【屍涯】斯くある未来のため
炙りとろ左門
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シナリオID:3109
オープニング
セウェルスは閉じていた目を開け、クレトスを出迎えた。クレトスは肩を落としたまま頷き、セウェルスの前に跪くと集めた魂をすべて受け渡す。
「ダモスの魂も回収できたんだね」
「……ぼくがもっと早く、駆けつけていられたら」
片割れの危機に気を取られて深傷を負ったクレトスは、冒険者たちにとどめを刺す余裕などなかった。急いでダモスの下に引き返すも、そこには物言わぬ骸が横たわっていただけだった。
ダモスを下した冒険者たちの姿はすでになく、クレトスはダモスの魂を回収して帰還したのだ。
「もっとたくさんの魂が必要なのに……」
唇を噛むクレトスもまた、満身創痍だ。セウェルスはその傷を癒してやりながら、優しく声をかける。
「冒険者たちは手強いからね。邪魔をされる前に、俺のほうも準備を進めないと」
「ごめん。術式の補完作業が途中だったよね」
「ああ、それはもう大丈夫。お前たちのおかげで、あとは歩きながら考えても間に合うさ」
クレトスは顔を上げた。その瞳には狂気にも似た喜色が浮かぶ。
「じゃあ……!」
「場所ももう、目星をつけてあるから」
セウェルスは立ち上がる。旅支度をすでにまとめていたのか、砂よけの外套に手を通し、クレトスを振り返った。
「あとは任せたよ」
● 足りない欠片
「むり……」
部屋から出てきたロドスの目の下には、ひどい隈ができていた。それを見たリジーは驚き目を瞬く。
「だ、大丈夫?」
「大丈夫じゃ、ない……」
ロドスの視線は恨めしそうだ。リジーは曖昧に笑いつつ、探しておいて欲しいと頼まれていた本をロドスに差し出した。ロドスはそれを受け取ると、ぱらぱらと頁を繰りつつ部屋の中に戻っていく。
「君に、ラトニアの知識がかけらでも残ってたらな」
「それは……ごめんなさい」
正確には、ラトニアが蓄えた魔術的知識はリジーの頭の中にも残っている。が、それをロドスの要求に応じて適切に取り出せるだけの技術が、リジーには備わっていないのだ。ロドスは首を横に振りながら、ふたたび床に座り込んだ。
板張りの床には、難解な魔術式や計算式が書き殴られた神がそこかしこに散乱している。リジーはそれらの間を爪先立ちで縫って歩きながら、机のそばにある備え付けの椅子を目指した。
「よっ……ほっ……その、お仕事は進んでる?」
「あ……圧倒的に、時間が足りない。他人の魔術式の解析ほど、時間がかかるものはないんだ……」
ロドスは弱音を吐きながらも手を止めない。それが取引だからだ。
「セウェルス……だったかしら。その人のやろうとしていることがいまいち理解できていないのだけど……」
リジーは椅子に腰掛け、ロドスに休憩を促すべく話しかける。ロドスもそれを察したのか、ようやく手を止めて顔を上げた。
「えっと……そ、そうだね。死ぬと、魂はどこにいくと思う?」
「うーん、……おそら?」
リジーはまだ明るい空を見上げた。流れる雲の合間からのぞく青は、今日も美しい。
「死後の世界について言及している文化、宗教、慣習は……数えきれないほどに多いし、呼び名もそれぞれに違う……僕たちは、マトリクス界と呼んでいるんだ。それに対して、僕たちがいる物質世界を……マテリアル界と呼ぶ。生死に伴う魂の循環は、基本的にこのふたつの世界を介していると、僕たちは考えている」
「うんうん……」
リジーは必死に頭を回しながら頷く。ロドスは新しい紙に作図しながら、ふたつの世界を矢印で結んだ。
「セウェルスは、死んだ師父の魂を取り戻すために、マトリクス界を覗く……あるいは行き来する方法を探してきた。実際に可能かどうか、実験の成否はともかくね……とある宗教の言葉を借りるなら、『天の扉を叩く』ことで得られるものがあると信じてきた」
