ブレイブファング傭兵団のハヤト様が相手になってやんぜ!」
北東側よりハヤト=ガラン=ヴォルファングが瞬間的に加速して、敵授恵者へと切り込む。
既にハヤトは自身の天眼を駆使して敵味方の位置を把握し、軍神の祝福をもとに敵授恵者のうちドナに狙いを定めていた。
「まずはこれだ!」
ハヤトは閃光塗弾を取り出し、缶のピンを抜いて投擲する。
やや遅れて閃光塗弾の缶が宙で破裂して強烈な閃光が周囲に放たれ、光を見たドナは目がくらむ。
その間にドナへと肉薄したハヤトの体が竜巻のように旋回し、双神刀 紅狗璃と天狼の蹴甲が紅色の雷を纏う連撃と化して、交互に繰り出される。
ドナはエーテルバリアを駆使してハヤトの攻撃に対抗したが、双神刀 紅狗璃で斬られ、天狼の蹴甲を打ち込まれ、もう一度双神刀 紅狗璃の斬撃を浴び、生命を削られる。
「この期に及んでレイウェスト殿下を侮辱するか~。そうか~」
南東側より現れたベルク・オスマットの口は笑みの形をとっているが、その額には憤りを示す太い血管がくっきりと浮かび上がっていた。
「……惨たらしく死にたいらしいな」
底冷えの響きをともなう呟きを残し、弓を使う義勇兵へと襲いかかる。
空を駆け上がるがごとき移動術によって、一気に距離を詰めたベルクは下より殺刀【指折り】を突き上げ、弓兵の喉を深々と突いていた。
弓兵の体が停止し、首筋を存分に貫いた殺刀【指折り】が引き抜かれると、弓兵は鮮血を噴いて倒れ絶命した。
「王国と帝国、双方の殿下を殺ろうとはいい度胸だな……」
南西方向より進出したナタリア・フィッツジェラルドは、メアリー・リーンエス王女とレイウェスト・バルダス皇子の両方に暗殺を試みたヴィガ・リスタ子爵に対し、呆れを含む呟きをもらす。
(最大限の忠節は尽くすさ。以前から私の活動において有難かったんだ)
内心そう呟き、ナタリアは天眼を駆使して義勇兵達の動きを把握すると、紅蓮の炎を纏う巨弾を撃ち放つ。
ナタリアの攻撃で南西側にいた義勇兵達のただ中に爆発が巻き起こり、飛び散った礫が義勇兵達に叩きつけられた。
絶叫があがり、礫の群れは義勇兵達の血肉を削り飛ばして、一挙に葬った。
「彼等の主張は物凄く不快ですが、警告だけはします」
北西方向より進出したトーラは、自身にそう言い聞かせる。
「武器を捨て投降しなさい。でなければ命の保証はしません」
トーラは「わたしは本気です!」スキルを駆使して投降を呼びかけるが、義勇兵達に応じる気配はない。
「応じないなら問答無用です」
それを見たトーラは瞬間的な加速を駆使して駆け抜け、急速に義勇兵との距離を詰める。
「……わたしは本気ですよ」
肉薄した義勇兵に向け、トーラは二刀流による超高速三段連撃を披露し、セルリアンエッジより伸びた空色の光刃、シアンブレードより伸びた緑青色の光刃が交互に義勇兵を切り刻み、義勇兵は血霧を撒いて横転し、動かなくなる。
「相手は、罪の無い人たちを身勝手な理屈で殺してきた者達。ためらいなく戦えるわね」
――そのような者達を野放しにはできない。
北東方向に陣取るユニス・ソロアーヌ・アクエリリーアは、義勇兵達の主張をそう断じる。
「相手が集まっているうちに倒していくわ」
超視覚スキルで刀を装備する義勇兵達を視認したユニスは竜骨の魔弓を構え、エーテルを籠めた光の矢を解き放つ。
ユニスの一射は刀兵達のただ中へと吸い込まれて炸裂し、まき散らされた光の破片が刀兵達の命を刈りとり、倒していく。
「貴様らが殿下の暗殺を企んだ愚か者共か……」
そして南より進出したアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトの表情は、怒りのためか獰猛な笑みの形を取っていた。
義勇兵達への怒りが、漆黒の鎧に包まれたアルベルトの胸中で苛烈さを保ったまま燃え続けている。
「お望み通り生まれたことを後悔させてやろう」
アルベルトは自身の戦術眼をもとに、既にベルクと交戦している弓兵達へと狙いを定めると、瞬間的な加速を駆使して距離を詰める。
「生まれたことを後悔させながら斬り倒す」
弓兵へと肉薄したアルベルトは、呟きと共に漆黒の名剣を振り上げ、巨大な光塊に包まれた剣身が勢いよく振り下ろされ、その威力をぶちまける。
範囲内にいた弓兵達は頭部を叩き潰されて絶命し、鮮血を撒いて倒れていく。
●圧倒
