【泥乱】大氾濫の記録
七海真砂
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シナリオID:3039
オープニング
一報を受けた大酋長アシムベートだったが、雲霞鳥を掃討しようとするマクシミリアンら近衛連隊の動きや、巫女イネスと共にあろうとする若手たちの動きを抑えきれず、板挟みに似た状況に陥っていた。
いずれにせよ、今アシムベートが自ら動くことはできない。
「雲霞鳥が各地で大量発生するような事になれば、おびただしく強化された雲霞鳥が四方八方から押し寄せることになる……これは一大事ですぞ」
近衛連隊が雲霞鳥の掃討に動くと言うが、彼らだけで対処できるものだろうか。
古老たちの間からは疑問視する声もあがる。
「グランドマザーまで目撃されているという。もしかしたら過去の『大氾濫』のような事態になるかもしれません」
「かつて『大氾濫』で滅びた集落の一つ、アルタールの村跡には、当時の記録が残っているはず。それを参考に対策を練っておいた方が良いのではありませんか?」
「うむ……」
雲霞鳥の大量発生は、かつて干魃と共に起こり、大規模な飢饉に見舞われ大きな被害が出たと歴史には記されている。今また同様の事態に陥れば、どれほどの被害が出るか分からない。
できる限りの対策をしておくべきだという古老の声は無視できないものだった。
「――で、また、私に?」
シャレム・ダライ=カホールの元に届いた手紙には、アルタールの村跡まで当時の記録を取りに行って欲しい、と頼む大酋長アシムベートからの言葉が丁寧に書き記されていた。
アルタールの村跡は、今は雲霞鳥の巣と化している。ここでも雲霞鳥が大量発生しているなら、記録を取りに行って戻って来るだけの行動であっても、相応の危険を伴うだろう。
――それでも。何とか頼めないだろうか、と。
「……本当に苦労していらっしゃいますのね……」
身近な者に頼める状況ではない、という所に、今のアシムベートの微妙な立場と苦労が伺えて、シャレムは慮るように小さく溜息をつくと、すぐに承諾の返事をするのだった。
解説
マスターより
リプレイ
「ええ。皆様、どうぞよろしくお願いいたしますわ」
ゲルダ・クラインの言葉に、シャレム・ダライ=カホールは改めて頭を下げた。
一行は、雲霞鳥の動きが鈍るであろう夜に作戦を決行するため、アルタールの村跡付近まで移動すると、日が暮れるのを待つことにする。
「一度、母様を連れて偵察をと思ったのですが……」
「雲霞鳥に気付かれずに行くのは大変そうですから、止めておいた方が良いかもしれませんわね……」
本当は、予め記録のある場所にあたりをつけたかったレイヤ・ダライ=カホールだが、シャレムの言葉に頷き返す。作戦決行の前に雲霞鳥を刺激してしまっては、肝心な記録の回収に支障が出てしまうかもしれない。
トーラが宗波を使い、雲霞鳥の少ない方角を探って、そちら側に待機する程度に留めておく。
「雲霞鳥の数自体も、決して少ないとは言えませんか……」
やはり大量発生の予兆なのだろうかと、レイヤは考える。
(雲霞鳥の大量発生は、干魃で食べ物がなくなったせいだと思い込んでたんですけど、今のところ、干魃の兆候はないような気がします)
ディズル大湿地帯で干魃が起こっているという話は聞かない。特に相互関係は無いのだろうか?
(むしろ、雲霞鳥の特異個体がたくさんいるのが異常なような……順序が逆?)
だとしたら、既にまずい事になっているのかもしれない。今回の記録の回収を通じて、そうした状況の見極めもできれば、とレイヤは思う。
一方、最近の状況に、何か作為のようなものを感じてたまらないのはトーラだった。
(帝国近衛連隊の方は信用して良いのでしょうか?)
シグモル火山帯で、皇帝ヨゼフが火生の神ボルガニスクの力を奪おうとしたように、泥血啜る月吸蟲の力を我が物にしようとしている可能性もあるのでは、とつい考えてしまう。
(……でも、本気で協力しようとしているのなら? 月吸蟲の討伐はレイヤさん達の悲願でもありますし……?)
