【呑竜】メアリー・リーンエス王女暗殺計画
岩岡志摩
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シナリオID:3130
オープニング
●序
レイウェスト・バルダス皇子がリザードマンとの混血であることが明らかとなっても、リーンエス王家はメアリー・リーンエス王女との婚約内定を取り消すことはなかった。
そして王家はウィリアム王子の臣籍降下という手段で、貴族派閥の取り崩しと第三派閥の創設を開始している。
このことに反発した旧来の貴族達は、水面下で蠢動を始めていた。
●ある申し出
貴族達の中からそうした動きが出ることは、王家も織り込み済みだった。
そしてメアリー王女も様々な手段を講じ、対処に乗り出している。
その中でメアリー王女が冒険者達の協力を得て稼働させた新生「王家の耳」は、様々な情報をメアリーのもとへ送り届けている。
そしてメアリー王女を積極的に支援しようと動く者達もいた。
今メアリーの前でかしこまるフローラ・ウォレス伯爵もその一人と言える。
型通りの挨拶を終えたフローラ伯爵は、部屋に控える王国騎士へとある資料を進呈する。
受け取った王国騎士は、内容を確認してからメアリー王女の手元へと恭しく差し出した。
資料の内容に目を通したメアリー王女は、フローラ伯爵に問う。
「リスタ子爵家がわたくしの暗殺に動くのは確かなお話ですの?」
「左様でございます」
気負うことなくフローラ伯爵は確かな情報だと請け負う。
資料の内容が確かなら、ヴィガ・リスタ子爵はメアリー王女の暗殺へと既に動き出している。
「確かにこの辺りは、わたくしが極秘で向かうと流した偽情報で指定した場所の1つですわね」
今回フローラ伯爵がメアリー王女へと提供した資料には、ウォレス伯爵領とリスタ子爵領に挟まれた町で、リスタ子爵が暗殺者を差し向けて来るとの情報が記載されていた。
「あの子爵家は王国のためと称し動いているようですけれど、わたくしからみればただの過激派ですわね」
王家から見れば、リスタ子爵家は暴走している。
現段階では証拠が不十分だが、過去リスタ子爵が関与したと噂される事件を鑑みれば、リスタ子爵なら王族暗殺という暴挙に出てもおかしくないと、メアリー王女は考える。
「フローラ様がリスタ子爵家を潰したがっていることは、既に聞き及んでおりますのよ」
メアリー王女は、フローラ伯爵とリスタ子爵が様々な事情から対立していることを知っていた。
もともとメアリー王女がお忍びで動くという偽情報を流したのは、意図的に隙を作ることで反発する貴族達を釣り上げるためだ。
「この件につきましては、ぜひわたしめに対処をお任せいただけないでしょうか?」
「フローラ様はどう動かれますの?」
申し出に対しメアリー王女はその方策を尋ねると、フローラ伯爵は説明を始めた。
フローラ伯爵の案は、以下のようになる。
メアリー王女のお忍びに見立てた一行をフローラ伯爵が用意し、暗殺が予想される町へと向かわせる。
そこで情報に釣られた貴族が暗殺に動くようならこれを阻止し、刺客達を捕縛する。
「捕縛できた刺客は即時しかるべきところへ送ることを約束いたします」
一通りフローラ伯爵の話を聞いたメアリーは、少し思案して言った。
「表向きには王家に忠誠を誓う貴族が、わたくしの暗殺に動いたと判明したら、家の評判は落ちますわね」
今までは証拠不十分のためリスタ子爵も言い逃れができたようだが、刺客の捕縛に成功すれば、王家の耳はリスタ子爵の後ろ暗い部分を暴き出すだろう。
そしてメアリー王女暗殺へと動いた件も含めて、確実にリスタ子爵家の評判を死なせることができる。
そうなれば今後リスタ子爵が決起しようとしても、子爵家はまとまらず軍事行動に出ることは難しくなる。
メアリーの策は、そうした貴族達を軍事行動へと移る前に潰すことが狙いだった。
「いいでしょう。現地での対応はフローラ様にお任せしますわ」
メアリー王女はフローラ伯爵が今回の情報を掴んだ功績と実力を認め、任せることにした。
「誠にありがとうございます」
フローラ伯爵は頭を垂れて感謝を示すと、メアリー王女のもとを辞する。
ただちにフローラ伯爵は冒険者ギルド支部へと足を運び、護衛役の冒険者を集めてくれるよう依頼を出した。
「私も現場に出ます」
応対した冒険者ギルド支部職員アルヒ。ラスカスに対し、フローラ伯爵は自分も防戦に加わる旨を伝える。
「私を襲ったという事実も加われば、大手を振ってリスタ子爵家を追い詰めることができますから」
フローラ伯爵はリスタ子爵やその所業を見逃す気はなく、その突破口となりうる暗殺者達を確実に捕縛するため、冒険者ギルド支部に多めの報酬を提示していた。
●襲来
そしてメアリー王女がお忍びで向かうと言われた町に、メアリー王女が乗ると思われる馬車が少数の護衛と共に到着する。
既に現場周囲は町を守る衛兵の他にも、護衛を任されたフローラ伯爵擁するウォレス伯爵私兵団が封鎖していた。
やがて馬車が、通りより1本離れた小道を進んでいる時だった。
前触れもなく、周囲の物陰から矢が飛んできた。
この時護衛役に変装していたアルヒやフローラ伯爵が、盾を掲げて矢を受け止め、馬車を守る。
遅れて物陰から黒色の姿が次々と湧き出るように現れる。
「いと至高なるリーンエス王国。その御名の聖なるかな」
暗殺者はメアリー王女を害そうとしながら、その口でリーンエス王国を讃える。
「我らは聖影(せいえい)。人々を王国に絶対的な服従を示すヒューマンのみに正すのが、我らの使命」
聖影と名乗る暗殺者は、淡々と告げた。
そして暗殺者4人は、それぞれ馬車の中にいると思われるメアリー王女に向け、宣告する。
「正義と忠誠は人の魂」
「貴様にその魂はなく、生ける怪物なり」
「醜悪なる汚物との婚姻など、言語道断」
「いざ、正義の前に倒れ伏すべし」
だがそれも、フローラ伯爵が兜を脱ぎ素顔をさらすまでだった。
「いいでしょう。売られた喧嘩は買おうではありませんか」
暗殺者達は知らなかったが、メアリー王女がお忍びでこの場に来るという情報は偽りで、王女本人はこの場にいない。
そして暗殺者達が何を言おうが、フローラ伯爵を殺そうとした事実は揺るがない。
フローラ伯爵の言葉と前後して、周囲からも皆様冒険者達が姿を見せ始める。
