彷徨う邪竜・グラシャラボラス

おおくまねこ

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シナリオID:2980

オープニング

●
「思いのほか、手ごたえの無い仕事だったな」
 傭兵、ナシーナは血に濡れた鎧姿で村の中を彷徨っていた。彼女は近隣の村から「盗賊団を壊滅する」という依頼を受け、たった今それを果たして帰還したところだ。盗賊は30人ほどいたが、授恵者はおらず、一人残らず彼女の二本の斧の錆となった。

「ヒッ」
(おっかねえ、目を合わせないようにしよう)

 長きに渡り、村を苦しませた盗賊団を壊滅させたにも関わらず、村人達のナシーナへの態度は冷淡だった。だが、ナシーナがそれを気にすることはない。ナシーナは村人の名前など全く記憶していないし、傭兵とはそういうものだと考えているからだ。最も、エルフ美女であるナシーナがも少し愛想よくすれば、人々の反応も、もっと温かなものになったかもしれないが……。

「酒でも飲むか……」
 荷物を宿に置いた後、近くの川で血を洗い流したナシーナは村唯一の酒場を目指していた。少し歩き、目当ての酒場に着いた時、ナシーナは奇妙なものに気付いた。

「手配書……? こんな片田舎の酒場にか? ……邪竜・グラシャラボラス……竜殺しか、面白い」
 ナシーナは手配書をまじまじと見つめる。そこに書かれていた指名手配犯はヒトではなく、『邪竜』だった。ナシーナは薄く笑い、酒場へと入っていった。

「おい、店主! 表の手配書について詳しく教えろ!」
 
●ドワーフ王国からの依頼
「冒険者諸君、ドラゴン退治の依頼が来ているよ」
 冒険者の店のマスター、クママンは朗らかに宣言し、依頼書を店の目立つ場所に張り出した。

「依頼人はドワーフ王国の領主。他の土地で敗走して流れてきた『邪竜』を討ち取ってほしいそうだ。ドワーフ王国は防衛戦は得意だけど、自分から討ちに行く場合は対クリーパー防壁には頼れないから、ギルドに依頼を出したんだろうね」
 邪竜とは、クリエスター山脈に住まう黒いドラゴン達の総称だ。彼らは人類より遥かに強靭な肉体を持ち、昔から幾度もドワーフ王国に戦いを挑んできたという。ドワーフ王国は年がら年中邪竜が出没する土地なので、多くの村落が防壁を、場合によっては対邪竜用の兵器を用意している。しかし、防壁は動かせないし、兵器もかさばるものが多い。したがって、狩りに出るとなると、頼りになるのはやはり授恵者(レシーバー)の兵(つわもの)なのだ。

「というわけで、ギルドにお鉢が回ってきたようだ。邪竜の名は『グラシャラボラス』。まだ若い個体で、成体ではないらしい。けど、それでも邪竜は強敵だ。少なく見積もっても中型クリーパーぐらいの力はあるだろう。気を付けて挑んでくれ」

 クママンはそう言うと、件の邪竜の指名手配書を依頼書の隣に掲示した。

「あと、現地の村で食料や兵器の貸与などの支援が受けられる。必要だと思うものは借りるといいだろう。ドワーフ王国の兵器なんてめったに借りられる機会もないしね。さて、説明は以上だ。さあ、『ドラゴンスレイヤー』の誉れを求めるものは前に出よ! なんてね」