死後の世界、魂の揺籠が存在するとして、その本質とは何か。セウェルスがこの先起こす行動は、まずそれを確かめるためのものだとロドスは語る。
「そ、それで……僕が今解析しているのは、師父の研究をもとにセウェルスが組み上げた『扉の叩き方』なんだけど……セウェルスから死霊術を習ったロヴェルなら、解析できる、かも。彼にかけられている魔術も、僕ならきっと解ける」
ロドスは長考に入った。ロヴェルの足取りはいまだ掴めていない。中央も行方を探しているようだが、それはあくまで死体なりなんなりを見つけて確実に死んだという確証が得たいからだ。敵にいいように操られるような駒を放置しておくわけにはいかない。
「彼に同行しているのなら……西かな」
セウェルスがシラー砂漠で探し物をすると言っていたことは、すでに共有されている。ロドスがこのベレス領近郊から動けないことを鑑みれば、冒険者たちの力を借りることになるだろう。
「アレクシスを通して……お、お願いしてもらえない?」
砂を含んだ乾いた風が吹き抜ける。クレトスはまだ塞がり切っていない傷をエーテルで補強しつつ、足を動かした。
「……兄さんの邪魔は、させるものか」
ここでひとりでも多く、死なない程度に転がしておけば時間は稼げる。冒険者たちはそちらを構わずにはいられないだろう。
儀式のために少しでも多くの魂を持ち帰ることができればとも思うが、もしかすると帰れないということも考えられる。
「だからその時は、お前が兄さんのもとまでぼくを連れていけよ」
クレトスはロヴェルを睨みつける。ロヴェルは震える子供を外套の中に匿い、クレトスの呼びかけにはなんの反応も示さなかった。庇われている子供だけが怯えた様子で、ロヴェルの脚にしがみついている。
「くそっ……」
クレトスは舌打ちをひとつ残すと、踵を返して歩き出した。
● 双子星の残火
リーンエス王国西部に、マルティエという小さな街がある。ここから更に西へ行けば、亜人たちとの戦いの最前線だ。
しばらく占術に集中していた【塔主】月の砂は、小さく息を吐いて顔を上げた。前のめりになりすぎては重要な箇所を見落とす恐れがあるからだ。長い研究生活で身につけた癖である。
「……どうやら我々は砂礫の大地に縁があるらしい」
モニーは暮れなずむ西の空を見つめる。その下には広大な砂の海が広がっていた。
「セウェルス=マルキアス――月夜の亡霊も西を目指しているというのなら、杞憂で終わることを願っても無駄、ということでしょう」
冷たい石床に跪いていたモニーは立ち上がり、長机に戻る。そこにはシラー砂漠についての資料が並べられていた。
「主上……塔を捨ててまで、我らがあれに関わり続ける必要はあるのですか?」
ひっそりと部屋の隅に佇む女従者が呟く。モニーは今にも崩れ落ちそうな古い書物の表紙を、慎重に開いた。
「あの亡霊が天底の星を掴むことは叶わないでしょう。しかし、それに引き寄せられた因果の力は侮れません。一際輝く星を中心にもつれる、数多の運命の糸は……やがてこの世界に厄災を招きます。ここで鋏を入れねばなりません」
褪せたインクの匂いが広がる――モニーはベールの下で目を細めた。
「斯くある未来のために」
モニーはそこで一旦言葉を切る。女従者は先に異変に気付いたようだった。
「……酒に飲まれての喧嘩ではないようです。確認し、ご報告差し上げます」
女従者はそういうと足音もなく退室する。モニーは眉を顰め、書物を閉じると机の上に戻すのだった。
解説
マスターより
リプレイ
クレトスの振るった手斧の一撃を、アーテミシアは軽く受け止める。
「魔法使いが護衛もつけずにフラフラしてるとは、な!」
遠心力を乗せた竜骨の戦槌は空振りしたが、もとより命中を期待していたわけではない。
魔術師にそぐわぬ武器を操りはするものの、攻撃は極力避ける立ち回りからして、やはり魔術師は魔術師ということ――となれば、一撃を与えることでの貢献は大きそうだが。
「……ヒトが寄り集まっただけで、ぼくが弱くなったわけじゃないんだけど?」