ここで暗殺者達も、自分達が偽情報をつかまされたことに気づく。
「報酬に釣られて群がる低俗な輩が、我らの忠義を打ち破れるはずもなし」
しかし暗殺者達はフローラ伯爵や皆様との対決姿勢を崩さない。
「呪われし思考にとらわれた者へ媚びを売る者もまた、卑しき愚物なり」
「貴様らなど真の王国を実現するに至る障り。滅ぼされることすら通過儀礼にすぎぬ」
「貴様らを消去することで、人々は王国に支配される喜びのみをもつ完全な存在に昇華する」
暗殺者達はいずれも熱に浮かれたように、口々に相容れない思想を口走る。
フローラ伯爵は平坦な、冷たさを感じる声音で皆様へ告げる。
「できる限り殺さずに捕まえて下さい。――1人生き残っていれば十分です」
フローラ伯爵は眼前の暗殺者達がメアリー王女だけでなく、レイウェスト皇子や冒険者達も侮辱したことに憤りを見せていた。
レイウェスト・バルダス皇子がリザードマンとの混血であることが明らかとなっても、リーンエス王家はメアリー・リーンエス王女との婚約内定を取り消すことはなかった。
そして王家はウィリアム王子の臣籍降下という手段で、貴族派閥の取り崩しと第三派閥の創設を開始している。
このことに反発した旧来の貴族達は、水面下で蠢動を始めていた。
●ある申し出
貴族達の中からそうした動きが出ることは、王家も織り込み済みだった。
そしてメアリー王女も様々な手段を講じ、対処に乗り出している。
その中でメアリー王女が冒険者達の協力を得て稼働させた新生「王家の耳」は、様々な情報をメアリーのもとへ送り届けている。
そしてメアリー王女を積極的に支援しようと動く者達もいた。
今メアリーの前でかしこまるフローラ・ウォレス伯爵もその一人と言える。
型通りの挨拶を終えたフローラ伯爵は、部屋に控える王国騎士へとある資料を進呈する。
受け取った王国騎士は、内容を確認してからメアリー王女の手元へと恭しく差し出した。
資料の内容に目を通したメアリー王女は、フローラ伯爵に問う。
「リスタ子爵家がわたくしの暗殺に動くのは確かなお話ですの?」
「左様でございます」
気負うことなくフローラ伯爵は確かな情報だと請け負う。
資料の内容が確かなら、ヴィガ・リスタ子爵はメアリー王女の暗殺へと既に動き出している。
「確かにこの辺りは、わたくしが極秘で向かうと流した偽情報で指定した場所の1つですわね」
今回フローラ伯爵がメアリー王女へと提供した資料には、ウォレス伯爵領とリスタ子爵領に挟まれた町で、リスタ子爵が暗殺者を差し向けて来るとの情報が記載されていた。
「あの子爵家は王国のためと称し動いているようですけれど、わたくしからみればただの過激派ですわね」
王家から見れば、リスタ子爵家は暴走している。
現段階では証拠が不十分だが、過去リスタ子爵が関与したと噂される事件を鑑みれば、リスタ子爵なら王族暗殺という暴挙に出てもおかしくないと、メアリー王女は考える。
「フローラ様がリスタ子爵家を潰したがっていることは、既に聞き及んでおりますのよ」
メアリー王女は、フローラ伯爵とリスタ子爵が様々な事情から対立していることを知っていた。
もともとメアリー王女がお忍びで動くという偽情報を流したのは、意図的に隙を作ることで反発する貴族達を釣り上げるためだ。
「この件につきましては、ぜひわたしめに対処をお任せいただけないでしょうか?」
「フローラ様はどう動かれますの?」
申し出に対しメアリー王女はその方策を尋ねると、フローラ伯爵は説明を始めた。
フローラ伯爵の案は、以下のようになる。
メアリー王女のお忍びに見立てた一行をフローラ伯爵が用意し、暗殺が予想される町へと向かわせる。
そこで情報に釣られた貴族が暗殺に動くようならこれを阻止し、刺客達を捕縛する。
「捕縛できた刺客は即時しかるべきところへ送ることを約束いたします」
一通りフローラ伯爵の話を聞いたメアリーは、少し思案して言った。
「表向きには王家に忠誠を誓う貴族が、わたくしの暗殺に動いたと判明したら、家の評判は落ちますわね」
今までは証拠不十分のためリスタ子爵も言い逃れができたようだが、刺客の捕縛に成功すれば、王家の耳はリスタ子爵の後ろ暗い部分を暴き出すだろう。
そしてメアリー王女暗殺へと動いた件も含めて、確実にリスタ子爵家の評判を死なせることができる。
そうなれば今後リスタ子爵が決起しようとしても、子爵家はまとまらず軍事行動に出ることは難しくなる。
メアリーの策は、そうした貴族達を軍事行動へと移る前に潰すことが狙いだった。
「いいでしょう。現地での対応はフローラ様にお任せしますわ」
メアリー王女はフローラ伯爵が今回の情報を掴んだ功績と実力を認め、任せることにした。
「誠にありがとうございます」
フローラ伯爵は頭を垂れて感謝を示すと、メアリー王女のもとを辞する。
ただちにフローラ伯爵は冒険者ギルド支部へと足を運び、護衛役の冒険者を集めてくれるよう依頼を出した。
「私も現場に出ます」
応対した冒険者ギルド支部職員アルヒ。ラスカスに対し、フローラ伯爵は自分も防戦に加わる旨を伝える。
「私を襲ったという事実も加われば、大手を振ってリスタ子爵家を追い詰めることができますから」
フローラ伯爵はリスタ子爵やその所業を見逃す気はなく、その突破口となりうる暗殺者達を確実に捕縛するため、冒険者ギルド支部に多めの報酬を提示していた。
●襲来
そしてメアリー王女がお忍びで向かうと言われた町に、メアリー王女が乗ると思われる馬車が少数の護衛と共に到着する。
既に現場周囲は町を守る衛兵の他にも、護衛を任されたフローラ伯爵擁するウォレス伯爵私兵団が封鎖していた。
やがて馬車が、通りより1本離れた小道を進んでいる時だった。
前触れもなく、周囲の物陰から矢が飛んできた。
この時護衛役に変装していたアルヒやフローラ伯爵が、盾を掲げて矢を受け止め、馬車を守る。
遅れて物陰から黒色の姿が次々と湧き出るように現れる。
「いと至高なるリーンエス王国。その御名の聖なるかな」
暗殺者はメアリー王女を害そうとしながら、その口でリーンエス王国を讃える。
「我らは聖影(せいえい)。人々を王国に絶対的な服従を示すヒューマンのみに正すのが、我らの使命」
聖影と名乗る暗殺者は、淡々と告げた。
そして暗殺者4人は、それぞれ馬車の中にいると思われるメアリー王女に向け、宣告する。
