虎穴に入らずんば卵を得ず
広大野人
コメント 13
シナリオID:2965
オープニング
優秀な治療師や医師、薬師を多数輩出してきたケレス侯爵家の現当主フォスティーヌ・ケレスの所にその日、旧友が旅の爺医者と共に訪れていた。
旧友は古くから付き合いのある遠い血族であり、病に苦しむ一人息子を抱えていた。過去、幾度も相談に乗り、必要があれば診察や薬を調合した経緯があった。その旧友が見つけて来たという旅の爺医者が……驚く事に正体不明の病を治せるというのだ。
「フォスティーヌ様、お目通りありがとうございます。名乗るべき名を持っておらず、申し訳ない」
白法衣に身を包んだ爺の物腰は丁寧であった。
一朝一夕で身に付けられるような所作ではない……隠居した貴族の可能性もあるが、そこに関しては目を瞑る事にした。それよりも、この爺医者が『本物の医者』なのかどうかが重要であるからだ。
「貴公が病を治せるとお聞きしております。早速ですが、詳細を教えて頂いて貰ってもよろしいでございましょうか?」
「はい。フォスティーヌ様もご覧になられたかと思いますが、首元に出来る竜鱗模様の痣……あれは竜の呪いではなく、奇病の一種です」
痣が徐々に濃くなり、ついには喉を絞めて窒息させるという恐ろしい病であり、王国内において少なくとも爺医者が知る範囲で、発症例は無いという。
「あまりに珍しい為、この病に名がついておりません」
「貴公はどこでそれを?」
「我輩はもともと別の病の治療方法を求め探しておりまして。ドワーフ王国で立ち寄ったある村の村長が、かつて罹っていたという病に類似していたのです」
爺医者の話にフォスティーヌは改めて旧友の子の痣を思い出す。これまで、対処療法的に呼吸の通りを良くするような薬や軟膏を調合してはいたが、根本治療とはいかなかった。
「かつて……という事は、その村長は病を治したのでございますね」
「はい。特殊な製法……いや、秘術で作る薬……仙竜丹をおおよそ1年、継続的に服用した事で、痣が消えたと聞きました。幸い、製法を聞き書き残しておいたので……これを」
爺医者がそこそこの厚さのある書をフォスティーヌに渡した。
専門となる用語の正しい使い方や取り扱いの注意、副作用まで、図入りで丁寧に記されており、優れた治療師であるフォスティーヌから見ても賞賛に値する書であった。
「……なるほどです。1年程継続的に服用しなければならない仙竜丹を安定して製薬するには、十分な設備と様々な材料、人手が必要という訳ですか」
もし、旧友と爺医者だけで薬を作れるのであれば、わざわざ相談には来なかっただろう。ここまで足を運んだのは、フォスティーヌの力を頼っての事だ。
「ご推察の通りです」
聡明なフォスティーヌに爺医者は頭を下げた。話の成り行きを見守っていた旧友も頭を下げる。
「フォスティーヌ様! 何卒!」
「頭を上げて。貴女がどれだけ苦労して、あの子を授かったのか……私には、とてもよく分かっているのよ」
旧友も子が成せない体だった……共に苦しみと哀しみを抱えて、現実と向き合ってきた。様々な障害を乗り越え、旧友は子を宿した。それは奇跡だったかもしれない……旧友が無事に子を産んだ時、どれほど嬉しかったか。
「あの子の為に、ずっとずっと治療できる人を探し続けた貴女の想いに、私も応えたいわ」
「フォスティーヌ様……ありがとうございます!」
大粒の涙を流し続ける旧友をフォスティーヌは優しく抱き締めるのであった。
●
製薬はフォスティーヌが率いる薬師団と爺医者が共同して行う事になった。同時に必要な材料の調達が次々に商会へと依頼される。
そして、もっとも困難な材料……竜の卵については、金額を積めば手に入るという代物ではない為、冒険者ギルドに依頼書が回ってきた。
「丁度というのでしょうか……最近、竜の番が山間部のとある集落を焼き払って住み着いてしまったらしいです。気性の荒さから、産卵するかもしれないという話で、避難した集落の人々も、竜が居着いてしまうのではないかと不安がっていました」
