【再起】吸血鬼のごはん
馬車猪
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シナリオID:2964
オープニング
そんな、極めて強力な吸血鬼が物憂げなため息をついていた。
「舌が肥え過ぎるのも良くないわね」
口をつける前のグラスをテーブルに戻す。
給仕が焦って別のワインを用意しようとするのを、冷たい目で見て退出させる。
淡い紋具の光に照らされた柔肌は青白く、その身を包むドレスは闇に溶け込むように黒い。
紅の瞳は澄んではいるが禍々しい。
外見は十代前半でも、永い時を積み重ねた個体に匹敵する格を持つ吸血鬼だ。
「ままならないわ」
ドミナ・A・ウォルプタスは傲慢を押し通せる強さを持つが超越者と比べるとまだまだ弱い。
太陽の光を浴びると気合いを入れないと肌が荒れるし、正面から食事に行けるのは小さな町や村程度だ。
こっそり潜り込むだけなら今いるような街への滞在も簡単ではあるが、ごちそうに近付くのはなかなかに難しい。多くの場合、とても厳重に警備されているからだ。
鋭く尖った犬歯を無意識に舐める。
高位授恵者の乙女の血は実に美味だった。
「子」としては10年くらい良い候補がいなければ考える程度だが「血袋」としては悪くない。
本拠まで連れ帰っても良いくらいだ。
狩りの場所と手段を脳内で検討しながら、騒々しい街の夜を興味深げに眺めていた。
●
驚愕の表情のまま吸血鬼は死んだ。
皮膚も肉も枯れ無残な残骸と成り果てても、全身に突き立った矢はそのままで無残な有様を衆目に晒している。
「騒がせてしまってごめんなさい」
少女が軽く顎を引く。
「まさか吸血鬼と遭遇するとは思わなくて。建物の被害は弁償させてもらうわ」
金と紫の瞳が好戦的に輝いている。
お前等は吸血鬼と分かって場所を提供していたのだろう。
反抗するならまとめて潰すぞと、言葉には一切出さずに要求を突きつける。
高級宿の人間はただ怯えている。
「不寝番は2交代で行いなさい。残党が襲ってくる可能性があるわ」
「はい!」
「がんばります!」
セニャの部下達は意気軒昂だ。
上司を囮に矢を浴びせるという滅茶苦茶な戦法を使ったとはいえ勝利は勝利。
吸血鬼1体の討伐というのはかなりの武勲だ。
(私を狙っていた? まさかね)
種子や物資の買い付けで猛烈に忙しいとはいえセニャはもう少し考えるべきだった。
並よりかなり下とはいえ1個の吸血鬼が執事めいたことをしていたのか、何故高級宿の従業員が抵抗しようともせず従っていたのか。
全ては、圧倒的な強者がいるからだ。
「ひさしぶりっ」
可愛らしい声には殺意も悪意もなかった。
だって、セニャは敵ではなくごちそうなのだ。
付与と命中に偏った稲妻を伴う竜巻がセニャを絡め取る。
格の高いセニャを殺すには足らず、しかし回避に特化したセニャでも躱せず対抗に失敗するほど巧みな術だ。
「元気にしてたみたいでうれしい」
あざとくも可愛らしい態度にセニャの部下達はすっかり騙される。
かぷっと噛みつきセニャをちゅーちゅー吸い始めても、10秒くらい目の前の光景を理解できなかった。
ドミナは軽く眉をひそめる。
ゆっくりと牙を抜き、責めるように血の滲む傷跡を舐めて獲物を色っぽくうめかせる。
「味、変わった?」
ドミナの演技が消え残酷な性質が表に出る。
「っ……全員退避っ!」
きつい酒に酔ったような顔でセニャが命令を下す。
部下達が慌てて高級宿の外へ飛び出そうとして、闇色に塗られたナイフで切られて悲鳴をあげる。
強い死臭の染みこんだ黒装束達が、高級宿を分厚く包囲していた。
「これほどの死霊術の使い手だったなんて」
セニャは笑おうとして少し失敗する。
「軽く死霊術を使っただけよ。あなた、相当うらまれているみたいね」
ドミナの紅瞳には揶揄より呆れの色が強い。
白い鳥が、吸血鬼と授恵者とアンデッドの入り乱れる戦場で窮屈そうにしていた。
●
「オペラ様が先程予知夢を見られました」