対するクレトスは冷ややかに告げ、続けて濃密なエーテルを纏わせた槍を大きく振り回す。アーテミシアはシールドガントレットでその刃を掴んだ――瞬間、後ろに飛び退いた。
「いい判断だね」
距離をとりながら、アーテミシアは手のひらを見やった。ドワーフが鍛えたその手甲は、ものを持つ不便さと引き換えに、刃を握り込んで止められる程度には頑丈である。だがその表面がわずかに、燻っている。
「派手な魔術だけが華じゃない。それに、ぼくたちは【屍涯宮】の死霊術師だ」
相手の能力や装備の効果を減衰させるための術も、その強度も、長きにわたり錬磨してきたものだ。抵抗を許されないほどの圧に、しかしアーテミシアは不敵に笑う。
「ああ、そうかよ」
余裕のある表情に、クレトスは怪訝そうに眉を顰めた。そしてすぐにはっとして辺りを見回し、半歩退く。同時に手斧を握っていた腕にエーテルを纏った矢が突き立ち、クレトスは痛みに小さく呻いた。
「いくらてめぇに大層な自信があっても、」
アーテミシアは戦槌を引き摺り石畳を荒らしながら、負傷した腕を庇うクレトスに近づく。
「殺し合いってのには、慣れてねえだろ?」
■
セリオス・オーガストは弓を下ろした。どこから撃ってきたのかと勘付かれる前に、移動しなくてはいけない。
「……思ったよりも動くな」
物陰や喧騒に紛れるのは簡単だった。しかし【見えない死神】による攻撃は、相手の意識の外から不意打ちをしかけられるという絶対的な優位を得る代わり、看破されてしまえばその命中力は大きく減衰する。相手によっては自分の居場所を知らせるだけのものになってしまうだろう。
このままうまく隠れ続ける事ができればいいが、クレトスは想定よりも回避能力に秀でている。鋭射や炸光矢を使うのならば、攻撃に集中するか、仲間の支援魔法を受けることも選択肢に入るだろう。セリオスは今一度気を引き締める。
「私はアーテミシアのところに行くよ」
「ああ」
支援魔法の術者であるシルヴィア・A・カペルにそう答え、セリオスはその場から素早く移動する。シルヴィアもまたアーテミシアに加勢するために路地を駆けた。
「リベンジさせて貰おうか」
前回、クレトスを逃してしまったこともある。何よりこれ以上、関係のない人々を巻き込むことは許せなかった。シルヴィアは不遜に呟き、アーテミシアが射程内に入るとすぐさま【サイドヒール】で傷を癒やす。
「セウェルスは一緒じゃないのかい?」
クレトスが口を開く前に、シルヴィアは問いかけた。セウェルスの名前に反応してか、クレトスは忌々しそうにシルヴィアを見遣る。
「兄さんは、お前たちに構ってる暇なんてないんだよ」
「……本当に先生を取り戻せると思っているんだね」
シルヴィアが哀れみを込めた声音でそう嘆くと、クレトスの瞳の奥が燃え上がる。その様子に、アーテミシアは興が削がれたと言わんばかりに目を眇めた。
「つまんねーツラしてやがる――悪ィが感傷に付き合う気はねえ。そんなもンでオレは殺せねーんだからな」
■
フリューリングスルフト=ティエラは住民の避難と被害の把握も兼ね、マルティエの街を駆け回っていた。その道すがら、見覚えのある姿を見つけて目の前に降り立つ。
「おや、あなたは……」
のんびりとした声を遮って、従者と思しき女が少年を庇うように前に出た。
「手を借りたいんさぁ」
フリューはすかさず、単刀直入にそう申し入れる。【月の砂】がベールの下で苦笑いした気配があった。
「奇遇ですね。我々も、です」
モニーの纏う白衣は血と煤で汚れていた。怪我でもしたのかと思えば、怪我をした住民たちの治療にあたっていたらしい。
「【屍涯宮】のクレトスが街の人たちを襲ってて、」
「なるほど。妙に騒がしいと思ったら。まだ息がある一般人を捨て置かないだろうと……賢しいことです」
モニーは少し考える素振りを見せてから、フリューに微笑みかけた。
「彼らのことは、塔と無関係とも言えませんしね。彼らの不始末は我らで負いましょう。新しい治癒術もいろいろと試したいですし」
