【南乱】港湾都市ルカの受難
紀藤トキ
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シナリオID:2953
オープニング
カーチスの姉、クレア・クレイヴラーは、現在事態が紛糾しているエスト・ポーラの市長夫人である。懐妊が分かった年末に、実家での出産を勧められてラザフォード辺境伯家へと戻っていた。だが、その途上に海賊による襲撃が発生し、心配したローヴィス市長が帰路の護衛にとラセル・ランドン提督の小艦隊を送ってきている。
「……よく考えたら、最初からおかしかったのよ。幾ら商船護衛のついでがあると言っても、自分の妻の為に市の海軍を派遣するなんて公私混同をするような人ではなかったのに」
領主一族であれば、護衛の騎士がつくのが当然。そんな生まれのクレアだから違和感に気付けなかったのだろう。都市同盟には領主などいない。仕組まれていたのだとすれば、一体どの時点からなのか。何が目的なのか。分からない事は多いが、分かっている事はこのまま手をこまねいては、人が大勢亡くなるという事だ。
「ローラさん。どうか、お願いします」
「ああ。ウチの旦那――、ディンドルフ侯爵は自業自得だが、戦争なんていいもんじゃないさね」
「軍は夫の指示だと言われれば断れませんが、送られてきた書簡は絶対に夫のものではないわ。私の名前でそう言って構わない」
窓から見下ろせば、裂いたカーテンをロープにしても身重の身で降りれるような高さではない。生まれも立場も違う、海賊貴族の情婦にして船長の女が自分と同じ側にいると、クレアは信じて送り出した。彼女も半年ほど前に子を産んだと聞く。信じる事が出来たのは、それが理由なのかもしれない。
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時を少し遡り、その朝。クレアは届いた書簡を前に、疑念を抱いていた。書簡には、ラザフォード辺境伯家がディンドルフ侯爵家を討伐するのであれば、ランドン提督の艦隊を参戦させるようにと書かれている。書簡の文字は夫の手になるもののようにも見えたが、どこか違和感があった。
「クレア様。ディンドルフ侯爵家の港にはリブラネスタの商船団がいる筈です。市長は王国の内戦に直接かかわろうというのではなく、同盟の不始末を取り返さねばならぬとお考えなのでしょう」
「……リブラネスタの?」
「エドガル殿が王都を追放された後、譲り受けた薬物の受け取りに来ていたのではないか、と。無論、推測ですが事実であれば大問題だ。取り調べるべきと考えます」
ランドン提督はピンと立った髭を撫でつつそう言うが、都市同盟は一枚岩の集団ではない。リブラネスタの船団を臨検する権利などエスト・ポーラには無く、つまりは武力行使を行うという話になろう。それも、他国であるリーンエス王国の港でだ。ただでさえ都市同盟内にリーンエス王国と開戦すべきなどという声をあげているエスト・ポーラが火を起こせば、大火事になりかねない危うい情勢である。
「幸い、改心したエドガル殿が協力を申し出て下さっています。誰何には彼に答えて頂きディンドルフの旗を掲げて近づけば、相手は油断するでしょう。御決断を、市長夫人」
「いえ。これは夫の意向とは思えません。そもそも市長ではなく夫人の私に判断の権限は無いわ。わざわざそれを問うという時点で、偽物でしょう」
おそらく、夫の名を騙って書簡を送って来た何者かは、市長夫人としてのクレアではなく、カーチス・ラザフォードの姉から依頼があったと言う形式が欲しいのだろう。そう推測したクレアに対して、ランドン提督は納得したように頷き返した。
「さすが、賢妻と名高いクレア様。では、この件に関するご指示を頂くのは止めましょう」
「……提督。書簡が偽物だと分かってくださったのですね」
「いえ。全てが終わってしまった後でお名前を借りる方が、心が痛まないでしょう。しばらく、奥方はここでお休みください。……ああ、ローラ船長も協力してもらえませんでしたので、一緒に軟禁させて頂きます」
安堵の笑顔を見せたクレアの表情が強張る。ランドン提督は優雅に一礼して退出した。
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辺境伯の艦隊に遅れる事半日、エスト・ポーラの艦隊は密やかに出港した。多少の疑念は有れど、軍と言うのは上意下達の組織だ。ランドン提督の元に市長からの正式の指示があったといわれれば、クレアのように抗弁する船長はいなかった。
「リブラネスタの艦隊は、ディンドルフ領第二の港湾都市ルカにいます。うちはラザフォードほど暢気じゃないのでね。商船ならともかく、軍船は領都に入れない」
「領都ではない分、港の防御は甘いというのはありがたいですな。策はありますか」
「火攻めです。火船を突っ込ませて、港から出さずに潰すのが上策でしょうね」
「なるほど。小型船を二隻……、いや、三隻使いましょう。それでリブラネスタの船団を葬れるのならば釣りが出ます」
