【嵐竜】海祭りと不穏な夢
七海真砂
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シナリオID:3119
オープニング
●不穏な夢
――白い鳥が飛んでいく。
ああ、また夢を見ているのだと『預言の魔女』オペラは気付いた。
(これは……また、リブラネスタか?)
嵐逆巻く魔海竜に関する予知夢を見てから、まだ日が浅い。思わず息を呑むオペラだったが、視えた光景は大勢の人々で賑わう港の様子だった。
(これは、海祭りじゃな)
屋台が並び、海の幸などが振る舞われるのを多くの人々が楽しんでいる。しかし、その会場に悲鳴が響き――。
予知夢はそこで、中途半端に終わってしまった。
●海祭り
「うっみまっつりー、うっみまっつり~。オペラも行くんだろう?」
「うむ。そのつもりだったのじゃが……ちょっと気になる『夢』があってな」
今日もいつものように『踊る子熊亭』にやってきたオペラは、冒険者の一人、ステラに呼びかけられると、どうやら海祭りの会場で何か事件が起こるようだと話した。
「詳しい事は、わからないのじゃが……」
「ふぅん。じゃあ会場で楽しみながら警戒を怠らない! って感じがいいのかな?」
「そうじゃな、おそらく……」
ステラの言葉に煮え切らない反応をするオペラだが、オペラとしても、予知夢の内容が中途半端だったので、どう対策するのがベストなのか、わからないのだろう。
「わらわの神が無意味な夢を見せるとは思えぬ。きっと、この夢にも意味があるはずじゃ」
「じゃあ十分に気を付けつつ、海祭りを楽しもうぜ!」
せっかくのお祭り、楽しまなくちゃ損だし! とオペラの手を引くステラに、オペラはようやく少しだけ笑って「そうじゃなあ」と頷いた。
――白い鳥が飛んでいく。
ああ、また夢を見ているのだと『預言の魔女』オペラは気付いた。
(これは……また、リブラネスタか?)
嵐逆巻く魔海竜に関する予知夢を見てから、まだ日が浅い。思わず息を呑むオペラだったが、視えた光景は大勢の人々で賑わう港の様子だった。
(これは、海祭りじゃな)
屋台が並び、海の幸などが振る舞われるのを多くの人々が楽しんでいる。しかし、その会場に悲鳴が響き――。
予知夢はそこで、中途半端に終わってしまった。
●海祭り
「うっみまっつりー、うっみまっつり~。オペラも行くんだろう?」
「うむ。そのつもりだったのじゃが……ちょっと気になる『夢』があってな」
今日もいつものように『踊る子熊亭』にやってきたオペラは、冒険者の一人、ステラに呼びかけられると、どうやら海祭りの会場で何か事件が起こるようだと話した。
「詳しい事は、わからないのじゃが……」
「ふぅん。じゃあ会場で楽しみながら警戒を怠らない! って感じがいいのかな?」
「そうじゃな、おそらく……」
ステラの言葉に煮え切らない反応をするオペラだが、オペラとしても、予知夢の内容が中途半端だったので、どう対策するのがベストなのか、わからないのだろう。
「わらわの神が無意味な夢を見せるとは思えぬ。きっと、この夢にも意味があるはずじゃ」
「じゃあ十分に気を付けつつ、海祭りを楽しもうぜ!」
せっかくのお祭り、楽しまなくちゃ損だし! とオペラの手を引くステラに、オペラはようやく少しだけ笑って「そうじゃなあ」と頷いた。
解説
リブラネスタの港で、海祭りが開催されます!
嵐逆巻く魔海竜によって、リブラネスタが滅びるという予知夢がありましたが、多くの人々はそのことを知らないので、ごくごく普通に海祭りを楽しもうとしています。
港には屋台が並び、海の幸やお祭りらしい料理があれこれ食べられます。ちょっとした出し物の屋台も出ているかもしれません。あんまり難しく考えず、お祭りにありそうな物はあるという前提で楽しんで頂いて大丈夫です!