「正義と忠誠は人の魂」
「貴様にその魂はなく、生ける怪物なり」
「醜悪なる汚物との婚姻など、言語道断」
「いざ、正義の前に倒れ伏すべし」
だがそれも、フローラ伯爵が兜を脱ぎ素顔をさらすまでだった。
「いいでしょう。売られた喧嘩は買おうではありませんか」
暗殺者達は知らなかったが、メアリー王女がお忍びでこの場に来るという情報は偽りで、王女本人はこの場にいない。
そして暗殺者達が何を言おうが、フローラ伯爵を殺そうとした事実は揺るがない。
フローラ伯爵の言葉と前後して、周囲からも皆様冒険者達が姿を見せ始める。
ここで暗殺者達も、自分達が偽情報をつかまされたことに気づく。
「報酬に釣られて群がる低俗な輩が、我らの忠義を打ち破れるはずもなし」
しかし暗殺者達はフローラ伯爵や皆様との対決姿勢を崩さない。
「呪われし思考にとらわれた者へ媚びを売る者もまた、卑しき愚物なり」
「貴様らなど真の王国を実現するに至る障り。滅ぼされることすら通過儀礼にすぎぬ」
「貴様らを消去することで、人々は王国に支配される喜びのみをもつ完全な存在に昇華する」
暗殺者達はいずれも熱に浮かれたように、口々に相容れない思想を口走る。
フローラ伯爵は平坦な、冷たさを感じる声音で皆様へ告げる。
「できる限り殺さずに捕まえて下さい。――1人生き残っていれば十分です」
フローラ伯爵は眼前の暗殺者達がメアリー王女だけでなく、レイウェスト皇子や冒険者達も侮辱したことに憤りを見せていた。
解説
●目標
刺客達を1人以上捕縛する
失敗条件:フローラ・ウォレス伯爵が重傷を負う
登場
フローラ・ウォレス伯爵
メアリー・リーンエス王女より許可を得て、リスタ子爵の暴挙を潰すため冒険者達に依頼を出した。皆様の指示に従う。使用スキルはエーテルバリア、光縛呪、メテオライト。汎用スキルはテレパス。
暗殺者×4
全身黒ずくめの装備で顔と全身を包む者達。剣(射程0)と射程20の長弓を使う。
全員授恵者。自らと聖影(せいえい)と名乗る。
体術と剣術を組み合わせた攻撃を行い、下記能力を使う。生命と物理魔法防御が高い。
その正体はヴィガ・リスタ子爵子飼いの暗殺者達。全員がリーンエス王国を崇拝するヒューマン至上主義者。略称「影」。
羽歩
1ラウンド中に移動とアクションの両方を行い、かつ、移動力がすべて消費されていない場合、アクション後に再移動をすることが可能。パッシブ扱い。
ハイディング
認識を妨げるエーテルを体の周囲に張り巡らせ、隠蔽状態になることができる。メインアクション扱い。
死撃
死角より練りに練ったエーテルを武器に籠めた暗殺撃。補正を加えた上で近接攻撃を行う。【物防減:50%】【暗殺】。
メインアクション扱い。
槌脚
メインアクション扱い。大きく跳びあがり蹴りを打ち下ろす。
アルヒ・ラスカス
今回の増援。皆様の指示に従う。使用スキルはヒール、解呪。汎用スキルはテレパス。
ウォレス伯爵私兵団
今回の別動隊。現場周囲の封鎖を密かに始めている。全員一般人。
皆様が上記暗殺者を捕縛した辺りで現場に到着。事後処理は全て引き受ける。
状況
リーンエス王国ウォレス伯爵領とリスタ子爵領に挟まれた場所に存在する町の一角。現地時刻は正午で快晴。
メアリー・リーンエス王女はフローラ・ウォレス伯爵に対処を任せたため、今回の一行には同行していない。
なお馬車の中は無人。現場での防衛対象はフローラ伯爵のみ。
以下は現場の簡易見取り図。1マスあたり5m×5mくらい。
↑北
ABCDEFGHI
1口口口口口口口口口
2☆ 影 ☆
3
4 影
5☆ 馬伯 ☆
6
7 影 影
8☆ ☆
9口口口口口口口口口
☆:PCスタート地点。自由に選択・重複可能。
馬:馬車。中は無人。
伯:フローラ伯爵とアルヒ。
口:店舗の壁。高さ5m以上。
影:暗殺者。
マスターより
メアリー・リーンエス王女はレイウェスト皇子との婚約内定を継続するなど、様々な策を講じることで、ヒューマン至上主義者の憎悪をあえて自身に向けさせていました。
そして今回貴族の暴発を誘うために偽情報を流した結果、情報に踊らされたリスタ子爵が暗殺者達を差し向け、今に至ります。
既に現場周囲はウォレス伯爵私兵団や町の衛兵によって封鎖され、周囲の住民達も避難を終えているので、皆様がそちらの対応へと回る必要はありません。
暗殺者達はあらゆる方面に喧嘩を売る発言を並べていますが、皆様やフローラ伯爵がしっかり聞いているので言い逃れはできません。
説得はまず不可能なほど暗殺者達は歪な思想に凝り固まっているので、捕縛の際は遠慮なく攻撃しても構いませんが、フローラ伯爵が重傷を負わないための対処もお願いいたします。
現場にいる暗殺者達を1人以上捕縛し、フローラ伯爵に重傷を負わせることなく守り抜くことができれば依頼は達成扱いとなります。
ご不明な点がございましたら、出発36時間前まででしたらアルヒが答えられる範囲のことは答えます。
リプレイ
●排除開始
この日、この場に集った冒険者達の大半が敬愛するレイウェスト・バルダス皇子を侮辱した時点で、聖影(せいえい)を名乗る暗殺者達の命運は決まっていたのかもしれない。
南東方向より進出し、エーテルを体内に巡らせ反応速度を高めたベルク・オスマットは、北壁の防人達が受け継ぐ技能を披露し、凄まじい速度で聖影の1人との距離を詰める。
「貴様ら、楽に死ねると思うな」
――まずは手足から全力で潰す。
一気に肉薄するなり、ベルクより神材の短剣が突き通され、聖影の太ももを刺し貫くと血霧が噴出た。
「自分から殺してくれというまで。惨めで無様な姿を晒すまで。ゴールディ仕込みの尋問術で生き地獄を与えてなぶり殺しにしてくれる」
ベルクは己の主君を侮辱された憤りを滲ませる。
北東方向より進み出たセロンガード・シュタインドルフは、聖影達の過ちを指摘する。
「感情の乗った殺しは大抵うまくいかない」
セロンガードから見て、今回の襲撃はメアリー王女が気に入らないからという私的な感情が多すぎる。
「思想さえ絡まなければ、もう少し賢いやり方ができた」
そう言いながらセロンガードはシュタインドルフの剣弓:弓を静かに引き絞り、敵味方の動向を見据えながら好機を伺う。
その間にも、北西方向からアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトが進出する。
