【泥乱】マックスおじさん

革酎

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シナリオID:2967

オープニング

●マックスおじさんを探れ
 リーンエス王国西部に所領を持つベルティック男爵領の商業街メーンスは、ディズル大湿地帯への玄関口のひとつとして数えられている。
 このメーンスの冒険者ギルドに、ひとりの年老いたリザードマンが現れた。
 名をクランコといい、ディズル大湿地帯の最大派閥であるギシュム族の酋長アシムベート・グリオウに近しい古老のひとりである。
 クランコ老は、そのアシムベートの意向を受けてメーンス冒険者ギルド支部に自ら足を運んできた。
 彼は、最近ディズル大湿地帯に現れた征竜の巫女イネスと頻繁に連絡を取り合っている武装商人について、密かに調べて欲しい旨を受付嬢に申し入れた。
 実のところ、その征竜の巫女の付き人と称する人物を、アシムベートは以前シルトラース帝国のどこかで見たことがあるのだという。
 アシムベートは征竜の巫女とその付き人に対し、何か裏があると直感し、彼らが何を企んでいるのかを探り出そうと考えているらしい。
 その手始めとして、征竜の巫女イネスの元を足繁く通っている武装商人について探りを入れて欲しいというのが、クランコ老からの依頼であった。
 征竜の巫女イネスも件の武装商人も、ディズル大湿地帯内でこれといった問題を起こした訳ではない為、彼らに危害を加えない程度で、その魂胆や正体を確認したい、ということらしい。
 受付嬢ネイオ・フリンクは、
「そういうことでしたら……」
 と頷き、秘密裏に冒険者を掻き集めて依頼を仲介することにした。
 このメーンスには東ディズル手工芸商会というリザードマン主体の商会がある。この東ディズル手工芸商会の職員という形であれば、件の武装商人と接触を取っても然程に不自然ではないだろう。
 ネイオは早速、東ディズル手工芸商会と連絡を取り、クランコ老への協力の為に一時的に冒険者を職員に雇い入れて貰えないかと頼み込んだ。
 幸い、東ディズル手工芸商会の幹部連中はネイオとは顔馴染みで、彼女の頼みを快く引き受けてくれた。
 かくして、クランコ老の依頼を受けた冒険者は東ディズル手工芸商会の臨時雇い職員として、例の武装商人が出入りする商店や工房に足を運び、その正体を探ることとなった。
 尚、クランコ老は事前情報のひとつとして、その武装商人は自らマックスおじさんと称していることを告げたが、恐らく本名ではないか、通り名を用いているのだろうとの推測。
 マックスおじさんなる武装商人は人当たりが良く、相手を不快にする様な言動は一切取らない世渡り上手の中年商人ということらしい。
 一見すれば特に裏がある様にも思えないらしいが、そこが却って怪しいともいえる。
 ともあれ、ネイオが掻き集めた冒険者達はこのマックスおじさんの正体と、その動向を探るべく、東ディズル手工芸商会の臨時職員として行動を取り始めることとなった。

●想定外の救出戦
 ネイオから依頼の仲介を受け、東ディズル手工芸商会の臨時職員として行動を開始した冒険者アーギス・マーレイは、マックスおじさんがメーンスの宿を離れ、ディズル大湿地帯へと足を運び始めたことを目視すると、自身も業務用の荷袋を背負ってその後を追った。
(武装商人だからって訳でもねぇんだが……やけにガタイの良い旦那じゃないか)
 マックスおじさんの後姿を遠巻きに眺めながら、アーギスは内心で小首を捻った。単に体格が良いだけではなく、その歩き方や所作のひとつひとつが妙にきびきびとしており、訓練された軍人を連想させる。
 只者ではない――そんな印象を抱きながら尾行を続けたアーギスだが、ひと気の無い馬車道を進んでいたマックスおじさんが突如、腰に吊るした鞘から長剣を引き抜き、大きな池のほとり目掛けて走り出していった。
 一体何事かと驚いたアーギスだったが、マックスおじさんが目指しているのは巨大な野鳥の群れと、それに襲われていると思しきリザードマンの親子だった。
 その野鳥の群れは、ただの鳥ではなかった。雲霞鳥だった。
「おっと……こいつぁ傍観してる訳にゃいかねぇな!」
 アーギスは後方から様子を見ていた仲間の冒険者達に緊急事態発生の合図を送りつつ、自らも愛用の戦斧を荷袋の中から引っ張り出して、雲霞鳥の群れへと駆け出してゆく。
(あの規模の群れは、ちょっと厄介かも知れねぇぞ……!)
 雲霞鳥は単体では大したことはないが、群れを作ることで個体の能力を嵩上げする魔獣だ。群れが大きくなればなるほど、その脅威度は跳ね上がってゆく。
 見ると、周辺を飛んでいる個体の雲霞鳥が、マックスおじさんが向かう群れに合流する動きを見せている。どうやらリザードマン親子とマックスおじさんを獲物だと見定め、一斉に食い殺してやろうと集まり始めているらしい。
 このままでは流石に拙い――当初はマックスおじさんなる人物をただ遠目に監視し、その動向を探るだけであった筈だが、最早そんなこともいっていられなくなってきた。
 面が割れてしまうのは痛かったが、それでもアーギスは雲霞鳥の群れを撃退する為に懸命に駆けていった。