解説

目標:邪竜グラシャラボラスを迎撃する。 舞台:ドワーフ王国、エルドーラ山・山頂 依頼人:ドワーフ王国の領主、ブルドーザ 依頼内容:以前ドワーフのある村を襲い、返り討ちに遭った邪竜が我が領内で目撃された。また人里を襲う前に、討伐してほしい。なお、倒した邪竜の死体は近隣の村で武器の素材として有効活用させてもらう。 ●登場NPC 邪竜グラシャラボラス 全長約6メートル まだ人語を操れない年若い邪竜。右目を喪失しているほか、左脚にも大きな古傷があるが、生命力は100%状態。飛行不可能になるまでは空中からひたすらブレスで攻撃してくる。ちなみに『幻の水晶洞窟』に登場した邪竜と同一個体。 生命力:???? 攻撃手段:格闘 直径3へクスの範囲攻撃扱い。 岩をも溶かす炎のブレス(範囲魔法攻撃)。最大射程5。 ナシーナ ウォーリア エルフの傭兵。冒険者ギルド所属ではないが、冒険者の店経由で邪竜殺しの依頼を引き受けた。一匹狼で、邪竜退治の際は「襲撃日時だけ冒険者達から聞き、山頂で合流する」というスタンスを取る。なお、エルドラド村のドワーフ達と喧嘩になったため、後述の対邪竜用装備は借りられなかった。実力は高レベル冒険者に引けを取らない。 ●エルドーラ山 クリエスター山脈にある山。邪竜グラシャラボラスはこの山の山頂付近の岩場に潜伏している。なお、岩場は邪竜がのびのびと戦える広さがあり、足場は安定している。また大小さまざまな大きさの岩が点在しており、身を隠すことは容易。 ●エルドラド村 依頼人が統治するドワーフの村。携帯性に優れた3種の対邪竜用の兵器を擁しており、頼めば持ち出しが可能。村の防衛上の観点から、借りられるのはPC一人につき一種のみ。 倒された邪竜の死体は村で回収し、武器の素材として活用される。希望する場合は冒険者も希少ではない部位(鱗、爪、牙、骨など)の持ち帰りが許される。 1、対邪竜用捕獲ネット『エドゥノーグ』 メインアクションとして使用することで、粘着性の網を射出するボウガン。命中すれば邪竜は1ターン休みになる。 2、対邪竜用簡易防壁『俺流エーテルバリア』 リアクションスキルとして使用可能な鋼鉄の傘。一度のみ、ダメージ数値を80%減衰する。 3、竜殺酒『ヤシオノシコミ』 矢や剣などに塗布する毒。効果を受けた邪竜は、たちまち酩酊状態に陥る。なお、ペナルティの累積には上限がある。

マスターより

こんにちは。おおくまねこです。今回は純粋な戦闘シナリオです。邪竜を討伐しましょう。無策でガチンコだと十人いたとしても危うい相手なので、準備はしっかりとやった方がいいでしょう。

リプレイ

●
「よっしゃ! 邪竜殺しのハヤト様の出番だな!!」
「ドラゴン退治か。久々に楽しめそうだけど、どんなもんかねえ……」
 ハヤト=ガラン=ヴォルファングとアーテミシアは張り切っている。

「邪竜如き最速で狩り倒して御覧に入れますわ」
『ハイスピードキャスター』の称号を持つバンビは威勢のいいことを言った。
「ええ、頑張りましょう。『啓示によれば、どの道ここで戦う事になるので、以前の依頼でスルーしたのはガ=バではないです。今回は有利な状況なのでゴフンハ=リを目指しましょう』との事です」
 フリーダ=ブロムヴィストは、バンビの言葉に頷いた。

「手負い……まさか洞窟にいた『あれ』ですか?」
「かもしれんな。地理的にあの場所とそう離れていない」
 グレイブ・ヤードの言葉にセリオス・オーガストが頷いた。フリーダもそうだが、三人は少し前にドワーフ王国で邪竜と遭遇している。その際は邪竜討伐は依頼内容に含まれていなかったため、交戦を避けたのだ。
「手負いかあ……荒れてそうだけど、人に害が及ぶ前にどうにかしないとならない、か」
 ディレイン・オールドケイジは難しい顔をした。
「竜殺しの称号に興味はないが竜素材に興味はあるのだ。手負いの竜は危険だし安全化の為にも倒させて頂くのだ」
 魔獣研究に余念のないストレガ・L・リベルガストラが言った。参加メンバーを確認した後、冒険者達はさっそく邪竜の目撃された場所の最寄りの村であるエルドラド村へと飛んだ。

●
「よく来たな。領主様から話は聞いとるよ。俺達もあんたたちに協力するよ。俺たちゃ、迎撃戦は得意なんだが、こっちから狩りに行くのは苦手でな。あんた達には期待してるよ」
 冒険者達が村に着くと、ドワーフ達は歓迎の意を示した。冒険者達が「拠点として使ってくれ」と案内された酒場(二階が宿屋)に着くと、むすっとした感じのエルフの戦士が一人で食事をとっていた。
「来たか。待ちくたびれたぞ」
 エルフは食事の手を止め、冒険者達の方を見た。

