【泥乱】避難民を守れ!
七海真砂
コメント 9
シナリオID:3099
オープニング
「これほどの雲霞鳥、見たことがありませんわ……」
リザードマンの元女戦士、シャレム・ダライ=カホールは青ざめた顔でそれを見ていた。しかし、すぐに首を振って動き出す。
大酋長アシムベート・グリオウは決死の覚悟で死地へ向かい、多くの戦士が防衛戦に身を投じている。
だが、当然ながらリザードマンにも戦えない者はいる。幼い子供や体の悪い老人なども少なくない。そうした、戦う術を持たない者達が戦いに巻き込まれないよう、一刻も早く、人々を避難させる必要があった。
「大丈夫、落ち着いて。私に掴まってくださいまし」
シャレムは、一人では動けない老人に手を貸し、支えながら歩く。湿地帯といえど、道を選べば馬車は十分に走れる。避難用の馬車まで誘導すると、更にまた動けない者へ手を貸すために走る。
その時――。
『キュイイイイ!』
甲高い鳴き声が耳に届き、ハッと顔を上げる。猛スピードで飛来する数羽の雲霞鳥は、高速個体と呼ばれる特異個体だろう。飛来する速度の速い高速個体だけ、先んじて到来したに違いない。
「いけませんわ……こうなったら……!」
戦士として一線を退いた身ではあるが、こんな事もあろうかとウォーハンマーは持って来てある。雲霞鳥を退け、人々を無事に避難させなければと、シャレムは武器を構えていた。
解説
マスターより
リプレイ
「これは……」
「シャレムさん、伏せて!」
ディレイン・オールドケイジが使った、ハウリングオブブルーフレアの効果だ。呼びかけに頷いて身を伏せるシャレムの方へ、リューイ=ヴァレンゴルトが駆ける。
「ユニス、頼む!」
「ええ。援護は任せて」
リューイの言葉に頷いて、ユニス・ソロアーヌ・アクエリリーアが弓を構えた。
「まずは数を減らすわ」
光を集中させてゆき、力が溜まり切った所で破壊力と速度を増大させた一射を解き放つ。その一撃は雲霞鳥の羽を貫き、バランスを大きく崩す。
「出し惜しみは無しだ!」
武器にエーテル光をまとわせて長大な刃と成したリューイは、同時に不可視のエーテルを張り巡らせる。
羽ばたきながらそれに囚われた雲霞鳥達が思うように動けなくなった所へ、
「いっきまっすよーっ!!」
レラ・F・ギュンターがエーテル光を全身に纏い、盾を構えて突撃する。インパクトの際に強烈な衝撃を喰らい、吹き飛ばされた雲霞鳥が地へ落ちていく。
「シャレムさん、お怪我は?」
「大丈夫ですわ、トーラさん」
その間にトーラがシャレムに近付き、かすり傷程度なのを確認すると、要救助者について確認を取る。まだ避難が済んでいない者達が数名いるようだが、
「避難は、雲霞鳥をどうにかしてからが良さそうですわね。雲霞鳥が飛び回っている状態では危険ですもの」
「そうですね、まずは高速個体をどうにかしてしまいましょう!」
トーラはシアンブレードとセルリアンエッジを構えると光を伸ばし、長剣の形を取ると跳躍し、二刀流による超高速三段連撃を繰り出す。更にディレインの衝撃刃が飛んだそこへ、リューイの殺界が発動する。
次々と切り刻まれた雲霞鳥の動きを更にレラの殺界が止め、後ろからユニスの放った精密射撃が雲霞鳥の腹を射抜く。更にリューイの振るった衝撃波が、雲霞鳥に纏めて打撃を与えていった。
その間に、ストレガ・L・リベルガストラは一人、雲霞鳥が飛んできた方向へと駆けていた。
(本隊が合流すると、いかに強力な授恵者でも戦うのは困難になるのだ)
で、あれば、本隊が合流するまでの時間を確認しておくのは大切なこと。見晴らしの良い畑の一角から空を見上げ、雲霞鳥との距離を測り、おおよその時間に目星を付ける。
(まだ猶予はありそうなのだ。なら――)
もう少し先まで進んでおこうと、ストレガは前進する。畑の合間に足場を確保し、身構えたストレガの射程に雲霞鳥達の先頭が入って来るとすぐさま、ストレガは稲妻のような光が荒れ狂う空間を発生させた。
稲光は無数の蛇のように雲霞鳥へと絡みつき、その移動を阻害する。後続の雲霞鳥はそれを回避するかのように迂回を試みるが、
「狙い通りなのだ」
そこに生み出された不可視の重力場が、更に雲霞鳥の移動を阻害していく。足の速い高速個体が駆け抜けた後の本隊は、途端に動きが鈍くなる。
(乗り越えてくるようなら、また絡みつかせるのだ)
元から本隊を倒せるとは思っていないし倒すつもりもない。あくまでも、目的は時間稼ぎ。ストレガは十分な間合いを取りながら雲霞鳥への牽制を続ける。
「落ちたか。急いで避難誘導を進めよう」
「ギュンタも行きます!」
