青空診療所に盗人は不要
岩岡志摩
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シナリオID:3157
オープニング
ある日ディレイン・オールドケイジが依頼から帰ると、自宅が荒らされていた。
部屋に収納されていたものが床へとぶちまけられ、まるで嵐が部屋の中で荒れ狂ったような惨状を見せている。
ディレインは部屋からなくなったものを確認すると、金目になるようなものには手を付けられていない。
部屋に置かれていた薬草や診察器具も、散らばってはいたが全て無事だった。
そのことからディレインは単なる窃盗犯ではなく、別の目的をもって侵入した者の仕業だと推測した。
思い当たるのは、先日ディレイン達が取り壊しを行った昔の家や、養親にあたるジェイムズ・オールドケイジの墓を荒らした輩だ。
以前ディレインが養父ジェイムズの墓参りをした際、近くの村で暮らす住民より「不審者を見た」との情報も得ている。
そのときの不審者が今回自宅を荒らしたとしたら、犯人が探しているものをディレインは自宅に置いていないため、無駄足を踏んだと考えていいだろう。
その点についてはディレインも安堵している。
その一方でディレインはある書きかけの手紙が床に落ちているのを見て、その内容を犯人が見た可能性に気づく。
その手紙には、以前ディレインがある依頼に従事する中、診療のため訪れたことのある村宛に自身が再訪する旨を伝える文言が書かれていた。
手紙の中にはディレインが再訪する村の名前やその日時も記載されていたため、自宅を荒らした犯人がその日時に村へ向かう可能性も考えられる。
そう考えたディレインは冒険者ギルド支部へ向かい、ある村で青空診療所を開催するので、手伝ってくれる冒険者を集めてほしいとの要望を出した。
応対した冒険者ギルド支部職員アルヒ・ラスカスは、ディレインの話を一通り聞いた後、こう助言する。
「そういうことなら依頼人はこちらで用意しよう。医療や薬学に通じる人材も手配する」
アルヒは「訪問先の村や青空診療所への協力者から報酬を出す」という形で、ディレインや依頼に応じた冒険者達に報酬が出るよう依頼内容の調整を行っていく。
今回は「青空診療所への協力者」の名目でアルヒが依頼人となった。
そしてディレインの応援としてアルヒが手配したのは、ターミル族出身のリザードマンで冒険者でもあるディノだった。
エーテル浄化者の素質を持つディノは各地を渡り歩く中、現場で医療を手伝う事態も複数あったらしい。
「本職の方ほど手綺麗にはいきませんが、一通りのことはできます」
――現場で助けを求める人がいる以上、必要な技術や知識を身に付けるしかなかった。
顔合わせの時、ディノは実情をそう語っていた。
そして冒険者ギルド支部内でディレインやアルヒ、支部の職員達の間でやり取りが続き、村で行われる青空診療所への手伝いを募集する依頼が斡旋される。
依頼の説明役を務めるアルヒは、依頼内容に興味を持った冒険者達へある追加事項も伝えていた。
「基本的には青空診療所への手伝いになるが、現場で戦闘が発生する可能性もあるため、戦闘にも対処できる装備で現地へ向かうことを勧める」
ディレインよりある程度話を聞いていたアルヒは、既に様々な伝手や手段を駆使して、ある程度敵の素性を掴んでいた。
アルヒはその情報もディレインに提供し、こう言った。
「得た情報が確かなら、おそらく相手は正面切って戦うことが苦手なタイプだ」
●現地
風が周囲の森を駆け抜けると、木々の葉を揺らす音がさざめき、遠くからは様々な鳥の声が聞こえてくる。
そのような豊かな自然が溢れる村へと、依頼を受けた冒険者達は到着する。
村よりやや外れたところにある集会所が、今回の青空診療所となる。
これはディレインや冒険者ギルド支部、そして現地となる村の人々が事前にやり取りを重ねて決めたことだ。
そしてディレイン主導のもと、青空診療所の設営が始まる。
医者が常駐していないこの村で、医者に診察してもらうことのできる機会は少なく、今回ディレインが実施する青色診療所を村人達は歓迎していた。
●やること
今回皆様はある村で行われる青空診療所の手伝いという依頼に応じ、現地の村へ到着しました。
