【再起】悪役令嬢をプロデュース!
馬車猪
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シナリオID:3064
オープニング
(世間的には悪では?)
セニャ・リーラントを悪役令嬢に見立てた小説と本人を見比べるのは、帝国南部鎮守都市ヴィントに勤める官僚と高級軍人達だ。
「商品としては良い出来ですね」
中退とはいえ大陸最高峰の学園に実力で入って5年間学んだセニャにとって、書き手の意図と教養を見抜くことは簡単だ。
あからさまにヒューマンを優遇するセニャの施策を面白おかしく痛烈に批判している、ように思える。
「取り締まりますか?」
物資の面で散々世話になっている部門の人間が小声で問いかける。
一時よりは改善されたとはいえ帝国の台所事情は厳しく、文字通りの手弁当で復興事業に関わるセニャの功績はとても大きい。
「今は特にお忙しいでしょう」
悪意をぶつけられたとしてもセニャは気にしない。
子を守って必死に抵抗する亜人達から向けられる殺意と悪意と比べればほとんどの場合薄いからだ。
「本題に入っても? はい、では来月収穫予定の野菜についてですが……」
小説よりも、健康を維持するために必須の野菜がどれだけ軍や都市部に引き渡されるかの方が帝国にとって重要なことだった。
●
全ての議題にけりがついたのは深夜になってからだった。
「少し疲れたわね」
セニャの態度は上品でも疲労は酷い。
腹心に用意させた百合茶の香りと暖かさを楽しんでから、犯人をじろりと見た。
「ひどいですセニャせんぱぁい」
四肢を縛られカーペットの上に転がされているのは学園時代のセニャの知り合いだ。
学業が優秀でセニャを追い越して卒業したはずだった。
「わたしみたいに可愛い後輩になんてこと……やっぱりそんな趣味が!?」
いやんいやんと顔を赤くして身をよじる様に緊張感はない。
セニャの性格を良く知っているのだ。
「本当に変わらないわね」
懐かしいはずなのに懐かしさを感じない。
「学園の頃はお世話になりました!」
えへへと微笑むと可愛いが騙されてはいけない。
この少女、自作の売り上げのためなら手段を選ばないのだ。
「それより聞いて下さいよ先輩! 今回のドゥジンシは売り上げ凄いんです!」
縛られているのに得意げだ。
メイドが柔らかなハンカチで汗を拭いたり美味しい水分補給をさせたりしているせいもあるかもしれない。
「これで私も有名作家に!」
「あのね」
セニャは出荷される家畜を見る目で見下ろしている。
「私、帝国に来て新しい友達ができたの」
「ともだちっていいですよね。偉いひとや危険な人を怒らせても宥めてくれたり! 先輩みたいに!!」
「ええ、友達なら便宜を図ることもあるでしょうね」
セニャはそれ以上何も言わない。
小説家志望の既卒者は、先輩がかなり怒っていることにようやく気付いた。
●反省中?