一方、高速個体と対峙していた一行は、その最後の一羽を地へ落とすと、すぐさま要救助者の元へ向かった。ディレインが肩を貸して歩く怪我人を支え、レラは背負ったご老人を連れて瞬間的に加速して移動する。
(本隊はユニスが見張ってくれているから安心だ)
リューイは体調が悪いという女性を抱き上げると、その付き添いに専念する。避難用の馬車の傍で、雲霞鳥の接近に目を光らせているユニスがいるからこそ、落ち着いて避難誘導に尽くすことができていた。
「遠慮せず掴まってくださいね。小さくても、授恵者は力持ちなんですよ!」
どーんと任せてください! と胸を張るトーラの様子に「では有難く」と少しだけ笑みを覗かせたリザードマンを支え、荷馬車に乗せる。
「他に、どなたかいらっしゃいませんかー!!」
そうしてトーラは念の為、逃げ遅れている人がいないか確認しながら集落を回る。大丈夫そうだ、と一回りしたトーラが荷馬車の方へ戻ろうとした時だった。
「む、トーラ殿か」
「ストレガさん。じゃあ……」
出くわしたのは、本隊の足止めから戻って来たストレガだった。頷き返すストレガの様子に、雷蛇大禍や重力場の効果が途切れたら、本隊がやって来るであろうことを悟ったトーラは、すぐさま荷馬車へ引き返す。
「そろそろ来そうよ。急いで」
荷馬車の方でも、それを察知したユニスが皆に呼びかけて乗車を急がせている。要救助者が全員乗ったのを確認したディレインが、トーラとストレガを手招くのが見えた。
「二人とも乗って。リューイ君達もね。そうしたら祈雷を設置するから」
「わかったわ」
ギリギリまで馬車には乗らず、リューイと共に雲霞鳥に備えるつもりでいたユニスが頷いて荷台に飛び乗る。御者台には既にシャレムが座り、いつでも出発できるように構えていて。
「お二人とも、ギュンタに掴まってください!」
到着したトーラとストレガをレラが引き上げるのと同時に、ディレインが祈りを捧げ、雷を荒れ狂わせる霧を出現させる。それと共に合図が飛び、馬車が一気に駆け出した。
荷馬車を追うように飛んできた雲霞鳥の先頭が、眩い稲妻の嵐に呑まれていく。だが、
「諦めてくれるつもりは無さそうだな」
「牽制するのだ」
傷付いた雲霞鳥と、その更に向こうから飛来する雲霞鳥たちの姿にリューイが眉を寄せる。荷台から振り返ったストレガが光輝くエーテルを高速で収束させてゆき、強い爆発を巻き起こして更に雲霞鳥を攻め立てるが、雲霞鳥が怯む様子はない。
「やれやれ、休んでいる暇は無さそうだ。シャレムさん、全力で走らせてくれるかい?」
「わかりましたわ! 湿地帯を抜けてしまいましょう!」
雲霞鳥が湿地帯の外に出ることは無い――それを逆手に取って逃げ切るしかないだろうとディレインとシャレムが頷き合う。その間も、巧みなバランス感覚で弓を構えたユニスが、攪乱射撃で雲霞鳥を落とすが、加速した別の雲霞鳥が荷馬車のすぐ後ろまで迫る。
「こいつは、ちょっと面倒だな!」
身を乗り出したリューイが力と速度を兼ね備えた、研ぎ澄まされた鋭い一撃を叩き込む。そんなリューイをディレインの放った淡い透明な光が包み防御性能を強化するが、啄むような嘴の連撃は瞬く間にリューイを傷つけていく。
「そこまで、そこまでなのですーっ!!」
これ以上は近付けないとばかりに、レラが殺界を張り巡らせる。強行突破を試みる雲霞鳥達だが、思うように飛べないままレラと睨み合う。
「馬車の上に出ます!」
十分な足場を確保する為、トーラは跳躍すると幌の上に乗った。全力疾走する荷馬車の、更に幌の上は不安定だが、トーラは低く重心を保って安定した体勢を整えると、雲霞鳥に向けて衝撃波を放つ。
「大丈夫。荷馬車には指一本触れさせないからね」
戦いの物音に青くなる人々へ呼びかけながら、ディレインはリューイの傷を癒す。その間もストレガのメテオライトが降り注いで雲霞鳥を牽制し、更にユニスが放ったグラヴィティボルトが行動を阻害していく。
「吹き飛ばしますよーっ!」
そんな中で更に近付いて来る雲霞鳥に、レラがドラゴンチャリオッツを叩き込む。景気良く吹き飛ぶ雲霞鳥に陣形が乱れていくのを、リューイは見逃さず衝撃波を振るった。
――すると。
負傷し、脱落した雲霞鳥が出たからだろうか。雲霞鳥の追跡が緩んでいくのが分かった。荷馬車のすぐそばまで迫っていた雲霞鳥が徐々に、じわじわと遠ざかっていく。
「諦めた……みたいかな?」
「ですね、良かったです」
どうやら振り切れそうだと一息つくディレインの言葉に、戦槌を握りしめたままレラが頷く。最悪の場合は馬車から飛び降りながらでも周囲を薙ぎ払い、雲霞鳥を追い払わなければと考えていたレラだったが、どうやら、そこまではせずに済みそうだ。