受付嬢は口頭で説明する。
文章にする時間が惜しいからだ。
「場所は帝国南部。確認できたのは吸血鬼が複数です」
既に1体を除いて滅ぼされているが、吸血鬼側の戦力はほとんど減っていない。
1体の戦力が飛び抜けて強大なのだ。
「今からビッグオウムに乗って現地に急行して下さい。敵の個体の名称は……」
ドミナ・A・ウォルプタス。
以前から冒険者ギルドが存在は把握していた元エルフの吸血鬼だが、交戦し撃退した冒険者によって白兵戦まで可能なことが判明した。
「未だ大規模な被害が確認されていないため数十人規模の討伐依頼は組めませんが」
単独ならともかく、死霊術で戦力を増やした場合は極めて深刻な脅威になる。
「また、予知夢で吸い尽くされそうになっている方がよりにもよって……」
帝国復興事業に深く関わっているので今死なれると非常に拙い。
「依頼の成功条件は吸血鬼の討伐ではなく被害者の救出です。困難な依頼になりますが何卒よろしくお願いいたします」
受付嬢はそう言って、冒険者に対して深く頭を下げるのだった。
解説
マスターより
リプレイ
「にゅぁっ」
セニャが変な声を出した原因は自身に巻き付いた網だ。
知識では知っていても目で見たのも自らが対象になるのも初めてなのだ。
網を使ったコルネリウス・アーラはセニャに説明しようとはしない。
セニャを死から遠ざけるのが最優先。格はあるのだからセニャ本人が気付いて行動するのが当然だからだ。
「死にたくなければここから離れた部屋で大人しくしていてください」
コルネリウスは宿の主人と従業員に強めに指示を行ってから、移動させたセニャのことは放置して危機的な状況にある外へ向かった。
「ちゅーちゅーお食事……そんなのもあるのか……!」
血の気の失せた首筋に穿たれた生々しい傷跡をアルマ・ヴァレンタインが興味深そうに見ている。今お肉が近くにあれば、我慢できないかもしれない。
「アルマあなたなにしに来たのよっ」
「いつものとおりだよー……?」
アルマの曇りなき眼には、いつもより少しだけ食欲が濃くてセニャの表情をひきつらせた。
そんな気心の知れたやりとりと同時にアルマの術が矢継ぎ早に発動する。
深夜なのに真昼の陽光を思わせる強い光が授恵者の力を大きく引き上げ、その直後にアルマによる治癒術が気絶寸前のセニャを戦闘可能な状態まで回復させる。
「死人にまで追い回されるようじゃ貴女、長生きしそうもないわね」
アウレーリア・フォン・ネーベルベルクはセニャの精神的な死角から行動する。
普段なら無意識に回避できるだろうセニャも、吸い殺される寸前の状況から救出された直後なので抵抗する意思も力もない。
「それとも、此世の鬼も彼世の鬼も斬って渡っていくのかしら。まぁ、それはそれで見物だと思うけど」
「あなた私をなんだと」
暗視能力も超聴覚も持たないセニャでは主戦場を離れた暗い場所はよく分からない。
しかしアウレーリアは暗視能力を持ち位置感覚にも優れ、曲がり角の向こうをのぞき見る手段まで用意している。
「アウレーリア!」
セニャは背後から殺気を感じることまではできたが回避行動には移れない。
薄く鋭く伸ばされた赤い爪がアウレーリアに直撃したように見えた瞬間、視界を白く塗りつぶすほど強烈なエーテルが放たれ結果をねじ曲げた。
(回避よりの装備に変えてカウンターフラッシュまで使ってもぎりぎりか)
そう考えるアウレーリアの顔に不敵な笑みが浮かぶ。
「解呪は?」
「1度アルマにしてもらったけど無理」
「じゃあ外へ突入ね」
それ以上の言葉は必要はなく、前衛と後衛は頑丈な窓を破壊しアンデッド蠢く戦場へ侵入した。
●
外灯も篝火もなく、しかし宿に入る前にアルマがばらまいた閃光塗弾の中身が微かな光を放っている。
優れた戦闘力と五感を兼ね備えた冒険者達にとっては十分以上の照明だ。
「また吸血鬼かよ……あいつはもういい加減お祓いでもしろよ。コレで何回目だ?」
