【青玉】辺獄の猟犬
コースケ
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シナリオID:2996
オープニング
「やはり蛻の殻か……!」
メドゥの指先幹部、緑の小指:レムナントによる襲撃事件を受け、神徒は緑の小指の拠点を捜索し、辺獄内にある拠点を突き止めたのだが、発見した時には拠点は無人であり、証拠隠滅の為か内部は破壊されさ様々な機材の残骸と、殆どが燃えて解読が困難な紙が散乱していた。
「緑の小指はここで何をやっていたのでしょうか?」
「何を企んでいたにしても、録でも無い事だろう。ボルカニスク神の眠るシグモルの地で勝手はさせぬ」
そこへ、別の神徒が慌てて駆け込んでくる。
「大変だ! 奥からクリーパーが押し寄せて来る! 凄い数だ。我々では太刀打ち出来ない!!」
「……くっ! 仕方ない。撤退するぞ!」
手近な品だけでも証拠として持ち出し、神徒達は辺獄を撤退する。
拠点を離れた神徒達が振り返って目にしたのは、多数のクリーパーが殺到し、拠点を埋め尽くす光景だった。
●猟犬と魔獣使いと神徒と
辺獄の入口から離れた山岳地帯に、アーマーハウンドの特異個体:サピラと、魔獣使いのディアナ・ローロシェーナスが滞在していた。
「あれだけの大怪我だったのに、すっかり治ってら。元気になって良かったな?」
『グル……』
ディアナの元弟子である、何でも屋のオッターが声をかけて触れようとするが、サピラはその手を避けて後退する。
「お前、触られるの嫌なのか?」
「サピラはお前を傷付けるのが恐いんだよ。……この前の襲撃で暴走して、一般人に被害が出たことを気に病んでるんだ」
「でも、あれは緑の小指がやったことだろ? なんでサピラが……?」
ディアナの言葉に疑問を返すオッターだったが、返ってきたのは物分かりが悪い元弟子への落胆を含んだ言葉だった。
「サピラはお前が思ってるよりずっと頭が良い。直接ではなくとも、自分がその結果を招いた事を理解してるよ」
「マジか……。しかし、どうすんだよ? サピラの処分は決まって無いんだろ?」
その言葉にディアナは渋面になる。
いざという時には殺してでも止めるという約束で、サピラを辺獄入口の門番にしようとここまで連れてきたのだが、サピラの暴走を許してしまい、一般人と神徒が死傷してしまったのだ。
しかも、サピラの暴走は緑の小指によって奪われたディアナの魔獣術によって行われたため、責任の一端はディアナにもある。再度襲撃を受けた場合に不覚を取るつもりは無いが、それを言っても神徒は納得しないだろう。
「魔獣支配も奪われたままなんだろ? 同じことが起きないようここらで覚悟決めるべきじゃないか?」
「フン、お前に説教されるとはヤキが回ったもんだね。けど、サピラは生きたがってる。緑の小指からの支配も外れた今、私がそれを絶つ訳にはいかないね。それに、シグモル火山帯を出れば神徒と緑の小指の争いに巻き込まれる事は無いだろう?」
言外にサピラの処分を示すオッターを睨み付け、ディアナは火山帯を出てでもサピラを生存させるつもりであると宣言する。
そこへ、良く通る声が割り込んだ。
「そういう訳にはいきません、暴走した事実がある以上、サピラをシグモルの外に出す事は許されません」
「マグダリア……!」
現れた老年の神徒マグダリアに、ディアナは警戒の視線を向ける。
「本日は神徒の決定を伝えに参りました。サピラは辺獄への追放とします」
「……追放? 殺処分を言い渡されるかと思ってたけど、どういうつもりだい?」
警戒を解かないディアナに、マグダリアは理由を説明するため口を開いた。
「あの時狙われたのは私であり、他の神徒へ指示を出し、その上で緑の小指を止められ無かったのですから責を負うのは私です」
「……そうかい」
マグダリアの瞳に悔悟の色を見たディアナは、納得し肩の力を抜く。
「あなたには、申し訳ない事をしますね。……ですが、ああいう事が起きた以上、あなたを自由にする訳にはいかないのです」