考えれば考えるほど、裏がありそうで、でも信じて良いのかもという気持ちも芽生えて、頭がぐるぐるとしてしまう。とにかく、今は依頼に専念しようと、トーラは思考を振り払ってアルタールの村跡を見る。そろそろ、日が暮れ始めようとしていた。
「では、そろそろ……?」
「はい、行きましょう」
ミゼリア・L・ステュクスとゲルダは頷き合うと、雲霞鳥を惹きつける陽動として動き始めた。
ゲルダは記録があるという高台付近へ近付きながら、潜入経路上にある巣を見据える。竜骨の強弓を構えると、敵の意識を惹きつけるべく一本の矢を放つ。矢に驚いた雲霞鳥達が鳴き、その声を聴いて逃げるように散る一方で、何羽かの雲霞鳥が飛んで来る。
「援護します。啄め、『ヘイズ』!」
迫る雲霞鳥に向けて、レイヤが光でできた小さな鳥の群れを飛ばす。傷付いた雲霞鳥が落ちていく一方、縄張りに入り込んだ敵を追い払おうとしたのか、また更に別の雲霞鳥が迫る様子をミゼリアは冷静に判断する。
(一羽、速い雲霞鳥がいますね……あれが高速個体、でしょうか?)
それならば、こちらへしっかり惹きつけておかなければと念じた瞬間、ミゼリアの瞳が蠱惑の輝きを放つ。甘美な香りは雲霞鳥をもしっかりと魅了し、ミゼリアの元へと引き寄せていく。
くちばしの一撃をしっかりと受け止めるミゼリアの後ろから、ゲルダが再び矢を放つ。
「囲まれないように、敵が増えすぎないように、上手く相手をしましょう」
雲霞鳥の動きを確認しながら位置取りを工夫し、雲霞鳥が強化されすぎないよう適度に仕留めるよう意識する。レイヤは頷いて、再び光でできた小さな鳥の群れを放って雲霞鳥に群がらせていく。
(トーラさんなら物の確保は心配ないはずです! こっちも頑張ります!)
今頃、そっと動き出しているであろうトーラのことを考えつつ、レイヤは気合を入れる。
そのトーラは、物陰に隠れるようにしながら征竜の祠へ近付こうとしていた。
ゲルダ達が一時的に雲霞鳥を散らした巣の脇を通り、更に先へ。できるだけ巣の見当たらないルートを辿るようにしながら高台を進んでいく。
(この先は――気付かれずに行けるでしょうか……)
だが雲霞鳥が全くいない訳ではない。木の陰から草の陰へと、できるだけ身を隠しながらトーラは進み続ける。
幸いにも、雲霞鳥はゲルダ達の陽動での騒ぎに意識が向いているらしく、トーラの方を向くものは少ない。かすかな物音に気付いて振り返った雲霞鳥も、姿を隠しているトーラのことはなかなか見つけられないようだった。
無事、祠まで辿り着き、小さく息を吐き出すと、一礼してから祠の中へ入る。
(記録は……)
祠の中を見回してトーラは歩く。脳裏に蘇るのはレイヤの言葉だ。
「ディズルは湿気が多いので、書とかを無事に残すのには工夫がいるのです」
おそらく、このような形で保存されているはず……と、レイヤやシャレムから聞いた話を元に記録を探す。朽ち果てた戸棚を乗り越えて、見つけたのは陶器で出来た書類ケース。
(ありました……!)