解説

状況:  PCの皆様は商業街メーンス冒険者ギルドでリザードマンのクランコ老からの依頼を受け、マックスおじさんなる人物を尾行していたところからスタートして頂きます。  状況はOPに書かれてある通りで、雲霞鳥の群れに襲われているリザードマン親子を、マックスおじさんが救出しようとしています。  しかし敵は群れを作ることでより強大な力を発揮する雲霞鳥、マックスおじさんひとりだけではリザードマン親子を救出することが出来ないかも知れません。  同じく依頼を受けていた冒険者アーギス・マーレイはマックスおじさんに面が割れることを承知で救出の手助けに入ろうとしていますが、皆様は必ずしも同調して行動する必要はありません。  クランコ老からの依頼を優先させて、雲霞鳥との戦闘に合流しないというのもひとつの手です。  リザードマン親子の救出は道義的には協力した方が良いのかも知れませんが、依頼の完遂を優先させることも同じく重要ですので、皆様ご自身で判断して下さい。 敵:  雲霞鳥の群れが出現しています。  個体であれば然程の強敵ではありませんが、群れを作ることで各個体の戦闘能力が格段に向上します。  今回現れた群れも、早い段階で殲滅すれば然程の手間はかかりませんが、余り時間をかけすぎると非常に手こずる強敵と化してしまいます。 NPC:  主なNPCとしてはアーギス・マーレイとマックスおじさん、そして雲霞鳥に襲われているリザードマン親子が登場しますが、展開によってはクランコ老が顔を出すかも知れません。

マスターより

 皆様、こんにちは。  ディズル大湿地帯を舞台とした連動【泥乱】のシナリオをリリース致します。  今回はマックスおじさんなる人物の動向やその正体を探ります。同行するNPCは久々登場のアーギス・マーレイですが、余りに久々過ぎて知らないひとの方が多いかも……。  それでは、ご縁が御座いましたら参加のご検討を頂けますと幸いです。