「よう、耳長女。そういや、もう一人依頼を受けた傭兵がいるってパンダのオッサンが言ってたな……お前がそうか?」
 アーテミシアは嫌そうな目で見ながら問いかけた。

「そうだ。冒険者ではなく傭兵だがな。名前はナシーナだ」
 ナシーナと名乗ったエルフは立ち上がり、アーテミシアを睨み付けると、斧をドン、と床にぶつけた。

「うひょ~♪ こんなダイナマイツ美女と仕事が出来るなんざツイてるぜ! あんたも傭兵なんだな! 俺はブレイブファング傭兵団団長のハヤトってんだ。一緒に酒でも飲みながら話でも――」

 ザクッ!

 ハヤトがいつものようにナンパをすると、ハヤトの眼前にフォークが突き立てられた。

「――失せろ」
「お、おう……」
 ハヤトはすごすごとすっこんでいった。

「こほん。ナシーナさん。彼のナンパはともかく、仕事の打ち合わせはさせてくれるかな。一緒に戦うんだしさ」
 ディレインが口を挟む。
(なんか、気難しそうな子だから『ちゃん』付けはやめとこう)

「……私は現地でお前達と合流する。出発の時間が決まったら教えろ」
「……まあいいか。じゃあ、ルートとか決まったら知らせに行くよ」
 ディレインは肩をすくめた。

(しょうがねえ奴だな……集団行動とかできねえだろうし、その方がかえって揉めねえかもな)
 アーテミシアはナシーナのあまりのコミュ力の低さに呆れていた。

●
(食事の後さっさと酒場を出ていったナシーナとは別に)冒険者達は食事を取った後、対邪竜用の兵器を借り受ける為、村の兵器職人の工房を訪れていた。冒険者達はそれぞれ、自分に合った装備を選ぶ。

「私は対邪竜用簡易防壁にしましょう。実際に使うかどうかはさておいても、盾はあるに越したことはないですからね。弓も毒も私はそこまで有用に扱える気はしませんし」
 グレイブは邪竜用簡易防壁『俺流エーテルバリア』を借りることにした。

「……これにするわ」
 バンビが手に取ったのも『俺流エーテルバリア』だった。バンビは機能を確かめる為、何度も傘を開閉したり、ブンブン振り回したり、その辺にあった鉄棒を傘で切りつけたりしている。
(鋼鉄の傘かっくいー)

「これが竜殺酒か……けっこう少ねえんだな」
 手のひらサイズの酒瓶を眺め、ハヤトは唸る。
(この量だと、仲間とシェアするのは無理そうだな)
「うむ、飲ませるのではなく体に打ち込む毒じゃからな。それに、それはシャルガネからの輸入品の薬酒が主原料でな。貴重品なんじゃ」

「あの耳長女は何を選んだんだ?」
 アーテミシアは興味本位に尋ねると、ドワーフはため息をつきながら首を横に振った。
「あいつには何もナシじゃ! たいそう腕に自信がおありのようじゃからな!」
 ドワーフの言葉に、冒険者達は苦笑した。

●
 翌日、冒険者達はさっそく邪竜の住まう山へと出発した。ナシーナは宣言通り一人で山に向かったが、山頂に向かう直前の一本道で冒険者達と合流した。

「……留守だな。ここには何もいない」
 山頂にて、宗波と聞き耳で周囲の気配を探っていた邪竜のセリオスが呟いた。冒険者達とナシーナは山頂の岩陰に身を隠し、邪竜を待ち伏せすることにした……。

●
「戻ってきましたね!」
 フリーダは小石を転がし、仲間達に合図を送った。邪竜グラシャラボラスは大きなイノシシを口にくわえ、山頂に戻って来ようとしている。

「行くぜ!」
 邪竜が速度を緩め、ゆっくりと着地しようとした時、岩陰から飛び出したハヤトは大地を蹴った。
「!?」
「うるぁ! とっとと堕ちやがれ!!」
 凄まじい跳躍で邪竜の背中に飛び乗ったハヤトは、翼に向けて流れるような連撃を叩きこんだ! ハヤトの拳爪蹴牙は邪竜の翼に食い込み、鮮血がこぼれる。
「チッ! 硬え!」
「グー、ウー……」
 わずかに傷をつけられたことで、ハヤトの刃に塗られていた竜殺酒『ヤシオノシコミ』が竜の血液に混入した。たちまち毒が回り、邪竜は酩酊状態となった。