ギルドの職員が依頼者の内容を説明していた。
そして、いつもながら画家に匹敵する見事なイラストを取り出した――輝かしいほど眩しい白銀色の鱗を持つ雄竜と見る者の心を奪う黄金色の鱗を持つ雌竜。竜自体が珍しい魔獣ではあるが、その中でも銀色と金色の竜は更に希少な存在だろう。
勿論、その実力は計り知れない。流石に邪竜のような強さは持っていないが、そこそこの経験を積んだ冒険者ですら、この番を討伐する事は極めて困難なはずだ。
「幸いな事に竜を討伐する必要はありません。なんとか卵を持って帰っていただければ……最低でも一つ。出来れば二つ以上です」
希少で高価な卵なので、出来れば沢山手に入れたい所だ。
アーネリーはスケッチブックを捲った。そこには地図みたいなものが描かれている。
竜の番は集落跡地を根城にしている事が分かっているので既に地形の把握できていた。
「冒険者の皆さんには卵を拠点まで運んで欲しいと思います」
そう言って地図の端に描かれた▲を差した。
■道草草草草草道林
川橋川川川川崖崖崖
草道草草草川川橋川
森道森森森崖崖道草
山岩山湿湿湿崖道林
山岩山湿湿湿崖道草
山岩山湿湿湿崖道林
林道道道道道道道草
▲道草草草草草草林
「拠点から真っ直ぐ北に向かえば集落です。際しい山の中に岩の道が続いているので、そのまま抜ければ、集落に到着します。帰り道も最短距離で通るなら、来た道が早いと思います。東側の迂回路は時々、開かれてる所があるようなので、竜に襲われやすいと思います……後、通る事は無いと思いますが、中央の湿地帯はかなり足を取られるそうです」
順当に考えて西側ルートでの往復なのだろうが、どうも引っ掛かりを感じずにはいられない。卵を抱えて通ろうとしたら、でかい岩が置いてあって道が塞いでいそうな、そんな気がしたからだ。
そんな馬鹿な事があるかと思いたくなるが、現実は時に非情だ。例えば、竜が山を掠め飛んで、その衝撃で落石が起こる可能性だってゼロではないのだから。
「それと、竜だけじゃなくて、他の魔獣にも気を付けていただければと。そこそこ巨大化した蜥蜴や昆虫も出現するそうです」
アーネリーが地図に描き込んだデフォルメされた虫のイラスト。
冒険者であれば大した相手ではないだろうが、卵を抱えているならば別問題だ。うっかり落として割ってしまう訳にもいかない。
「竜の卵は……伝承によりますと、かなり重たいと聞きます。一般人でも複数人で持つ必要があると聞きますので、授恵者だと両手で抱え持つ位が限界かと……」
当然、武器と卵を持ちながら戦闘はできないだろうし、スキルを使っての激しい動きも卵を落としてしまう可能性はある。
そんな状態で竜に襲われれば結果は明らかだ。
卵を奪われて怒り狂った竜に卵を盾代わりにしても、きっと卵ごと焼かれてしまうだろう。
「どのように卵を運ぶか、竜の番を倒すかどうかは冒険者の皆さんの判断にお任せいたします」
最後にそう締め括ったギルドの職員に冒険者達はどうしたものかと唸るのであった。
解説
マスターより
リプレイ
山々の稜線と緑多き風景を望みつつ、冒険者達は竜の卵を納品する依頼を始めようとしていた。
ジュスト・ヴェルジーが依頼を請け負った仲間達を見渡す。
「依頼人の為もあるし、兄上の薬の為にも卵は出来れば2つは手に入れたい……否、手に入れてみせる」
冒険者という立場は変わらないが、依頼人であるフォスティーヌ・ケレスは彼の叔母だ。完全に無関係でもないし、なにより、竜の卵の入手と珍しい薬の製剤は希望がある。
「その為にも皆と協力して、不測の事態が起きても冷静に対応したい。よろしく頼む」
軽く頭を下げたジュストに婚約者であるローザリカ・L・ディオールは胸の前で腕を組んだまま頷く。
「気を引き締めて臨もう」