「たすけてくださーい!」
運良く(?)逃げることができた少女がはるばる旅して駆け込んだのは冒険者ギルド……ではなく知り合いの自宅だ。
「あら久しぶり。あの子なら書斎にいるわよ」
「はーい!」
上品な婦人に歓迎されて奥へ導かれる。
「たすけてくださーい!」
ノックもそこそこへ中へ乗り込む。
そこにあったのはドゥジンシの山脈だ。
妙に距離が近い美青年美少年が表紙のドゥジンシもあるが他の種類も多く桃髪娘達が表紙のものもある。
「たすけてくださいよー」
勝手知ったる茶道具を使う。
ドゥジンシを汚さないよう気を付けて茶と持ち込みの菓子の準備を終えてようやく、部屋の主が侵入者に気付いた。
「へぁ!?」
職場では切れ者美人扱いされる彼女もここではだらけきった一介のドゥジンシ愛好家だ。
緑目茶髪の少年が義兄騎士に迫られている最近のお気に入りが、ソファーの上にぱたりと落ちた。
「おばさまには許可をもらったよ。それでね、お願いがあるんだけど」
「あんた学園生の頃と変わらないわね。今度は何したのよ」
「セニャ先輩をネタにして怒られたの。でもすっごく売れたんだよセニャ先輩とメアリー殿下の悪役令嬢断罪もの!」
前者が悪役令嬢で後者がヒロインである。
現実では平民と王女兼レイウェスト皇子の婚約者なので力関係では後者が圧倒的だ。
「あんた王党派でもないのにそういうのを書くんだ」
「面白いは正義!」
「はいはい」
動揺が収まると頭も働き始める。
「ここまで逃げて来れるってことはあの人もまだ冷静だと思う」
「なら次の本も書けるね!」
「それするとあの人に誘拐されて実家に送り返されるわよ」
「そんなことされたら就職を強制されて取材と執筆の時間がなくなっちゃう……」
「世の中舐めてるのに実力だけはあるのが始末に悪いわ」
「ほめられた!」
「褒めてないし話を脱線させようとするのは止めなさい」
深呼吸して落ち着きを取り戻し、冒険者ギルド職員として高速で思考する。
「あの人の評判を上げるドゥジンシを作ったらどう?」
「やだ! セニャ先輩は悪格好いいの!」
ドゥジンシ作者はこだわりが強い。
「相変わらずの歪んだ愛情ね。なら事情を全部話して冒険者に助けを求める依頼にしてあげるから依頼料を用意しなさい」
小説で稼いだ金では足りず、出資者を探して見つかったはいいが最初の依頼人の希望からズレることになった。
●冒険者ギルド
「ヴィント郊外の村で芸術まつりが開催されます」
イベント警備依頼だがそれは名目だ。
治安維持が前提だが買っても売っても構わない。
運営に関わるどころか成り代わっても問題ない。
現地スタッフは自分達の経験不足を認識しているので歓迎してくれるだろう。
「今、ヴィントの一部で悪役令嬢断罪もののドゥジンシが流行っているそうです」
流行に乗っても乗らなくても構わない。
乗りまくった場合は某帝国代官が風評被害を受けるかもしれないがだいたい自業自得なので気にする必要はないのだ。
「依頼にも関係者にも思惑はありますが」
ギルド職員は穏やかに言う。
「帝国は復興が進んでいるとはいえ復興作業も重労働です。気晴らしになるようなイベントになると喜ばれると思います」
文や絵、演劇、歌、その他文化的なものならなんでもできる依頼であった。
解説
マスターより
リプレイ
リディリディ・トゥラ・イェレミースは本を読んでいる。
白い肌も静かな青い瞳も金糸のような長髪も、いかにもエルフらしい美しさをこれでもかと周囲に見せつけている。
なお本人にその意識はない。
目の前の本に逃げ込まず堂々としていればミステリアスエルフでいられるのだろうが、冒険に出る前に比べれば改善されているとはいえリディリディはまだまだ内向的だ。
「……」
非常に声が小さくて祭りの客は気付かない。
桃色の髪に黒い髪飾りの女性が、目と仕草で許可を得てリディリディと向かい合う席についた。
その隣には非常に上機嫌な文学少女っぽい何かがぴったり張り付いている。
「久しぶり。肉と酒でいいわよね?」
セニャは隣の少女を無視して、しかし3人分注文する。
「自身を題材とした物語ですか」