「たまやー」
 バンビが魔導書を掲げると、周囲のエーテルが魔導書に収束し、紅蓮の炎を纏ったとんでもなく大きな巨岩が邪竜の頭上から降ってきた。巨岩は空中で大爆発を起こし、石の雨となって邪竜の頭上へと降り注ぐ。石の雨が地面を抉り、土煙が舞い上がるが、すぐに血に濡れた邪竜が姿を現した。ハヤトもなんとか邪竜の背に乗ったまま巻き添えを回避したようだ。

「やはりあの竜は以前遭遇した個体と同一の様ですね。ここで仕留めておけば例の洞窟の探索もまた出来るようになるでしょう」
 フリーダも飛ぶ斬撃を放ち、邪竜撃墜を援護する。今、邪竜はハヤトがジャマで思うように回避ができないはずだ。刃は狙い通りに飛び、邪竜の翼に傷をつけた。
「こないだの取りこぼしだったか。村を襲う前に始末できてよかったな」
「本当に『あれ』で間違いないようですね……。あの左脚の傷、撤退時にあなたが撃ち込んだものでは?」
 右からセリオスの対邪竜用ボウガン『エドゥノーグ』と、左からグレイブの『招霊呪怨縛』が同時に邪竜に向けて放たれる。どちらか一方でも当たれば、邪竜の動きは拘束される。邪竜の拘束を目的とした二段攻撃だ。

「ギャオオオオ!」
 邪竜はグレイブの禍々しい呪詛を回避したが、エドゥノーグの方は躱し切れなかった。
「成功です」
 ほくそ笑むグレイブ。次の瞬間、ポン、と小気味よい音と共に破裂した弾丸から鉄の網が広がり、邪竜の片翼に絡みついた。

「ギャオオオオオ!!」
 網に絡み取られたまま地面に叩き落された邪竜は大暴れし、網を引きちぎろうともがいている。

「うまくいったのだ。足絡之呪(おまえのあしはうごかない)」
 ストレガは青藍に光る錨と鎖を射出し、邪竜の体に巻き付けた。網と格闘していた邪竜はストレガの魔法を回避できず、邪竜を縛る縛鎖が地面と邪竜を縫い留めた。

「そろそろだね。ハウリング・オブ・ブルーフレアを使うよ」
 ディレインは邪竜の背にいるハヤト以外のメンバーに強化魔法をかけた。

「おい、ちょっと離れろ。お前の斧は無駄にでけえんだよ」
「誰に向かってものを言っている……死ね」
(このヤロー……今の「死ね」は邪竜に向かって言ったんだよな?)

 アーテミシアとナシーナは落下した邪竜目掛け、斧と戦槌を振り下ろした。二人とも同じ場所を狙っていた為、あわや互いの武器がぶつかり合う寸前だった。

●
 邪竜は拘束ネットを突き破って数メートル上昇した。だが高度はさほど高くない。ストレガの放った鎖が今も足に巻き付いており、あまり速度が出なかったからだ。邪竜は大きく息を吸い込み、炎のブレスを下に向かって吐きかけた。炎の範囲内にいたのはハヤト、アーテミシア、ナシーナの三人だ。
「あぶねえ!」
 ハヤトは炎の範囲を瞬時に見切り、範囲外に脱出したが、アーテミシアとナシーナは
岩をも溶かすブレスの直撃に晒された。

「あの傘を……!」
「チッ」
 アーテミシアは咄嗟にドワーフから借り受けた『俺流エーテルバリア』を広げ、邪竜の炎を遮った。傘は一発で飴細工のように曲がって壊れてしまったが、アーテミシアはほとんど無傷だ。ナシーナは咄嗟に体をエーテルで硬化させ、即死こそ免れたものの、深手を負ってしまった。