既に現地の村とは集会所を青空診療所として使用する旨を伝え、承諾を得ています。
必要な資材や道具などはアルヒの手配により現地まで運び込んでいるため、皆様が現地で何かを調達する必要はありません。
青空診療所が始まったら、診療時間の間は診療所内での活動を手伝ってください。
村人達の多くが青空診療所で診察を受けるつもりなので、訪れた患者の受付や待ち時間の間に患者への簡単な問診、患者となる村人達の案内など、やることは複数あります。
医療関係者はディノが皆様に同行するため、必要に応じディノへ指示を出してください。
薬を作るために必要な材料は、よほど貴重かつ高価なものでなければディノが用意できます。
それ以外にも、清潔さを保つために用意されたシーツの類や作業用の衣服が汚れた時の洗濯、青空診療所内で何か起きた時の後片付けや清掃などの作業も必要になりますので、その時の状況に応じて各作業を行ってください。
ここまでは表向きの話ですが、ここからは内向きの話となります。
実は今回の青空診療所をこの村で行うにあたり、ディレインの自宅を荒らした犯人がこの村までやってくる可能性が浮上しました。
以前にもディレインの旧宅や養親に当たるジェイムズ・オールドケイジの墓が荒らされた際に、村の人が不審者を目撃しています。
恐らくその不審者が一連の事件を引き起こしていると考えられるため、今回ディレインがこの村を訪れている間に、何かをしかけてくる可能性は低くありません。
アルヒによると現地の村人達は全員顔見知りのため、見知らぬ者がいれば誰かが気づいて皆様に報せてくるそうなので、患者に紛れて盗みに入る可能性は低いとのことです。
恐らく不審者が青空診察所への侵入を試みるとすれば、患者となる村人達がいない夜間となる可能性が高いでしょう。
皆様にはその不審者が青空診療所内へと侵入した場合にはこれを撃退し、可能であれば捕縛を行ってくださるようお願いいたします。
●敵情報
盗賊×3
全身黒ずくめの装備で顔と全身を包む者達。全員短剣(射程0)と短弓(射程10)を装備。
その正体はジェイムズ・オールドケイジが生前追われる原因となった有力者一族に雇われた者達で、有力者が診察依頼を行った際の診察記録をつけ狙う。
全員授恵者で暗視持ち。青空診療所へ出没すると思われる時刻は夜間。
アルヒが掴んだ情報では下記能力を使う模様。略称「賊」。
羽歩
1ラウンド中に移動とアクションの両方を行い、かつ、移動力がすべて消費されていない場合、アクション後に再移動をすることが可能。パッシブ扱い。
ハイディング
認識を妨げるエーテルを体の周囲に張り巡らせ、隠蔽状態になることができる。メインアクション扱い。
毒撃
メインアクション扱い。物理攻撃を行い、命中した場合はさらに【スリップ】(強度5)のバッドステータス付与判定を行う。
毒射
メインアクション扱い。射撃攻撃を行い、命中した場合さらに【スリップ】(強度5)のバッドステータス付与判定を行う。
解説
マスターより
リプレイ
豊かな自然に囲まれた村で、冒険者達の青空診療所は村人達から大いに歓迎されていた。
既に調剤室として割り振られた区画内では、ストレガ・L・リベルガストラとレピド・クロサイトが詰め、準備を進めている。
「どのような薬がどれだけ作れそうか、把握しておきたいのだ」
ストレガは薬となる材料の在庫がそのくらいあるのか、ディノに確認する。
「持ち込んだのは、これで全部です」
ディノが用意した材料の数々をストレガは調べ、自身の百薬スキルをもとに分量を割り出す。
ストレガの計算では、この村で暮らす住民達全員に3日分行き渡らせることが可能、というくらいの量だった。
「診療は本職に任せるとして、薬学の方なら少しは手伝える……と思う」
レピドも自身の培ったスキルを活用し、青空診療所を手伝うつもりでいる。
そして青空診療所が始まった。
「順番にお呼びいたしますので、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
ゲルダ・クラインは青空診療所の受付役となり、来訪する患者達から必要な情報を聞き取り、手続きを進めていく。
――小さな村だと文字を読めない方が多いはず。