少し前までやつれていたエドガルは、活き活きと軍事作戦を立案していた。ランドン提督は感心した風情で相手に喋らせている。実際、現地の地形や海流を知っている協力者の存在は有り難いところではあった。
「火が回れば市街への被害が出そうですが、ご容赦いただけますかな?」
「大事の前の小事ですよ。今は我が家の無実を証明するのが第一です。魔獣を狂わせる薬物をばらまいていたのが、リブラネスタの連中の仕業と言う事に成れば酌量もされるでしょうからね」
彼らの積み荷の中には、王都のエドガルの邸宅から持ち出した薬物が積まれているだろうと、エドガルは断言する。実際にそこに薬が見つかるかは重要ではない。そう言う事にすれば、何とかなると彼は信じ込んでいた。
「……ええ。侯爵家の嫌疑を晴らしたのはエドガル殿であると、私からも申し上げましょう。今回の乱を乗り切れば、次の侯爵は貴方だ」
そううまく行く筈はない、とランドンは思っているが口には出さない。エドガルはうまくすれば侯爵から伯爵へ落ちるくらいで家が残ると踏んでいるようだが、辺境伯は王家から国境防衛に関する大権を委ねられている。辺境伯の正式な弾劾に対して軍をもって抵抗すれば、それは明白な王国への謀反だ。よくある貴族同士の小競り合いと同じにはいかない。
(まあ、我々にとっては関係ありません。せいぜい、大きく炎は燃えてくれれば良い……)
数百年もの間、エスト・ポーラ海軍はリブラネスタ海軍に劣るとされてきた。その評価を自分が覆せると思えばこそ、彼は今回の話にも乗ったのだ。
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軟禁場所を脱したローラは、冒険者ギルドへ駆け込んでいた。
「ディンドルフ領のルカに、襲撃がある。相手はエスト・ポーラ海軍の船だ」
「まさか、同盟が王国へ戦争を? しかし、冒険者ギルドは中立です。国家の戦争には関われない」
「こまけぇ事をうだうだ言うな。大昔に、誰も望んでない戦争を止めてできたのが冒険者ギルドだろうが!」
実際の歴史はそんなに綺麗なものでは無かったかもしれないが、戦争を厭う授恵者達が集ったのは事実ではある。判断は受付では無理だと上へ回され、事情を聞いたギルドマスターは難しい顔をした。
「……本当に偽の命令で動かされているのか? エスト・ポーラの海軍は」
「ああ。それでもギルドは手出しが無理だって言うなら、せめて街の被害を減らしてくれ。もしもアタシがルカを攻めるなら火攻めにする」
「むう、風向き次第では市民が犠牲になるな……」
最終的に、受け付けられたのはルカ市に対する攻撃を防ぐという内容の依頼となった。それ以上は臨機応変に現場判断、となろう。
解説
マスターより
リプレイ
貴族令嬢としての身分と王名での証明書を見せても、レティシア・レインフィールが港湾都市ルカの代官に面会するまでは多少の時間が掛かった。貴族の家名を出されて面食らった門番から邸内へ連絡が入り、知識のある者が書面の有効性を確認するという手間を考えれば、代官の対応は十分に早かったといえる。
「火攻めだと!? おのれ、なんたる事か!」
窓の外へ目を遣り、思わず怒声をあげた代官であったが、貴族令嬢と面会中であったことをすぐに思い出した。
「……失礼。民をこの屋敷に避難させようという、お嬢様のお申し出は妥当なものです。すぐに門を開けさせましょう」
(職務への責任感も、緊急事態への対応力もある方のようですね。襲撃に驚いているのも本当の事のようですか……)
実力主義の帝国ならいざ知らず、リーンエス王国においては座る椅子に相応しい人品が保証されてはいない事を、貴族であるレティシアはよく知っている。
「この街の皆様が無事でいられるか、代官様の肩に掛かっておりましょう。私もご助力いたします」
それとなく責任を匂わせ、自身を値踏みするレティシアの視線に気づいてか、代官は慌てたように首を振った。
「いえ、他家のご令嬢を危険に晒したとあっては、御屋形様に申し訳が立ちません。お嬢様のそのお姿はヒーラーなのでしょう? 屋敷で怪我人の手当をして頂ければそれで十分です」
彼の立場からすれば当然の申し出であろう。自分の身分を知らなかったことにしてくれと交渉するには、会うまでに関わった人数がさすがに多すぎた。さすがに、街中での避難と火船の阻止については仲間に任せるしかなさそうだ。
「火のついた船が突っ込んでくるぞ!」
ディレイン・オールドケイジの声が市中に響く。最初は疑い半分だった人々も、沖合の船が炎を上げながら近づいてくるが見えると、取るものも取りあえず海側から離れようと走り出した。
「船は私の仲間が止めに行きました。その間に、高台へ逃げてください!」
リサ・ベイカーも普段に無く声を張る。二人は避難を促しつつ、余裕のある人には声かけや手助けを依頼していった。顔見知りや家族を助けようと、逃げる人々とは逆方向へ走る姿に心の中で頭を下げる。
(エスト・ポーラで何が起きてるの?)