「貴様らが殿下を侮辱した愚か者共か……」
アルベルトの声音は、憤りをはらんでいた。
アルベルトが握るシュトルツの柄が、手の中で軋みをあげる。
アルベルトもまた、絶対の忠誠を誓うレイウェスト皇子への侮辱を聞き、その怒りが胸中で燃え盛っている。
「お望み通り生まれたことを後悔させてやろう……」
最も怒るとき、敵を責め苛もうと決意したとき、人の顔は笑みの形を取るという説もあるが、この時のアルベルトはまさにそのような表情を形作っていた。
瞬間的な加速を披露して、急速に距離を詰めてくるアルベルトに対し、聖影も大きく跳びあがり、アルベルトの頭へと蹴撃を見舞う。
それを見たアルベルトはウンボイクザームを頭上に掲げ、輝くエーテルをその身に収束させることで、瞬間的に防御を向上し、聖影の攻撃を受け止める。
「貴様等は俺を本気にさせた……」
着地した聖影に向け、アルベルトは稲妻そのものを叩き斬ると歌われるほど素早く、鋭く、力強い一撃と化したシュトルツを斬り下ろす。
まともに斬撃を浴びた聖影は、斬られた箇所から血飛沫をあげて後退するが、その隙をセロンガードは見逃さない。
「戦局を優位に運ぶなら、今が好機」
セロンガードの呟きと共に弦が鳴り、射撃による不意打ちが聖影の背を貫いた。
既にアルベルトの攻撃で損傷が蓄積し、セロンガードに射抜かれた聖影は血を噴き、前のめりで倒れたものの、ゆっくりと起き上がる。
ベルクやアルベルト、セロンガード達が聖影2人を抑えるうちに、東側より進出したネフリティス=N=クリスタロスは、フローラ・ウォレス伯爵との合流を果たしていた。
「守りはネフリが引き受けますぅ」
自信を覗かせる口調と共に、ネフリティスは看破スキルを駆使して周囲を見渡し、隠蔽状態の聖影を探り始める。
その結果、フローラ伯爵の至近まで迫る聖影の看破に成功したネフリティスは、フローラ伯爵と聖影の間に自身の体を割り込ませ、フローラ伯爵を庇う。
「隠れてもネフリの目からは逃れられないのですよねぇ」
呟きと共に眩い光を宿したダマスカス鋼の祭刀が非常に強い一撃と化し、聖影の身を斬り裂いた。
斬撃を浴びた聖影は血霧を撒いて後退するが、諦める様子は見られない。
「ん-、色々と理屈をつけていますけど。つまり己にとって不都合だから排除する、で良いのですよね?」
そして西より進出したバル・ヌール・スケアクロウは、暗殺の動機についてそんな分析を行った。
「死と破壊しかもたらさないヒューマンが、この世界に存在する意義って何なんです?」
バルはあえて聖影達を煽るような言い方で問い返す。
――エルフのように長く観るものでもない。
――ドワーフのような屈強さも器用さもない。
――ハーフビーストのような適応力もない。
――ハーフリングのようなエーテルへの親和性さえない。
――リザードマンのような求道性を持たず。
――ゴブリンのような開拓の精神すら持っていない。
「そんなヒューマンは、こそこそと暗殺を仕掛けるようなことが正義だというのですか? 教えてくださいな」
バルから見れば暗殺という手段を取った時点で、彼らは自らやましいことがあると宣言したようなものだ。
「戯言を――」
聖影はバルの問いに一切答えることなくバルの頭上へと跳躍し、宙で半回転すると蹴撃を叩き込んでくる。
既にエーテルブレードによってエーテル光を刻死の剣に纏わせ、刃と成していたバルは精神を研ぎ澄ませることで反応速度を瞬間的に高め、軽く上半身を退いて真上からの蹴りを回避する。
バルは範囲内に味方がいないことを素早く確認すると、着地した聖影の懐へと飛び込んだ。
そのままバルは光の刃を纏った刻死の剣を真横に一閃し、聖影とその周囲を薙ぎ払う。
まともにその一撃を浴びた聖影は損傷を負うと共に生命を削られ、その体がよろめいた。
●圧倒
ベルクは周囲を見渡し、今の段階で倒れた敵がいないことを確認する。
「できれば2匹以上生きていれば満足のいく結果だよな」
ベルクの声は、歌うように軽い。
――あるいは、これから倒す相手を人間とは認識していない。
ベルクは動き続けて相手を惑わし、狙いを絞らせない戦術を駆使し、聖影へと肉薄する。
「さて、妾の好きな言葉は有言実行でのぉ」
ベルクの呟きと共に、短剣が聖影の肩に突き刺さる。
「次は両目を潰す。遠慮はいらんよ、妾のおごりじゃ」
短剣を引き抜いたベルクが狐惑乱舞によって素早く後方へと飛び退き、遅れて聖影の肩口より噴き出した血が地面を濡らす。
「伯爵を攻撃する暗殺者は最優先で排除」
同じころ、セロンガードはネフリティスのもとへ合流し、ともにフローラ伯爵への暗殺阻止に動いていた。
「敵はまた不意打ちを狙ってきそうですよねぇ」
ネフリティスの言葉にセロンガードも賛意を示す。
セロンガードも敵がフローラ伯爵への不意打ちを諦めていないと考え、野外において優れた索敵術を駆使して周囲への索敵を行うと、ネフリティスも看破スキルを駆使して周囲を見渡し、隠蔽状態となった敵の看破を試みる。
そしてセロンガードはネフリティスと連携する形で隠蔽状態だった聖影を看破すると、その場に隠蔽を解かれた聖影の姿が出現した。
「回復と援護はネフリにお任せ下さいですぅ」
ネフリティスは負傷した仲間に向けて癒しの力を秘めた光球を放ち、その生命を回復させると、続けてセロンガードのシュタインドルフの剣弓:弓を淡く透明な光で包み、攻撃力を向上させた。
「支援感謝。このまま叩き込む」
セロンガードはネフリティスに短く礼を述べ、弓にエーテルを収束させて鋭く撃ち放つ。
破壊力を増した一射が聖影の身を貫き、射抜かれた聖影は血霧を撒いてよろめいた。
その北側ではアルベルトが別の聖影を追い詰め、他の方面へ向かうことを阻止していた。
「駄目だよ。俺を本気で怒らせたら」
眼前の愚か者に対する怒りが胸の中で燃え続けているアルベルトだが、頭は冷えている。
一方の聖影はアルベルトから大きく距離を取ると短弓に矢を番え、撃ち放つ。
弓弦を鳴らして飛来した一射に、アルベルトはウンボイクザームや自身へと輝くエーテルを纏って防御力を瞬間的に高めて対抗し、受け止めた。
「もう謝っても遅いぜ……」
――レイウェスト殿下を侮辱した暗殺者は、生まれたことを後悔させながら斬る!