オペラとステラは一緒に海祭りを回ります。二人と一緒に回るのも勿論OK! 大歓迎です。もし屋台を出す方がいたら、その方の所へ遊びにいくかもしれません。
オペラが見た夢の内容は、知りたい人は誰でも知ることができます。
夢の出来事を阻止するには、相応のプレイングが必要になります。ヒントは、『事件が起きた瞬間に、予知夢が中途半端に終わった』ことです。
マスターより
こんにちは、七海真砂です。
今回のシナリオは海祭り。いろいろ不穏な予知夢があったりはしますが……ご参加、お待ちしております。
リプレイ
海祭りの最中に悲鳴が響き渡る――。
そんな、オペラが見た予知夢の話を聞いたトーラは、会場となる港に足を向けていた。とにかく辺りを警戒して、悲鳴が聞こえたらすぐ駆け付けられるようにする為だ。
「今のところは平穏ですね……」
変わった所は見られないが、いつ異変の兆しがあるか分からない。トーラは気を引き締めて目を光らせる。
「セロン、そっちはどう、だった?」
「運営本部の方から色々聞いてきました。会場の見取り図もいただけたので、これを参考にしましょう」
浴衣姿で歩いてきたティトの問いかけに、セロンガード・シュタインドルフは手にしていた紙を広げる。どうやら海祭りは細かいタイムスケジュールは決まっておらず、屋台の準備ができて人が集まってきたら始まるものらしい。屋台の配置がまとめられている見取り図を二人で一緒に覗き込みながら、ティトが口を開く。
「こっちの先は高台になってるから、会場を見下ろせると思う。あとは、ここ……倉庫なんだけど、屋根の上に登っても構わない、って」
会場の外にある高台から見下ろすか、会場の中ほどにある倉庫に登らせて貰うか。急いで駆け付けなければならない可能性もあることを考えると、倉庫の方がいいだろうか、とセロンガードは判断する。
「こちらの倉庫にお邪魔させて貰いましょうか」
「うん。それじゃあ――っと」
いつものように、お姫様抱っこをせがもうとして、ティトは自制する。今は、依頼中だ。いけない、いけない。
「屋台を見ながら、倉庫の方まで行こう、か」
それでも、このくらいは許されるだろうと見上げるティトに、セロンガードは頷き返した。
「なるほど、中途半端な夢ですね」
その頃、オペラから話を聞いたクローリカは思案を巡らせていた。
「もしかして……」
(被害を受けたのが、オペラさん自身なのでは?)
予知夢の仕組みは分からないが、意識を失うような出来事がオペラの身の上に起こって、そのせいで予知夢が止まったのではないかとクローリカは考える。
「オペラ。神と会った後に、オペラ自身が対象になる夢を見た事は?」
「うん? 嵐逆巻く魔海竜の予知夢がそうかの? わらわ個人が、ということなら見ておらぬかもしれぬのぅ……」
同じようにオペラから話を聞いていたレピド・クロサイトの問いかけに、小首を傾げつつ答えるオペラ。その問いかけを耳に挟み、レピドも同じ予想をしていることを察したクローリカは「レピドさんもそう考えましたか」と小さく囁く。
「クローリカもか。どうやら、オペラと一緒に行動した方が良さそうだ」
「そうですね。正夢にならないように同行しましょう」
頷き合うと二人はオペラ達と一緒に、海祭りへ向かう事にする。
「いらっしゃいませー! ぬいぐるみはいかがですか~?」
会場に入ってすぐのところでは、レラ・F・ギュンターが夜なべして作ったぬいぐるみを並べた屋台を出していた。通りかかった人々に向かって、にっこり笑顔で呼び込みをする。
「ぬいぐるみ? ……変なかおー!!」
「えっ、何を言うんです、愛嬌があって可愛いでしょう?」
ほらほら、とぬいぐるみを抱き上げるレラだったが、その顔を向けられた子供はケラケラ笑って走り去っていく。
「んもう、こんなに可愛いのに――あ、オペラさん」
不満そうに口を尖らせたレラだったが、オペラ達に気付くと「見て行ってくださいねー!」と手招く。ちょっと不格好だけれど独特の愛嬌があるぬいぐるみの姿に、「へえ、力作じゃん」とステラは笑う。