迫る火船は母国の船だと知り、リサは不審を新たにした。伝え聞く市長の言動も、市民の声にも違和感がある。郷里はリブラネスタへの対抗心こそ強かったが、ここまで強硬な姿勢を取るとは思えなかった。
(ひとの生活や命をなんだと思ってるんだか……)
遠く海上に見える船団へ、ディレインは文句を言いたい気持ちを抑えきれなかった。だが、今はそれどころでもあるまい。止めに向かった仲間の乗る小舟へ目を遣り、桟橋へと向かった。
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(小型船にはエスト・ポーラに並んでディンドルフの旗……。エドガル辺りの指示か? 一族の所領に火を放つとは、見下げ果てた男だな)
ナハティガル=ラーはその嫌悪感をポーカーフェイスに隠し、敵船を睨んだ。最後はエアーライドで近づくにせよ、ある程度の距離までは小舟で近づかねばならない。敵船の阻止に回ったのは彼を含め5名で、話を聞いた海兵が小舟に乗せてくれている。横一線の3隻の敵艦に対し、男女で別れて2艘で向かう事となった。
「同盟が王国に戦を仕掛けるのは同盟がジリ貧になる悪手かと思っていましたが……」
ナハティガルと同じ船に乗るナハト・シュライバーは、眉間に皺を寄せる。目標がリブラネスタの船団だとしても、港に火を放てば宣戦布告も同然だ。同盟の方ではアンデッドなども暴れているそうだから、王国相手でも善戦するのやもしれない。しかし、予期できる結果は共倒れである。彼の故国である帝国復興への援助どころではなくなる恐れも十分に考えられた。
「街の人々の安全と平和を護る為にも、こんな事許しておけない、絶対に止めなくちゃ!!」
ララベル・サン・ディーベルも、きりりと前を向く。彼が担当するのは真ん中の敵艦だ。
(火付けは重罪だなんて、どの国でも常識でしょうに……!)
逆側の小舟で市街への被害を想像したロゼットの手に力がこもった。小型船の火勢は既に強く、乗り移っての消化は難しい段階だ。相手側の市外への被害を厭わぬ姿勢が垣間見え、それでも何とか被害を減らさねばと心に定める。
「急いで向かいましょう。なるべく早く乗り移りたいですね」
ロゼットの後ろ、コルネリウス・アーラは海兵達に交じって櫂を漕いでいた。本職のようには行かずとも、授恵者の筋力でカバーする。その甲斐もあって、彼女達の船が僅かに先行した。が、船までの距離が近づいた所でララベルとナハティガルの両名が海面を駆け抜ける。
「よし、一番乗り! あ。二番かも? ってどうでもいいか。これ以上風を受けさせはしないよ!」
船の舷側に鉤付きロープを引っ掛けて中央の艦へ踊り込んだララベルと、左の艦に駆けあがったナハティガル。ララベルはそのままマストの上へ走り、帆を固定しているロープを切り裂いていく。風を受けていた布地を役立たずにするには、目で見て対処するのが手っ取り早い。
「これで速度は少し落ちた、かな? うん、良し! 次!」
中央艦はララベル1人で回っているだけに、出来る事の見切りが必要だ。彼は残る帆を操作して右か左へ寄せる事を狙っていた。左の艦では、小舟の上に立ち上がったナハトが弓を構えている。大きな目標である帆を狙うなら容易だが、できればマストを折ってしまいたい。
「既についている勢いは止まりませんが、港に到着するまでの時間が稼げれば十分です。あとは、ナハティガルさんにお任せしますよ」
そのナハティガルは舵輪のある筈の位置へ向かったが、舵を固定したうえで舵輪を取り外された状態だった。彼は直前まで船員が乗っていると踏んでいたが、どうやら最初から風任せで突っ込ませるつもりだったようだ。
「直接操作するには、下に降りる必要があるか……!」
透視で舵の固定状態を確認し、息を止めて開口部から中に飛び込む。内部は甲板で燃える炎のせいでとんでもない暑さだったが、まだ火の手は回っていない。ずらりと並んだ壺に、嫌な予感がした。
「これは油の壺か。一つづつ捨てては間に合わん。急がねばまずいな」
固定に使われているロープを切り、噛ませている木くずを折りとると何とか動きそうな状況となった。しかし、舵柄を傾ける為の機構は壊れている。手を伸ばしたナハティガルが上半身に力を込め、盛り上がった筋肉から汗が滴り落ちた。
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宙を踏める男性陣一手遅れて、女性陣は右の艦に取り付いた。
