【再起】帝国代官の秘密マニュアル
馬車猪
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オープニング
二束三文で買い取られるはずの古本の山が次々に金貨で買い取られ、その光景に煽られるようにして取り引きの量と価格が上昇の一途をたどる。
「これはいったい?」
「理由を探すより儲けだ!」
「ちくしょーまた買えなかったっ」
悲喜こもごもの人間模様が模様が展開されている。
しかしその中には全く別の空気を纏った人間もいた。
(代官より先に見つけろ!)
(学園生用のノートだけど加工されている可能性があるわ。中も調べなさい!)
複数の勢力が表に出すには危険過ぎる冊子を探している。
タイトルは、『帝国占領後の復興実施要領』といった。
●1週間前。ヴィント
帝国代官セニャの業績は凄まじい。
侯爵領と伯爵領と男爵領1ずつの復興を軌道に乗せ、新たな復興事業も始動直前だ。
費用自己負担で復興した土地の10分の1の面積という極小のはずの報酬が、既に周辺の村を含む町1つという広い土地になってしまっている。
「いやおかしいですよ!」
「17歳という年齢がかね?」
「それもあります。そもそもこんなことができる人材を王国が手放しますか? 本当に若いならなおさらです」
「冒険者が手を貸しているからでしょう」
「冒険者の手を借りただけで可能になるなら我々はここまで苦労していませんよ」
「あくまで一般論ですが、通常なら地位と名誉を与えて王国に留まらせるか国外に出る前にこれですな」
情報部門に属する人間が独特の仕草をする。
上座に座るレイウェスト皇子が軽く咳払いをする。
それだけで脱線しかけていた議論が正常になる。
「セニャ殿の正式な代官就任は確定ということでよろしいか?」
「王国との繋がりが本当に切れているなら、私は賛成する」
「私もです」
複数の視線が情報部門へ向けられる。
「彼女が帝国に到着してから帝国に留まり続けているのは確かです。王国内勢力と連絡をとりあっているかどうかは、申し訳ないですが今の我々では証拠がないとしか言えません」
帝国の人材不足は深刻だ。
多少目立つ動きがあるとはいえ、代官1人に優秀な諜報員を貼り付ける余裕はない。
「所感で構わない」
皇子は冷静に問いかける。
情報部門から派遣されてきた人間が、心からの敬意と共に一礼して説明を続ける。
「外患誘致などの極めて悪質な企みがあるなら彼女と共に活動した冒険者が気付いて我々に知らせているはずです」
代官の活動範囲は基本的に帝国内なので帝国系冒険者と活動することが多い。冒険者は個人個人で様々だが、そんな企みを見逃す者はいないはずだ。
「極めて悪質な企みがあるなら、か」
秀麗な顔に微苦笑が浮かぶ。
「はい。彼女の手法は明確に伝統的王国風……あちら側で言う貴族派貴族風です」
ヒューマン優遇や中央からの口出しを嫌う傾向など、帝国が万全な状態なら能力があっても採用されない特徴がいくつもある。
「今の所はそれだけか? 御苦労」
情報部門がうなずくのを見て皇子は労をねぎらい、決断する。
「代官セニャに半恒久的な任地を与えることを認める。具体的な任地は今年中に決めたい。候補地を複数選んでおくように」
元とはいえ王国貴族令嬢を正式な帝国代官にするという大きな決断だ。
「代官セニャには一層の精励を期待すると伝えて……」
皇子は少し考え直す。
「態度も評価の対象だとも伝えておくように。復興の手法も、今公開するのが最も評価が高くなるだろう」
「はい!」
「承知」
「直ちに知らせに向かわせます」
欠点のある人材も使いこなす皇子の度量に臣下達は満足そうだ。
(功績は正当に評価する必要がある。とはいえ、行動を改めない限りこれ以上は認められないな)
できれば自身が直接命じる前に気付いて欲しいと、心から思っていた。
●数日前。代官執務室
「やったわ!」