『グル……』
伸ばされたマグダリアの手を、先ほどとは違い受け入れたサピラは、肯定するかの様に喉を鳴らした。
●緑の小指
「……チッ、予想以上に重い術だ」
火山帯の端の街にある酒場の隅で、緑の小指:レムナントは酒を呷りながら独りごちる。
魔獣使いから奪った魔獣支配の術は、レムナントの収奪出来る許容量を圧迫し、他のスキルを奪う余裕を無くしていた。実際、先日冒険者から奪った痛覚遮断は、レムナントのものとは出来ず元の冒険者へ戻って居るだろう。
一時的になら奪えても、自身のものとするには今までに収奪した術を失うか、自身の許容量を増やす必要がある。
「くそ面白くねぇ。おい、酒が足らん! 樽で寄越せ!!」
酔えれば何でも良いと持ってこさせた酒も、ドワーフ王国で作られる蒸溜酒と比べものにならないほど酒精が弱く、それが余計にレムナントを苛立たせていた。
解説
マスターより
リプレイ
「お気を付けて……!」
辺獄の入口を守護する神徒に見送られた冒険者とマグダリア、ディアナの一行は、サピラを伴って辺獄を進んで行く。
Alexandra・Hexe・Claudiaの持つランタンに照らされた地下空洞内は暗く、歩みに合わせて揺れる光に岩影が不気味に歪むが、僅かな物音を捉える耳と温度を視覚化する目を持つナタリア・フィッツジェラルドと、サピラ自身の鋭い感覚による警戒のお陰で奇襲を受けることもなく、遭遇した魔物を退けながら奥を目指す。
「この辺りで一旦休憩しましょうか」
進んだ先に岩の窪みを見付け、周囲に危険がない事を確認したマグダリアの声に一同は荷物を下ろし、思い思いに休憩を取る。そんな中、ナタリアがマグダリアへ頭を下げた。
「悲劇の責はマグダリア様にあると仰いましたが、同時にそれは戦う為の術がありながらも悲劇を止める事の出来なかった私達にもある事……」
ナタリアはそこまで言うとAlexandraとサピラに目をやり、言葉を続ける。
「友人の事もあります。マグダリア様の温情に、改めて感謝せねばなりません」
マグダリアはナタリアの言葉に黙して耳を傾けていたが、再び頭を下げようとするナタリアへ声をかける。
「その感謝は私には勿体ないものですが、お気持ちは大変嬉しく思います。ですが、貴女がたは全力で被害を抑えるために行動し、サピラを止め襲撃者を退けて頂きました。貴女がたが居なければ、私を含めて多くの者が命を落としていたのは間違いなく、感謝こそすれ責を負う必要はありません」
「しかし、撃退に参加したのはマグダリア様も同じ筈」
「そうだとしても、あの場で責を負うべきは、守るべきシグモルの民を守れなかった私なのです」
納得していない様子のナタリアに、マグダリアは諭すように声をかけた。
「それに、責を引き受けるのも年長者の務めです。貴女はどうかあの事に囚われる事なく、今後もより良き結果を得られるよう精進下さい」
「――結局、貴方は一体何がしたいのか」
ナタリアがマグダリアと話していたのとは別の場所で、Alexandraがディアナを問い質していた。
「……どういう意味だい?」
問い返すディアナに、Alexandraは緑の小指襲撃時と先日のマグダリアとの会話の矛盾を突きつける。
「貴方はあの時、最低二度は彼を殺す事が出来た筈です」
緑の小指の所へ駆けつける時、ディアナは相棒をサピラの影から呼び出した。その気になれば、いつでもサピラの命を奪えていたに違いない。
「その癖、止めに頓着して最善の模索を遮り。後になって『生きたがってる』とはどの口が言うのか……!!」
「…………」
「勝手な解釈と憤るくらいならわからせて。私だって、また身内を敵だなどと思いたくない!」
ディアナは黙っている。だが、洞察に長けたAlexandraの目は、その内心が揺れていることを読み取っていた。
やがてディアナは諦めたように息を吐くと、傍らの岩に腰掛けてがしがしと頭を掻く。
「はあ。……まあ、約束だとかサピラが脅威だとか建前を抜きにすれば、私だってサピラを殺したく無いんだよ。だから、状況を見てつい決意が鈍り、問題を先送りにしたのさ」