リディリディは見慣れた顔を見て気が大きくなっている。
「良いのではないでしょうか。リーラントさんではなくてもこんな感じの令嬢は良そうですし」
美貌だけでなく実力も実績もあるので非常に大物に見える。
「リーラントさんの怖い顔を見る限りでは、どうやらダメなようですね」
ふふふと笑ったのは大勢から見つめられて怖くなったからだった。
「質問いいですか!」
少女がエルフに取材を始めようとする。
リディリディはセニャから紹介され、本の著者名を確認し、珍しく懸念する表情になる。
「リーラントさんに好意を抱いている様子なのに悪者に仕立て上げるというのはあまり宜しくないのでは……。王国と帝国への影響というと考えすぎになりますが、リーラントさんは帝国復興の為に尽力されていますし、帝国内に印象が悪く伝わるというのを考えると改変をした方が良いのでは」
検閲的なことをすると反発されそうだしそもそもそんなことをするつもりはない。
セニャの王国での活動を守秘義務に配慮して喋るだけでマリリア曰く『悪格好いい』活躍を知れて大満足だ。
「……お酒」
「飲みたいけど私は今公務中だから」
セニャのリディリディに対する好感度は結構高かった。
「……貴女がマリリア・ウルフか」
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトが立ち止まる。
ヒューマンの中では非常に優れた体格と高位の授恵者としての力は非常に強い存在感を放つ。
その上で帝国公爵家にうまれ育った者として相応しいカリスマや話術まで身につけている。
つまり怖い。
しかしこの少女は普通ではなかった。
「セニャ先輩の恋人さんでしたっけ?」
非常に、当たりが強い。
セニャのどこが好きなのか、貴族より貴族らしく上品かつえぐい問いで追い詰めてくる。
「言うまでも無いことだが『努力を重ねる姿を見て好きになった』し『例えどんなことがあっても君とずっと一緒にいたい、俺と帝国に来てくれ』と言った気持ちに嘘偽りは無い」
アルベルトの反撃は惚気たっぷりの説明である。
「今もその気持ちは変わらない。たとえ、世界中がセニャを悪く言おうとも俺はセニャの味方であり続ける」
くるりとセニャへ振り返る。
「ずっと一緒にいようセニャ」
きゃー、という黄色かったり一部野太かったりする歓声が、周囲から聞こえた。
「あのねぇ」
うっすら上気したセニャは色っぽく、しかし目は少し冷たい。
「口説くのも仲良くするのも時と場合ってものがあるのじゃないかしら」
アルベルトに対する愛情はあるし付き合いも深いが、色気のない状況で勢いで丸め込もうとされても困る。
「とにかく、悪役令嬢断罪舞台劇は……少なくとも今までの劇は上演を中止してもらいたい」
アルベルトは真剣だ。
マリリアも超真剣だ
「そんなことじゃセニャ先輩に嫌われちゃいますよー? 超美形皇子様が結婚したら多分愛妾とかもありになりますよね」
他の能力も高くはあるが、顔面性能は文字通り人類の頂点層に属すのがレイウェストである。
アルベルトは主君になんてことを反論しかけ、ふと不安になってセニャの顔を凝視した。
「私の主君でもあるけど幸が薄そうなのが苦手なのよ」
婚約者の言葉に安堵すべきか怒るべきか悩むアルベルトであった。
「セニャ嬢、何を遊んでおるのじゃ」
ベルク・オスマットの視線は冷たいを通り越して非常に切れ味が良さそうだ。
「治安維持って風説の流布工作員の捕縛摘発も仕事の内じゃろ? 代官の仕事でもあると思うが違うのか?」
机を囲む者にだけ聞こえる音量で伝える。
「まあ、そうね」
「先輩に捕まえられちゃう!」
疲れた元王国人とはしゃぐ王国人を横目で見ながら、ベルクは王国人作の小説を速読する。
登場人物の1人はセニャ本人の再現といえるほどだし、文化慣習情勢のいずれも現実感がありすぎる。
「……根も葉もある風説とは、実は王国の工作員ではなかろうな?」
「スカウトを断」
後輩が言い終える前にセニャが優しく拘束して黙らせる。
(この能力だけは一流どもめ)