ゲルダはそう考えて患者1人1人に声をかけ、手元に用意した受付名簿に患者たちの名前と自覚症状を控える。
「ありがとうございます。こちらの部屋でお待ちくださいね」
聞き取りを終えた患者達を、ゲルダは臨時に設けた待合スペースへと案内していく。
(顔と名前を一致させながら、丁寧な接客を心掛けましょう)
ゲルダは青空診療所が行われている間、こうした案内や雑用を引き受けるつもりでいる。
(どんな患者さんがいるか確認しておきましょう)
コルネリウス・アーラもゲルダと手分けする形で、患者の案内や症状の聞き取りを進めている。
必要な情報を得たコルネリウスは、ディノや青空診療所を主催するディレイン・オールドケイジに伝えていく。
「手が足りないことがあればなんでもお手伝いしますので、言ってくださいね」
コルネリウスはそう請け負うと手が足りないところへと回り、できることをしていく。
「私もディレインさんの手伝いをします」
ルアンナ・ミュラーもゲルダやコルネリウスが患者の案内や症状の聞き取りを行う際、受付を引き受けることで診療の流れを滞らせないよう努める。
自身のできることを行いながら、ルアンナには1つ気になることがある。
それはディレインの家を荒らした賊が、この青空診療所までやってくるかもしれないという話だった。
今のところ賊らしき存在はまだ姿を見せていないようだが……。
(そんなに物凄いお宝のような物をいつも持ち歩いているのもすごい……)
ルアンナはその考えを内心呟くにとどめ、今は青空診療所の中での業務を進めていく。
「まずは当初の目的を果たすとするかね」
コルネリウスやゲルダより必要な情報を得たディレインは、臨時の診察室で患者達の診察を始める。
「ディノ君も診察してくれるのかな?」
「そのつもりです」
ディレインは増援の医者として派遣されたディノに確認すると、ディノより心強い返事が返ってきた。
――診察を受ける頻度が高くない人たちだからこそ、丁寧な診察を心がけたい。
診察すべき人達が多くても、ディレインは古びた診療用具セットを駆使して患者一人一人と真摯に向き合う。
ディレインはディノと情報共有を行いながら、自身の医学・薬学スキルを駆使して患者に処方する薬の種類を記載し、臨時に設けた調剤室へと送る。
ディレインから届けられた処方をもとに、ストレガは百薬スキルを駆使し、レピドは記憶の欠片【毒】スキルの応用でそれぞれ必要な薬を用意する。
「薬の飲み方と保管方法をしっかり守らせるのだ」
ストレガは薬を患者に渡す際、患者一人一人にその内容を説明していくが、薬がないときに備え、どのような食材を食べて予防や療養をするのか助言することも忘れない。
「この季節で晴天なら、飲み水の提供も必要になるだろう?」
レピドは薬を用意する以外にも待合スペースで順番を待つ患者達に飲み水を提供し、待っている間体調を崩さないよう配慮していた。
●食事と準備
「普段ひとりで診ることの方が多いから、色々と手伝ってもらえるのは助かるなあ」
ディレインは今も青空診療所を手伝ってくれる仲間達に感謝する。
「医者がいない時の対処法とか伝えられたらいいよね」
診察時に患者一人一人の記録は清書して保管済みだが、ディレインは村人達が自身で対処できる方法も可能な限り伝えようと考えていた。
訪れる患者達に必要な診療と薬を施しながら、冒険者達は交代で休憩を取る。
「薬も料理も同じもの。効能を調べて取り込めば、食べてるだけで健康になるはずなのだ」
ストレガは予めアルヒ・ラスカスに頼み、必要な食材を可能な限りこの青空診療所へ持ち込んでいた。
ストレガは庖丁と食材、そして食は万世共通の幸福なればスキルを駆使して、料理を作り始める。
鍋で煮込んだ鶏肉を巴屋の高級醤油で味を調えたら、野菜を投入してさらに煮込む。
一度鍋より肉を取り出すと、米を入れて煮込み、炊き上がったら溶いた卵などを加える。
完成した雑炊をストレガは仲間達に提供し、その腹を満たしていく。
「夜は肉野菜の炒めものにするのだ」
村人達から青空診療所へのお礼という形でもらった野菜をもとに、ストレガは夜食を作るつもりでいた。
そして冒険者達の尽力により、患者達への診療は滞りなく終了した。