「そうなんですよー。どの子もみんな、ちゃんと名前も付いてるんですよ? この白いおさるはゆきみさんで、こちらのレインボーカラーのワニさんはななこさんです」
ぬいぐるみ達を紹介しながら、レラはオペラさんにニワトリのコッコさん、ステラさんにイルカのほしみさんをお勧めする。
「なるほど、わらわはニワトリか」
「イルカか~。海のヤツとは仲良くなれそうだぜ」
「では私は、ゆきみさんを頂きましょうか」
折角ですからお土産に、とクローリカがゆきみさんを取ると、一人手ぶらで残ったレピドがななこさんに手を伸ばした。
「お似合いですよ!」
「……そうか……?」
レピドがななこさんを抱える姿は、なかなか印象的であった。
「そういえば……」
予知夢の件を口にするオペラ。ふむふむ、と話を聞いていたレラは「うーん、ギュンタにはよく分かりませんが」と前置きしつつも、
「中途半端に終わったということは、その瞬間に気絶でもしたのではないですかね。コッコさんで頭守って下さいね」
クローリカやレピドと同じような予測に辿り着きながら、そうにっこり笑いかける。なるほど、と唸ったオペラは至極真面目な顔をしながらコッコさんを構えて、心の準備を試みるのだった。
「はい、どうぞ。お腹いっぱい食べてくださいね」
埠頭に近い一角では、シルク・メイプルリーフが並んでいるお客さんにアラ汁を盛り付けた器を手渡していた。孤児院仕込みの秘伝のアラ汁は、びっくりする位に安い。これも、漁師の皆さんに押し付……寄付して貰った魚がたくさんあるお陰だ。
看板には『お困り事、相談事お聞きいたします』とも書かれており、シルクは迷える子山羊の声に丁寧に耳を傾けている。彼らとの話を通じて情報収集をするのも、平和のための地道な活動である。
(今のところ、何かあったという話は無いですね)
何か異変があったという話があれば、被害を防ぐことに繋げられるかもしれない。シルクは些細な内容も聞き漏らさないように、アンテナを伸ばして情報収集に励んでいた。
「あ、オペラさんいつもお世話になってます」
「シルクの屋台はアラ汁か。盛況じゃのう」
歩いてきたオペラ達に気付いたシルクは、「少し食べていきませんか」と呼びかける。ぜひ、と並んだ四人はクローリカを先頭にアラ汁を受け取ると、順番に口をつけた。
「……美味い」
「いろんな魚が入ってるだろ、これ。別々の旨味が混ざり合って……んまーい!」
シンプルに感想をこぼすレピドと、味を評論するかのように語りつつ笑みを覗かせるステラ。アラも食べ応えがあるのう、とオペラはアラの部分に齧りつく。
「皆さんのお口に合って良かったです」
嬉しそうに微笑むシルク。アラ汁を綺麗に平らげた四人は、来た道を引き返すようにしながら更に屋台を覗いていく。香ばしい焼き魚の匂い、焼き立ての貝の上でとろけるバターの香り……あちこちから誘惑が絶えない。
「いいな。美味くて珍しいものが沢山だ」
肉好きなレピドも、今日は魚介類の魅力の虜だ。折角だしシェアして色々食べよう、とクローリカは買い込んだ料理に少し口をつけてからオペラに回す。これは、食べる物に異常が無いかの確認も兼ねていた。
「ん? あそこにおるのは……」
カクテルカウンター風の屋台にいるのはナハシュだった。夏らしくアレンジされたフルーツ酒を掲げるナハシュの姿に、そういえば食べてばかりだったのうと頷いて、オペラ達もカクテルやジュースを頼む。
「乾杯しよーぜ、乾杯」
「うむ」
夏の日差しを浴びつつ乾杯をして、トロピカルなドリンクを飲み干せば気分も陽気になって。次はどこの屋台に寄ってみようかと、歩き出した時だった。
(ん……?)
まっすぐに、こちらへ向かって歩いて来る男がいることにレピドは気付く。人で混雑する祭りの会場だし、考え過ぎかもしれない。だが――。
引っかかる、と警戒を強めたその時、男が短剣を抜くのが見えた。
「オペラ!」
瞬間的に加速した男の様子に、レピドが咄嗟に庇いに入る。それを乗り越えて刃がオペラを狙おうとするが間一髪、盾にするかのように突き出されたワニのななこさんに刺さり、切り裂かれたななこさんの中身が飛び散った。
(今のは死齎刃……授恵者ですか!)