離間の計の類にしか思えない怪文書に頭を抱えてベルクは内心舌打ちする。
芸人風のやりとりをしていてもこの2人のうち1人は現場指揮官型貴族兼高位授恵者、もう1人は就職すれば最低でも高級官吏な才人だ。
「まったく、今の帝国には人手が足りんのだ。特に裏の人間は希少なのだぞ? 扇動者と活動家を【事故死】させるのもコストが高いというに面倒な」
威圧には暴力も大きな音も必要ない。
緩急を使いこなす話術と、実行できる能力と実行する意思を相手に実感させることができれば十分だ。
マフィアが使うとしたら幹部級なそれを、ベルクは呼吸するかのように自然に使う。
「あははやだなぁ。冗談きついで……先輩これほんとの? え、このハーフビーストさん本職!?」
「ははは本職が冒険者をしとるわけがなかろー」
棒読みのベルクに、マリリアの表情が急激にひきつった。
「悪役令嬢改心からの善政を敷く領主へとか適当にプロパガンダも混ぜておけ。多少の制限は作家性に良い影響があるかもしれんぞ」
「えー」
これだけ脅されてもこういう態度だ。学園時代のセニャの苦労が容易に想像できた。
アウレーリア・フォン・ネーベルベルクは怪文書を読んでいるときも優雅だ。
(なーんで創作の心算で書いてるものに、際どい史実ネタ盛り込んじゃうのかしらね)
自身に全く無関係なら楽しめもするが発表されたのは帝国でネタにされたのは現役の帝国代官だ。
「過取材、エッセンスの入れ過ぎ、半端な野次馬根性で文筆家は多いと聞くけど?」
アウレーリアは少し揶揄する目でセニャを見る。
半端じゃありません! という態度の作者には目を向けずにセニャに面倒を見ろと態度で言っている。
(まぁ、私自身がセニャとどっこいどっこいの線だから『こういう路線』を野放しにして流行られると割と不都合なのよね)
今日の戦果を机の上に置く。
実用保存用布教用の全てを買ったとしても1種類当たりの数が非常に多い。
「本当にまずいのは穏便に回収済みよ。リクエストに応えてくれそうな人も多かったわね」
創作で食っていくなら太客やパトロンは必須なので、どこからどう見ても貴族らしいアウレーリアはパトロン的な意味で非常にもてた。
それはマリリアも同じだ。
セニャに対するような重さはないが、客としてのアウレーリアにはとても興味があるようだ。
しかもアウレーリアは薄い冊子についても詳しく、久々にドゥジンシ談義ができるマリリアは楽しそうだ。
(エンパシーを使うまでも……うーん、これはブロマンスの女性版よりややしっとりした……本人に自覚がないだけかしら)
なお、相手は好意の種類が本当に何かは気付いていない。
「そうね。分類するなら耽美系ドロドロ共依存百合ドゥジンシかしら」
アウレーリアの発言に、マリリアは強い感銘を受け瞳に妖しい光を灯らせた。
「ねえ」
「セニャ個人の尊厳を守るのは依頼に含まれていないし? 脱稿したら一冊頂戴ね」
会話を終えたアウレーリアは平然と、読書を楽しんでいた。
●創作の夜
局限の集中が食欲も外聞も時間経過も忘れさせる。
マリリアは頭がくらくらして腹がぐうぐうなっていることに、10連続の誤字をしてからようやく気付いた。
「すまないな。集中を途切れさせてしまったか」
灯りを持って来たレタラ・スマリが、薄れてゆく夕日を浴びながら申し訳なさそうにする。
自身もドゥジンシ作者であるレタラは、マリリアが今どんな状況と心情か正確に予測することができる。
「話の前に食うのだ」
道具も食材も何も持って来ていなくても、ストレガ・L・リベルガストラは高位授恵者なので当たり前のように料理の調達が可能だった。
レタラはマリリアが落ち着いたのを確認してから話し始める。
「マリリア嬢――推しを推したいように推す、そのパッションはオレも十二分に理解しているつもりだ。が、己の萌えを追求するあまりに推しを怒らせるようでは三流以下だな」
なんですと!? という反発心込みの反応があったがレタラは止まらない。
「そもそも三次元ドゥジンは本人凸御法度、セニャ嬢を怒らせては今後筆を折る事態にもなりかねんぞ」
レタラの意見は彼だけのものではない。