「…………」
ディアナのばつの悪そうな様子に嘘は見えない。だからこそ、Alexandraは込み上げてくる言葉を押さえきれない。
「……それなら言ってくれれば良かった」
Alexandraはそれだけ言うと、背を向けて歩き去る。
「……失望させちまったね」
その背を見送るディアナの苦い呟きは、誰の耳にも届かず暗闇に溶けた。
●障害
「あそこの中型クリーパーの他にも、中に何体か居るみてーだな。……どうする?」
「姿が見えないのが厄介ですね。中型を避けて中に潜入したとして、正体が分からない相手にどう対処するか……」
「私、も……、こっそり、は……得意、では無い、ので……」
エーテルの波動で索敵と内部を探ったハヤト=ガラン=ヴォルファングが仲間に声をかけると、同様にエーテルの波動で内部を探っていたキリアン・フィッツジェラルドとエルが隠密行動に難色を示した。
「クリーパーを排除してから探索するので良いでしょう。下手に人数を分けるより、固まって行動した方が事故も起きにくいでしょうから」
グレイブ・ヤードの言葉により、一同は拠点に頭を突っ込んでいる石塊の様な中型クリーパーから排除にかかる。
「我らに加護を!」
神徒からの加護を受け、身体から蒼炎のごとき燐光を引いて冒険者達が動く。中でもハヤトの動きは群を抜いて速く、瞬間的に加速して一息にクリーパーへ迫ると、天狼の蹴甲を履いた右足で蹴り上げる!
「うるぁっ! 石ころになるまで砕いてやんよ!」
蹴撃の衝撃にクリーパーが頭部らしき部位を向けるが、ハヤトの姿はそこに無く、死角から襲った双神刀 紅狗璃により、更に二筋の傷を刻む。
かなりの強度を持つクリーパーの外皮だったが、ハヤトの連撃はそれを上回る威力でダメージを与えていた。
「暴れて拠点に被害が出ないよう、迅速に排除しましょう」
「お手伝い、します……!」
キリアンが岩陰から放った矢は、弧を描いて飛ぶと遮蔽を無視してクリーパーに付き刺さる。続けてエルの放った矢に込められたエーテルは抵抗されるも、共に竜骨の魔弓から放たれた矢はクリーパーの硬い外皮を物ともせずダメージを与えていた。
「見た目通り硬いようですが、やはり魔法には弱いようですね」
グレイブは無銘祭祀刀の攻撃を魔法攻撃で行い、外皮を砕いて急所となる場所を探るが、そこでクリーパーの外皮が急激に膨張する。
「……っ!?」
「グレイブさん、離れてっ!」
キリアンの声に咄嗟にグレイブは竜鱗の盾を構え急所を庇うが、直後にクリーパーの外皮が爆ぜ、周囲に無数の礫を撒き散らした!
飛礫はグレイブだけでなく、後方のエルや神徒達まで巻き込んで多大な被害を与える。
「おいおい、どんだけ飛ばすんだよ」
「流石は中型といったところですね……」
その並外れた身のこなしで無数の飛礫を全て躱したハヤトと、岩陰に身を隠していた為に難を逃れたキリアンは無事だったが、他の者は神徒が癒しを施しても尚、負傷が残っている。
「続けての発射は出来ないようですが、暫くすれば次が来ます。長期戦は不利ですから攻撃を集中させましょう」
「分かり、ました……!」
神徒の癒しにより気絶を免れたグレイブとエルは、自らの傷を癒すより攻撃を優先し、ハヤトとキリアンもそれに続く。
「速攻でカタ着けんぞ!」
「体表の温度が急激に上がっています! おそらくあと十数秒で先程の攻撃が来るので備えて下さい!」
キリアンの指摘に神徒達も攻撃に加わる。先程の攻撃を何度も受けては回復が追い付かないばかりか、拠点への損壊も無視できない。
それらを避けるためにも、迅速な排除が必要であると判断し、一同はクリーパーと対峙するのだった。
●緑の小指
目の前でメドゥの指先幹部が酒を呷っている。
それは全くの偶然だった。酒場を訪れたシグモルの神徒ロゼットと、何でも屋のオッターにとってレムナントは因縁の相手だったが、まさかこんなところで出会うとは思っていない。
(どうするよ?)