「えっと……」
「どうぞ、ここは任せて」
「あ、ありがとさぁ」
大丈夫なのだろうか? フリューは一瞬心配になったが、できればすぐにでも仲間たちを加勢したい。フリューは頷き、踵を返した。
「あなたは、」
そのフリューを呼び止めるように、モニーがひとりごちる。
「ここで斃れるさだめではありません。が、気をつけるように」
■
「こっちだ」
スー・ルーは僅かに漂う目標の香りを嗅ぎつけた。身に纏う香りは変わってはいないようだ。無闇な探索をせずに済みそうだと、ナタリア・フィッツジェラルドも安堵する。
「……まったく、無碍に出来ない頼みが多すぎるな」
依頼主はアレクシスだが、元を辿ればリジーから、そしてそれもロドスからの頼み事らしい。あの小柄な死霊術師もまた、取引の対価はきっちり支払うたちのようだ。
「急ごう。十分な備えをしてきたつもりだが、治癒魔法の回数は有限だ」
ナタリアの言葉に頷いて、スールは先導を続ける。
やがてすでに息絶えた住民たちが倒れている先に、その姿を見つけた。
「ロヴェル!」
ナタリアが声をかけるも、黒い外套を纏った人物は動かない。ナタリアは不審に思いつつも、その該当の下に隠れて震える子供を見つけると足早に近づいた。
「怪我をしているのか? こっちへ」
ナタリアが少し離れたところに膝をつき、腕を軽く広げて語りかけると、子供は怯えた目でロヴェルを見上げた。ナタリアの位置からその表情を窺い知ることはできないが、少なくとも子供はロヴェルのそばを離れようとしない。
「安心していい。私たちは彼の仲間だ」
仲間という言葉に、ロヴェルがわずかに反応を示した――ように見えた。
ナタリアがロヴェルの影から出てきた子供を抱き留める。緊張の糸が切れたのか、子供の大きな瞳から涙が溢れ出した。
「おい」
様子を見守っていたスールが歩み出て呼びかけると、ロヴェルは緩慢な動きで顔を上げる。
「……ハーヴェン。あんたを連れてくるように言われてる」
実力行使も辞さないと、スールは杖の先をロヴェルに向けた。
「あんたは嫌がんだろうから、ぶん殴る方向でいくが」
ぎこちなく、ロヴェルの手が腰に提げた細剣に伸びる。次の瞬間、二人の間でエーテルの炎が大きく爆ぜた。
● 彼らが望んだもの
不可視のエーテルの刃に切り裂かれながらも、アーテミシアはひるまない。
「ずいぶんと粘りやがる……!!」
「それはぼくも、同感だな!」
手甲が手斧を弾き、エーテルの火花と共にかちあった金属が重く歪んだ音を立てる。合間にシルヴィアの治癒魔法が唱えられ、アーテミシアの負った傷が癒やされた。
「……化けもンじみてンな」
顎を伝う血と土混じりの汗を拭い、アーテミシアは笑った。抵抗に苦労する減衰魔法をかけられた直後に、周辺を巻き込んでの爆撃じみた魔法が展開する。彼女でなければ耐えるのは難しかっただろう。
魔術師と呼ばれる流派は、一般的に戦線の後方から圧倒的火力をふるうものとされる。打たれ弱く、狙われてはひとたまりもないため後方にいることがあるが、時折、近接戦闘をこなす魔術師が見受けられる。それにしたって専門職には敵わないものだ。
シーフほどの回避力ではないし、ウォーリアほどの打たれ強さもない。しかし手負いの状態でセリオスの矢を受け、アーテミシアに傷口を抉られ続けながらも、クレトスはなお立っている。死霊術師の使う治癒魔法というものを目の当たりにして、シルヴィアもまたその端正な顔をわずかに歪ませた。
「君たちは……どうしてそこまでして」
望みのために、ずいぶん昔にヒトであることを捨てたのだと聞いている。それに大層な理由があると思えば、願い自体はヒトらしい、ずいぶんとささやかなものだった。
「師父を取り戻せたとして、それは君たちが知っている先生なのだろうか」
「どうでもいいよ」
傷口の奥で青く脈動するのは、エーテルの光なのだろうか――クレトスはもはやヒトとは言えない形のまま、シルヴィアを見つめ返した。