アルベルトは瞬間的な加速によって疾風と化し、肉薄するなり漆黒の名剣が威力を重視した鋭い一撃と化して聖影の肩を斜めに断ち割った。
斬られた箇所より鮮血を噴いて聖影の体が横転し、そのまま力尽きる。
その近くではバルと聖影が激突と離脱を繰り返し、切り結んでいた。
「ヒューマンとは何なのでしょうね?」
「その迸る知性をもって、世界をあまねく照らす光なり」
バルの問いに聖影はそう答えると、低い姿勢からバルへと踏み込み、斬り上げる。
すでにペインキルで痛覚を遮断したバルは、聖影からの斬撃に対し輝くエーテルをその身に収束させて防ぐと、羽歩によって飛び退いた聖影に告げる。
「利き腕を切り落としましょうか。大分頑強なようですし」
バルはフローラ伯爵からの要請に応じ、最低1人は生かして捕縛するつもりでいるが、敵のしぶとさから多少壊しても問題ないだろうと判断している。
バルはそのまま聖影との間合を詰めると、刻死の剣がエーテルブレードの効果によって射程を延ばし、聖影の身を深々と裂いていた。
バルの宣言通り腕ごと胴を斬られた聖影は、顔を歪めたまま地面に倒れ伏す。
「その程度で喋れなくはならないでしょう?」
バルは倒れた聖影にまだ息があるのか確認を始めた。
●制圧
それまでベルクやセロンガード、ネフリティス達と交戦を続けていた聖影2人も、終わりが近づいていた。
「自称正義の忠義者であるそなたらなら、邪悪であるはずの我らの行いに屈しなどせぬであろう?」
――くす、くすくすくす。
ベルクの常にない含み笑いと共に振るわれる短剣は聖影へと付け入り、手傷を負わせていく。
「馬鹿な。かようなことがあるものか……」
聖影は己が血に滑る指に剣を握り直す。
大量の出血で目がくらみ、かすむ双眸を懸命に見開いた聖影は渾身の一撃を繰り出す。
身を低くして攻撃を躱したベルクは、狐惑乱舞を駆使してそのまま地を這うような動きで聖影へと詰め寄る。
「生き地獄という物を味合わせてやろう。楽しませておくれ?」
ベルクが呟いたとき、その短剣が跳ね上がり、聖影の顔へと襲いかかる。
聖影は短剣の軌道から眼球だけは逸らしたようだが、代わりにその顎から額までざっくりと斬り裂かれ、新たな鮮血を噴き出す。
狐惑乱舞によって再びベルクが距離を置く中、セロンガードやネフリティスはもう片方の聖影からフローラ伯爵を守り抜いていた。
「時間稼ぎは終了。あとは倒すだけ」
セロンガードは超視覚を節してアルベルトやバル達の方角を視認し、敵の撃破を確認するとネフリティスに対し攻勢へ転じる旨を伝える。
「了解ですぅ。それならネフリも無力化に加わればいいわけですよねぇ」
承諾の意を返したネフリティスに向け、眼前の聖影は短弓で一射を浴びせてきた。
ネフリティスは反応強化2を駆使することで精神を研ぎ澄ませ、一瞬高めた反応速度で飛来した一射を回避する。
「敵には容赦しない」
入れ違いにセロンガードがやや離れた位置より弓弦を引き絞り、番えた矢に対象を侵すエーテルをまとわせ撃ち放つ。
セロンガードより放たれた一射が聖影を貫くと、射抜かれた聖影は矢に纏っていたエーテルの効果で、命中精度を下げていく。
「全力をもって滅する、ですの」
そしてセロンガードの攻撃に続き、ネフリティスが鋭い踏み込みから一気に肉薄すると、眩く光り輝くエーテルを纏う祭刀が痛烈な刺突と化し、聖影の身を深々と貫いた。
バルとアルベルトは一度合流すると、互いの状況を伝え合っていた。
「先程私が倒したほうは、辛うじて息はありましたので、周囲にいる私兵団へ捕縛を依頼しました」
バルはフローラ伯爵が口にした「一人生かして捕縛するように」との要望は、既に達成されたことをアルベルトに報せる。
「それなら後は斬り倒せばいいわけだな」
残る敵を我慢して生かしておく必要はないことを知り、アルベルトは獰猛な笑みを見せる。
短いやり取りの後、アルベルトはチャージングを駆使してベルクのもとへ向かい、バルもセロンガードやネフリティスのいる方角へと急行する。
「1人は確保した。もうそいつは倒しても構わないぞ」
ベルクの近くまで到達したアルベルトは手短に状況を伝えるとそのまま駆け抜け、聖影との距離を詰めていく。
一気に肉薄したアルベルトのシュトルツが、威力を重視した鋭い一撃と化して斬り下ろされる。
骨ごと胸を叩き斬られた聖影は血飛沫をあげて倒れこみ、沈黙した。
そして最後の一人となった聖影にも、セロンガードやネフリティス達のもとへ駆けつけたバルが終わりを告げる。
「死だけは誰にでも平等です」
既に聖影は当初の矜持や傲慢さもなく、追い詰められたことに屈辱を感じる余裕さえない。
あるのは活路を拓くための一手のみ。
地を蹴った聖影が高々と跳躍すると、振り上げた片脚をバルの頭部へと勢いよく振り下ろす。
バルは装甲を活かす動きによって防御性能を高め、聖影の蹴撃を防ぎ止める。
「貴方達も知るように、死はどこにでも存在するのですから」
そのままバルは着地した聖影へと刻死の剣を斜め下より斬り上げた。
斬撃を浴びた聖影は わき腹から肩にかけ鮮血の霧を噴き上げて転倒し、動かなくなった。
●完了
やがて私兵団も駆けつけ、戦後処理が慌ただしく進められる。
いまだ息のある聖影に対しては、ネフリティスが持参したロープで捕縛作業を手伝い、ベルクもアルヒ・ラスカスより借りた布で即席の猿轡を作成して自害を防ぐ措置を施す。
その中で2人の敵がいまだ息があることをベルクが知ると、ベルクは片方の尋問をやらせてくれるようフローラ伯爵に頼み込む。
フローラ伯爵は少し思案の後、片方をベルクに任せることにした。
早速ベルクは人目のつかない場所まで聖影の1人を運び込むと、持参したシーフズツールや予めアルヒより借りた紙、筆記用具などを取り出す。