(刺激するのは危険だわ)
目で問うオッターに、ロゼットは手出しをすべきでないと判断し首を振る。
もし戦闘になった場合、レムナントが周囲を巻き込む事に頓着しないことを先日の事件で思い知らされたからだ。
(オッター、いざという時は時間を稼ぐから住人を逃がして)
(分かった。気を付けてくれよ)
ロゼットはオッターに頷くと、レムナントの座るテーブルの横に立ち、その上に蒸留酒の入った陶器の瓶をドン、と置く。
「……何のつもりだ?」
「貴方が安酒に悪酔いして、酒場で暴れ出さないための監視よ」
訝しげに自分を見上げるレムナントの隻眼を、ロゼットは険の滲む目で睨み返した。
「……フン」
レムナントはロゼットの出した蒸留酒に手を伸ばし、栓を抜くとそのまま口を付ける。
ロゼットの態度に気を悪くした様子は無く、渡された酒を無警戒に流し込む様子を見ると、神徒であるロゼットのことを敵、いや脅威だと認識していない様子であった。
戦闘になり周囲に被害が出るよりは良いが、シグモルの地を荒らすテロリストにそういう態度を取られるのも面白くない。
(このメドゥの指先幹部について知る必要があるわね)
レムナントへの怒りもあったが、自身の未熟さが先日の犠牲者を出したと考えるロゼットは、再び悲劇を起こさないためにもと口を開く。
「『隻眼の鬼匠』、経歴は聞かせてもらったわ。仮にも王候補になった人が、何故メドゥの指先に組しているの」
「…………」
隻眼の鬼匠という過去の称号に反応して隻眼がロゼットを睨むが、今は暴れる程の刺激にはならないと判断したロゼットは言葉を続ける。
「あの戦斧を作れる腕なら道を外れる必要もなかったでしょうに。お酒の代金分くらいの話は、聞かせてもらっても良いでしょう?」
「……神徒の女。お前はいま満足か?」
「え?」
不意の問いの意図が読めず言葉を返すロゼットに、レムナントは値踏みする様に目を向け口を開く。
「神の教えに従い、冒険者として人を助け感謝され、不満な事もあろうが概ね日々に満足している、といった所か」
「どういうこと?」
その不満の筆頭に言われ、目に険を宿すロゼットを無視してレムナントは言葉を続ける。
「俺にはそれが理解出来ん。どんな刃を鍛え、他人から称えられようが俺には満たされるという感覚が湧か無かった」
酔っているのか、それとも気紛れか。レムナントはぐびり、と蒸留酒で喉を濡らして己について語る。
「ある時、出会った人物に俺には満足感が欠落していると指摘されてやっと腑に落ちた」
「その、欠落を指摘した人って……?」
「首領だ」
「首領!? メドゥの指先の首領のこと?」
驚くロゼットに頷き、レムナントは昔を思い出すように視線を上にやる。
「もう百年は前の話だ」
「……首領が貴方の欠落を埋めたから、メドゥの指先に入ったの?」
ロゼットの問いに、レムナントは鼻を鳴らす。
「ハハッ!? 首領はそんな事はせん。ただ、事実を突き付けただけだ。俺が指先に入ったのは、あのままでは燻るだけと分かったからだ」
「そんな! だからって、テロリストに身を落とすことは無いでしょう?」
「お前には分からんさ」
レムナントの赤い瞳には、拒絶の色が浮かんでいた。何を言われようと、この男が行動を変える気は無いことを察し、ロゼットは歯噛みする。
ドン、と空になった陶器瓶をテーブルに起き、レムナントが立ち上がった。
「俺はやりたい様にやる。お前等は一番大事なものを俺に奪われんよう、精々大事にする事だ」
「ちょっと!?」
ロゼットの静止も聞かず、レムナントは店を出て行く。それを見送るオッターと酒場の店主が脱力するのを見て追跡を断念し、ロゼットはレムナントの背中を睨むのだった。
●拠点
「後はお任せします……っ!」
「引き受けました」
外皮を爆ぜさせた中型クリーパーの飛礫からグレイブを庇い、神徒が意識を失う。
「ハッ! そんなんじゃ掠りもしねーよ!!」
ハヤトは避け損なえば一撃で意識が飛ぶ攻撃の中、犬歯を剥き出しながらクリーパーの懐に飛び込むとその胴を脚甲で抉り、両の双神刀を振り抜き三つの傷を与える!
