【恨縁】深更のレルドク
広大野人
コメント 14
シナリオID:3066
オープニング
王国の北西部に位置するレルドク領は特徴の無い平凡な地方だ。
領都と幾つかの村や集落から形成され、領主はザンディラ・レルドク子爵。熱狂的な貴族派としても知られている。若い頃は大剣を担ぎ、魔獣退治が趣味だったという。
王国騎士エナハルト・ティルムは騎士団本部からの命によって、このレルドク領の調査に赴いていた。表向きは『指名手配犯の追跡調査』という事であるが、目指しているものは全く別だ。
「……前回の調査によって、レルドク領主あるいはその周囲の者が、無許可で領地を広げている可能性がある事が分かりました。証拠に繋がる手掛かりを得られればいいのですが」
若き騎士の台詞に同行している先輩騎士のイェルド・ルリンが頷く。
「領主自らが動かないとなると、第三者を間に立てている可能性は高いな。御用聞きの商人なんか、怪しい」
領境付近を出入りしているという商人。
そして、人身売買をしているペディグという行商人。
同一人物か分からないが、調べる理由にはなるはずだ。
「他にも確認しなければならないのは、数年前から幾つかの集落が滅んでいる事と、魔獣の襲撃との関係もですね」
「あぁ、この前の集落のように、魔獣を使って集落を襲っているのなら、そもそも、襲う理由があるはずだ。数年前から変わった事が無いか……そこまで踏み込んだ調査が必要になるな……というか、調べる事、多すぎだろ!」
乱暴に頭を掻くイェルド。
流石に王国騎士二人で調べきれる内容ではないのは明らかだ。
「今回も冒険者の皆さんに調査を依頼していますから」
彼ら彼女らであれば、きっと、必要以上の情報に辿り着けるはずだろうから。
●???
外部の者が領都に入るには二カ所ある正門、どちらかを利用するしかない。
一応、街に住む人達の為に、小さな出入り用の門は他にもあるが、街の外から来た者は正門しか通れない仕組みになっているのだ。
「そなたのおかげで無事に入る事が出来た。礼を言うぞ」
収穫用の麻袋から姿を現したのはメドゥの指先『赤の親指』ミュルコレオだった。元住民の手引きで小さい門から領都に潜入したのだ。
正門で外套を外されてしまえば蟻亜人とすぐにバレてしまうが、住民の出入りに少し工夫を加えるだけで済んだのは門番が怠惰としか言いようがない。
手引きした元住民はミュルコレオが以前、集落で声を掛けた青年であった。
「これで、俺はもう自由にやっていいのか?」
「勿論だ。そなたが思うままに、その欠落を埋めれば良い。その為の『力』なのだからな」
優しい声で囁くように告げると、青年は拳に力を込める。
信じられない程の力を感じた――これを授恵者達は『エーテル』と呼んでいるモノなのだろうかと疑問が浮かぶが確認の方法がないし、確認する必要もない。
『力』が使えればそれで問題ないのだから。
意気揚々と立ち去っていく青年の後ろ姿が完全に見えなくなってから、ミュルコレオは外套を深く被り直した。
あの青年のように、救いの無い欠落を持つ者は、他にもきっと多くいるだろう。
「これから起きる事は、わらわの仕掛けではない。あの者を生み出した、治政の結果じゃ」
そして、路地の奥底へと消えていくのであった。
●???