優れた聴覚を持つアーテミシアは中で何があったかだいたい把握できている。
そして、外で何が起きているかも暗視能力がなくても分かる。
「弓矢を使うための広さが足りねーだろ。油断はせず見てろ」
玄関で混乱している若手に声をかけながら竜骨の戦槌を旋回させる。
通常時でも強力な武器が、光の刃を纏った上でアーテミシアの剛力で振り回されると速く大威力になる。
血の流れが止まった筋肉が、腐臭と黒装束の残骸と共に宙に舞った。
「暗殺者かよ」
アンデッド達は半壊しても刺突や魔力の籠もった斬撃を繰り出してくる。
アーテミシアは戦槌から片手を離して防御に集中させる。
多少の扱いづらさの代わりに高い防御力を持つ装甲で防ぎ、微かな装甲の隙間に届いた刃や衝撃も強靱な肉体で防いで無傷で耐える。
(こりゃ短期決戦だな)
濃い魔力の気配を感じた斬撃に対してはガントレットだけでなく全身鎧の装甲まで活かして守りを固める。
対物理ほどではないが十分に強力な対魔法の装甲で防ぎきれず、アーテミシアの皮膚と筋肉に傷がついた。
「ケッ、死んでからも顎で使われるとかざまあねえや。もう一回埋めてやるからさっさと往生しな!」
それでもアーテミシアの豊富な生命力を削り切るには全く足りない。
一撃離脱ではなく一撃に特化したアンデッドが、暴風を思わせる薙ぎ払いで打ち倒されていった。
腐臭があってなおアンデッドを捉え続けるのは困難だ。
気配を消す体術と、刃を黒く染めまでした暗殺用装備が認識を邪魔してくる。
「……なるほど、こいつらは俺の元同類か」
言い終えたときには黒装束ごと切り裂く3つの斬撃を繰り出し追えている。
レピド・クロサイトが飛び退くと、隠密能力と攻撃能力の割に耐久力が低い種類のアンデッドがどろりとした血を流しながら宿の壁にぶつかり地面へ転がる。
(元は暗殺者でも今はただのアンデッドか)
材料の性能を反映されているようだが五感や判断力は平凡なアンデッドだ。
目の前の敵だけでなく闇の中を移動中の別個体も、1度宗波を浴びせるだけでいつでも位置特定可能。
レピドの足の速さと判断力があれば1対1に持ち込むことは簡単だ。
そして、1対1の頭が足りない死体を破壊する程度、レピドにとっては児戯であった。
●
2本の矢で真正面から射抜かれたアンデッドが、微かに残った知性を活かせないまま仰向けに転倒する。
完全な奇襲や圧倒的な力の差があるならともかく、戦闘は基本的に生命力の削りあいだ。
しかし1本で強力な剣士の必殺技並の威力の矢がほぼ同時に2本飛んでくるとこうなる。
ここまで急速に打ち倒されると、まだ5体は残っていてもドミナの直接指示がない限りアンデッドは対応した戦術を選択できない。
「使い捨てか」
宿の屋上に立つセリオス・オーガストは戦場を物理的にも情報的にも俯瞰的に認識している。
アンデッドは退路を全く考えない配置と進路で攻めて来ている。撃退する難易度は下がるがセニャを守り抜く難易度は急上昇だ。
宿の窓の1つに新たな動きがあった。
そこがセニャの退路と判断したセリオスは、他の冒険者への支援を止めて矢のかわりに光弾を窓の外へ撃ち込む。
直後に生じた煙幕は窓を破壊した2人にとっても攻撃の邪魔になるがそれ以上に良い効果がある。
強引な突破で体勢がわずかとはいえ崩れた2人は、外のアンデッドだけでなくドミナにとっても絶好の標的だった。その標的に対して狙えなくした煙の効果は絶大だ。
セリオスは成果を理解した上で誇りもせず、他の冒険者が狙いにくいアンデッドを狙い撃ちにしていった。
ドミナが目の前の戦いに集中した結果、もともと低いアンデッドの判断力がさらに低下する。
戦術に合理性がないため、正面向かい合っての戦いなら多数相手に有利に戦えるティトでも敵を見つけて移動し仕留めるのは結構な時間がかかってしまう。
コルネリウスが迎撃に出る。
敵の進路はティトからの回避兼逃走であると同時に宿への接近で、玄関と破壊済窓以外を狙っているので防ぎきるのは難しい。