何といっても人の命が掛かっているのだ。それに薬の効能は分からないが他の病にも効く可能性はおおいにある。ここは是が非でも卵を持ち帰りたい所。
(……それに、フォスティーヌ叔母様から私の実力を測られている可能性も……)
貴族令嬢らしい想いをローザリカは頭の中で響かせた。
依頼主は報告書を必ず読むだろう。もちろん、どのような評価をするかは別だが。
依頼が無事に終われば挨拶に伺うべきかとシルヴィア・A・カペルは思いつつ、事前に得た情報を記したメモを全員に渡す。
「竜が放つ炎はかなりの威力があるみたいだ。それと、集落までの街道に出没する昆虫型の魔獣を主食としているそうだ」
「頭も良さそうなのかな?」
メモを受け取りながらアリア・ティーダが訊ね、シルヴィアが応えた。
「私達以上に、かもしれないね」
「相手が絶対的に強く賢いからこそ、習慣や行動には意味がありそうだね」
逆に言えば、そこを突けば勝機は十分にある。
竜の巣が集落跡地である事も、冒険者達には有利な条件だ。
依頼と共に配られた地図を見つめるフリーダ=ブロムヴィストが呟くように言葉を発した。
「竜の巣から卵を強奪というのもどこかで聞いた話ですね。啓示によれば『最近は飛んだり跳ねたりしても卵落とさなくなりました』との事ですが……」
啓示が今回の話とは特に関係は無いのは確か。フリーダは話を続ける。
「輸送中に襲われてしまえばひとたまりもありません。上手くやりましょう」
「卵を抱えてる時に、竜と遭遇したらたまったものじゃないし、確かに気をつけないと」
運搬役となるルベア・ベルニが軽く体を伸ばして準備運動をして応える。
卵を落として割ってしまっては意味がない以上、事は慎重に進めなければならない。卵を抱えやすいようにロープや毛布などを準備していたカイン・ステラも仲間達に注意を促した。
「竜だけじゃなく、他の魔獣も危険だな。奴等からすれば、危険な巣から卵を持ち出してくれてありがとうかもしれねぇ状況だ」
「万病に効く薬を作るのはリスクが伴うって話もあるけど、今回は正にそうね。竜と卵を狙う魔獣……頑張るわ」
改めて決意を込めたルベアに対し、カインが梱包材セットを手渡す。
「とりあえず、どんなものか試しつつ、行きは地形の確認だな」
こうして竜の巣から卵を持ち帰る依頼が開始されるのであった。
●
竜の巣までは復路の状況を確認しつつ、冒険者達は当初の目的地である元集落まで移動してきた。
一人、山道を通ってきたフリーダが先に待っていたが、その表情はやや険しい。
「銀竜の狩りの影響で岩が崩れて、帰りの山道は使えそうにないね」
その言葉にシルヴィアが応えた。
「やはり、東側から迂回しようか……集落の跡地もこのような惨状だし、これは厳しいかもしれない」
竜によって焼き払われたと聞いてはいたが、集落の状況は酷いものだった。まず、建物という建物は全て焼かれ、人が住んでいた形跡はすべて壊され、巣材の一部になっていたからだ。再利用できそうな資材がないのは気性の荒さと狡猾さを感じさせる。
ボロボロに崩れた車輪のような物を手にアリアが告げる。
「荷車なんかあるかと思ったけど、ないならないで、卵だけでも貰っていこうかな」
竜の番は交代で卵を見張っているようだが幸いな事に多少のズレが生じ、無防備な状態になっていた。今なら卵だけを容易に持ち出せるはず。
卵を毛布でくるんでロープで抱っこ紐のように身体と繋げ、ルベアが卵を抱える。
小さい子供位の大きさもあるので、なかなか重い。
「例えが合っているか分からないけれど、少しだけ、妊婦さんの気持ちが分かる気がするわ」
アクロバティックのような動きはまず出来ないだろうと感じた。卵の殻は少し頑丈そうだが、打ち所が悪ければ間違いなく割れるだろう。
その様子にローザリカが周囲の警戒を続ける婚約者に向かって言った。
「後でジュストも抱えてみたらどうだ?」
「そうだね」
軽口ではなく、彼は真面目にそう返してきた。
その理由は確認するまでもなかった。遠くの空に太陽の光を反射する銀竜の姿が見えたからだ。