クローリカは迷わず細剣を抜くと、それを男に突き立てた。授恵者なら、この程度で死にはしない。実際それほどの傷では無いようで、男は咄嗟に周囲の者へと腕を伸ばそうとする。人質にでも取るつもりなのだろう。だが、
「どっち見てんだ? あァ?」
素早く回り込んだステラが割り込んで邪魔をする。そこへ、ホライゾナルジャンプを使ってトーラが上から駆け付けた。辺りを一瞥したトーラは一瞬で状況を把握すると、赤光のエーテルをまとわせたセルリアンエッジで犯人の男に思いっきり斬りつける。
「く……」
トーラのエーテルにまとわりつかれた犯人は、逃げようとしたのか後退る。だが、瞬間的に加速し駆け抜けてきたティトが、その背後を塞いだ。そのまま一行はジリジリと犯人への包囲網を狭めていくと、一気に組み伏せて制圧する。
「何の騒ぎだ?」
「ねえ、どうしたの?」
辺りは騒然となり、人々がザワつく。そこへ、パンと大きく手を叩いて注目を集めたのはナハシュだった。
「なんでもない、もう解決した。大丈夫だ」
「みなさーん! タイムサービスですよー!」
ナハシュが陽気に笑って人々へ呼びかけたところへ、高らかに響いたのはシルクの声。ただでさえ格安のアラ汁が、今だけ一杯の値段で二杯になるとアピールすれば、人々はシルクの屋台の方へと流れていく。
「人目にあまりつかない場所へ移動しましょう。屋台の裏手で十分でしょう」
セロンガードがそう呼びかけ、拘束した犯人を連れて移動する。男はすっかり大人しくなっているが、それはおそらく、これだけの授恵者に取り囲まれてはどうしようもない、と諦めたからに違いない。それでも念の為、オペラは男との距離を取った。
「何故オペラを狙ったんだ?」
レピドが目的を聞こうと問い質すが、男は口を噤んで静かにするだけで何も答えようとしない。その様子に、デジャブを感じたステラが口を開く。
「事件を起こして、動機は何も語らず……って、アベルん所の奴らみたいだな」
アベル。神の御子と呼ばれ、神の庭と呼ばれる団体を束ねている少年だ。リブラネスタで起きた、いくつかの事件やその犯人と関りがあるのでは、と予想されている。
――男は、アベルの名を耳にすると、少しだけ反応を見せた。
「アベルさま……ああ、残念です。あの方が仰ぐ神の理念が、この街に不幸をもたらしてくれると思っていたのに」
「この街……リブラネスタに? どういう事だ」
不穏なフレーズを耳にし、眉を顰めながらレピドが更に問いかけると、男は少しだけ楽しそうに笑った。
「不幸を齎す神など、この世に一柱しかおりますまい。――ああ、残念です。あなたさえいなければ、リブラネスタは泥のように崩れて滅びたでしょうに」
あなた、とオペラの方を向いて男は言う。それはオペラが見た、嵐逆巻く魔海竜の予知夢のことを指しているのだろうか。まるで破滅を求めているかのように言い放って、それきりまた男は黙り込んだ。
「とにかく、彼をこのままにはしておけません。オペラ殺害未遂犯として突き出しましょう」
私達が連れて行きますね、と引き受けるセロンガードにティトも頷き。二人が男を連れて行くと、トーラは「ともかく、これで予知夢の件は解決ですね」一息ついた。
「後の時間は、憂いなくお祭りを楽しんでいきましょう」
「そうですね」
クローリカも張りつめていた空気を緩めて頷く。あの屋台が良かった、という話をトーラにすれば「わたしも行ってみます!」と笑みが返る。
「オペラは? 気を取り直して、もうちょっと楽しんでいこうぜ? な?」
こんな事があったばかりだ、気が滅入らないよう遊んでいこうと誘うステラに、そうじゃなぁとオペラも頷く。
「じゃが、その前にレラの屋台へ一度行きたいのじゃ」
と言うオペラの手には、飛び散ったワニのななこさんだった物が集められている。
「わらわの命の恩人じゃからのう」