「コルネリウス、帆をお願い。私は舵を何とかするわ」
「わかりました。まずは大きく切り裂いてみますね」
甲板を踏みしめ、コルネリウスは剣を一閃させる。衝撃刃が帆に裂け目を作り、加速は目に見えて衰えた。が、残り二隻よりもまだ速い。裂いてダメなら全部無くせば良い、と彼女は考えた。
「ならば、帆柱ごと……!」
握りを直し、剣を水兵に近い角度で振るう。物体の破壊には適した角度と力の伝え方があり、コルネリウスはそれに忠実に身体を動かした。帆柱の根元が見事に破砕され、最初はゆっくりと、徐々に勢いをつけて倒れる。余りの見事さに、自分でも驚いてしまう程だ。
「……はっ! 倒す方向を考えておけば良かったのでは!?」
「ちょっと! 倒すなら倒すで、倒れるぞー! とか言ってよね!?」
横倒しになった帆柱は海面に接するとしばらく引きずられてから船から離れて海へ没した。綺麗に断ち割られたせいで、船が大きく揺れる事は無かったが、ロゼットは面食らったようだ。
「舵は何とかなりましたか?」
「舵輪が外されているの。手ごたえからすれば、滑車から鎖も外れているわね。どうなっているかは、中に入らないと分からないわ!」
船足は帆柱を折ったおかげで大きく衰え、中央の艦が先に出そうだ。ララベルは先に船足を落とした左側の艦にぶつける方が良いと判断し、帆の一部を残すことで女性陣の艦と逆に誘導している。
「……ロゼット、コルネリウス! 舵は船内で固定されているが、外す事は可能だ!」
左側の艦が大きく転舵したと思いきや、艦内から飛び出したナハティガルがそう声をあげた。舵柄を直接動かすという授恵者ならではの力業で無理やり方向を変えたらしい。ナハトが狙い撃っていた帆柱には裂け目が出来、めきめきと音を立ててゆっくり裂かれている様子だがすぐに折れるというものでもないようだ。
「あの二隻は衝突させられそうだけど、こっちがぶつけるのは位置的に難しいわね……。ならば、港の外れに誘導しましょう」
「手伝います。って、熱っ」
右端の艦を更に右へ向け、港の外側へ突っ込ませれば、被害を減らせるだろうとロゼットは読んだ。衝撃で割れた壺の油に引火したようで、艦内には火の手が回り始めている。燃えている構造物ごとコルネリウスが破砕し、熱気を掻き分けてロゼットが下層へ駆けおりた。
「鎖! 叩っ切るわよ!」
「舵はこっちに回せばいいんですね。合わせます」
舵を固定している鎖をロゼットが斬り飛ばし、コルネリウスが体当たり気味に舵柄を揺らす。ゆっくりと方向が動くのを感じたが、これ以上留まっては熱気が危険そうだ。
「もう一度甲板に上がるよりも、このまま……」
幸い、バックファイアが起きる程に気密が良くはない。壁面をぶち破ると、涼しい外気が吹き込んで来た。2人が海へ身を投げるのと同時、後方で衝突した二隻が派手に炎上する。
「こんなのが、街にぶつかけられる所だったんだ……。止められて、良かった」
最後まで帆の様子を微調整をしていたララベルが、飛び出した海上で火の粉を払いながら呟いた。小舟のナハトが、大きな声で戻って来るようにララベルへ伝える。ナハティガルは一歩先に戻っていた。
「――そう簡単に逃げられると思うなよ」
思うような戦果が上がらなかった事は見えているだろう。洋上遠くを去っていく船団を彼は一睨みしてから、派手にぶつかった二隻へと目を向けた。中央の艦に左の艦が斜めに突っ込んだことで双方の船体の耐久力が限界を超え、ゆっくり海中に没しつつある。その間も惰性で多少は進んでいたが、港には届かずに沈むだろう。残るは、大きくコースを変えた右側の一隻のみ。
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「来ましたね……!」
「ああ。このコースなら、右へ曲げるのが正解か」
人々へ声を掛けつつ、海岸へ出たリサとディレインのすぐ近くに、燃える船が迫っていた。可能であれば、古い船を障害物代わりに並べられないかともリサは思ったのだが、すぐに出港できるような小舟は役に立ちそうはない。ただ、バリスタを回して砲撃を仕掛けようとしていたリブラネスタの海兵に気が付いたのは瓢箪から駒である。仲間が阻止に向かっているので撃たないで欲しいと言えば、さすがはギルドの本拠地の住人だけあって冒険者への信頼も高く、すぐに納得された。
「その信頼には、答えないといけませんね」
「柄ではないけれど、ここはおじさんも踏ん張り処だよ」