「ナシーナ! 一旦下がれ! ステーキにされちまうぞ!」
 ハヤトはナシーナに警告すると、再び邪竜の背目掛けて飛び上がった。しかし、邪竜は「二度は通じない」とばかりに体を旋回させ、ハヤトが背に乗ることを拒否した。
「くそっ!」
 ハヤトは全身を回転させ、落下しながら攻撃をくわえたが、一発しか当たらなかった。

「いずれ、またチャンスが来ますわ」
 バンビは魔力温存の為、魔矢で空中に逃れた邪竜を攻撃すると、矢は邪竜の翼を貫通した。

「また飛んだか……地上に叩き落とさねば、埒が明かんな」
 セリオスは二発目の『エドゥノーグ』を放った。冒険者達がドワーフの村から借りられた対邪竜兵器は一人一台ずつだったが、これはディレインから又貸しされたものだ。ネットが翼に絡みつき、邪竜はまた大地に叩き落とされた。

「逃がさないのだ」
 ストレガはターゲットを絞られないよう別の岩陰に移動しながら、邪竜へと重力場を放つ。

「ナシーナさん、下がった方がいい。邪竜相手に油断は禁物だ」
 ディレインは炎の射程を計算しつつナシーナへとヒールをかけた。ナシーナは舌打ちしたが、素直に従い、後退しながら衝撃刃で邪竜を攻撃した。
「これは回復の手を休める暇はなさそうですね」
 グレイブは範囲を拡大したヒールを放ち、ナシーナとアーテミシアの傷を癒した。

「一丁ちぎれるまで殴ってやろうか、ええ?」
 アーテミシアは戦槌を振るい、邪竜の翼を殴りつけた。ゴキン、と鈍い音がし、邪竜の骨にヒビが入る。
「今です!」
 フリーダは邪竜に接近すると、パラッシュを翼に突き立てた。ハヤトが使ったものと同じ毒が邪竜に浸透し、邪竜はますます視界がふらついた。

「グオオオン!!」
 冒険者達は怒りの咆哮を上げ、地面でばたばたともがいている邪竜へと集中砲火をしかけた。狙っているのはネットが絡まっている邪竜の翼だ。
「喰らえ!」
 セリオスの極大の光の矢(ハイパーバスターアロー)が邪竜の片翼の根本を貫き、ついに邪竜は飛行できなくなった!

●
「グオオオオ!!」
 ようやくネットを引きちぎった邪竜はストレガのと魔錆を振り払い、怒りの咆哮を上げた。重力場から脱出したセリオスへと突進し、炎を吐きかけた。

「くっ!」
 炎にあぶられ、セリオスの皮膚が焼け焦げる。高威力の魔力の炎を浴びせかけられ、セリオスは意識が断絶する寸前だ。
「ダメ押しですわー」
 バンビは魔導書から爆炎を吐き出し、邪竜へとぶつけた。己のブレスに匹敵する熱量の火炎をぶつけられ、邪竜は苦悶の声を上げた。

「翼が失ったせいか、機動力もずい分下がりましたね」
「うむ、このまま押し切るのだ。長引いて回復が途切れれば、こちらが殺されるのだ」
 ストレガの魔錆を受け、邪竜の纏ったエーテルに虫食いのように穴が空いた。その直後、フリーダが邪竜に肉薄し、顎を剣で刺し貫く。ディレインとグレイブは負傷者の回復に大忙しだ。手負いとはいえ邪竜は伊達ではなく、そのブレスは一発でこちらのヒール数回分の体力をごっそり持っていく。

「もう戻ってきやがったか。お前、横とか尻尾に回れよ!」
「断る」
 アーテミシアはナシーナに文句を言いながら、二人で邪竜の頭を攻撃していた。

●
 翼を失ってなお、邪竜は強敵だった。しかし、最初に拘束されたまま集中砲火を受けたことと、毒による運動機能低下の影響は小さくなく、趨勢は冒険者達へと傾いていった。そして……。

「うらぁ! 往生しな!」
 ハヤトは邪竜の頭を飛び越えて突進を躱すと、邪竜を殴りつけながら背中側を切り抜けた。邪竜は苦悶に身をよじりながらも、炎を吐き出す。狙われたバンビは咄嗟に俺流エーテルバリアを開き、炎を防御した。