元従業員が商会に乗り込んで暴れている連絡に、取引中の行商人は舌打ちした。
「おいおい、大丈夫なんだろうな?」
「心配いらんよ、ペディグさん。仮にそいつが授恵者であっても恐れる事はありません」
けばけばしい程に装飾品で飾った商会の主が答える。
屋敷の隣は領主館の敷地だ。道路を回らなくとも、直接出入りする専用の出入り口があるので、衛兵達はすぐにでも駆け付けるだろう。
「という事で商談を再開させましょう。仕入れはいかほどで?」
「半獣人が5に、病人や怪我人が5だ。いつものように街の外で待機させている」
ペディグは行商人の仕事の傍ら、王国各地を回り、訳ありの人を買い漁っていた。半獣人の一人や二人、消えても気にならない差別意識が強い地方もあれば、様々な理由で働けなくなった足手纏いを『処分』したい街もある。
そうした闇を繋ぐ事で利益を得ているのだ。
「ふむ……数が減りましたかな?」
「得意先の一つが潰されたからな。だが、値はいつも通りでいい」
「それはありがたい。最近は『世の中に必要のないモノ』を有効に活用している我々の善行を理解できぬ輩が多くて困っているよ。ペディグさんのような人が多くいれば、もっともっと世の中はいい方向に向かうだろうに残念な事だ」
商会の主は胸を張ってそう告げる。
彼は所謂、絶対ヒューマン主義者だ。ヒューマン以外の種族は全てヒューマンの栄華繁栄の為の礎に過ぎない。また、落ちこぼれのヒューマンは弱者なので処分しないと、他のヒューマンに悪い影響を及ぼす……と本気で思っているのだ。
「俺にはどうでも良い事だ。金が稼げれば、な」
「次の商談を楽しみにしておりますぞ、ペディグさん」
二人の握手により、商談は成立。
その日の内に人買いの馬車はどこぞに移動する事になる。
●
狼型魔獣のうち、大型狩猟犬に似た一頭を連れて街中を散策していたマガリー・アフレは領主館近くで騒ぎを耳にした。
衛兵に訊ねると、隣接している商会の屋敷で男が暴れているらしい。
「……全く、余計な騒動は起こして欲しくはないわね」
事情があるので、大きな事件になって欲しくはない。
王国騎士が調査の為に訪れているので尚更だ。『指名手配犯の追跡調査』らしいが、何か探っているようにしか思えなかった。
「この子なら、手伝えるかもしれないわ」
だから、マガリーは現場に乗り込む事を選択した。
野次馬共が遠くから見守る中、商会の中で暴れる青年。狂ったように店内の設備を打ち壊し続けており、床には数人の店員や駆け付けたのであろう衛兵が倒れていた。
(授恵者ではない……だけど、一般人にあれだけの事が?)
疑問が浮かぶが、これ以上騒ぎが続くのも厄介だと思った時だった。這うように店内から貴婦人が出て来る。事件に巻き込まれた不幸な客だろうか。
「む、娘がまだ、店の中に! だ、誰か!」
悲痛な叫びに野次馬達は互いに顔を見合わせるだけだった。
そんな中をマガリーが連れて来た一頭が獰猛な叫びと共に駆け出した。
驚いたのは青年の方だった。大型の狩猟犬のような犬が突然、迫って来るのだ。『力』があると言っても所詮は訓練を受けていない一般人。
「う、うわ! 来るな!!」
壊れた椅子を振り回すが、大振りになった所を突かれ、一瞬で押し倒されてしまった。引き離そうとする動きよりも早く、顎を噛み砕かれる。
激痛に青年は転げまわるしかなかった。無防備な状態になった所で、マガリーが護身用の細剣で急所を一突きした。
(……これで生命力は人並み?)