「ナマモノはモデルの迷惑にならないように作るべきなのだ」
人格と権利についての講義を持てそうなほど理解しているストレガだが、既に分かっていることを長々話すつもりはない。
「本人から抗議を受けたら作者は文句を言えないのだ。信用毀損・業務妨害・名誉毀損で処断されかねない事を忘れてはならない。今回は特にそんな相手なのだ」
帝国代官セニャだけでも問題だがレイウェスト皇子やメアリー王女まで実質登場させた物語だ。
彼等のお目こぼしが無くなれば、血の報復が法的および社会的に許されかねない。
「いかにセニャ殿が悪役然とした結果の自業自得だとしてもそれはそれとして本人と解る表現で貶めてはならないのだ」
セニャに関しては自業自得の部分ばかりなので、ストレガはそれほど熱心には擁護していない。
「……それはそうと、悪役令嬢というアイデア自体は良いな。オレからも一つアイデアを出して良いか? 元ネタであるメアリー王女は元より圧倒的な権力をお待ちだ。そんな周知の事実をそのまま扱うのではノンフィクションの域を出ない。創作に必要なのはエンタメ性だ。ここは破滅寸前の逆境に立たされた悪役令嬢が悲劇の運命を覆す為に行動し、最後に幸せを掴むサクセスストーリーに仕立て上げるのはどうだろうか」
レタラは言葉を連ねるほど熱意が籠もり滑舌が良くなり喋る速度も上がりテンションも高くなる。
「元より悪、ではなく悪役だから普通のことをさせるだけでも十分ギャップが出て面白い」
ふおお、とマリリアは奇声をあげてレタラの言葉にうなずく。
書きかけの原稿を脇に避けてそれまで以上の速度で新作を書き始めるほどだ。
「加えて悪格好良い姿も描写出来るぞ。己の性癖をエンタメ作品に昇華させるんだ」
レタラも盛り上がっている。
取材と文章しか書けないマリリアに協力して挿絵を担当している。
「あとは推しに迷惑を掛けない為、可能な限りモデルがバレないよう暈すのは勿論のこと、作品冒頭に『この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません』の一文を添えるのは、ナマモノドゥジンの基本だぞ」
レタラは最低限の仁義を教え込むこともしていた。
「率直に言って理解しているようには見えないのだ」
「それは……」
ストレガの言葉をレタラは否定できない。
「こういうときはこれなのだ」
どん、と紙芝居風ドゥジンシを取り出し広げる。
題は『悪役令嬢ものでよくわかるドゥジンの心得』。
ぼかしておけば『フィクションです。実際の人物・事件には一切関係ありません』で済む。
本人と解る形で貶められたら報復を受ける。
本人に献本し了承を受けた上で出すのであればOKというか受け取らざるを得ない状況に持ち込むか駄目なら潔く退く。
そんな内容が、訴えられた悪役令嬢の方が王子王女を逆に訴えて示談に持ち込む物語として語られている。
「セニャ先輩がモデル?」
「フィクションを多分に入れモデルを架空人物に仕立てるのだ。それをやるのが作者の腕の見せ所なのだ」
具体的には桃髪を黒に変えるのが一番だと思うのだ、と黒髪の悪役令嬢を指差して説明するストレガであった。
●
「これを売り出せないのは残念です……」
原本が完成しても写本や複製を考えると今回のまつりで売るのは不可能だ。
マリリアは会心の作を手に喜び半分無念半分の表情だ。
そこに現れたのがアルマ・ヴァレンタインである。
「わたしにいい考えがある!!」
普段ののんびりした口調とは違い、圧倒的な自信とそれ以上の勢いを感じさせる声だ。
残念ながら、制止したりツッコミを入れたりする者はここにはいなかった。
●
悪役令嬢断罪という概念が十分広まってようやく準備が整った。
「私は……」
断罪されるまでの記憶をもった悪役令嬢が物語の始まりで再び目を覚ます。
その後は良くある展開をなぞりつつも華麗に展開をひっくり返し人生あるいは世界の2周目っぽい追加要素に巻き込まれていく。
砂漠を舞台に砂虫を操るわるい部族を退治して財宝ゲット! な冒険譚。
前作では敵だったイケメンマッチョな侯爵サマ! とのラブロマンス!!