「今です!」
「ありがとう、ござい、ます」
「外皮が爆ぜた後は守りが弱くなるようです。そこを狙いましょう!」
神徒が張った光の六角柱で飛礫を凌いだエルとキリアンは、神徒が六角柱を解除すると同時に矢を放つ!
エルの矢は正確にクリーパーの外皮の弱点を貫き、キリアンの矢は着弾点から衝撃波を放ち、そのほぼ全てをクリーパーの体内に伝えた!
「漸く急所を出しましたか。ならば後は打つのみです」
身悶えするように身体を揺らすクリーパーに向かい、グレイブは無銘祭祀刀を持つ腕に周囲のエーテルを集めると、収束し加速させて打ち込んだ!!
急所に攻撃を受けたクリーパーはその巨体を維持出来ず、ガラガラと身体を崩落させ次第に塵のように崩れさってゆく。
クリーパーを討伐した一行は一帯の調査を開始する。拠点の中には小型のクリーパーが潜んでいたが、索敵能力に優れるハヤトとエル、キリアンにより発見され苦労無く退治されていた。
「よく、分かりません、でした……」
エルはクリーパー避けの仕掛けが気になり、それを調べに向かっていたが、クリーパーが来た方向には大きな穴が開いており、それが物理的なものか魔法的なものかを調べる事は出来なかった。
時間をかければ何か見つかるかもしれなかったが、捜波に複数の反応があったため危険と判断し引き返して来たのだ。
「こちらも損壊とクリーパーに荒らされて、残っているのはこれくらいですね」
「俺もだ。クリーパーの野郎、エーテルを含むなら石でも何でも食い荒らしてやがる」
エーテルの波動で構造を把握し、隠されたものを見付け出す術に長けたキリアンとハヤトだったが、その二人でも僅かなメモの切れ端を見付けるに止まっていた。
「自ら拠点を放棄した以上、恐らく重要なものは残っていないでしょうね。それでもこの場所に拠点を置いた理由は何かしらあると思います」
「なるほど。この場所そのものが手懸かりという事ですね」
キリアンの言葉にグレイブが頷く。
「態々クリーパーを遠ざける仕掛けさえ施すくらいですよ? 何かしら理由があると考えるのが自然です」
「ただ隠れて何かやるのに都合が良かったんじゃねえの? 帝国過激派みたいによ」
「それでも、この地でやる必要があったのでは無いでしょうか。メドゥの指先が神を求めているのは聞きますが、彼自身は神に何を求めているんでしょうね?」
「神に、求める……?」
エルの呟きが拠点に響く。だが、その答えは未だ見付からなかった。
●別離と決意
サピラを連れた一行は、辺獄の奥に泉を発見していた。地熱により温度の高い辺獄だが、その場所は比較的温度も低く過ごしやすい。
後から合流したエルが泉に潜む魔獣などが居ないことを確認し、ナタリアが足跡など生物の痕跡を確認する。
「ここなら、サピラさん、も、住めるのでは、ない、でしょうか」
「水を飲みに獲物も現れるだろうし、餌場としても申し分なかろう」
『グルル……』
喉を鳴らすサピラに触れ交感するAlexandraには、サピラもここを気に入った様子が伝わって来る。
「ここで、――お別れです」
Alexandraが別れを告げると、サピラから寂しさの感情が伝わって来る。だが、それと共に別れを受け入れる意思も感じられた。
「理解しているのですね。――私はね、また外であなたと過ごしたいと思ってる。あの時の……その背に乗って駆けた感触が忘れられなくて」
サピラからも、あの体験がかけがえのないものだという気持ちが伝わって来る。
「正直に言うと私、とても怖く感じたけれど……身体中を切り抜ける風は気持ちよかったし。楽しかったの」
『クゥン』
サピラが鼻を鳴らし、Alexandraへ頭を擦り付ける。Alexandraはその頭を抱き、決意を口にした。
「……それができる世界にしてみせる。悪党を残らず裁いて、お互い憂いがなくなるように……そのための冒険者でもあるから」
寄り添うAlexandraとサピラを、エルとナタリアが見守っていた。
「サピラさん、ごめんさい……。外、に、いられなく、て……」