帆柱を失い最後の加速はなくなったものの、慣性に従った速度はまだ保っている。その正面やや左に、光る柱が二つ。勢いのままにぶち当たった小型艦は激突の衝撃で船首を破壊しつつ、右側へと進路を変える。港の端にそのまま突っ込むと、衝撃で残る油壷もすべて壊れたのか派手に艦内から炎を吹いた。
「逃げ遅れてる人はいないかな? いたら返事を……」
港からは外れたとはいえ、幾らかは家屋が並んでいる。ディレインが普段に似合わぬ声をあげ、リサは火の粉が舞う中、引火するようなものが残っていないかと目配りした。残された漁師の小舟や網などはさすがに諦めるしかないが、入稿しているリブラネスタの商船団からは炎は遠い。海上の可燃物が少ない現状で、ここから大きく燃え広がる事は無いだろう。そうこうするうちに、海上で火船を阻止してきた面々も、抜き手を切って投げ出された場所から海岸までを泳ぎ切ったロゼットを筆頭に、急いで陸地に戻って来る。
「被害はどうあれ、エスト・ポーラへの糾弾は避けようがないわね……」
海上でまだ燃えている二隻と、港の端に座礁し燃え上がる一隻を見やって、ロゼットはため息をついた。幸いなことは、警告が早かった事と市民が協力的だったことで、死傷者や経済的な損害が最小に抑えられた事だろう。心配げに駆け回っていたディレインが治癒したのは、逃げている最中に転んだ数名のみ。代官屋敷に残らざるを得なかったレティシアは、ヒーラーとして治療を行うよりも、人々を言葉で安心させる方に忙しかったようだ。
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緊急であったため、事前にラザフォード領に向かう事は出来なかったが、事後にレティシアは依頼主のローラ船長に当地の情報を確認した。軟禁されていたクレア夫人はラザフォード側で対応され、救出されていたらしい。留守居の辺境伯の家臣らが保護しているという事なので、彼女の死を戦禍の拡大に利用する為に身柄を狙われる懸念を伝えることとした。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2023年05月03日 19時21分37秒 公開
相談掲示板
シューターのナハトです、よろしくお願いします。 まず港に突っ込まれるまでに3回アクションが出来るそうなので、そこの対応次第では港への被害を抑制出来そうではあるのですが……。 でも完全に被害ゼロにするには難しそうですし、船に対して仕掛ける人と、避難誘導や負傷者対応鎮火支援の為に港で対応する人の2手に別れた方が良いでしょうか? ただ狙いや作戦次第ではどちらかに全員寄せるのもありかと思いますし、2手に別れる場合の人数比についても同様かと思います。 個人行動に関しては船対応、射程の長さを活かして【爆】付きの射撃スキルで燃えているものを吹き飛ばして延焼範囲を抑制できればと考えておりますが、皆さんの行動や作戦次第で調整していこうかと。
ヒーラーのロゼットよ。 火付けは重罪、というのは万国共通だと思ったのだけど…。 いくつか行動例を考えているのだけど、 船に対して妨害か、港での延焼防止かで、火災の被害を 抑えるために何かできないかと思っているわ。 船の破壊は個人では何ともしがたいし、乗り移りは私じゃ難しそう。 殴ってコース変更というのは、豪快な方法だけど、文字通り攻撃で 進路変更が可能なのかしら…(汗) 並んで突っ込んでくる3隻の、外側にある船の片方だけでも 進路をズラして、真ん中に向けてやれば途中で船同士が衝突か、 港に到達した時に延焼する範囲が狭まるか、と思ったり。
ウォーリアのコルネリウスです、よろしくお願いします。 そうですね、可能な限り被害を減らすという認識でいます。 自分に何が出来そうか、悩み中ではあるのですけれど 射程は余り取れないのですが、船に直接乗り移って帆や操舵をなんとかして進路変更をするか 港での延焼防止か…で今のところは検討できたら良いなと考えています 全体の流れや皆さんの行動に合わせて変更もしていく予定です ロゼットさんのおっしゃるように、3隻同時に巻き込んで少しでも進路変更が出来たら良いですよね
帆船のようですし帆、もしくはマストに損傷を与えれば軌道がずれて他の船にぶつかってくれたりしませんかね? ただ任意の方向にずらすとなると単純に破壊だけより、固定されている舵をどうにかして操作する人も用意した方が確実な気もします。