ななこさんを通じて、皆に改めて礼を伝えつつ、「無事に直ると良いのじゃが」と呟くオペラだった。
そんな、オペラが見た予知夢の話を聞いたトーラは、会場となる港に足を向けていた。とにかく辺りを警戒して、悲鳴が聞こえたらすぐ駆け付けられるようにする為だ。
「今のところは平穏ですね……」
変わった所は見られないが、いつ異変の兆しがあるか分からない。トーラは気を引き締めて目を光らせる。
「セロン、そっちはどう、だった?」
「運営本部の方から色々聞いてきました。会場の見取り図もいただけたので、これを参考にしましょう」
浴衣姿で歩いてきたティトの問いかけに、セロンガード・シュタインドルフは手にしていた紙を広げる。どうやら海祭りは細かいタイムスケジュールは決まっておらず、屋台の準備ができて人が集まってきたら始まるものらしい。屋台の配置がまとめられている見取り図を二人で一緒に覗き込みながら、ティトが口を開く。
「こっちの先は高台になってるから、会場を見下ろせると思う。あとは、ここ……倉庫なんだけど、屋根の上に登っても構わない、って」
会場の外にある高台から見下ろすか、会場の中ほどにある倉庫に登らせて貰うか。急いで駆け付けなければならない可能性もあることを考えると、倉庫の方がいいだろうか、とセロンガードは判断する。
「こちらの倉庫にお邪魔させて貰いましょうか」
「うん。それじゃあ――っと」
いつものように、お姫様抱っこをせがもうとして、ティトは自制する。今は、依頼中だ。いけない、いけない。
「屋台を見ながら、倉庫の方まで行こう、か」
それでも、このくらいは許されるだろうと見上げるティトに、セロンガードは頷き返した。
「なるほど、中途半端な夢ですね」
その頃、オペラから話を聞いたクローリカは思案を巡らせていた。
「もしかして……」
(被害を受けたのが、オペラさん自身なのでは?)
予知夢の仕組みは分からないが、意識を失うような出来事がオペラの身の上に起こって、そのせいで予知夢が止まったのではないかとクローリカは考える。
「オペラ。神と会った後に、オペラ自身が対象になる夢を見た事は?」
「うん? 嵐逆巻く魔海竜の予知夢がそうかの? わらわ個人が、ということなら見ておらぬかもしれぬのぅ……」
同じようにオペラから話を聞いていたレピド・クロサイトの問いかけに、小首を傾げつつ答えるオペラ。その問いかけを耳に挟み、レピドも同じ予想をしていることを察したクローリカは「レピドさんもそう考えましたか」と小さく囁く。
「クローリカもか。どうやら、オペラと一緒に行動した方が良さそうだ」
「そうですね。正夢にならないように同行しましょう」
頷き合うと二人はオペラ達と一緒に、海祭りへ向かう事にする。
「いらっしゃいませー! ぬいぐるみはいかがですか~?」
会場に入ってすぐのところでは、レラ・F・ギュンターが夜なべして作ったぬいぐるみを並べた屋台を出していた。通りかかった人々に向かって、にっこり笑顔で呼び込みをする。
「ぬいぐるみ? ……変なかおー!!」
「えっ、何を言うんです、愛嬌があって可愛いでしょう?」
ほらほら、とぬいぐるみを抱き上げるレラだったが、その顔を向けられた子供はケラケラ笑って走り去っていく。
「んもう、こんなに可愛いのに――あ、オペラさん」
不満そうに口を尖らせたレラだったが、オペラ達に気付くと「見て行ってくださいねー!」と手招く。ちょっと不格好だけれど独特の愛嬌があるぬいぐるみの姿に、「へえ、力作じゃん」とステラは笑う。
「そうなんですよー。どの子もみんな、ちゃんと名前も付いてるんですよ? この白いおさるはゆきみさんで、こちらのレインボーカラーのワニさんはななこさんです」
ぬいぐるみ達を紹介しながら、レラはオペラさんにニワトリのコッコさん、ステラさんにイルカのほしみさんをお勧めする。