だがその程度の困難は今のコルネリウスなら簡単に踏み潰せる。
単純に加速することで剣の間合いに踏み込み、迷いなく鋭い斬撃を繰り出す。
敵の回避と反撃は一体だ。
片方の肩関節を破壊されながらもう一方の腕で長く伸びる突きでコルネリウスの首を狙う。
それは当たったはずなのに手応えは軽い。
しなやかに受け流され、柔らかな翼に受け止められたかのように何もできずに止まる。
速いだけでなく重くもある斬撃が、攻撃直後のアンデッドの腕をナイフごと斬り落とした。
●
「セニャ。俺がこいつを抑えている間に早く逃げるんだ!」
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトはセニャを自らの手で守りたいが、優れた戦術眼で自身にその力がないと分かってしまう。
吸血鬼ドミナに対し、攻撃を当てる気がしない。
「それでは壁にもなれないわよ」
ドミナは鋭い牙が見える笑みを浮かべ、ミゼリア・L・ステュクスの喉の皮膚を赤い爪で薄く削りとる。
その直後にはドミナの姿はミゼリアの目の前からは消えていて、アルベルトが駆け寄れる位置にいた。
「セニャを傷つける奴は俺が斬る!!」
アルベルトが怖じ気付くことだけは絶対にない。
危険は承知の上で、アルマによって強化された身体能力を攻撃に集中させ特大の剣を振りかぶる。
宿の構造を一目で見抜いたアルベルトは、高い天井にも照明にもかすらせもせずドミナへ超高速の振り降ろしを叩きつけた。
「1度見たわ」
ドミナの姿が一瞬だけ薄れる。
霧化とスキルを併用し、その破壊力を直接受け取れば活動に必要な力が半減しかなかった一撃を回避する。
アルベルトは諦めない。
床に切っ先が埋まった剣を跳ね上げる動作で力を込め速度も引き上げる。
ドミナも大技は何度もは使えず、鼻先を掠めた漆黒の刃に内心焦っていた。
ふ、と微かな呼気と共に雷の槍がルアンナ・ミュラーの手から離れる。
初撃は躱されたが絶対に当たらないという感触はなかった。
事実、第2撃である魔法の槍は意識して回避したドミナへ当たりその白い顔を微かではあるが歪ませる。
赤い爪がルアンナではなくルアンナが守ろうとしているものを向く。
しかしその向きにはルアンナがいて、セニャを直接は狙えない。
吸血鬼の剛力でエーテルを込めた爪を振るう。
頑丈な柱が両断されるだけの威力が水平に飛び、ルアンナが発した光も押しのけて深い傷を押しつける。
その分、ルアンナの背後にへの攻撃は甘くなってセニャへの被害はなしで済む。
不屈の闘志を持つルアンナは攻撃の手を緩めず、少しずつではあるが吸血鬼に傷を負わせていく。
「嫌な子」
柱を複数破壊されて揺れ始めた宿の中で、ドミナは眉を強く寄せた。
(……なぜ、でしょうか)
ミゼリアの思考は空回っている。
(あなたを、見ていると……けんじゃの石の、ささっているところが……とても……せつなくて……)
ドミナを肉眼で捉えているのに吸血鬼として認識しきれない。
エルフであった頃のドミナの笑顔と声が、記憶から消えているにも関わらず影絵のようにミゼリアの心に映る。
澄んだ赤い瞳と虚ろな紅い瞳が互いを映す。
「……邪魔っ」
足止め手段のないミゼリアなど無視すれば良いのに、ドミナは自らの感情の一部から目を逸らしてこれが正しい戦い方だと判断して爪に速度と重さを込める。
ミゼリアは痛覚を遮断するのには慣れている。
しかし心と消えたはずの記憶は壮絶な痛みに悲鳴をあげる。
(むねのおくが……もやもや、します……)
熟練の冒険者でも再起不能級の損壊を漆黒のエーテルが埋める。
肉と骨とそれ以外の再生が間にあっていないのに、漆黒のエーテルは防御のためにも機能している。
「汚らしい」
口にしてしまったドミナが自身に対する怒りと嫌悪を抱き、ミゼリアの態度に何の変化もないことに気付いて眉間に皺が寄るほど不機嫌になった。
(昔からの友人を傷つけてショックを受けて撤退って感じにならないー……?)