「役に立つか分からないか、カモフラージュだ」
ルベアが抱えている卵を覆うようにカインが竜の巣から藁っぽいものを掛けるのであった。
●
迂回路を目指す一行だが、大空から見張られていると身を隠す場所は少なく、早々に銀竜に見つかってしまった。
「ここは俺とロゼで対応する」
ジュストが黒革のグローブにエーテルを流しながら仲間達に告げると、囮になるように草むらから出て進む方向の逆に向かって駆け出した。
対して、銀竜が急降下。
仲間の誰かが放った閃光塗弾をものともせずに襲い掛かってくる。
「閃光への耐性はあっても、直接的な攻撃は通じるはず」
ローザリカが洋扇を振るって、光の矢を撃つ。
直撃すれば非覚醒者なら一撃で倒せるであろう威力はあるものの、銀竜の足止めにはならず、ローザリカの攻撃を無視してジュストを鋭い鉤爪で狙う。
「軌道は簡単には変えられないようだね」
ギリギリまで引き付けた上で地面を転がって回避すると白く光るエーテルの矢をジュストは放った。
翼に突き刺さった矢は蔓になって纏わりついた。空を飛べるとはいえ、エーテルによる悪作用は有効。再び飛び上がった銀竜の動きは明らかに遅い。
立ち上がろうとするジュストにローザリカは手を差し出す。
「このまま卵持ちとは逆の方向に誘導してやろう」
そして、適当な所で姿をくらませ、仲間達と合流すればいいのだ。
●
ジュストとローザリカの二人が囮となって銀竜を引き付けている間、冒険者達は迂回路の橋を渡っていた。
水辺付近から奇妙な叫びと共に姿を現したのは蜥蜴の魔獣。ギラギラとした目でルベアを睨み、近づいて来る……が、先手必勝とばかりにカインが炸光矢を放った。
「戦闘の騒ぎで金竜も来るはずだ。あっちに見える林に向かえ!」
進行方向のやや外れに木々が生えている。巨体な竜では動きが取りにくいはずだ。
案内するようにアリアが先行。往路で通った際に、この辺りの地形はしっかりと確認していたのが功を期した。
「ボクについてきて」
執拗に追い縋る蜥蜴魔獣をカインが次々に仕留め、ルベアが安全に林へと隠れた所で、金竜がどすんどすんと振動を響かせながら大地を駆けて出現。あんなのに踏まれてしまえば卵どころか身体も木っ端みじんだ。
アリアが作った疑卵を放り投げつつ、フリーダは目立つように道のど真ん中を横切る。
「二頭同時ではなくてまだ良かったです」
「そうだな。もっとも、雑魚は幾らでも出て来るようだが」
獲物の気配を感じ取ったのか蜂の魔獣も数体現れ、カインが矢を引き絞る。倒した蜥蜴魔獣の臭いを感じ取って別の魔獣を呼び寄せているのだろう。
「ここから先は通さないよ!」
卵の存在に気が付いている魔獣が林の方に向かうのをアリアが盾と身体を使って強引に引き留めるのであった。
●
仲間達の援護を受けてルベアは街道横の林と草原を潜みながら進む。
直掩として残っているのはシルヴィアだけだ。時折、彷徨っている昆虫の魔獣と遭遇する事があり、その時はシルヴィアが撃退していた。
「万が一の時はスケープセイントを使うよ」
「それは助かるわ……卵を抱えたままじゃ、咄嗟に避けようがないから」
額に流れる汗をそのままにルベアはそう返す。
スケープセイントの弱点は離れ過ぎると使えない所にあった。その為、移動を続けるルベアの傍を離れる訳にはいかず、必然的にシルヴィアはカインとの戦闘での直接的な連携が難しかった。
それでも復路もいよいよ半分まで来ただろうか。この先は林がないので見つかりやすい反面、街道を一気に走り抜ける事も可能だ。
「銀竜の方がどうか分からないから、出来るだけ身を隠しながらいくべきかな」
シルヴィアの判断にルベアは頷いた。
護衛として残っているのは彼女だけなのだ。無理は禁物。
「なるべく、エーテルを温存できたけれど……これは、キツイかも」
ルベアは拠点の方角に視線を向けた。
というのも、実はこの1個を納品して依頼は終わりではないからだ。