「なるほど、わらわはニワトリか」
「イルカか~。海のヤツとは仲良くなれそうだぜ」
「では私は、ゆきみさんを頂きましょうか」
折角ですからお土産に、とクローリカがゆきみさんを取ると、一人手ぶらで残ったレピドがななこさんに手を伸ばした。
「お似合いですよ!」
「……そうか……?」
レピドがななこさんを抱える姿は、なかなか印象的であった。
「そういえば……」
予知夢の件を口にするオペラ。ふむふむ、と話を聞いていたレラは「うーん、ギュンタにはよく分かりませんが」と前置きしつつも、
「中途半端に終わったということは、その瞬間に気絶でもしたのではないですかね。コッコさんで頭守って下さいね」
クローリカやレピドと同じような予測に辿り着きながら、そうにっこり笑いかける。なるほど、と唸ったオペラは至極真面目な顔をしながらコッコさんを構えて、心の準備を試みるのだった。
「はい、どうぞ。お腹いっぱい食べてくださいね」
埠頭に近い一角では、シルク・メイプルリーフが並んでいるお客さんにアラ汁を盛り付けた器を手渡していた。孤児院仕込みの秘伝のアラ汁は、びっくりする位に安い。これも、漁師の皆さんに押し付……寄付して貰った魚がたくさんあるお陰だ。
看板には『お困り事、相談事お聞きいたします』とも書かれており、シルクは迷える子山羊の声に丁寧に耳を傾けている。彼らとの話を通じて情報収集をするのも、平和のための地道な活動である。
(今のところ、何かあったという話は無いですね)
何か異変があったという話があれば、被害を防ぐことに繋げられるかもしれない。シルクは些細な内容も聞き漏らさないように、アンテナを伸ばして情報収集に励んでいた。
「あ、オペラさんいつもお世話になってます」
「シルクの屋台はアラ汁か。盛況じゃのう」
歩いてきたオペラ達に気付いたシルクは、「少し食べていきませんか」と呼びかける。ぜひ、と並んだ四人はクローリカを先頭にアラ汁を受け取ると、順番に口をつけた。
「……美味い」
「いろんな魚が入ってるだろ、これ。別々の旨味が混ざり合って……んまーい!」
シンプルに感想をこぼすレピドと、味を評論するかのように語りつつ笑みを覗かせるステラ。アラも食べ応えがあるのう、とオペラはアラの部分に齧りつく。
「皆さんのお口に合って良かったです」
嬉しそうに微笑むシルク。アラ汁を綺麗に平らげた四人は、来た道を引き返すようにしながら更に屋台を覗いていく。香ばしい焼き魚の匂い、焼き立ての貝の上でとろけるバターの香り……あちこちから誘惑が絶えない。
「いいな。美味くて珍しいものが沢山だ」
肉好きなレピドも、今日は魚介類の魅力の虜だ。折角だしシェアして色々食べよう、とクローリカは買い込んだ料理に少し口をつけてからオペラに回す。これは、食べる物に異常が無いかの確認も兼ねていた。
「ん? あそこにおるのは……」
カクテルカウンター風の屋台にいるのはナハシュだった。夏らしくアレンジされたフルーツ酒を掲げるナハシュの姿に、そういえば食べてばかりだったのうと頷いて、オペラ達もカクテルやジュースを頼む。
「乾杯しよーぜ、乾杯」
「うむ」
夏の日差しを浴びつつ乾杯をして、トロピカルなドリンクを飲み干せば気分も陽気になって。次はどこの屋台に寄ってみようかと、歩き出した時だった。
(ん……?)
まっすぐに、こちらへ向かって歩いて来る男がいることにレピドは気付く。人で混雑する祭りの会場だし、考え過ぎかもしれない。だが――。
引っかかる、と警戒を強めたその時、男が短剣を抜くのが見えた。
「オペラ!」
瞬間的に加速した男の様子に、レピドが咄嗟に庇いに入る。それを乗り越えて刃がオペラを狙おうとするが間一髪、盾にするかのように突き出されたワニのななこさんに刺さり、切り裂かれたななこさんの中身が飛び散った。
(今のは死齎刃……授恵者ですか!)