リプレイ

●武装商人の技量
 この局面、調査対象への面割れは仕方が無いか――アーギス・マーレイと共にマックスおじさんなる武装商人を尾行していた冒険者達の一部は、ほとんど瞬間的に腹を括った。
「アーギスさん、加勢します!」
「おぉ、団長済まねぇ! 何か巻き込んじまったな!」
 場所はディズル大湿地帯内の、とある一角。
 ひと気の無い馬車道から少し外れた位置にある、大きな池が舞台である。
 そのほとりで、雲霞鳥の群れがリザードマン親子に襲い掛かろうとしていた。母と子のリザードマンはただただ怯え、恐怖の表情でその場に居竦んでしまっている。逃げようにも、余りの恐ろしさに体が上手く動かないといった様子だ。
 その救出に真っ先に飛び込んでいったのが調査依頼の監視対象たるマックスおじさんだったが、アーギスと、そしてコルネリウス・アーラの両名も即座に得物を引き抜き、マックスおじさんの後を追う様にして雲霞鳥の群れへと一気に走った。
「こうなっちまったら、四の五のいってる場合じゃあないさね」
 ルチル・プルメリア・グレイハーツも愛用の弓に矢をつがえながら走り出した。この時咄嗟に相棒の栗鼠ラトを茂みの裏へ走らせたのは、情報屋としての機転が利いたといって良い。
 そのルチルから僅かに遅れる格好で、リューイ=ヴァレンゴルトとクローリカも別方面から飛び出し、マックスおじさんと合流した。
「俺も手を貸すぞ!」
 リューイが鋭く叫ぶと、マックスおじさんはまずあの親子を、と返してきた。敵の殲滅よりも、救える命を先ず優先するという思考の持ち主らしい。
 ならばとクローリカがエーテルで造り出した光塊を振るい、手近の雲霞鳥数羽に叩きつけた。少しでもこちらに意識を向けさせなければ、群れを崩すことは難しい。
 そのクローリカの視界の中で、マックスおじさんは長剣を振るった。その太刀捌き、踏み込み、間合いの取り方はいずれも素人とは到底思えず、正規の訓練で徹底的に鍛えられた熟練の技を感じさせる。
(凄い……私なんかよりも遥かに正確で速く、そして隙が無い……)
 雲霞鳥に一撃を加えつつ、クローリカは内心で舌を巻いた。
 マックスおじさんは見た目こそは地味な武装商人だが、その剣技も突撃速度も、並みの冒険者の比ではない。まさに達人の中の達人とも呼ぶべき圧倒的な技量を誇り、クローリカは僅か数秒だけで、自分では到底太刀打ち出来ない程の人物だと認めざるを得なかった。
 それはコルネリウスも同様だった。
 今や壁エルフとしてその名が知られ、多くの戦場を勝ち抜いてきたコルネリウスの目から見ても、マックスおじさんの技量は次元がまるで違った。その斬撃の速さは二刀流かと思える程の手数を生み出し、しかもそれらの剣戟の全てが巨岩を叩き割る程の恐るべき破壊力を伴う。
 これ程の男が冒険者ギルドにも名を連ねず、在野でくすぶっていたのかと思わず目を疑う程であった。
(一体何なんだい、あの男は……)
 ルチルも頭蓋面の奥で唖然となった。
 マックスおじさんの実力を引き出させる為に、程々に戦闘を長引かせようと考えていた彼女だが、そんなルチルの思惑を遥かに上回るマックスおじさんの実力は、いささか想定外だった。
 しかし、これもまたひとつの情報収集の結果である、ともいえる。武装商人マックスおじさんはコルネリウスですら及ばない程の剣技の達人だということは、それだけで報告に値する価値があるだろう。

●救出戦
 最後に合流したキオルティスとリディリディ・トゥラ・イェレミースは、思わず互いに顔を見合わせた。
 冒険者達とマックスおじさんによるリザードマン親子の救出劇はまだ始まったばかりだが、雲霞鳥の巨大な群れは早くも瓦解の兆しを見せ始めている。
「あの親子を救出すれば後は逃げるのみ、と思っていたけど……」
「この分なら、殲滅も、可能ですね」
 軽い変装を施しながら突入のタイミングを伺うキオルティスの傍らで、リディリディは雲霞鳥の群れの規模をじっと観察している。どの攻撃魔法を叩き込めば効率良く敵を斃すことが出来るのか、この時点で既にある程度の方針は固まっていた。
「それにしても、武装商人と征竜の巫女……この両者を繋ぐものは何だろうね。何か共通点が見出せれば良いんだけど」
 そんなことを呟きながら、キオルティスはそれまでとは別人の風体で戦場へと駆け込んでゆく。
 一方のリディリディは雲霞鳥の群れの中心地点に、必殺の一撃をお見舞いした。
 直後、雲霞鳥の巨大な群れが、その中心部で発生した衝撃波の炸裂を受けて僅かに膨張した。中心部付近に居る雲霞鳥の防御力は通常とは比べ物にならない程に跳ねあがっている筈だが、それでも少なくない数を一撃で葬り去ったリディリディの魔力は、一流の域に達しているといって良い。
 群れの中心にぽっかりと空間が穿たれ、その身体能力が大きく損なわれた雲霞鳥共だが、凶暴性までもが損なわれる訳ではない。依然として獲物と見定めたリザードマン親子に狂気の如く襲い掛かる姿勢を崩しておらず、リューイとキオルティスが駆け込んでいけば、更に獲物が増えたとますます獰猛さに磨きがかかった。
「アーギスさんは右を! 私は左の敵を押さえます!」
 コルネリウスが鋭く指示を飛ばすと、アーギスは戦斧を振るって右手方向から突出してくる雲霞鳥の対応に当たった。
 その間、ルチルは後方から的確に援護射撃を叩き込み、リューイとキオルティスによるリザードマン親子救出を支援し続けた。
「エルフのお嬢さん! 私があんたの後方に退路を開いて敵を軽く一掃するから、あんたは雲霞鳥共が群れて来ない様に押さえてくれるかな!」
「承知しました!」
 今度はマックスおじさんがコルネリウスに指示を出す。その戦術眼は確かなもので、コルネリウスの後方が最も安全だと見抜いたのは流石というべきだろう。
 マックスおじさんの声はルチルやリディリディの耳にも届いている。ふたりはこれから切り開かれるであろう退路に雲霞鳥共を殺到させない為に、それぞれの火力をその一点に叩きつけることにした。
 リザードマン親子の傍らで刃を振るっているリューイも、マックスおじさんの呼び声に応じて頷き返し、頭上に向けて次々と刃を繰り出した。
「剣で空を飛ぶ相手と戦うなら……これくらいはな」
 リューイは冷静に頭上の敵を睨み据えたが、しかしいつまでもその場に留まるという発想は無い。
 殺界と衝撃波を対空手段として用いるのは悪くないアイデアだが、間合いという意味では少々厳しいものがある。同じ位置で延々と応戦するよりは、リザードマン親子を庇いながら退路を抜けるのが得策であろう。
 そんな中、キオルティスはマックスおじさんの戦いぶりに時折、意識を向けていた。
 リザードマン親子への守りを冒険者に任せることが出来た時点で、マックスおじさんは雲霞鳥の殲滅に舵を切ったらしい。リディリディが光弾の雨を叩きつけた箇所に、疾風の如き斬撃を次々と叩き込んでゆく。その技量の高さは、敵に廻せばどれ程に恐ろしいかと首筋の辺りが冷えるレベルに達していた。