「辛い苦しみの後にやってくる甘美な甘い囁き。さて、耐えられるものはどれだけいるのであろうな?」
ベルクは嬉々とした様子で尋問を開始した。
ベルクは作業によって引き出せた情報を紙に記録し、清書したものをフローラ伯爵に提出すると、メアリー王女にも情報を献上してほしいとの要望を出す。
「わかりました。王女殿下にもお届けします」
フローラ伯爵はベルクに対し、そう請け負った。
なおアルベルトはベルクから尋問の詳細を聞き、こう言っていた。
「駄目じゃないかオスマットさん。あいつらはもっと苦しむ義務があったのに……」
こうしてメアリー・リーンエス王女への暗殺計画は冒険者達によって阻止され、メアリー王女へと至る前に叩き潰された。
この日、この場に集った冒険者達の大半が敬愛するレイウェスト・バルダス皇子を侮辱した時点で、聖影(せいえい)を名乗る暗殺者達の命運は決まっていたのかもしれない。
南東方向より進出し、エーテルを体内に巡らせ反応速度を高めたベルク・オスマットは、北壁の防人達が受け継ぐ技能を披露し、凄まじい速度で聖影の1人との距離を詰める。
「貴様ら、楽に死ねると思うな」
――まずは手足から全力で潰す。
一気に肉薄するなり、ベルクより神材の短剣が突き通され、聖影の太ももを刺し貫くと血霧が噴出た。
「自分から殺してくれというまで。惨めで無様な姿を晒すまで。ゴールディ仕込みの尋問術で生き地獄を与えてなぶり殺しにしてくれる」
ベルクは己の主君を侮辱された憤りを滲ませる。
北東方向より進み出たセロンガード・シュタインドルフは、聖影達の過ちを指摘する。
「感情の乗った殺しは大抵うまくいかない」
セロンガードから見て、今回の襲撃はメアリー王女が気に入らないからという私的な感情が多すぎる。
「思想さえ絡まなければ、もう少し賢いやり方ができた」
そう言いながらセロンガードはシュタインドルフの剣弓:弓を静かに引き絞り、敵味方の動向を見据えながら好機を伺う。
その間にも、北西方向からアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトが進出する。
「貴様らが殿下を侮辱した愚か者共か……」
アルベルトの声音は、憤りをはらんでいた。
アルベルトが握るシュトルツの柄が、手の中で軋みをあげる。
アルベルトもまた、絶対の忠誠を誓うレイウェスト皇子への侮辱を聞き、その怒りが胸中で燃え盛っている。
「お望み通り生まれたことを後悔させてやろう……」
最も怒るとき、敵を責め苛もうと決意したとき、人の顔は笑みの形を取るという説もあるが、この時のアルベルトはまさにそのような表情を形作っていた。
瞬間的な加速を披露して、急速に距離を詰めてくるアルベルトに対し、聖影も大きく跳びあがり、アルベルトの頭へと蹴撃を見舞う。
それを見たアルベルトはウンボイクザームを頭上に掲げ、輝くエーテルをその身に収束させることで、瞬間的に防御を向上し、聖影の攻撃を受け止める。
「貴様等は俺を本気にさせた……」
着地した聖影に向け、アルベルトは稲妻そのものを叩き斬ると歌われるほど素早く、鋭く、力強い一撃と化したシュトルツを斬り下ろす。
まともに斬撃を浴びた聖影は、斬られた箇所から血飛沫をあげて後退するが、その隙をセロンガードは見逃さない。
「戦局を優位に運ぶなら、今が好機」
セロンガードの呟きと共に弦が鳴り、射撃による不意打ちが聖影の背を貫いた。
既にアルベルトの攻撃で損傷が蓄積し、セロンガードに射抜かれた聖影は血を噴き、前のめりで倒れたものの、ゆっくりと起き上がる。
ベルクやアルベルト、セロンガード達が聖影2人を抑えるうちに、東側より進出したネフリティス=N=クリスタロスは、フローラ・ウォレス伯爵との合流を果たしていた。
「守りはネフリが引き受けますぅ」
自信を覗かせる口調と共に、ネフリティスは看破スキルを駆使して周囲を見渡し、隠蔽状態の聖影を探り始める。
その結果、フローラ伯爵の至近まで迫る聖影の看破に成功したネフリティスは、フローラ伯爵と聖影の間に自身の体を割り込ませ、フローラ伯爵を庇う。
「隠れてもネフリの目からは逃れられないのですよねぇ」
呟きと共に眩い光を宿したダマスカス鋼の祭刀が非常に強い一撃と化し、聖影の身を斬り裂いた。
斬撃を浴びた聖影は血霧を撒いて後退するが、諦める様子は見られない。
「ん-、色々と理屈をつけていますけど。つまり己にとって不都合だから排除する、で良いのですよね?」
そして西より進出したバル・ヌール・スケアクロウは、暗殺の動機についてそんな分析を行った。
「死と破壊しかもたらさないヒューマンが、この世界に存在する意義って何なんです?」
バルはあえて聖影達を煽るような言い方で問い返す。
――エルフのように長く観るものでもない。
――ドワーフのような屈強さも器用さもない。
――ハーフビーストのような適応力もない。
――ハーフリングのようなエーテルへの親和性さえない。
――リザードマンのような求道性を持たず。
――ゴブリンのような開拓の精神すら持っていない。
「そんなヒューマンは、こそこそと暗殺を仕掛けるようなことが正義だというのですか? 教えてくださいな」
バルから見れば暗殺という手段を取った時点で、彼らは自らやましいことがあると宣言したようなものだ。
「戯言を――」
聖影はバルの問いに一切答えることなくバルの頭上へと跳躍し、宙で半回転すると蹴撃を叩き込んでくる。
既にエーテルブレードによってエーテル光を刻死の剣に纏わせ、刃と成していたバルは精神を研ぎ澄ませることで反応速度を瞬間的に高め、軽く上半身を退いて真上からの蹴りを回避する。
バルは範囲内に味方がいないことを素早く確認すると、着地した聖影の懐へと飛び込んだ。