動かなくなった青年を見下ろしながら、マガリーは疑問を抱く。
そこへ物陰から様子を見ていた幼い女の子が飛び出してきた。
「おばちゃん、かっこいい!」
どうやら、幼子に怪我はないようだ。
マガリーは微笑むと女の子を抱き上げる。
「『おねえさん』と呼ぶべき所よ」
野次馬共からの歓声が響き渡るのであった。
解説
マスターより
リプレイ
「帳簿が合わないといっつもルイジョワさんに怒られていたらしいからね。解雇の件もあって相当、恨んでいて間違いないんじゃないかな」
「まぁ、そのルイジョワの方が悪い事してて帳簿が合わなかったって噂も」
「おう! 俺は現場を見ていたが、そりゃすげぇぜ! 一般人の出来る事じゃねぇ!」
捜査の基本は足だと誰が言ったか、アステルと王国騎士イェルド・ルリンの二人で聞き取りに専念していた。
そうすると商会の黒い話が溢れる程出て来る訳で。
「領主に贔屓されているからという認識なんですね!」
これまで得た情報をまとめるアステルが結論を口にした。
市民の大半の認識というのは容易に変えられるものではない。
「まぁ、俺らに対する小生意気な態度を見りゃ、誰でもそう思うだろう」
商会主ルイジョワ・ウニンに対する面会は、僅かな質問で終わりになった。怪しい所が無いほど綺麗に整った帳簿は逆に怪しいとしか思えなかったので、街の住民達の認識の方がおおむね正解なのだろう。
「それに私には、気持ち悪い視線を向けていましたよ!」
「……そりゃ、嬢ちゃんが可愛いからだろ」
そんな感想を返したおっさん騎士は後頭部を掻いた。
一先ず、商会が木材や鉱石、宝石類から衣料品や食品まで手広く事業を行っている事、住民らの評判は良くない事、事件を起こした青年が商会主に恨みがあり、騒ぎの内容は一般人では考えられないレベルだったという情報は得られた。
「宿に戻って情報を持ち合えば、何かに辿り……あれ……」
アステルは通りから見えた裏路地に見知ったローブ姿の人物を見つけた。
思うよりも早く身体が動く。驚いたのはイェルドで急に駆け出したアステルに置いていかれないように走る。
二人の接近に気が付いたローブ姿の人物は警戒した様子だった。
「そなた達は……」
「今晩は。またお会いしましたね。私の事は覚えて無いだろうけど」
「捕らえようとしても無駄じゃぞ」
どうやら、警戒先は王国騎士のようで、ミュルコレオはすぐにでも立ち去れるように距離を取り直した。捜査の時には心強かった王国騎士だが、今は居るだけで相手の神経を逆なでしているようだ。
「待って! 一つだけ、アナタはこの街へ何の為に来たのかな?」
冒険者さえも利用して、この街を潰すつもりなのか……だが、アステルの疑問への答えはそれよりも更に大きかった。
「この国を滅ぼす。ここはその切っ掛けに過ぎない」
ミュルコレオはメドゥの指先『赤の親指』なのだから。
●
ヒューマンに変装したルベア・ベルニは商会で騒ぎを起こした青年の遺体が安置されている詰所へと足を運んだが、そこで待っていたのは、マガリー・アフレだった。
彼女は一目でルベアの変装を見抜き不敵に笑う。
「この街にお似合いの姿ね、貴女」
領主が絶対ヒューマン主義を標榜するだけあって、この街における差別意識は特段に強いからだ。
思わぬ人物との再会に動揺を堪えながらもルベアは青年の遺体へと視線を向ける。
「……捜査、だから」
もっともらしい言い訳だったが、マガリーはその返答に納得したようだった。
細剣で急所を一刺しした所をルベアに分かるよう、指差した。
「授恵者ではないのに相当する力があるのなら、こうするのが手っ取り早かったわ」
「他意は無いのよね?」
「買い物の邪魔になるからよ。それにしても、その口ぶりは青年に何か心当たりがあるようね」
その返しに対して、ルベアは合わせていた視線を反らし、遺体を確認する。
『神実の力』によるものかと思ったが、話を聞いてみると違うのは明らかだった。かといって、火事場の馬鹿力で説明が出来るような類のものでもない。