「おめでとうございますお嬢様!」
「かんぱーい。おいしー」
王国出身の少女達がはしゃいでいる。
元王国伯爵令嬢とその腹心2人の計3人だ。
「最初から自信はあったけど成果が形になると嬉しいものね」
セニャがふふんと得意げにグラスを掲げる。
「お嬢様……」
「おうちを飛び出すときー、今にも死ぬか闇落ちしそうな雰囲気でしたよー」
最も苦しいときからついてきた腹心なので遠慮もない。
「何のことかしらね」
セニャは誤魔化したつもりだが誤魔化せていない。
「お嬢様ー。結局どの程度の爵位になりそうなんですー?」
腹心は聞きにくいはずのことを平然と聞く。
帝国に来てからの新規部下が近くにいないからできることでもあるが、己の待遇に直結するので聞ける機会は逃せない。
「爵位は分からないわ。最悪でも私の代で男爵になるつもりだけど」
傲慢さもここまで来ると別の何かに見える。
実績はあるのでタチが悪い。
「復興の手法を公開されては?」
メイドがジュースを注ぎながら控えめに進言する。
主は、甘味が強いジュースなのに渋い茶を飲んだような表情になる。
「あれって伯爵様が作られたものですよねー」
もう1人のメイドが遠慮無くジュースを飲む。
「私も関わったわよ。ほとんど訂正されちゃったけど」
セニャはジュースを上品に煽ってチョコレートをやけ食いする。
今は敵だがかつては仲が良かったのだ。複雑な心境にもなる。
「参考にはしたけど私だって頑張って工夫して……」
「お嬢様」
「お嬢様ー」
乳母と家政婦長の座が約束されている2人が全ては言わずに促す。
信賞必罰が基本なのは帝国も王国も同じだ。
2人は働きに応じた待遇を求めている。
貴族の部下と、貴族っぽい地位の人間の部下ではかなり違う。彼女達の価値観は王国人のままなのだ。
「分かったわよ。題名と単語を書き換えるのは手伝いなさいよ」
セニャは異空間から入れ物を引っ張り出す。
記憶では、その中に入っているはずだった。
「……えっ」
なかった。
「お、お嬢様?」
「テレパスー」
気の抜けたしゃべり方はそのままでも表情が引きつっている。
(入れ物の中は私が探します。他に心当たりは?)
(ない……いえ、戦闘中に入れ物まで出して戦ったことがあった、けど)
(場所はー?)
(あそこよ)
(表紙はあのままでしたか)
(タイトルには張り紙してたけど中身はそのまま)
(誰かに回収されたと仮定して行動しましょー。古本屋や故買屋を総当たりする感じでー)
勝利の実感などとうに消え、追い詰められた3人の瞳がぎらりと光っていた。
●冒険者ギルド
「古本市の治安維持依頼です」
受付嬢が差し出したのは帝国で開かれる古本市の入場券だ。
特に歴史も権威もないが、古本の取り引きが再開されるほど復興したのを証明するめでたい市でもある。
「この古本市は何日間か開催されるんですが……」
初日に、手当たり次第に買い付ける桃髪娘や金のにおいに引きつけられたチンピラや悪質業者が現れてひどく混乱した古本市になってしまったらしい。
「盗品を持ち込んだ故買屋とかを摘発したり、タチの悪すぎる取引をする人に注意したり、冒険者らしい服装で見回ったり本とか読んだりして犯罪を抑止したりして下さい」
まともな本好きさん達のために頑張ってあげて下さいと熱心に言う、ドゥジンシ好きな受付嬢であった。
解説
マスターより
リプレイ
買取価格の高騰は新たな本と客を呼び込む。それはもう大量に。
「通してー」
アルマ・ヴァレンタインの実力なら強行突破は簡単でも目立たず突破するのはちょっと辛い。
体格が装備込みで1メートルと少ししかないからだ。
「アルマ様ー」
「ご無沙汰しております」
直前まで威圧的な雰囲気を漂わせていた授恵者2人が綺麗な礼をする。
「ひさしぶりー……。やっぱりそういうことかー」
依頼票にあった『古本市を買い荒らす桃髪娘』の正体は予想通りのようだ。
面識のある2人に誘われ、古本市の中に設置されたソファーに座る。