●雲霞鳥、殲滅
 マックスおじさんは雲霞鳥殲滅戦のパートナーに、クローリカを指名した。
 コルネリウスは退路確保の為の盾役として機能せねばならず、積極的な殲滅にまで彼女の手を煩わせる訳にはいかない。
 アーギスもコルネリウスと肩を並べて、ふたりして殺界での足止め戦力となり、リザードマン親子の脱出に尽力することとなった。
「では参ろうか」
「お手伝い致します」
 クローリカはマックスおじさんの背中を守る。そうすれば、マックスおじさんは己の防御を気にすることなく全力で敵の殲滅に集中出来る、という訳だ。
 そしてリューイとキオルティスがリザードマン親子をルチルとリディリディの陣取る後方付近にまで離脱させると、冒険者達も殲滅戦へと意識を切り替えた。
 リディリディの圧倒的な魔法火力で遠距離の敵を次々と叩き落とし、近づく敵はルチルの矢とリューイの刃で迎撃する。
 これだけの戦力が揃っている為、キオルティスはリザードマン親子の身を守ってやることに専念することが出来た。同時に彼は、マックスおじさんの言動にも意識を向けている。
 そのキオルティスの視界の中でマックスおじさんは本気でリザードマン親子を救う為だけにその刃を振るい、雲霞鳥という脅威を排除しようと頑張っている様に見えた。

 やがて、雲霞鳥の群れは消えた。
 冒険者達とマックスおじさんの奮戦により、この大きな池のほとりにリザードマン親子を餌と見定めて襲い掛かってきた魔鳥共は返り討ちにされ、その全てが討伐されたのである。
 驚くべき戦果といって良い。
「お怪我はありませんか?」
 コルネリウスが呼びかけると、マックスおじさんは自分は大丈夫だからリザードマン親子を見てやって欲しいと笑みを返した。
 ならばとリディリディとルチルがリザードマン親子に傷の手当てをしながら、こんなところで何をしていたのかと問いかけた。
 どうやら、子供のリザードマンが征竜の巫女の出現に刺激を受け、武者修行だと称して単一で飛び回っていた雲霞鳥に挑みかかろうとしたのを母親が止めようとしていたところに、群れがあっという間に寄ってきて窮地に陥っていたということらしい。
 しかもこのリザードマン親子はフィラム氏族の出身だという。今度はルチルが驚く番だった。
「やれやれ……どこもかしこも征竜の巫女殿フィーバーってところか」
 一応ルチルは、自分は雲霞鳥の出現を警戒してパトロールの為に雇われた冒険者だと説明を加えたものの、果たしてどこまで通じるか。
 しかしマックスおじさんはルチルの説明には全く疑念を示さず、この親子を送り届けてやらなければとの見解を示すのみであった。これにはリューイが手を挙げて反応した。
「良ければ俺が、あのふたりを安全な場所……フィラム氏族の集落まで送っていこうか?」
 リューイがそう申し出ると、マックスおじさんは是非そうして欲しいと頷いてから、子供のリザードマンの頭を撫でて静かに笑った。
「フィラムの教えに従って勇気を出すのは良いことだが、家族に心配をかけず、不安にさせないことも大事だ。君にもしものことがあったら、皆とても悲しむからね」
 そうやって優しく諭す姿には何の腹黒さも感じられない。世の全ての子供達は全世界の宝だといい切るその姿勢に、コルネリウスは自身の父の姿を重ねた。