その時、マガリーの横で控えていた大型犬によく似た魔獣が低く唸った。何かしらの異変……次の瞬間、青年の鼻穴から『何か』が飛び出してきた。ルベアは咄嗟に避けると、『何か』はあっという間に排水溝へと消えていく。
「今の気持ち悪いのは何? 貴女に飛びついていったようだけど、大丈夫なの?」
マガリーの台詞にルベアは頷いた。
驚きのあまり、胸に手を当てて呼吸を整える……その正体によく似たものをルベアは知っていた。いや、正確にはとある依頼の中で知り得た事で直接、見た訳ではないのだが……。
「あれは寄生型の魔獣? ……まさか……」
向けられた視線にマガリーが両手を振った。
「止めてよね。あたしは狼型の魔獣しか使役しないわよ」
マガリーが嘘をつく必要性は全くない。彼女が寄生型の魔獣を操作できるのなら、わざわざ商会での事件を起こす理由にはならないからだ。
思案する二人はやがて、ある人物に辿り着いた。
「「ミュルコレオ」」
あの蟻亜人が魔獣使いかどうか分からないが、ただ何かしら関わっているのではないだろうかと、そう思えるのであった。
●
「お会い出来て光栄です。調査へのご協力に心より感謝を」
優雅な物腰を魅せたシルヴィア・A・カペルの挨拶に、領主であるザンディラ・レルドク子爵はご満悦の様子だった。
王国騎士エナハルト・ティルムと共に面会に来ただけなのだが……煌びやかな応接間とテーブルに並んだ料理の品々は、豪華の一言。王国の隅にある平凡な一領地とは思えない贅沢ぶり。
「エナハルト殿が羨ましい。このようなお美しいご令嬢と共にいられるとは。未来の伴侶でありますかな?」
「いえ、僕には婚約者が……」
話を逸らされては困ると思いつつ、エナハルトが領主の質問にやんわりと答えた。
「それはお二人に失礼した。このような片田舎だと話題の一つもあれば、つい首を突っ込みたくなるものなのだ」
その後、表向きの追跡調査の件について意見を交わし、雑談に移る。
レルドク領は王国領の外縁に位置し、度々、魔獣の脅威に晒されていた事。若い頃は領主自ら魔獣狩りに勤しんだ事など話が続いた。
「魔獣退治がご趣味だったとか。冒険者の一人として是非倒し方をご教授頂きたい」
シルヴィアの期待に満ちた眼差しにザンディラは胸を張って、自分からベラベラと語り出した。
近隣には様々な魔獣が姿を見せるそうで、王国庇護下にない、半獣人や竜人の集落が度々滅んでいるという。居座った魔獣をバッサバッサと切り捨てた話は嘘か本当か分からないが、レルドク領が魔獣との戦いを繰り広げていた歴史は理解できた。
「以前、別の依頼で魔獣使いを目撃しました。レルドク領と子爵に危険が迫っているのではないかと心配で……」
鎌かけの言葉を投げたシルヴィア。
ザンディラは自信満々に答える。
「ご心配ありがたいが、全く脅威ではないな! 大剣のさびにしてくれるわ」
「滅んだ半獣人や竜人の集落の立て直しにも、お力添えを?」
「入植を希望する者がおればな。懇意にしている商会を通じて細々やっておるよ。古くから付き合いの深い商会で、行き来の為の専用の出入り口まである程だ」
領主が窓の外を指さした先、そこは昼間に事件があった商会だった。
その後も自らの力を示すようにザンディラの話が一方的に続き、シルヴィアとエナハルトが解放されたのは真夜中の事であった。
●
貧困層街区での聞き込みをして分かった事は、この街では種族差別が激しい事とそれが比較的受け入れられている事。更には、差別に批判的なヒューマンも攻撃対象になる……という事だった。
結果、追いやられた人々の行先が、この貧困層という事だ。
そして、今、偶然にも出会ったミュルコレオにミア=リゼルは対峙していた。
「ミュルコレオさん。あなたは私を好かないかもしれませんが……私もかつて指先に属していた者。お話を聞きたいのです」