周囲より冒険者達に殴りこまれた義勇兵達は、弓兵達が弦を鳴らして矢を放ち、その下で白刃の林を敷いた刀兵が冒険者達へと次々と走り寄る。
授恵者であるゼクはチャージングを駆使してベルクやアルベルトの攻撃を受けた弓兵達の救援に向かい、サムはハヤトの攻撃を受けたドナを含めた義勇兵達に対し、ヒーリングオーラでの治療を試みる。
そしてドナはハヤトに向け、メテオライトを浴びせかけた。
「当たるかよ!」
攻撃の軌道を瞬時に見定めたハヤトは降り注ぐ小光弾の回避に成功すると、軍神の祝福に従い今度はサムの懐へと飛びこんだ。
「レイウェストまで手にかけようたぁ見逃せねぇな!」
叫びと共にハヤトの体が再び真横へ旋回すると、竜巻の如き連撃と化したハヤトの双刀と蹴甲がサムの胴を裂き、胸を蹴り飛ばし、再び胴を薙ぐ。
このころ弓兵達のもとへ急行したゼクは、ベルクと合流したアルベルトに阻まれ、救援できずにいた。
「できれば1人、足を潰した状態で一旦生かしておいてくれぬか?」
ベルクはアルベルトにそんな要請を送る。
「まさか生け捕りにする気かよ?」
アルベルトからの確認に、ベルクはこう応じる。
「知る限りの情報を搾り取ってから徹底的に嬲り殺すと決めたのでな」
それを聞いたアルベルトは承諾の意を返し、ベルクも残る弓兵達を仕留めにかかる。
低い姿勢のまま、弓兵より放たれた一射を回避したベルクは、相手を惑わし狙いを絞らせない攪乱戦術を駆使して一気に弓兵へと体を接近させ、ほぼ垂直に刷り上がった殺刀【指折り】が弓兵の首筋を斬り裂いた。
笛を吹くような異音と共に、鮮血を高々とあげた弓兵は横ざまに倒れ、絶命する。
「向こうにいる義勇兵達は味方に任せよう」
天眼を駆使したナタリアは、東南側にいる弓兵達がベルクやアルベルト達によって撃破されつつあることを知り、そちらの始末を2人に任せることにした。
「何があったかは知らないが、ロコも雑兵を殺して回っているようだ」
ナタリアはこの場より東側で、メドゥの指先幹部『黄の小指』ロコが増援に来るはずだった義勇兵と交戦していると聞いている。
「手間が省けるから放っておくのも手だね」
ナタリアはそう判断すると、1人残った刀兵の迎撃へと意識を引き戻す。
この刀兵は先のストーンブラスト4の範囲外にいたため難を逃れていたが、仲間の復仇に燃えナタリアへと斬りかかる。
「同胞の仇、覚悟!」
叫びと共に斬り付ける刃をナタリアは軽く半身を退いて躱すと、魂刈の銀鉤より飛んだ光球が刀兵へと突き刺さる。
胴を撃ち抜かれた刀兵は血煙をあげて横転し、絶命した。
「一人も投降する様子は見られないですか」
トーラは弓兵達との交戦を続けながら、投降しそうにないと理解する。
「義勇兵……いいえ、賊と言った方が正確ですね」
既にトーラは投降しない場合、賊として倒すと決めている。
――手加減はせず、粛々と倒していきましょう。
飛来した矢を真横に跳躍して躱したトーラは、着地するなりセルリアンエッジを振るい、不可視の衝撃波を前方へと走らせる。
射程内にいた弓兵達はまとめてなぎ倒され、その威力に命を削りとられて倒れ伏すが、残る弓兵は倒れた同胞を置き捨て西へと走り始める。
「ここから逃すつもりはないわ」
その動きを超視覚によって察知できたユニスは身を逸らし、寄せてきた刀兵からの斬撃をすり抜けると、竜骨の魔弓を遠ざかる弓兵へと向けた。
「確実に倒すわよ」
宣告と共に、ユニスの精神を研ぎ澄ませた一射が宙を飛び渡り、弓兵の背に突き刺さる。
射抜かれた弓兵は鮮血を飛ばして前方へと倒れこみ、沈黙する。
「皆さん、殿下の暗殺を企む愚か者共に制裁を下しましょう!」
アルベルトはゼクと交戦しながら、その場にいる全員へ聞こえる程の音声で義勇兵の殲滅を呼びかける。
それを聞いたゼクは目を怒らせ、鋭撃をアルベルトに放つと、アルベルトは輝くエーテルを強くその身に収束させ、瞬間的に高めた防御力でゼクの一撃を防ぎとめる。
そのままアルベルトのシュトルツが稲妻さえも叩き斬るように素早く、鋭い一撃と化して打ち下ろされ、斬撃を浴びたゼクの顔が苦悶に歪み、血霧を撒いて後退した。
●撃破
西側の義勇兵達を全て撃破したトーラとナタリアは2手に分かれ、トーラはゼクとの戦いへ、ナタリアはドナ及びサムとの戦いへと向かう。
天眼によってハヤトはナタリアの動きを知ると、軍神の祝福をもとにドナ達の注意を引き付けにかかる。