「ぼくには、そんなことどうでもいい。誰が死のうが、生まれようが……でも兄さんがそれを望んだから」
シルヴィアは瞑目した。そして再び顔をあげ、クレトスを、そこから状況を見ているであろうセウェルスに語りかける。
「本当に……君は悪い人だ。仕置きが必要だね」
宿願のためには、同胞ですら焚べ入れることも厭わないのだ。シルヴィアは刀を抜く。それが合図となった。
「休憩は、終わりだなっ!」
アーテミシアが戦鎚を振り上げた。まともに食らえば体の真ん中からへし折れるに違いない。
クレトスが回避行動を取ろうと体勢を変えた瞬間を狙い、アーテミシアは槌を地面に振り下ろし、垂直方向への遠心力を利用して軽く飛び上がった。
「逃がすかよ!」
そのまま中空から【チャージング】で一気にクレトスとの距離を詰め、クレトスの腹を殴りつける。
「ぐっ……!」
クレトスは呻きつつも、アーテミシアの腕をつかんだ。アーテミシアもこれ幸いと、逆にクレトスに組み付く。
「時間かけ過ぎなンだよ。大人しくオレにやられてれば、楽に死ねたかもしれないぜ?」
アーテミシアはクレトスの体を、ぐるりとある方角に向けた。クレトスは沈みかけの夕陽の眩しさに目を細め、そして夕陽を背に現れた影に低く呻く。
「フリューリングスルフト=ティエラ!」
緋色に輝くその名前。フリューは駆けながら短剣を引き抜いた。
「お、っと」
フリューを前にクレトスが前のめりに逃れようとしたため、アーテミシアはクレトスを押さえつける腕に力を込め直した。が、うまくいかない。おそらく減衰魔法の影響だろう。
「この、大人しく――しろ、ん?」
苦戦するアーテミシアだったが、そのとき、減衰魔法特有の気だるさがふっと軽くなった。
「間に合ったか……シルヴィア!」
息を切らして駆け付けたのは、ナタリアだった。【解呪】の魔法をアーテミシアに飛ばしたのだ。シルヴィアは頷き、アーテミシアに【輝刃】の魔法をかけ直す。力が増強されたのを感じたアーテミシアは、暴れるクレトスをしっかりと押さえつけた。
フリューは身動きの取れないクレトスの心臓部を狙い、三度抉る。確かな手応えがあったが、クレトスの目から光は消えていなかった。
「待ってて」
フリューはその瞳の奥に囁きかけ、クレトスの体を蹴って離れる。クレトスがフリューに向かって無理に腕を伸ばそうとしたその時、極限まで高められたエーテルがまっすぐにクレトスの頭を穿ち、光が夕闇を白く染めた。
■
「……ところで、彼は?」
クレトスにとどめを刺したのは、セリオスの【ハイパーバスターアロー】だった。セリオスは戦いが終わったことを察すると物陰から合流したが、一緒に依頼を受けた顔がひとつ足りないことに小首を傾げる。
「彼なら、ロヴェルを……説得しようと……」
ナタリアはやや言いにくそうに言葉を濁した。セリオスはそういえばと思い出す。少し離れた場所でも戦闘が行われている気配があった。
「保護した子供を送り届けたらそちらへ戻るつもりだったんだが、まあ、必要がなかったのでこちらに合流したんだ」
ナタリアはそういうと、瓦礫の上に腰掛ける。粗末な麻布をかけられたヒトだったものに視線を落とし、ふたたびセリオスを振り返る。
「すまないが、迎えに行ってもらえないだろうか。私は避難所のほうに顔を出さねば」
「わかった」
セリオスは小さく頷くと、瓦礫の中から見つけた灯りに火を灯した。
● いつかの言葉
スールは若干焦げついた石畳の上に大の字になって寝転んでいた。陽はとっくに沈んでいるはずだが、真っ暗闇というほどでもないのは、月明かりのせいか、それとも誰かが火を灯しているのだろうか。
風に乗って聞こえる人々の、不安に沈んだざわめきの中にじわりじわりと安堵が広がっていく。どうやら仲間はうまくやったらしい。
「……私と君たちは、仲間なのでは?」
ふと、近く恨みがましそうな声が聞こえた。瓦礫に背を預けて息を吐いたロヴェルは、戦闘で乱れた前髪をかきあげる。声音は懐かしく、やや粗野なその所作は貴族ということを差し引いてもどこか新鮮に感じられる。