蟻亜人の特異個体は周囲に人の気配が無い事を確認した上で深く被っていたフードを外す。特徴的な触角が二本、ぴょんと跳ねた。
「先刻、そなたの仲間からも同じように声を掛けられたぞ。『貴族と一括りにすれば見落とすものもある』とな」
シルヴィアがミュルコレオと一言二言、言葉を交わした事は、ミアも共有していた。
ミュルコレオの出身が王国から北西部に位置していたという事も。
ミアは敵意がない事を示すように両手を広げる。説得でも、調査でもなく、ただ知りたいという想いが届くように。例え、将来、戦う事になったとしても……。
「……私は、ある人に『人として生きよ』と望まれました。それはヒトだとか、亜人だとかではなくて……命ある存在としてです」
話をミュルコレオはジッと聞いていた。ミアが指先に属していたという事に興味を持ったのかもしれない。
ミアは言葉を紡ぎ続ける。
「『命ある存在として生きること』……私たちは種族や生まれに依らず、『生きる』という命題を抱える者同士として、言葉を交わすことは……できないのでしょうか?」
分かり合える事ができないのか……けれど、ミアの願いはミュルコレオの答えにあっけなく崩れ去る事となる。
「面白い事を言う。そなたは人を喰らう魔獣と言葉を交わす事があるのか? わらわとそなたは相容れぬ存在同士。これは生存競争、どちらかが滅びるまで戦い続けるだけの事」
「だとしても、現に今、私とミュルコレオさんはこうして話し合っているじゃないですか」
「それは、わらわが人の言葉を理解しているから成り立っているだけで、現実は何も変わらない。蟻亜人と人の生息域が重なれば、衝突するのは当たり前なのだ」
ミュルコレオはそう答えるとフードを深々と被った。
「わらわと停戦を約束した『黄の中指』は、王国との戦いに敗れた。ならば、わらわの戦いを止められる者はおらんよ」
彼女の双眸は敵意に満ちた光をただただ放っていた。
●
変装した上で調査を続けていたナハティガル=ラーは酒場や情報通な人物、商人や行商らからも情報を探し、それなりに成果を得ていた。
そして、情報共有の為に仲間達が待っている宿へと向かっている最中にミュルコレオと偶然にも鉢合わせする事になる。
朧げな灯りの中、ナハティガルは静かに訊ねた。
「――先の商会での騒ぎはアンタの差し金か?」
「そなたはなぜ、そう思う?」
「領地の規模以上の不自然な資源の交易量と数年前から幾つか集落が滅んでいるという話……レルドク領主が無許可で領地を広げていたならば、説明がつく。そして、その地域の中に、蟻亜人の生息域もあったらしいな」
それらはナハティガルが自身の推測を基に調べた情報だった。
領境を出入りしている行商がペディグという名で、ルイジョワ商会にも取引が頻繁にあった事も確認した。惜しむ事はペディグが既に街から出ている事だが……。
「そこまで良く調べた事よ。ならば、わらわの目的も自ずと理解できよう。だが、商会の騒ぎは、力を持った人間が勝手にやった事だ」
「唆したのではないのか?」
「だとしても、方法までは分からんじゃろ?」
ミュルコレオはニタリと笑った。
これまで冒険者達は『赤の親指』を観る機会があった。けれど、その機会を上手く活かせなかったのが、ここに来て響いている。
だが今は悔やんでいる場合ではない。ナハティガルは話題を変えるように別の質問を投げかけた。
「マガリーがヒューマン以外の種族を認めない事、この街が絶対ヒューマン主義に傾いているのは、過去に何かあったのではないのか? そこにアンタも絡んでいるのではないのか?」
「恨みつらみは切れぬ縁となって続くもの。わらわも、この街に住む人間共も、な。たが、マガリーの過去は知らぬ……ゴブリンとハーフビーストは一段と容赦なく、特に灰狐のハーフビーストは惨殺して回っていたとメドゥに関わりがある者からは聞いた事はあったが……」