「事情を聞いてもー?」
アルマは筆談できるよう紙を用意したが相手は困ったように微笑むだけだ。
(これって絶対に証拠残せないやつだねー。セニャさん今度は何したんだろ)
今回、残念ながらテレパスの準備はしてこなかったのだ。
「もっと珍しい本、ない、かな」
アルマとは別の意味でティトが目立っている。
身長が3割増しなので通常基準で儚げな雰囲気の華奢で小柄な少女に見えるし、よく手入れされた狼耳と狼尻尾が新雪を思わせる白さで周囲を引きつけている。
「お嬢ちゃん、良い本はあっちにあるよ」
暗がりに連れ込もうとする悪徳商人が手を出す前に暗がりの中にあるものを暗視能力で確認して、ティトはくすくす笑う。
「だめ、だよ」
手を掴まれるのではなく掴んで適度に強く握る。
細い指からは想像し辛い力を感じ、悪徳商人はティトの正体にようやく気付く。
「本探し、手伝って欲しい、な」
古本市の規模は当初よりかなり大きくなってしまった。
いくら冒険者の能力が高くても、10人にも満たない数だけでは少し不安だ。
(『代官セニャの手法徹底解説!』、か。セニアーラのことだよね)
ティトは真新しい本を両手で持ち上げる。
アルマと話していた授恵者2人が、それだけで人を殺せそうな視線を本に集中させていた。
●
「……怪我の合間に骨休めを兼ねたアルバイト感覚で依頼を受けたのに、なんか殺伐としとるのぉ」
ベルク・オスマットは既にだいたい察してはいたが、ティト達の会話を聞いて確信を得る。
故買屋じみた界隈をするりと抜けて最も金が集まる界隈に向かうと、予想通りの顔がいた。
次のオークションは昼過ぎからになりますという司会の声を聞きながら、本の山を鬼気迫る表情で崩すセニャの後ろに立つ。
「正式な代官に就任間近の人間が怪しい動きとは、ちょっと殿下の従者としては何をしとるのかなぁ? と聞かざるをえんな」
超高速の反応もベルクにとっては遅い。
「なに安心してくれ、今お前さんに下手こかれるとお前さんだけでなく代官就任を決めた殿下にも害が及ぶでな、もみ消しぐらいは手伝ってやる」
静かに回り込んで薄く微笑む。
身内判定しているとはいえ皇子の方が圧倒的に上なのでこの言い方になる。
「セニャ、血相を変えて一体何があったんだ? 正直に話してくれ。俺には話せないことなのか?」
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトには卓越した情報収集能力もないし古本市で使える特殊技能もない。
しかしセニャとの付き合いが長く深いからこそ、セニャが帝国の逆鱗に触れかねない性格を持っているのを知っている。
「これは冒険者でも貴族でもなく同性のほぼ同年齢としての忠告。隠さない方が傷が浅くて済むわよ?」
アウレーリア・フォン・ネーベルベルクの手にあるのはティトが回収したうちの1冊だ。
セニャが紛失したものと比べると誤記も多いし章ごと省略された部分もある。
それでも何のための内容かは、アウレーリアの政治知識と実際に統治に関わった経験があれば十分に分かる。
「内容や悪用の有無を問わず、無秩序な流布自体が代官への求心力を傷つけ統治の信頼性を損ねるわ」
下からの評価低下ならなんとか対処できるかもしれないが、帝国中央からの評価低下は致命的だ。
「流布の原因が未知の第三者に渡るより知己の手に委ねた方がまだ安全と思うのだけど」
この程度の尤もらしい理由では普段のセニャなら騙せない。しかし今の焦ったセニャなら十分に有効だった。
(ここまで焦るのは本当に珍しい。つまり露見すれば失脚しかねないものを探しているのね)
アウレーリアは帝国人としても貴族としても、セニャの敵ではないが無条件の味方でもない。
これまで付き合いでセニャが良くも悪くも王国貴族派貴族の典型であることを知るアウレーリアは、セニャの手腕の背景や王国におけるセニャのコネまで意識している。