ディレイン・オールドケイジ、ヒーラーだよよろしく。 おじさんは港側で負傷者の治療かな。 走り回るか、どっかに拠点を作るかは考え中だけど…火の手がまわる可能性を考えると、避難の声がけしつつ走ることになりそうかな。 風向きと反対側から爆風とか当てたら、移動速度も緩まるかねえ…
>船 ・小舟で小型艦に近づく ・鍵縄とかで小型艦に乗り移る ・舵と帆を何とかする これで3回行動くらいに数えてもらえるかしら。 舵と帆を同時に1人では厳しそうだから、2人であたって、 なんとか1隻の進路変更の可能性ありって感じかな? 左か右の小型艦の進路を、真ん中の小型艦に向けて衝突させて、 止められなくても港での延焼の範囲を減らせるかな、と。 私はやっても良いのだけど、どなたか一緒にやれないかしら? 2人いれば1隻、もし4人いれば左右2隻にあたれるけど…。 やることやったら海にダイブ、港にあがってから、 港での対処に参加もできそうかな、と思うわ。 >避難の拠点 分かってる範囲だと、高台にあるらしい代官の屋敷が無難かしら。
>船 そうですね、船の対処に回る場合の3回行動はロゼットさんのおっしゃるようなイメージと同じでした。 同時に動くのでしたら私は一緒に行動できますので挙手しておきますね。 帆は、ばきっと破壊しても良いのでしたらハンマーブレイクを持とうかな、と思っています…。 舵の方は単純に破壊するわけにもいかなさそうなので、固定をなんとか解除する方が良さそうですね。 >避難の拠点 既に上がっていますが、高台が安全そうかなと私も考えています。
まったく…エスト・ポーラは何をやってるのか…… 遅くなりました、ヒーラーのリサです。 船の進路妨害、中央に向けて端のを、 というのですが、 左側の船の右舷前方、右側の船なら左舷前方に 光縛封などで障害物だしぶつけさせると 反動、というか、進む力があるので、 障害物を支点として曲がりませんかね?
シーフのナハティガル=ラーだ。――宜しく頼む。 >船 港に突っ込まれる前に船を停止/撃沈する事が可能ならそれに越した事はない為、 先ずは船への対処をメインに考えている。 その場合の3回行動はロゼットの挙げている認識と相違ない。 行動如何によっては1工程減らせるかどうか、といった所だろうか? 船の正確な並びは良く分からんが、 先頭の船を停止or進路を変えて後続の船への衝突を狙ってみるのは面白そうだ。 >小型艦への接近 エアーライドで海上を跳躍+メイン&サブアクション消費で移動を行なえば、 小型艦までの距離にもよるが1手節約できるかも知れん。 その場合、1人位なら抱えて行けるかも? いや、無理か……?(謎) >避難の拠点 高台の代官屋敷で問題ないかと。
>帆と舵への対処 帆はマスト棒を折るか、帆を切り裂くか、ね。 舵は「固定」の描写が分からないのがね…。 舵輪(ハンドル)を縄で縛ってるとか?かしら。 >コルネリウス ハンマーブレイクは良いスキルね。 挙手次第で、やってみましょうか。 舵担当が私なら解除は想像任せになっちゃうけど(汗 >リサ >光縛封 曲がる、とは思うわ。具体的な変化が想像できないけど…。 帆が風を受けてるから、向きを戻す力?も働きそうなのが。 海面に光縛封って設置可だったかしら?やったことなくて。 >ナハティガル >1人位なら抱えて行けるかも? 以前、シグモル火山の決戦で負傷者を回収していたのは 空中移動じゃなかった…かな?(記憶あやふや) ただ重さを理由に移動のマイナス?くらいは判定されるかも。 >船の並び 港への火攻めが目的なら、縦列より横並びかな?と。 (海から港への風) ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ 海海海海海海海海海 港 船 船 船 港 港 港 港港港港☆港港港港 こんなイメージ。 そのまま突っ込まれると3カ所で延焼が発生しそうだから、 せめて港の中央側(☆)に船を寄せていきたいなと。 避難もしやすくなるし、消火活動も人を集中できるかなって。