灰狐――その単語にナハティガルは依頼を受けた仲間の姿を思い出した。けれど、ルベアが積極的に命を狙われた様子は見られない。
ただ、特定の色を執拗に狙うのは、相当な恨みがあったとは容易に想像ができた。マガリーと灰色の半獣人の関係。そして、ルベア本人が知らないだけで、マガリーと何らかの因縁があるのかもしれない。
「恨縁が切れるには、双方、どちらかが滅びるまでという事か」
ナハティガルの台詞にミュルコレオは力強く頷いた。
「それ以外に道があると?」
もし……歩み寄れるのであれば、違う未来に辿り着けるのだろうか……。
立ち去るミュルコレオの姿が消えるまで、ナハティガルは油断なく見届けるのであった。
●
キオルティスは領都内で自身や仲間達が調べた内容を確認する為、領境を越えて山間部へとやって来ていた。
レルドク領主の領都内での評判は上々だった。魔獣に対する脅威に対し、積極的に取り組んでいる姿勢が好まれているのだろう。
領境外側は王国領地外でもあるので、街周辺の安全を確保できる事が、領主に求められている事のようだ。
魔獣の被害により領境外の集落が幾つか滅んでいるのは事実らしく、それらの位置関係を調べていたキオルティスはある仮説に辿り着いていた。
「……予想した通りだ」
領地外であるはずなのに、整備された街道と馬車が行き来している轍。
山の洞窟に吸い込まれるように続いているので、十中八九、何らかの鉱山があるようだ。しかし、鉱山があるという噂はあるが、証拠は見つかっていない。秘密裡で採掘が行われており、その労働力の一部を人身売買で賄っているのだろう。
「働けなくなれば、魔獣の餌にしてしまえば……証拠隠滅にもなる訳だ」
月明りの中、茂みから洞窟の入口を見ていたキオルティスは確実な証拠を掴もうと思った。
その矢先、気配を感じて振り返る。同時に短剣を向け――。
「君が腕の立つ冒険者だとは分かった。だが、領都内での調査なはずだが?」
既に背後を取られていたのもあって、短剣を持つ腕を青年に掴まれた。形勢不利だが立て直しできる余裕をキオルティスは感じる。そもそも、明確な敵でなければこのやり取りは存在しないのだろうから。
「同業者なのかい?」
尋ねながら注意深く観察する。歳はキオルティスよりもやや若いだろうか。金髪緑眼で線の整った輪郭は、生まれの良さを感じさせた。
「王国騎士エナハルトの知り合いと思ってもらいたい。ここには裏取りに来た訳だが、君が辿り着いたのなら、俺がここまで来る必要は無かった訳だ」
「誰かが秘密裡に鉱山を採掘している事を?」
「レルドク領主が知らない訳がないだろう。つまり、そういう事だ」
青年は掴んでいたキオルティスの腕を離す。その背後に青年の供が二人、身を潜めているのが見えた。ただ者では無い事は確実だ。
「領主が知らない訳が無いという確信があるような言い方だね」
キオルティスは短剣を戻しながら訊いた台詞に青年は踵を返して応えた。
「隠し立てはやましい意図からあるからだと、君もそう思うだろう」
いずれまた会おうと言葉を残して、青年は控えさせていた供を引き連れて立ち去るのであった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:多い6 / 4〜6人
2023年07月13日 13時29分11秒 公開
相談掲示板
シーフのキオルティス。キオでもルティスでもお気軽に。 今回も宜しくね! レルドク領での調査と言うことで、フリーアタックではあるけれど お互いの調査内容が被ってしまうと勿体無いし、ある程度は それぞれの調査先や内容、範囲なんかが分かっていると良いかな、と。 個人的には領地拡大の件をメインにしたいかな。 前回のリプを絡めた内容になると思う。どうやって調査しようかは まだ考え中だよ。あとは魔獣襲撃も領地拡大に少し絡められたら、と 思っているけれど、こっちはもう少し考えが纏まってからかな…と。