クローリカは迷わず細剣を抜くと、それを男に突き立てた。授恵者なら、この程度で死にはしない。実際それほどの傷では無いようで、男は咄嗟に周囲の者へと腕を伸ばそうとする。人質にでも取るつもりなのだろう。だが、
「どっち見てんだ? あァ?」
素早く回り込んだステラが割り込んで邪魔をする。そこへ、ホライゾナルジャンプを使ってトーラが上から駆け付けた。辺りを一瞥したトーラは一瞬で状況を把握すると、赤光のエーテルをまとわせたセルリアンエッジで犯人の男に思いっきり斬りつける。
「く……」
トーラのエーテルにまとわりつかれた犯人は、逃げようとしたのか後退る。だが、瞬間的に加速し駆け抜けてきたティトが、その背後を塞いだ。そのまま一行はジリジリと犯人への包囲網を狭めていくと、一気に組み伏せて制圧する。
「何の騒ぎだ?」
「ねえ、どうしたの?」
辺りは騒然となり、人々がザワつく。そこへ、パンと大きく手を叩いて注目を集めたのはナハシュだった。
「なんでもない、もう解決した。大丈夫だ」
「みなさーん! タイムサービスですよー!」
ナハシュが陽気に笑って人々へ呼びかけたところへ、高らかに響いたのはシルクの声。ただでさえ格安のアラ汁が、今だけ一杯の値段で二杯になるとアピールすれば、人々はシルクの屋台の方へと流れていく。
「人目にあまりつかない場所へ移動しましょう。屋台の裏手で十分でしょう」
セロンガードがそう呼びかけ、拘束した犯人を連れて移動する。男はすっかり大人しくなっているが、それはおそらく、これだけの授恵者に取り囲まれてはどうしようもない、と諦めたからに違いない。それでも念の為、オペラは男との距離を取った。
「何故オペラを狙ったんだ?」
レピドが目的を聞こうと問い質すが、男は口を噤んで静かにするだけで何も答えようとしない。その様子に、デジャブを感じたステラが口を開く。
「事件を起こして、動機は何も語らず……って、アベルん所の奴らみたいだな」
アベル。神の御子と呼ばれ、神の庭と呼ばれる団体を束ねている少年だ。リブラネスタで起きた、いくつかの事件やその犯人と関りがあるのでは、と予想されている。
――男は、アベルの名を耳にすると、少しだけ反応を見せた。
「アベルさま……ああ、残念です。あの方が仰ぐ神の理念が、この街に不幸をもたらしてくれると思っていたのに」
「この街……リブラネスタに? どういう事だ」
不穏なフレーズを耳にし、眉を顰めながらレピドが更に問いかけると、男は少しだけ楽しそうに笑った。
「不幸を齎す神など、この世に一柱しかおりますまい。――ああ、残念です。あなたさえいなければ、リブラネスタは泥のように崩れて滅びたでしょうに」
あなた、とオペラの方を向いて男は言う。それはオペラが見た、嵐逆巻く魔海竜の予知夢のことを指しているのだろうか。まるで破滅を求めているかのように言い放って、それきりまた男は黙り込んだ。
「とにかく、彼をこのままにはしておけません。オペラ殺害未遂犯として突き出しましょう」
私達が連れて行きますね、と引き受けるセロンガードにティトも頷き。二人が男を連れて行くと、トーラは「ともかく、これで予知夢の件は解決ですね」一息ついた。
「後の時間は、憂いなくお祭りを楽しんでいきましょう」
「そうですね」
クローリカも張りつめていた空気を緩めて頷く。あの屋台が良かった、という話をトーラにすれば「わたしも行ってみます!」と笑みが返る。
「オペラは? 気を取り直して、もうちょっと楽しんでいこうぜ? な?」
こんな事があったばかりだ、気が滅入らないよう遊んでいこうと誘うステラに、そうじゃなぁとオペラも頷く。
「じゃが、その前にレラの屋台へ一度行きたいのじゃ」
と言うオペラの手には、飛び散ったワニのななこさんだった物が集められている。
「わらわの命の恩人じゃからのう」
ななこさんを通じて、皆に改めて礼を伝えつつ、「無事に直ると良いのじゃが」と呟くオペラだった。
マスターコメント
この度はリプレイの公開が予定よりも大幅に遅れてしまい、大変申し訳ありません。
ご参加、ありがとうございました。
イベントシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜25人
2023年08月26日 13時43分28秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
No.1
ときに オペラさんの身を案じてる方誰かいらっしゃいますか?
(挙手) あの夢はオペラ自身が危ないという事なんじゃないかと思って、彼女達に着いていこうと思っていた。
No.3
あ、いらっしゃった 良かった良かった いえ誰も居なかったらどうしようかと思いまして