軽く目を通すと、確かに雲霞鳥の大量発生について記されている。トーラはそれをしっかりバックパックの中に詰めると、来た道を引き返す。
「あれが大型個体ですか……ミゼリアさん!」
「はい……わたしが、惹きつけます」
弓を構えたゲルダの言葉に、ミゼリアが応じる。飛来してくる雲霞鳥の中に一羽巨大な雲霞鳥がおり、辺りは広範囲に渡って薄い靄に包まれている。
ミゼリアが迫り来る雲霞鳥を受け止める盾になるが、攻撃の威力が先程よりも増しているように感じる。漆黒のエーテルと共に、その傷から自己を再生していくと、大型個体を惹きつけるべく更に動く。
「焼き払います!」
レイヤは巨大な炎弾を放つと、雲霞鳥たちの間で炸裂させて、爆風と共に爆炎で薙ぎ払う。すかさずゲルダはエーテルを収束させ、破壊力の増した矢を爆発的に鋭く射出する。
そうして雲霞鳥を倒していくものの、騒ぎに気付いて集まって来た雲霞鳥たちの相乗効果で個々の雲霞鳥が強化されていく。ミゼリアは、漆黒のエーテルを纏って瞬間的に防護の力を増大させるものの、その衝撃に黒いエーテルが大きく飛び散る。
「――ですが」
この厄介な大型個体は、できれば倒しておきたい。ミゼリアは漆黒の処刑剣を振り下ろし、大型個体に一撃を叩き込んだ。
ゲルダも再び破壊力の増した矢を射かけ、大型個体を貫く。そこへ、
「お待たせしました!」
瞬間的に加速しながら駆け抜けたトーラが戻って来る。それを見たレイヤはウェパル=レイを召喚すると、雲霞鳥たちの足止めに動く。
「この大型個体だけ仕留めてしまいましょう」
撤収の前に、と呼びかけるゲルダの声に、ミゼリアも頷き処刑剣を繰り出す。連続しての攻撃に深く傷付き泣き声をあげる大型個体に、ゲルダがとどめの一撃となる矢を放った。
「殿は、わたしが。……行ってください」
「ありがとうございます。三つ数えたら閃光塗弾、いきます!」
飛んで来る雲霞鳥を引き受けるミゼリアの言葉に、レイヤは閃光塗弾を取り出す。
(命あってのケーキ! 出し惜しみは無しです!)
使える物は何でも使って撤退すると、レイヤがピンを抜く。皆が直撃を受けないよう、タイミングを合わせて目を閉じる中、カッと閃光が迸る。
その中を、一行は駆け抜けた。目潰しをされた状態の雲霞鳥たちは動きが鈍り、追跡してくる様子は無い。そのまま、雲霞鳥を一気に振り切った。
「無事に回収できましたのね、ありがとうございます」
少し離れた場所で待機していたシャレムは、戻って来た四人を見てホッとした表情を覗かせた。トーラが持ち帰った記録の束を見て、そっと礼を言う。
「今戦った雲霞鳥についての記録もつけておきましょう」
何かの役に立つかもしれないと、ゲルダは羽根ペンを握る。それならばとミゼリアも、高速個体や大型個体を惹きつけた際の感触や、負ったダメージについてなどを語り、一緒に記録して貰う。
それらを携え、一行はギジュム族の集落までそれを届けに行く。出迎えたリザードマンの古老は、丁寧にそれを受け取ると、早速記述されている内容を確認していった。
「いかがでしょう? お役に立ちそうですか?」
「そうだのう……」
記録の内容は、大量発生した雲霞鳥の襲来と戦いの記録から始まり、やがて、その原因を調査した折の報告へと差し掛かる。
「ふむ……どうやら、雲霞鳥の大氾濫には、雲霞鳥の特異個体が関わっていたようだの」
グランドマザーと呼ばれる特異個体によって雲霞鳥が大量発生したことや、高速個体や大型個体といった特異個体の数が増えたことで、より凶悪さを増した雲霞鳥の群れが押し寄せたことなどが書かれているようだ。
「それでは……」
「うむ。今の状況は大氾濫の予兆と捉えて良かろうな」
特異個体の出現はこれまでにも報告があり、今回の陽動の折にも特異個体は目撃されている。無関係は無いだろう、というのがリザードマンの古老による判断の用だった。
更に、記録を確認した古老は言う。
「『泥血啜る月吸蟲』とのことも書かれているな」
大型級のクリーパー、泥血啜る月吸蟲。この泥血啜る月吸蟲が撒き散らしている毒は、群れで強化された雲霞鳥にも効果的であった事が記録には書かれていた。
たとえば、雲霞鳥の群れを泥血啜る月吸蟲の元へ誘導し、その毒によって雲霞鳥を葬る――などといった作戦が取られ、雲霞鳥を撃退していったことが記載されている。