●
拠点に到着する前に銀竜を撒いたジュストとローザリカと合流し、無事に卵を1個納品できた。
ホッとしつつ、ルベアは空を見上げる。
「……あと1個だね」
次は竜の番も厳重に警戒しているはず。
つまり、二回目は確実に難易度が跳ね上がっているのだ。
「私達はエーテルを温存できているのは大きいけど、そっちは?」
シルヴィアの質問にローザリカが応える。
「僕はまだ召喚を残しているさ」
使いどころが難しいが光縛封は有効に機能しそうであった。
一方のジュストも消耗はしているが、もう一往復は出来るだけのエーテルは残している。
作戦会議をしていると金竜や魔獣の足止めをしていた仲間達が拠点へと戻って来た。アリアが回復魔法を掛けたので目に見えるダメージはないものの、スキルを行使するだけのエーテルは消耗しているのは明らかだ。
「街道の方は魔獣が群がってきているようだよ」
両肩を竦めたアリアの言葉。
そこを再び通るには、戦闘して切り抜けなければならない。
弓の具合を確かめながらカインが告げた。
「最後の最後でやべーのが来た時の為に出来れば残ったエーテルは復路で使いたいな」
「そうですね。ただ、山道は崩落していて使えませんから……」
同意したフリーダの台詞を聞き、一行の視線は自然とジュストへと集まる。
依頼としては既に達成している。無理せずここで手を引くのも選択の一つ……。
ジュストは全員からの視線に対して頷くと迷いなく決意を発した。
「もう一つ、卵を獲りにいこう」
初志貫徹。
冒険者達は2つ目の卵を獲る為、再び竜の巣を目指すのであった。
●
一行は湿原を通って竜の巣へと向かっていた。
いよいよ、湿原も終わろうとした時、頭上の銀竜が飛来する。
「やはり、警戒されているか。あの竜は僕らが相手するさ」
勇ましくローザリカが進み出た。
金竜の姿はまだないので、ここで銀竜を引き付けておけば、二頭を同時に相手にしなくて済むからだ。
婚約者に続いたジュストが微笑を浮かべる。
「倒す必要はないだろうけど、それ位の勢いは必要だね」
一戦交えて分かったが、冒険者二人で倒せる敵ではないのは分かっている。けれど、気迫を見せつけないと銀竜の方は竜の巣に戻ってしまうだろう。
二人が互いにフォローしつつ銀竜へと立ち向かう様子を見守りながら、冒険者達は森の中を通過。川を渡って集落跡地へと踏み入った。
咄嗟にカインが矢を番える。
集落の正面……竜の巣の前を金竜が塞いでいたからだ。
「そういう事だよな。まぁ、雑魚がいねぇのがせめてもの救いか」
「私が注意を引きます」
進み出たのはフリーダ。
力強く踏み込みながら気合の声にエーテルを乗せ……怒りに囚われた金竜が一直線に向かって来た。
その隙に他の面子は大回りで竜の巣へと接近。
「たまごをーはこぶよー♪」
アリアが《声を挙げる》。
そして、通って来た道を引き返し始めた所で金竜が一際大きな咆哮を放った。耳を押さえたくなるほどの大きさは間違いなく、銀竜まで届いているはず。何らかの情報が伝えられたのだろう。
ここが全力の出し所と判断したカインは番えた矢にエーテルを注ぎ込んだ。
「ぎりぎりまで抑える」
要は2つ目の卵を納品できれば良いのだ。
金竜の足止めが出来れば上出来。剣と盾を構え、フリーダがなおも金竜の正面に立ち続ける。
「ガード性能には自信がありますので」
勿論、防御だけに専念するつもりはフリーダもカインも無かった。脚や翼を狙って、万が一抜かれたとしても容易には追い付けさせないつもりなのだ。
二人の冒険者に託し、卵を抱え冒険者達は来た道を引き返す。
竜の巣に近い上に死臭が迂回路に漂っているせいで魔獣が移動したのか、道中は安全だった。湿地に辿り着くまでは……。
なぜなら、ジュストとローザリカは銀竜と戦い続けていたのだ。
銀竜の猛攻は炎と毒もあり、凄まじくかったが、ローザリカの支援魔法のおかげで持ちこたえていた様子だった。