そのままバルは光の刃を纏った刻死の剣を真横に一閃し、聖影とその周囲を薙ぎ払う。
まともにその一撃を浴びた聖影は損傷を負うと共に生命を削られ、その体がよろめいた。
●圧倒
ベルクは周囲を見渡し、今の段階で倒れた敵がいないことを確認する。
「できれば2匹以上生きていれば満足のいく結果だよな」
ベルクの声は、歌うように軽い。
――あるいは、これから倒す相手を人間とは認識していない。
ベルクは動き続けて相手を惑わし、狙いを絞らせない戦術を駆使し、聖影へと肉薄する。
「さて、妾の好きな言葉は有言実行でのぉ」
ベルクの呟きと共に、短剣が聖影の肩に突き刺さる。
「次は両目を潰す。遠慮はいらんよ、妾のおごりじゃ」
短剣を引き抜いたベルクが狐惑乱舞によって素早く後方へと飛び退き、遅れて聖影の肩口より噴き出した血が地面を濡らす。
「伯爵を攻撃する暗殺者は最優先で排除」
同じころ、セロンガードはネフリティスのもとへ合流し、ともにフローラ伯爵への暗殺阻止に動いていた。
「敵はまた不意打ちを狙ってきそうですよねぇ」
ネフリティスの言葉にセロンガードも賛意を示す。
セロンガードも敵がフローラ伯爵への不意打ちを諦めていないと考え、野外において優れた索敵術を駆使して周囲への索敵を行うと、ネフリティスも看破スキルを駆使して周囲を見渡し、隠蔽状態となった敵の看破を試みる。
そしてセロンガードはネフリティスと連携する形で隠蔽状態だった聖影を看破すると、その場に隠蔽を解かれた聖影の姿が出現した。
「回復と援護はネフリにお任せ下さいですぅ」
ネフリティスは負傷した仲間に向けて癒しの力を秘めた光球を放ち、その生命を回復させると、続けてセロンガードのシュタインドルフの剣弓:弓を淡く透明な光で包み、攻撃力を向上させた。
「支援感謝。このまま叩き込む」
セロンガードはネフリティスに短く礼を述べ、弓にエーテルを収束させて鋭く撃ち放つ。
破壊力を増した一射が聖影の身を貫き、射抜かれた聖影は血霧を撒いてよろめいた。
その北側ではアルベルトが別の聖影を追い詰め、他の方面へ向かうことを阻止していた。
「駄目だよ。俺を本気で怒らせたら」
眼前の愚か者に対する怒りが胸の中で燃え続けているアルベルトだが、頭は冷えている。
一方の聖影はアルベルトから大きく距離を取ると短弓に矢を番え、撃ち放つ。
弓弦を鳴らして飛来した一射に、アルベルトはウンボイクザームや自身へと輝くエーテルを纏って防御力を瞬間的に高めて対抗し、受け止めた。
「もう謝っても遅いぜ……」
――レイウェスト殿下を侮辱した暗殺者は、生まれたことを後悔させながら斬る!
アルベルトは瞬間的な加速によって疾風と化し、肉薄するなり漆黒の名剣が威力を重視した鋭い一撃と化して聖影の肩を斜めに断ち割った。
斬られた箇所より鮮血を噴いて聖影の体が横転し、そのまま力尽きる。
その近くではバルと聖影が激突と離脱を繰り返し、切り結んでいた。
「ヒューマンとは何なのでしょうね?」
「その迸る知性をもって、世界をあまねく照らす光なり」
バルの問いに聖影はそう答えると、低い姿勢からバルへと踏み込み、斬り上げる。
すでにペインキルで痛覚を遮断したバルは、聖影からの斬撃に対し輝くエーテルをその身に収束させて防ぐと、羽歩によって飛び退いた聖影に告げる。
「利き腕を切り落としましょうか。大分頑強なようですし」
バルはフローラ伯爵からの要請に応じ、最低1人は生かして捕縛するつもりでいるが、敵のしぶとさから多少壊しても問題ないだろうと判断している。
バルはそのまま聖影との間合を詰めると、刻死の剣がエーテルブレードの効果によって射程を延ばし、聖影の身を深々と裂いていた。
バルの宣言通り腕ごと胴を斬られた聖影は、顔を歪めたまま地面に倒れ伏す。
「その程度で喋れなくはならないでしょう?」
バルは倒れた聖影にまだ息があるのか確認を始めた。
●制圧
それまでベルクやセロンガード、ネフリティス達と交戦を続けていた聖影2人も、終わりが近づいていた。
「自称正義の忠義者であるそなたらなら、邪悪であるはずの我らの行いに屈しなどせぬであろう?」
――くす、くすくすくす。
ベルクの常にない含み笑いと共に振るわれる短剣は聖影へと付け入り、手傷を負わせていく。
「馬鹿な。かようなことがあるものか……」
聖影は己が血に滑る指に剣を握り直す。
大量の出血で目がくらみ、かすむ双眸を懸命に見開いた聖影は渾身の一撃を繰り出す。
身を低くして攻撃を躱したベルクは、狐惑乱舞を駆使してそのまま地を這うような動きで聖影へと詰め寄る。
「生き地獄という物を味合わせてやろう。楽しませておくれ?」
ベルクが呟いたとき、その短剣が跳ね上がり、聖影の顔へと襲いかかる。
聖影は短剣の軌道から眼球だけは逸らしたようだが、代わりにその顎から額までざっくりと斬り裂かれ、新たな鮮血を噴き出す。
狐惑乱舞によって再びベルクが距離を置く中、セロンガードやネフリティスはもう片方の聖影からフローラ伯爵を守り抜いていた。
「時間稼ぎは終了。あとは倒すだけ」
セロンガードは超視覚を節してアルベルトやバル達の方角を視認し、敵の撃破を確認するとネフリティスに対し攻勢へ転じる旨を伝える。
「了解ですぅ。それならネフリも無力化に加わればいいわけですよねぇ」
承諾の意を返したネフリティスに向け、眼前の聖影は短弓で一射を浴びせてきた。
ネフリティスは反応強化2を駆使することで精神を研ぎ澄ませ、一瞬高めた反応速度で飛来した一射を回避する。
「敵には容赦しない」
入れ違いにセロンガードがやや離れた位置より弓弦を引き絞り、番えた矢に対象を侵すエーテルをまとわせ撃ち放つ。