「おかえしですわ」
 バンビは鼻を狙い、魔矢を放つ。矢は鼻の穴からそのまま喉へと抜けた。
「ギャオオオオオオ!!」
 ひときわ大きな声で叫ぶ邪竜。
「トドメです!」
 フリーダの斬撃が邪竜の首を貫く。ついに邪竜はすさまじい音と共に、岩場に倒れこんだ。

「激戦でしたね。まずは治療をしましょう」
「だね。ヒールに使えるエーテルは残り少ないけど、二人分ならなんとかなるでしょ」
 グレイブの言葉にディレインが頷く。ナシーナは一人で先に帰ろうとしたが、ヒーラー二人に呼び止められ、大人しく治療を受けた。
「医学・薬学による早期の手当は重要ですよ? 綺麗に回復するに越した事はないのです」

「うむ、治療感謝する。さあ、終わったのだ。村人達を呼んできて解体作業を手伝ってもらおう」
 ストレガはニッコリ笑った。

●
「見事なり!」
 見事邪竜グラシャラボラスを倒した冒険者達は下山し、村人達に邪竜討伐に成功したことを知らせた。村人達は領主との約束通り、冒険者達が希少ではない部位を少し持ち帰ることを了承した。

「んじゃー俺は武器とか籠手に使えそうな部位をくれ」
 ハヤトは邪竜の骨や爪を袋に詰めた。

「できれば牙がほしいかな。小さいのでいいんで。相容れなかったけど、生きようとした奴の証っていうかねえ……」
「オレも牙をくれ」
 ディレインとアーテミシアは牙を譲り受けた。

(しかしあのヤロー……今度あったら顔面ブン殴ってやろうか)
 アーテミシアはすました顔でさっさと村を去ったナシーナの顔を思い出していた。

「肉や骨などを頂きたいのだ。多くの部位を少しずつ分けてもらえるとありがたいのだ」
 ストレガは邪竜の可食部位を中心に、小さめの素材を譲り受けた。

「邪竜の魂は私が弔いましょう」
「おお、そりゃいい。化けて出られても困るしな!」
 村人に一言断ったグレイブは邪竜の墓を立て、丁重に弔った。こうして、邪竜グラシャラボラスは無事に討伐された。もうこの邪竜がドワーフを襲うことはないだろう。

マスターコメント

見事邪竜を討伐できました。重体者もいなかったので、結果は大成功とさせていただきます。お疲れ様でした。なお、ハヤトさんはおおくまねこの別シナリオで「ドラゴンスレイヤー」の称号をすでに獲得済でしたので、配布称号は別称号としました。
ショートシナリオR

ショートシナリオR難しい 報酬:多い8 / 4〜8人

2023年05月28日 12時26分14秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. グレイブ・ヤード

    ヒーラー、グレイブ・ヤードです。 まぁせっかくの道具があるのですから活用させてもらえばよいかなと思っています

  2. アーテミシア

    ウォリアーのアーテミシアだ で、この装備って一人に付き一種ってバラバラなら全員持てるってことでいいのか?

  3. グレイブ・ヤード

    個人的にはネットが複数あれば相当なアドバンテージな気がしてます

  4. クママン

    みんな、こんにちは。ギルド職員のクママンです。 >借りられるのはPC一人につき一種のみ。 これについて少し補足しよう。一人で何種類も借りることはできない、という意味なので、他の人と同じ道具を借りることは特に問題ないよ。

  5. ディレイン・オールドケイジ

    ヒーラーのディレイン・オールドケイジ、よろしく。 飛行不可能になるまで空中からブレス、ってことは、少なくとも序盤は対空になるってことかな。 ネットはボウガンだから届きそうだけど… 今のところはシューターいないんだよね。 命中させる算段がほしい…右目を喪失してるならそっち側は死角が広いだろうし、 前衛で気を引いているうちにネット打つのはどうだろう。 できれば毒でペナルティつけたいなあ…

  6. アーテミシア

    とりあえず降りてくるまでは飛び道具だけど、囮も用意しておかないと射撃手が狙われる危険性があるな 命中高い奴がボウガンで、囮役が防壁、攻撃力高いやつが酒って感じか?