軍刀を手にしたシルヴィアが回復魔法で援護しつつ、アリアに目配せする。
「スキルで引き付けできない以上は頭を使うようだよ」
頷いたアリアが『卵』を抱えたまま湿地に入った。
それを銀竜が見逃すはずがない。ブレスを吐いてジュスト達を牽制しつつ、持ち前の機動力を見せて、体当たりする勢いでアリアに急襲。
避けようにもそのスペースすらない状況だ。湿地に潜れるように辛うじて直撃は避けたが、シルヴィアのスケープセイントが無ければ危険だっただろう。
そして、アリアが抱えていた卵は……。
「ざんね~ん♪」
疑卵だった。
驚くように目を見開く銀竜を美しい六角形の柱が囲う。シルヴィアが召喚したものだ。
「護衛が付いている方が『本命』だと思うだろうからね」
光柱の耐久力は銀竜の攻撃力の前には紙切れ同然だろうが、時間を稼げるのは確かだ。
その間にウォーターウォークの支援を受けたルベアが水の多い湿地を駆ける。
怒り狂った銀竜の咆哮と共に光柱が崩壊。しかし、銀竜の行く手に新たな光柱と澱嵐が相次いで出現した。それらはローザリカとジュストが合わせるように呼び出したものだ。
「最短距離は進めるとは思わない事だ」
「どっちを進むか好きな方を選んでいいよ」
光柱を破壊するか強引に澱嵐を突破するか……銀竜が判断に迷ったその時、ルベアがまるで消えるように空中を疾走する。
「ここまでお膳立てされているのだから、私が決めないと」
ウォーターウォークの援護を受け、シーフの能力を活かした全力移動はこの湿地帯で、恐るべき移動力を発揮した。もちろん、それを可能とする為には卵を抱えやすいように準備してあった事も大きい。
湿地帯を高速移動していくルベアの背中姿に銀竜は追いかける事は無理だと悟ると弱々しく鳴きながら、他の卵を守る為、巣に向かって羽ばたいた。
かくして、冒険者達は無事に2個目の卵を納品するのであった。
マスターコメント
ショートシナリオR普通 報酬:多い7 / 4〜8人
2023年05月20日 16時46分42秒 公開
相談掲示板
リクエストを受けて下さった広大MSに心より感謝を。 というわけでキャスターのジュストだ。 竜の卵を材料とした薬は俺も欲しくてね。 可能ならば二つは手に入れられるように頑張りたいところ。 皆よろしくね。 さしあたっては卵の運搬ルートと方法、竜にどう対処するか。 このあたりを優先して詰めていけるよう相談していけたら良いね。 >ルート 西側ルートは、岩が障害になる可能性がある……ということは東側の迂回路を検討した方が良いのだろうか。 ただもしハンマーブレイク持ちのウォーリアの人が参加してくれた場合、岩破壊も可能かもしれない。 >運搬方法 卵が生物扱いならマジックポケットは使えないし、抱えるとかロープを巻いて背負うとかになるだろうか。 とりあえず運搬役と護衛役で役割分担する必要はありそうだ。
シルヴィアだ。今回はよろしくね。 卵を二つ持ち帰れるように頑張ろう。 >竜の番を倒すか 目的は卵の運搬だし、依頼が成功すれば立ち去るようだから凌ぐ方向で良いと思う。護衛役が足止めをする必要はあるだろうからスキルや策は考えておきたいな。 >ルート選択 特に時間制限はないようだし、魔獣は卵が無ければ襲ってくる可能性は低いようだから、往路は迂回路が良さそうだ。 復路については悩ましい所だけれど、地形や道を目視で把握出来ているという点ではやはり迂回路になるかなと思う。卵を三つ運搬して、一つを囮に使う、という手もある。竜は引っかかってくれなさそうだから悩ましいけれど……。 ジュストが言ってくれたように、ハンマーブレイク持ちの人が参加してくれた場合は岩を壊して貰うのも良さそうだ。 西側ルートの最短距離で拠点に戻れたらそれが一番良いし、皆の意見待ちで。 >班分けについて シーフの人に卵を運んで貰って、難所はエアーライドで飛び越えて貰えたら有難いなと思っている。ただ道を塞ぐ岩については、飛び越えられた場合も単独で拠点に向かう事になるから心配だ、とも。 私の分担については考え中。卵を運ぶ場合、一旦卵を地面に置いてスキルを使う感じになるかな。