セロンガードより放たれた一射が聖影を貫くと、射抜かれた聖影は矢に纏っていたエーテルの効果で、命中精度を下げていく。
「全力をもって滅する、ですの」
そしてセロンガードの攻撃に続き、ネフリティスが鋭い踏み込みから一気に肉薄すると、眩く光り輝くエーテルを纏う祭刀が痛烈な刺突と化し、聖影の身を深々と貫いた。
バルとアルベルトは一度合流すると、互いの状況を伝え合っていた。
「先程私が倒したほうは、辛うじて息はありましたので、周囲にいる私兵団へ捕縛を依頼しました」
バルはフローラ伯爵が口にした「一人生かして捕縛するように」との要望は、既に達成されたことをアルベルトに報せる。
「それなら後は斬り倒せばいいわけだな」
残る敵を我慢して生かしておく必要はないことを知り、アルベルトは獰猛な笑みを見せる。
短いやり取りの後、アルベルトはチャージングを駆使してベルクのもとへ向かい、バルもセロンガードやネフリティスのいる方角へと急行する。
「1人は確保した。もうそいつは倒しても構わないぞ」
ベルクの近くまで到達したアルベルトは手短に状況を伝えるとそのまま駆け抜け、聖影との距離を詰めていく。
一気に肉薄したアルベルトのシュトルツが、威力を重視した鋭い一撃と化して斬り下ろされる。
骨ごと胸を叩き斬られた聖影は血飛沫をあげて倒れこみ、沈黙した。
そして最後の一人となった聖影にも、セロンガードやネフリティス達のもとへ駆けつけたバルが終わりを告げる。
「死だけは誰にでも平等です」
既に聖影は当初の矜持や傲慢さもなく、追い詰められたことに屈辱を感じる余裕さえない。
あるのは活路を拓くための一手のみ。
地を蹴った聖影が高々と跳躍すると、振り上げた片脚をバルの頭部へと勢いよく振り下ろす。
バルは装甲を活かす動きによって防御性能を高め、聖影の蹴撃を防ぎ止める。
「貴方達も知るように、死はどこにでも存在するのですから」
そのままバルは着地した聖影へと刻死の剣を斜め下より斬り上げた。
斬撃を浴びた聖影は わき腹から肩にかけ鮮血の霧を噴き上げて転倒し、動かなくなった。
●完了
やがて私兵団も駆けつけ、戦後処理が慌ただしく進められる。
いまだ息のある聖影に対しては、ネフリティスが持参したロープで捕縛作業を手伝い、ベルクもアルヒ・ラスカスより借りた布で即席の猿轡を作成して自害を防ぐ措置を施す。
その中で2人の敵がいまだ息があることをベルクが知ると、ベルクは片方の尋問をやらせてくれるようフローラ伯爵に頼み込む。
フローラ伯爵は少し思案の後、片方をベルクに任せることにした。
早速ベルクは人目のつかない場所まで聖影の1人を運び込むと、持参したシーフズツールや予めアルヒより借りた紙、筆記用具などを取り出す。
「辛い苦しみの後にやってくる甘美な甘い囁き。さて、耐えられるものはどれだけいるのであろうな?」
ベルクは嬉々とした様子で尋問を開始した。
ベルクは作業によって引き出せた情報を紙に記録し、清書したものをフローラ伯爵に提出すると、メアリー王女にも情報を献上してほしいとの要望を出す。
「わかりました。王女殿下にもお届けします」
フローラ伯爵はベルクに対し、そう請け負った。
なおアルベルトはベルクから尋問の詳細を聞き、こう言っていた。
「駄目じゃないかオスマットさん。あいつらはもっと苦しむ義務があったのに……」
こうしてメアリー・リーンエス王女への暗殺計画は冒険者達によって阻止され、メアリー王女へと至る前に叩き潰された。
マスターコメント
今回は敵の隠蔽状態を看破できる手段を取り揃えていたことから、敵は身を隠しての暗殺が難しくなりました。
またフローラ・ウォレス伯爵への守りもそつなく行われた結果、失敗条件を満たすことはありませんでした。
今回の敵は身を隠せない状態では満足な行動などできず、自身が発した暴言の代償を支払う形で全員撃破されました。
全員で目標達成に大きく貢献されたということで、大成功と判定いたしました。
改めて今回はご参加くださりありがとうございました。
また機会がございましたら、よろしくお願いいたします。
ショートシナリオ普通 報酬:多い5 / 4〜6人
2023年08月10日 12時13分24秒 公開
大成功
相談掲示板
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 ・・・殿下を侮辱した愚か者共を斬りに来た。 A2からスタートし、D2の暗殺者から斬る予定だ。 相談の内容によっては予定の変更は可能だ。 さあ、愚か者共に裁きを与えよう(思い切り悪人顔になりながら)
ウォーリア、バル・ヌール・スケアクロウです よろしくおねがいしますね?
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 我はI8あたりからスタートしようか。 とりあえず一人は生かして捕まえんとな。 死人に口なししてしまうとリスタ子爵の追及に支障が出かねん。 生かしてくれれば後の対応は我がやろう。 ゴールディ仕込みの極道流対話術を存分に見せてやろうではないか。 (とってもいい笑顔でところどころ赤い錆びの浮いたシーフズツールを手入れしながら ……殿下を侮辱した痴れ者どもに慈悲など要らんよな。(笑顔とは本来r
ヒーラーのネフリティスなのです! ネフリはI5からスタートして、フローラ伯と合流するしてからみんなを支援していく予定なのです あとは、『看破』で隠密状態になった影を見くけていくですよ
では私はA5あたりを希望しましょうか。 C4あたりからでしょうかねー? >捕獲について 喋れれば十分ですよね?(ぺかー
>喋れれば 十分十分。 むしろ四肢は要らんまであるかな?(ニッコリ) あればあるで質問方法(と書いて…)が増えるが。