トーラやストレガも、いざという場合の囮役や殿を担うつもりでいたが、雲霞鳥の群れの中で孤立するような事にでもなれば相当に危険だ。そのような事態になることなく逃げ延びられてよかった、と言うべきだろう。
荷馬車は疾走を続け、そのまま湿地帯の外まで駆け抜ける。
一度追跡を緩めた雲霞鳥はもうそれ以上、一行を追って来ることは無く。荷馬車は先行して避難していた人々に無事合流することができた。
「よかった、よかった。気分の悪い人はいないかい?」
かなり急いだから、揺れに酔った人などもいるかもしれないとディレインは見て回る。それ以外にも具合の悪い人がいれば、と呼びかけて、応急手当の必要そうな人がいれば診て回る。
「無事に避難できて良かったわね、リューイ。……怪我はどう?」
「ああ。傷の方も平気だ」
労わるようにチョコレートをひとかけら差し出すユニスの言葉に頷き返して、リューイは「さすがだな」と口にする。
「? なにが?」
「そういう所が」
戦っている最中は、いつでもユニスの援護があって――後ろにユニスがいると思ったら、安心して前に集中して戦える――それがすっかり当たり前になってしまったな、と声に出さずに笑うリューイを、少し怪訝そうに見ながらも「そう」とユニスは頷いた。
(口数が多い方じゃないのは……お互い様、かしらね)
リューイはそれ以上何も言わないし、ユニスもそれ以上を何も聞かない。けれども、その距離感がちょうど心地良いような気がして……ユニスはリューイに寄り添うのだった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人
2023年08月11日 15時26分13秒 公開
相談掲示板
ウォーリアのリューイだ。 ウォーリアとして、雲霞鳥の迎撃に専念するつもりだ。 よろしく。
シーフのトーラです。 よろしくお願いします! 高速個体を排除しつつ後続の雲霞鳥を足止めし、避難をする形になるでしょうか。 現在シャレムさんを含めてウォーリアが三人、キャスターとシーフが一人ずつですね。 わたしは高速個体の迎撃に回ろうと思います。 提案なのですけど、ストレガさんの澱嵐系スキルを高速個体と通常個体の間に張って合流を送らせて、その間に高速個体の排除と、避難を進めるのはどうでしょう? 二つの群れが合流すると手に負えなくなるかもしれませんし。
ギュンタの名前はギュンターと申します。ウォーリアです。どぞ、よしなに。 トーラさんも仰ってますが、二つの群れが合流してしまいますと、ギュンタ達の手に負えなくなっちゃいそです。 ギュンタも殺界を使って引き離しを図った方がよろしでしょか。もしくは直接護衛役も兼ねてのカバリングの方がよろしでしょかね。特に問題無さそでしたら、ギュンタは護衛兼誘導役といった感じで動こうかと思ってます。
そうですね。 殺界で足止めをして貰えたら避難される方も安全だと思います。 ただ、殺界は無差別に範囲内人を巻き込んで足を止めますし、対象は強行突破を成功しなければ移動が出来ないので、使う場合は避難される方から離れるようにして貰えたらと思います。 もしくはストレガさんの返答次第ですが、澱嵐で合流を阻まれた高速個体の足止めをして貰えらたら。 その場合は殺界の足止めを無視できるホライゾナルジャンプを持っていきますね。
シューターのユニスよ。 最初から出し惜しみせず、射程を活かしての強力な弓射のスキルで高速個体を迎撃。 そのあとは、後続の通常の雲霞鳥をひたすらに弓で撃ち落とすことに専念するつもりよ。
>トーラさん 具体的なご助言感謝なのですよ。 ドラゴンチャリオッツで吹き飛ばしてからの殺界でしたら、避難される方も影響受けにくいでしょかね。 離れて使う、忘れないよにばっちり頭の中に入れときます。
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 通常個体の足止め、了解したのだ。 アーケインとグラビティ両方を用意する予定。
直前なんだけど、ヒーラーが入り用かなーって。 ディレイン・オールドケイジ、よろしく。 まあ、おじさんがやれることなんて範囲バフと回復くらいなんだけど。 前に出たらそんなにもたないんで、数歩引いた位置どりにはなると思う。
満員ですね! 皆さん改めてよろしくお願いします! ディレインさんに支援をして貰えるのであればそれを受けて前に出ますね。 ストレガさんの足止めが効いている内に高速個体を退治してしまいましょう!