カイン・ステラ。 よろしくな。 相棒は機動力重視で大鼬連れて行く予定。 >竜の番 俺も討伐はしなくていいんじゃねぇかと思う。 目的は運搬だし、珍しい竜みたいだし。 勿論、足止め等々考える必要あるけど。 >ルート 現時点では往路復路共に迂回路かなと思う。 ただ、迂回するイコールそれだけ時間がかかるってことでもあるし、岩がどうにかなるのだったら西側がいいな。 >運搬方法 卵そのものはマジカルポケットじゃ難しいだろうなー 割れないよう梱包材とか囮とかに使う偽装卵とかそういうものを運搬するならありかもしれねぇけど。 普通に役割分担して対応だろうな。
くすりのたまごをはこぶよー♪ がんばってはこぶよー♪ はい、ヒーラーのアリアですっ。宜しくだねっ! >竜の番 ・そもそもとても強い ・卵が薬になる ・卵が盗まれる様な土地ならどっか飛んでく とのことでボクも討伐せずに一票を。 >ルート 一応【土木・建築Lv5】は持ってるけど…流石に資材や人員の問題で ルートを整地するには少し厳しいよねぇ。 【往路】に関しては「東」だと龍に会う可能性が怖いよねぇ…。 卵を持ってなくても集落に近づくものを警戒・攻撃する 可能性なんてあったり…? 卵に近づく前に龍に警戒態勢は取らせたくないよねっ なので、ゆっくり行けるなら。 【敢えて「西」の『迂回路』を安全にゆっくり行きつつ 「山」の上から「集落」を観察して竜の巣を離れる時間や帰ってくる時間など タイムスケジュールを観察してみる】事を提案してみるよっ! 帰りに関してはジュスト氏やシルヴィア氏の案が良いと思いますっ! >卵輸送 馬車の残骸とか、タンスとかそういう資材があるなら。 上記のスキル土木建築で「ソリ」とか「荷車」程度は半日あればボクでも作れそうな気がするよっ。 湿地を歩けるスキルとかがあるならば「ソリ」で湿地帯突破…なんて 出来ないかなぁ >竜・魔獣対策 竜の排泄物や匂いのついた物…巣材とか?を卵を入れるものにつけておけば 魔獣も警戒してくれないかなぁ…? 後、危険性は上がるし…もしかしたら竜が根付いちゃうかもしれないけど 卵を持って帰る分と陽動の3/1個で分けて、本体とは別の帰路で気を惹く…(戦いは可能な限りせず万が一の時は卵を返すor壊してしまう。)なんて難しいかなぁ?
>竜 そうだね、俺も今回は流石に討伐は難しいと思っている。 足止めに関しては二体同時に襲ってくることも考えて、俺の方でアーケインストリームを用意しようかと考えているよ。 >ルート 今の所往復もしくは復路は迂回路を使う意見が多いかな? 俺も迂回路を往復した方が良い気がしている。 理由は卵を運搬する関係上難易度が高くなる復路が初見だと厳しいかなって。 アリア殿が挙げているように往路で卵を確保する前に竜を観察して行動パターンなどをある程度把握できればより安全性も増すかと思った。 >運搬 そうだね、シーフのように機動性が高いクラスの人にお願い出来れば難所もクリアし易くなりそうだ。 マジックポケットに卵は入れられないけど、梱包材や背負う為のロープなどを入れておいたり、分担して持ち込めば移動力にも支障なく済む気がしたよ。 荷車みたいなものは往路の途中、使えそうな所(道)があれば設置しておいて復路でスピードアップや運搬車の負担軽減に利用するのも手かもしれないね。 >役割分担 俺は竜の足止め役の方に挙手するね。 ①卵を運搬する人、②卵に釣られた魔獣を駆除したり道を確保する人、③竜の足止めや陽動をする人 役割は主にこの3つになるだろうけど、①と②はあまり離れない方が良いだろうし、③に関しては①と離れるにしても不測の事態に備えてテレパスで情報共有できる圏内に留めておいた方が良さそうかな?