「大酋長さんにも、お伝えした方が良さそうですわね」
「うむ。早速アシムベート殿へも報告しよう」
リザードマンの古老は頷いて、アシムベートの元へ報告に向かう。
「私達は、一度戻りましょう。雲霞鳥を討伐するにしても準備が必要ですわ」
シャレムの言葉に促され、一行はギジュム族の集落から引き上げるのだった。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準4 / 4〜6人
2023年07月02日 22時54分21秒 公開
相談掲示板
シーフのトーラです。 よろしくお願いします! 雲霞鳥の巣を避けて過去の記録を持ってくることになりますけど、雲霞鳥の活動が鈍る時間や条件の時にこっそり探しに行くのはどうでしょうか? 通常の鳥なら夜ですけれど、その辺りはシャレムさんに聞いてみましょう。 とりあえず暗視は持っていくつもりです。
ウォーリアの、ミゼリア…です。 よろしく、おねがいします…ね。 鳥目…でしたっけ…?? 普通の鳥さんは、夜には、あまり、目が見えない…のですよね。 暗視があれば、暗くても、わたしたちは、探索に、もんだいはないですし… じかんやじょうけんを、あらかじめきいておくのは…きっと、良い手だと…思い、ます。 個人行動としては…あまり、調べたりは、得意ではないので…「凌ぎながら」の部分で、お役に立てたらな…と。 なるべく、見つからないようには、がんばりますが…主には、見つかってしまった時の、壁役の動きができれば…と、思って…います。
キャスターのレイヤです! よろしくお願いしますね。 アルタールの村跡にも特異個体がいるかもなんですね。 思ってたよりも雲霞鳥は浸透していそうです。恐ろしい。 夜に仕掛けるの、悪くないと思いますけど 母様…シャレムさんは、私たちほど夜目が利かないかもです。 危険は伴いますけど…一度日中に偵察して 記録がありそうな場所のあたりをつけてから、 夜中に改めて取りに行くのも手かもしれません。 デメリットもあると思うので相談次第ですが…。 どちらにしても取りに行くときには陽動とか、 派手に攻撃して引き付けてからこっそり行くと手に入れやすいかもですね。
成立まであと一人ですね! 鳥目といって夜に視力が極端に悪くなるのは実はごく一部で、ほとんどの鳥は夜でもある程度の目は見えるそうです。夜に狩りをする鳥は夜目も利きますし。 どちらかというと眠っている時に忍び込むイメージですね。 昼に偵察、夜(雲霞鳥が休んでいるとき?)に忍び込むのでも大丈夫ですけど、陽動も行うならわたしは潜入の方になりますね。
ぎりぎりの参加ですみません。ウォーリアのゲルダです。よろしくお願いしますね。 昼に偵察、夜に忍び込む――という方針で問題ないかなと思います。 ですが、神材装備を揃えた結果、その、隠蔽値が凄いことになってしまいまして……偵察ではあまりお役に立てないかもです。 その代わり、夜に忍び込む際の陽動でしたら対応可能かなと思います! がんばって陽動しますねっ
成立ですね。 皆さん改めてよろしくお願いします! それでは隠蔽スキルも持って、見付からないように忍び込んで来ますね。 それと暗視で汎用のスキルが埋まるのでテレパス等は持っていけませんけれど、単独行動で連絡を取る手段がないのも不安なので何か合図を決めましょうか? 魔矢を上に射ったら緊急事態とか、エンライトの光を遮ってその回数で状況を伝えるとか……? もしくは、エーテルイミテイトでテレパスを模倣させて貰うとかでしょうか?
おぉ、成立しましたね! 正直難しいかと思っていました!ディズルのためにありがとうございます! それじゃあわたしは昼間に偵察してから陽動のほうに回ります ゲルダさんの援護に回ります、撤退の支援もお任せください! >合図 そうですね、確保したときとか不味いときとか何か光で合図とかあるといいかもです。 夜間だと遠くからでもわかるかも。閃光塗弾とか投げるのもいいかもですね。
では、離れたところから分かりやすいよう魔矢の光で合図を取る事にしますね。 打ち上げる角度が高いほど危険とうことで。 それと、資料探しには看破も必要かなと思うので、暗視をエーテルイミテイトさせて貰って看破と隠蔽で行こうと思います。