シルヴィアだ。今回もよろしくね。 調べる項目、気になる人物、色々とあって悩ましいね。 覆面調査にもリスクがあるようだから、王国騎士の依頼で『指名手配犯の追跡調査』をしている事は出来る限り隠さない方が良さそうだ。 個人的にはレルドク領の絶対ヒューマン主義……おそらくそれに至った理由であろう、魔獣や敵性亜人の襲来によって度々苦しんだ歴史が気になっている。レルドク領の方が最初に鉱山資源を求めて周りの集落に戦いをふっかけて、返り討ちにされたのを逆恨みしている、という可能性もあるけれど。軍馬に戦車、新型の投石器と、軍隊が持っている武器が平凡な領地にしては物騒すぎる。 別派閥の人間に話して貰えるかは分からないけれど、ザンディラ・レルドク子爵に面会を申し込んでみようかな。依頼人であるイェルドかエナハルトにも出来れば同行して貰いたいと思っているよ。 調査項目は「レルドク領の歴史や状況」「子爵の人柄や思想」、それを踏まえた上で「数年前から幾つかの集落が滅んでいる事と、魔獣の襲撃との関係性」になると思う。「領地拡大」も少し絡むかも。 子爵と関わりが深い御用商人についても聞いてみたい。領主館と商会の屋敷が専用通路で繋がっているなんて珍しいしね。人身売買の件もあるし、嫌な想像をしてしまうよ。 今の所こんな感じだ。調査項目や調査対象が多くてまだ悩んでいるから、何かあれば遠慮なく言って貰えると嬉しい。
シーフのルベアよ、よろしく。 ヒューマン至上主義の子爵の領都だし、冒険者とはいえ私は大っぴらに動くとそれだけで目をつけられそうな気がするのよね…。 覆面調査とか潜入調査とかはしないけど、目立ちすぎないようには気をつけるつもり。 その上でだけど、暴れていた青年のことがちょっと引っかかってるからそこを調べようかと思ってる。 神実の力がまだ残っていたのか、それとも別種の…たとえばPL情報っぽいけどミュルコレオが分け与えた力なのかとかね。 だから詰所に向かうわけだけど…多分マガリーかミュルコレオに遭遇する、と思う。 マガリーだとしたらあまり冷静に話せる気はしないけど…(というRP)、まあ、間違っても目立たないようにはするわ。
シーフのナハティガル=ラーだ。――今回は宜しく頼む。 ヒューマン至上主義の領都という事もあり、俺もルベア同様に極力目立たないよう立ち回るつもりだ。 覆面調査や潜入調査はしないが、行動する際は唯人に擬態しようかと考えている。 現状では数年前から幾つかの集落が滅んでいる件と、魔獣の襲撃との関係性を追ってみようかと。 その件についてマガリーにも探りを入れてみたい所ではあるが……。
(遅れない時がないのか…背後、反省しております) ヒーラーのミア=リゼルです、よろしくお願いしますね。 人数も6人ですから、確かに手分けして行動するのが良いと思います。僭越ながら、調査内容をまとめさせていただきますね。 敬称略 キオルティス:魔獣襲撃と領地拡大について シルヴィア :領史、領主の人柄について、最近の領近郊の動向 ルベア :暴れていた青年について ナハティガル:集落の消滅と魔獣襲撃について 修正が必要な場合は以降いい感じにお願いします!_φ(・・ 私は…そうですね ペディグさんも退去済みとのことですし、商会をあたるのもアリなのですが…私の話は漏れているかもしれませんし、面会に変装して、というわけにもいかないので、適任ではないのですよね…
ミアは纏めありがとう。 何処まで聞き出せるかは分からないけれど出来る限り尽力するね。 あ、字数が許せばミュルコレオにも会いたいと思っているよ。 >思想について ヒューマン至上主義は「人類の各種族の中でヒューマンが一番優れている」という思想、 絶対ヒューマン主義は「ヒューマンだけが人類」という思想なのかなと思っている。 ヒューマンへの擬態は有効だと思う。街にヒューマンしかいないという事はない筈だけれど……ルベアとナハティガルはどうか気を付けて。