「そう言ったのはフィッツジェラルドだろ」
スールがあっさりと答えると、ロヴェルは「そうだな」と諦めたように呟いた。
お互いに満身創痍だ。ロヴェルの魔術触媒でもあった細剣も、すでに瓦礫の下である。
少しの沈黙を挟んだ後、口を開いたのはロヴェルだった。
「いつか、手伝いが必要ならば声をかけろと……それはまだ、有効だろうか」
スールは目を瞬いた。確か、個人的に手を貸してもらいたいのは山々だがとかなんとか言われて、流れてしまっていた会話だったか。
スールが答えようとした時、路地に降りる階段の上から声がかかった。そちらへ視線を向けると、小さな明かりが揺らめいているのが見えた。
「迎えにきた」
明かりを携えて現れたのはセリオスだった。二人とも暗視技能は持っているが、驚かせないように気遣ってくれたのだろう。
「それと、同行者から対象に伝言を預かっている」
セリオスは階段を降りると、明かりをロヴェルに差し出した。両手が空いている必要がある職種なのだと思い至れば、ロヴェルは渋らずそれを受け取った。
「『奥方を泣かせる旦那様にも、そろそろお仕置きが必要だと考えている』……だそうだ」
「………………そうだな」
明かりを受け取った姿勢のまましばらく沈黙していたロヴェルは、軋む体をおして立ち上がるのだった。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準6 / 4〜6人
2023年08月13日 01時58分36秒 公開
相談掲示板
ヒーラーのシルヴィアだ。今回はよろしくね。 >班分けについて 中央広場でクレトス対応をする班、商店街の裏通りへ行ってロヴェルを確保する班に分かれる必要がありそうだね。モニー&女従者の協力を取り付ける人も一人は欲しいかな。 人数としてはそれぞれ3:2:1位かなと思う。 クレトスは強敵だから、他班もロヴェル確保後・モニー交渉後は加勢に行った方が良さそうだ。 >時間帯 陽が落ち始めているようだから暗視か光源は必要だね。 今のところ、暗視を持って行こうと思っているよ。 >個人行動希望について クレトス対応班かロヴェル確保班か、どちらかに行きたいと思っている。 人数の少ない方に行こうと思っているから皆の希望を聞いてから考えるつもりだ。 (モニー&女従者には私は一度も会ったことが無いから、別の人にお願いできたら有難い)
シーフのフリューさぁ、よろしく! >班分け 3つに班分けと人数の比率もそれ良いなって思ったさぁ! 加勢に行くのも了解。 >個人行動 んー、ロヴェルさんかクレトス対応に行きたいな、思うけど。 悩み中さぁ。
No.3
よぉ俺だ 今のところロヴェルの方に行くつもりだ クレトスは火力の出る奴に任せた方がいいと思うしな。 人数が偏るってんなら移動してもいい、お前らに任せるぜ。 あいつの匂いが変わってねぇと良いんだが、まあ何とかなるだろ。
ウォリアーのアーテミシアだ。 オレは接触以外だな。対応でも確保でもどっちでもいいぞ
意外とこだわりは無さそうかな? ヒーラーはいた方が良いだろうし、前回のリベンジというのも良いかもしれない。クレトス対応に向かうよ。人数次第で変更可能だ。 ・クレトス対応 シルヴィア(ヒーラー) ・ロヴェル確保 スー・ルー(キャスター) ・モニー&女従者との交渉
(決まっている人だけ班分け一覧に載せたから、追加や修正はよろしく頼むよ)
ンじゃ、オレはクレトスにすっか。接近して殴り倒す。それだけだ。シンプルにいこうぜ
遅くなって済まない。ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 現段階では対モニーの交渉役が居ないから私が立候補してもいいものだけれど。 彼らとの接触には、過去の屍宮関連の依頼について言及しなければならないイメージが……前回のを含めて2回しか参加してないのがな。 なのでそれを考えたら対ロヴェルで動くつもりだ。 ・クレトス対応 シルヴィア(ヒーラー) ・アーテミシア(ウォーリア) ・ロヴェル確保 スー・ルー(キャスター) ナタリア(ヒーラー) ・モニー&女従者との交渉