「父さんに教わったことが役に立って良かったです」
コルネリウスは自身にできることで役割を全うできたことに、穏やかな笑みを見せる。
そして冒険者達は賊の迎撃準備にとりかかる。
「正面切って戦わない人種……俺に近い感じか」
レピドはアルヒから聞いた賊の特性について、そんな評価を下す。
「何にせよ、ディレインに迷惑をかけるなら迎撃するまでだ」
各区画の壁代わりだった仮の間仕切りを動かし、レピドは建物内を迎撃に向いた形へと変えていく。
「待合室の部分を広くしてからですね。診療所をなるべく荒らす事のないように心がけます」
コルネリウスもレピドと共に仮間仕切りを動かし、待合スペースだった空間を広くする。
「わたしも、たくさんがんばりますねっ」
ゲルダは汚れたものを洗濯し、迎撃に支障のない範囲で診療所内の清掃を終えてから、迎撃準備に加わる。
「ディレイン様の家を荒らした賊……っ。きっちり返り討ちにしちゃいましょう!」
ゲルダは依頼の説明を受けた時から、この後やってくると思われる賊への怒りに燃えていた。
やがて陽は落ち、徐々に夜の闇が迫りつつある。
「窓からは姿が見えない場所で待機します」
それまで仮間仕切りの移動を手伝っていたルアンナは、仲間達と相談の上で賊が侵入してくると思われる窓近くへと身を潜める。
「賊が来たら魔法を撃ち込みます」
そう語る一方、ルアンナは集会所に被害を出さないよう心掛けている。
「せっかく貸してくれた集会所に被害がないようにだけ気をつけてほしい」
自身も迎撃準備を手掛ける中、ディレインは仲間達に注意点を説明する。
「それと賊の命は取らないように。飼い主に送り返さないといけないからね」
最後にディレインは、賊の捕縛が優先だと付け加えた。
●賊退治
すでに陽は落ち、青空診療所は夜の闇に包まれていた。
レピドの配したランタンが診察室だけを明るく保ち、それ以外の区画は暗く、静まり返っている。
建物中にいる冒険者達は就寝しているように思われたが、実際には仮眠を挟み常に誰かが寝ずの番についていた。
そんな中、闇の中より何か――人影が近づいてきた。
黒ずくめの装束で身を固めた人影は息と足音を忍ばせ、北西側より青空診療所へと近づいていく。
そして北西側にある窓をこじ開け、中へと身を潜り込ませた人影が床へ足を降ろした時だった。
「こいつら寝てるな、と思っただろう?」
前触れもなく声をかけられた賊は身をすくめ、声の方角へと顔を向ける。
建物内は広々とした空間へと様変わりしており、その隅から声の主であるレピドが姿を見せた。
既にレピドはエーテルイミテイトを駆使して仲間のエーテルを自身の体に移しこみ、暗視スキルの模倣に成功していたので、暗い場所での戦闘にも対応できる。
(もしハイディングをされたとしても、逃がしはしない)
賊が内部へ入り込むときに合わせ、宗波を駆使していたレピドは眼前にいる賊、やや離れた地点にいるもう1人の賊の位置を把握していた。
「賊だ! 位置は――」
レピドが仲間達に向け賊の襲来を報せると、レピドの近くで身を潜めていたストレガが呼応し、鎮圧へと動く。
「まずは逃走ルートを全て塞ぐのだ」
ストレガは室内に稲妻めいた光の荒れ狂う空間を展開し、空間内を奔る稲光が賊へと絡みつき、その移動を阻害していく。
「次は拘束するのだ」
ストレガの呟きと共に、白い大蛇を思わせるエーテルが賊へと放たれ、絡みつく。
賊は絞蛇呪の束縛を受けて身動きが鈍くなり、逃走が困難になった。
(夜間こそ、私の本領が発揮できる時です)
レピドの報せを聞いたルアンナも、暗視スキルを駆使して視界を確保し、今は建物内へ侵入したもう一人の賊を捕捉しつつある。
(備品棚や家具の類には当てないように、よーく狙って)
賊の機先を制するように、ルアンナより細い糸状のエーテルが迸り、賊に絡みついたエーテルが行動の自由を奪いにかかる。
「あの家を荒らしたひとたち、ですか。少々お灸を据えましょうか」
レピドからの一報を聞いたコルネリウスは暗視スキルで視界を確保すると、ルアンナが捕捉した賊へと瞬間的な加速を駆使して肉薄する。
「出来れば少なくとも1名は捕縛しておきたいですね」
そんなコルネリウスの呟きを聞いたのか、賊は短弓をコルネリウスへと向け、弓弦を鳴らす。