「逃がさないぜ。アンタの相手は俺で終わりだ」
「――戯言を」
ハヤトの挑発じみた物言いにドナが反応し、長杖を向けてきた。
見切り3によって攻撃の軌道を瞬時に読み取ったハヤトが大きく地を蹴り、直後ドナより放たれたエーテル光の奔流がハヤトの真下を貫いた。
攻撃を躱したハヤトは落下しながら縦に旋回し、その双刀と蹴甲が竜巻の如き連撃と化して繰り出される。
円月を描いたハヤトの双刀と蹴甲が交互にドナを斬り裂き、穿ち、斬り下ろす。
さらに半回転したハヤトの足が地面を踏む中、苦痛に顔を歪めたドナが血を噴いてよろめく。
この頃には東南側の弓兵達もベルクの手で討伐されていた。
そのベルクはゼクの相手をアルベルトに任せると、自身はサムのもとへ走り寄る。
「知っとるか? 治し方を知っているということは壊し方を知っているということでもあるんじゃぞ?」
ベルクはサムに低く詰め寄ると、そのような問いを投げかけるが、サムが答えるより前に殺刀【指折り】がサムの胴を裂いていた。
「ついでに長持ちさせる方法もな……」
斬られた箇所より血が噴出するより前に、ベルクは狐惑乱舞を駆使して再びサムとの距離を置くと、入れ違いにトーラが戦場中央を駆け抜け、アルベルトのもとへ合流を果たした。
ここでゼクは不利を悟ったのか、「降参だ」と両手を上にあげる。
「降参だと? 駄目じゃないか、お前たちは正義のために、美しい人間賛歌を奏でるんだろ?」
アルベルトは歌うような軽い口ぶりで、先程までゼク達が口走った言葉を返す。
「降参なんてしたら叶えられないじゃないか?」
――あるいは、眼前の相手を人と認識していないような声で。
それを聞いたトーラが、ゼクから視線を固定したままアルベルトに忠告する。
「ここで手を下せば、彼等の言う通りになってしまいますよ?」
――彼らの言うように、気に入らない相手を殺す様な真似をして、同じところには堕ちたくはありませんから。
トーラとしては、不必要な殺害は避けてほしいところだが――。
「その武器を捨てなさい。従わなければ攻撃の意思ありとして処断します」
トーラは看破スキルでゼクの様子を見定めつつ、警告する。
するとゼクは地を蹴り、トーラとの距離を詰めてきた。
大剣がトーラへと振りぬかれたが、攻撃の軌道を瞬時に見定めたトーラは、低い姿勢を保って斬撃を躱し、ゼクの懐へと飛びこむ。
肉薄したトーラより、セルリアンエッジが半透明な空色の光刃を形成して斬りあがり、ゼクを斬り裂いた。
その間にナタリアは、ドナやサムを捕捉できる位置に到達する。
「それなりに練度はあるようだ。特にヒーラーの存在が邪魔だな」
ナタリアは義勇兵達の動向からそう判断すると、サムに狙いを定めた。
祈りと共に光り輝く六角形の柱を作り出し、サムを囲い込む。
六角柱状の光に囲まれたサムは射線を塞がれ、残る義勇兵達への援護ができなくなった。
「囲い込んでいる今が、雑兵どもや反乱分子を始末できる好機だぞ」
ナタリアは周囲にいる仲間達に攻勢を促すと、ユニスが呼応して動く。
「彼の仇討ちとか、そんなつもりはないけれど」
ユニスの脳裏に浮かんだ過去の出来事が、眼前の義勇兵達と重なる。
(この義勇兵たちが殺したわけではないと、頭ではわかっているの)
内心そう思いながらも、少し前に倒した刀兵にも一瞬視線を向ける。
「でも……何かが軽くなったと感じるわね」
そんな言葉を口にしたユニスは、ドナに狙いを定めた状態から魔弓に光を集中させる。
「これで最後」
力が溜まり切ったところで、ユニスは呟きと共に破壊力と速度が増大した一射を解き放ち、ドナの身を貫いた。
既にハヤトの連撃で損傷を蓄積させ、ユニスに射抜かれたドナは生命が尽き、その場へ昏倒する。
そしてゼクにも終わりが近づく。
「最後まで戦えよ」
アルベルトはゼクが投降しようとする余裕を与えない。
「そして、俺の裁きを受けろよ!」
叫びと共に、アルベルトのシュトルツが威力を重視した鋭い一撃と化して斜めに斬り下ろされ、肩から入った剣身は鎧ごと体を斬り裂き、脇腹に抜けた。
ゼクの手から大剣が地面に落ち、その後を追ってゼクの体が転倒して動かなくなる。
やがてナタリアの光縛封が消失し、姿を見せたサムが見たのは――血の泥濘にまみれて倒れ、散乱する義勇兵達の姿だった。