No.7
顔出しが大幅に遅れてごめんなさい。 色々考えてたけど何も浮かばなくって……。 必要なことも手分け出来てるから、何をしたものかな、と……。 取り合えず青年の調査(事件現場と遺体と過去調べ) あとは…ミュルコレオとの接触、かな。 ミュルコレオがどうしてこの街ににいるのか、とか? マガリーとの繋がり?があるのならば、そのあたりの探りも入れたいけど、 理由がないから難しいかな…。 役に立たなくてごめんなさい。
No.8
う~ん…今更で、私の勘違いなら指摘してほしいんだけど、 ミュルコレオってヒューマンに冷たい…ハズ…だったと思うんだけど…。 そうするとミュルコレオと接触しても上手く会話が行かないかも知れないな、と。 もうそんなに時間がないから、未だ迷ってる場合じゃないけれど、 青年周りの事は調査するとして、ミュルコレオとの接触はもう少し考えてみるね…。
No.9
連投ごめんなさい! 先に言った青年の調査。その後か、その流れかで、 エナハルトさんかイェルドさんと、商会の主に接触を図ってみることにしようかな、と。 王国騎士さんが一緒なら箔も付くし、接触時、さらに良いかと。 ミュルコレオに関しては、一言交わせればラッキー程度で、接触を図ってみるね。
ミアさんは纏め、有難う。 何処から何処まで今思っていることに対して追っていけるのか分からないけれど、 精一杯頑張ってみるね。もし同様のことを考えて動く人が居れば、現地で宜しくね。 で。各自、調査過程で否応無しに他のことにも頭を突っ込まざるを得ないことに なるかもしれないけれど、自分だけで追いきれない部分は、そこをメインに 調査する仲間で巧く情報共有し合えれば、と。 それだと大きく逸脱せず、更に自分の目が届かない所も補完出来るかな…と。 そんな訳で、出来れば何処かで情報共有が出来る場所が有ると良いね。 …宿とか借りれたりする…かな。
>アステル 商会長と接触する予定の人はいなかったから、アステルが彼に話を聞いてくれるのはとても有難いよ。是非よろしくね。 王国騎士に同行して貰うのも賛成だ。おそらく商会長と面会するアステルと、領主に面会する私に一人ずつ同行して貰う形になると思う。私はエナハルトとイェルド、どちらに同行して貰いたいという希望は特に無いから、「王国騎士の何方かに同行を依頼する」とプレに書かせて貰うね。 >情報共有 キオが言ってくれたように、確かに情報共有が出来る場所があると良いね。 王国騎士の二人が宿をとってくれていると良いのだけれど……二人の隣の部屋を借りて拠点にするとかかな。何時でも出入り可能、終了後に皆でそこに集まって情報を整理をするのも良い。 王国騎士の部屋を拠点にさせて貰えるようお願いする手もあるけれど、調査は深夜に及ぶだろうし流石に大変か。 私は特にミュルコレオに嫌われているから、同じく言葉を交わせたらラッキーくらいに思っておくつもり。調査で手が回らなくなったら(字数が足りなくなったら)今回の接触は諦めようかな、とも。色々と考えてみるね。
承知しました! 私は商会調査に向かない可能性が高いので、助かります…! 情報共有の件も了解です。そうしたらえっと…私が宿を取るというのはどうでしょう? 王国騎士がどこに泊まっているかは当然割れるでしょうし、目立ちますから。(そもそも表向きの滞在理由から、向こうが用意してくれているかもしれませんし)
はっ…私の調査内容に触れていませんでしたね。 先に出ていたように、必要な部分は手分けができているようなので… ミュルコレオさんに接触してみようかな?と考えています。聞きたいこともあるので…
>情報共有 あ、確かに……! 王国騎士達が泊まる宿は既に子爵側に知られているだろうし、何より目立ちそうだね。 ミアが宿を取ってくれるなら助かるよ。手間を掛けて申し訳ないけれど是非お願いしたいな。 (ちょっと内容訂正。ごめんね)