●衝撃の事実
 リューイとキオルティスがリザードマン親子を伴い、フィラム氏族の集落へと発っていった後で、コルネリウスとクローリカはマックスおじさん相手に、改めて自己紹介を兼ねた挨拶を交わした。
 マックスおじさんは気さくに応じつつ、相手が名乗った以上は礼儀を以て応じなければならぬとばかりに、本名はマクシミリアン・ミルドと名乗った。
「まぁ、本名は長ったらしいからマックスおじさんで良いよ」
 からりと笑うその姿に、リディリディとルチルは内心で拍子抜けする思いだった。どこまでも正直というか、ひとの好さが滲み出ている笑顔だった。
「マックスさんも、お仕事の途中だったのでしょうか」
 コルネリウスはマックスおじさんことマクシミリアンの大きな荷物をちらりと見遣った。マックスおじさんは中々忙しくてねぇと苦笑を返す。
「私の商売相手は、さっきそちらのお姉さんがいった征竜の巫女殿だよ。何を思ってこんなところに来たのかは知らないけど、お気に入りの品々はここディズルでは手に入らないから、私の様な武装商人がどうしても必要らしいね。まぁお陰で、こちらは新しい顧客に巡り会えた訳だけどね」
 この時ルチルは、頭蓋面の奥で僅かに瞳を煌めかせた。
 先程までリザードマン親子に見せていた裏表の無い態度とは裏腹に、征竜の巫女という存在に対しては微妙な感情の揺れが感じられたからだ。
 このマックスおじさんは、矢張りただの武装商人ではない――ルチルの直感が、そう語っていた。
「けど、また雲霞鳥の群れが出ないとも限らないし、大いに危険だ。出来れば、その征竜の巫女殿のところに行くまでの間は同行させて貰えないかな」
「お、守ってくれるっていうのかい。そいつぁ助かるな。是非お願いしたい」
 意外なことに、マックスおじさんはルチルからの同行の申し出を拒絶しなかった。それどころか、仲間が増えて賑やかになって楽しい、とまでいい切る始末。
 一体どこまでが本心なのか、どことなく捉えどころの無い人物だった。
 結局、マックスおじさんにはルチルの他にコルネリウス、リディリディ、クローリカ、そしてアーギスの五人が同行する運びとなった。
 道中コルネリウスとクローリカがマックスおじさんの剣技の凄さに対して素直に感心し、どこで鍛錬を積んだのかと聞き出そうとしたが、マックスおじさんは適当に言葉を濁すばかりで、正確な答えは得られなかった。
 その一方で、マックスおじさんは雑談には積極的に応じてくれた。当たり障りのない世間話はにこやかに応じる辺り、人好きのする性格なのかも知れない。
 そんな中でマックスおじさんは、そういえばとコルネリウスに水を向けた。
「お嬢さん、ご家族に小さいお子さんが居たりするのかい?」
「はい……よく、お分かりになりましたね」
 どうやらコルネリウスがリザードマンの子供を落ち着けようと頑張っていた姿を見て、年少者のあやし方が上手だという感想を抱いたらしい。
「ご家族は、大事になされよ。親兄弟からすれば、目覚ましい武勲や出世なんかよりも、家族の安全と平和が何よりの幸せだからね」
 子供や家庭が何よりも大事だと力説するその姿に、コルネリウスのみならず、クローリカやリディリディも、当初抱いていたイメージとはかけ離れた人物だとの感想を抱かざるを得なかった。