〉やる事 取り敢えず、個人行動としては、避難声掛けしつつ、船到達予想地点の燃えるものを極力除去等の延焼防止と 到達後の消火活動と考えています。 〉光縛封 舵固定と帆船という一定の推進力を考えたら、進む方向を変えたらそのまま真っすぐ進むため、戻ることは無いと思いますね。理屈としては… 設置については、ルール的に空間に使えないことはなさそうなのと、高さ20メートルなので大抵の港なら海底からでも海面に出そうではありますけど… ただ、舵固定は事前に知ってるか不明なのと、船同士の間隔から想定すべき動かす向きとかを考えると、設置位置や時間の調整なんかがシビアかな?と思いますので、手をかける分の効果があるか微妙ではありますね…
ごきげんよう。 ヒーラーのレティシア・レインフィールと申します。 発言が遅くなり、大変失礼を致しました。 皆様、よろしくお願い致します。 >避難拠点 私も、高台の代官屋敷とする事に異論はございません。 >船 対処としてはロゼット様が挙げて下さったような行動で 恐らく三回行動となるのではないかと、私も認識しております。 ナハティガル様の仰るように何かしらの形で一工程を減らせましたら 行動や作戦の幅も広がりそうではございますね。 >光縛封 【魔法の壁】や【魔法の泥沼】は設置条件はございますけれど 【結界】については特に明言されておりませんね……。 私も水上設置の経験などはございませんが 仮に不可能だった場合は海との境となる港の方に設置する事で 逸らす事は叶わずとも避難時間の増加は見込めますので ご用意する事が完全に無意味になる事は無いのではないかと存じます。 >ローラ様、クレア様 此度の依頼の主目的は街の被害軽減ではございますけれど クレア様に関しての方針は定めておいた方がよろしいかもしれません。 監禁場所についてはローラ様に訊ねる事は可能でございますし ある程度の範囲内でしたら彼女の協力もお願い出来ますでしょうか? 仮に監禁されいらっしゃるのが高台の代官屋敷でしたら避難誘導も兼ね 彼女の捜索及び保護も可能でございますね。 個人的には、クレア様がこのまま行方不明 あるいはエスト・ポーラ側に連れ戻されるのは防ぎたい気持ちはございます。
>船 現状アプローチしようとしているのはロゼットさん、コルネリウスさん、ナハティガルさん、僕の4人でしょうか? 見落としがあったら申し訳ありません、訂正して頂けると助かります。 一手目は射程圏内までの接近、2手目と3手目は2隻狙うにしても1隻の場合でも僕は帆もしくはマストへの射撃を考えています。1手目で2隻狙えるポイントに移動出来たら効率良いんですけど。 操舵輪は鎖や縄で固定している可能性が高いのではと思いました。 斬撃系で固定しているものだけ除去出来ればコントロール出来そうかと。 >光縛封 海上設置不可能で船の進路妨害に使えなくても港に展開して被害軽減には使えそうですよね。 >クレア様 エストポーラ側に連れ去る場合、移動はおそらく海路ですよね。 港側の騒動が落ち着くまで大きな移動はなさそうですが、混乱に乗じてローラさんが知っている軟禁場所から移動させられる可能性はありそうです。 タイミングとしては船が想定通りの被害を出し損ねた、冒険者の介入があることを向こうが察知次第場合でしょうか。 レティシアさんの仰るように軟禁場所が高台の代官屋敷と想定するなら、避難民をそちらに誘導することで向こうに出し抜かれるのを防止出来ますし、調査まで手が回らなくても後顧の憂いを断てるかと。
>ロゼット >>エアーライド シグモル火山の決戦の時はホライゾナルジャンプとエアーライドを併用していたような、していなかったような……。(記憶が曖昧)← いずれにしても抱えて移動する事自体は出来そうだが、移動力がマイナス判定される可能性があるのがネックか。 >行動 俺はエアーライドで海上を滑空して船に接近後、真・壁歩きで乗船する予定だ。(希望者が居る場合、抱えて行く事も可能) 乗船後は帆を攻撃して破損させるか、操舵での方向転換を試みる。 操舵に細工されている場合に備え、シーフズツールも持って行こう。 >クレア 軟禁場所がルカだった際は難誘導も兼ねて捜索と保護する方向で異論はない。 ただ、ルカ以外の場所に軟禁されている場合は保護するのは難しいかと。
拠点は高台のお屋敷ね、了解。 となると、俺の行動としては避難声がけ→逃げ遅れた人の救助や応急処置後に拠点へ送り出し、ってところか。 声がけしつつ、手伝いを頼めそうな人には協力をお願いしようかな、と。 光縛封やるならもってくよ。