「ネーベルベルク領も復興中よ。是非貴女の知恵を貸してほしいわ。……そうね、占領後の復興計画とかどうかしら」
写本を見ればコピー元の内容を予測するのは比較的容易だ。
(知識の水準はパンクリアースで調べられる程度だけど長年実務に携わっている人間しか書けない内容だわ。私でもこの水準の『王国復興要領』を部下の助けなしで書くのは難しい)
アウレーリアがセニャの表情を確かめると、焦りが隠せなくなっているのが分かった。
「何てことだ」
アルベルトの動揺は、主君への忠誠と婚約者へのフォローの両立の困難さを理解できる故の動揺だ。
「とにかく、その写本のものとおそらく出回っているであろう他の写本を回収する必要があるな。……ただし穏便にな。今のままだと一般参加者に迷惑がかかってしまう。俺も協力する。安心してくれ、俺はどのような時もセニャの味方だ」
アルベルトは真剣だ。
(全て露見すると将来に向けての話し合いが数日かかりそうな……)
じっとり嫌な汗をかき始めたセニャに、氷点下の視線が突き刺さる。
「内々に急いで回収して処分するぞ、そんなものが表に出たらお前さんどころか殿下にまで被害が及ぶ」
以前に立案された帝国占領計画の一部とかそういうものだろうと、非常に高度な政治知識を持つベルクは口に出しはしないが目で語る。
セニャが帝国による帝国復興に流用して成果をあげているのだから有効ではあるのだろうが、帝国人にとって愉快ではない。
「なんで殿下にまで害が行くかと言いたげだな? 任命責任と人を見る目の無さという問題が噴出するのは今の帝国だと大問題なんじゃよ」
(向いてなさそうなリットくんを代官見習いに任命した節穴アイさんないめーじ、だけどね)
(考えてもいても口に出さない賢明な選択に感謝する)
アルマの表情から察して、ベルクが軽く頭を下げる。
(絶対に裏切らない部下が欲しいのは誰も同じで……いえなんでもないです)
反論しようとしたセニャは、じっとりとした視線を複数向けられ大人しく黙っていることにした。
●
「そのやり方も悪かないがな」
ハヤト=ガラン=ヴォルファングはにやりと笑って前へ出る。
授恵者2人を相手にしらばっくれていた男達は、ハヤトに気付いて露骨に警戒する。
「ずいぶん派手に騒ぐじゃねぇか」
特に着飾っている訳はないが、鍛え抜かれた体は単体でも芸術品であるしほぼ完全に安定した動きから素晴らしい戦闘能力が窺える。
「兄さん、何もんで?」
マフィアの若頭だとしたら歳を食っている男が代表して問いかけてくる。
ハヤトは微かに口角を吊り上げる。
「俺をゴールディのヴァイオレットレオンだと知って喧嘩を売って来てんのか?」
「っ……遠方の組織についての知識を要求するのはキツイんじゃないですかね」
一般的な帝国人にとって、大陸の南東部にあるゴールディは別世界じみて遠い存在だ。
「おいおい、それ本気で言ってんのかよ」
やれやれと呆れる仕草で嘲笑う。
暴力の気配を滲ませても手は出さず、相手が攻撃してきたとき即座に反撃できる体勢を保つのが重要だ。
「最近はモノも情報も入り込んでるだろ? それすら知らねぇのか?」
故買屋が伏せていた戦力も、万一に備えた設置していた罠も、ハヤトはとっくに捜索済。
だから威圧も説得もそれはもうよく効いた。
「それじゃこっちに運んでー……」
アルマが遠くから呼びかけている。
既に大きな箱4つ分の書籍や冊子にざっと目を通し、何冊か写本を見つけ出している。
(儲けるつもりがある本ばかりで残留思念感応は効いてるけどあんまりー……これもかな)
資料検索技能は思った以上に有効だ。
(うーん、どれも聞いてたのと微妙に違うというか不完全な劣化コピー? ばかりだよー……)
元がほとんど実用書なので、一部を省いたり誤記したりするだけでも非常に悪質なものになってしまっていた。
「持って来た、よ」
正確には持って来させた、だ。