「これが最後の接触となるかもしれないが、自然の摂理でも無い限りは今生の別れではない筈」
「はい。会いに、来れる、よう、に、地図を、書く、つもり、です」
「私も愚弟も真相究明の為に尽力する……サピラとの再会と、再び日の下で体を動かせる事を信じてというのは楽観視が過ぎるかもだが」
「その時は私も呼んでくれ。奪われた魔獣支配でアレが悪さするのは目覚めが悪い」
ナタリアの決意にディアナも同意を示すが、そこへマグダリアが厳しい顔で釘を刺す。
「それで解決するほど簡単な話ではありません。魔獣使いの技を持つのは緑の小指だけでは無いのですから。他の危険人物がいる限り、サピラの脅威は変わりません」
「待ってください」
マグダリアの言葉に、Alexandraが反応した。サピラから離れ、蒼玉鋼の霊刀を掲げて宣言する。
「私は悪党を残らず裁くと言いました。彼が再び自由に駆け回れる様にする為に、まずあの収奪者を断罪します」
「勿論私も協力しよう」
「私、も、お手伝い、します」
ナタリアとエルも頷いて同意を示す。それにマグダリアも厳かに声をかけ、祈りを捧げた。
「貴女がたの決意、しかと確認しました。それは非常に険しい道ですが、達成できますよう、ボルガニスク神の加護があらんことを」
マスターコメント
イベントシナリオ普通 報酬:標準7 / 4〜25人
2023年06月03日 05時18分11秒 公開
相談掲示板
ヒーラー、グレイブ・ヤードです。 とりあえず探索場所としては【2】を考えております。
個人としての行動はおよそ【1】で決めなのですが… 固定する前に質問をば。 Q1,辺獄内部の空間の広さ・糧食事情の見立てなど…情報があれば欲しいです。 もとをただせば、彼…サピラの存在が明るみになり、人と接点を持つようになった─ その切っ掛けはもとの住処を移動するだけの理由があったことにあるはず。 大飯ぐらいなのは既に識っていることなので…せめて個人的にでもそのあたりはケアできるようにしたい。 Q2,●猟犬と魔獣使いと神徒と にて語られた一連の話…私達はその内容を知りうる(PC情報として拾える)でしょうか?
皆よく集まってくれたね。 こういう結果になってしまったけど、よろしく頼むよ。 A1 辺獄はかなりの広さがあるからサピラの行動に制限は無いよ。 人伝てに聞いた話だけど、帝国の皇帝が大型だか超大型のクリーパーを狩ろうとした事があったんだろう? それが動き回るのに支障がない広さはある筈だよ。 食料に関しては辺獄には魔獣による独自の生態系があるから、サピラが食べるものに困ることはないね。 逆にサピラが補食の対象になる可能性もあるけど、サピラは強いし警戒心もあるからそう簡単には補食されないし、もしそうなるなら自然の摂理だろう。 A2 知っていて構わないよ。
エル、です。…シューター、です。 どうぞ、よろしく。 【1】、の、つもり、です、けど。 他も、ちょっと、気に、なる、かも…。
ロゼット、ヒーラーよ。よろしくね。 ちょっと思案中なのだけど、【3】を主に考えてるわ。 書けそうだったらだけど。
情報は把握しました。 いろいろと思うところはありますが…ひとまずは依頼そのものに関して。 【1】【2】に関しては、場所が辺獄内部…暗がりでの行動となりそうです。 暗所で行動する上での備え…方策しだいでは荒事を交えつつとなりますから、それを加味して準備が必要そうですね。
ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 【2】の人手が足りていない感じがしたと思ったから愚弟にも来てもらって【2】をやらせて貰う形で。 私は最後まで見届けるべく【1】で出るつもりだ。 隠密戦闘に関しては、愚弟の方が優れている事だろうからな。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! 遅くなっちまったが、俺も【2】で調査してみる予定でいんぜ!!