アルマのヒールも残り少ない。
(物語なら王道展開だけどあいにく敵は本物の吸血鬼よ)
アウレーリアがアーケインストリームによる足止めを図るがドミナは即座に結界をぶつける。
耐久力を有さないオブジェクトの場合、双方の術者による魔力勝負になる。
技術はアウレーリアが上だが吸血鬼の格による力押しドミナのアーケインが上回った。
「糞っ」
アルベルトがチャージングで仕掛けるが、仕掛けたアルベルト自身討伐失敗を悟っている。
移動速度が違い過ぎて攻めるのも防ぐのも相手が有利になってしまった。
「どんどんうってー……うてば当たるよー……!」
アルマは必要以上には動かず口を動かしている。
外のアンデッドが術者による直接制御もされず中継個体も存在しないことを確信し、最初は救出対象だった新人授恵者に射撃攻撃を行わせる。
もともと外は冒険者有利なので、決着がつくまでの時間は非常に短縮されたはずだ。
ルアンナは踏み込むことを恐れない。
それは命知らずであることを意味せず、敵を倒し自らは生き残るため最も効率の良い攻撃だ。
ドミナは赤い爪を振るう前にためらう。
戦闘不能には追い込める自信はあるが回復不能にまで追い込めるとは思えない。
しかしルアンナの雷の投げ槍は無視するには威力も精度も高く、もちろん他の冒険者も戦闘能力を維持している。
「これで……」
冒険者以外の人類戦力に包囲されるのを覚悟して戦いを続けるかどうかを考え、考えがまとまらず、漫然と攻撃しているうちに食欲が満たされていることを自覚する。
「勝ったと思わないことね」
目的を果たしたのに欲をかいたあげく小物っぽい捨て台詞を言うはめになったドミナは、血の気のない肌でも分かる羞恥の表情で夜の闇に消えていった。
●
コルネリウスにじっと見つめられ、吸血鬼と分かった上で客として扱っていた人間達がぶるりと震えた。
そんなコルネリウスに目配せされたアウレーリアが小さく息を吐く
どの程度の罪になるか決めるのは難しい状況だ。
「弁償ついでに貴女、上客になってあげたら? ちゃんとディナーご馳走してもらいなさいな」
酷い顔色のセニャに、冗談半分の言葉をかけて慰めてもいた。
「もう少し護衛にゃマシなの付けな。屋内で弓持ちしかいねえとかトーシロかよ。代官が聞いて呆れるぜ」
アーテミシアは油断なく周囲を警戒している。
「ンで、生活習慣で血の味が変わったって? オメー何回吸血鬼に吸われた? 牙とか生えてきたりしてねえだろうな」
じろりとセニャを見ると、何故かアルベルトが照れたように咳払いする。
「何があったんだろうな?」
血の味が変わった理由に心当たりはあるが、公の場で言うような内容ではない。
「犬歯は伸びてないよー……」
元々長めで尖り気味だし、という事実をアルマは言及しない。
本人はもちろん婚約者も舌と肌で実感しているだろうし。
「行ったか」
屋上のレピドは敢えて聞こえるように言葉にする。
五感でも暗殺者の眼でも分からなかったがドミナはかなり近くにいた。
波系スキルの効果は絶大なのだ。
(被害者以外を意識してるようだが……)
ミゼリアを1度ちらりと見て、屋外に転がる死体へ近付く。
(俺もこいつらのように雑に葬られる末路だったのだろうか、と思ってしまうと少し、な)
応援と調査が終わった後、葬ってやるつもりだった。
ミゼリアは警備しようとしても集中できず、一言断ってからドミナが去った方向を見つめている。
(かなしいけど……うれしい、もあって……)
相手が近くにいるときほど鮮やかではなくても、感情は今も残っている。
(どうしてなのかは、よくわかりませんが……たぶん……わたしは、あなたのことを……好き……なのだと、思い……ます……)
遠くの空が、夜明け前の色に変わろうとしていた。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準10 / 4〜10人
2023年05月11日 10時39分56秒 公開
参加者
相談掲示板
ウォーリアのコルネリウスです、よろしくお願いします。 セニャさんと部下の方も全員救助対象ですね。 まずはざっくりとした方針ですが、ドミナの対処、アンデットの対処で分かれる形になりそうでしょうか。 セニャさんの安全確保と回復をしたいので、こちらは分断を狙ったり、敢えてドミナから先制攻撃を受けてるなどで対応できるかなと。 部下の方々は接近戦は苦手なようですし、私達の方で近接の対応をして、アンデットへ遠距離攻撃で補佐して頂くのが良いかと思います。 あとは従業員の方は…巻き込まないように退避して頂く、ですかね。
まーた吸血鬼か。あいつはいい加減お祓いでもするかニンニクの山に埋めとけ。 ……なーンか、引っかかる部分もあるけど確かめる手段はねえか。 とりあえず部下は下げさせといたほうがいいな。ハッキリ言って邪魔だし。 オレはどっちを相手にしても構わねえぞ。吸血鬼相手ならバーバリアンデスチェーンでも使ってみるか。まだ使ったことねえし。
ウォーリアのアルベルトだ。 よろしくな。 セニャを傷つける奴は絶対に許さない! 俺はドミナを斬りに行くぜ。 初期位置はセニャの側だ。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー ドミナさんとは初顔合わせになるけど今回はデバフ系と回避系メインて話なので 抵抗や命中上げでインフィニティロアと回復とデバフ解除を同時にこなせるよう サイドヒールや解呪あたりを準備してセニャさん近くで開始予定だよ
今回の参加者は ウォーリア:4名(アーラさん・アーテミシアさん・ステュクスさん・俺) シーフ2名:(ティトさん・クロサイトさん) キャスター2名:(ミュラーさん・ネーベルベルクさん) シューター1名:(オーガストさん) ヒーラー1名:(ヴァレンタインさん) ヒーラーが1人なので俺も今回『ヒール』を持って行って回復役を兼ねようか?