(恐らく毒射が来るでしょうね)
そう判断したコルネリウスは、精神を研ぎ澄ませて反応速度を一瞬高め身を低くすると、飛来した矢がコルネリウスの頭上を貫いた。
低い姿勢のままコルネリウスが賊に詰め寄ると、雪割草の誓いが威力を重視した鋭い一撃と化して跳ね上がり、賊の身を斬り裂いた。
斬られた箇所から血を噴出した賊はよろめき、片膝をつく。
「インフィニティロアを使うから、一度俺の近くまで来てくれないか?」
ディレインは暗視スキルで視界を確保すると、ゲルダに自分の近くへ来てくれるよう要請する。
暗視スキルで視界を確保したゲルダが範囲内まで近づいたところで、ディレインは強力なエーテルの波動を開放し、ゲルダのエーテルを急激に増幅させることで、ゲルダの能力を向上させる。
「ありがとうございます」
短く礼を述べたゲルダは、太陽光にも似た黄金色の光をその身より立ち登らせながら、賊の新手がいないか探索する。
レピドが宗波によって把握した賊の数は2人だったことから、ゲルダは時間差をつけて3人目の賊が来ると考え、警戒を続けていた。
「……3人目、来ます!」
そしてゲルダは看破スキルを駆使して、ハイディングによる隠蔽状態のまま侵入した賊を見破ることに成功する。
隠蔽状態を看破された賊をディレインも把握するなり神材の祭刀を振るい、放たれた不可視の衝撃が賊を打ち据え、その生命を大幅に削り取った。
「逃しません……っ」
間髪入れず、ゲルダが瞬間的な加速で一気に賊との距離を詰める。
ゲルダより天槍『アルクトス』が稲妻すら叩き斬る程素早く、鋭い一撃と化して突き通された。
「ぐはあっ!」
血泡混じりの絶叫が、賊の口から溢れ出る。
その胸から天槍『アルクトス』が引き抜かれ、賊は血煙をあげて仰向けに倒れ、動かなくなった。
●尋問と後片付け
青空診療所に侵入した残りの賊もレピドやストレガ、ルアンナやコルネリウス達に圧倒され、打ち倒されていく。
コルネリウスは持参したロープで賊の一人を捕縛すると、もう一人をレピドが診療所にある包帯を使って縛り上げる。
「賊を突き出すにしても朝で良いと思うのだ」
賊の鎮圧を終えたストレガはそう言って仲間達に珈琲をふるまうと、戦後処理と朝食の作成にとりかかる。
「ねえ。俺の家と墓を荒らしたのは君たち?」
捕縛した賊に対し、ディレインが問いかける。
しかしディレインは眼前の賊がその犯人達だと見抜いていた。
「誰に雇われた? 何を狙っていた?」
レピドも賊を差し向けてきた者と奪おうとしたものを尋ねるが、賊達は答えようとしない。
「まあそう簡単には言わないだろうが……ところで皆、ヒールは後何回残っている?」
ここでレピドは奇妙な問いを仲間達に投げかける。
「いや何、多少強めに締め上げてもヒールがあるなら問題ないなと思って」
レピドは表情も変えずに淡々と言い放つ。
「……医者が何のために記録残していると思ってるんだか」
一方でディレインは賊の狙いを知っているのか、深いため息をついた。
「珍しい病気こそ、同じ病気の患者のために情報が必要なんだけど?」
そう呟いたディレインは、ディノに対し集会所周囲に廃材があれば持ってくるよう頼みこむと、捕縛され、床に転がった賊の頭を片手で掴み上げ、もう片方の手で賊のこめかみあたりをトントンと小突く。
(素手で一撃打ち込んでもいいんじゃないかな)
眼前の賊達が空き巣や墓荒らしに続き、今回の襲撃といった真似を行ったのは、相応の理由があるとディレインは考えている。
「ああそれとも、同じ病気が出たから慌てているのかな?」
ディレインはその理由について、おおよその見当をつけていた。
「ありました」
やがてディノが戻ると、ディレインの指示に従い廃材らしきものを賊の真横に置く。
ディレインはディノや仲間に一度離れるよう伝え、自身も賊の頭から手を放して立ち上がる。
そしてディレインは抜き放った神材の祭刀へと眩い光を宿し、強い一撃を廃材へと叩き込む。
その一撃で廃材が破断し、すぐ近くでそれを見た賊の顔から血の気が引く。
ディレインは大切にしていた昔の家や養親の墓を荒らされたことで、内心怒りや悔しさを募らせていたが、情報を引き出す方が先との判断も働き、このような形となった。