 そうして無事に征竜の巫女が滞在する集落に到着したところで、マックスおじさんは冒険者達に感謝の意を示してから別れの言葉を告げた。
 この後、フィラム氏族の集落から引き返してきたキオルティスと、ルチルの相棒ラトがマックスおじさんと征竜の巫女の接触を遠目に監視し続けたものの、この両者は顧客と商人というやり取りだけに終始し、特にこれといった有益な手掛かりは得られなかった。
 しかし、これだけで終わるとは思えない。
 ルチルとキオルティスは更に情報を掻き集め、そして驚くべき事実が浮上した。
 何と、シルトラース帝国近衛連隊長の名がマクシミリアン・ミルドというのである。
 彼は帝国最強の戦士と呼ばれ、滅亡前の帝国では四方将軍の上席にあり、帝国軍の頂点にあるとも呼ばれた人物だったのだ。
 そして同時に任務以外の場所ではマックスおじさんと名乗り、多くのひとびとに慕われていたのだという。

マスターコメント

 皆様、お疲れ様でした。  無事にリザードマン親子の救出は成功し、更に雲霞鳥の群れの完全殲滅にまで至りましたので、結果は大成功といって良いでしょう。  マックスおじさんはまだまだ謎多き人物ですが、今後、彼とどの様に接していくことになるのかは皆様次第です。  次回以降、マックスおじさんの行動に要注目です。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人

2023年05月20日 06時29分04秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. コルネリウス・アーラ

    (途中送信してしまいました…お直し失礼します) さて、成立しましたね。 ウォーリアのコルネリウスです、よろしくお願いします。 アーギスさんが雲霞鳥の撃退に向かうのでしたら、私が出ない訳にはいきませんね。面割れも大した問題ではありませんので。 短期決戦を目指す必要がありますので、出来たら火力でガッと殲滅したいかなと思います。 殲滅に参加するか否かは各自の方針もあると思いますので、人数次第にもなりますが、分かれるのも有りだと思います。 リザードマン親子とマックスおじさんは助けた場合に直接情報を得られる場合もあるかなと思うのでそちらも、視野に入れたいですね。

  2. No.3

    キャスターのリディリディです。 よろしくお願いします・・・。 調査の方も気になりますが、雲霞鳥が群れているということですし、キャスターの私は戦闘する方向へ向かった方が良さそうですね。 これ以上の数が集まる前に範囲魔法で放つつもりです。

  3. リューイ=ヴァレンゴルト

    ウォーリアのリューイだ。 個人的にはリザードマン親子の救出に向かいたいが、今の参加人数だと殲滅に集中した方がいいのかと、迷っている。 他の人の表明や人数の推移を見て決めたいが、 リザードマン親子救出>一丸での殲滅に参加 という気持ちだ。

  4. クローリカ

    ウォーリアのクローリカです、よろしくお願いします。 これから参加人数が増えるかにもよりますが、私も戦闘重視ですね。 まずは一気に雲霞鳥を倒して隙が出来たら親子を引き離す、という戦法でしょうか。

  5. キオルティス

    シーフのキオルティス。今回は宜しくね。 俺はフェイクカバーを使って、面は割れないようにしつつ 親子救出に動こうかな、と思ってるよ。 フェイクカバーを使った上で疾風足で親子の許まで。 親子を護衛をしつつもマックスおじさんの戦闘を間近で見ることで 何か掴めないか…っていうのも観察していくつもり。 勿論、戦闘後は隠密裏にフェイクカバーは解除して本来の依頼で有る マックスおじさんの調査も続行しようかな…と。 …どうだろう。

  6. コルネリウス・アーラ

    フェイクカバー、良いと思います。 顔が割れずに調査される方がいらっしゃるのも、大事だと思いますので。 キオルティスさんの仰るようにマックスおじさんの戦闘中の動きをある程度見ておきたい、というのもあるので…戦闘を長引かせるのはこちらも辛くなりますが、早すぎでも情報収集がしづらくなりますから上手くバランスを取りたいですね。 まずはアーギスさんと協力して数人が雲霞鳥の元へ向かい、マックスおじさんの動きを少し観察したら増えすぎないうちに加勢して一気に火力で叩くほうがいいでしょうか?