強面の裏稼業の人間を引き連れてきたティトが、アルマの近くの机に数十冊の本を積み上げさせる。
アルマはすごいね、とティトに頷いてから仕事にとりかかる。
「どれどれー」
掘り出し物、古本市にあるのがおかしいほどの稀覯本、他にも色々ある。
「これとこれは要回収だねー……」
『これであなたも帝国代官に!』と『王国の野望に迫る 第二弾!』だ。
「第一弾と第三弾もありそうー」
見覚えのあるセニャの筆跡はなく、しかしセニャに関係のある情報まで載っている。
(参考データがセニャさんの実家のだよー……。処罰の理由にするには足りなくてもセニャさんの評判を落とすにはこれでも十分な写本ー……)
アルマは1度作業を中断し、セニャがいる方向をちらりと見た。
「古本の相場荒らしを大勢が問題視しているわよ」
アウレーリアの指摘は、セニャとって『帝国占領後の復興実施要領』に気付かれたのと同じくらいに衝撃だった。
(大勢の中に各国の有力者も入っているでしょうしね)
セニャやその配下を古本市から追い出すにはこれで十分だ。
しかしその後がなかなか難しい。
「それらしいものもある、がな」
アルベルトは運が良いだけでなく隠されたものを探すのも得意だ。
しかし人と物の出入りが激しい古本市全体を探すのは難易度が非常に高い。
ベルクは見つけるのは得意で同系列を評価する目はあるが運は特別高くはない。
「こういうときに限って興味深いものが見つかったりするんじゃよな……」
好奇心を抑え込んで途中で読むのを止め、オークションに流して目当ての本と写本の購入資金にしていた。
(ヴァレンタインさんもオスマットさんも本探しに苦戦しているのか。アウレーリアさんは……個人間取引で帳簿に残らない物々交換? 考えたな)
珍しく仕事をしていない婚約者と一緒にいるのはアルベルトにとって楽しくはあるがそれはそれとして捜索がうまくいかない。
「出入り口を閉鎖して一斉捜索すべきじゃないかしら」
「セニャ、焦らなくてもいい。俺達を信じてくれ」
(焦らないのは無理よ……)
代官は精神的にも追い詰められていた。
●
先手を打てるのは並外れた利点だ。
殺し合いはもちろん、喧嘩や捕縛でも最初に一撃を与える方が強い。
攻撃力や防御力より気合いの方が重要になる後者では得にだ。
「邪魔ですわよ」
バンビは率先して治安維持を行っている。
マナーが極端に悪かったり古本の山を粗雑に扱ったりするような輩を見つけたら容赦なく捕獲する。
強力な魔導書を純粋な物理攻撃として使えば、普通の犯罪者は抗戦も逃亡もできない相手だと悟る。
「なんだか活きのいいのが多いですわね」
最初は盗賊と変わらないチンピラや窃盗犯などもいたが、徐々にスリなどの技術のある犯罪者ばかりになる。
冒険者を含む、多額の資金を持ち込んだ者に惹かれているのかもしれない。
「おや」
何人も痛い目に遭わせても助けられた一般客から感謝されても特に表情を動かさなかったバンビが、今回初めて驚きを露わにする。
「こちらからもセニャ様の匂いがしますわね」
バンビがパッシブで使用しているスキルは犬並みに効く。
(珍しいこともあるもんだ。長年使い込むか大量の汗でも吸わせないとこの強さには……)
表情をいつものものに戻す。
「これはおいくらですの?」
美貌と気配を兼ね備えたバンビに、商売人としては真っ当だからこそ容赦もない老人がぎりぎり出せる額を提示してくる。
「中を確認させていただいても? 駄目? ケチですわね」
「値切るつもりならそんな表情しちゃいけないよ」
老人は得意げで、バンビは少し悔しげな表情を作る。
(匂いの強さは数十時間は連続して使用したもの。なるほど使用時を除けば常にマジカルポケットに入れていた訳だ)
貸与された購入資金を使い切ることになるが問題ない。
これが本命だ。
バンビは何食わぬ顔で元の活動に戻る。
古本市は相変わらず騒々しく、しかし徐々に治安は向上していった。
●
「なんとまあ」