レピドやディレインの尋問はさらに続けられ、先日ディレインの自宅を荒らし、以前ディレインが暮らしていた家や養親の墓を荒らしたのも賊達の犯行だったと白状させた。
――そしてその黒幕が何者なのかについても。
「俺も集会所を元の状態に戻して掃除でもするか」
――折角村が貸してくれたんだ、綺麗な状態で返さねば。
尋問を終えたレピドも仲間達と共に、集会所内の清掃や後片付けを行っていく。
そして夜が明けると、冒険者達は捕まえた賊をしかるべきところへ引き渡し、事後処理を終える。
冒険者達の尽力によって。ある村で行われた青空診療所は問題なく終了した。
マスターコメント
ショートシナリオR普通 報酬:標準6 / 4〜8人
2023年09月03日 16時07分56秒 公開
相談掲示板
はい皆さん、ご協力ありがとうございまーす。 ってね。 いやなんか面倒かけて悪いねえ。 手伝ってもらえるの、ほんと助かるよ。 ひとんち荒らした不届き者には相応の対価を払っていただきたいね。 これあれかな、集会所が宿代わりってことかな。 普通なら間仕切りで寝るところを男女に分けて…ってするところだけど、罠みたいな感じにも使えるってことか。 集会所を壊すことはできれば避けたいなあ。
レピド・クロサイト、シーフだ。よろしく頼む。 ディレインの家を荒らした奴ら……潰さなければ。 とはいえ集会所を壊すわけにはいかないのは同意だ、取り回しの良い普段の武器(短刀)でいこうかと思う。
遅くなりました、すみません。 ウォーリアのコルネリウスです。よろしくお願いします。 そうですね、夜間に来ることが想定できるなら罠を仕掛けることも出来そうです。 空間を広く使って戦いやすくするか、敢えて仕切りを利用して敵を動きづらくするかは決めておきたいですね。 昼の診療所ではお洗濯などのお手伝いをしようかな、と思っています。
キャスター、ストレガなのだ。よろしくなのだ。 調剤ができるのだ。休憩も必要だから調理もするのだ。 今回の戦闘ではダメージを与えない行動になるのだ。 澱嵐と束縛というところ。あとは魔糸とエンライトと光縛呪でも。
キャスターのルアンナです、よろしくお願いします。 集会所をあまり壊したくはないですし、単体スキルが良さそうなので持っていきますね。
考えたんだけど、おじさんを狙ってくるんだから、逆に囮になればいいんじゃないかな。 どこかの部屋にひとりでいれば、あちらさんの突入口も誘導しやすかったり? 灯りを落としてても、暗視か、あるいは襲撃直後にエンライトで光源確保はできると思う。 広めなのは待合と診察室なんだよね。 置いてあるもののこと考えたら、戦うのはできれば待合にしたいところだけど…
ウォーリアのゲルダです。よろしくお願いします。 医学の分野は――すみません、門外漢ですので雑用とか力仕事とか力仕事とか頑張りますね! そうですね、複数の場所に分散しているよりも、一箇所に纏まって迎撃したほうが戦いやすそうに思いました。 ディレイン様の仰る通り、待合室に誘導したほうが被害も少なくできそうです。 屋内であれば灯りの確保も問題できるとのことですが、念のためわたしも暗視と看破は持っていきますね。
待合いと診察所、どちらかにランタンで灯りを設置しておく事で賊を誘引出来ないかなと思った。 問題は賊が「灯りがある(人がいる)」方に来るか、逆に「灯りがない(人がいない)」方に来るかだが…… 賊の性質的には後者かな?
そしたら、診療が終わったら、5のC〜Fと6のC〜Gを片付けちゃおうか。待合と診察室以外の部屋を塞ぐ感じで。 レピド君の読み通りなら診察室に灯りを置いておけば、明るい2Jの窓以外から来てくれるはずで、洗濯室や休憩室の窓はハズレ、6Jの窓から来たなら大当たり!戦闘開始!みたいな。
そうですね、灯りのない窓から侵入してくるのが普通かと思いますし、一部を塞いでおけば誘導しやすいのでディレインさんの仰る流れが良いかと思います。 私も暗視は持っていきますね。
ギリギリにすまない、「暗視」を持っていく予定の人はエーテルイミテイトさせて欲しい。
ギリギリになってしまいすみません。 エーテルイミテイト、勿論大丈夫ですよ。 よろしくお願いします。