シーフのルベアよ、宜しく。 >ルート 私も迂回路の方が良いと思うかな。 湿地帯の通行…ウォーターウォークで多少楽になったりしないかしら。 そういう検証をしてるところを見た覚えがないけど。 >役割 今のところシーフは私だけみたいだし、私は①になるわね。 エアーライドは勿論持っていくし…ホライゾナルジャンプはちょっと運搬にはリスキーだけど、往路の諸々の確認には使えそうかな。
すまない遅くなった。 ヒーラーのローザリカ、よろしく頼もう。 >ルート 僕も迂回路を往復に賛成かな。 理由は挙がっているように時間制限はないから迂回しても大丈夫そうなこと、 復路で確実に卵を運ぶために下見をしておきたいから。 アリア君が道具作成を試みるにも、どの場所でどう使うかを下見、 場合によっては難所に留まって道具を作成開始するなども出来るかと思って。 (=皆が卵を確保に向かっている間に道具を作成していてもらうイメージ) >役割 役割はざっと足止めに2~3人、魔獣対応1~2人、卵運搬2~3くらいに分担だろうか。 魔獣は駆け出しでも倒せる強さなようだから1人でもなんとかなるのかもしれないし、 竜対応を厚めにしたり卵を4個とも狙ったりいろいろ悩ましいな。 僕自身はどうしようかな、竜対応で防御と回復両面から支える動きをしようかな。
ルベア、卵の運搬に挙手ありがとう。 ジュストとローザリカが竜対応をしてくれるのも心強い。 >ルート 往路復路共に迂回路で良さそうだね。 アリアが言ってくれた「迂回路を安全に進み、卵を取る前に地形を把握・集落の様子を観察する」というのも賛成だ。アーケインストリームでの足止めも有難い。 湿地をソリやウォーターウォークで行けるかは……行けたら良いのだけれど判定次第になると思う。湿地が水上と判定されるかどうか、かな。 竜の匂いが付いたものを運搬道具につけるのは良いね。魔獣が警戒してくれそうだ。 卵を運ぶために梱包材を使ったりロープを使って背負ったりするのも良さそうだ。卵がつるつるしていたらどうしようかと思ったけれど、両手で抱える程大きいなら縛り付けられるだろう。 荷馬車についても、御者以外は両手が使えるようになるから手数が増えそうだ。「道」の部分で特に有効なんじゃないかな。 >分担希望 現状挙手が無い「②卵に釣られた魔獣を駆除したり道を確保する人」にしておくけれど、卵を運ぶ人は絶対必要だろうし、状況次第で移動する予定だ。 ①卵を運搬する人 ルベア ②卵に釣られた魔獣を駆除したり道を確保する人 シルヴィア ③竜の足止めや陽動をする人 ジュスト ローザリカ
じゃあじゃあ、ルートの方はこのまま行く感じでプレに書いちゃうねっ。 ローザリカ氏と協力して偵察・観測の情報収集に回れる感じかなっ? ついでに使えるかは微妙だけど…ほかに必要なスキルも無いしいつもの 「光縛封」をアーケイン同様敵への障害物代わりにボクも持つよっ。 >分担 カぺル氏のまとめをお借りして…! ボク自身は先に出たり後から追いつく移動スキルも無いので、 卵の運搬に回ろうかなぁ? いざと言う時は盾で庇いつつ『闘気槌』で卵を避けて敵だけを跳ね飛ばす感じで。 勿論、卵の運搬に二人も必要じゃないなら②に回るのも可能ですっ。 ①卵を運搬する人 ルベア アリア ②卵に釣られた魔獣を駆除したり道を確保する人 シルヴィア ③竜の足止めや陽動をする人 ジュスト ローザリカ
分担纏めありがとう、助かるよ。 湿地が水場扱いされるかはMS裁量だと思うけれど、一応俺がウォーターウォークは持っていこうか。 竜を討伐するわけではないからね、攻撃や妨害用スキルだけで埋める必要はないし。
じゃあ、俺も分担を、と。 一応一番少ない②に挙手するけど、今の所シューター俺だけみたいなんで、①か③でシューターの手が必要なら移動可能だ。 ①卵を運搬する人 ルベア アリア ②卵に釣られた魔獣を駆除したり道を確保する人 シルヴィア カイン ③竜の足止めや陽動をする人 ジュスト ローザリカ
同班のカインはよろしく頼むよ。 湿地をウォーターウォークで渡れたらとても楽になるし、試してみるのは大いに有りだと思う。依頼品を直接抱えて運搬する依頼は珍しいし、アリアの道具作成も含め色々とやってみたいところだ。 >予定スキル 特性スキルは光縛封とスケープセイント。 他のスキルは魔獣駆除用のメテオライト二つと魔霞、ヒールの予定だ。 竜の炎のブレスもスリップダメージかもしれないから、スキルのどれかを解呪に変更するかも。
さて、明朝出発だね。 俺は汎用を戦術眼とテレパスでセットして竜の被害を受けにくいように①②の皆に情報提供。 特性はアーケインストリームとスネアージャベリンで足止め重視。 弓を持って飛行中の奴を引き寄せる為の射撃も織り交ぜつつ、あとは閃光塗弾で竜の視覚を一時的に潰せないかも試してみる。 それと湿地突入時はウォーターウォーク付与して運搬フォロー。 ざっくりとこんな感じの動きになるかな。 運搬組が2人いるし、望めるなら一人一個の二個は持ち帰れるよう頑張ろう。