そうですね、回復は各自必要になりそうな方は持つほうが良いかと思います。 私もヒールは自己回復用に積む予定です。 初期位置はセニャさんの近くで、その後は前衛の人数が足りない方へ向かう予定でいます。
キャスターのルアンナです、よろしくお願いします。 宿の従業員達には後で処罰を受けて貰うとして…表にいても戦える訳ではないですし中で待機で良いですよね? ドミナは本気で戦いに来る訳ではないようなので、最初はドミナ対応に当たって撤退し次第アンデッドの方に合流しようかと考えてます。
タイトルでごはんと呼称されている気がするセニャよ。よろしくね。
ごはん……(ぐー) レピド・クロサイト、シーフだ。よろしく頼む。 現状はアンデッドの対処に回ろうかと考えていた。 素体の特性を考えるといつの間にか増えたり隠れてたりするかもだし、索敵で数と位置の把握をしっかりやろうかと。
あの吸血鬼は逃がすってことでいいのか? そんならオレもヒールやら何やらで固めていつもの感じで行くけど。 デバフと回避じゃオレにとっちゃ大して怖くねえし…
ドミナもできれば逃したくないところではありますけれど。 アンデットは殲滅することになりますし、最低10体ということはそれ以上対処する前提なのですよね。 どこまで増えるか分からない分、アンデットへの対応も数を減らすまでは人数がそれなりに必要になりますので、ドミナを逃さない場合はアンデットの早期殲滅を目指す必要があるかと思います。 その辺りの認識はすり合わせが必要そうですね。
>対ドミナの認識 俺としては今回で叩き斬ってやりたい所だが、現実問題困難だと思っている、だから今回はドミナを撤退させるだけで充分だと思う。 但し、みんなの意見に合わせるぜ
キャスター、アウレーリアです。宜しく。 私はヒールを持ち込むより回避スキルで対処しようと思います。 どうせ敵は殆ど近接手段ばかりですし、被弾する気はありませんので。 基本的にはアンデッドを足止めして殲滅する方針です。 屋内戦は死角が多く面倒なので、セニャを連れて外に出るのを優先しませんか。 最悪、宿の壁をぶち抜いてでも退路を確保した方が良いかと。 外ならそれなりに見通しも取れ、従業員を巻き込まず、部下の射撃も生かせるでしょう。 ドミナは退く気のようですから、深追いしなくて良いかと。 それより救出対象と従業員以下民間人の安全確保の方が重要です。 隙を見て茶々入れてこないよう押し止め、撃破を考えるのはアンデッド掃討後ということで。
・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む まあ今回はセニャとその部下の救出がメインだからドミナが撤退するなら無理に追撃などはする必要はないだろうな。まあ倒せるならそれに越したことはないが とりあえず俺もアンデットのほうをメインに行うつもりなので初期位置は宿の外にするつもりだ。
とりあえずオレは黒装束相手にするぞ。宿に乱入される前に抑えたいしな
…ウォーリアの、ミゼリア…です。 すみません、出発直前のごあいさつに、なってしまいました…。 ドミナ近くの開始位置で、深追いはせずに、彼女が撤退するまでの、足止めに専念するつもり…です。 …そうだん、参加できなくて…本当に、すみ…ません…。