呆然としたサムに冒険者達は攻撃を畳みかけ、生命を刈り取られたサムは鮮血を撒いて倒れ、沈黙した。
●始末
義勇兵達を全て倒したところで、ベルクは息のある義勇兵を近くの岩陰へと運ぶ。
「楽には死なせん。貴様らがこれまでしてきた行いを吐かせたうえで、レイウェスト殿下を侮辱した罪を後悔しながら死んで逝け」
火打箱を使い、道具の消毒を行ったベルクは冷えた口調で義勇兵にそう言い放ち、尋問を始める。
そしてフローラ・ウォレス伯爵の私兵団が駆けつけ、戦後処理に移行する。
「さて、リスタ子爵とやらにはいつ会えるのか」
尋問を終え、フローラ伯爵に情報提供を行ったベルクは、そう独り言ちた。
(単なる自己満足だとはわかっているし、彼を忘れることはできないけれど)
ユニスは自身の中にある喪失感が少しずつ埋まり、過去と折り合いがつき始めていることに気づく。
一方戦闘を終えたトーラは、ロコとの接触に成功していた。
「賊は討ちました。生き残った者も裁きが降りる筈です」
トーラの報せを受け、ロコは「そうですか」と穏やかな表情で応じる。
「……もう、メドゥの指先で居る理由は無いのではないですか?」
これまでに知りえた情報から、トーラはロコの動機を把握しつつあった。
「まだ子爵が残っています。そして私が重ねた罪は償える範囲を超えています」
――だから黄の小指は悪として討たれなければならない。
トーラに本心を明かしたロコは、そう言い残してその場より姿を消した。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:多い6 / 4〜6人
2023年09月08日 22時31分43秒 公開
相談掲示板
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 皆殺しは確定として、問題はどう嬲r……ゲフン逃さぬよう殲滅するかだな。 あとロコに関しては手出し無用で構わんよな?
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 今回俺はE9からスタートしてG7の弓兵から攻撃する予定だ。 そのあとは敵の授恵者を優先して攻撃する予定だ。 殿下の暗殺を企む愚か者共を殲滅しましょう! ロコは今回は無視で良いだろうな (一部誤字があったので前の書き込みを削除しました)
シーフのトーラです。 問答無用です。相手の話を聞く気はありません。迅速に殲滅しましょう。 では、わたしはA1から弓兵の対処に回りますね。 ロコに関して、あちらが手出しをしてこない限りは不干渉で良いと思いますが、わたしから声をかけてよいでしょうか?
シューターのユニスよ。 見たところ、シューターがいないようなので参加をさせてもらったわ。 私はH1からスタートして、G3の刀兵に射程を活かしての弓射。範囲系の攻撃で、複数同時に倒していきたいわね。 刀兵を倒し終えた時点で、C3の刀兵が残っていたらそっちに。 それも倒し終えてたなら、敵授恵者への攻撃に向かうわ。
ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 ヒーラーが居ないものだから、というのも含まれるが。 敵が数の暴力で迫ろうとなると、短時間に纏めて殲滅出来るようにする為のバフ付帯役として参じた。 とりあえずA8を初期位置とし、初手でストーンブラストで雑兵どもを駆逐。 その後は対授恵者に切り替える予定だ。 対ロコに関する意向は了解、私からも手を出さないでおこう。 個人的には光縛封を持参し、サムにでも使って回復スキルの射線を封じたいと思っているが、如何したものか。
定員ですね! 義勇兵を倒した後はわたしも授恵者の対応に回ろうと思います。 魔法攻撃がメインなのでウォーリアのゼクの対応に行きますね。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! んじゃ、俺は初手から敵授恵者を相手取ることにすんぜ! I4からキャスターのドナからまずは落としに動くな!!
であれば我はH1からスタートして刀兵を鏖にしてから授恵者を嬲りに行くことになるか。 授恵者は状況次第だが、ヒーラーやキャスターを優先しよう
すまん今更気づいたが空きはH8だったな。 まぁやることは変わらんが。