・・・ん、挨拶遅くなった。シューターのセリオスだ、よろしく頼む 交渉系は正直難しいのでクレトス対応を希望しておく。 暗視は持っていくので光源は大丈夫だ。 ・クレトス対応 シルヴィア(ヒーラー) ・アーテミシア(ウォーリア) ・セリオス(シューター) ・ロヴェル確保 スー・ルー(キャスター) ナタリア(ヒーラー) ・モニー&女従者との交渉
それならうちは交渉にいこかな。 協力内容なんやけど、ヒーラーのモニーは戦いに慣れとらんらしいさぁ。 なら、クレトスが戦場としてる噴水広場に負傷者が身を隠してるみたいだから、彼らの避難をお願いする形はどうやろ? 彼らが戦闘に巻き込まれないと分かれば、うちらも集中出来るかなって思ったんやけど。 下手に動かすのは危険かな? ・クレトス対応 シルヴィア(ヒーラー) ・アーテミシア(ウォーリア) ・セリオス(シューター) ・ロヴェル確保 スー・ルー(キャスター) ナタリア(ヒーラー) ・モニー&女従者との交渉 フリュー
>フリュー もし良かったら私がモニー&女従者との交渉に行こうか? 前回色々とあったし、フリューとしてもクレトスについて気になっているかなと思って。私は彼等と会った事は無いけれど、プレに「仲間にモニー達の特徴を共有して貰う」と書いておくよ。 モニー達を見つけて重体者へのヒールと避難誘導を頼んだら私もクレトス対応に加勢する、という感じでどうかな?(もうプレを書き終わっていたり、モニーとの交渉でやりたいことが出来ていた時はどうか気にせずに)
シルヴィアさん、お気遣いありがとうさぁ!けど大丈夫さぁ、クレトスもロヴェルさんも気になるけど、同じくらいシルヴィアさんのクレトス・リベンジ戦!応援してるんさぁ!(頑張れー!と応援ポーズ それに、うち足速い方やから交渉が成功して、協力取りつけられたらピューン!って加勢に行けると思う。行きたい。行ける、はず( ただ、交渉は胸張って得意!とは言えんので、交渉内容は皆に相談させて欲しいさぁ。 ひとまず、モニー達を見つけられたら、噴水広場付近で隠れてる負傷者の手当と避難誘導で良ぇかな?(シルヴィアさんはその内容で大丈夫そうだ、と発言から推測)
確かにフリューの方が捜索能力が高いし足も早いね。お言葉に甘えてモニー達との交渉役はお願いするよ。 私のリベンジについても気にかけてくれてありがとう。全力を尽くすね。君の加勢も待っている。 >モニーと女従者への交渉 フリューが言ってくれた内容に賛成だよ。 モニーはヒーラー、女従者はシーフだから、住民の手当や危険な場所を避けての避難誘導は得意そうだ。一般人は戦場にいない方が戦いやすい。流れ弾の心配もあるし、クレトスは死霊術師だから、周りに一般人がいるとエネルギー補給のために狙いがそちらに行くかもしれないなって(一般人を殺害して魂を奪うかもしれない)。 動けない重体者にはヒール、軽度の人には一旦我慢してもらって、一先ずモニー達の誘導にしたがって戦場から離脱してもらう形で良さそうだ。
おう!シルヴィアさんも、もちろん皆も頑張ってさぁ!うちも早く加勢に行けるようがんばるさぁ♪ >モニーと女従者への交渉 そうやね、シルヴィアさんの言うように周りにいる一般人から魂やらエネルギーをクレトスが吸収しちゃう可能性あるもんね。 (周りを見て)いちおう、反対意見はなさそうかな? それじゃぁその内容でいくさぁ。 あとは、モニー達を探す理由とかその辺りの落とし込みやけど。 前回と違って街を火の海にしてないクレトスの行動、ロヴェルさんがいるという情報からこれらを陽動に他で異変がないか、街を捜索するっていう理由で走り回って来るさぁ。 【灼砂】の時、何度かモニーが依頼主で(導入部分で)会った事がある(はず)。 そんな感じでやってみるさぁ♪