>船 なら船の1隻は私(舵)とコルネリウス(帆)で、 もう1隻はナハティガル(舵)とナハト(帆)で、どうかしら。 ナハトが射撃で帆を狙うなら、ナハティガルは空中移動を 単身で動ける分、スムーズにいくから相性が良さそう。 こちらは手堅く小舟で接近、縄で乗り移る方法で。 2隻の船を、なるべく進路変更して衝突、できなくても 港への延焼を狭い範囲に限定できるように動かしましょう。 ディレインは避難誘導と、救助や応急処置を、 リサは避難誘導と、港で船の到達地点での消火関連ね。 光縛封は一応、持っていってみるわ。 どこでどう使うかは、ちょっと展開次第になりそうだけど。 >クレア・クレイヴラーさんの居場所 地名と人物が多くて迷うけど。 シナリオの舞台は「ディンドルフ領第二の港湾都市ルカ」で、 OPでのクレアさんの居所は「ラザフォード領」じゃないかな? 軟禁とあるし、住まいの建物から出さない程度の監禁かなと。 火攻めを無事に解決できれば、自然と解放されるかな?って。
連続ゴメンなさい。 レティシアなら王国の貴人だし、高台の屋敷で代官に火攻めことを 伝えてもらって、避難の受け入れや、消火の要請も楽かな?とか。 もしクレアさんの確認もかねて、屋敷を訪ねてみるつもりなら。
>船 船側の組み分け、私はロゼットさんの案で問題ありません。 小舟で頑張って、出来るだけ早く船につけられるようにしましょう。 帆を破壊するたまのハンマーブレイクと遠距離の攻撃スキルは持つ予定ですが、残りのスキルはちょっとまだ考え中です。 >クレア様の居場所 軟禁場所、どこなのでしょうね。私はちょっと絞り切れなかったので、ナハティガルさんが仰るようにルカの場合なら捜索を行い場所が不明は今回は手が出せない、と考えるのが良さそうかなと思います。
〉光縛封 そうですね、港の到達地点で、船の進路に置いたら少しは減速させられますかね。 わたしも持って行ってみます
>個人 ロゼット様、私の懸念へのお気遣い感謝致します。 元々人手が足りない方へ向かう事を想定しておりましたので ロゼット様が仰るように高台の屋敷の代官様に火攻めの情報や 避難受け入れや消火への協力要請をお願いさせて頂く事は可能でございます。 港での光縛封設置後にお屋敷に向かってもよろしいのですけれど 時間的に最初からそちらに専念した方がよろしければそのように致します。 >ローラ様、クレア様 ナハティガル様の仰る通り、軟禁場所がルカ以外の場合は 此度は私達が対処するのは難しそうでございますね……。 もし皆様がよろしければローラ様には クレア様の居場所がルカの場合はそのまま保護へ ルカ以外の場合は懸念を伝え、もし単独での対処が難しいようでしたら クレア様の次の移動先までの追跡をお願いさせて頂く事を検討しております。
>船 俺も(ナハトがOKならば)ロゼット案の組み分けで問題ない。 操舵輪の固定を何とか解除し、進路変更して他の船に衝突/港への被害が比較的抑えられる座標への移動を試みよう。 どの船を狙うかは現地で判断する方向で。(三隻横並びなら両端の片方、△陣や▽陣、縦並びなら先頭の船を優先的に狙う予定) >レティシア >>ローラ、クレア クレアの居場所がルカならば保護、 ルカ以外の場合はローラに懸念を伝える/移動先までの追跡を要請する案に異論はない。
僕はシーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、宜しくね。 今まで顔出せなくてごめん(参加後に著しく調子を崩してしまってました)。 >個人行動 一人でどの位妨害できるか分からないけど、残りの一隻に乗り移って、被害を減らす努力をしてみるね。
>船 僕もロゼットさんの案で問題ないです。 ナハティガルさんはよろしくおねがいします。 >船に乗り込む予定の方々 外側の船の帆やマストを攻撃した後、船上に火がついたものが視認できれば貫通衝撃射で海へ吹き飛ばすつもりでいます。 ホークアイや超視覚で皆さんを巻き込まないよう注意しますが、飛び火にご注意を。
プレイングは出したわ。明日が出発ね。 結果を聞いた犯人が、悔しがるような成功を目指しましょう。 >レティシア 光縛封を置いて、船の減速にあたってからでも良いし、 早いうちに代官に面会して、避難や消火の協力をまとめるのも、 どちらもプラスだし、レティシアの好みかと思うわ。 代官は火船の存在にまだ気づいていない可能性もあるわ。 代官の立場で考えたら、早く事態を知らせてくれた方が 後の感謝には繋がりそうかな?とも思ったり。 自分の都市が火事になって対応が遅れるのは立場上マズそうだしね。