詳しい事情を聞いてバンビは呆れる。
だいたい予想通りだったからだ。
「助かったわ、本当に」
セニャ最近代官としてしか動いていないようにも見えても、最精鋭冒険者の少し下程度の格はある前衛授恵者だ。
バンビから受け取った本の1ページから前を、指だけで引きちぎり解体する。
「よし!」
セニャの直筆のタイトルが消えればどうとでも誤魔化せる。
(などと考えているのでしょうね)
アウレーリアはじっとりとした目で見て本を要求する。
内容はすぐに時代遅れになるかもしれないが、タイトルがなくても将来の政敵を抑えるための武器になる。
他の写本とは違ってセニャ直筆なのだ。
(まあいいけど。内容は覚えてるし)
バンビは、あの内容が今後そのまま役立つとしたら特大の災厄が発生した後だと判断している。
「焼かせて貰うぞ」
ベルクは目が据わっている。
王国貴族、それも貴族派の貴族の計画書で帝国の復興が進んでいるという情報は絶対に表に出せない。
セニャがアウレーリアに渡す前に、レイウェスト皇子への通報をにおわせることでセニャから原本を回収する。
「私、全部記憶してる訳じゃないんだけど」
「セニャ、俺はセニャの味方だが殿下は主君なんだ」
正式な代官にするのを公の場で決めてしまった以上、不祥事を放置するのは論外だ。
アルベルトの頼みを断ることはできず、セニャは全ての写本を提出されられた上、焼却のための場所と燃料の調達まですることになったらしい。
マスターコメント
ショートシナリオ易しい 報酬:多い7 / 4〜8人
2023年04月24日 11時10分03秒 公開
相談掲示板
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 ・・・セニャ、全く何てことを・・・。 とにかく今回は、セニャと協力しつつ本を回収するしか無いな・・・ 『幸運の星』と『看破』ででどうにかなるかな?
キャスター、アウレーリアです。宜しく。 あらあら、代官様は大層お仕事熱心でいらっしゃいますのねぇ。私も見習いたいものですわ。 とまぁ、冗談は程々にいたしまして。 依頼目的だけ考えますと、方針と手段は実は色々あるように思われます。 本そのものを回収するパターン、取引を抑制するパターン、犯罪者を含む参加者を制圧するパターン等です。要するに騒ぎが起きなければ良いのですから。 或いは個々人の得意に沿って、これら同時並行でも良いでしょう。 対抗資金の出資はあるようですが、だからと言ってこれで正面から関係者と競り合っては、騒動を抑えている事にはなりません。出資者の素性もあまり定かではありませんし、私は積極的に使いたくないお金だとだけ、意見共有しておきます。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 セニャ嬢ぇ。。。 オリジナル特性スキル【うっかり令嬢】の発動はもうちょっと時と場所を選んでほしいものだな。(ため息) とりあえずは原本の捜索が優先かね。 冒険者かセニャ嬢の勢力以外に渡ると面倒だし。 とりあえず回収したら焼かせる、絶対に焼かせる(ハイライトの無い眼)
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! セニャの奴はま~た何か面倒事起こしてんのか? しょーがねーから手伝ってやっか。 んで、俺は犯罪者連中をちょちょいと脅して悪さ出来ねーようにでも動くとすんぜ!
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー うっかりセニャさん…色々頑張ったのに解任は忍びないしお手伝いにいくね 手分けして資料検索で効率よく探してみたり 残留思念感応で一儲けしてやろう的な邪念からアタリを付けたりしようかなと 場合によっては盗品とか濃度の高いドゥジンシが引っかかるかもだけど…