荒唐無稽なのに現実味が有り過ぎて観客が圧倒され熱狂している。
フィクション成分は主力であった冒険者の活躍を小さくしたりセニャの悪行をする前に冒険者が制止したのをなかったことにしたりだ。
役者達は主要人物の元ネタに直接会うことで役作りの完成度をそれまでの限界以上に向上させた。
主人公のセニャン役は凜とした中に儚さがあり、お相手役のアールベルトは騎士と貴族とホストの良い箇所を集めた感じになり女性にも男性にも特殊な嗜好持ちまで引きつける。
「許可をとれなくても微妙にずらしたネーミングだしフィクションだからセーフ……!」
アルマは後頭部に突き刺さるセニャの視線と困った顔をしているアルベルトに気付かないふりする。
そして原案マリリア、脚本アルマ&マリリアの劇が大盛況のまま幕を閉じる。
万雷の拍手を浴びた女優が涙ぐみ、元ネタが死んだ目で拍手していた。
「見事なのだ」
ストレガは実用書兼娯楽本を販売しながらうなずき、そわそわしている客に次の公演の時間を伝える。
「派手にやったな」
レタラは弟子の成長を喜ぶ顔で、セニャとアルベルトの間になんとか割り込もうとして割り込めない馬鹿を見守っている。
「フィクションとはいえタダでもアレなセニャさんの風評がさらにマズイことになるからねー……。これで上書きできたかなー……」
とりあえず、セニャに怒られる前に逃げようと思うアルマであった。
マスターコメント
ショートシナリオ易しい 報酬:標準7 / 4〜8人
2023年07月03日 10時41分19秒 公開
参加者
相談掲示板
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 ・・・さて、セニャとイベントを楽しむのは当然だが、マリリア・ウルフとやらにセニャを悪く言うドゥジンシを描くのを辞めるように「警告」するか。 あとは、劇を中止させるかな。
ドゥジンシ作家のレタラ・スマリと言う。宜しく頼む。 同好の士としてはドゥジンシを描くことを辞めさせるのは避けたいが、ネタ元が嫌がっているものを堂々と見せびらかすような真似は正直なところ如何なものかと思っている。ナマモノは本人凸御法度だ。 故に、せめてもう少し元ネタが分からないように暈せないか、……或いは元ネタの変更を提案してみようかと思う。 出来れば劇も中止という形ではなく、別の題目として昇華する方向で行けないものだろうか。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 とりあえず現実かつ帝国の代官を元ネタにやらかすのはやめるよう忠告するかね。 ただでさえ余力がないのに怪文書の摘発なんて無駄な労力はごめんこうむる。 発行元が【事故死】にあうのだって手間暇かかるんだぞ。
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 ナマモノは相手が嫌がることをしないのが前提なのだ。 他の作品に影響が出るので指導するのだ。
今回は依頼人ではないセニャよ。よろしくね。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー 桃髪悪役令嬢しりーず、売れてるんだ…セウト? 力業で発行差し止めかけるにしても拗れそうだし 文芸と絵画か未来に生きている(電波)あたり この頃はやりの~♪(ちょっと古い)悪役令嬢転生モノで ドゥジンシか舞台劇の台本でも書いてみるね 砂漠を舞台に大冒険とかイケメンマッチョさんと大恋愛! とかあるかもだけどフィクションなので…(メソラシー
キャスター、アウレーリアです。宜しく。 そうねぇ、放っておいても面白……じゃなくて使い道はありそうなのですけど。 現実問題として、政治的影響力を持っちゃってるのを野放図にしておくわけにもいけませんし。 かと言ってあまり露骨に弾圧すると、なまじ人気がある分、逆効果になったりして。 ……例えば、私だったらスピンオフや二次創作出すでしょうか。消すと増える。 ので、適当に方向修正しつつゆるく管理下に収める方針に賛成です。 ついでにこう、内容が政治に影響しなければ良いのですから……。 その情熱を、少し違うジャンルに振り分けて発散してもらうなどして。
No.8
リディリディです。 よろしくお願いします・・・。 改変はしてもらいたいですね。 フィクションの娯楽本のようですし、もう少しフィクション部分を多くしてもらうなどでしょうか。 ウルフさんに少しお話をしようかなと思っています。