  7. ルチル・プルメリア・グレイハーツ

    情報屋のルチルだ。クラスはシューター、よろしく。 「マックスおじさん」の素性はまだまだ不明瞭だが、「襲われている親子を見つけて咄嗟に駆け出す」という行動を取るような男なら加勢する事で取り入る手も使えるだろう。 とはいえ、今後の事を考えると面が割れていない者もいた方がいい。フェイクカバーの使用は是非ともだ。 >様子見するべきか? 「マックスおじさん」の戦力評価を目的とするなら、あっさり冒険者の手で雲霞鳥を全滅させてしまうのは拙い。 しかし意図的に手を抜いてしまうのも、リザードマン親子を助けられない可能性が高まるので中途半端な気配もある。 ただ、周りの雲霞鳥が集まるまで少し時間差があるように見えるね。 コルネリウスの言うように何人かで親子を救出しに加勢して場を持たせ、その間に遠距離攻撃主体で合流する群れの数を減らしておくのはどうだろう。 適度に致命的な不利に追い込まれないように調整しつつ、親子を助け「マックスおじさん」の戦う所も見れると思うが。 この方法を取るならアタイは一旦マックスの前に姿を見せず、数を減らして調節するように動こう。 栗鼠を現場に先行して、加勢に向かった者達と連絡を取りつつ動く事もできるよ。 >個人 疑われないように「雲霞鳥目当てに行動していたらたまたま襲われている親子を発見した」と説明もしようかね。 冒険者である以前にアタイはリザードマンだ。湿地帯の事を気にかけていても不自然はないだろうと。 同時に、アタイが面割れ覚悟で動く分栗鼠を尾行やらなんやらでこっそり動かそうとも考えているさ。

  8. リューイ=ヴァレンゴルト

    本来受けている依頼は「動向を探れ」 気が早いかもしれないが「リザードマン親子を無事なところに連れていく」となって、マックスおじさんの本来の目的地が分からなくなったは避けたいと思う。 親子を無事に救出できたということを前提に、戦闘後に親子を安全な所に送り届ける役を任せてもらっても構わないだろうか?

  9. キオルティス

    >面割れ それじゃ、フェイクカバーは必須で。もしそれ以上を求めるなら ハイディングも持って行くけれど、コレはやり過ぎ、かな。 ルチルさんの栗鼠も心強いね。面割れしても対象者の動向を探れるって かなり貴重な手になりそうだし。 >様子見 戦力評価、あと本当に要救助者を助けに行ったのか、何か裏は無いか。 それから戦闘後の動向…全てに於いて俺は様子見をしておいた方が 良いかな、と思ってたりする。 リューイさんの言う本来の対象者の目的地?を探る為にアクシデントが 無かった時の状態に戻すのも勿論大事だと思うけれど、逆を言えば こういうアクシデントが起こってしまった際の対象者の動向を探ることは 出来るんじゃないかな…って思うよ。 何も動向=行動予定地を追跡するってだけではないと思ってるんだけれど ちょっと考え過ぎ…かな。杞憂だったら申し訳ない。 俺だけが勝手に思っていることなら、是非リューイさんに要救助者の避難を お願い出来れば嬉しいなと思ってるよ。

  10. コルネリウス・アーラ

    >面割れ そうですね、マックスおじさんがどれくらい手練れなのか解りませんけれど、フェイクカバーでも充分かなとは私は思います。 ルチルさんの栗鼠さんもとても助かりますね、よろしくお願いします。 >様子見 確認するべき事項について、私もキオルティスさんの意見と相違ないです。 送り届ける案については、リザードマンの親子をその後保護する・安全な場所まで送る、という流れになるならリューイさんがこちらで対応しますよと申し出る形にするので如何でしょう。 上手く聞き出せれば目的地について話したり、その後マックスおじさんが向かう方向に相違ないかなども確認出来たら良いかなと考えています。 どれくらい上手くいくかはやってみないと解らないのですけれど。

  11. ルチル・プルメリア・グレイハーツ

    保護対象の親子を安全地帯まで送り届けるのは自然な流れだ。 リューイが引き受けてくれるなら是非とも。反応が見たいなら一拍置くか先約があるか尋ねてから「こちらが」という流れに持っていけばいい。 元々目的地があって行動しているなら親子の送迎を譲ってくれるだろうしね。 本来の目的は自分もそれとなく引き出してみるつもりだよ。

  12. リューイ=ヴァレンゴルト

    では、戦闘後に親子が無事なら、話の流れを見て「俺が彼らを無事な場所にまで送ろう」とこちらから申し出ることにしよう。 戦闘では、素直にリザードマン親子を助けに行くつもりだ。 依頼とは関係ない人が傷つくのは、やはり見過ごせない。 よろしく。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0