  7. グレイブ・ヤード

    一応確保予定のアイテムは言ってもいいのでは? 被ったからどうだというわけではありませんが、使用タイミングとか分かれば意図してずらすとか、使い勝手は上がる気はします。 ちょっと気になるのとして(使用するかは別) 竜殺酒『ヤシオノシコミ』って入れ物どういうのなんでしょう?瓢箪とか?

  8. フリーダ=ブロムヴィスト

    ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 とりあえずは空中からなんとか引きずり落とさない事には始まりませんね。 ボウガンで行動不能にさせた状態でお酒で酔わせて落下させるとかになるでしょうか? 確実に当てるのなら囮役に気を取られている間に…という形がベストかと思います。

  9. ストレガ・L・リベルガストラ

    ストレガなのだ。宜しくなのだ。 飛んでる敵の移動力を下げたらどうだろうとか思ったので今回はスネアを使用する予定。 ネットで捕獲→翼から落とす になると思うのだ。

  10. ハヤト=ガラン=ヴォルファング

    おーっす! ブレイブファング傭兵団団長でこれまでも何体かの邪竜を仕留めてきたドラゴンスレイヤーのハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! やっぱ飛んでる間が厄介だよな。 早々に堕とさねーとだからセリオスにネット撃って貰って、その間に引き摺り堕とす算段を立ててぇとこだな!

  11. バンビ

    ハイスピードキャスターのバンビですわ。 若いトカゲ如き最速で仕留めて御覧に入れますわ。

  12. クママン

    満員になったね。たくさんのご参加ありがとう。お酒の入れ物は持ち運びやすい好きな容器でいいんじゃないかな。投げつけて使うものじゃないし。

  13. アーテミシア

    オレは防壁持つか。酒でもいいけど降りてくるまで凌ぐなら囮は多いほうが良さそうだしな。 降りてきたら後はタゲ取りつつ叩く感じだな。 部位破壊、狙うか? 後はあの耳長女は…好きにやらせとくか(適当)

  14. グレイブ・ヤード

    投げつけたらだめなのか・・・(ブレス時に口めがけて投げる気だった) まぁそれはさておき >アイテム関係 挑発して壁で止めた隙にネットとか、組み合わせる方がよさそうかな? 一回墜落させられれば対処はしやすい部類かと思うし

  15. セリオス・オーガスト

    ・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえず出てる通り地上に叩き落さんことには始まらんようだからな。 他に希望者がいなければボウガン使う予定だがどうだ?

  16. ディレイン・オールドケイジ

    セリオス君にはぜひ、ボウガンで最初のネットを撃ってほしいね。 俺自身は何を持ってくか悩んだんだけど、まあネットかなあ。 緊急避難的な意味合いも兼ねて。

  17. アーテミシア

    オレはそれで構わねえぞ。というか本職に任せる とりあえず降りてきたら尻尾やら何やら狙ってみるか

  18. フリーダ=ブロムヴィスト

    それではこちらも落下までは皆様にお任せするとしましょう。 落下後は再離陸を防ぐ為に主に羽を優先的に狙ってみようと思います。 持っていく装備はとりあえず保留しておきます。

  19. グレイブ・ヤード

    とりあえず「貸し出しも難しくなさそうな」対邪竜用簡易防壁を持ち込むほうで行動を作っています。 皆さん「空から引き釣り下す(空を飛ばさせない)」という所は共通項でよろしいのですよね?

  20. セリオス・オーガスト

    了解だ、ではボウガンを使って何とか邪竜を打ち落とすとするか

  21. グレイブ・ヤード

    プレイングは現時点で送信済みです 継続回復(ホーリー・リチュアル)による実質的に負傷を無視できる状況を作る予定ですので、フルアタック仕様でもほぼ問題ないかと思われます。 あちら(邪竜)の状況を見るに右側・・・と見せかけて左側が隙が生じそうな気がしますし、左側の古傷は鱗なども少なそうで柔らかい気がします。 狙いやすい箇所になりそうだなあとみていますが、そのあたりもプレイングに入れております。

  22. ディレイン・オールドケイジ

    岩に身を隠すことができるよ! …って書いてあることにようやく気づいたんだよね… 特に対ブレスで活用できそう。 プレイングはまだ途中なんだけど、ナシーナさんへのフォローも入れてみたよ。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0